• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 工 学 ) 笹 倉 弘 理

     学位論文題名

A study on quantum computation uslngeleCtronSpinS     OfSemiCOnduCtorquantumdotS

     (半導体量子ドットの電子スピンを用いた量子演算に関する研究)

学位論文内容の要旨

  Feynmanによ っ て提 案さ れた 重ね 合わ せの原理と波動関数の非局在性 をコンピュ一夕に 適 用し た量 子コ ンピュータは、Peter Shorによる素因数分解の多項式時 間アルゴリズムの 発見から、実験、理論 共に研究が贐んに行われている。例えば素因数分解の難しさに基づい た (現 在の 古典 アー キテ クチ ャで は多 項式 時間アルゴリズムが発見されていない)RSA暗 号 は量 子演 算を 用いると理論的にはわずか数秒で解くことができる。古 典的なコンピュー タでピットと呼ばれる(0,ユ)のデジタル信号の代わりに、量子演算では2つの状態の量子力 学的重ね合わせ状態( 量子ピットと呼ばれる)を用いて演算を行う。N個の量子ビットで2N 個 の状 態全 てを 同時に表現できる。量子演算は重ね合わせ状態と干渉効 果により、超並列 処 理が 可能 にな るため、現在の古典演算では計算時間が指数関数的に増 大してしまう問題 に 対し て多 項式 時間で解を与えることができ、計算が桁違いに高速にな る。また演算自体 の 可逆 性か ら原 理的にはエネルギー損失が無い。これら量子情報に関す る研究は、ここ数 年 諸外 国、 特に 米国 で盛 んに 研究 され てい る。このような中で、3重結 合量子ドットにお け る2電子 のス ピ ン状 態を 用い た新 しい 量子演算スキームを提案した。 サイズの異なる量 子 ドッ トで は、 電子のゼーマンエネルギーと量子化エネルギーが異なる ことによるこの提 案 は電 子準 位問 の遷移のエネルギー選択性を利用するもので、スピン間 交換相互作用を利 用 する 従来 の提 案とは異なっている。論文の目的は本提案の安定性を理 論的に検証し、ま た、その拡張性と実用 性を明らかにすることにある。

  Deutch等 が示 して いる よう に量 子ビ ット に対して1−bit回転と2−bit制御NOTと呼ばれ る2種 類の ユ二 夕 リー ゲー トを 作用 させ ることができれば全ての量子演 算が可能である。

物 理的 に実 現で きる量子ゲートを提案することは、量子演算を実現する 上でキーとなる。

量 子 演 算 を 実 現 す る 物 理 系 に 要 求 さ れ る 条 件(DiVincenzo s5critera)と し て 、   ・量 子ビ ッ卜 の 実現 とピ ット 数の 拡張 性

  ・初 期化 の可 能 性

  ・ デ コ ヒ ー レ ン ス 時 間 を1回 の 演 算 時 間 ( ゲ ー ト 時 間 ) で 割 っ た 演 算 回 数 の 多 さ   ・量 子ゲ ー卜 動 作の 可能 性

  ・最 終結 果の 観 測の 可能 性

が 挙げ られ る。特に新しいモ デルを考案するにあたって量子演算の特徴である並列処 理能     ―40―

(2)

カに念頭をおくことは応用的観点から重要である。

  半導 体 量子 ドッ ト中 に閉じ込められた電子 のスピンアップとスピンダウンの重ね合わせ 状態(電子の基底状態)を量子ビット(スピン−1/2系)として用しゝる。量子コンピュ一夕の実 現に は1−bit回転と2−bit制御NOTの実現がキーとなる。1―bit回転は任意の量子ピット を 任 意の 方 向に 回転 する 量子ゲートである。任 意の量子ピットヘのアクセスはゼーマンェネ ルギ ーの量子ドットのサイズ依存性により実現し、電子スピ ン共鳴により回転する。2−bit 制 御NOTは一 方の 量子 ピッ ト( 制御 ビ ット )の 状態 が11)のときのみ、他方の量子ピット

(標 的ビット)を反転させる(l0)HIl))量子ゲートである。これについては、サイズの異な る3つの 量子 ドッ トか らな る系 を基 本 単位 とし て考 える。静磁場を印加すると電子の量子 準 位とg因子 のサ イズ 依存 性を 利用 し てど の準 位間 のエ ネル ギー 差も 異な る6準位系が形 成で きる。テラヘルツ波による準位間の共鳴7rパルス励起( 光支援トンネル)により、スピ ンダウンの状態(|1))が左の量子ドットから中央の量子ドットヘトンネルする。このトンネ リ ング 量 子ピ ット によ るクー口ンブ口ッケー ドによって右から中央の量子ドットヘの卜ン ネル を制御する。次に1−bit回転と同様に左の量子ドットの 電子スピン状態を反転する。最 後に中央にトンネしている状態を元に戻す。

  この 提 案の 特徴 は、 磁場 の振 動数 と共 鳴光 の周 波数という2つのェネルギー選択的なプ 口 セス を 用い てい るこ とである。これらの周 波数は外部からチューニングが可能であるた め、 量子ゲートの作製を極めて容易にする。また多数の量子 ビットヘの拡張が容易である。

工 ネル ギ ー選 択性 を用 いて量子ピットを制御 できるか否かは、各遷移の所要時間に依存す る 。各 遷 移時 間を 等し くしたとき、いくつの 量子ドットが量子演算に使えるかを試算した 結果、100 psの遷移時間で量子ドット数は100を超える。

  次に 上 記、 演算 スキ ーム の基 本単 位で ある 非対 称3重 結合 量子 ドッ トに おけ る2電子間 の クー ロ ン相 互作 用を 数値 計算 によ り求 めた 。そ の結果、非対称3重結合量子ドットでは 量 子ゲ ー ト動 作中 にク ーロン相互作用によっ て意図しない状態に遷移してしまうエラーの 存 在を 確 認し た。 この エラーは電子の存在し ない空の量子ドットがあり、サイズの異なる 量 子ド ッ ト列 から なる 系で顕著に現れる。し かし、量子ドット間隔を適切にとることによ り エラ ー は1%以 下に 抑え られ るこ と がわ かっ た。 またこの結果をもとに上記の量子ゲー トの動作を密度行列の時間発展により確認した。

  新し い 提案 は拡 張性 と実 現性 に優 れて いる と位 置付 けら れる こ とか ら、 固体量子コン ピュー夕実現の新しい方向性を示すものとして意義がある。

41

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

A study on quantum computation using electron spins     of semiconductor quantum dots

( 半 導 体 量 子 ド ッ ト の 電 子 ス ピ ン を 用 い た 量 子 演 算 に 関 す る 研 究 )

  次世代の情報技術として量子情報処理の進展が急である。量子暗号通信についてはプラ グ・アンド・プレイのシステムがネット上で売りに出されており、また1.55ミクロン帯で 87kmの無中 継通信が 可能に なった。 量子中継器が実現すれば量子暗号通信の通信距離を 飛躍的に増大させることができる。より高度の情報処理として量子コンピューティングヘ の期待も高い。ショアのアルゴリズムによる因数分解と暗号解読、グローバーの検索アル ゴリズムによるデータベース検索などが可能になる。現在はまだ、他の目立った応用は報 告されていないがハードウェアが実現すれぱ新しい応用も拓けて来るものと期待される。

ハード ウェアの 提案は 多数あり 、既にNMRを用いた量子コンピューティングでは7量子ビ ットを用いた因数分解がデモンストレーションされている。またジョセフソン素子を用い て固体版でもQubit問の相互作用が報告されている。

  量子ドットの電子スピンは将来の大規模量子コンピューティング実現へ向けての有力候 補のーっである。半導体の電子スピンは核スピンに較べ散乱の影響を受け易く、デコヒー レンスが桁違いに短いことが指摘されている。しかしながら量子ドットでは電子のスピン 緩和機構の殆どが抑制されることが理論的には予測でき、デコヒーレンスの抑制が期待で きる。 特に光半 導体で は、光学 遷移の選 択則により光QubitからスピンQubitへの変換が 可能になるという利点もある。

  量子ド ットの電 子スピ ンを用い た量子演算としてはLossとDiVincenzoによる提案がパ イオニア的である。電子スピン間の交換相互作用を用いたもので、電子スピンを用いたそ の後の数多い提案の殆どがこの考えに基づぃている。電子スピン間の交換相互作用は電子 が区別できない同種粒子(フェルミ粒子)であることから生じる根本的な相互作用であり これを用いることは極めて自然な提案である。しかしながら、量子演算においてはこの相 互作用をオン/オフする必要があり、そのための具体的な手法も提案されているが、容易で

42

一 朗

夫 智

   

   

俊 信

藤 村

宗 立

武 田

末 足

授 授

授 授

   

   

敦 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

はない。

  本論文の著者は、これとは全く異 なる量子演算を独自に提案した。量子ドットの電子ス ピンの光支援トンネル(ラビ振動) とそのクーロンブロッケイドを用いたもので、テラヘ ルツ光による共鳴トンネル過程と共 鳴磁場による磁化反転というエネルギー選択的なプロ セスを用いているために外部からのtuningが可能で、Loss‑DiVincenzoよりも遥かに実現 し易い提案と考えている。量子演算 手法についての日本からの基本的な提案は殆どなく、

その点でもこの提案は特筆に価する 。   本論文は全7章から構成されている。

第1章 で は 、 序 論 と し て 量 子 コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ の 簡 単 な 歴 史 を 紹 介 し て い る 。 第2章で は、新しい情報技術としての量子コンピューティングの 位置付けについて言及す る。

第3章 で は 量 子 コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ の ハ ー ド ウ ェ ア に 必 要 と され る要 件、 い わゆ る DiVincenzoの5つの条件を中心に述べる。

第4章で は提案に関連した量子ドットの物性について述べる。

第5章 では 量子 ドッ トで 量子 コン ピュ ーティングを行うための光制御 について述べる。

第6章は 本論文の中心となる電子スピンをもちいた量子コンピューティングの提案である。

提案内容と共に、現実的なハミルト ニアンを用いた場合の計算機シミュレーションによる 提案の確認が行われる。本提案をス ピン間の交換相互作用が無視できない場合に拡張する ことを想定して、交換相互作用を用 いた演算についてもクーロン相互作用の影響を評価し ている。第3章でのべた条件との対応についても解析する。

第7章は 結論である。

  これを要するに、著者は量子ドッ トの電子スピンを用いた量子コンピューティングの新 しい手法を提案し、計算機実験によ り、提案を実証し、また量子演算が機能する条件を明 らかにしたものである。この知見は 半導体工学、応用物理学の発展に寄与するところ大な るものがある。よって著者は、北海 道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるもの と認める。

43

参照

関連したドキュメント

 基本波を用いる近似はピクセル単位の時間放射能曲線に対しては用いることができる

、肩 かた 深 ふかさ を掛け合わせて、ある定数で 割り、積石数を算出する近似計算法が 使われるようになりました。この定数は船

接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式

接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式

なお,今回の申請対象は D/G に接続する電気盤に対する HEAF 対策であるが,本資料では前回 の HEAF 対策(外部電源の給電時における非常用所内電源系統の電気盤に対する

4.「注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計処理基準に関する事項 (8)原子力発 電施設解体費の計上方法

4.「注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計処理基準に関する事項 (7)原子力発 電施設解体費の計上方法

IPCC シナリオ A1B における 2030 年の海上貨物量を推計し、 2005 年以前の実績値 と 2030