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脳循環代謝第20巻第2号

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Academic year: 2021

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Ⅰ はじめに

Single photon emission computed tomography (SPECT)を用いた脳機能画診断では,画像解析技術 の進歩により高い精度の解析が可能となってきてい る.これまでの脳血流 SPECT 定量画像解析では,関 心領域(ROI)の設定が恣意的となる,安静時脳血流 と acetazolamide 負荷時脳血流を別日に測定するた め,異なる入力関数に起因する脳循環予備能の測定誤 差を補正できない,血行力学的脳虚血の重症度1) とそ の経時的変化を定位的に評価できないなど,機能画像 診断の標準化を妨げる要因が問題となった.しかし, 現在では同日 2 回測定法による脳循環予備能の測定誤 差要因の克服や,定位座標系を用いた定位定量画像の 導入により,血行力学的脳虚血の定量的重症度評価の 測定精度・判定精度が著しく向上している.一方,皮 質神経細胞のマーカーである中枢性 Benzodiazepine receptor(Bz 受容体)の SPECT 統計画像 解 析 が 進 展し,脳虚血に伴う不完全脳梗塞,もやもや病や脳外 傷に伴う高次脳機能障害の新たな画像診断が検討さ れ,その臨床応用が期待されている. 本講演では,SPECT による脳機能画像解析と題し て,脳血流 SPECT 定量画像解析法の進歩と Bz 受容 体 SPECT 統計画像解析の臨床応用の方向性について 述べる.

Ⅱ 脳血流 SPECT 定量画像解析

蓄 積 型 脳 血 流 ト レ ー サ ー(123 I-IMP,99m Tc-HMPAO,99m Tc-ECD など)を用いた SPECT では, 脳組織における各トレーサーの初回循環摂取率および 保持機構の違いにより,各トレーサーの取り込み量と 実際の脳血流量との間には理想的な直線関係(linear-ity)は得られない(図 1)2) .したがって,蓄積型脳血 流トレーサーを用いた脳血流の定量測定では,各ト レーサーの脳内挙動に応じたコンパートメント解析モ

● 教育講演

SPECT による脳機能画像解析

中川原譲二

SPECT を用いた脳機能画像診断では,画像解析技術の進歩により,高い精度の解析が可能となってきている. 脳血流 SPECT 定量画像解析では,DTARG 法の導入により,安静時脳血流と acetazolamide 負荷時脳血流を同 日のうちに連続測定することが可能となり,2 日法に伴う異なる入力関数に起因する脳循環予備能の測定誤差が 克服された.また,定位座標系を用いた SEE 解析法の導入により,血行力学的脳虚血の重症度とその経時的変 化を定位的に評価することが可能となった.これらの解析法により血行力学的脳虚血の定量的重症度評価の測定 精度・判定精度が著しく向上し,機能画像診断の標準化が進むものと考えられる.一方,皮質神経細胞のマーカー である中枢性 Benzodiazepine receptor(Bz 受容体)の SPECT 統計画像解析が進展し,脳虚血に伴う不完全脳 梗塞や,もやもや病や脳外傷に伴う高次脳機能障害の新たな画像診断が検討され,その臨床応用が進むものと考 えられる.

(脳循環代謝 20:44∼51,2009)

キーワード:123-I-iodoamphetamine(IMP),123-I-iomazenil(IMZ),Single photon emission computed

to-mography(SPECT),Dual table ARG(DTARG),3-dimensional stereotactic surface projections (3D-SSP)

中村記念病院脳神経外科

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図 1. 真の脳血流(横軸)と各種トレーサーの摂取量から計測された脳血流との関係 初回循環摂取率が低いトレーサーほど,脳血流量の過小評価が生じ,同一トレーサーでも高灌流 域ほどトレーサーの摂取率が低下し,脳血流の過小評価が生ずる[文献 2)より引用]. デ ル が 必 要 と な る.現 在,臨 床 応 用 可 能 な 脳 血 流 SPECT 定量解析には様々な方法が提案されている が,蓄積型脳血流トレーサーの中では123 I-IMP の分布 が真の血流分布に最も近く,microsphere model3) や 2-compartment model4)などの数学的モデル解析法が確 立している(図 2).123 I-IMP を用いた脳血流 SPECT 定量解析法としては,これまで123 I-IMP-ARG 法4) が一 般に用いられてきたが,最近では安静時と acetazola-mide 負荷時の脳血流量を同日内に連続測定し,より 正確な脳循環予備能を測定する方法として Dual table ARG(DTARG)法が開発されている5) .また,統計 画像解析で用いられる 3D-SSP と同様の定位座標系を 用いた Stereotactic extraction estimation(SEE)解 析6) の開発により,血行力学的脳虚血の重症度の判定 精度が著しく向上している.これらの画像解析法の導 入により,血行力学的脳虚血の重症度評価の測定精 度・判定精度が改善するとともに,機能画像診断の標 準化が進展するものと考えられる. 脳血流 SPECT 定量画像解析の臨床応用として,第 一に血行力学的脳虚血症例に対する薬物治療や脳血行 再建術の選択・適応判定のための診断根拠としての応 用,第二に脳循環予備能の変化から見た予後判定や血 流再開後過灌流症候群の予知と対応策など,治療効果 の判定や治療に伴うリスク評価への応用,第三に画像 再構成・定量法・解析手法・判定基準の標準化に基づ く臨床研究の surrogate marker としての応用,など が上げられる.

Dual table ARG(DTARG)法5)

IMP-ARG 法などのように安静時と acetazolamide 負荷時脳血流量を別日にそれぞれ定量測定する場合に は,入力関数の決定も 2 回となるため,入力関数に起 因する測定誤差が拡大し,脳循環予備能を正確に評価 出来ない場合が生じる.そこで,等量のトレーサーを 用いて安静時と acetazolamide 負荷時の SPECT 計数 値を連続的に求め,安静時 1 回の採血によって共通の 入力関数を決定し,両者に対して別々の table を作成 することにより安静時と acetazolamide 負荷時脳血流 量の定量画像を得る方法が開発された(DTARG 法) (図 3).本法では,別日法で問題となる入力関数に起 因する測定誤差が解消され,安静時と acetazolamide 負荷時の脳血流定量画像を pixel by pixel に連続的に 測定するとともに,精度の高い脳循環予備能の評価が 可能である. 脳血流 SPECT 定量画像の SEE 解析6) SEE 解析では,被検者の安静時お よ び acetazola-mide 負荷時の脳血流 SPECT 定量画像データから脳 表血流量を抽出し,これを定位脳座標系(Talairach の標準脳)に変換することにより各ピクセルにおける

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図 2. 蓄積型脳血流トレーサーを用いた CBFの定量法(コンパートメント解析) (a)マイクロスフェアーモデル (b)2-コンパートメントモデル BBB:血液脳関門 K(K1):トレーサーの血液から脳への移行速度定数 k2:トレーサーの脳から血液への移行速度定数 Vd= K1/k2:分布容積 f:局所脳血流量 Ca(t):t時間後の血中放射能(入力関数) Cb(t):t時間後の脳局所放射能

E:初回循環摂取率(E= 1-ePS/f)(PS:permeability-surface area product)

脳循環予備能が算出される.次いでピクセル毎に安静 時脳血流量と算出された脳循環予備能から血行力学的 脳虚血の重症度が決定される.いずれの指標も 8 方向 からの 3 次元脳表画像として定位的に画像化される (図 4).本法では,脳表における血行力学的脳虚血の 各重症度の分布を視覚的に判定できるとともに,予め 設定された血管支配領域内のピクセル数に対して各重 症度のピクセル数の割合を算出し,数量的に判定をす ることも出来る.本解析法により,脳血流 SPECT の 定位定量的解析が可能となり,血行力学的脳虚血の重 症度評価の判定精度の改善とともに画像診断の標準化 が進むものと考えられる.

Ⅲ Bz 受容体 SPECT 統計画像解析

123 I-Iomazenil(IMZ)を用いた中枢性 Bz 受容体の SPECT による分布画像は,半定量的な皮質神経細胞 の分布を表す.中枢性 Bz 受容体は,大脳皮質に広範 に存在する GABA 系抑制シナプスの一部をなし,そ の分布画像は,皮質神経細胞の脱落の程度を表すマー カーとして臨床的意義を有する7∼9) .IMZ-SPECT の 解析法としては,当初患側 ROI 係数値の対健側比な どが用いられたが,最近では,診断精度の向上のため に 3D-SSP などの統計画像解析が導入されている. IMZ-SPECT の診断適応は,現在のところ外科的切除 が適応となるてんかん焦点を同定する画像診断法に限 られているが,今後は以下のような臨床応用が想定さ れる.第一に血栓溶解療法などの脳虚血後再灌流に伴 う不完全脳梗塞10) の診断,第二に misery perfusion や 血行力学的脳虚血の判定精度の改善,第三にもやもや 病における慢性脳虚血と高次脳機能障害の診断11),第 四に MRI などで確認できない脳外傷と高次脳機能障 害(前頭葉内側障害)の評価,などへの応用である. 不完全脳梗塞の診断 虚血性ペナンブラ領域の血行再開に関する IMZ-SPECT を用いた臨床研究により,血行再開後の CT! 脳循環代謝 第 20 巻 第 2 号

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図 3. Dualtable ARG法の理論

等量のトレーサーを用いて安静時と acetazolamide負荷時の SPECT計数値を連続的に求め,それ ぞれに対して SPECT計数値と脳血流量の関係を表す tableを作成することにより,安静時と ac e-tazolamide負荷時脳血流量の定量画像を得る方法である.安静時脳血流量の画像化では,I MP-ARG 法に準じて決定された入力関数を用いて SPECT計数値(左の斜線部分から得られる pixel value)と安静時脳血流量との関係が table化され(左下の Table 1),この Tableを参照して各 pixel の計数値が安静時脳血流量に変換される.Acetazolamide負荷時血流量の画像化では,安静時と 同一の入力関数を用いるが,各 pixelでの安静時終了時の SPECT計数値を算定した上で SPECT 計数値(右の斜線部分から得られる pixelvalue)と acetazolamide負荷時脳血流量との関係が table 化され(右下の Table 2),この Tableを参照して各 pixelの計数値が acetazolamide負荷時脳血流 量に変換される. MRI において変化がない領域で慢性期に中枢性 Bz 受 容体の減少が認められ,脳虚血後の皮質神経細胞の選 択的脱落(不完全脳梗塞)の発生が画像化されてい る10) .不完全脳梗塞の発生については,すでに実験的 な急性脳虚血―血流再開モデルにおいて明らかにされ ている12) .図 5 に急性脳虚血発作後に不完全脳梗塞と 診断された症例の MRI と IMZ-SPECT,図 6 にその 3D-SSP 解析の結果を呈示する.急性期に脳虚血に 陥った領域のうち MRI で脳梗塞巣が認められない領 域でも,慢性期には脳血流とともに中枢性 BZR の減 少が認められ,同領域の脳虚血によって皮質神経細胞 が選択的に脱落し,不完全脳梗塞が生じたと考えられ る.臨床病態診断としての不完全脳梗塞の概念は,血 栓溶解療法の効果判定のみならず,今後,血栓溶解療 法後の高次脳機能障害などを判定する上でもきわめて 重要と考えられる. Misery perfusion の診断 血行力学的脳虚血 Stage II と評価された領域に関 する IMZ-SPECT を用いた臨床検討では,中枢性 BZR が低下している場合と保持されている場合があること が判明している.これらは脳血流 SPECT の SEE 解 析により定位的に捉えられる血行力学的脳虚血 Stage II の領域と IMZ-SPECT の 3D-SSP の Z-score 解析画 像とを比較することにより明らかとなる.図 7 に 72 歳男性,一過性脳虚血発作で発症した右内頸動脈狭窄 症例(アテローム血栓性)の脳血流 SPECT 定量測定 の SEE 解 析 と IMZ-SPECT の 3D-SSP(Z-score)解 析の結果を示す.前者では右前大脳動脈・中大脳動脈

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図 4. Stereotacticextraction estimation(SEE)解析による血行力学的脳虚血の定位的重症度評 価と血行力学的脳虚血の評価基準

(右)SEE解析では,被検者の安静時および acetazolamide負荷時の脳血流 SPECT定量画像デー タから脳表血流量を抽出し,これを定位脳座標系(Talairachの標準脳)に変換することにより 各ピクセルにおける脳循環予備能が算出される.次いで,ピクセル毎に安静時脳血流量と算出 された脳循環予備能から血行力学的脳虚血の重症度が決定される.上段から,標準脳の MRI, 安静時脳血流量,acetazolamide負荷時脳血流量,脳循環予備能,血行力学的脳虚血の Stageが 8方向からの 3次元脳表画像として定位的に画像化される.

(左)安静時および acetazolamide負荷時脳血流定量測定による血行力学的脳虚血の定量的重症 度評価(斜線の傾きが脳循環予備能の程度を示す) Stage 0 : 脳循環予備能:正常(30%<) Stage I: 脳循環予備能:低下(10%<,≦ 30%),あるいは 安静時脳血流量:正常範囲(正常平均値の 80%≦) Stage II: 脳循環予備能:喪失(≦ 10%),かつ 安静時脳血流量:低下(<正常平均値の 80%) 図 5. 急性脳虚血発作後の不完全脳梗塞の画像診断(文献 10より引用) 61歳女性.突然の右片麻痺,失語症にて発症した左頭蓋 内内頸動脈の閉塞後再開通例(脳塞栓症).慢性期の MRI では,左前頭葉および基底核部に脳梗塞所見が認められ (左列),神経学的には全失語であった.IMP SPECTで は,MRIで脳梗塞巣が認められない左側頭葉および対側 小 脳 の 血 流 が 低 下 し て い た(中 列).し か し,IMZ SPECTでは左側頭葉の集積は低下していたが,小脳の 集積には左右差がみられなかった(右列).中枢性 BZR の減少を伴う左側頭葉の血流低下は,対側小脳の血流低 下とは異なり,脳梗塞巣からの遠隔効果(diaschisis)に よるものではなく,脳虚血によって皮質神経細胞が選択 的に脱落し,不完全脳梗塞が生じた結果と考えられた. 図 6. 図 5の症例の IMZ-SPECT 3D-SSP(Z-score)解析 (上段より,IMZの分布,全脳・視床・小脳・橋で正規化 した Z-score画像) 急性期に脳虚血に陥った左内頸動脈領域のうち MRIで脳 梗塞巣が認められない頭頂・側頭領域でも,慢性期には脳 血流とともに中枢性 BZRの減少が認められ,同領域の脳虚 血によって皮質神経細胞が選択的に脱落し,不完全脳梗塞 が生じたと考えられた. 脳循環代謝 第 20 巻 第 2 号

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図 7. 血行力学的脳虚血に伴う不完全脳梗塞の SPECT画 像解析

一過性脳虚血発作(左片麻痺)にて発症した 72歳男性. 右頚部内頚動脈高度狭窄症(アテローム血栓性)と診断 された.脳血流(IMP)-SPECT SEE解析では,右前大脳 動脈・中大脳動脈領域に広範な血行力学的脳虚血 Stage IIが認められたが,IMZ-SPECT 3D-SSP(Z-score)解析 では主として前大脳動脈と中大脳動脈の境界領域に,皮 質神経細胞の脱落領域(不完全脳梗塞)が認められた. 図 8. もやもや病の高次脳機能障害例の SPECT画像解析 一過性脳虚血発作と頭痛にて発症した 46歳女性,もやもや 病と診断され血行再建術が施行された.術後,新たな脳梗 塞は認められなかったが,神経心理学検査にて記憶障害, 注 意 障 害,遂 行 機 能 障 害,な ど が 認 め ら れ た.I MP-SPECT SEE解析ではほとんどの領域が Stage 0~ Iと評価 され,Stage IIはごく一部に止まったが,IMZ-SPECT 3D-SSP(Z-score)解析では右側の中大脳動脈領域の一部に加 えて,両側前頭葉の前方内外側に皮質神経細胞の脱落領域 (不完全脳梗塞)が認められた. 性.MRIでは器質的脳損傷が明確でなかったが,神経心理 学検査にて知能障害(WAIS III:境界域より下)に加えて, 記憶障害,注意障害,遂行機能障害,などが認められた. IMP-SPECT 3D-SSP(Z-score)解析では,明らかな脳血流 の低下領域は見られなかったが,IMZ-SPECT 3D- SSP(Z-score)解析では両側の前頭葉・頭頂葉外側に加えて,両側 前頭葉の前方内側に脳皮質神経細胞損傷領域(Z-score> 2の低下を示すピクセルの集合領域)が認められた. 図 10. 脳外傷後高次脳機能障害例の SPECT画像解析 MRIなどで器質的脳損傷が明確でなく,神経心理学的検査 にて記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害 などの『高次脳機能障害』が確認された 5症例と健常群と の群間比較(3D-SSP解析)により,両側前部帯状回皮質 に有意な脳皮質神経細胞損傷領域(Z-score> 1の低下を示 すピクセルの集合領域)が確認された. 領 域 に 広 範 な 血 行 力 学 的 脳 虚 血 Stage II が 認 め ら れ,後者では主として右前大脳動脈・中大脳動脈の境 界領域に皮質神経細胞の脱落が認められる. 血 行 力 学 的 脳 虚 血 Stage II に つ い て は,IMZ-SPECT 統計画像解析により,遷延性の皮質神経細胞 脱落が見られないか軽度であることを追加することに より,Misery perfusion13) の診断精度を改善させる可 能性もあり,今後の検討が必要である. もやもや病に伴う高次脳機能障害の診断 記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障 害などの認知障害が認められ,MRI などで器質的病

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変が確認されない成人もやもや病において,長期の血 行力学的脳虚血が原因と思われる前頭葉の皮質神経細 胞脱落(Z-score>2 の低下を示すピクセルの集合領域) が IMZ SPECT 統計画像により確認された(図 8). もやもや病では,長期にわたる血行力学的脳虚血によ り皮質神経細胞脱落(不完全脳梗塞)が生じることが 確認されており11) ,IMZ SPECT 統計画像解析は,も やもや病に伴う高次脳機能障害の診断に有用と考えら れる. 脳外傷後高次脳機能障害の診断 神経心理学的検査にて記憶障害,注意障害,遂行機 能障害,社会的行動障害などの『高次脳機能障害』が 確認された 5 症例を対象として IMZ SPECT を施行 し,3D-SSP 統計画像解析を行っ た と こ ろ,各 症 例 の123 I-IMZ SPECT 統計画像ではいずれにおいても両 側前頭葉内側に脳皮質神経細胞の損傷領域が確認され た(図 9).また,5 症例と健常群との群間比較により, 両側前部帯状回皮質に有意な脳皮質神経細胞の損傷領 域が確認された(図 10).一方,123I-IMP SPECT に対 する 3D-SSP 統計画像では同領域に有意な脳血流の低 下 域 は 認 め ら れ な か っ た.し た が っ て,123 I-IMZ SPECT 統計画像は,MRI などで器質的脳損傷が明確 でない脳外傷後高次脳機能障害の診断に有用と考えら れる.

1)中 川 原 譲 二:SPECT と PET. In:脳 卒 中 学 The Frontiers of Strokology.山口武典,内山真一郎,松本 昌泰,峰松一夫,高木誠編,医学書院,東京,1998, pp 139―154

2)Iida H, Akutsu T, Endo K, Fukuda H, Inoue T, Ito H, Koga S, Komatani A, Kuwabara Y, Momose T, Nishi-zawa S, Odano I, Ohkubo M, Sasaki Y, Suzuki H, Tan-ada S, Toyama H, Yonekura Y, Yoshida T, Uemura K : A multicenter validation of regional cerebral blood flow quantitation using[123I]iodoamphetamine and

single photon emission computed tomography. J Cereb Blood Flow Metab 16 : 781―793, 1996

3)Kuhl DE, Barrio JR, Huang SC, Selin C, Ackermann RF, Lear JL, Wu JL, Lin TH, Phelps ME : Quantifying local cerebral blood flow by N-isopropyl-ρ-[123I]

iodoamphetamine(IMP)tomography. J Nucl Med 23 : 196―203, 1982

4)Iida H, Itoh H, Nakazawa M, Hatazawa J, Nishimura H, Onishi Y, Uemura K : Quantitative mapping of re-gional cerebral blood flow using iodine-123-IMP and SPECT. J Nucl Med 35 : 2019―2030, 1994

5)Kim KM, Watabe H, Hayashi T, Hayashida K, Kata-fuchi T, Enomoto N, Ogura T, Shidahara M, Takikawa S, Eberl S, Nakazawa M, Iida H : Quantita-tive mapping of basal and vasareacQuantita-tive cerebral blood flow using split-dose123I-iodoamphetamine and single

photon emission computed tomography. Neuroimage 33 : 1126―1135, 2006

6)Mizumura S, Nakagawara J, Takahashi M, Kumita S, Cho K, Nakajo H, Toba M, Kumazaki T : Three-dimensional display in staging hemodynamic brain ischemia for JET study : Objective evaluation using SEE analysis and 3D-SSP display. Ann Nucl Med 18 : 13―21, 2004

7)Sette G, Baron JC, Young AR, Miyazawa H, Tillet I, Barre L, Travere JM, Derlon JM, MacKenzie ET : In vivo mapping of brain benzodiazepine receptor changes by positron emission tomography after focal ischemia in the anesthetized baboon. Stroke 24 : 2046―2058, 1993

8)Hatazawa J, Satoh T, Shimosegawa E, Okudera T, Inugami A, Ogawa T, Fujita H, Noguchi K, Kanno I, Miura S : Evaluation of cerebral infarction with iodine 123-iomazenil SPECT. J Nucl Med 36 : 2154―2161, 1995

9)中川原譲二:SPECT による神経細胞マーカーを用い た脳機能評価.脳循環代謝 18 : 149―151, 2006 10)Nakagawara J, Sperling B, Lassen NA : Incomplete

brain infarction of reperfused cortex may be quanti-tated with iomazenil. Stroke 28 : 124―132, 1997 11)中川原譲二:もやもや病における高次脳機能障害の診

断―123I-Iomazenil SPECT による解析と意義―.In:

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 平成 19 年度 総括・分担研究報告書.2008, pp 23―26 12)Garcia JH, Lassen NA, Weiller C, Sperling B, Nakaga-wara J : Ischemic stroke and incomplete infarction. Stroke 27 : 761―765, 1996

13)Baron JC, Bousser MG, Rey A, Guillard A, Comar D, Castaigne P : Reversal of“misery perfusion syn-drome”by extra-intracranial bypass in hemodynamic cerebral ischemia : a case study with 150 positron emission tomography. Stroke 12 : 454―459, 1981 脳循環代謝 第 20 巻 第 2 号

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Key words :

tactic extraction estimation(SEE)using standardized brain mapping for quantified CBF images could make stereotactic assessment of both severity of hemodynamic cerebral ischemia and its serial changes. These ana-lytic techniques for CBF SPECT such as DTARG and SEE could improve the accuracy of SPECT measure-ment and diagnostic decision, and could promote the standardization of functional neuroimagings. On the other hands, central benzodiazepine receptor imaging using 123-I-iomazenil(IMZ)SPECT which clinically inter-preted as the marker of cortical neuron damages could be applied not only to demonstrate incomplete brain in-farction associated with cerebral ischemia, but also to estimate higher brain dysfunction associated with moyamoya disease(long-standing ischemia)or traumatic brain injury. Quantitative analysis of functional neuroimagings using SPECT could be applied for future clinical trial due to the progression of standardization techniques for SPECT images.

123-I-iodoamphetamine(IMP), 123-I-iomazenil(IMZ), single photon emission computed tomogra-phy(SPECT),dual table ARG(DTARG),3-dimensional stereotactic surface projections(3D-SSP)

図 1.  真の脳血流(横軸)と各種トレーサーの摂取量から計測された脳血流との関係 初回循環摂取率が低いトレーサーほど,脳血流量の過小評価が生じ,同一トレーサーでも高灌流 域ほどトレーサーの摂取率が低下し,脳血流の過小評価が生ずる[文献 2)より引用]. デ ル が 必 要 と な る.現 在,臨 床 応 用 可 能 な 脳 血 流 SPECT 定量解析には様々な方法が提案されている が,蓄積型脳血流トレーサーの中では 123 I-IMP の分布 が真の血流分布に最も近く,microsphere model
図 2.  蓄積型脳血流トレーサーを用いた CBFの定量法(コンパートメント解析) (a)マイクロスフェアーモデル (b)2- コンパートメントモデル BBB:血液脳関門 K(K1):トレーサーの血液から脳への移行速度定数 k2:トレーサーの脳から血液への移行速度定数 Vd= K1/k2:分布容積 f :局所脳血流量 Ca(t ):t時間後の血中放射能(入力関数) Cb(t ):t時間後の脳局所放射能
図 3.  Dual t abl e  ARG法の理論
図 4.  St er eot ac t i c ext r ac t i on  es t i mat i on(SEE)解析による血行力学的脳虚血の定位的重症度評 価と血行力学的脳虚血の評価基準
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