• 検索結果がありません。

日本体育大学紀要 (Bull. of Nippon Sport Sci. Univ.), 45 (1),13 25,2015 後藤彰 1), 半田勝久 2), 大橋早津紀 3), 大山茂 3) 4), 齋藤雅英 1) 日本体育大学教職教育研究室 2) 日本体育大学教育学研究室 3) 日本体育大学学生

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本体育大学紀要 (Bull. of Nippon Sport Sci. Univ.), 45 (1),13 25,2015 後藤彰 1), 半田勝久 2), 大橋早津紀 3), 大山茂 3) 4), 齋藤雅英 1) 日本体育大学教職教育研究室 2) 日本体育大学教育学研究室 3) 日本体育大学学生"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Ⅰ.緒  言

1. 大学における教員採用候補者選考試験(以下,教 員採用試験)の位置づけ 近年,大学の教員養成には質の確保が求められてい る。保健体育関連の教員免許取得については,二種免 許や保健のみの取得を含めると 300 近くの大学で可能 となっており(文部科学省,2014),多くの免許取得者 を輩出することになるため,他の教科と同様に質の確 保が必要となっている。宮内(2013)は,保健体育科 教育法を受講する 58 名の大学生を対象に,高等学校学 習指導要領の保健体育編に関する調査を行ったところ,

【原著論文】

教員採用候補者選考試験対策講座が学生の態度変化に及ぼす影響

―ステップ式仮説検証型事例検討を参考にして―

後藤  彰

1)

,半田 勝久

2)

,大橋早津紀

3)

,大山  茂

3)

,齋藤 雅英

4) 1) 日本体育大学教職教育研究室 2) 日本体育大学教育学研究室 3) 日本体育大学学生支援センター 4) 日本体育大学教育心理学研究室

Influence of school teacher recruitment examination training courses

on the attitude change of university physical education students

—Using case work with hypothesis-testing process by step method—

Akira GOTO, Katsuhisa HANDA, Satsuki OHASHI, Shigeru OYAMA and Masahide SAITO

Abstract: Purpose: The purpose of this study was to clarify that influence of school teacher

recruit-ment examination training courses on the attitude change of university physical education students. And this study was conducted in case work with hypothesis-testing process by step method.

Method: Thirty-three third year university students participated in school teacher recruitment exami-nation training courses (male: 20, female: 13). The training was held for three days and two nights. Pre-survey was conducted after the opening ceremony on the first day, post-Pre-survey was conducted last day closing ceremony. The place of the training was the Youth Education National Olympics Memorial Youth Center. We checked whether the questionnaire was able to get a target action. The analysis depended on basic statistic, text analysis and t-test. The statistics processing “IBM SPSS Statistics” and text mining software, “KHCoder”.

Results: The survey, findings are as follows: (1) The training participant got very high satisfaction, (2) One of the target actions was the making of friend who learned together, and the participants answered that 85% got the target action, (3) Another target action was acquisition of the learning custom, and the participants answered that 48% got the target action. But the will of participation in lectures was signifi-cantly improved. In addition, the participants answered that 97% studied of school teacher recruitment examination approximately every day. The participants got high satisfaction by introducing the step method into the school teacher recruitment examination training courses. And it was revealed that participants could get a target action.

(Received: May 11, 2015 Accepted: September 7, 2015) Key words: school teacher recruitment examination, training courses, attitude change, case work with

hypothesis-testing process by step method

(2)

教科および単元の目標を必ずしも受講者が理解してい ないことを明らかにしている。そのため,大学の保健 体育の授業において明確な目標を示し,理解できる授 業を展開することの重要性を述べながら,学生の実践 的指導力育成について考察している。このことからも 質の確保は大学における喫緊の課題となっている。 一方,教員養成の質の確保の動きに関しては,いわ ゆる団塊世代の退職にともなう大量採用による倍率低 下があげられる。開沼(2010)は,教員採用試験が 1986 年の臨時教育審議会「教育改革第二次答申」の提 言を契機として,筆記試験重視から面接試験やボラン ティア等の経験を評価する人物評価重視にシフトして いると述べている。また,学力低下等の教育課題に対 応するためのなどの理由で,2009 年から導入された教 員免許更新制の失効制度は,教員免許を「とりたい」 だけの学生と,教員に「なりたい」学生とが「限りな く一致に近づくことを意味している」と述べている。 これらの経緯から,大学においては教員を養成するこ とと教員として採用されることとの溝を埋めるための 取り組みが必要となってきている。 布村・坂本(2014)は,教員養成において大学と教 育委員会との関係に変化がみられるようになってきた と述べている。その理由として「教師塾」と「大学推 薦制」の 2 つをあげている。教師塾については,実務 家重視等の点が教員免許更新制導入や教職大学院創設 と関連していることから,大学の教員養成に対して国 と教育委員会から変革を迫られているとしている。ま た,大学推薦制は教育委員会に協力的な大学かどうか で推薦枠が変わる可能性があり,加えて推薦がそのま ま採用へとは反映されないため,主導権が教育委員会 にある。これらのことから,大学側の推薦制への対策 が必ずしも効力を持たず,養成と対策の連結が持てな いと指摘している。そのため,大学は新たな教員養成 の仕組みづくりを求められているのが現状といえる。 2. 教員採用試験対策講座 大学や大学教員は教員採用対策として,試験問題の 分析(及川,2007)や試験問題から教員のあり方を検 討するもの(野口,2014)などさまざまなアプローチ を試みている。そのなかでも,多くの大学で所属する 学生や卒業生を対象として,採用試験対策勉強会など を企画しており,その動きは保健体育教員養成課程に おいても同様である(例えば,宮内・中田・三木, 2010)。開沼(2011)は,大学が対策講座を設ける理由 を成果主義と,養成と採用の溝を埋める役割の 2 点あ げている。成果主義はキャリア支援としての意義であ り,学生が教職に就くという目標を達成することで大 学の信用につながる。そのため,近年の高等教育機関 では重要な取り組みのひとつであるとしている。また, 養成と採用の溝を埋める役割について,教師塾の主導 権が教育委員会主導にあり,民間事業者は対策のみで 養成は取り扱わないことから,大学が主体となって養 成と対策の連結性を検討することが望まれているから であると述べている。これらのことから,多くの大学 が教員採用試験の対策講座を企画しているものと思わ れる。 また,谷川・井田・橋本(2013)はさまざまな講座 等の教員採用試験支援策を大学で実施し,一定の成果 をあげていることを報告している。さまざまな講座の なかのひとつに「秋季教採対策合宿研修」があり,こ の合宿研修を講座のなかでも特に重要な取り組みとし て位置づけている。さらに,三木(2014)は保健体育 科教員養成における学校現場研修の取り組みに関する 研究のなかで,保健体育科教員養成において宿泊をと もなう集中的な研修を行うことにより,「参加学生に共 通の目標や仲間意識を持たせ,採用試験に向けて連携 を強めていくことを期待している」と述べており,宿 泊研修が参加学生同士の情報交換を促進し,互いに刺 激し合う仲間づくりのきっかけになると,その効果に ついて解説している。以上のことから,大学で実施さ れている多くの教員採用対策講座のなかでも,特に合 宿・宿泊形式の研修会がもつ効果については,注目に 値するものであると考える。 3. ステップ式仮説検証型事例検討(以下,ステップ 式)について ステップ式は,日本老年行動科学会(2015)による もので,介護困難な高齢者への事例検討における反省 から生まれたものである。この反省の内容は,事例検 討のなかに行動科学の方法論が導入しきれていないこ と,理解と対応の方針に比べ介入支援が手薄であるこ と,そしてアセスメントの客観性が保たれていないこ とであった。そこで,事例検討において押さえるべき 方針として,エビデンス重視と仮説検証型であること, そして専門家による連携と協働(チームアプローチ) の 3 つが掲げられることになり,これがステップ式の 基礎となった。この方針を基礎として大川ら(2011) は,介護抵抗のある特別養護老人ホーム入所のレビー 小体型認知症高齢者に対し,ステップ式を用いて対応 を行った。具体的には,多職種連携・共同の専門家チー ムを構成し,行動科学的見地で利用者の行動を理解, 対応を検討して介入を行った。そして,介入の効果に ついて介入前後の比較を行った結果,ターゲットとな る行動の一部に有意な軽減がみられ,介入の効果が実 証的に示されたことを報告している。この結果は,介 入にあって多側面からのデータ収集と分析を行い,

(3)

ターゲット行動(介護抵抗と床に寝転がる)を選定す ることが重要であったことを示唆している。また田中 ら(2013)は,身体的な痛みの訴え,食事拒否,義歯 外し拒否のある介護老人保健施設入所の認知症女性高 齢者に対し,ステップ式を用いて対応を行った。その 結果,ターゲットとなる行動の生起頻度に軽減がみら れ,介入の効果が実証的に示されたことを報告してい る。ここでも,対象者に関する情報の収集・整理・分 析の大切さと,変容可能なターゲット行動の選定が介 入の効果を高めるポイントとなっていることが指摘さ れている。つまり,仮説に基づく対応の検討と仮説の 検証(仮説検証型)の取り組みが重要であることが示 された。 ステップ式の具体的な進め方を表 1 に示した。全部 で 6 つのステップを踏んで進めるように作られてい る。ステップ 1 の「現時点での事例の概要」は,対象 者の現時点での概要について時系列での変化を意識し ながらまとめ,その行動の特徴と行動に対する理解, 対応についてもまとめることを示している。ステップ 2 では,チーム構成と対象者の情報収集・整理・関連 する先行研究の確認,そしてこれら情報を分析するこ とを求めている。次の段階に入るとターゲット行動の 候補をあげ,チームで分析していくこととなり,さら に次の段階でターゲット行動を絞り込むという手順に なっている。ターゲット行動が決まると対応マニュア ルの作成とともに査定がおこなわれるステップ 5 とな り,最終ステップでデータ分析に基づく介入の妥当性 の検討と,必要に応じてその修正が行われるというの が一連の流れである。 4. 教員採用試験対策講座とステップ式との関連 大学における教員採用試験対策講座に,ステップ式 を用いるにあたって,その適用可能性や予想される効 果について検討を加えることが必要となろう。予想さ れる効果について,これまでの研究ではステップ式を 用いた場合のメリットとして,対象者,管理者,そし てサービス提供者の 3 者の立場から推察することがで きる(大川,2011;田中,2013)。まとめると,対象者 には適応行動の獲得や不適応行動の改善といったメ リットがあり,管理者にとっては優秀な人材の確保や 経営効率の向上が見込まれるとしている。そしてサー ビス提供者には,よりよい支援のためのスキルと能力 の獲得,多職種間の連携強化にともない組織の一体感 が醸成されると推察できる。すでに述べたように,事 例検討において押さえるべき方針には,エビデンス重 視と仮説検証型,そして専門家による連携と協働の 3 つが掲げられている。これらは,大学組織における教 員採用試験対策研修にも十分適用可能と考えられるこ とから,現在は介護領域で活用されているこの方法を, 他の領域で適用することが可能であるか検討すること は価値のあることと考える。 ステップ式を適用するために,まずこの分野の先行 研究をあたりこれまでの成果を確認し,チームで情報 の共有を図ることが必要である。川野・松村(2012) は,大学における教員採用試験対策で多くの取り組み を進め,春季特訓講座においてアンケート調査を行い 学生の実態把握につとめている。そのため,本研究に おいても先行研究の内容を参考にしてアンケート調査 を行い,学生のニーズや現状について実態を把握しな がら有効な支援を継続的に行う必要がある。また,教 員就職希望学生に対して面接指導やエントリーシート の添削等の支援を実施し,教員就職率で高い業績をあ げている大学がある(駿河・佐藤・松浦,2010)。ここ では教職支援室の設置がひとつの契機となっている。 この研究のなかで,2005 年度卒から 2009 年度卒まで 5 年間の教員採用試験受験生 331 名について,教員採 用試験の合否に関連する要因の相関を分析している。 その結果,教職への意欲を反映する項目が高いことが 重要であることを示している。このことから,教員採 用試験を受ける学生の意欲を高めるための指導が重要 であることがうかがえる。 また,溝部・石井・財津・斉藤・古谷(2011)は, 教員採用試験の合否に影響を及ぼす要因について分析 している。結果として,教員採用試験合格,特に二次 試験合格に向けて重要な戦略として,①教員免許取得 の意思決定を早めに行い,それに対する教職指導の専 門家等によるプランニングを行うこと,②教職教養の 学力と共にそれに対応した実践力の醸成,③講座への 表 1 ステップ式仮説検証型事例検討の進め方(日本老年行動科学会方式,2015)

(4)

積極的参加と,それを自主的に勉強し合うこと,④テ キストや新聞等の情報と採用試験内容との関連性の理 解,⑤教員採用試験過去問題に対してより積極的に取 り組むこと―を明らかにした。さらに自由記述の結 果から,学生のニーズや不安,心配事を調査し,教員 採用試験対策についてより手厚い対策を望んでいるこ とを示した。これらの結果から,教員採用試験対策に 関して大学側の課題として,指導組織の整備と学生の 勉強する仲間づくりのサポートの 2 点が示された。つ まり,「教職指導に特化した組織が,こういった仲間を 集めるためのフィールドを提供し,運営していくこと によって,採用試験合格に良い効果をもたらす」と結 論づけている。この 2 点の整備と支援がステップ式を 適用する際に必要な,チーム構成とターゲット行動に 関連することが推察される。さらに,川路・佐竹(2011) も,大学に新設された就職支援室のサポート事業が, 学生の教員採用試験受験動向,合否にどのように関連 したのかを検証した。結論として研修会・セミナーへ の参加率が高い学生と教員採用試験合格との間に相関 関係があることを統計的に証明した。なお,セミナー については全 7 回のうち第 1 回と第 7 回は 1 泊 2 日の 宿泊研修となっていた。

Ⅱ.目  的

以上のことから,本研究の目的は教員採用試験対策 講座におけるステップ式の適用可能性について検討す ることである。そして教員採用試験対策講座としては, 先行研究から重要な位置づけとなっている宿泊研修を 対象とすることとした。 具体的には,はじめにチームを構成し,ステップ式 の手順にしたがって現時点での対象者の情報を共有し 査定する。その後,チームで対象者について課題等を 検討し,ターゲット行動を決定し仮説を生成,アンケー ト項目を作成する。そして,宿泊研修での介入の後, アンケート調査の結果から仮説の検証を行い,ステッ プ式適用の有効性について検討を加えることとする。

Ⅲ.方  法

1. 対象者 平成 26 年度教員希望者向け春期宿泊研修に応募し た,A 大学 3 年生 33 名を対象とした。参加者の性別 は,男子 20 名,女子 13 名であった。 2. 研修期間とアンケートの実施日時 研修は 3 月 16 日から 3 月 18 日の 2 泊 3 日で行われ た。実施前アンケートは初日の開講式の後に実施し, 実施後アンケートは最終日の閉講式後に実施した。 3. 研修場所 研修は,国立オリンピック記念青少年総合センター の講義室(センター棟 3 ~ 5 階)で行った。 4. アンケート調査の進め方 参加者に対して事前に調査の内容や目的等について 説明し,調査を受けることを承諾した学生に対してイ ンフォームドコンセントをとりアンケートを実施し た。実施にあたっては,ひとつの場所に集まった際に 配布し記入を求め,その場で回収した(自記式の集合 調査法)。なお,アンケートについては日本体育大学倫 理審査委員会の承認を得ており(承認番号第 014-H88 号),実施にあたっては参加者の同意を得て行った。 5. 資料整理の方法 ターゲット行動を選定し,研修実施後アンケートの 当該項目について行動獲得状況を基本統計量ならびに 自由記述のテキスト分析により確認を試みた。また, ターゲット行動のうち研修実施前と実施後で比較可能 なものについては t 検定により比較を行った。その他 の生活習慣や学生のニーズに関する項目については, 今回は「研修の満足度」についてのみ分析の対象とし た。なお,統計処理は「IBM SPSS Statistics」ならびに テキストマイニングソフト・KHCoder(Ver. 2. beta. 30b)を使用した(樋口耕一,2014)。テキストマイニ ングの形態素解析を行ったうえで抽出された語の詳細 な計量的分析を行った。

Ⅳ.結  果

1. 教員採用試験宿泊研修へのステップ式導入準備 (1)チーム構成 はじめにチーム構成を行うため,宿泊研修を実施す るメンバー(教職系教員やスタッフ,職員)からリー ダーが選ばれ,リーダーを中心にチーム構成が行われ た。決定したチーム構成を図1に示した。指導する側の メンバーは,指導教員7名(教授・准教授),補助員2名 (助教・大学院生),事務局 2 名(学生支援センター) の合計 11 名であった。ステップ式にならい,チームは サービス提供機関と事例検討会運営組織とに大きく分 けられた。これは,多職種連携・共同による対応が行 われるために必要な編成である。少人数による編成の ため,1 人のメンバーが 1 部署に位置づけられている わけではなく,複数部署を兼ねることとなった。 (2)ステップ 1 ~ 3 ステップ 1 の現時点での事例の概要,ステップ 2 の 対象者の多面的情報の収集・整理と分析,ステップ 3 の対象者の行動のアセスメントについては,宿泊研修 参加希望エントリー学生が決定したのち,エントリー

(5)

シートをチームアプローチにより事例検討を行った。 検討する資料として,「学籍番号」「氏名」「性別」「所 属ゼミ」「これまでの講座参加状況」「受験希望校種・ 教科・自治体」「単位取得状況等」などであった。参加 者が希望する校種等・教科の概要は,小学校教諭 1 名, 中学校保健体育教諭 13 名,高等学校保健体育教諭 11 名,中・高保健体育教諭(未定含む)7 名,小学校 養護教諭 3 名,高等学校養護教諭 1 名であった。以上 の情報を共有し,対象者のアセスメントを行った。 (3)ステップ 4:ターゲット行動の選定と仮説生成 対象者の情報分析から,ターゲット行動の選定(絞 り込み)を行った。ステップ 1 ~ 3 までの経過とアセ スメント結果を受け,前述の溝部・石井・財津・斉藤・ 古谷(2011)の研究結果など参考にした。その結果, 宿泊研修におけるターゲット行動として,「共に学ぶ仲 間づくり」と「学習習慣の獲得」が選ばれた。この行 動の獲得のため宿泊研修の内容等が決定された。表 2 は研修のタイムスケジュールを,表 3 は研修内容等を 示したものである。研修のポイントとして,集団によ る作業やセッションを多く組み入れることで「共に学 ぶ仲間づくり」の獲得を目指した。そこで,参加者を 1 グループ 5 ~ 7 名の,6 つの学習グループ,8 つの生 図 1 ステップ式仮説検証型事例検討を参考にした多職種チーム構成(日本老年行動科学会,2015 を参考に作成) 表 2 タイムスケジュール

(6)

活グループに分けて集団で研修を行った。学習グルー プは共に課題に取り組み集団であり,生活グループは 食事等の日常生活活動を共にする集団である。 また,事前学習として面接票の作成を求めたり,指 導案を作成して持参したりするように指示した。これ により合宿中だけではなく,それ以前から学習に取り 組む姿勢を意識させることで,学習習慣を身につける きっかけづくりになると考えた。加えて,多様な課題 を準備することで,研修後も継続して学び続けなけれ ばならないという自覚が芽生えるようスケジュールを 組み立てた。学習施設と指導教員・スタッフの配置は 表 4 のとおりである。 以上のことをまとめると,今回は,①宿泊をともな うグループ学習活動により「共に学ぶ仲間づくり」が 表 3 研修の内容等 表 4 研修場所と学習環境

(7)

促進され,②事前課題と多様な学習課題により「学習 習慣の獲得」に向けた意識づくりができる,という 2 つ の仮説が立てられ,これを検証することが研修のねら いとなった。 (4)ステップ 5:研修の実施とアンケート調査 設定したターゲット行動にあるかどうかを測定でき る項目を設定した。また一方で,学生側のニーズや生 活状況を把握する必要があるため,今回は実態調査の 内容も含むこととした。 1)研修実施前アンケート調査 研修実施前のアンケートでは,①研修会で身につけ たい力,②これまで大学が開催した講座で参加したも の,③どのくらい勉強をしているか,④現在力を入れ たいこと,⑤今後,希望する講座,⑥ボランティア活 動,⑦アルバイト,⑧教員採用試験の対策や指導につ いての要望,⑨大学の成績,⑩教員採用試験で気にな ること,―を調査した(参考資料 1 参照)。これらの アンケートの作成については,前述の川野・松村(2012) の先行研究を参考にした。 2)研修実施後アンケート調査 研修実施後の調査では,①満足度,②その理由,③ 今後参加したい講座,④教員採用試験の対策や指導に ついての要望,⑤宿泊研修の成果,⑥今後どのくらい 勉強をするか,⑦宿泊研修で身についた力,⑧これか ら力を入れたいこと,⑨今後,希望する講座,⑩ボラ ンティア活動,⑪アルバイト,⑫教員採用試験で気に なること,―を調査した(参考資料 2 参照)。 2. アンケート調査の結果(ステップ 6:ターゲット 行動の理解・対応に関する仮説検証) (1)宿泊研修の満足度 研修終了後におこなったアンケート調査においてそ の満足度を「大変満足,満足,まあ満足,どちらとも いえない,やや不満,不満である,大変不満」の 7 件 法で調査した。その結果,「大変満足」が 27 名(82%), 「満足」が 6 名(18%)であった。その他の「まあ満 足」等については,0 名であった。 また,満足と関連する研修成果の自己認知について, 「よい,わりとよい,あまりよくない,よくない」の 4 件法で調査した。その結果,「よい」が 20 名(61%), 「わりとよい」が 13 名(39%)であり,「あまりよくな い,よくない」の回答は 0 名となった。 (2)ターゲット行動 1)「共に学ぶ仲間づくり」 宿泊研修で身についた力について,複数選択式で回 答を求めた。その結果を図示したのが図 2 である。そ の結果,研修内容のメインにもあった面接に関する項 目とともに「共に学ぶ仲間づくり」の項目が 33 名中 28 名(85%)で獲得できたとの認識が得られた。 次に,上記の満足度を決定した理由について自由記 述式で回答を求め,記述内容を検討するため,テキス トマイニングによる分析を試みた。その結果,学生 33 名の内省において抽出された 150 語のうち,5 回以上 抽出された語は 150 語中 7 語で全体の 4.67%であった。 この頻出語で 5 回以上抽出された語は,自分(10 回), 図 2 宿泊研修で身についた力(複数回答)

(8)

勉強(10 回),仲間(8 回),面接(8 回),良い(7 回), 先生(6 回),得る(5 回)であった。次に,全体的傾 向を把握するため,共起ネットワークの検討を行った。 共起ネットワークの分析に関して,適用の条件につい ては吉見・樋口(2012)にならい Jaccard 係数 0.1 以上 の共起関係とし,分析を行った。Jaccard 係数は「類似 性の指標であり,単語間の共起関係を表すものとして 広く使用されている.Jaccard 係数は単語 X と単語 Y において,|X∩Y|/|X∪Y| の式によって求められる。50 語以上の単語におけるJaccard係数0.1以上の共起関係 では,2 つの単語が 1,000 件中 10 件は同時に出現する という関係にある」こととなる。分析の結果,23 の語 の固まりが抽出された(表示共起関係 60,Jaccard 係 数 0.1 以上)。図 3 に示した共起ネットワークでは「で きる」「する」という大きく示された語の円のまわり に,「勉強」「面接」「仲間」という語の円が線をむすん で示された。この結果から,ターゲット行動の獲得が 一定の満足度につながっていることが推察される。 さらに,記述データ内での頻出語の用いられ方をみ るコンコーダンス分析を行い,語と語のまとまりを抽 出し,コーディングルールを作成した。コンコーダン スとは,文書で使用されている語の共起関係について, 文章内のすべての語をアルファベット順にならべて, その語があらわれる文脈との関係を分析する手法であ る。そのため,コンコーダンス分析では語の特徴理解 や文書の構造,内容を分析することを目的としている (樋口,2004)。表 5 はコーディングルールとその結果 を示したものである。この結果からも,プラス,充実, 成長といった満足感を示す重要語の頻度とともに,学 習やその内容,仲間に関する語を表記していることが 明らかとなった。 図 3 宿泊研修に対する満足理由における自由記述の頻出語による共起ネットワーク 表 5 重要語のコーディングとその頻出度

(9)

2)「学習習慣の獲得」 宿泊研修で身についた力について図示した前掲の図 2 をみると,「教員採用に向けて継続的に学習する力」 の項目は 33 名中 16 名(48%)であった。 次に,学習意欲を示すと思われる,「今後,どの分 野・領域に重点を置いた指導や講座を希望しますか(複 数回答)」の質問項目について,研修前後で選択した個 数の違いについて比較するため,平均と標準偏差を算 出した。研修前が 3.48(SD1.73)であり,研修後は 4.70 (SD1.85)であった。対応のある平均値の比較を行っ たところ,図4のとおり有意差が認められた(t(32)=3.81 (p<.01))。その結果,研修後は研修前に比べて講座希 望の個数が増加したことが示された。 続いて研修前の学習頻度と,今後どの程度の割合で 学習するかについて聞いた。その結果,研修前は「毎 日している」12 名(36%),「わりにしている」14 名 (42%),「あまりしていない」7 名(21%),「していな い」0 名であった。そして研修後では「毎日する(週 6 日 2 名を含む)」32 名(97%),「一日おき」1 名(3%), 「週一回」0 名,「あまりしない」0 であった。

Ⅴ.考  察

1. アンケート調査の結果からみた研修の満足度と ターゲット行動の獲得状況 (1)宿泊研修の満足度について 研修終了後におこなったアンケート調査の結果か ら,「大変満足,満足」が 100%という結果であったこ とから,受講生のニーズにあった研修内容を提供でき たと考える。また,それは研修成果の自己認知である 「よい,わりとよい」が 100%であったことからも明ら かである。ステップ式では,チーム構成や現時点での 参加者のアセスメント,その結果に基づく研修内容の 構築を行っている。このことが参加者の満足度を向上 させた一因であったものと推察される。 (2)ターゲット行動の獲得について 研修で学生が獲得することを目標といていたター ゲット行動に関して,「共に学ぶ仲間づくり」について は,85%の参加者から獲得できたのと認識が得られた。 また,「学習習慣の獲得」については,継続的に学習す る力の獲得が 48%にとどまったが,学習意欲を示すと 思われる,講座等への参加意欲の変化は,研修前後で 大きく向上したことが示された。そして,学習頻度に 関しても研修後ほぼ毎日教員採用試験の学習をすると 回答したものが 97%であったことから,「一日おき」 1 名(3%),「週一回」0 名,「あまりしない」0 であっ た。これらの結果から,宿泊研修に関しては設定した ターゲット行動の獲得については,一定の成果が得ら れたものと思われる。このことは,テキスト分析から も支持された。 共起ネットワークは,出現パターンが似ている語を 視覚的に示したもので,共起の程度が強い語を線でむ すんでいる。共起ネットワークでは,出現数の多い語 ほど大きな円で示されている。そして,示された位置 ではなく線でむすばれているかどうかが意味を有し, 線の太さが関係の強さを示している。この結果から「で きる」という語と「勉強」「仲間」という語に結びつき があることがみられた。このことは,コーディングに よる分析結果とも一致していることから,共に学ぶ仲 間づくりがなされ,このことが研修の満足度とも関連 していることが示唆された。 谷川・井田・橋本(2013)は,教員採用試験支援策 である「合宿研修」における成果について,卒業生と 在学生との協力関係をあげている。また,原田・相澤 (2012)は採用試験に関しては「少しでも早く共通の 目標を持つ学生を組織化し,動機付けを行い,学生同 士が支え合い,切磋琢磨する人間関係を築きながら準 備を進める」と述べており,「個人レベルで継続的な 学習を続けることは難しく,採用試験に合格する学生 を育てる上では,学生の組織化は極めて重要な課題で ある」としている。このことから,同じ目標を有する 学生同士の仲間意識を高めながら,切磋琢磨する人間 関係づくりができたことによって,これから互いに支 え合いながら継続的に学習を行っていく基礎づくりが 研修によって構築されたのではないかと考える。つま り,現在は 48%にとどまっている継続的に学習する力 は,共に学ぶ仲間の影響で向上する可能性があると推 察される。 さらに,駿河・佐藤・松浦(2010)は,教員採用試 験の合格と実習時間との間に相関関係があると述べて 図 4 研修会前後における希望する講座数の平均

(10)

いる。これは「教職への志向性の強さが教育実習時間 数と教採試験の合否に影響を及ぼしている」と考えら れるためである。このことから,今後継続的に参加者 を支援しながら,教員採用試験の合否に及ぼす要因に ついて調査していくことが必要となった。

Ⅵ.結  論

本研究の目的は,教員採用試験対策講座におけるス テップ式の適用可能性について検討することであっ た。その結果を以下にまとめる。 1.宿泊研修に参加した結果,非常に高い満足度が得 られた。 2.ターゲット行動の一つである「共に学ぶ仲間づく り」については,85%の参加者が獲得できたと回 答した。 3.もう一つのターゲット行動である「学習習慣の獲 得」については,48%の獲得状況であった。しか しながら,講座等への参加意欲は有意に向上し, ほぼ毎日教員採用試験の学習をすると回答したも のが 97%となった。 以上のことから,教員採用試験対策講座にステップ 式を導入することで,参加者が高い満足度を得ること とターゲット行動を獲得できることが明らかとなった。

引用参考文献

1) 布村育子・坂本建一郎(2010)教員「採用」研究に おける分析視角の変化,埼玉学園大学紀要第 10 号, 153–163. 2) 川路澄人・佐竹易子(2011)学生の教員採用試験受 験動向とその支援について―就職支援室におけるサ ポート事業を中心に―,島根大学教育学部紀要第 45 巻,1–8. 3) 溝部ちづ子・石井眞治・財津伸子・斉藤正信・古谷 嘉一郎(2011)教員採用試験の合否に影響を及ぼす 諸要因に関する研究,比治山大学現代文化学部紀要, 第 18 号,91–100. 4) 駿河克宏・佐藤史人・松浦善満(2011)和歌山大学 教職・キャリア支援室の活動状況と教員採用試験の 合否状況について,和歌山大学教育学部教育実践総 合センター紀要 20,23–29. 5) 野口剛(2014)教員採用試験問題にみる社会科教員 の専門性について―2012 年公立中学校の場合を事例 として―,帝京大学教育学部紀要第 2 巻,157–169. 6) 宮内一三(2013)学習指導要領に関する調査―高等 学校学習指導要領 保健体育編に関して―,大阪大谷 大学教職教育センター紀要第 4 号,2–12. 7) 三木伸吾(2013)保健体育科教育における小・中学 校連携の在り方に関する研究,大阪大谷大学教職教 育センター紀要第 4 号,13–25. 8) 三木伸吾(2014)保健体育科教員養成における学校 現場研修の取り組み,大阪大谷大学教職教育セン ター紀要第 5 号,8–20. 9) 及川賢(2007)教員採用試験問題(英語科)の傾向 分析―埼玉県・さいたま市の場合―,埼玉大学紀要 第 56 巻第 1 号,281–289. 10) 谷川尚己・井田仁美・橋本源之助(2013)実践的指 導力のある教員をより多く輩出するために―一元 的・体系的な教員採用試験支援策の実践について―, びわこ成蹊スポーツ大学研究紀要第 10 号,137–144. 11) 原田亮・相澤亮太郎(2012)甲南女子大学における 小学校教員採用試験対策の取り組み,甲南女子大学 研究紀要第 49 号,人間科学編,75–83. 12) 川野司・松村千鶴(2012)小学校教員採用試験対策 春季特訓講座に関するアンケート調査,九州女子大 学紀要第 49 巻 1 号,37–53. 13) 開沼太郎(2011)教員の資質能力形成における「養 成」段階と「採用」段階の連結性―「とりたい」と 「なりたい」の相違に着目して―,大阪大谷大学教職 教育センター紀要第 2 号,13–28. 14) 開沼太郎(2010)教員の資質向上政策のあり方に関 する考察―「採用」段階における「対策」機能に着 目して―,大阪大谷大学教職教育センター紀要第 1 号,12–27. 15) 宮内一三・中田保彦・三木伸吾(2013)保健体育教 員養成課程に関する課題と展望,大阪大谷大学教職 教育センター紀要第 4 号,37–40. 16) 田中真理・大川一郎・滝澤秀児・花澤美枝子・安斎 龍二・村上健太郎・鶴岡美由紀・山田樹・碧井猛・ 山下剛司・乾真由美・玉井智・榎本尚子・宮裕昭・ Lin Shuzhen・佐藤眞一(2013)認知症高齢者の痛み の訴え,食事拒否,義歯外し拒否への対応に関する 実証的検討―多職種連携・共同による仮説検証型事 例検討の試み―,高齢者のケアと行動科学第 18 巻, 2–31. 17) 大川一郎・田中真理・佃志津子・大島由之・Lin Shuzhen・成本迅・本田憲康・河田圭司・田邉真弓・ 新見令子・鈴木信恵・宮裕昭・山本哲也・佐藤眞一 (2011)レビー小体型認知症高齢者の介護抵抗への対 応に関する実証的検討,高齢者のケアと行動科学,第 16 巻,64–81. 18) 渡邊恵里奈・野田耕・末松大喜(2012)保健体育教 員養成課程における模擬授業の特徴,九州共立大学 研究紀要第 3 巻第 1 号,95–100. 19) 生駒忍(2015)教員採用試験教育心理分野における 記憶に関する出題の動向,共栄大学研究論集第 13 号, 263–273. 20) 小川潔・武藤幹夫・小林清太郎(2015)教職志望学 生の指導のあり方(7)―教職相談室の利用の実態か ら―,岡山大学教師教育開発センター紀要第 5 巻, 121–128. 21) 仲矢明孝・三島知剛・髙旗浩志・稲田修一・後藤大 輔(2015)3 年次教育実習に関する学生の意識の検討 ―平成 25 年度受講生アンケートの結果から―,岡山 大学教師教育開発センター紀要第 5 巻,26–34. 22) 萩生田伸子(2015)テキスト・マイニングによる教 員採用試験問題の分析 3,埼玉大学紀要第 64 巻第 1 号,85–92. 23) 布村育子(2014)教員採用における教育委員会の役 割―ヒアリング調査の結果から―,埼玉学園大学紀 要第 14 巻,29–38. 24) 小川潔・武藤幹夫・小林清太郎(2014)教職志望学

(11)

生の指導のあり方(6)―教職相談室の利用の実態か ら―,岡山大学教師教育開発センター紀要第 4 巻, 107–116. 25) 日野純一(2014)教員採用選考試験の現状と課題,京 都産業大学教職研究紀要第 9 巻,1–16. 26) 村上幸人・長岡美沙・山本幸市・長澤郁夫・藤田耕 一・大谷修司(2013)基礎体験領域取組時間数と教 員採用試験等就職実績の関連傾向について,島根大 学教育臨床総合研究 12,17–28. 27) 文部科学省 HP:中学校・高等学校教員(保健体育・ 保健)の教員の免許資格を取得することができる大 学,平成 26 年 4 月 1 日現在の教員免許状を取得でき る大学http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/ daigaku/detail/1287060.htm(2015 年 5 月 8 日) 28) 藤原正光(2004)教職志望動機と高校・大学生活― 教員採用試験合格者の場合―,文教大学教育学部紀 要第 38 集,75–81. 29) 堀内孜・水本徳明(1986)教員採用に関する受験学 生の意識と取り組み実態 ―本学学生に対する質問紙 調査の結果分析を通して―,京都教育大学紀要.A, 人文・社会,No. 69, 11–35. 30) 樋口耕一(2014)社会調査のための計量テキスト分 析―内容分析の継承と発展を目指して―,ナカニシ ヤ出版. 31) 吉見憲二・樋口清秀(2012)共起ネットワーク分析 を用いた訳あり市場の考察―「カニ」と「ミカン」の ユーザーレビューを題材として―,GITS/GITI 紀要, 31–39. 〈連絡先〉 著者名:後藤 彰 住 所:東京都世田谷区深沢 7–1–1 所 属:日本体育大学教職教育研究室 E-mail アドレス:[email protected]

(12)
(13)

参照

関連したドキュメント

[r]

それぞれの絵についてたずねる。手伝ってやったり,時には手伝わないでも,&#34;子どもが正

 大正期の詩壇の一つの特色は,民衆詩派の活 躍にあった。福田正夫・白鳥省吾らの民衆詩派

[r]

雑誌名 金沢大学日本史学研究室紀要: Bulletin of the Department of Japanese History Faculty of Letters Kanazawa University.

記述内容は,日付,練習時間,練習内容,来 訪者,紅白戦結果,部員の状況,話し合いの内

バックスイングの小さい ことはミートの不安がある からで初心者の時には小さ い。その構えもスマッシュ

本稿筆頭著者の市川が前年度に引き続き JATIS2014-15の担当教員となったのは、前年度日本