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抗菌薬含有アパタイトセメント/α-リン酸三カルシウム硬化体の臨床応用に関する基礎的研究

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Academic year: 2021

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第 8 号様式 論 文 審 査 の 要 旨 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 歯 学 ) 氏名 佐々木 和起 学位授与の要件 学位規則第4条第○1・2項該当 論 文 題 目 抗菌薬含有アパタイトセメント/α-リン酸三カルシウム硬化体の臨床応用に関する基礎的 研究 論文審査担当者 主 査 教授 加藤 功一 印 審査委員 教授 津賀 一弘 審査委員 教授 杉山 勝 〔論文審査の要旨〕 【目的】口腔外科領域において顎骨骨髄炎は難治性疾患の一つである。本疾患の治療にお ける問題点は,抗菌薬の全身投与のみでは,病巣切除後の顎骨周囲に十分な量の抗菌薬を 移行させることが困難であること,また治療後の骨欠損における骨組織の再生がしばしば 困難であることがあげられる。アパタイトセメントは,TTCP(Ca4(PO4)2O)と DCPA

(CaHPO4)から成る混合物で,水との練和により硬化し,ハイドロキシアパタイトへ変換

するため,骨補填材として臨床応用されている。一方α-リン酸三カルシウム(以下 α-TCP と略記)は骨置換速度が速く,骨伝導能に優れているという利点を持つ。申請者はアパタイ トセメントにα-TCP を含有すること,さらに抗菌薬の drug delivery system (DDS)を付与 することで,顎骨骨髄炎治療後の骨欠損部の補填材として臨床応用ができないかと考え, 本研究の着想に至った。そこで今回申請者は,新生骨の形成および長期間にわたる抗菌薬 の徐放を期待して,抗菌薬とα-TCP を含有したアパタイトセメントを作製し,その基本物 性および骨形成能について検討した。 【材料と方法】セメント粉末は,アパタイトセメントにα-TCP を重量比 1:0,10:3,5:3 にてそれぞれ混和したものを使用し,さらに抗菌薬としてゲンタマイシン(以下 GM と略 記)を添加した。セメント粉末の練和液には,0.2M 中性リン酸水素ナトリウム水溶液(pH 7.4)を用いた。セメント粉末と練和液を粉液比 7:2 で練和後,プラスチックモールドに充 填し,37℃,相対湿度 100%の条件下,24 時間で硬化させ,抗菌薬含有アパタイトセメン ト-α-TCP 複合体を作成した(以下 GM 含有 AC/α-TCP 硬化体と略記)。走査型電子顕微鏡 (scanning electric microscope:以下 SEM と略記)を用いて GM 含有 α-TCP/AC 硬化体の 表面構造を観察した。GM 含有 AC/α-TCP 粉末を練和後 37℃,相対湿度 100%の条件下の

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恒温器に保管し,経時的に取り出してビガー針を試料表面に下ろし,試料表面に圧痕が付 かなくなった時間を測定し,硬化時間とした。機械的強度の指標として,小型万能試験機 を用いて間接引張強さを測定した。粉末X 線回析装置を用いてセメント硬化後の試料の粉 末X 線回析を行った。抗菌薬徐放試験として,GM 含有 AC/α-TCP 硬化体を PBS に浸漬 させ,溶解させた抗菌薬をStaphylococcus aureus 209P を塗布した培地に滴下し,形成 された阻止円の直径を計測し,徐放量を算出した。また,各種GM 含有 AC/α-TCP 硬化体 による軟組織における炎症反応を評価するため,GM 含有 AC/α-TCP 粉末を練和後,ラッ トの腹部皮下直下に移植した。埋入1,4 週後に,試料を摘出し,粉末 X 線回析装置によ る組成分析およびヘマトキシリン-エオジン染色(以下 H-E 染色と略記)による組織学的 検討を行った。さらに,各種GM 含有 AC/α-TCP 粉末を,10 週齢 Wistar 系ラット脛骨に 埋入し,3 週,6 週後の骨形成の評価をトルイジンブルー染色にて行った。 【結果と考察】SEM では GM の含有量が増加するに従い,AC/α-TCP 硬化体の表面粗さ が増大した。AC/α-TCP 硬化体は,α-TCP および GM 含有量の増加に伴い,硬化時間が延 長し,間接引張強さが低下した。粉末X 線回析装置を用いて試料の組成分析を検討した結 果,各種硬化体においてハイドロキシアパタイトの組成を示すピークを認めた。これらの ことより,α-TCP および GM の含有はアパタイトセメントのハイドロキシアパタイト形成 に阻害作用を示し,セメント硬化体の物性が低下した可能性が示唆された。しかし,各種 硬化体でハイドロキシアパタイトの組成を認めたことから,臨床応用には影響しないと考 えられた。抗菌薬徐放試験では,GM 含有 AC/α-TCP 硬化体は抗菌薬の徐放を認め, AC/α-TCP 硬化体は抗菌薬の徐放が可能な担体であることが明らかとなった。ラットへの 皮下移植試験では,粉末X 線回析により,硬化体はハイドロキシアパタイトの組成を示す ピークを示した。H-E 染色では硬化体周囲組織に異物巨細胞や炎症性細胞浸潤はほとんど 認められなかった。さらにラット脛骨に埋入したGM 含有 AC/α-TCP 硬化体は,AC 硬化 体と比較して良好な骨形成を認めた。これらの結果より,GM 含有 AC/α-TCP 硬化体は, 生体内で炎症反応を惹起せず,AC 硬化体よりも優れた骨形成能を有することが示唆され た。 以上の結果から,本論文はGM 含有 AC/α-TCP 硬化体は抗菌薬徐放性を有し,優れた骨 形成能を有することから,顎骨骨髄炎治療後の骨欠損部へ臨床応用できる可能性が示唆さ れた。 よって審査委員会委員全員は,本論文が著者に博士(歯学)の学位を授与するに十分な価 値あるものと認めた。

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