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特集1 「映像の可能性 : 文化を記録するとは何か」にあたって

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Academic year: 2021

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特集1

「映像の可能性−−文化を記録するとは何か」

にあたって

Introduction to Special Issue 1: “Possibilities of Film as Recording

Medium: What Is ‘Videographing Culture’?”

山上亜紀 *

Aki Yamagami

今年度の特集では、昨年度「映像の可能性――文化を記録するとは何か」と題した連続講演 会でご講演頂いた 3 人の先生方に、講演の内容を基にして執筆していただいた原稿を収録してい ます。 センターでは、2009 年度よりアジア太平洋地域のドキュメンタリーを中心とした映画上映会 を実施し、昨年度はその延長線上として、文化を記録する媒体としての映像について考える連 続講演会を開催しました。2009 年度は、各映画の撮影地をフィールドとして研究する専門家を 招き、それぞれの地域の文化的、社会的背景を解説していただきましたが、昨年度はさらに踏 み込んで、映像制作に携わる先生方をお招きしました。これは、制作者側の映像に対する認識 や解釈、その思いなどを直接おうかがいする機会を設けたい、との意図からです。記録媒体と しての映像における可能性を見いだすべく、全 3 回の連続講演会では、国内外の映像を上映し、 それぞれ映像を制作された先生方に映像制作時のエピソードなどをお話いただくと共に、映像 制作の歴史的な変遷などについて解説していただきました。 第 1 回は、長年、世界各国の民俗映像を撮影されている、ヴィジュアル・フォークロア代表の 北村皆雄先生をお招きし、沖縄・久高島のイザイホーと呼ばれる神事に関する映像を含め、3 本 の映像を上映しました。第 2 回は、映像人類学の分野において近年活躍されている、信州大学准 教授の分藤大翼先生にお越し頂き、カメルーンのバカ(Baka)族を対象とした映像を 2 本上映 しました。最終回の第 3 回は、各国のドキュメンタリーや、NHK の番組制作に携わっていらっし ゃる、映像ディレクターの弘理子先生にご登壇頂き、築地市場に関わる人々とかれらの技能、 さらに築地市場が歩んできた歴史などについて解説して頂きました。 先生方の撮影された映像の内容やその背景、映像制作に対する信念、撮る側と撮られる側と の新たな関係性の構築などについては、各論文をご覧ください。ことばからこぼれ落ちる風景 や場面を掬い上げ、消え行く祭礼や儀式を、まるでその場に立ち会っているかのようにリアル に伝える映像の力に、私自身は計り知れない魅力を感じます。しかしそれと同時に、映像がそ れほどの伝達力を持つのは、制作者側の映像に対する確固とした信念があるからこそだと思う のです。講演してくださった先生方のような信念を持つためには、相応の経験と努力が必要で あり、それを乗り越えてこそ、映像に説得力が伴い、意味を成すのでしょう。私自身、自らの 1

Review of Asian and Pacific Studies No.36

* 成蹊大学アジア太平洋研究センター客員研究員、Visiting Researcher, Center for Asian and Pacific

(2)

研究方法やその表現方法を問い直す大変貴重な機会となりました。 それぞれの講演会では活発に意見が交わされ、参加者の方々の興味関心が広く深いことを実 感しましたが、その分十分な時間を割けなかったことが残念です。今回の特集が、少しでも多 くの方々にとって、講演会だけでは伝えきれなかった映像の深遠さに触れることのできる機会 になればと思います。 分藤先生の論文の中で紹介されている、バカ族の人々によるバカ族のための映像制作の実践 には、撮る側と撮られる側との新たな共生の姿が表現されており、映像が果たしうる役割の新 たな姿が期待されます。映像自体や映像制作の場を介することによって、学問や世界中の多様 な文化が、ことばを越えてより広く、多くの人々に共有されうることを願ってやみません。 講演会に来場してくださった参加者の方々もまた、様々な立場から映像の可能性を再考でき る連続講演会となったと思います。改めて、講演者の先生方ならびに参加者の方々にお礼を申 し上げるとともに、本特集が映像のさらなる発展へとつながる一助となるよう願います。 2

参照

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