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る. これらの廃棄物は混合状態となっていることが多いため, 選別後にそれぞれの性状に合った処理を実施する必要がある. 環境省 4) により, 放射性物質濃度による処分 ( 保管 ) 方法が表 -1のように示されている. 可燃物の焼却処理後に発生する焼却灰, 下水汚泥の焼却灰, 浄水汚泥の焼却灰は,

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災害廃棄物処理の現状

九州大学大学院 工学研究院 環境都市部門 島岡隆行,中山裕文 九州大学 工学部 川畑雄大 1.はじめに 東日本大震災からの復旧復興のためには,災害廃棄物の処理を速やかに完了させることがまず必 要である.今回の震災では,地震だけでなく津波が発生したことにより,押し流された家屋等のが れきや,津波によって運ばれてきた津波堆積物等を含めると膨大な災害廃棄物が発生しており,そ の規模は阪神・淡路大震災を超えるものとなった.また福島第一原子力発電所事故により放射性物 質に汚染された廃棄物が発生する等,これまで想定されていなかった事態が発生した.政府は,災 害廃棄物の処理について 3 年を目途に完了させるスケジュールを示し,各種指針を策定する等の措 置を講じている.また,被災自治体では災害廃棄物処理計画を策定して処理を進めているものの, 被災地域内だけですべての災害廃棄物を処理することが難しい状況となっており,広域処理が求め られている.しかしながら,廃棄物の選別処理の困難さや,広域処理のための受け入れ先の確保が 難しい点等多くの課題がある. 本報告では,東日本大震災における災 害廃棄物の発生,処理に関するこれまで の状況について概観するとともに,今後 の災害廃棄物処理の処理費用と処理期間 に関するシナリオ分析の結果について述 べる. 2.東日本大震災における災害廃棄物の発 生及び処理状況 2.1 発生した災害廃棄物の分類 東日本大震災では多様な廃棄物が発生 している.災害廃棄物を分類する場合, 品目や材質という視点からの分類と,放 射性物質濃度による分類がある. 図-1 に廃棄物資源循環学会 1),環境省 2),岩手県3)の資料を参考に整理した災害 廃棄物の分類を示す.図-1 に示すように 発生した災害廃棄物を分類していくと, 被災家屋から発生したがれき,家財,電 柱やタンク等の大型物,車・船舶,水産 物のように地震や津波によって流された り破壊されたものから発生した廃棄物の 他に,避難場所から発生した避難ごみが ある.また,津波によって運ばれてきた 津波堆積物と呼ばれる土砂等,多岐に亘 図- 1 災害廃棄物の分類 表- 1 放射性物質濃度による処分 方法の分類 災害廃棄物 がれき 震災時の倒壊 建築物 家財(倒壊家屋と混 在するもの) 水産物 その他 津波堆積物 車・船舶 避難ごみ 震災後の 解体建築物 分類Ⅱ:木・コンクリート等が混入したもの 分類Ⅰ:混入物なし 出所)廃棄物資源循環学会、環境省資料等を元に作成 分類Ⅲ:油等の有害物が混入したもの 大型物 電柱、タンク、コンテナ等 家電製品、家具、大型ごみ、畳、 カーペット、庭木等 家財(分別排出され たもの) 家電製品、家具、大型ごみ、畳、 カーペット 水産物、水産加工品 木くず、廃プラ、コンクリート、金 属くず等 可燃ごみ、不燃ごみ、容器包装 廃棄物、医療系廃棄物等 100Bq/kg 100,000Bq/kg 8,000Bq/kg 水との接触による溶出や飛 散を避けた上で埋立処分. (モニタリングが望まれる.) 放射性セシウム 濃度 処分(保管)方法 出所:環境省,一般廃棄物焼却施設における 焼却灰の測定及び当面の取扱いについて

放射線を隔離できる場所で の保管もしくは,一般廃棄物 最終処分場で隔離、遮蔽し た上で埋め立てて保管.

適切に放射線を遮蔽できる 施設(鉄筋コンクリート等) での保管.

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る.これらの廃棄物は混合状態となっていることが多いため,選別後にそれぞれの性状に合った処 理を実施する必要がある. 環境省4)により,放射性物質濃度による処分(保管)方法が表-1のように示されている.可燃物の 焼却処理後に発生する焼却灰,下水汚泥の焼却灰,浄水汚泥の焼却灰は,放射性物質(放射性セシ ウム)濃度が高い数値を示す場合がある.また,焼却灰(主灰)と飛灰の放射性セシウム濃度の 差異については,飛灰の方が放射性セシウム濃度がより高い傾向があることが環境省の調査5)によ り報告されている.放射性物質により汚染された廃棄物の存在は,広域処理の障害となっており, 基準以下の廃棄物であっても受け入れ先の確保が難しい状況にある.このような中,東北地方では 山形県が早くから県内への受入に関する考え方を示し,広域処理を始めている.また,青森県 八戸市や秋田県も受入を表明をした.関東地方では,東京都による岩手県の災害廃棄物受け入 れの実施,宮城県女川町の災害廃棄物の受入公表,静岡県市長会・町村会による災害廃棄物の 受入れに係る共同声明,神奈川県の受入表明があるほか,関西では大阪府災害廃棄物の処理指 針に係る検討会議における検討結果のとりまとめが出される等,広域処理の受入の動きが広が りつつあるように見える.しかしながら,受け入れ表明した自治体の住民からの放射性物質に 対する心配は非常に強く、自治体がこれを押し切って受け入れを実施するのは非常に大きな問 題が伴うため,今後の動向はいまだ不透明である. 2.2 災害廃棄物の発生量 表-2 に被害の大きい東北地方の 3 県の建物の被 害棟数 6)を示す.東日本大震災において特に被害 の規模が大きかった 3 県では合計で 25 万戸以上が 全半壊しており,それに伴い大量の災害廃棄物が 発生している.災害廃棄物量は,被害棟数の情報 にがれきの発生量の原単位を乗ずる等の方法によ り推計量が公表.また岩手県については 2011 年 9 月に公開された資料 3)には,現場の測量結果など からの推計値が掲載されている.表-3 に災害廃棄 物の岩手県の平成 23 年 6 月時点での推計量7),宮 城県の平成 23 年 3 月時点での推計量8),また岩手 県の平成 23 年 9 月時点での推計値を示す.資料中 では平成 23 年 6 月時点と 9 月時点での推計値の差 異について言及されており,津波で流されて海中 に存在する量が含まれていないことや,火災で焼 失したために後で出された推計値は以前のものと 比べて減少したことが報告されている.また,不 燃物の発生量が推計値に対して大幅に減少してい る点については,震源により近い宮城県では地震 による内陸部での被害があるものの,被害の多く が津波によるものであり,倒壊被害は木造家屋が 主となっているためと考えられる.宮城県につい ても同様のことが言えるとすると,現場測量等に よる推計量は平成 23 年 3 月時点での推定値に対し 表- 3 廃棄物発生量の推計値 表- 2 東北3県の被害棟数 図- 2 災害廃棄物の組成別割合 (岩手県) 岩手県 20,201 4,497 7,042 宮城県 75,354 91,166 172,094 福島県 17,669 48,158 137,608 合計 113,224 143,821 316,744 全壊(戸) 半壊(戸) 一部破損 (戸) 出所)内閣府、緊急災害対策本部発表資料、東北地方太平 洋沖地震(東日本大震災)について(平成23年9月20日17:00) 建築物被害 可燃物 1,045 4,522 1,399 不燃物 2,937 13,672 1,576 津波堆積物 1,848 12,900 1,300 その他 ― ― 77  推計量 (千トン) 合計 岩手県 (6月時点) 宮城県 (3月時点) 5,830 31,094 岩手県 (9月時点) 4,353     宮城県:宮城県災害廃棄物処理実行計画 出所)岩手県:岩手県災害廃棄物処理実行計画     岩手県:岩手県災害廃棄物処理詳細計画 26.01% 23.76% 20.76% 15.44% 12.03% 0.22%1.78% 不燃系混合物 可燃系混合物 コンクリートがら 金属くず 角材・柱材 畳 その他 出所)岩手県:岩手県災害廃棄物処理詳細計画

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て岩手県の場合と同様に減少すると考えられる. 2.3 災害廃棄物の物理組成 災害廃棄物は集積場への搬入時には 家屋のがれき等の多くが堆積物やそ の他の廃棄物と混合状態になって搬 入される.図-2 に岩手県の資料 3) の組成割合別に分類された災害廃棄 物の発生量の割合を示す.図-2 にお いて,不燃系混合物,可燃性混合物 ともに多様な廃棄物が混合されたも のであるが,前者は土砂主体の不燃物 に可燃性の廃棄物等が混合したもの であり,後者はその逆である.写真-1 に宮古市の集積場での混合状態の災 害廃棄物,写真-2 に釜石市で道路脇 に集められた混合状態の災害廃棄物 を示す.この分類別の災害廃棄物の発 生量に従うと組成の割合の内, 全体 の約 50%程度が混合した状態で搬入 されており,処理の段階においてこの 処理を如何に行うかが処理に要する 費用,期間を左右する一因となる. 2.4 災害廃棄物の処理フロー 災害廃棄物の処理にあたって環境 省は,選別を後にそれぞれの性状に合 った適切な処理を行い,再利用可能な ものは極力再利用することが必要と示している.9)災害廃棄物の処理は図-5 に示す様な流れになる. また図-3 に岩手県の災害廃棄物の処理フロー3)の概略図,写真-3 に大船渡の重機,選別機械での選 別の様子,写真-4 に陸前高田での選別の様子を示す.この処理フローでは廃車両などの項目は含ま れていないが,それらは収集段階で分別が容易なためである.木材の処理は,破砕しチップ化した 写真- 2 道路脇に集められた災害廃棄物 (H23.7.19 釜石市) 写真- 1 集積された混合状態の災害廃棄物 (H23.7.18 宮古市) 図-3 災害廃棄物の処理フロー 図-4 津波堆積物の処理フロー 重機による 粗選別 木材 コンクリート 金属くず 可燃系 混合物 不燃系 混合物 チップ化 2次 選別 可燃物 不燃物 1次 選別 焼却 最終処分 堆積物 復興資材 資源化 出所)岩手県:災害廃棄物処理詳細計画 被災地から の撤去 集積 2次仮置場 1次仮置場 津波堆積物のある場所 津波堆積物近傍の有害 物質等取扱施設の有無 現地での スクリーニング 目視・臭気での確認 化学分析 仮置き場 (搬入元不明) 無し 有り 問題有り 基準不適合 基準適合 問題有り 問題無し 問題無し 混入有り (中間処理) 必要なし (有効利用、処分) ・埋め戻し材、路盤材等、 土木資材としての利用 ・最終処分が困難な場合は 海洋投入処分 (その他) 撤去を行わないことも検討可能 (中間処理) 津波堆積物と木屑・コンクリー ト屑等の分別 (有効利用、処分) ・埋め戻し材、盛土材等の土木 資材等 ・セメント原料化 ・舗装用ブロック等の原料化 ・最終処分が困難な場合は 海洋投入処分 (中間処理) ・津波堆積物と木屑・コンクリー ト屑等の分別 ・洗浄等による浄化、不溶化・無 害化処理、熱処理 (焼却・溶融等) (有効利用、処分) ・埋め戻し材、路盤材等、 土木資材としての利用 ・セメント原料化 ・舗装用ブロック等の原料化 ・一般廃棄物最終処分場への 最終処分 有り(被災大) 仮置き場 (搬入判明)

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後,ボード化・燃料化への利用が想定されている他,チップ化設備を備える業者での木材の引き受 けが想定されている.岩手県では,災害廃棄物の一部が太平洋セメントにて原料・燃料として利用 される. 可燃物の焼却においては既設施設での焼却の他,仮設焼却炉(2 基)による処理が想定さ れている.コンクリート・選別後の堆積物は復興資材への利用が想定されている. 堆積物については図-1 に示したようにその状態に応じて適切に選別処理される必要がある.図-4 に環境省の示す津波堆積物の処理フローチャート2)を示す.図-4 によると混合状態や有害物質の混 入の有無により,処理フローは 3 種に分類される.有害物質や木くず・コンクリート片等の混入が 無い場合は特に中間処理は必要ない.木くず・コンクリート片等の混入がある場合はそれらの分離 が必要となる.(図-3 における堆積物は主にこのフローにあたる.)また有害物質の混入がある場合 は洗浄などによる無害化が必要になる. また,各県での処理計画には自地域内での処理のほか, 早期に処理を完了するには広域で処理を行う必要性を示しているが実際には進んでいない. 3. 災害廃棄物の処理費用及びに処理期間に 関する考察 3.1 岩手県の災害廃棄物処理における問題点 図-5 に岩手県の災害廃棄物処理計画にお ける処理のフローの詳細を示す。災害廃棄物 は1次選別後に①柱材・角材、②可燃性混合 物、③不燃性混合物、④コンクリートガラ、 ⑤金属くず、⑥畳、⑦その他に分けられる。 このうち、④~⑦については業者に引き渡さ れて復興資材等として有効利用あるいは焼 却処理される。可燃系混合物と不燃系混合物 は2次選別へと進み、⑨可燃物、⑩不燃物、⑪堆積物に分けられる。その後、焼却、埋立処分、あ るいはセメント原料化される。 ここで、現在問題となっているのが、可燃系混合物や不燃系混合物の選別後に得られる堆積物(土 砂)は、当初そのまま復興用土木資材等として用いる予定であったが、小さな木片等の可燃物が混 入しているため、一部は利用できない可能性がでてきた。この量が約 32 万トン存在する。 2つ目の問題点として、岩手県では自地域内の廃棄物処理施設だけでは3年以内に処理を完了す ることができないため,57 万トンを広域で処理することを予定している.しかしながら東京都が1 写真- 3 大船渡での選別の様子 (H23.7.19 大船渡市) 写真- 4 陸前高田市での選別の様子 (H23.7.19 陸前高田市) 図-5 岩手県における処理フロー (出所)岩手県災害廃棄物処理詳細計画より作成 一 次 仮 置 場 搬 出 時 柱材、角材 混合物1 混合物2 コンクリートがら金属くず 二 次 仮 置 場 搬 出 時 選 別 業者 回収 可燃物 不燃物 柱材、角材 堆積物 金属くず (復興資材) 復興資材 (道路造成、 海面埋立) 10% 99% 1% 79% 10% 1% 5% 34%60% 1% 焼却 最終処分 チップ化

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万トンを受け入れることを表明したが,残りの大部分については目途が立っていない.広域処理で きない場合,自地域内の廃棄物処理能力を増強する以外に方法はないが,具体的な方策は決まって いない. 3.2 各処理シナリオ設定の概要 以上で示したような課題を認識した上で適切な処理が望まれる.ここでは,災害廃棄物の処理シ ナリオを複数提示し,各シナリオにおいて必要となる処理費用と処理期間について比較・考察した. (1)シナリオ 1(基本シナリオ) まず,基準となるシナリオとして岩手県による災害廃棄物処理計画3)の通りに処理が進むケース を考えた.この場合,前述した 2 つの問題は発生しないことを前提とした. (2)シナリオ 2(広域処理シナリオ) シナリオ 2 では,堆積物を復興資材として利用できず,最終処分せざるを得なくなったケースに ついて考えた.このシナリオでは,自地域内の最終処分場でも受け入れが困難なため広域処理を実 施することとした. (3)シナリオ 3(自地域内処理シナリオ) シナリオ 3 では,堆積物を復興資材として利用できない問題に加え,広域処理が全く望めないた めにすべて自地域内で処理するケースについて考えた.この場合,新規の最終処分場を建設してす べて埋立処分で対応するシナリオ 3-1 と、最終処分場と仮設焼却炉をともに増設して対応するシナ リオ 3-2 について検討した. (4)シナリオ 4(堆積物の復興資材としての基準緩和シナリオ) シナリオ 4 では,広域処理は出来ず,自地域内処理を基本とするが,堆積物の利用については基 準緩和によりすべて復興資材として利用できるものとして検討を行った.このシナリオでは当初予 定されていた広域処理対象物をどう処理するかが検討内容である. 3.3 計算結果と考察 各シナリオ計算結果を表-4,図表化したものを図-6 に示す.処理費用が最も小さかったのは,当然ながら 問題が発生しないシナリオ1であり,この場合の処理 費用は合計で約 1,399 億円と試算された.なお、平成 23 年 4 月時点で岩手県は県内の災害廃棄物処理費用 を 3,111 億円11)と見積もっており,本報告の計算結果 はこれよりもかなり小さい値となっている.これは、 災害廃棄物発生量の推定値が当初の 604 万トンから 435 万トンへと約 3 分の 2 に減少したことや,本報告 の計算では金属くずの売却収入 201 億円を計算に入れ 表-4 各シナリオの計算結果 図-6 各シナリオの計算結果 解体・撤去(含運搬) 435 298 240 435 298 240 435 298 240 435 298 240 435 298 240 1次選別 435 129 316 435 129 316 435 129 316 435 129 316 435 129 316 1次仮置き場からの搬出 377 21 - 341 19 - 434 24 - 434 24 - 434 24 -金属くず(業者引取) 71 -201- 75 -215- 75 -215- 75 -215- 75 -215 -コンクリート引取 167 42 - 102 26 - 102 26 - 102 26 - 102 26 -2次選別 339 184 1,116 360 192 1,174 360 192 1,174 360 192 1,174 360 192 1,174 2次仮置き場からの搬出 114 12 - 223 24 - 223 24 - 235 26 - 203 22 -焼却 14 37 461 31 82 892 31 82 892 84 305 892 80 287 901 セメント源・燃料化 82 467 802 82 467 802 82 467 802 82 467 802 82 467 802 最終処分 14 17 - 13 62 - 106 118 - 65 86 - 37 55 -新規最終処分場建設 0 0 - 0 0 - 93 145 - 0 0 - 0 0 -58 394 - 93 640 - 1 7 - 1 7 - 1 7 -- 1,399 - - 1,724 - - 1,297 - - 1,344 - - 1,292 -広域処理 処理項目 シナリオ1 処理量 (万トン) 費用 (億円) 期間 (日) 合計 シナリオ3-2 処理量 (万トン) 費用 (億円) 期間 (日) 項目 シナリオ2 シナリオ3-1 処理量 (万トン) 費用 (億円) 期間 (日) 処理量 (万トン) 費用 (億円) 期間 (日) 自地域 シナリオ4 処理量 (万トン) 費用 (億円) 期間 (日) 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 広域処理 新規最終処 分場建設 最終処分 セメント源・ 燃料化 焼却 2次仮置き場 からの搬出 2次選別 解体撤去か ら1次仮置場 からの運搬 自 地 域 内 処 理 (億円)

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ていること等が理由である.次に,広域処理を行うシナリオ 2 の費用が最も高く約 1,724 億円とい う結果が得られた.これは広域処理の受入単価を東京都のケースの 68,000 円/トンとして見積もっ ているためである.費用は高騰するものの処理の負担を分散することができるが,しかしながら, 受け入れを表明した自治体の状況を考慮えると広域処理によってすべて対処できるかどうか不明 であり,このシナリオの現実性はあまり高くないと言わざるをえない.一方,自地域内ですべて処 理するシナリオ 3 では,新規に建設する最終処分場によって対応するシナリオ 3-1 において 1,297 億円,新規の最終処分場と仮設焼却炉を併用するシナリオ 3-2 において 1,344 億円となった.単純 に費用だけみると,最終処分場だけで対応するのが安価であるが,建設までの期間が長くなる点を 留意する必要がある.最終処分場本体の建設期間は最短で 14 カ月程度であるが,その前に必要と なるアセスメントに数年が必要となるため,平成 26 年度までに処理を完了させることは難しい. 対応策として環境アセスメント手続きを簡略化あるいは省略が考えられるが,それによって環境汚 染が発生する恐れもあるため、慎重な対応が必要である.シナリオ 4 においては,復興資材として の基準緩和により堆積物を別途処理する必要が無くなるため,残る当初予定されていた広域処理対 象物を焼却によって対応できれば,全体としての処理費用は約 1,292 億円とやや低く抑えられた. たしかに有機物が混入した堆積物は土木資材としての性能が低下するが,高次の利用をせず,大き な問題が発生しにくい用途での利用を認めることができればよい.自地域内処理を基本とするので あれば,このシナリオが最も現実的と考えられる. 4.おわりに 本報告では,環境省や被災自治体等が公表した資料を元に災害廃棄物の発生量,その処理に関す る状況をまとめ,また岩手県において実際に発生している問題をとりあげ,処理費用に関するシナ リオ間比較分析を行った.シナリオ別に一長一短はあるものの,広域処理の可能性,処理費用,環 境アセスメントを簡略化した場合の汚染リスク等を総合的に考慮した場合,堆積物の復興資材とし ての利用基準を緩和するのが現実的と考えられた.ただし,ここでは環境影響に関する分析は行っ ていないため,より詳細な検討が必要と考える. 参考文献 1)廃棄物資源循環学会:災害廃棄物対策・復興タスクチーム,災害廃棄物分別・処理戦略マニュアル,2011. 6.15. http://eprc.kyoto-u.ac.jp/saigai/report/manual/index.html 2)環境省:東日本大震災津波堆積物処理指針,2011.7.13 http://www.env.go.jp/jishin/attach/sisin110713.pdf 3)岩手県:災害廃棄物処理詳細計画,2011.8.30. 4) 環境省:一般廃棄物焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取扱いについて,2011.6.28 http://www.env.go.jp/jishin/attach/memo20110628.pdf 5)環境省:16 都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果一覧 2011.8.29. http://www.env.go.jp/jishin/attach/waste-radioCs-16pref-result20110829.pdf 6)内閣府, 緊急災害対策委本部, 平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について,2011. 9.20.http://www.kantei.go.jp/saigai/pdf/201109201700jisin.pdf 7)岩手県:岩手県災害廃棄物処理実行計画,2011.6.20. 8)宮城県:宮城県,宮城県災害廃棄物処理実行計画,2011.8.4. http://www.pref.miyagi.jp/haitai/shinsai/pdf/20110804shorikeikaku-1.pdf 9)環境省:東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン),2011.5.16. http://www.env.go.jp/jishin/attach/haiki_masterplan.pdf 10) 国土交通省大臣官房技術調査課:国土交通省土木工事積算基準〈平成 23 年度版〉 11)「岩手の災害廃棄物 仮置き場 3 平方キロ必要」『毎日新聞』2011.4.17.

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