• 検索結果がありません。

昆虫食をテーマとした展覧会

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "昆虫食をテーマとした展覧会"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

昆虫食をテーマとした展覧会

伊丹市昆虫館企画展「昆虫食〜ごはんやでぇ」開催報告

坂本昇

・角正美雪

・野中健一

※ 1

伊丹市昆虫館、

※ 1

立教大学文学部

An exhibition on edible insects

A temporary exhibition "Konchu-Syoku(Insect-Eating)" at Itami City Museum of Insects

Noboru SAKAMOTO

*

, Miyuki KAKUMASA

*

, Kenichi NONAKA

*1

*Itami City Museum of Insects *1Rikkyo University (2014 年 2 月 28 日受理)  1. はじめに  昆虫食、つまり人間が昆虫を食す文化は日本をはじめ 世界各地にあり、その様子はこれまで幾つもの書籍で 紹介されてきた(Bodenheimer 1951, 三橋 1984, 野中 2003 など)。一般的に昆虫館には自然や環境への理解を 促進するという役割があり、それを果たすため展示や教 育系の活動を実施している。昆虫食も人と環境の関わり の一形態と言え、前述の役割にも合致する内容としてふ さわしい内容を含んでいるが、展示として昆虫食を主題 とした例は少ない。兵庫県伊丹市にある伊丹市昆虫館(以 下当館)は、2007 年度に昆虫食を主題とした企画展「昆 虫食〜ごはんやでぇ」(以下本展)を開催した。この様 子を報告する。 2. 過去に開催されてきた昆虫食展示  各地の昆虫館や博物館は過去に昆虫食を展示してき た。筆者らが調べた中で本展以前に昆虫食について展示 した昆虫館での展覧会を列挙すると表 1 のようになる。  昆虫食は幾つもの機会に展示されてきたが、その多く は昆虫食が主題ではなく、展示の一部分として昆虫食を 紹介したに過ぎない。昆虫食のみを題材とした展示はこ のうち当館の「もぐもぐムッシー展」と多摩動物公園昆 問い合わせ先 〒 664-0015 兵庫県伊丹市昆陽池 3-1 伊丹市昆虫館 / [email protected] 表1 昆虫食を扱った展覧会 開催年 開催館 展示タイトル(記載文献) 1995 橿原市昆虫館 第 6 回特別展「虫と人との浪漫時代」(橿原市昆虫館 1995) 1996 伊丹市昆虫館 企画展「秋の鳴く虫」(伊丹市昆虫館 2000) 1998 橿原市昆虫館 第 8 回企画展「タイの人、自然、昆虫」(橿原市昆虫館 2000) 1998 多摩動物公園昆虫園 「食用昆虫」展 1999 広島市森林公園昆虫館 企画展示「ひとと昆虫」(財団法人広島市農林業振興センター広島市森林公園昆虫館 1999) 2003 伊丹市昆虫館 プチ展示「もぐもぐムッシー展」(伊丹市昆虫館 2006) 2004 石川県ふれあい昆虫館 イベント「こん虫夏まつり 2004」(石川県ふれあい昆虫館 2005) 2006 国立民族学博物館 「みんぱく昆虫館」(国立民族学博物館研究戦略センター 2008) 2008 伊丹市昆虫館 企画展「スズメバチ」(伊丹市昆虫館 2006)

(2)

虫園の「食用昆虫」展の2つのみである。しかし前者は 展示面積が 10㎡に満たない小規模な展示であったため、 昆虫食をある程度の規模で紹介した展覧会は多摩動物公 園昆虫園の「食用昆虫」展のみだったということになる。 つまり本展は昆虫食を主題にした展覧会として、日本国 内で 2 例目だと言うことが出来よう。 3. 事業の基本情報 名称 企画展「昆虫食〜ごはんやでぇ」 会期 2007 年 10 月 24 日(水)~2008 年 1 月 28 日(月) 会場 伊丹市昆虫館 第 2 展示室(約 128㎡) 主催 伊丹市昆虫館 担当 坂本昇 副担当 角正美雪 企画制作 伊丹市昆虫館(坂本昇、角正美雪、後北峰之、 奥山清市、野本康太、長島聖大) 企画アドバイス 野中健一(立教大学) 展示デザイン・造形 株式会社日展 グラフィックデザイン ピコ・ピクチャーズ 協力 梅谷献二(社団法人農林水産技術情報協会)、周 達生(国立民族学博物館)、三宅尚巳(くしはらヘボ 愛好会)、三宅明(くしはらヘボ愛好会)、三谷彰一(財 団法人国際花と緑の博覧会記協会)、塚原一勇(塚原 川魚店)、塚原保治(有限会社つかはら)、池田和歌子 (メキシコ自治大学)、松山利夫(国立民族学博物館)、 加藤謙一(国立民族学博物館)、佐藤優香(国立歴史 民俗博物館)、杉本勝(串カツ杉の坊)、井上治彦(伊 丹市昆虫館友の会)、児玉英次(伊丹市)、森本正彰(伊 丹市)、染川香澄(ハンズオンプランニング)、倉谷禮 子(染織家)、一田昌利(京都工芸繊維大学)、くしは らヘボ愛好会、株式会社岐阜セラック製造所、塚原川 魚店、信州珍味つかはら、有限会社かねまん 4. 展示企画 4−1. 企画前調査  企画にあたり、当館の来館者の昆虫食に対する意識を 確認することから始めた。これには、2003 年に開催し たプチ展示「もぐもぐムッシー展」にて実施したアンケー ト結果を用いた。回答数は男性 29、女性 66、無記入 5 の計 100 で、うち 50%が 10 歳以下、27%が 10 代で合 わせて 77%であった。結果は表 2 および表 3 の通りで ある。この結果から、昆虫食経験がない人が大勢を占め ること、積極的に食べたい人は僅かであり、4 割近くは 拒否反応を示していることが読み取れた。 表 2 昆虫食経験の有無 回答 割合 はい 12% いいえ 88% 表 3 昆虫食の意志 回答 割合 食べたい 5% おいしければ、食べてもいい 39% 他に食べるものがなくなったら、食べる 16% 何があっても食べたくない 38% 無記入 1%  展示担当者が当館職員や友の会会員に昆虫食の知識や 経験について聞きとりをすると、「テレビで見たことは ある」という意見が多かった。この言葉は館周辺地域の 人にとって、昆虫食が自分と直接関わりのある事象では ないことを示唆している。また、いわゆるゲテモノのイ メージが強いようである。現在の館周辺地域、つまり伊 丹市および阪神地域では昆虫食慣行は見られない。また、 伊丹市に 60 年間以上在住している方に伊丹市での過去 の昆虫食慣行の有無を確認したところ、戦後の食糧難の 時期に食した経験があるのみで、それ以外はなかったと いう回答であった。伊丹市は大阪府に隣接しているが、 大阪府は大正時代に実施された食用昆虫調査でも、なし という回答である(三宅 1915)。これらにより、伊丹周 辺地域では地域文化としての昆虫食慣行が少なくとも過 去 100 年近くはなかったと考えるのが妥当であろう。加 えて本展前年同時期の企画展アンケート結果からは、当 館来館者のうち 8 割程度が近隣地域の住民である(坂本 2013)ことから、当館来館者のほとんどは昆虫食に馴染 みがない人々であることがわかった。 4−2. 展示目的と展示方針の設定  前節の結果をふまえ、展示の目的を、①昆虫が食べも のとなることを知ってもらうこと、②虫を食べるなんて 気持ち悪いという先入観をぬぐうこと、の 2 点とした。 そのために、食す地域の人々にとって昆虫はゲテモノで も何でもない食物のひとつであるという事実を来館者に

(3)

理解してもらえるよう、昆虫食の奇異に見える点を強調 せず日常の中にあることを紹介し、昆虫食を人と昆虫の つきあい方のひとつとして表現することを目指した。「ご はんやでぇ」という大阪弁のサブタイトルには昆虫食の 「日常性」を表現するとともに、本展が伊丹周辺の人々 に対しての展示だというメッセージが込められている。 ポスターなどのキャッチコピーも「旬の味わい」とし、 日常的な食物であると同時に、自然の恵みという点を印 象づけようとした。また各展示の方針として、人の写っ た写真、食べている人のコメントなどをできるだけ沢山 出す事を意識した。これらを中心として、来館者の嫌悪 感を拭い目的を達成するため、表現手法に工夫をこらし た(坂本昇 2014)。 5. 展示内容 5-1. 展示構成  展示構成は表 4、展示配置は図1のとおりである。会 場である第 2 展示室内の展示物は、一応の順路を左回り として配置したが、各展示の独立性を高くし順路を意識 しなくとも楽しめるように考えた(図 2)。順路通りに巡 る来館者がほとんどだったが、一目で見渡せるサイズの 展示室であるためか何回も展示室内を行き来する様子が 見られた。 表 4 展示構成 コーナー 小コーナータイトル 導入部 ・ ごあいさつ(担当者より) ・ 昆虫食アンケート結果 世界の昆虫食 ・ 東南アジア(タイ、ラオス、カンボジア) ・ 南部アフリカ ・ 中国 ・ 韓国 ・ メキシコ ・ オーストラリア 日本の昆虫食 ・ 日本でもたくさん食べてた?(大正時代における 日本の昆虫食) ・ 昆虫が食べられている県 ・ 日本の昆虫食 ・ おうちでたべる昆虫食 ・ ハチに恋して その他のトピック ・ いかなごといなご〜虫の栄養価〜 ・ あなたはもう、たべている(食品の光沢剤として つかわれるシェラック) ・ 体にいいなら、たべますか?〜薬用昆虫〜 ・ 昆虫は未来のたんぱく源? ・昆虫食あなたはどうですか 5-2. 各展示内容 ●導入部  展示室前の導入部は、各国の食用昆虫と各国の昆虫食 を扱う人をイメージした写真パネルを配置して来館者を 食へと誘うような演出をおこない、壁面に昆虫食に関す る様々な写真を配置した。主催者挨拶のテキストパネル の代わりに担当者メッセージとして展示目的のテキスト を示し、さらに当館で過去に行った昆虫食に関するアン ケート結果で館周辺における人々の昆虫食経験と意思を 図 1 展示室平面図(展示会社作成の図面による)

(4)

示した(図 3)。 ●世界の昆虫食  日本以外 8 カ国の昆虫食状況を国別に展示した。資料 を比較的多く集めることができた南部アフリカ、中国、 タイ、ラオス、カンボジアは屋台を模した造作に、韓国、 オーストラリア、メキシコは写真や実物で構成した(図 4)。 ●日本の昆虫食  日本の昆虫食については世界の昆虫食と同様の屋台形 式の展示に加え、過去に食されていた種、現状の範囲、 調理法や食べられている様子等を実物、標本、写真、映 像などを用いて紹介した(図 5)。  「ハチに恋して」と題したコーナーでは、日本におけ る「ハチの子」食とそれをめぐる習慣の紹介として、岐 阜県恵那市串原地域におけるクロスズメバチ食について 大きく取り上げた。地域の人々の自然に対する知恵を示 すため、クロスズメバチの生態、巣の採集、飼育、全国 へボの巣コンテストについて、写真、標本、道具類、映 像などを展示した(図 6)。 ●その他のトピック  地域毎の昆虫食文化以外の事柄として、幾つかの話題 を紹介した(図 7)。昆虫の栄養価として、来館者に昆虫 食を身近に感じてもらいながら知ってもらうため、日本 各地で食べられている昆虫食である「イナゴの佃煮」と、 兵庫県明石市や淡路島の郷土料理で館周辺地域でもなじ みがある「いかなごの釘煮」を比較すると共に、他の昆 虫食の栄養価についても表にして紹介した。昆虫食では ないが多くの人が意識せずに口にしていると思われる昆 虫の加工品として、ラックカイガラムシの分泌物であり 食品の光沢剤として使われているシェラックとそれを用 いた製品を展示した。食用以外の人間が口にする昆虫利 用のひとつとして、薬用に用いられる昆虫も紹介した。 さらに、昆虫を伝統的な食物としてではなく、これから の食品としての可能性を視野に入れた研究も行われてい る一例として、京都工芸繊維大学での研究を紹介した。 順路の最後に位置する場所には「昆虫食 あなたはどう ですか」と題して 2004 年 8 月に開催した昆虫食試食会 でのアンケート結果をパネルとして展示した。さらに出 口横には、食す際の注意点と、「おわりにかえて」と題 し改めてメッセージを記した。 5-3. 展示資料  展示資料の中心は調理済み昆虫であるが、これ以外に 食用に用いる種の乾燥標本や生体も一部の種のみである が展示した(図 10)。これらを展示した理由は、調理に より外観が変化する場合があるため、調理後の資料のみ では食されている昆虫種が判りづらくなる場合があると 判断したためである。展示資料リストを表 5 に示す。こ れによると、昆虫食資料を 49 点、薬用昆虫資料を 8 点、 生体資料を 3 点、標本を 23 点、その他の資料を 9 点の 計 92 点の物品を展示したことになる。このうち標本に ついては「ラオスの食用昆虫」のように数種を入れた標 本箱を 1 点として数えたため、種としてはこれより多く なるだろう。 5-4. 付帯事業 ●講演会「虫食む人々と暮らす」 開催日時 平成 20 年 1 月 14 日(月祝) 13:45 ~ 15:15 会 場 スワンホール 3F 多目的ホール 参加者数 128 名(友の会会員 56 名、一般 72 名)  本展の企画アドバイザーであり、民族昆虫学の視点か ら昆虫食を研究している筆者の一人、野中健一による講 演会(図 11)。各地の昆虫食と、その地での人々の暮ら しについて多量の写真を用いて解説した。伊丹市昆虫館 友の会との共催。終了後の友の会交流会では講師持参と 当館ストックの昆虫食の試食も行なった。 ●昆虫食試食の会 第 1 回 平成 19 年 11 月 18 日(日)11:00。種類 イナゴ、 ハチの子(日本産)、タケツトガ幼虫、ケラ(タイ産)。 参加者 30 名 第 2 回 平成 19 年 12 月 15 日(土)11:00。種類 イナ ゴ、ハチの子、カイコのさなぎ(日本産)、ケラ、タ ケツトガ幼虫(タイ産)、コオロギ(ラオス産)。参加 者 50 名(実質 70 名) 第 3 回 平成 20 年 1 月 20 日(日)11:00。種類 イナゴ、 ハチの子、カイコのさなぎ(日本産)、バッタ(メキ シコ産)、タケツトガ幼虫(タイ産)、カメムシ、コオ ロギ、蒸したモチ米(ラオス産)、【任意で虫糞茶、タ ガメペースト】。参加者 50 名(実質 100 名)  試食を実施したのは、食物の展示であるから味わって もらうことが展示の理解に有効だと考えたためである。

(5)

図 3-1 導入部 図 3-2 昆虫食を扱う人写真 図 3-5 昆虫食アンケート結果 図 2 第 2 展示室展示状況 図 4-1 南部アフリカの昆虫食コーナー 図 4-3 タイの昆虫食コーナー 図 4-2 中国の昆虫食コーナー 図 4-4 ラオスの昆虫食コーナー

(6)

図 4-7 オーストラリアの昆虫食コーナー 図 4-6 韓国の昆虫食コーナー 図 4-5 カンボジアの昆虫食コーナー 図 4-8 メキシコの昆虫食コーナー 図 5-2 日本の昆虫食コーナー 図 5-1 日本でもたくさん食べてた?コーナー 図 5-3 おうちでたべる昆虫食コーナー 図 6-1 ハチに恋してコーナー

(7)

図 6-3 クロスズメバチ飼育とコンテストの展示 図 6-2 クロスズメバチと伝統的採取法の展示 図 7 いかなごといなご(虫の栄養価)、シェラック、 薬用昆虫のコーナー  図 10-1 昆虫標本の展示(ラオスの食用昆虫) 図 10-2 昆虫生体の展示(タガメ) 図 11 講演会「虫食む人々と暮らす」 図 12 昆虫食試食会のようす 図 13 昆虫館受付での関連グッズ販売

(8)

表 5 展示資料リスト コーナー 種別 名称 状態・解説 現地名 産地 備考 1 南部アフリカ 昆虫食資料 バッタ 素揚げ ナイジェリア 染川香澄氏贈 2 南部アフリカ 昆虫食資料 モパニムシ 塩ゆで 乾燥 ジンバブエ 野中健一氏蔵 3 南部アフリカ 標本 南部アフリカの食用昆虫(の一部) 野中健一氏贈 4 中国 昆虫食資料 カイコのさなぎ びん詰め 鮮蛹 中国 山東省 杉本勝氏蔵 5 中国 昆虫食資料 カイコのさなぎ 揚げて味付けしたも 中国 広州市 6 中国 昆虫食資料 セミの幼虫 びん詰め 中国 山東省 杉本勝氏蔵 7 中国 昆虫食資料 トビイロスズメ(ガ)の幼虫 びん詰め 豆虫 中国 山東省 杉本勝氏蔵 8 中国 昆虫食資料 バッタ びん詰め 中国 山東省 杉本勝氏蔵 9 中国 昆虫食資料 虫糞茶(メイガ科のガの幼虫のフン) 中国 湖南省 10 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 アリ 素揚げ ヤム・メーペン タイ バンコク 野中健一氏蔵 11 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 カイコのさなぎ 素揚げ ファーマイ・トート タイ バンコク 野中健一氏蔵 12 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 コオロギ 素揚げ ジリート・トート タイ バンコク 野中健一氏蔵 13 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 コオロギ 素揚げ ジコーン・トート タイ バンコク 野中健一氏蔵 14 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 タイワンオオコオロギ 素揚げ ジロー・トート タイ バンコク 野中健一氏蔵 15 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 タガメの魚醤 タガメで香り付け タイ チェンマイ 当館学芸員蔵 16 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 タケツトガ(ガ)の幼虫 素揚げ ノーマイパイ・トー タイ バンコク 野中健一氏蔵 17 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 バッタ 素揚げ タクテン・トート タイ バンコク 野中健一氏蔵 18 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 ガムシ(水棲の甲虫類) 素揚げ タイ 当館学芸員蔵 19 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 セミ 衣揚げ タイ チェンマイ 当館学芸員蔵 20 東南アジア(タイ) 昆虫食資料 タイワンタガメ 揚げ タイ ピスンロー 梅谷献二氏蔵 21 東南アジア(タイ) 生体資料 タガメ 日本産 22 東南アジア(タイ) 標本 タイの食用昆虫(の一部) 23 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 イナゴ 炒め物 ラオス 野中健一氏蔵 24 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 カイコの幼虫の糞茶 ラオス 倉谷禮子氏贈 25 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 カメムシ 炒め物 ラオス 野中健一氏蔵 26 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 カメムシ(ライチカメムシ) 揚げ物 ラオス 野中健一氏蔵 27 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 (水棲の甲虫類)ケラ(バッタの仲間)とガムシ炒め物 ラオス 野中健一氏蔵 28 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 コオロギ 揚げ物 ラオス 野中健一氏蔵 29 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 コオロギ 揚げ物 ラオス 野中健一氏蔵 30 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 セミ 炒め物 ラオス 野中健一氏蔵 31 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 セミの幼虫 炒め物 ラオス 野中健一氏蔵 32 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 バッタ 揚げ物 ラオス 野中健一氏蔵 33 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 糞虫 揚げ物 ラオス 野中健一氏蔵 34 東南アジア(ラオス) 昆虫食資料 ヤゴと川エビ 炒め物 ラオス 野中健一氏蔵 35 東南アジア(ラオス) 標本 ラオスの食用昆虫(の一部) ラオス 野中健一氏贈 36 東南アジア(カンボジア) 昆虫食資料 ガムシ(水棲の甲虫類) 素揚げ コン・チ・ロン カンボジア 当館学芸員蔵 37 東南アジア(カンボジア) 昆虫食資料 クモ 素揚げ ア・ビン カンボジア 当館学芸員蔵 38 東南アジア(カンボジア) 昆虫食資料 コオロギ 素揚げ チョン・グラック カンボジア 当館学芸員蔵 39 東南アジア(カンボジア) 生体資料 フタホシコオロギ 40 東南アジア(カンボジア) 標本 ツムギアリ カンボジア 当館学芸員蔵 41 韓国 昆虫食資料 カイコのさなぎ 煮付け ポンデギ 野中健一提供 42 韓国 昆虫食資料 カイコのさなぎ 煮物・缶詰め ポンデギ 佐藤優香氏贈 43 韓国 昆虫食資料 カイコのさなぎ 煮物・缶詰め ポンデギ 野中健一氏贈 44 韓国 昆虫食資料 カイコのさなぎ 煮物・缶詰め ポンデギ 森本正彰氏贈 45 韓国 昆虫食資料 カイコのさなぎ 煮付け ポンデギ 46 メキシコ 昆虫食資料 ハエの仲間の卵 卵焼きに入れて用いる ウエバ・デ・モスコ メキシコ 池田和歌子氏贈 47 メキシコ 昆虫食資料 バッタ 辛くないトウガラシとレモンで味付け チャプリン メキシコ 池田和歌子氏贈 48 メキシコ 昆虫食資料 メスカル ガの幼虫入りのお酒 メキシコ 当館学芸員蔵 49 日本でもたくさん食べてた? 標本 イナゴ 50 日本でもたくさん食べてた? 標本 オンブバッタ 51 日本でもたくさん食べてた? 標本 カイコ 52 日本でもたくさん食べてた? 標本 カゲロウ 53 日本でもたくさん食べてた? 標本 カマキリ 54 日本でもたくさん食べてた? 標本 カミキリムシ 55 日本でもたくさん食べてた? 標本 ガムシ 56 日本でもたくさん食べてた? 標本 カワゲラ 57 日本でもたくさん食べてた? 標本 クリシギゾウムシ 58 日本でもたくさん食べてた? 標本 クロスズメバチ 59 日本でもたくさん食べてた? 標本 ゲンゴロウ 60 日本でもたくさん食べてた? 標本 コオロギ 61 日本でもたくさん食べてた? 標本 ショウリョウバッタ 62 日本でもたくさん食べてた? 標本 スズメバチ 63 日本でもたくさん食べてた? 標本 セミ 64 日本でもたくさん食べてた? 標本 タガメ 65 日本でもたくさん食べてた? 標本 トノサマバッタ 66 日本でもたくさん食べてた? 標本 トンボ 67 日本の昆虫食 昆虫食資料 イナゴ 煮物(大和煮) 日本 長野県 当館学芸員蔵 68 日本の昆虫食 昆虫食資料 カイコのさなぎ 煮物(大和煮) 日本 長野県 当館学芸員蔵 69 日本の昆虫食 昆虫食資料 ざざむし(川底にすむ昆虫類の幼虫) 煮物(大和煮) 日本 長野県 当館学芸員蔵 70 日本の昆虫食 昆虫食資料 蜂の子(クロスズメバチの幼虫)煮物 日本 岐阜県 当館学芸員蔵 71 日本の昆虫食 昆虫食資料 まゆこ(カイコの成虫) 煮物(大和煮) 日本 長野県 当館学芸員蔵 72 日本の昆虫食 生体資料 コバネイナゴ 73 おうちでたべる昆虫食 昆虫食資料 オオスズメバチを焼酎につけた薬用酒 三宅尚巳氏贈 74 ハチに恋して 標本 クロスズメバチ 成虫、幼虫、蛹 兵庫県産

(9)

参加者は当館の主要来館者層である小学校低学年以下の 親子連れは少なく、小学校中学年以上の親子連れや、学 生などのグループ、単独の成人男性が目立った。第 1 回 はほぼ定員(30 名)のため展示室で開催したが、2 回 目以降は参加者が定員をはるかに超えたため会場を映像 ホールへ移し、試食昆虫も 50 セットに増やした。特に 第 3 回(図 12)は開館前から 20 名以上が受付前に並ぶ 状況になった。当日は各回とも整理券を配布したが、2 回目以降は整理券が手に入らなかった人も会場への入場 と解説の視聴、イナゴ、カイコのさなぎの試食をしても らった。参加者の反応は様々だったが、「意外においしい」 との声が多く、種類や調理法によりさまざまな違いがあ るが「食べ物」と少なからず認識してもらえたようだ。 解説を熱心に聞き、試食中も熱心にスタッフに対し質問 をしたり感想を話す参加者が多く、昆虫食への理解を実 体験としてすすめる事ができた。 ●関連グッズ販売  本展の展示期間中、各種の関連グッズを当館受付(図 13)、昆陽池公園売店(ミュージアムショップ)にて販 売した。販売物は以下のとおり。 < 昆虫食実物 > いなご大和煮(かねまん製、缶入り、瓶入り)、はちの 子大和煮(かねまん製、缶入り、瓶入り)、かいこのさ なぎ大和煮(かねまん製、缶入り)、まゆこ(かいこ成 虫)大和煮(かねまん製、缶入り)、ざざむし大和煮(か ねまん製、缶入り) < 出版物 > 民族昆虫学(野中健一著、東京大学出版会) コーナー 種別 名称 状態・解説 現地名 産地 備考 75 ハチに恋して 実物資料 クロスズメバチの巣 シダクロスズメバチ 岐阜県串原村 三宅尚巳氏贈 76 ハチに恋して 実物資料 クロスズメバチ用防護服 岐阜県串原村 77 ハチに恋して 実物資料 初期巣を運搬する箱 岐阜県串原村 三宅尚巳氏贈 78 ハチに恋して 実物資料 杉の木で作った飼育箱 岐阜県串原村 79 ハチに恋して 実物資料 三宅式ヘボ飼育箱 岐阜県串原村 三宅尚巳氏贈 80 いかなごといなご 昆虫食資料 イナゴの佃煮 長野県産 81 いかなごといなご 資料 いかなごのくぎ煮 兵庫県産 82 あなたはもう、たべている 資料 シェラック (株)岐阜セラック提供 83 あなたはもう、たべている 資料 シェラックが使われている製品 (株)岐阜セラック蔵 84 あなたはもう、たべている 資料 スチックラック (株)岐阜セラック蔵 85 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 九香虫 カメムシ科ツマキクロカメムシ・アオクサカメムシ 梅谷健二氏贈 86 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 しゃ虫  ゴキブリ科シナゴキブリ 87 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 小棘巨蜈蚣   オオムカデ科 トビズムカデ 梅谷健二氏贈 88 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 白彊蚕  ヤガ科 カイコガの幼虫 梅谷健二氏贈 89 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 大斑芫青  ツチハンミョウ科 キオビゲンセイ 梅谷健二氏贈 90 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 地鼈  ゴキブリ科チュウゴクゴキブリの一種 梅谷健二氏贈 91 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 冬虫夏草  バッカクキン科 フナムシナツクサタケとそれに寄生されたコウチュウ目の幼虫を乾燥したもの 92 からだにいいなら、たべますか? 薬用昆虫資料 孫太郎虫  ヘビトンボ科 ヘビトンボの幼虫 虫 食 む 人 々 の 暮 ら し( 野 中 健 一 著、NHK ブ ッ ク ス ) HEBO(野中健一著、たまさや) < モパニムシグッズ > モパニムシストラップ(たまさや製)、モパニムシマグ ネット(たまさや製)、モパニムシピン(たまさや製)  関連グッズ販売は内容理解を深める狙いで実施した。 試食会と同様に、味わう機会の提供が第 1 の目的であっ た。これらは市販品だが近隣に入手可能場所が少なく、 展示により味に関心を持った来館者が購入したようだっ た。昆虫食未経験の来館者が多かったためか、日本では 最も広く食されているイナゴが人気で、かいこのさなぎ、 まゆこ、ざざむしも、未経験の来館者が購入していた。 また、モパニムシグッズは企画アドバイザーの野中が現 地入手した実物を手作業で加工した商品であった。食べ られないが実物であり、モパニムシという日本では知名 度が低い昆虫だという点が、購入者との会話から人気の 原因ではないかと伺えた。商品は展示期間終了間際には 欠品が相次ぎ、展示期間最後の週末にはほとんどの商品 が売り切れとなった。 6. 展示の反応   6-1. 期間中来館者数  期間中の入館者数は大人 12,427 名、中人 318 名、小 人 15,250 名の計 27,995 名であった。この数は昨年同 時期比 100.7%の微増である。本展は当館が通常開催す る生物学系のテーマとは趣を異にしており、また関西で はなじみが無く嫌悪されかねないテーマだったが、入館

(10)

者数が減少することはなかった。 12 月の月間入館者数 は 5,760 名であったが、12 月の入館者数が 5,000 名を 超えることは当館では稀であった。 6-2. 展示室アンケート集計結果  反応を知るため、会場内にアンケートを設置し任意に 記入していただいた。この結果は既に公表されている(坂 本 2014)が、改めて確認してみよう。調査期間は 2007 年 12 月 6 日から 2008 年 1 月 27 日で、アンケート回答 数は 270 である。集計結果は図 14 のとおりである。  全体的には 77%が満足である一方、不満も 13%あっ た。満足度の中で「学べたこと」の満足が「楽しめたこ と」のそれを上回ったことは、娯楽というより知的好奇 心を満足できたということであり、この結果は当館周辺 地域に昆虫食の習慣がないことに起因しているかもしれ ない。不満の回答に理由と思われる記述はほとんど見ら れなかったが、「気持ち悪い」、「雰囲気がダメ」、という 回答がみられた一方、不満という回答であっても自由記 述には「虫が食べられることを知った」という回答が複 数みられ、新たな情報を伝えることは出来ていたようで ある。また昆虫食経験は、回答者の 90%以上に習慣がな かったことが伺えた。「何があっても食べたくない」の 回答が 3 割近くに達することからも、昆虫食に対する嫌 悪感を持つ人も多く、それが展示に対する不満へとつな がった可能性も考えられる。一方、「食べたい」という 回答が事前調査(表 2)の 5%に対し 20%となったこと は、展示目的がある程度達成されたことを裏付けている。 自由記述では特定の展示が関心を呼ぶということではな く、様々な展示が来館者の関心を引きつけたことが伺え た。世界各地、各種の昆虫が食されていることや、日本 で日常的な距離感や自分の生活の中で昆虫を口にするこ とが起きているという事に関しても多くの方が関心を寄 せていたようだ。また、展示手法についても好意的な意 見が数多く寄せられた。  アンケート回答の属性について、本展の前年同時期に 開催し沖縄産生物をテーマにした企画展「おきなわ」(以 下沖縄展)でのアンケート集計結果(2013)と比較して 本展での傾向を探ってみよう。年代、市域、来館経験に 関しては、特に差は見られなかった。しかし性別は男性 がおきなわ展で 35%であったのに対し 48%と多い。来 館目的として本展を挙げたのは 16%だったが、沖縄展 では 3%であった。その結果と呼応するように、本展を 来館してはじめて知ったとする回答は 41%であったが、 沖縄展では 58%にのぼる。これは沖縄展の事前周知が不 十分だったわけではない。当館は生体展示に人気があり、 館全体を楽しむ目的でに来られる方がほとんどであるた め過去の他の展示でも似た傾向にあり、本展の結果は当 館でのこれまでの傾向を覆す結果だと言える。 6.3. 試食会の反応  期間中に3回開催した試食会においても参加者にアン 図 14 来館者アンケート集計結果 

(11)

表 6 試食会アンケート自由記述回答  項目 数 記述の例 味の評価や表現 75 ・苦いのもあったけどおいしかった ・イナゴの佃煮とケラの素揚げはパリパリして 美味しかった(など、具体的な味や食感の記述) ・味付けのおかげで抵抗無く食べれた ・冷凍焼けした肉やカビ臭い部屋の風味であま り美味しく感じなかった ・もっと素材の味を活かして ・地域ごとに味付けが反映されていて興味深 かった 既存印象の更新 29 ・内蔵の食感がもっと気になるかと思いマシタ が意外に大丈夫でした ・見た目はグロテスクだったが普通に食べられ た 自己の心情 17 ・つぶらな目を食べるのは少し罪悪感です ・何でも食べようと思えば食べられる。食料危 機も昆虫食で乗り切れるかも ・今後食べたいとはあまり思わない 関心の広がり 3・宇宙食にカイコをという話もあるが、臭いが何とかなれば,効率良いタンパク源としての感 触を得ました イベントの評価 3 ・おもしろい ケート調査を実施した。回答数は 124 である。ただし用 紙の不備から性別、年代、住所に関しては 64 の回答と なった。集計結果は図 15 の通りである。食べるのが「初 めて」、「少しある」、つまり日常的に食べていない人が あわせて 90%にのぼることは、事前調査の結果を反映し ていると言えよう。食した感想は「おいしい」が過半数 で、「まあまあ」を含めると 90%を超えた。味わった結 果、食べものとして認識できたとも考えることができそ うだ。属性は、展示アンケート結果とは異なり性別は男 性が約 6 割(展示は 5 割)と多く、年代は 18 歳以上が 全体の 67%に達した。参加者の地域は伊丹市とその近 隣市町村からがあわせて 6 割を超えた(展示は約 5 割)。 自由記述での回答をまとめたものが表 6 である。食した 昆虫の味についての記述が多く、なかでも各昆虫の味を 具体的に記した回答は 42 件みられた。複数の昆虫を試 食したことにより昆虫の種類によって味が異なること、 またその味付けも多様であることを感じてもらえたよう である。次いで多かったのが既存印象の更新とみられる 回答であるが、この回答には「不味い予想だったがそう ではなかった」と「外見が不快だが食べることができた」 の2つに大別できた。これらにより、昆虫を食材として 捉えてもらう機会に出来たと考えることができよう。 6-4. メディアからの反応  本展のマスメディアによる掲載数は、41 件(雑誌記 事 3、フリーペーパー 12、新聞 10、テレビ 6、ラジオ 6、 Web サイト 3、メールマガジン 1)となり、多数のメディ アに採りあげられた平成 15 年度企画展「むしのうんこ」 の 23 件をはるかに超えた。館からは市役所記者クラブ や掲載実績があるメディアにプレスリリースを出してい たが、それ以外からの取材もあった。 7. 過去の昆虫食展示との比較  本展は過去の展示と比べ新しい資料や情報を紹介する ことが出来ていたのだろうか。昆虫食を主題とした国内 初めての展覧会と考えられる、多摩動物公園で 1998 年 6 月9日から 11 月1日の日程で開催された「食用昆虫 展−食べられてきた昆虫たち−」(以下食用昆虫展)につ いて、その資料から内容や展示物を本展と比較し、本展 の特徴を考えたい。 7-1. 展示構成による比較  食用昆虫展は、当時のリーフレットによると以下のよ うな構成になっていた。また、展示配置は図 16 のとお りである。 人類の歩みと食用昆虫 −人類と食用昆虫の共生の歴史− 食用昆虫を科学する −食用昆虫の栄養学− 昆虫食の世界分布 −地域に根付いた昆虫食− 薬用昆虫コーナー −昆虫の薬用効果− 文献コーナー −文献に見る昆虫食− 民族料理と昆虫食 −目で見る昆虫料理− 未来へ向けて  この構成を前述した本展の構成と比較すると、本展で は扱っていないが食用昆虫展にあったコーナーは「人類 の歩みと食用昆虫」、と「文献コーナー」であり、本展に あるが食用昆虫展になかったと考えられるのは、「ハチ 未記入 4% 何回も食べている  6% 少しある 28% 初めて 62% Q. 虫を食べたのは、初めてですか? 未記入 5% まずい 2% まあまあ  32% おいしい 60% Q. 味はいかがでしたか? 図 15 試食会アンケート集計結果 

(12)

に恋して」で紹介した食慣行をめぐる自然に対する人々 の知恵や地域コミュニティの様子についての紹介と、「あ なたはもう、食べている」で紹介した光沢材としての昆 虫利用についてである。また、各コーナーの範囲は展示 配置図からは明らかではないが、展示面積に極端な差は ないようである。いっぽう本展は食用昆虫展での「民族 料理と昆虫食」に相当すると考える展示と「ハチに恋し て」の展示面積が多く、「薬用昆虫コーナー」や「食用 昆虫を科学する」、「未来へ向けて」に相当する展示面積 は少なくなっている。このことは、似た内容を扱ってい てもその重み付けが異なっていると考えられる。 7-2. 展示物による比較

 食用昆虫展の展示資料について記した資料が図

17 である。これを集計して、前述した本展の展示

点数を比較すると表 6 のようになる。

 両展示の展示点数が同数となったが、食用昆虫展の展 示物リストには文献コーナーで展示した文献が1点のみ しか掲載されておらず、本展の展示点数も前述した通り 標本の種数がはるかに多いはずであるため、この数は正 確とはいえない。しかし両者の展示規模にそれほど極端 な差がなかっただろうことが推測できる。展示点数の差 があるのは食用昆虫資料と標本数であり、本展は食用昆 表 6 展示物ごとの点数 食用昆虫展 企画展「昆虫食」 食用昆虫資料 17 49 薬用昆虫 9 8 生体 7 3 昆虫標本(液浸含む) 58 23 その他の資料 1 9 合計 92 92 虫資料を過去に比べ多数展示することが出来ていたと言 うことが出来よう。しかし、食用昆虫展は昆虫標本の多 さによってこれをカバーしていたと考えられる。  では、食用昆虫展と本展はどのように異なっていたの だろうか。食用昆虫展で取り上げられた各項目とそれら を均等に割り付けた構成からは、国内で初めて昆虫食を 扱った本格的な展覧会らしく、昆虫食という事象につ いて歴史的にも地理的にも広く網羅的に紹介した内容と なっていたようである。一方本展では各地域の昆虫食の 多様性や人間生活との関わりといった、ローカルな事象 から全体を見渡すような内容となっていた。 図 16 多摩動物公園「食用昆虫展」平面図(展示制作時の資料より) 

(13)

図 17 多摩動物公園「食用昆虫展」展示資料リスト (展示制作時の資料より。下段 2 つは多摩動物公園提供) 

(14)

8. おわりに  当館で開催した昆虫食展の報告と、過去の展示との比 較を行なった。本展の主題は立地する地域に馴染みがな い、自然科学の内容ではない、さらに展示に生体資料や いわゆる昆虫標本が少ない、といった点において当館の 過去の展示とは一線を画していた。しかし入館者数に遜 色がないばかりか好意的な反応が多く見られたことは、 類似の展覧会を昆虫館で実施する際の懸念を取り払うも のとなった。  また、本展では物を通して行為とその背後にある人と 環境の関わりを表現しようとした。展示制作の際に来館 者を第一に考えるのは当然だが、それに加え筆者らは昆 虫を食す地域の人々について理解するよう努めた。学芸 員と研究者の意見交換はもちろん、現地調査などを実施 した。それは地域への寄り添いや共同作業と言うには不 十分であったが、地域ごとの暮らしや習慣の違いを表現 する内容へとつながった。筆者らが来館者から直接聞い た本展の感想として「習慣がない人にとって、展示をみ るだけでも勇気がいる」、「自分の中の壁を乗り越えるこ とが起こる内容」という言葉があった。これは本展を嫌 う要因ともなりうる事だが、一方で価値観へのゆらぎを 引き起こす、刺激的な展示であったと考えることができ る。本展は自然を理解するひとつの切り口として企画を 始めたが、昆虫館だからといって自然科学系の側面のみ に囚われる必要はない。昆虫を通して人の暮らしや、自 分と他者との関わりを考える展示があってもよいだろ う。  一方昆虫食は、環境に人間が関わる行為であり、また 生物多様性国家戦略(環境省 2012)で謳われている生 態系サービスにも該当するという点において、自然を扱 う博物館で取り上げるにふさわしい主題だと言うことが できる。上記のように本展のように習慣がない地域では 異文化との接触という側面があるなど、昆虫食は様々な 切り口で扱うことが可能である。今後昆虫食を扱う多様 な展示が登場して人々に新たな視点が提供されるのを期 待しつつ、当館も環境と人との関わりかたのひとつとし て今後も向き合ってゆきたい。 謝辞  本稿をまとめるにあたり、多摩動物公園昆虫園係長の 藤井智子氏には食用昆虫展の資料提供などでたいへんお 世話になりました。また本展は、入館者の皆様、展示協 力者の方々、展示制作に携わった展示会社やデザイナー の方々、伊丹市昆虫館の職員らによって無事に開催し、 期間中の運営をつつがなく行い終了できました。ここに 記して感謝の意を表します。 参考文献

Bodenheimer,F.S. (1951) Insects as human food. Dr. W. Junk Publishers; The Hague, Netherlands. 三橋淳(1984)世界の食用昆虫 . 古今書院 野中健一(2007)虫食む人々のくらし . 日本放送出版協 会 橿原市昆虫館編(1995)橿原市昆虫館館報 3 伊丹市昆虫館編(2000)伊丹市昆虫館館報平成 5 年度 〜平成 11 年度 橿原市昆虫館(2000)橿原市昆虫館 館報第 5 号 財団法人広島市農林業振興センター広島市森林公園昆虫 館編(1999)広島市昆虫館報告3 伊丹市昆虫館編(2006)伊丹市昆虫館館報平成 15 年度 〜平成 17 年度 石川県ふれあい昆虫館(2005)平成 16 年度石川県ふれ あい昆虫館事業報告書 国立民族学博物館研究戦略センター (2008) 研究年報 2006, 国立民族学博物館 三宅恒方(1915)食用及藥用昆蟲ニ関スル調査 . 農事試 験場特別報告第 31 号 . 農商務省農事試験場 坂本昇 (2013) 博物館の調査収集活動を通して地域の自 然を伝える展示企画展「おきなわ〜ちょうちょのふる さと〜」開催報告 . 伊丹市昆虫館研究報告 1:33-43 坂本昇(2014)伊丹市昆虫館企画展「昆虫食〜ごはん やでぇ」嫌悪感を低減させる展示の試み . 展示学 51: 32-39 環境省(2012)生物多様性国家戦略 2012-2020

参照

関連したドキュメント

基本目標4 基本計画推 進 のための区政 運営.

適合 ・ 不適合 適 合:設置する 不適合:設置しない. 措置の方法:接続箱

[*]留意種(選定理由①~⑥は P.11 参照) [ ○ ]ランク外 [-]データ無し [・]非分布. 区部

出典:第40回 広域系統整備委員会 資料1 出典:第50回 広域系統整備委員会 資料1.

2 環境保全の見地からより遮音効果のあるアーチ形、もしくは高さのある遮音効果のある

[r]

表 2.1-1 に米国の NRC に承認された AOO,ATWS,安定性,LOCA に関する主な LTR を示す。No.1 から No.5 は AOO または ATWS に関する LTR を,No.6 から No.9 は安定性に 関する

第76条 地盤沈下の防止の対策が必要な地域として規則で定める地