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儲かる農業の実現
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1 活動のねらい
児湯地域の茶栽培面積は 450ha で県内の約3割を占める主要産地ですが、茶業界は 茶価の低迷など厳しい情勢が続いており、生産現場では意欲の低下がみられます。 この厳しい情勢の中で産地が生き残るためには、農家が自ら問題点に気づき、経営改
善に取り組むことが必要です。そのため、生産、経営両面の問題点を見つけ、解決する ために茶園ごとの収益性分析と課題解決活動に取り組みました。
2 活動の経過又は普及の関わり
平成 26 年度から4年間に渡り、以下の流れで進めてきました。 ⑴ 対象の選定
大型共同茶工場に加工を全面委託している 17 名の農家グループ(約 50ha)を対 象としました。
⑵ 現状分析(毎年実施 一番茶実績)
JAと連携して、単価と収量、単価と摘採時期、単価と合葉人数等の経営分析資料 を作成し、各農家の茶園ごとの収益性を見える化しました(図1、図2)。
そして、個別面談で農家個々の問題点を、全体検討会ではブレーンストーミング方 式で共同茶工場における全体的な問題点(運営体制等)を洗い出しました。
その結果、平成 27 年の単価の低下は合葉(複数茶園の生葉を混ぜて製造すること) 時の生葉品質のバラつきが原因で、平成 28、29 年の収量・単価の低下はカンザワハ ダニの被害が原因であることがわかりました(表1)。
⑶ 課題解決活動
明確化された2つの問題点の解決を重点課題とし、優先的に取り組むことを全体検 討会で決定しました。
① 合葉による品質低下防止(平成 27 年∼)
生葉品質のバラつきを低減させるために、役員を中心に新芽生育状況調査を実施 し、摘採日の判定および生葉品質の格付け結果を基に合葉組み合わせを決める体制
図1 収益性分析グラフ 図2 収益性分析グラフ (A氏の茶園成績)
表1 合葉による生葉のバラツキ度と単価 (平成 28 年、同一製造、同一品種)
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に改善しました。
② カンザワハダニの被害防止(平成 28 年∼)
本害虫の被害防止対策を講じるために、調査研究で以下の3点に取り組みました。 ・カンザワハダニ防除の実態調査(ノズル、農薬、散布量、散布時期の聞き取り) ・ノズルおよび散布量ごとの薬液付着度試験(感水紙使用 農試茶業支場と連携) ・薬剤感受性検定(5農家8薬剤で実施)
3 活動の成果
本活動により以下の成果とともに収益が向上して きました(表2)。
⑴ 茶園ごとの課題解決策が明確化
茶園ごとに収益性を見える化したことで、相場 展開に合わせた摘採製造、改植や茶園の整理計 画、経費投入の重点化、栽培技術の向上などとい った課題解決策が茶園ごとに立てられるようにな りました。
⑵ 合葉の組み合わせを改善したことで品質が向上
平成 27 年は生葉品質にバラつきのある多人数での合葉でしたが、平成 28、29 年 に生葉品質を揃えた少人数での組み合わせで合葉を実施した結果、外観の不揃いや水 色の濁りなどの欠点が改善し、品質および単価が向上しました。
⑶ カンザワハダニ防除の改善点が明確化
防除の実態調査と薬液付着度試験をした結果、主に使われている3連ノズルでは本 害虫の生息部位に薬液がほとんど付着せず、ダニ用ノズルでないと防除効果が期待で きないことがわかりました。
また、薬剤感受性検定では、基幹防除剤を含む5薬剤で感受性の低下が確認されま した。これらの結果から翌春以降のダニ防除を改善していく予定です。
4 今後の方向
洗い出した問題点を計画的に改善していくことで、単価の向上やコストの低減により 所得が向上し、経営安定、担い手確保に繋がっていくと考えています。
今後も、農家自らがしっかりと現状を分析し、経営を向上させていく「脱!てげてげ 経営」の集団になること、そしてこの取り組みが地域に波及し、課題解決力のある強い 産地に発展していくことを目標に普及活動を継続していきます。
5 対象集団又は対象農家の声
毎年自分の経営を見つめ、その原因を探す貴重な時間になっている。厳しい時代だか らこそ農家と関係機関が一丸となって生き残り策を模索しているわけで、昔はここまで の活動はなかった。必要に迫られて、ある意味良い時代になったと言えると思う。
表2 グループの成績推移(一番茶平均)