– 1 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 更新日:2012/10/14 石油調査部:野神 隆之
原油市場他:1 バレル当たり 100 ドル に到達した後急落、以降 90 ドル近辺で推移する
原油価格
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA 他) ① 米国では、石油製品需要は必ずしも堅調ではないものの、製油所でのメンテナンス作業シーズン突 入に加え、精製処理関連装置の不具合に伴う操業上の支障などにより、原油精製処理量が減少した ことに伴う生産活動の低下等により、ガソリンや留出油といった石油製品在庫は低下傾向となり、この 時期としては双方とも平年幅下限付近に位置する在庫量となっている。他方、ハリケーン「アイザッ ク」通過後の輸入の増加や国内での堅調な原油生産の一方で精製処理量の低迷により、同国の原 油在庫は増加しており、平年幅も超過したままとなっている。 ② 2012 年 9 月末現在の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米 国で増加となったうえ、日本においても製油所での装置の不具合やメンテナンス作業開始で稼働が 低下したことにより当該在庫が増加した一方、欧州では製油所のメンテナンス作業実施時期には突 入したが米国での在庫低下に伴う製品価格の上昇による精製利幅の改善もあり製油所の稼働低下 が抑制されたことから在庫が微減にとどまったものの、OECD 諸国全体としては原油在庫は増加、平 年幅を超過する状況は 8 月末に比べてより顕著になっている。他方石油製品在庫については、米国 ではガソリンや留出油在庫の減少をプロパン/プロピレン在庫の増加が相殺した結果、製品全体の 在庫水準は微減となった一方で、欧州では製油所の稼働低下が抑制された結果製品在庫は微増、 日本では引き続き冬場の暖房需要期向けの灯油在庫の積み上げが進んだことから同国の石油製品 全体の在庫も増加となったことにより、OECD 諸国全体の石油製品在庫は前月比で増加となったも のの、在庫回復の速度は依然遅く、水準自体はこの時期としては平年幅の下方付近に位置してい る。 ③ 2012 年 9 月中旬から 10 月中旬にかけての原油市場においては、9 月 14 日に原油価格が WTI で 一時 1 バレル当たり 100 ドルを超過したことで米国オバマ政権が緊急時石油備蓄放出実施を決定す るとの観測が市場で発生したうえ、米国原油在庫の増加観測や実際に増加を示しているデータの発 表、欧州での経済不振を示唆する統計などにより 9 月中旬に入るまでには価格は 91 ドル台へと急落 した。その後はスペインを含めた欧州の債務問題や経済情勢に対する市場の懸念の強弱、中国で の経済指標類や米国での企業業績、米国石油製品先物価格、イランやシリアと西側諸国等との対立 を織り込みつつ、価格は 10 月中旬に向け、概ね 1 バレル当たり 87~94 ドル程度で推移した。 ④ 今後も不安定な経済状況や展望が原油相場に下方圧力を加える一方、イランやシリアといった地政 学的リスク要因に対する市場の不安感が価格に上方圧力を加えていくと見られるが、10 月後半にな ると北半球における冬場の暖房需要期が市場で意識されるようになるので、特に米国で留出油在庫 が低下している状況からすると、市場での需給逼迫懸念が石油製品、そして原油価格に影響するこ とも考えられるので、注意が必要であろう。– 2 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 1. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等 7 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 2.4%程度の減少と速報値(同 3.0%程度の減少)か らは減少幅を縮小した(図1参照)ものの依然低迷していることに変わりはなく、むしろ2010年同月と比べ れば 6 月の 4.2%減少から 7 月は 5.8%減少へとむしろ縮小傾向は強まる結果となっている。他方、9 月 の同国ガソリン需要(速報値)は前年同月比(前年同月の確定値との比較)では 0.8%程度の減少と、相 対的に縮小規模が小さく、当該需要が回復の兆候を示すように見受けられる部分がある。ただ、これも 2011 年 9 月の需要が前年同月比で 4.0%程度の落ち込みを示す(8 月後半にハリケーン「アイリーン」 (Irene)が米国北東部に来襲したことにより当該地域の住民が外出を控えるなどしたことに伴うガソリン需 要低下の影響が 9 月に入っても一部残ったことが一因であると見られる)など不振であったことへの反動 といった側面があることに注意する必要があろう。ただ、このように米国でのガソリン需要は必ずしも旺盛 ではないものの、8 月6 日の Chevron の Richmond 製油所の火災、そして 8 月25 日のベネズエラ PDVSA の Amuay 製油所での貯蔵タンク爆発・炎上に加え、8 月下旬に米国メキシコ湾岸地域に来襲したハリケ ーン「アイザック」(Issac)や精製関連装置の不具合等に伴い複数の製油所において操業停止が発生し たうえ、他の製油所でも秋場のメンテナンス作業実施に伴い稼働を低下させるところも出てきたことにより、 同国の原油精製処理量は減少(図 2 参照)した結果ガソリン生産水準も低下傾向となった(図 3 参照)こと から、市場への当該製品供給が抑制され在庫は伸び悩むこととなった。例年この時期ガソリン在庫は減 少傾向となるのだが、2012 年はそれを上回るペースで在庫が減少したことにより量としては平年幅の下 限付近に位置している(図 4 参照)。
– 3 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 2012 年 7 月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で 0.3%程度の減少(図 5 参照)と微減にとどま る結果となり、速報値の同 1.0%程度の減少からは上方修正されている。ただ、このなかでも軽油につい ては同 1.7%程度の減少と前月の同 4.7%程度の減少から上振れしてはいるものの微減とは言い切れな
– 4 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 い状態(因みに 2012 年 4~5 月は同 0.7%~2.4%の増加であった他 2011 年 10~11 月は同 9.3~9.7% 程度の増加であった)など、当該需要が回復しているとは言い難い状況にある。また、9 月の需要(速報 値)は、前年同月比で 5.6%程度の減少と 8 月の 12.9%程度の減少から改善してはいる(但しこの月はハ リケーン「アイザック」の影響に伴い留出油輸出が低迷、それに伴い当該輸出が混在しているとされる需 要統計上の需要も低下したことが一因となっているという指摘がある)ものの、それでもなお大幅な落ち 込みであると言わざるを得ない。ただ、このような国内需要不振にもかかわらず、ガソリン同様米国内製 油所の稼働低下に伴い留出油生産も落ち込んだ(図6参照)ことや一部製品が輸出されたことから、当該 製品在庫は低下傾向を示し水準自体も平年幅の下限に位置するようになっている(図 7 参照)。
– 5 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 ガソリン及び留出油需要が前年割れをしていることを反映し米国の石油製品全体の需要も 7 月(確定 値)及び 9 月(速報値)ともに前年同月比で減少となっている(図 8 参照)。また、米国の国内原油生産が 堅調(シェールオイルの増産が寄与していると見られる)である(2012 年10 月5 日の週の生産量日量660 万バレルは 1995 年 5 月 26 日の週(このときは同 663 万バレル)以来の高水準となっている)ことに加え 製油所の稼働が低下したこと、さらにハリケーン「アイザック」の来襲に伴い停止していた同国への原油 輸入がハリケーン通過後再開されたことにより、反動で輸入が急増したことから、原油在庫はむしろ増加 する結果となっており、平年幅を超過する状態は維持されている(図 9 参照)。なお、原油在庫が平年幅 を超過している一方で、ガソリンと留出油の在庫が平年幅下限付近にそれぞれ位置していることから、原 油とガソリンを合計した在庫は平年幅を超過、そして原油、ガソリン、及び留出油を合計した在庫は、平 年幅の上限付近に位置している(図 10 及び 11 参照)。
– 6 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 2012 年 9 月末現在の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国 で増加となったうえ、日本においても製油所での装置の不具合やメンテナンス作業開始で稼働が低下し たことにより当該在庫が増加した一方、欧州では製油所のメンテナンス作業実施時期には突入したが米 国での在庫低下に伴う製品価格の上昇による精製利幅の改善もあり製油所の稼働低下が抑制されたこ とから当該在庫が微減となったものの、OECD 諸国全体としては原油在庫は増加、平年幅を超過する状
– 7 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 況は 8 月末に比べてより顕著になっている(図 12 参照)。他方石油製品在庫については、米国ではガソ リンや留出油在庫の減少をプロパン/プロピレン在庫の増加(米国でのシェールガスに随伴して産出さ れる NGL(Natural Gas Liquids(天然ガス液))が影響している可能性がある)が相殺した結果、製品全体 の在庫水準は微減となった一方で、欧州では製油所の稼働低下が抑制された結果製品在庫は微増、日 本では引き続き冬場の暖房需要期向けの灯油在庫の積み上げが進んだことから同国の石油製品在庫も 増加となったことにより、OECD 諸国全体の石油製品在庫は前月比で増加となったものの、在庫回復の 速度は依然遅く、水準自体はこの時期としては平年幅の下方付近に位置している(図 13 参照)。なお、 原油在庫の平年幅超過状態がより顕著になった一方で石油製品在庫が平年幅下方付近に位置してい ることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上方付近の水準となっている(図 14 参照)。また、9 月末時点での OECD 諸国推定石油在庫日数(月末の在庫量をその直後の 3 ヶ月間の 1 日当たり需要で 除したもの)は 59.0 日と 8 月末の 58.8 日(当初見込みよりも OECD 諸国在庫量の増加が判明した一方で 石油需要が下方修正されたことが影響したことから、9 月時点での推定である 57.9 日から上方修正)から 増加している。
– 8 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 アジア・太平洋市場においては、インドネシアなどでのラマダンに関連した旅行シーズンの終了に伴 いガソリン需要が低下したこともあり、軽質製品在庫は増加傾向となり、9 月 19 日の 860 万バレル程度が 10 月 3 日には 1,040 万バレル超と相当程度増加、10 月 10 日には若干減少したもののほぼ同水準を維 持している。ただ、米国におけるハリケーン「アイザック」の米国メキシコ湾岸地域来襲に伴う当該地域で の製油所操業停止や、ベネズエラでの製油所火災、そして米国各地での秋場の製油所メンテナンス作 業や精製関連装置の不具合に伴う操業上の支障で、米国でガソリン在庫が減少したことに伴い当該製 品価格が上昇したことから、欧州でガソリン製造活動が活発化(当該地域での 9 月の原油精製処理量は 前年同月比で日量 50 万バレル増加となったと推定される)したことにより、ガソリンに混入するためのナ フサの需要が高まったことや、冬場の暖房シーズンを前にして暖房に使用されるLPGの価格が上昇した ことにより石油化学部門において LPG に比べナフサに割安感が発生した結果ナフサ需要が喚起された こと、8 月 8 日夕方に発生した Chevron の Richmond 製油所(カリフォルニア州、原油精製能力日量 24.5 万バレル)の火災後、9月24日には同社が修理にどれくらいを要するのか目途が立たない旨明らかにす るなどしたことから米国西海岸でのガソリン需要発生観測が出てきたことや、10 月 1 日にはインドネシア の Pertamina が同国のバロンガン製油所(原油精製能力日量 12.5 万バレル)の高度化設備について 10 月後半より 45 日間の予定でメンテナンス作業を実施する旨明らかにしており、ガソリンの生産低下に伴う 代替供給確保のためインドネシアによるガソリン輸入が増加する可能性があることもあり、アジア・太平洋 市場でのガソリンやナフサの価格は在庫増加による下方圧力を受けにくい状況となっている。 シンガポールでのジェット燃料や軽油といった中間留分在庫は 9 月下旬から 10 月中旬にかけては上 下に変動しつつも 900 万バレル台前半の比較的限られた範囲内で推移した。豪州での Shell の Clyde 製 油所(原油精製能力日量 7.9 万バレル)の設備廃棄(9 月 30 日に廃棄作業に入り 10 月 12 日には完全に 操業を停止した旨同社が明らかにしている)、そして Caltex の Kurnell 製油所(同日量 13.5 万バレル)で
– 9 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 8 月後半から 10 月初めにかけメンテナンス作業を実施したことに伴う、同国からの中間留分輸入需要の 増加に加え、欧米やアンゴラ等のアフリカ諸国からの需要はあるものの、韓国、インド及び中国で経済活 動低下や雨季の影響により需要が不振であったことから当該製品需要が低下したり輸出向け供給が増 加したりしたことが対抗したものと考えられる。 他方、シンガポールの重油在庫は、相対的に低価格である欧州からの輸入が比較的堅調であった一 方で、中国で重油から石油製品を生産する中小製油所からの需要が低迷したこともあり、上下に変動し つつも、9 月中旬から 10 月にかけては 1,900 万バレル台後半と 8 月後半から 9 月中旬にかけての水準 を総じて上回る状況で推移した。このため、重油価格は原油価格に比べて割安感が増大する結果となっ ている。 2. 2012 年 9 月中旬から 10 月中旬にかけての原油市場等の状況 2012 年 9 月中旬から 10 月中旬にかけての原油市場においては、9 月 14 日に原油価格が WTI で一 時 1 バレル当たり 100 ドルを超過したことで米国オバマ政権が緊急時石油備蓄放出実施を決定するとの 観測が市場で発生したうえ、米国原油在庫の増加観測や実際に増加を示しているデータの発表、欧州 での経済不振を示唆する統計などにより 9 月中旬に入るまでには価格は 91 ドル台へと急落した。その後 はスペインを含めた欧州の債務問題や経済情勢に対する市場の懸念の強弱、中国での経済指標類や 米国での企業業績、米国石油製品先物価格、イランやシリアと西側諸国等との対立を織り込みつつ、価 格は 10 月中旬に向け、概ね 1 バレル当たり 87~94 ドル程度で推移した(図 15 参照)。 9 月 14 日に原油価格が一時 1 バレル当たり 100 ドルを突破したことで、米国のオバマ政権が緊急時
– 10 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 石油備蓄放出を決定するとの観測のもと、9 月 17 日の原油市場では利益確定の動きが発生したうえ、こ の日ニューヨーク連邦準備銀行から発表された 9 月のニューヨーク地区製造業景況感指数(ゼロが景気 拡大と縮小の分岐点)がマイナス 10.41 と市場の事前予想(マイナス 2.00)を下回ったこと、9 月18 日には、 翌 19 日に米国エネルギー省(EIA)から発表される予定の同国石油統計(9 月 14 日の週分)で原油在庫 が増加しているとの見方が市場で発生したうえ、9 月 18 日に米物流大手フェデックスが 2013 年 5 月期通 期の業績見通しを下方修正した他 2013 年の世界経済成長見通しを 3.0%から 2.7%へと下方修正したこ とで世界石油需要に対する懸念が市場で発生したこと、また、同じくこの日に中東湾岸諸国幹部が OPEC 諸国にとって理想的な価格は 1 バレル当たり 100 ドルであり現在の原油価格は石油需給ファンダ メンタルズを反映しておらず、サウジアラビアとしては日量 1,000 万バレルの原油生産に向け策を講じて いる他顧客が望むなら更なる増産も実施する旨発言したと伝えられたことで、世界石油需給緩和に対す る見方が市場で発生したこと、さらに 9 月 18 日に独非営利調査機関欧州経済研究センター(ZEW)から 発表された 9 月の同国景況感指数(ゼロが景気拡大と縮小の分岐点)がマイナス 18.2 と 4 ヶ月連続でマ イナスを示したことで同国経済に関する懸念が市場で発生した他この日スペイン 10 年物国債の利回りが 6%を超過するなど同国債務問題を巡る不安感が市場で発生したことでユーロが下落した反面米ドルが 上昇したこと、そして、9 月 19 日には、この日 EIA から発表された同国石油統計(9 月 14 日の週分)で、 原油在庫が市場の事前予想(100~250 万バレル程度の増加)を上回る、853 万バレルの増加となってい た旨判明したことから、原油相場は 3 日続落し、9 月 19 日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 91.98 ド ルと下落幅は合計で 7.02 ドルに達した。なお、9 月 20 日には、この日取引終了の 10 月渡し WTI 先物契 約価格は前日比で 1 バレル当たり 0.11 ドル下落し終値は 91.87 ドルとなったが、それ以外の限月では価 格は上昇した(WTI の 11 月渡し先物契約のこの日の終値は 1 バレル当たり 92.42 ドルと前日終値比で 0.12 ドル上昇している)。これは、9 月 20 日にフィラデルフィア連邦準備銀行から発表された 9 月のフィラ デルフィア地区製造業景況感指数(ゼロが景気拡大と縮小の分岐点)がマイナス 1.9 と 8 月のマイナス 7.1 から上昇した他市場の事前予想(マイナス 4.0~4.5)を上回ったことに加え、前日(9 月 19 日)午後 7 時 30 時(現地時間)に落雷によりベネズエラで PDVSA の操業するエル・パリート(El Palito)製油所(原油 処理能力日量 13 万バレル)のナフサのタンクが炎上したことに伴い当該製油所が操業を停止したことで、 石油製品供給不安が市場で発生したことから、9 月20 日に米国ガソリン及び暖房油先物価格が上昇した こと、英領北海 Forties 原油の 10 月の出荷が生産低下に伴い遅延すると 9 月 20 日に報じられたことで、 当該地域の原油供給に関する懸念が市場で発生したことによるものである。また、9月21日には、この日 スペインのデギンドス(de Guindos)経済相が 9 月 27 日に新規の救済計画策定を完了すべく欧州連合当 局と協議中である旨英経済紙Financial Times が報じたことで、同国経済を巡る楽観的な見方が市場で発
– 11 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 生したことから、この日(9 月 21 日)の原油価格の終値は 1 バレル当たり 92.89 ドルと前日終値比で 1.02 ドル上昇した。 また、9 月 22 日に開催されたドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領との間での会談で、欧 州銀行部門の共同監督体制導入時期に関して合意に至らなかったことで、欧州諸国債務問題に対して 悲観的な見方が市場で発生したことに加え、9 月 24 日に独公的研究機関 IFO 経済研究所から発表され た 9 月のドイツ景況感指数(2000 年=100)が 101.4 と 8 月の 102.3 を下回り 2010 年 2 月以来の低水準と なった他市場の事前予想(102.5)を下回ったこと、9 月 25 日には、この日プロッサー(Plosser)米フィラデ ルフィア連邦準備銀行総裁が講演で 9 月 12~13 日開催の米国連邦公開市場委員会(FOMC)で決定さ れた第三次量的緩和(QE3)について経済に対する効果はない旨発言したことで同国経済回復に対す る市場の楽観的な見方が後退したうえ、翌 26 日に EIA が発表する予定の同国石油統計(9 月 21 日の週 分)で原油在庫が増加を示しているとの観測が市場で発生したこと、そして、9 月 26 日には、この日スペ イン中央銀行から発表された月報で 2012 年第三四半期の同国経済活動が顕著に低下した旨判断され ていた他、同日債務問題対処のための緊縮財政策に反対する抗議行動がマドリッドとギリシャのアテネ で発生しアテネではデモ隊が警官隊と衝突するなど両国の混乱に対する市場の不安感が増大したこと でユーロが下落した反面米ドルが上昇したことにより、原油価格は 9 月 24~26 日の 3 日間併せ終値ベ ースで 1 バレル当たり 2.91 ドル下落、26 日の終値は 89.98 ドルとなった。ただ、9 月 26 日に上海株式総 合指数が一時 2009 年 2 月 2 日以来の 2,000 ポイント割れの水準にまで下落したこともあり中国当局が株 式相場上昇のための方策を実施するのではないかとの期待が市場で発生したうえ、9 月 26 日に EIA か ら発表された同国石油統計(9 月 21 日の週分)でガソリン在庫が 1.958 億バレルと 2008 年 10 月 24 日の 週(このときは1.950億バレル)以来の低水準であった旨判明したことで当該製品需給逼迫懸念が市場で 発生したこともあり 9 月 27 日に同国のガソリン先物相場が上昇したこと、9 月 27 日に米国労働省から発 表された米国新規失業保険申請件数(9 月 22 日の週分)が 35.9 万件と市場事前予想(37.5~37.8 万件) を下回ったこと、9 月 27 日にスペインのラホイ政権が 2013 年緊縮予算案を提示したことで同国がユーロ 圏金融当局からの支援獲得のための条件を充足し債務問題解決に向け前進するとの楽観的な見方が 市場で発生したことによりユーロが上昇した反面米ドルが下落したこと、また、9 月 28 日には、この日オ バマ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相との間で行われた電話会談においてイランの核兵器開発 防止で両者の意見が一致した旨ホワイトハウスが発表したことでイランと西側諸国等との対立の激化に対 する市場の不安感が増大したことにより、原油価格は 9 月 27~28 日は続伸、9 月 28 日の原油価格の終 値は 1 バレル当たり 92.19 ドルと 2 日で合計 2.21 ドル上昇した。
– 12 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 の同国製造業景況感指数(50 が景気拡大と縮小の分岐点)が 51.5 と 2012 年 5 月以来の 50 超となった 他市場の事前予想(49.7)を上回ったことで、この日の原油価格の終値は1バレル当たり92.48ドルと前週 末終値比で 0.29 ドル上昇したが、10 月 2 日には、前週から上昇してきた米国ガソリン先物価格に対する 利益確定の動きが市場で発生したこと、また、10 月 3 日には、この日中国物流購買連合会から発表され た 9 月の中国非製造業購買担当者指数(PMI:Purchasing Managers' Index)(50 が非製造業拡大と縮小の 分岐点)が 53.7 と 8 月の 56.3 から低下したことに加え、同日英金融情報サービス会社マークイットから発 表された 9 月のユーロ圏総合景況感指数(改定値)(50 が景気拡大と縮小の分岐点)が 46.1 と 2012 年 2 月以来 8 ヶ月連続で景気が縮小している旨示唆したことから、原油価格は 10 月 2~3 日の 2 日間併せて 1 バレル当たり 4.34 ドル下落し 10 月 3 日の終値は 88.14 ドルとなった。 しかしながら、10 月 3 日午後 5 時頃(現地時間)に ExxonMobil の Baytown 製油所(テキサス州、精製能力日量約 56 万バレル)で火災が 発生、午後 8 時半(同)には鎮火したが、10 月 4 日には同社が、生産に影響が発生する旨発言したこと から、米国石油製品先物相場が上昇したこと、10 月 3 日にシリアからトルコへの越境攻撃が行われたこと によりトルコ側の住民5 人が死亡したことを受け、10 月4 日にトルコ国会が国外軍事行動を実施する権限 を政権に付与する旨決定したことで、シリア及びトルコを含めた中東情勢の悪化に対する懸念が市場で 増大したこと、10 月 4 日に実施された欧州中央銀行(ECB)理事会実施後の記者会見でドラギ総裁が必 要な条件が整い次第ユーロ圏加盟国の国債購入を開始する準備がある旨発言したことで欧州諸国の債 務問題に対する市場の不安感が後退したことからユーロが上昇した反面米ドルが下落したこと、10 月 4 日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(9 月 29 日の週分)が 36.7 万件と市場の事 前予想(37.0 万件)を下回ったこともあり米国株式相場が上昇したことで、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 91.71 ドルと前日終値比で 3.57 ドル上昇した。ただ、10 月 5 日には、米国での原油生産が 高水準である一方秋場の製油所メンテナンスや火災等による操業停止で原油需要が弱いとの認識が市 場で広がったことに加え、10 月 5 日に独経済技術省から発表された 8 月の同国製造業受注指数(2005 年=100)が前月比で 1.3%の低下と市場の事前予想(同 0.5%低下)を上回ったことで、この日の原油価 格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.83 ドル下落し終値は 89.88 ドルとなった。 10 月 8 日には、 この日世界銀行が、東アジア・太平洋発展途上国の 2012 年の経済成長見通しを 7.2%と 2011 年の 8.3%から減速すると予想したことで、中国を含む当該地域の石油需要鈍化懸念が市 場で発生したうえ、スペインの救済支援を巡る不透明感に加え 10 月 8 日に独経済技術省から発表され た 8 月の同国鉱工業生産指数(2005 年=100)が前月比 0.5%の低下となったこともありユーロが下落し た反面米ドルが上昇したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 89.33 ドルと前週末値比で 0.55 ドル下落したものの、翌 9 日には、10 月 3 日のシリアからの越境攻撃でトルコ住民 5 名が死亡して
– 13 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 以降両国の砲撃の応酬が 6 日連続で行われていることからトルコ領内に敷設されるイラク北部からの原 油パイプラインに対するシリアによる攻撃(後述)を含め中東地域における地政学的リスクが市場で意識 されたことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 3.06 ドル上昇、終値は 92.39 ドルとなっ た。他方、10 月 9 日午後に Chevron が 2012 年 7~9 月期業績が同 4~6 月期から大幅に悪化した旨、 また、同じく 10 月 9 日夕方に米最大手アルミ製造会社アルコアが発表した同 7~9 月期決算で純損失が 発生した他中国需要の鈍化により 2012 年の世界アルミ需要予想を下方修正した旨、それぞれ明らかに したことで、経済減速に対する不安感が市場で増大したことを受け、10月10日の米国株式相場が下落し たこと、10 月 10 日に米国労働省から発表された 8 月の求人件数が 356 万件と前月比で 3.2 万件の減少 となったことで同国労働市場の改善が進んでいないとの懸念が市場で発生したこと、翌 11 日に EIA から 発表される予定の同国石油統計(10 月5 日の週分)で原油在庫が増加しているとの観測が市場で増大し たことから、10 月 10 日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 91.25 ドルと前日終値比で 1.14 ドル下落し たが、10 月10 日夜(現地時間)にトルコ上空を飛行中のモスクワ発ダマスカス行きのシリア航空の旅客機 がアサド政権向けの武器を輸送しているとしてトルコ軍の戦闘機によりアンカラの空港に強制着陸させら れたことで、シリアとトルコとの対立が激化するとの不安感が市場で増大したことにより、10 月 11 日の原 油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.82 ドル上昇、終値は 92.07 ドルとなった。しかしながら、10 月 12 日に発表された国際エネルギー機関(IEA)のオイル・マーケット・レポートで、2012 年及び 13 年、そし て 2016 年までの世界石油需要見通しが下方修正されている旨明らかになったこと、同じく 10 月 12 日に 発表された米大手金融機関 JP モルガン及びウェルズ・ファーゴの 2012 年 7~9 月期決算が増益となっ たものの収益性が低下している旨判明したこともあり金融機関株式価格が下落したことを受け米国株式 相場が一時下落したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 91.86 ドルと前日終値比で 0.21 ドル下落している。 3. 今後の見通し等 原油相場は上方及び下方の対抗する圧力に晒され、ここ1 ヶ月程度方向感の掴めない展開となっ ている。まず下方圧力を加えているのが、石油需要面である。石油需要は経済の関数と言われるが、 米国、欧州、そして中国の経済回復見通しに対する市場の信頼感が低下してきているため、石油需 要がこの先旺盛になるとの展望を暗くする格好となっている。 まず、米国では9 月 12~13 日に開催された FOMC で QE3 実施が決定された。しかしながら、 これまで実施されてきた金融緩和策も米国の景気を浮揚されるには不十分であったうえ、この QE3 は米国住宅ローン担保証券に限られており米国債の購入を伴っていなかったこともあり、当
– 14 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 該緩和策の景気回復に対する効果は限定的であると市場で受け止められるようになってきている。 欧州では、9月6日に開催されたECB理事会で、債務問題に苦しむ欧州連合加盟国に対してECB が無制限に国債を購入する旨決定したが、ECB による国債購入支援を受けるには、対象となる国 において支出削減や増税といった厳しい緊縮財政策を実施しなければならず、これにより一時的で あれ景気に悪影響が及ぶ恐れがあることが市場で懸念されている。また、既に支援要請を検討して いるとされるスペインでは経済減速が顕著である他、2012 年第二四半期のユーロ圏の国内総生産 (GDP)(速報値)も前期比で 0.2%の減少と第一四半期に続きマイナス成長である旨明らかにな っている。 また、中国でも輸出入の鈍化する傾向を示している(欧州債務危機に伴う当該地域経済減速の影 響を受けているとの指摘がある)他、PMI のような景況感も軒並み景気が縮小していることを示 唆している。一方で中国の温家宝首相は5 月 20 日に経済成長維持を優先させる旨表明したが、不 動産投機の抑制を図るといった課題もあり、銀行預金準備率や金利引き下げといった金融緩和策を 積極的には採用しづらい状況で、同国経済の反転する兆しは出てきていない。 このように欧米中の主要石油消費国・地域で経済減速や停滞に対する不安感が市場で高まる中、 10月8日には世界銀行が2012年の中国の経済成長率を5月23日に発表した8.2%から7.7%へと、 また2013 年のそれを 8.6%から 8.1%へと、それぞれ下方修正した他、10 月 9 日には国際通貨基 金(IMF)が、2012 年の世界の経済成長率を 7 月 16 日に発表した 3.5%から 3.3%へ、2013 年の それを3.9%から 3.6%へと、それぞれ下方修正した。また 10 月の IMF の見通しによると、米国 は2012 年の経済成長率は 7 月の 2.0%から 2.2%へと上方修正されたものの、2013 年は 2.3%か ら2.1%へと下方修正されており、また、ユーロ圏については 2012 年はマイナス 0.3%から同 0.4% へ、2013 年はプラス 0.7%から同 0.2%へと下方修正されるなど、それぞれの経済の低迷が長引く との見通しが示されており、石油需要への影響に対する市場の不安感を増幅させる結果となってい る。 ただ、他方、原油相場の下落を抑制する要因も根強く存在する。これはまず地政学的リスク要因 が挙げられる。イランのウラン濃縮活動を巡る西側諸国との対立については、両者間での協議は進 展が見られない状態が続いている一方で、10 月 12 日には欧州連合諸国の大使級会議で欧州企業の イラン金融機関との取引禁止や天然ガス輸入の禁止などの実施で合意した(10 月 15 日に開催予定 の欧州連合外相会議で正式決定される見込み)と伝えられており、当該問題の根本的な解決と中東 湾岸諸国からの石油供給途絶懸念解消にはなお相当程度の時間を要する状況となっている。また、 シリアについては、10 月 3 日に同国からトルコへの越境砲撃でトルコの住民 5 人が犠牲になって
– 15 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 以降、両国で砲撃の応酬が続いており、かえって情勢は悪化する方向に向かっている。シリアもト ルコも産油国としては比較的小規模(シリアは内戦前の2010 年の原油生産量が日量35 万バレル、 トルコは2010~11 年は日量 4 万バレル程度)であるが、シリアの政権派と反政権派との対立とい った構図が、中東の他の諸国、特に湾岸産油国に波及し、それらの諸国の石油輸出が影響を受ける 恐れがあるといったこと、また、トルコ国内では南東部から北西部にかけ、イラク北部からの原油 パイプライン(輸送能力は日量120 万バレル程度とされるが輸送量は日量 40 万バレル程度と見る 向きもある)が敷設され、その一部がシリア国境からそう遠くない地帯を通過していることもあり、 シリアからの砲撃で当該パイプラインに被害が及ぶとイラクから地中海方面に向けた原油輸出が 停止することになることから、石油供給途絶懸念を市場で高める格好となっている。 このように、世界経済減速と石油需要鈍化懸念が原油価格に下方圧力を、そして地政学的リスク 要因に伴う石油供給途絶懸念が原油価格に上方圧力を、それぞれ加えている結果、原油価格は比較 的限られた範囲内で変動し、なおかつ、ECB による国債購入や米国金融当局による量的緩和の期 待といったものも、既にそれらが実際に決定してしまったことから、市場の期待感も落ち着いてし まったことで、なお一層相場に関する方向感を欠く展開となっている。 以上のような状況は短期的に急転回しにくいと考えられるため、この面では原油相場が大きく変 動する、といった事態には発展しにくいと見られるが、他方で、10 月後半になると冬場の暖房シ ーズン(米国での暖房シーズンは11 月 1 日~翌年 3 月 31 日である)に伴う暖房油需要が市場で 意識されるようになる。2012 年のこれまでの期間の大半においては欧州での精製活動の低迷や中 南米での旺盛な石油需要で、米国からガソリンや留出油の輸出が活発化した結果、現在これらの石 油製品の米国での在庫が低水準であるという認識が市場で広がりつつある。このようなことから、 今後暖房シーズンが接近するにつれ、市場での暖房油需給逼迫懸念が強まるとともに暖房油価格、 そして原油価格に上方圧力が加わる可能性がある。また、冬場に向けた米国北東部(米国での暖房 油の主要な需要地域)や欧州での気温の低下状況、もしくは低下予想によっては、暖房油や原油価 格が一層押し上げられる、といった恐れがある(そして初冬において冷え込みが厳しいようだと、 暖房油や原油価格は上昇しやすく、その後気温が上昇しても価格は下落しにくいといった傾向にな りやすい)ため、注意が必要であろう。 4. アジア諸国の原油輸入傾向の変化とその背景 アジアの一部諸国では、2012 年に入り原油調達先に変化が見られる。例えば 2012 年 1~8 月を例に とると、日本では、サウジアラビアやクウェート、カタール、オマーンといった中東湾岸産油国等やロシア
– 16 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 及びエクアドルに加え、ガボン、アンゴラ、ナイジェリアといった西アフリカ諸国からの原油調達が増加し ている(図 16 参照)。韓国もサウジアラビア、クウェート、イラクといった中東湾岸産油国に加え、イギリス やノルウェー、リビアなどの国から積極的に原油輸入を行っている(図 17 参照)。中国もサウジアラビア、 イラク、クウェート、UAE、カタール、イエメンといった中東湾岸産油国等やロシアに加え、アンゴラ、リビ ア、アルジェリア、ナイジェリア、コンゴ、ベネズエラやコロンビアといった諸国からの原油輸入が伸びて いる。そして、このように中東湾岸産油国や近隣の極東ロシア等に加えて、大西洋圏での産油国からの 原油輸入が増加していることが、最近の特徴と言えよう。 原油輸入先の変化の背景として挙げられるのが、まず、イラン情勢である。イランのウラン濃縮活動に 対する米国による制裁措置により、アジア諸国の多くもイランからの原油輸入を抑制しなければならなく なった(但し中国は 2012 年前半にイランとの原油取引条件で折り合いがつかなかったという商業的な理 由で結果的に同国からの原油輸入が低下したと言われている)。消費国によるイランの原油輸入は 2011
– 17 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 年の日量 220 万バレル余りから 2012 年 7~8 月は日量 90~100 万バレル程度にまで落ち込んだと推定 される。この穴埋めをする格好となっているのが、イラン産の重質高硫黄原油に質が近似する中東湾岸 諸国等の重質高硫黄原油であることから、アジア諸国の産油国はこれらの原油輸入を活発化させている。 最近では、一時原油輸入上の大きな問題となったイラン産原油を輸送するタンカーに対する保険付保の 問題は消費国政府による代替付保といった形で部分的には解決しつつあるが、イラン側で原油輸出の ために用意すべきタンカーの一部が同国産原油の洋上在庫に使用されていることから、予定通りタンカ ーが配船できないのではないかといった問題も指摘され始めている他、イランからの原油輸入削減に伴 う米国からの制裁の適用除外措置は 6 ヶ月毎に更新される仕組みとなっていることから、消費国によるイ ランからの原油輸入はこの先も大幅に増加するとは考えにくいため、今後も、アジアの消費国はイランを 除く中東湾岸産油国等からの原油輸入依存を継続すると考えられる。 また、アジア等の石油消費国によるイランからの原油輸入削減は、それらの国の原油輸入行動に異な った影響を与えている。イランからの原油輸出が削減された(加えて、最近ではシリアでの内戦が激化し ているうえ、さらには周辺諸国にその影響が及び始めている)ことで、中東の指標原油であるドバイの価 格が相対的に上昇することになった。他方、2011 年 8 月にはリビアでの内戦が終了しその後原油生産が 順調に回復してきた(図 18 参照)。また、西アフリカ諸国の中にはナイジェリア等原油生産量が堅調に推 移する国もある。ナイジェリアは、2009 年 10 月 25 日に武装勢力が停戦声明を発表して以降、産油地帯 での治安が改善したことに伴い、原油生産が回復傾向となっている(図 19 参照)。さらに、アンゴラでも 2011 年後半に新規油田の生産が開始されて以降増産の傾向にある(同国では Pazflor プロジェクトで複 数の油田が 2011 年に生産を開始、2012 年には日量 20 万バレルを超過すると見られる)(図 20 参照)。
– 18 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 このようにリビアでの原油生産が回復したうえ、西アフリカ産油国での原油生産が堅調であったことに より大西洋圏の代表的な指標原油であるブレントの価格に下方圧力が加わってきたわけである。その結 果ブレントとドバイの原油の価格差が縮小し(図 21 参照)、相対的にアフリカや欧州を含めた大西洋圏の 原油に割安感が出てきたことから、アジア諸国による当該地域産原油の購入が活発化したと考えられる。 なお、現在は北海 Forties 油田の定期メンテナンス作業に伴う原油出荷量の低下と当該メンテナンス作 業の延長による出荷遅延の影響で、ブレント価格が相対的に上昇しているといった状況であるが、このよ うなメンテナンス作業はいずれ終了すると見られることからブレント価格には再び下方圧力が加わってく ると予想される一方で、イランやシリアを巡る地政学的リスク要因は当面終結の目途が立たない状況にな っていることから、この面が引き続き中東産の原油価格を下支えすると思われる。このような地政学的リス ク要因に対する市場の不安感が根強いことから、ブレント価格の相対的な上昇により一時的にアジア諸 国による大西洋圏からの原油輸入が鈍化することはあるかもしれないが、このような動きは当面根強く継
– 19 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に 含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何 らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果について は一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げま す。 続する可能性があると思われる。