• 検索結果がありません。

燧灘における微生物に関する生態学的研究-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "燧灘における微生物に関する生態学的研究-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

燵灘における微生物に関する生態学的研究

奥 谷 康 一一,末 次 正 明

燵灘東部水域の水産環境は極めて悪化しており,その主要因が沿岸に立地する工場からの廃液であることが明らか にされた仰町元来水域に導入された物質のうち有機物は主として微生物作廟に基ずく生物学的自浄作用によって 分解無機化され再生産経路へ入るが(4),基質有機物の過剰導入,自浄作用の阻書要因をどによって分解無機化にたず さわる微生物相にも変化が起るものと思われる. この研究吼燵灘東部水域における微生物の現存盈を明らかにしその生態学的断面と有機汚染との関連性を明らか にする目的で行なった 実験材料および方法 試料は1971年9月4日に採取されたものであり,その詳しいことについては既報にのべた(4) 細菌数の計測にはZoBEL12216E(5)の液体培地を用い,10倍稀釈法で接種を行なった・細菌数は大腸菌群の測定 に通常用いられている最確法(MPN法)により測定を行なった(6) 増殖の有無は培地のこん濁の有無から判定した 糖塀分解細菌数,ZoBEl>L2216Eの液体培地に試験する糖が05%およびBTBが含まれた培地を用い測定を行なっ た.糖分解の有無は培地中に酸が生成されるか否かにより判定した(6) ほ20 ほ60 1400 14埠○ ほ80E 500 Figl11Mapofthesamplingstations”

(2)

セルロ・−ス分解細菌数,KADOTAの方法に準じMPN法で測定を行なった(7) 硫酸塩還元細菌数卜既報(2)でのべたごとくにして測定を行をった 実験結果および考察 1.海水中における細菌の分布 表層水における各種生化学的作用を営む細菌群の分布をTablel∼2およびFig.2∼3に示す。既報(4)でのべたご とく,従属栄養細菌総数は沿岸水域に多く見出され沖合水域では少をい.通常沿岸水域は陸岸に対する従属性が大き いため流入水などの影響を受け易いことなどの理由によって水の性質が沖合水域とはかなり異をっている・それに≒ もなってこの部分の水塊においては従属栄養細菌総数および各種生化学作用を営む細菌群の分布が沖合水域とは異を ってくることが予想される.すなわちこのような生菌数の地理的変動は沿岸水域では従属栄養細菌のエネルギ・−源あ るいは栄養源となる有機物の供給が多いことなどの原因によって生じたものと考えられる Tablel.Numbcrsofsugardecomposingbacteriainthesurfacewaterofthe Hiuchi−Nada Sampling Sugarecomposers(cells/ml)

Station Glucose Glucosamine N−aCetylglucosamine

1.7×104 1.7×108 3…3×104 4..5×102 7い8×102 2∫.0×108 1−.4×104 1..7×104 9.5×10$ 4.9×104 4.5×102 4.5×102 6.8×102 1…4×104 1/7×104 1…1×108 3い3×104 冬巾5×102 7.8×102 20×108 1.4×104 1 4 ︻ヽ︶ 7 0 1 2 1 1 1 Table2.Therateof■sugardecomposingbacteriainthesurfacewaterofthe Hiuchi−Nada Sampling SugardecomposersxlOO/Totalheterotrophs StatlOn Glucose Glucosamine N−aCetylglucosamine

01 10 10 1 1 10 10 0.1 1 10 1 1 10 10 01 1 10 1 1 10 10 1 4 5 7 0 1 2 1 1 1 Tablelおよび2に示すようにグルコ・−・ス分解能を有するものは沖合水域(測点11および12)で従属栄養細菌総 数の1/10を占めているのに対して沿岸汚染水域(測点1)では1/1000を占めるに過ぎかへ それらの地点の中間に位 置する水域(測点4,7および10)では1/100を占めている.これらのことから,†測点5は例外として,有機汚染の強 い陸岸に近わ地点ほどグルコ・−ス分解能を有する細菌の占める割合が少ないことにをる:Tablelおよし甲2からグ}t/ コサミンおよびN一アセチルグルコサミン分解能を有するものについてもほほ同様の挙がいえる.他甲水域たとえば 沿岸養殖場として利用されているため汚濁が進行している白浜沿岸水域、(和歌山県)で同じ季節に行をわれた調査結 果では,これらの単糖分解能を有する細菌の占める割合は1/100∼1/1000でありこの場合も同じ水域内の数地点にお いては有機汚染度の強さがグルコー・ス分解能を有する細菌の占める割合に同じような影響をおよぼじていることが明 らかにされている(8〉

(3)

Figl2・Cc11ulosede七omposingbacteriaintheHiuchi−Nada”

(4)

セルロース分解細菌はFig」−2に示すように沿岸水域で多く沖合水域ではそれより少ないが海水100mJ中に108細胞 という偲は他の水域たとえば白浜沿岸水域と同じオ・−−ダーであり燵灘東部水域を特徴づけているパルプ排水に由来す るセルロ・−・ス層がこの細菌の現存盈に大き孜影響をおよほしているという傾向はみとめられなレゝ. 硫酸塩還元細菌の現存盈はFjg・3に示すように沿岸水域に多く沖合水域ではそれより少なくその傾向は有枚汚染 の強さにより影響を受け陸水の影響を強く受ける河口に近い測点1およびパルプ工場排水の流人付近である測点8に おいて特に多く見出されること軋 有機物に富む都市廃水を多く含んだ河川が遅ぷ看機物および工場排水に基ずく有 機物とこの細菌の栄養源との関係によるものと思われる 2.底土堆積物中における細菌の分布

Tablc3”Numbers ofsugar decomposlng bacteriain thc surface ofthc

bottom sedimcnt of thc Hiuchi−Nada,

Sampling

Sugardecomposers(cells/g)

Station G]ucose Glucosanline N−aCetylglucosamine

2 5 8 2 4.9×10ま 4.9×104 2.3×101 2.3〉く104 2 ×10a 2 ×108 4.う×10諸 45×108 4,.9×104 2..3 x 101 2 ×103 4い5×108

Table1Thc rate ofsugar decomposlng bacteriainthc surface ofthc

bottom sediment of the Hiuchi_Nada

Sampling

SugardecomposersxlOO/Totalhcterotrophs

StatlOn Glucosc Glucosamine N−aCetylglucosamine

2 5 8 2 1 0 1 0 1 0..1 1 0.1 1 0 1 0 海底堆積物表層における各種細菌群の分布はTable3∼4およびFig2∼3に示されるとおりである.その分布状態 には表層水で認められるような一億の傾向は見られないり 海底堆敬物表層における従属栄養細菌の種類組成は上にの べた海水の場合に得られた結果と異なり Table3および4に示されるとおりグルコー,ス分解能を有するものは 1/100′叫・1/1000であり海水で見出されるような1/10を占める地点は見られをい.この水域で1970年10月に行をわれた 調査結束ではグルコ・−ス分解能を有するものは10−100%を占め,有機栄養細菌総数に対するこの細菌の占める割合が 今回の結果とかなり相異していくことが認められる(2)い 今回の結果から,‘Table4に示されるようにグルコサミンお よびN−アセチルグルコサミン分解能を有するものの占める割合もグルコースの場合と同様であることがわかる.ま た同じ季節に行なわれた白浜沿岸水域の調査結果からグルコー・ス分解能を有するものの占める割合が1/10−1/100で あることが認められている.しかしこれらの結果からは上にのべた海水中で示されるようをその水域での汚濁の進行 と関連づけて考えられるようを傾向はみられない. セルロース分解細菌の分布をFigい2に示す小 測点8では100細胞のオ・−ダーであるが,他の地点ではいずれも温 泥1g中に102∼108細胞存在しており沿岸水域では沖合水域よりも多い傾向がみられる.同じ季節に行なわれた白浜 沿岸水域の調査結果および通常の水域で見出されるセルロー・ス分解細菌の現存盈は湿泥1g当り102細胞のオーダー であるから,鹿灘東部水域の沿岸底土堆積物中では通常の10倍であり先にのべたこの水域に多盈に導入されるセル ロい−ス暦との関連性に興味がもたれる. 硫酸塩還元細菌の現存丑をFigい3に示す.ほほ全域に亘って湿泥1g中105細胞程度存在している.この値は養殖 場夜どの汚濁が進行した水域でみられるレベルであり,燵灘東部水域では調査地点全域の底土堆療物表層における有 機汚染が非常に進んでいるものとみてよいであろうり

(5)

要 約 燵灘東部水域における海水および底土堆積物中の微生物現存盈とこの水域の有機汚染との関連性について調べ,次 に示す結果を得た.

1)海水中ではグルコー・ス,グルコサミンおよびN−アセチルグルコサミン分解能を萌する細菌の従属栄養細菌総

数に占める割合は,有機汚染の影響を受けて減少するが,底土堆硫物中ではこのような傾向は認められをい. 2)海水中ではセルロ・−ス分解細菌および硫酸塩還元細菌数共に陸水の影響から逮ぎかるにつれて減少するが底土 堆積物についてはこの様な傾向は認められをい. 3)この水域の底土堆墳物中には硫酸塩速元細菌が−・様に多く分布し,この面からも有機汚染がかなり進行してい ることがわかる. 謝 辞 本研究について有益な御助言を賜わりかつ試料の採取に御協力いただいた本学助教授,同市友利博士に厚く感謝い たします. をお,本研究の−・部は文部省科学研究費によった. 文 (1)岡市友利,越智 正,平野正子:燵灘東部海域 の有機汚染,香川大学農学部学術報告,23,104 −111(1971). (2)奥谷康一・,岡市友利:度数底土堆積物の化学的 性質,重金属最および微生物数について,香川 大学農学部学術報告,23,137−148(1971)、 (3)岡市友利:浅海の汚染と赤潮の発生,給食研究 (B)「水産生物を指標とする瀬戸内海汚染に関 する研究.研究集会資料,卜19(1972)い (4)奥谷康一・,岡市友利:燵灘における無機化活性 と細菌数,日本水産学会話,38,104ト1049 (1972). (5)LEAR,D小W…:Occurrenceandsigni五canceof 献

Chitinoclatic bacteIiain pelagic watersand

zoo−plankton,In5ympOSiumonm即inemicr・0− biology(C…H‖Oppenheimer,ed.),594−610, CharlesC.ThomasPublisher,U.S,A。(1963) (6)奥谷康一・,釆田秀雄:水圏におけるキチンおよ びN−アセチルグルコサミン分解細菌の分布, 香川大学農学部学術報告,23,127−136(1971)

(7)KADOTA,H.:A study on marine aerobic cellulose・Idecomposing bacteria,Mem。all

4gγけ,勒0わび乃去玖,74,ト128(1956) (8)釆田秀雄,奥谷康一・:沿岸水域における有機物

分解活性について,日本水産学会近放支部例会 講演,昭和46年7月

ECOLOGICAL STUDIES ON MICROORGANISMSIN THE HIUCHI−NADA

KoichiOKUTANIand MasaakiSuErrSUGU

Summary

The numbers ofbacteriain the sea water and the bottom sediment fiOm an eStuarine en−

vironmentintheeasternpartoftheHiuchi−Nada)SetoInlandSea〉WeredeterminedbyMost

Probable Number method from samples of several stations and the results were compared

Under the conditionsstudied,itwas concluded that;

1)BacterialdensitieswereroughlyrelatedtothedegreeOforganicpollutionintheseawater

but notin thebottomsediment

2)Thepercentageofsugar・decomposingabilityofthebacteriacontributingtOtOtalhetero−

trophsisreliableindicatorsofthedegreeoforganicpollutionintheseawaterbutnotinthe

bottom sediments

参照

関連したドキュメント

第1章 生物多様性とは 第2章 東京における生物多様性の現状と課題 第3章 東京の将来像 ( 案 ) 資料編第4章 将来像の実現に向けた

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

① 農林水産業:各種の農林水産統計から、新潟県と本市(2000 年は合併前のため 10 市町 村)の 168

品川駅及び目黒川変電所における工事の施工にあたっては、環境保全措置として「有害物質の有 無の確認と汚染土壌の適切な処理」、

第1章 生物多様性とは 第2章 東京における生物多様性の現状と課題 第3章 東京の将来像 ( 案 ) 資料編第4章 将来像の実現に向けた

第1章 生物多様性とは 第2章 東京における生物多様性の現状と課題 第3章 東京の将来像 ( 案 ) 資料編第4章 将来像の実現に向けた