愛知工業大学研究報告 第 41号B平 成 18年
1.序論
微動アレー観測による岡崎平野の地盤構造探査
Ground structure inquiry of Okazaki plain by microtremor a町ayobservation
日比慎- t 正木和明tt
Shinichi HIBI and Kazuaki MASAKI
Ab自tract: The Okazaki Plain located in the Aichi Prefecture is one of the most
industrial町eas血 Japan.The area was damaged several times d田 tohistorical
eartb.quakes( 1707 Houei E., 1854 Ansei E. and 1945 Mi也kawaEa町rt也hqu且ke.
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,
it is very important to take earthquake msasterprevention measures in this area. In tms paper, geological structure in Okazaki Plain was surveyed by using microtremore array measurements at 10 sites. Dispersion curves were calculated by Spatial Auto-Correlation Meth.od(SPAC) and S-wav邑velocity
mstribution in soil rrom surlace to rock base were estimated by inversion method.
合wavestructures obta血edarray observat.ions were inspected by H N spectra of microtremors and earthquake data observed in the same site. Three mmensional structure of soil企omsurface to seismic basement in Okazaki Plain was obtained
comparing with boreb.ole data and structure model stumed by tb.e Aichi Prefecture Office.It was clarified that the basement is slanted to north司westdirection in the plain
and about 800m in depth at Kariya city. The 3-D model obtained in this paper w出be useful for estimating strong motions during the future earthquakes. らかにしている。 143
1
• 1
背景 人口が集中する我が国の都市部は、一般的に大規模な 平野や盆地等の堆積平野に位置していることから、都市 における地震防災対策を検討する上で、堆積平野におけ る地表から地下の地震基盤までの3次元的な地下構造調 査を行い強震動予測のための基礎資料を得ることは重要 である。 このような観点から大規模堆積平野の深部構造探査が 全国で開始された(科学技術庁、 H12)。愛知県では、 Hll ~H13 年度に濃尾平野、 H14~H16 年度に岡崎平野、豊橋 平野で地下構造探査が実施された(愛知県、 H17)。 地震動特性は深さ数 10mの地盤構造に強く支配され ているとの考えが一般的であったが、兵庫県南部地震以 降、岩盤に至る深い構造も強く関与しているとの指摘が 多く報告されている。例えば、釜江@入倉 (1997)は断 層によって形成された深さ約 1kmの堆積層が地震動の 重複を引き起こしたことが震度7の帯を形成した事を明T
愛知工業大学大学院建設システム工学専攻t
t
愛知工業大学工学部都市環境学科(豊田市) 地下構造探査の一手法として微動アレー探査法が有力 視され、近年多くの平野で実施されるようになった。山 中・山田 (2002)は関東平野、香川他 (1998)は大阪盆 地において探査を実施している。 1・2 関崎平野の地盤構造に関する錐来の研究 濃尾平野の深い地盤構造については多くの研究があり、 比較的詳細に明らかにされている。一方、岡崎平野につ いては深層ボ}リングが少ないこともあり、 H14~16 年 度の愛知県による地下構造調査が唯一の研究である。 この調査では図-1に示すように、反射法探査(3測線)、 微動アレー探査 (8地点)が実施されたが、詳細な3次 元地盤構造を明らかにするには至っていない。144 愛知工業大学研究報告9第41号B,平成18年,Vol.41-B,Mar, 2006 利 市 ぬ 勾 Z~. fO'
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131i'45 圏一1 既存資料の収集地点2)1
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本朝賓の目的 本研究では、愛知県の調査では十分に明らかにされて いない岡崎平野を対象地盤とする。調査方法としては、 多くの地域で採用されている微動アレー探査法を採用す る。観測地点は、地域防災センターによる地震計設置点 とこれを補間する計10地点とする。 10地点でのS波速 度構造を求め、岡崎平野の3次元地盤構造モデルを作成 する。また、微動および地震データを用いて、モデルの 検証を行う。 2. 研理方法 2イ フローチャート 図-2に本研究のフローチャ}トを示す。 │ ア レ ー 鯛│
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│ 龍 耕 輔 鑓 ││首長計時
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国一2 本研買のフローチャート 2.2 分散現象 微動の上下動成分はレイリ}波である可能性が高い。 図 3に示すように、表面波のひとつであるレイリー波は 低振動数の波は波長が地下深部にまで至るので伝播速度 (位相速度)が速い。逆に高振動数の波は遅い。すなわ ち、分散性(振動数により位相速度が異なる)を有し、 その関係は「分散曲線」と呼ばれる。 ︿ 闘 ¥ 闘 。 ) ﹀ 叫 舗 網 騨 割 轟轟霊堂f (封z
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圏一3分散現象の概念2.3
観調輯要 今回の観測に用いた観測機器とアレー形状を図-4に 示す。アレー形状は、半径の異なる2つの正三角形の頂 点と中心点の計7点を基本形として上下動地震計を設置 した(2重同心三角形アレー)。アレーサイズを表-1に示 す。 観測に使用した地震計は、振動技研(株)製速度計(固有 周期・ 7秒)、記録器は白山工業(株)製 DATA-MARK LS 800SHを7台で、各アレーについてサンプリング周波 数を100Bz で、観測時間を 60 分 ~90 分とした。観測日 時は 2005 年 10 月 1 日 ~10 日であり、時聞は基本的には 昼間とした。 表-1 アレーサイズ観測地点 OH06 OH07 OH08 OH09 Lアレ一半径
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m
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700 700Mアレ一半径
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700 700 700 Sアレ一半佳(
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175 175 175 観測地点 OH13 OH14 OH15 Lアレー半径(
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700 700 Mアレ一半笹(
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250微動アレー観測による岡崎平野の地盤構造探査 145 園-4 観測機器(左)とアレー形状(右) 2"4 観 麗 図-5に示す間崎平野の中心部から南西部にかけての 10地点において観測を行った。これらの地点には地域防 災センターによってETNA型地震計が設置されている。 今回、地震計設置点を選定した理由は、これらの地点 で得られた地震記録を用いて、地盤モデルの検証ができ ること、また得られた地盤モデルを用いて地震動特性の 解明にも役立つことである。 圏一5 観測地点 (OH-OS....OH-15) 2" 5 記録波形の鯛 得られた微動記録の一例として図-6にOH-07地点のS アレーの7地点における同時観測記録を示す。地震計は 数 10m離れているが、図中の円で、囲った部分に示される ように、波形には相関が見られる。 圏一6 OH-07地点における微動記録の一部
3
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解 折3
・1
解栃手法 表 面 波 の 位 相 速 度 を 求 め る 方 法 と し て 、S
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法 (Spatial auto-correlation Method (岡田他、 1996))5) を用いた。微動は、水平方向に伝わる平面波から構成さ れ、時間的、空間的にもスベクトルが一定であるという 仮定と、表面波(レイリー波)で構成されており、その中 の基本モ}ドが卓越しているという仮定から成り立って いる。表面波の位相速度は、周波数により具なる分散と いう性質をもっており、これは、アレ}を展開した場所 固有の値であり、アレ}直下の地下構造を反映している。:
3
.
2
遺缶的アルゴリズムを用いた盤解析 観測で得られた分散曲線から地下構造を求めるための 逆解析には、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた。これ は自然淘汰に基づく生物の進化過程を模擬した数理的な モデ、ノレで、あり、組み合わせ最適化問題の解法としての可 能性が検討されている。 反射法の結果やボーリングデータ 1)から初期モデルを 作成し、 G Aを行った。 G Aにおける検索範囲は、基本 的には初期モデ、ノレに対して堆積層ではS波速度士30%、 基盤ではS波速度士7%、層厚:t70%とした。4
解析結皐 図-7に観測地点の測線を示す。北から Aライン、 Bラ イン、 Cラインとした。図-8、9、10に得られた分散曲 線とS波速度構造を示す。図中の丸印は観測分散曲線を、 実線はGAより求められたS波速度構造を用いて計算され た理論分散曲線を示す。 一般に、分散曲線が低振動数側にある程堆積地盤が厚 く、基盤は深いと考えられる。 Aラインを見ると、 OH8 →9→7→6の順に分散曲線が低振動数側にずれている。 この事を反映し、得られた基盤深度もOH8→9→7の順に愛知工業大学研究報告,第41号 B,平成 18年,Vol. 41-B,Mar, 2006 146 会 OH10
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深く求まった。 OH6については、分散曲親の低振動数部 分が得られていないので、検討の余地がある。 Bライン の分散曲線はほぼ同じなので、同じような地盤構造が得 られた。また、 Cラインの分散曲線については、 14→15 →13の順に左に移っているので、得られた構造もこの順 に深くなった。 もー 10 ヰ Bラインの観測分散曲線(上)とS波速産構造 (下) 国-9 擾 動 数(H
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、、-' 08 圏一10 Cラインの観測分散曲線(上)とS波連産構造 (下) Aラインの観測分散曲線(上)と S波速度構造 (下) 国 8微動アレー観測による岡崎平野の地盤構造探査
5
圃 解 析 錨5
霊的韓寵5
-1
韓 寵 方 法 得られたS波速度構造の検証を試みた。検証材料とし ては、深層ボーリング等が考えられるが、図-1に示すよ うに本数が少なく、材料とはなり得ない。そこで、本研 究では、アレ}観測と同一地点でとれた地震動記録と、 微動記録を用いることにした。 1) 地震動については主要動部分を切り取り、H/V(水平 2成分合成/上下成分)スベクトルを求めた。用いた 地震は各地点 2~3 個である。 2) 微動記録については、 l点3成分観測を行い、その H/Vスベクトルを求めた。 3) アレー観測によって得られた地盤モデルからレイリ 一波のH/Vスベクトルを求めた。 地震動については主要動を用いたが、主要動の主成分 はS波であり、レイリー波ではない。しかし、主要動部 のH/Vスベクトルは微動のH/Vスベクトルとよく一致す ると言われているので、検証材料として用いることにし た。 5 -2 H/Vスペクトル 微動のスベクトルから直接地震動特性を求めようとす る研究が行われており、微動の水平動スベクトルの卓越 周波数が表層地盤の卓越周波数に対応するという研究が ある。その後、微動の水平動と上下動のスベクトル比が、 地盤の地震波増幅特性を近似的に表すという方法が提唱 された(中村, 1998)。この方法は、表層地盤では水平動 は増幅されるが上下動は増幅されにくいことから、地表 の微動のH/Vスベクトルは地盤の地震波増幅特性に類似 するとしており、単点3成分の微動観測から地震動増幅 特性の推定が可能になるという、非常に利便性の高い方 法である。 5 -3 韓言E輯 果 比較した結果を図一11 に示す。高振動数成分は浅い地 盤の局所的影響を受けているので、ここでは除外し、深 い構造を反映している約1Hz以下の第1次ピークに注目 して比較する。全地点においてピ}ク振動数はおおむね 理論値と観測値(地震動、微動)は一致している。この ことは、アレ}で求められたモデルがおおむね正しいこ とを検証していると言えよう。OHI0では大きなずれが見 られるが、これはもともとアレ}観測時の記録が悪く、 モデルに問題があると考えられる。 01-106 OQb'i l i'r酎1"噛 可 倒 的 0討081
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圏一11 理論値と観測櫨(地震、微動)の比較園 5-4 モデル部修正 比較的ずれの大きかったOH7、8、14地点についてモデ ルの修正を試みた。 GAの初期モデ、ルの層厚を変化させ、 147148 愛知工業大学研究報告,第41号 B,平成 18年,Vol. 41-B,Mar, 2006 検索範囲を狭くして、再解析をした。いくつかのモデル について最も観測H/Vスベクトノレに近いモデソレを最終モ デ、ルとした。 OH07は少しの改良しか見られなかったが、OH14につい てはかなりの改良が見られた。しかし、 OH08については よい最適モデルを見つけられなかった。これにより、決 定した地下構造を表一2に示す。 O H司7 A V 2・ 2 M 回 fr剖E磁 沼 町(lhJ 働114 j"l 。 電号孟 ~ ~ 1 =Z 岨a ,,' ul 刊 叫 ん 一 「 一 一 一 f(~ i Fr珂uency{t1z) 直r珂 " " ' " 国 的 圏一12 地盤モデルの変更前(左)と変更後(右) 6. 3次 元 モ デ ル 的 作 成 国一13 基盤面の深さ分布圏 表2 アレー観測より求められた地下構造
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7
.
1. 2. 3. 4. 5. 6. アレ}観測より求めた基盤面深度を愛知県が求めた基 盤面深度および、ボ}リングデ}タを用いて修正した結 果を図 13に示す。 図右下の岡崎平野および幡豆郡では基盤面が露頭して いる。基盤面は北方向に傾斜して深くなり、西尾市 200 m、安城市 500m、知立市 800mとなっている。安城市南 西部に 700mの凹みが見られるが、これはこの地点のボ ーリングデータで岩盤深度が 722mとなっているためで 日田 1口o 200 3∞ 400 500 600 7∞ 今回のアレー銀潔から求めた基盤深度 (m) 今回の結果と臨存データとの比較 棚 勢 制 脚 豊富 田110 盟会成存デー告{察モヂル) 営:~-リンゲデ-;開
望
溝 コロナ2号 層 露 国lOil 自HI4 800警
700 デ I 6∞ 告 泊、 ら 5口0 求 め日 4∞
基 盤 300 深 度 200 S守 、 100。
。
ある。 考 察 園、県による岡崎平野地盤構造探査は現在計画され ていない。アレーを用いた観測が唯一の手法と考え られる。今回は9地点で、のモデ、ルを求めたが、今後 観測地点を拡大し、より多くのデータを得ることが 望まれる。 モデ、ルの検証方法としては、地震動シミュレーショ ンを行い観測波形を説明できるかどうかをチェッ クする方法が最も有効である。今後はこの種の研究 が必要である。 8. L 2. 圏一14 図-14に今回得られた9地点の基盤深度と、既存の資 料に記載の基盤面深度との比較を示す。両者はおおむね 一致している。 OH09地点では今回求めた深度 343mに対 し、そのすぐ近くのボ}リング地点(コロナ2号)では 722mとなっている。ボーリングデ}タに疑いが持たれる が、本研究ではそのまま使用した。この結果が図-13の 凹みになっている。 図 13をもとにメッシュデータを作成し、 3次元的に基 盤面を表現した結果を図-15に示す。図では基盤面が露 頭する地域は Omとなっている。図は北方向より見た基 盤面であり、南東方向に基盤面が隆起している様子がう まく表現されている。 謝 辞 本研究を進めるにあたり、多くの方々の多大な協力を 頂きました。特に、(有)ジオアナリシス研究所凌廷群 氏には、アレー観測を手伝っていただき、大変お世話に なりました。そして、愛知工業大学工学部 正木和明教 授には多大なるご指導を賜りましたことを、心よりお礼 申し上げます。 参考文重量 1) 釜江克宏、入倉孝次郎:1995兵庫県南部地震の断層 モデルと震源近傍における地震動シミュレ}ション, 日本建築学会構造系論文集,第500号,pp29-36,1997 趨趨盤聾由理題盛鑑冨謹怒醤盤盟欝詣謹聾謹置車趨聾彊 圏一15 地震基盤面の 3次元モデル囲150 愛知工業大学研究報告,第41号B,平成18年,Vol. 41-B,Mar, 2006 2) 愛知県:三河地域堆積平野地下構造調査報告書,2001, 2002