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温州ミカンの果実の肥大と果実比重-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川大学農学部学術報告 第31巻 第2号105∼111,1980

温州ミカンの果実の肥大と果実比重

井 上 宏

BULK DENSITYIN RELATION TO THE FRUIT DEVELOPMENT OF SATSUMA MANDARIN

Hiroshi INoue

Itwascarriedouttoc】arifいherelationshipofi土uitdcvelopmentandlowerlngOfbulkden$1tylnSatSumamandarin,

Withspecialrefヒrencetopeel−pu鎧ng

lWith the advance ofmaturlty,the bulkdensityofthe丘uitgradualJy decreased,and thccavlty Oftissue of Centralaxisincreased」ThebulkdensltyOf1argesizedfhlitswassmaller thanthatofsmallones Inlarger fiuits,

itwasfbrmedbiggercavltyOfcentralaxisHowever,thefiuitswiththiぐkeIpeelshowedsmallbulkdenslty,andhad

Smailhollowcerllersascomparedtothefiuit5WiththirlnerPeel

2As the pu鮪ng progressed,the fiuits showedlowering ofbulk denslty and expanding of cavltyThepu恥

fkuitshadalargevolumeofair spaccsbetweenpeelandpulpThefiuifsproduccdbythetreeswith301eavesper

fmitshowedthesmallestbulkdensityandtbegreatestdegreeofpu庁ingThefiuitsonleaaessbearlngShootshowed

alargebulkdensltyandalittlepuffing

温州ミカンの果実肥大とくに果皮の発達と果実比重の関係を,果心の空隙と浮皮現象との関連において検討するた めに本実験を行った. 1果実が成熟に近づくと,果実比重は低下し,果心部の空隙が大きくなった大果は小果にくらべ,果実比重は 小さく,果心の空隙も大であった 原皮果で果実比重が小さかったが,果心の空隙は薄皮果で大であった. 2,浮皮程度が大となるほど,果実比重が低下し,果実内の空隙も大きくをった.薬果比30で最も果実比重は小さ く,浮皮程度も大であった.直花果は果実比重が大きく,浮皮果も少をかった 緒 口 温州ミカンの果実比重は成熟にむかって次第に低7するが,これは果肉組織の軟化に伴って生じる果心の裂開部の 拡大によるものとされている(4),さらに,果皮を構成するアルベド組織の細胞がアメ・−バ状に肥大して,細胞間の連 絡が次第にゆるくなり,やがて組織の崩壊を招いて浮皮果とをる場合も多い(4)浮皮果の指標として,果実比重が最 も適確である(8)とされる理由は,それが果皮とじょうのうの離生間隙の大小によって生じる密着程度の盈的表示と なる点からであるい しかし,果皮と果肉の間隙の盈のみをらず,むしろ場合によっては果心の空隙がより大きく果実 比重を左右することがある.ただし,果心の裂開が大きく,果実比重の小さい果実で,果皮と果肉間の隙間も大きく, 浮皮果を示す指標とをっているのかも知れない 本実験は,これらの点を確認するために行ったもので,果実肥大とくに果皮の発達と果実比重を中心に検討し,さ らに浮皮果発生の関係にも触れたものである. 実験材料および方法 本実験は香川大学農学部構内に栽植中のカラタチ台温州ミカン樹を供試して,1977年と1978年の両年に行った.と くに,1978年には浮皮果の多発をみたので,浮皮果との関連の調査を実施した

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香川大学虚学部学術報告 第31巻 第2号(1980) 106 1.果実肥大曲線と果実比重および空隙率の変化 1978年8月1日に葉果比20と40に摘果調整した大岩5号系温州ミカン16年生樹9樹・ずつを供試した 各樹の目通り の高さから結果枝に3−4枚の柴をもった5果ずつを8月から12月まで各月の1日に採取して,果実重,果実比重, 果実空隙率などの調査を行った 各時期の果実採取にあたっては,成熟期まで樹上において肥大曲線を測定した1樹 あたり20果の平均横径に近い浮皮の発生していない果実を選んだ 2.成熟実の形質と果実比重および空隙率 前述のように1977年にほ全般的に果実比重が大きく,浮皮果の発生も少をかったのに対し,翌年は浮皮果が多発し たので,両年にわたり大岩5ぢ系温州ミカン16年生樹の薬果比20(8月1日に摘果)の同一・樹の果実を12月1日にす べて収穫して果実の形質を調査し,以下の検討を行った. (i)健全果の大きさと果実比重 1977年に同一・樹から収穫した,ま・つたく浮皮の発生していない健全異について,果実の大きさ(出荷規格による横 径に従・つて類別)と果実形質の関係を果実比重を含め検討したさらに,それらの中から厚皮果(博さ3け3∼3.8mm)

および薄皮果(2‖8∼3.Omm)を選んで,果実比重,空隙率などを比較した

(ii)浮皮果の形質と果実比重 1978年,収穫果を浮皮でないもの(健全果,非浮皮果),浮皮軽症果,浮皮果および浮皮重症果の4階級に外観と 触感により分類した.最も浮皮果の発生の多かった1樹の収穫果のうち,結果枝着乗数3∼4のL級の果実から浮皮 程度別にそれぞれ10果を選び,果実の形質を比較した。 / 3小 葉果比,結果横着葉数と果実比重 大型コンクリ・−トポット(内径66cm,探さ 55cm)植えの杉山系温州ミカン8年生15樹を1978年8月1日に菓果 比10,20,30,40および50とをるよう摘果し,12月1日にすべての果実を収穫して果実の形質を比較した.さらに, これらを結果枝潜乗数別にまとめて比較した をお,浮皮程度は非浮皮果0,浮皮軽症果1,浮皮果2,浮皮重症果 3点と数値化したけ 以上のすべてにわたって調査した果実比重および空隙率の許出にあたっての果実,果皮または果肉の容街はそれぞ れを水中に保った時の重量をもってあてた;果実の空隙量は果実容酷から果皮および果肉の容墳を減じたものである. これらの空隙盈の果実容積に占める割合を果実空隙率として%で表示したなお,供試樹の菓分析値は12月1日に採 薬した無着果の春枝のものであるNはケールダ・−ル法,Pはモリブデン背を用いる光電管比色計法,Kは炎光光 度計法,CaおよびMgは原子吸光分光分析法によりそれぞれ走塁した小 結 果 1.果実肥大曲線と果実比重および空隙率の変化 葉菜比20および40の供試樹で調査した8月上旬より成熟期にいたる果実の肥大曲線と果実比重,果皮歩合および果 実空隙率の変化は第1図のとおりである。両区とも生育時期がすすむにしたがって果実重の増大をみたが,果実比重 は減少した果皮歩合は8月から減少を続けたが,11月から12月にかけてわずかに増加したい 空隙率は10月から次第 に増大した糞果比40区で20区よりわずかに肥大がすぐれ果皮歩合も高かったが,果実比重はほとんど変らなかった. 空隙率は12月の段階では20区で大となった 本調査では健全果を供試したので,空隙率は果心の空隙の大きさを示す.. 2.成熟果の形質と果実比重および空隙率の関係 (i)健全果の大きさと果実比重 同一・樹に着生し,浮皮の傾向を示さない成熟果の大きさ別の果実形質の比較は第1表のとおりである.大果ほど果 実比重は小さくをったが,果皮の厚さは大となり,果皮歩合も高くをった果心の空隙盈は大束にをるほど多くなっ

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井上 宏:温州ミカンの果実比重 107 20 % 7 6 4 2 0 8 9 10 11 12 a 1 1 1 1 1 日 第1図 果実肥大曲線と果実比重,果皮歩合,空隙率の変化 第1表 健全果の大きさ別果実比重および空隙率 果皮の 厚 さ 容 積 果実重 果実比重 芸仇ご 果皮歩合 空隙星 空隙率 径 縦 径 横 階級 果実数 CC % 14 5 7 48 138 8 72 92 7 53 49 5 09 20 2 64 mm mm CC g mm 2L 23 753 601 1938 1632 0842 41 27 7 L 53 692 549 1582 1356 0857 3 5 25 2 M lO8 638 496 1222 106.1 0 868 31 236 S 67 586 460 963 85。5 0。888 29 22 9 2S l1 52.4 430 759 687 0905 28 218 たが,空隙率でみるとL級果以上では増えなかった これらの果実のうちで,果皮の厚さが3‖4∼3.8mmの厚皮果と2」8∼3Ommの薄皮果を選び出し,畢実の大きさ 別に果実形質を比較すると,第2表のとおりである 2Sサイズでは原皮果ほなく,2Lサイズでは滞皮果はみられ なかった.

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香川大学農学部学術報告 第31巻 第2号(1980) 第2表 厚皮果,薄皮果の大きさ別果実比重および空隙率 108 厚皮,蒋皮別 階級 果実数 横 径 果実比重 果皮の厚さ 果皮歩合 空隙屋 空隙率 cc % mm % 1111】1 8 74 5 0845 3 6 23 694 0857 36 26 643 0863 35 8 602 0873 36 264 220 11 45 255 122 7 68 252 66 5 23 235 10 O 96 L L M S S 2 2 L L M S S 12 00 8 50 6 21 395 一5 5 p 1 8 0 5 3 1 1 一6 ﹂ ヮ﹂ J 3 3 3 2 2 2 2 2 一9 9 9 牒 2 2 2 2 一5 8 0 j 8 3 8 2 6 6 5 5 一8 28 20 5 O 865 O 876 O 883 0893 蒋皮果 同じ皮の厚さの果実の比較でも第1表と同じように,大乗ほど果皮歩合が高く,果実比重は小さくをった. 果心の 空隙整および空隙率は果実の大きさによって大きく変化し,大束で大となったい 同じサイズの果実では薄皮果で空隙 が大であったが,果実比重は高かった. 果心の空隙は明らかに果実比重を低下させるが,果皮の発達程度と果実比重の関係を,果実の大きさ別にみるため に,それぞれの相関係数を求めた(第3表)果皮の厚さと果皮歩合の関係ではいずれも正の高い相関が認められ, 果皮が厚いほど果皮歩合が高い傾向にあった果皮の厚さおよび果皮歩合と果実比重の関係は1例を除き,いずれも 負の高い相関があり,果皮が厚く,果皮歩合が高くなると果実比重が低下する傾向にあることが認められたこれら はとくに2Sサイズで顕著であった腰高果は一・般に果皮歩合が高いところから,果形指数と果実比重の関係をみた が,相関関係はみられなかった. 第3表 果皮の発達程度と果実比重の相関 果皮の厚さ 果皮の厚さ 果皮歩合と 果形指数と と果皮歩合 と果実比重 果実比重 果実比重 −0 559** O 201 −0 368** O 062 −0452= O 171 −0389** O 003 −0865= 0099 0659** −0547** 0750** −0186 0617** −0429** 0432= −0361** 0947** −0809** L L M S S 2 2 3 3 8 7 1 2 5 0 6 ﹁⊥ l (注)**1%水準で有意性あり. (ii)浮皮果の形質と果実比重 4段階に分けた浮皮程度別のL級の有薬果(3∼4枚若葉)の果実の形質の比較は第4表のとおりである.浮皮程 度が大となるほど果皮は厚く,果皮歩合が大とをり,果実比重は小さくなった.また,果面は粗く,着色も惑かった. 浮皮果は健全果(非浮皮果)にくらべ空隙畳はいちじるしく大となり,空隙率も高くなった. 第4表 浮皮果の形質 横径 縦径 各棟 果実重 果実比塵 靂皮冨 果皮歩合 空隙星 空碑 mm % cc 40 264 97 6 34 41 286 184 1105 42 29,3 198 1201 47 31.6 228 1240 mm CC g 538 1529 1281 0838 552 1665 1344 0 807 550 1648 1287 0781 581 183 9 1399 0 761 非浮皮果 693 浮皮軽症果 701 浮 皮 果 70,4 浮皮重症果 719

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井上 宏:温州ミカンの果実比重 109 3.葉果比,結果枝着葉数と果実比重 8月1日に摘果調整した菓果比10,20,30,40および50の8年生鉢植樹の収穫果の大きさと果実比重および浮皮程 度は第5表のとおりである小 薬果比が増すほど果実の肥大はよくをったが,果実比重は菓果比30で最も小さく,浮皮 程度も大であった 第5表 葉果比と果実比重および浮皮程度 菓果比 横 径 果実重 来実比重 果皮の厚さ 果皮歩合 浮皮程度 mm % 3 3 24 0 3 3 24 3 36 26 O 35 26 1 3 6 24 4 g llO0 O 876 1157 0 853 137 6 O 816 134 6 O 825 1472 0845 4 0 3 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 0 1 2 3 4 5 63 6 64 8 70 2 69 6 70 6 これらの果実を結果役者乗数別に・まとめたのが第6表である直花果はいずれの集束比の区でも果実比重は最大で, 浮皮程度は小さかった.結果枝若葉数3∼6枚で果実比重が小さく,浮皮程度が大となる傾向にあった 第6表 結果枝着葉数と果実比重および浮皮程度 結 果 枝 黄 葉 数 0 1−2 3∼4 5∼6 果実比重 O 890 浮皮程度 02 果実比賓 0ノ877 浮皮程度 04 果実比重 O 839 浮皮程度 11 果実比重 O 847 浮皮程度 07 果実比重 O 857 浮皮程度 07 0878 O 845 04 08 0 852 0 845 11 10 0 818 0 798 14 13 0817 O 829 0 9 16 0849 0 832 12 10 O 858 0 4 0 838 18 O 803 14 O 909 10 0 850 18 4.供試樹の栄養状態 以上の実験に供した樹の12月1日における尭分析イ直は第7表のとおりである.いずれも適正を成分含量値を示して おり,異常は認められなかった 第7表 莫内無機成分含盈(乾物%) N P K Ca Mg 16年生大岩5号系(;三言…芸 305 O 18 2 99 O 16 115 311 O 35 114 2 90 027 120 315 O 23 8 年生杉山系1978年 296 018 (注)全供試樹の平均値

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井上 宏:温州ミカンの果実比重 111 組織の成熟にともなう果心部の裂開による空隙の形成に原因するい 温州ミカンについての本調査でも,果心の空隙は 成熟期に近づいた10月上旬ごろからみられるようになり,大果ほど空隙率は大きかったさらに大果は一・般に小栗に くらべて果皮の厚さが大で,果皮歩合も高いので果実比重は小さくなる。これらの傾向はナツダイダイでも認められ ている(2). 筆者が本論文で用いた果実空隙率は果実容積に占める空隙量の割合で,空隙量は発心の空隙と果皮と果肉の間の空 隙を加えたものである。鳥潟ら(8)の論文中の空隙畳は本実験結果でもみられたように供試果実の大きさ,すなわち, 果実容積の大小に影響されるため空隙の盈的表示に適確性を欠くうらみがある‖ 果実空隙率はその欠点を補うもので, 果実の大きさによる変動を消去できると考える.筆者とまったく同じ考え方で空隙盈を表示した横尾らの報告(9)で は浮皮%という言葉をあでているが,浮皮発生の程度を示す言葉や浮皮果発生割合と混同されやすいので新しい言糞 を用いた 本実験結果からみても浮皮果は明らかに果実空隙率が高かったが,空隙率が高い果実が必ずしも浮皮現象を示すと は限らないこれは,果実容積に占める果心の空隙の大きさによるからである浮皮を示さをい果実で,果実の大き さによる空隙率をみたところ大果ほど高率となり,7∼8%におよんださらに,これらの果実から厚皮果と薄皮果を とり出して比較したところ,同じサイズの果実の比較では後者で果心の空隙が大となる傾向にあり,Lサイズの薄皮 果の空隙率は12%を示した倉岡(4)によると,果皮が犀ぐアルベド組織の発達した果実では成熟期に近づいて細胞 の伸長によりもたらされる組織の崩壊により果皮と果肉間の空隙の多い厚皮ブクとなり,薄皮の果実では崩壊するア ルベド組織が薄いため,果皮と果肉間の空隙が少ない薄皮ブクとなる.果実の大きさと果皮の厚さに果実比重が支配 されるので,浮皮果の指標としての果実比重の値の決定にはこの点の配慮が必要である.鳥潟ら(8)は浮皮果は果実 比重が普通085以下を示すとし,森ら(6)は087以7■で浮皮を示すとした本実験で軽い浮皮を示した果実の比重の 平均値は0807であり,標準誤差も士003であったが,084で浮皮を示す果実もあったいずれにしても,果実肥大 の憩い条件下では,果実比重が大きく,浮皮果も発生し難いようである. 引 用 文 献 (6)森 正義,池崎和博,松川−・夫:昭和33・34年度 果樹試験研究年報,238−239(1960) (7)田中諭−・郎:日本柑橘図譜,上巻,36,東京,養 賢堂(1946) (8)馬潟博高,増井正夫,鈴木 登:園芸学研究集録, 7,42−48(1955) (9)横尾宗敬,奥代直巳,小国照雄,岩佐俊吉.大崎 守:園芸試験場報砦,Dl,29−44(1963) (1979年10月22日 受理) (1)井上 宏:香川大学農学部紀要,23,1−59(1967) (2)井上 宏,山本裕昭,福田光男:香川大学農学部 学術報告,19(2),115−121(1968) (3)井上 宏,宮本省二∴園芸学会昭和37年度秋季大 会研究発表要旨,78−79(1970) (4)倉岡唯行:愛媛大学紀要第6部(農学),8(1), 106・・・・154(1962) (5)倉岡唯行,菊池卓郎:園芸学会雑誌,30(3), 189−196(1961)

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