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金先物市場の流動性と効率性 - 夜間立会時間延長の効果 - 岩壷健太郎 1. はじめに 近年, 証券 商品の取引所では, 取引の高速化に対応するために売買システムを増強することや取引時間を延長 拡大することが重要な課題となっている. たとえば, 東京証券取引所は 2010 年 4 月に高速性 信頼性

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金先物市場の流動性と効率性

-夜間立会時間延長の効果-

岩壷健太郎

November 2013

Discussion Paper No.1311

GRADUATE SCHOOL OF ECONOMICS

KOBE UNIVERSITY

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1 金 先 物 市 場 の 流 動 性 と 効 率 性 - 夜 間 立 会 時 間 延 長 の 効 果 - 岩 壷 健 太 郎 1. は じ め に 近 年 , 証 券 ・ 商 品 の 取 引 所 で は , 取 引 の 高 速 化 に 対 応 す る た め に 売 買 シ ス テ ム を 増 強 す る こ と や 取 引 時 間 を 延 長・拡 大 す る こ と が 重 要 な 課 題 と な っ て い る . た と え ば , 東 京 証 券 取 引 所 は 2010 年 4 月 に 高 速 性 ・ 信 頼 性 ・ 拡 張 性 を 兼 ね 備 え た 証 券 売 買 シ ス テ ム ( ア ロ ー ヘ ッ ド ) を 稼 働 し ,2011 年 11 月 に は 午 前 立 会 の 取 引 時 間 を 30 分 延 長 し た .こ れ に 先 駆 け ,東 京 工 業 品 取 引 所( 当 時 )は 2009 年 5 月 に NASDAQ OMX の 取 引・清 算 パ ッ ケ ー ジ ソ フ ト を 用 い た 売 買 シ ス テ ム の 稼 働 を 開 始 し ,そ れ に 伴 っ て ,日 中 立 会 が 9 時 ~ 15 時 30 分 ,夜 間 立 会 が 17 時 ~23 時 と 取 引 時 間 の 大 幅 な 拡 大 を 行 っ た( ゴ ム 市 場 の 夜 間 立 会 は 17 時 ~ 19 時 で 変 更 は な い ). さ ら に ,2010 年 9 月 に は 夜 間 立 会 を 17 時 ~ 翌 日 の 4 時 に 延 長 し た ( ゴ ム 市 場 は 変 更 な し ).1 こ の よ う な 取 引 所 の 制 度 ・ シ ス テ ム の 変 更 に は ど の よ う な 効 果 が あ っ た の だ ろ か . 証 券 市 場 で の 売 買 シ ス テ ム の 変 更 や 高 頻 度 取 引 の 出 現 に よ っ て 市 場 構 造 ( マ ー ケ ッ ト ・ マ イ ク ロ ス ト ラ ク チ ャ ー ) が ど う 変 化 し た の か に 関 し て は こ れ ま で に 多 く の 研 究 が 存 在 す る が , 取 引 時 間 の 延 長 ・ 拡 大 の 効 果 に つ い て は あ ま り 研 究 さ れ て い な い . そ こ で , 本 章 で は ,2010 年 に 東 京 工 業 品 取 引 所 ( 当 時 ) が 行 っ た 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 が 市 場 の 流 動 性 や 価 格 の 情 報 効 率 性 に 与 え た 影 響 を 分 析 し , 取 引 時 間 延 長 の 効 果 を 評 価 す る . 取 引 時 間 の 延 長 ・ 拡 大 は 国 際 的 な 潮 流 と な っ て い る . た と え ば , 世 界 の 金 先 物 市 場 の 中 で 最 も 取 引 量 の 多 い ニ ュ ー ヨ ー ク COMEX で は ,立 会 取 引 が 行 わ れ る 日 中 の 取 引 量 が 多 い も の の , 電 子 取 引 が ほ ぼ 24 時 間 可 能 と な っ て い る . ま 1 夜 間 立 会 の 終 了 時 間 を 午 前 4 時 に 設 定 し た の は , ニ ュ ー ヨ ー ク の 原 油 の フ ロ ア 取 引 の 終 了 時 間 に 合 わ せ て い る .

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2 た , 非 鉄 金 属 の 取 引 量 の 多 い ロ ン ド ン LME は 金 属 の 世 界 最 大 の 消 費 国 で あ る 中 国 で の 利 用 者 拡 大 を 狙 っ て ,2006 年 に 上 海 取 引 所 の 取 引 開 始 よ り も 1 時 間 早 い 午 前 1 時 ( ロ ン ド ン 時 間 ) か ら 取 引 を 開 始 で き る よ う に 取 引 時 間 を 拡 大 し た ( 図 1 ).商 品 取 引 所 間 で の 競 合 が 激 化 す る な か で ,夜 間 取 引 の 機 会 が な か っ た 東 京 工 業 品 取 引 所 ( 当 時 ) に 取 引 時 間 の 拡 大 を 求 め る 声 が あ っ た の は 容 易 に 想 像 で き よ う . 図 1 世 界 の 商 品 市 場 の 取 引 時 間 (注 )GMT 以 外 は 各 地 の 現 地 時 間 . (出 所 )各 商 品 取 引 所 の HP よ り 筆 者 作 成 . で は , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 を 延 長 ・ 拡 大 す る 目 的 は 何 な の か . 東 京 工 業 品 取 引 所 ( 当 時 ) は 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 の 目 的 を 次 の よ う に 表 明 し て い る ( 東 京 商 品 取 引 所 HP).同 取 引 所 で 扱 う 上 場 商 品 は 国 際 商 品 で あ り ,市 場 が 開 い て な い 夜 間 で も 海 外 市 場 で 取 引 が あ る 間 に 価 格 が 変 動 す る こ と か ら , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 を 拡 大 す る こ と で , 取 引 機 会 が 増 加 し , 市 場 参 加 者 の 利 便 性 が 向 上 す る . 特 に 23 時 時 以 降 は , ① ニ ュ ー ヨ ー ク 市 場 の 取 引 時 間 と 重 な り 裁 定 取 引 な ど を 行 う 取 引 が 多 く み ら れ る こ と , ② 金 の 取 引 高 増 加 の 要 因 と 考 え ら れ る 為 替 レ ー ト の 変 動 が 起 こ り や す い こ と , ③ イ ン タ ー ネ ッ ト を 使 っ た 個 人 投 資 家 が 為 替 証 拠 金 (FX) や 差 金 決 済 取 引 ( CFD) な ど を 比 較 活 発 に 行 う こ と な ど か ら , 0:00 12:00 ニューヨーク /COMEX GMT 0:00 ロンドン/ LME 香港 /HKMEX 東京/TOCOM (~ 2009.5.6) 東京/TOCOM (2009.5.7~ 2010.9.20) 東京/TOCOM (2010.9.21 ~ ) 11:00 12:30 17:30 9:00 9:00 15:30 17:00 23:00 9:00 15:30 17:00 4:00 18:00 17:15 8:00 23:00 13:30 8:20 立会取引 1:00 19:00

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3 市 場 参 加 者 の 利 便 性 向 上 に 寄 与 す る と 見 込 ん で い る2 こ れ に 対 し , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 を 懸 念 す る 声 も あ る . ① 夜 間 取 引 を 実 施 す る 場 合 の 流 動 性 の 確 保 が で き る の か , ② そ れ に 伴 い 価 格 形 成 に 問 題 が 生 じ る の で は な い か , ③ 人 員 ・ シ ス テ ム の コ ス ト が 見 合 わ な い の で は な い か , ④ 投 資 家 の 多 く が 夜 間 取 引 に 参 加 し な い な ら ば , 市 場 参 加 者 の 利 便 性 向 上 と い う 目 的 は 達 成 さ れ な い の で は な い か , な ど で あ る . 夜 間 取 引 が 延 長 さ れ る 以 前 , 投 資 家 等 が ニ ュ ー ヨ ー ク で の 夜 間 取 引 を 行 っ て い た こ と を 勘 案 す る と , 東 京 市 場 に お い て 夜 間 取 引 が 可 能 に な っ た か ら と い っ て 取 引 機 会 が 格 段 に 増 す と は 言 え な い か も し れ な い . ニ ュ ー ヨ ー ク 市 場 は ド ル 建 て , 東 京 市 場 は 円 建 て と い う よ う に 取 引 通 貨 の 違 い が あ る と は い え , 今 日 , 為 替 取 引 は 低 コ ス ト で 行 え る の で ど ち ら の 通 貨 の 取 引 が 有 利 で あ る と い う 訳 で も な い . 結 局 の と こ ろ , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 の 評 価 は , そ れ に よ っ て 市 場 流 動 性 が 向 上 し た の か , ま た 価 格 の 情 報 効 率 性 が 改 善 し た の か , と い う 点 に か か っ て い る .そ こ で ,本 章 で は 金 先 物 市 場 を 分 析 対 象 と し て ,2010 年 に 行 っ た 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 の 効 果 を 測 定 す る . 具 体 的 に は , 取 引 時 間 延 長 の 前 後 半 年 の ① 取 引 高 ,② 市 場 の 流 動 性 ,③ 価 格 発 見 ,④ 価 格 の 情 報 効 率 性 の 変 化 を 測 定 し , 取 引 時 間 延 長 の 効 果 を 評 価 す る . 分 析 対 象 と し て は 東 京 商 品 取 引 所 で 最 も 取 引 高 が 多 い 金 先 物 を 選 ん だ .2011 年 の 総 取 引 高 に 占 め る 金 の 取 引 高 は 50.8%で ,2007 年 7 月 に 取 引 が 開 始 さ れ た 金 ミ ニ と 合 わ せ る と 61.3%を 占 め る3.以 下 の 分 析 で は 金 の 標 準 取 引 の み を 対 象 と す る . ま た ,2009 年 , 2010 年 と 2 回 , 取 引 時 間 の 拡 大 が 行 わ れ て い る が , 2009 年 の と き に は 取 引 シ ス テ ム の 変 更 も 同 時 に 行 わ れ て お り ,取 引 時 間 延 長 の 純 粋 な 効 果 を 検 証 で き な い た め 2010 年 の み を 分 析 対 象 と す る . 2 東 京 工 業 品 取 引 所 は 当 時 ,15 時 30 分 ~ 17 時 ま で の 立 会 休 止 時 間 帯 に つ い て も , シ ン ガ ポ ー ル 及 び ロ ン ド ン 市 場 と の 接 続 の 観 点 か ら 取 引 時 間 の 延 長 を 検 討 し た が ,ETF や 投 資 信 託 の 基 準 価 格 を 公 表 す る 上 で , 日 中 立 会 の 終 了 時 刻 は 15 時 30 分 を 超 え る こ と が で き な い こ と に 加 え , 委 託 に 係 る 証 拠 金 を 他 の 3 商 品 取 引 所 ( 当 時 ) と プ ー ル 計 算 に よ り 算 出 し て い る こ と 等 の 制 約 条 件 が あ る こ と か ら ,立 会 休 止 時 間 帯 の 取 引 時 間 延 長 を 行 わ な か っ た( 東 京 商 品 取 引 所 HP). 3 金 ミ ニ は 取 引 単 位 を 標 準 取 引 の 10 分 の 1 で あ る 100 グ ラ ム と し た 金 の 商 品 先 物 商 品 で あ る .

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4 日 本 の コ モ デ ィ テ ィ 市 場 を 分 析 対 象 と し た マ イ ク ロ ス ト ラ ク チ ャ ー の 研 究 は そ れ ほ ど 多 く な い . 研 究 の 多 く は 価 格 変 動 の 統 計 的 特 性 を 分 析 し た も の や 外 国 市 場 と の 連 動 性 を 調 べ た も の で あ る が4,本 研 究 に 近 い 問 題 意 識 を 有 し て い る 研 究 と し て ,金 先 物 市 場 の 日 中 の 価 格 形 成 と 取 引 パ タ ー ン を 分 析 し た 芹 田・濱 田・ 荒 木・坂 本(2005) が あ る .芹 田・濱 田・荒 木・坂 本 (2005)は ,日 次 の 4 時 点( 前 場 ・ 後 場 そ れ ぞ れ の 始 値 ・ 終 値 ) の 価 格 形 成 に お い て , 過 剰 反 応 や 過 小 反 応 , ノ イ ズ が 含 ま れ て い る か を 分 析 し ,日 中 の 時 間 帯 ご と で 取 引 パ タ ー ン( 取 引 高・ ボ ラ テ ィ リ テ ィ ・ 実 現 ス プ レ ッ ド ) が 異 な る か を 検 証 し て い る . 本 研 究 と の 共 通 点 は 日 中 の 時 間 帯 ご と の 取 引 高 や 流 動 性 指 標 な ど を 計 測 し , 日 中 の 取 引 パ タ ー ン を 分 析 し て い る と こ ろ で あ る が , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 と い う イ ベ ン ト を 利 用 し て , こ れ ら の 指 標 の 変 化 を 調 べ て い る 点 や 効 率 性 の 推 計 方 法 な ど が 異 な っ て い る . ま た , 本 研 究 の 分 析 期 間 は 芹 田 ・ 濱 田 ・ 荒 木 ・ 坂 本(2005)の 分 析 期 間 に 比 べ て 新 し く , 取 引 時 間 が 大 幅 に 拡 大 し て い る こ と , 値 幅 制 限 が 撤 廃 さ れ て サ ー キ ッ ト ブ レ ー カ ー 制 が 導 入 さ れ た こ と , 売 買 シ ス テ ム が 高 速 化 さ れ た こ と な ど , 市 場 構 造 ( マ ー ケ ッ ト ・ ス ト ラ ク チ ャ ー ) が 大 き く 変 わ っ て い る こ と も 相 違 点 で あ る . 2. 金 先 物 市 場 の マ イ ク ロ ス ト ラ ク チ ャ ー5 本 節 で は 東 京 商 品 取 引 所 の 金 先 物 市 場 の 特 性 を 説 明 す る( 表 1).商 品 先 物 の 各 銘 柄 は 限 月 と 呼 ば れ る . 各 限 月 の 取 引 期 間 は 取 引 初 日 の 新 甫 初 会 日 か ら 取 引 最 終 日 の 納 会 日 ま で で , こ れ を 「 一 代 」 と い う . 金 先 物 市 場 に お け る 一 代 は 1 年 間 で , 偶 数 月 に 新 し い 限 月 の 取 引 が 始 ま り , 納 会 日 の 翌 日 に は 新 し い 限 月 の 取 引 が 開 始 さ れ る . つ ま り , た え ず 6 限 月 の 取 引 が 行 わ れ て い る .

4東 京 商 品 取 引 所 の デ ー タ を 用 い た 研 究 と し て ,Xu and Fung(2005), Kang,

Kang, and Webb(2010), 飯 島 ・ 加 藤 ・ 徳 永 (2000), 羽 森 ・ 羽 森 (2000), 森 保 (2008), 程 島 ・ 森 本 (2008), 芹 田 ・ 濱 田 ・ 荒 木 ・ 坂 本 (2005), 坂 本 ・ 芹 田 ・ 濱

田(2006), 芹 田 ・ 坂 本 ・ 山 岡 (2008)な ど が あ る .

5 こ の 節 の 記 述 は 芹 田 ・ 濱 田 ・ 荒 木 ・ 坂 本 (2005)を 参 考 に し た . た だ し , 2009

年 の シ ス テ ム 変 更 に 伴 い , 取 引 に 関 す る 制 度 が 大 幅 に 変 更 さ れ て い る 点 を 反 映 し て い る .

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5 表 1 東 京 商 品 取 引 所 の 金 取 引 要 綱 (出 典 ) 東 京 商 品 取 引 所 資 料 よ り 筆 者 作 成 . 東 京 商 品 取 引 所 の す べ て の 先 物 商 品 は , 注 文 の 発 注 か ら 約 定 ま で 電 子 的 に 処 理 さ れ る シ ス テ ム 売 買 で 行 わ れ る .売 買 方 式 は 注 文 駆 動 型( オ ー ダ ー ド リ ブ ン ) 方 式 で あ り , マ ー ケ ッ ト メ ー カ ー は 存 在 し な い . 金 先 物 価 格 は 1 グ ラ ム 当 た り で 表 示 さ れ ,最 小 更 新 幅 は 1 円 で あ る .取 引 単 位 は 1 枚 当 た り 1 キ ロ グ ラ ム で あ る . 立 会 は 日 中 と 夜 間 に 分 か れ ,2013 年 現 在 の 日 中 立 会 は 9 時 ~ 15 時 30 分 ,夜 間 立 会 は 17 時 ~ 翌 日 4 時 と な っ て い る . 立 会 の 売 買 方 法 と し て 板 合 せ 仕 法 と ザ ラ バ 仕 法 が 併 用 さ れ て い る .日 中 立 会 , 夜 間 立 会 と も に 立 会 開 始 時 ( 寄 り 付 き ) は 板 合 わ せ 仕 法 に よ っ て 取 引 の 約 定 が 行 わ れ る が ,寄 り 付 き 後 は ザ ラ バ 仕 法 に よ っ て 行 わ れ る .「 寄 板 合 せ 」で は 注 文 取引の種類 現物先物取引 標準品 純度99.99%以上の金地金 売買仕法 システム売買による個別競争売買(複数約定) 限月 新甫発会日の属する月の翌月から換算した12か月以内の 各偶数限月 当月限納会日 受渡日から換算して4営業日前に当たる日(日中立会ま で) 新甫発会日 当限月納会日の翌営業日(日中立会から) 受渡日時 毎偶数月末日の正午まで(12月の受渡日は28日の正午ま で。受渡日が休業日又は大納会に当たるときは順次繰り 上げ) 受渡供用品 標準品と同等であって、取引所が指定する商標等の刻印 のあるもの。受渡品の供用量目の増減はなし。 受渡場所 取引所の指定倉庫(東京都所在の営業倉庫) 受渡方法 渡方は受渡品にかかわる取引所指定倉庫発行の倉荷証 券を、受方は受渡値段による受渡代金をそれぞれ当社に 提出して行う。 立会時間 日中立会:午前9時~午後3時30分 夜間立会:午後5時~翌日午前4時 取引単位 1キログラム(1枚) 受渡単位 1キログラム(1枚) 呼値とその値段 1キログラム当たり1円刻み サーキット・ブ レーカー幅 夜間立会開始時に前計算区域の帳入値段(新甫発会日の 場合は隣接限月の帳入値段)を基に設定 証拠金 (株)日本商品清算機構が価格変動を基準に証拠金額計 算の基礎となる値(変数)を決定し、その値を基にした額

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6 が 取 引 開 始 前 の 30 分 間 に プ ー ル さ れ , 約 定 枚 数 が 最 大 に な る 価 格 で 取 引 開 始 時 に 一 斉 に 約 定 さ れ る .寄 板 合 せ 後 は ,「 価 格 優 先・時 間 優 先 」の 原 則 に 基 づ い て 連 続 的 に 付 け 合 せ が 行 わ れ る 「 ザ ラ バ 」 に 移 行 す る . 立 会 終 了 時 ( 引 け ) で の 板 合 せ は 行 っ て い な い . 3. デ ー タ 本 研 究 で 使 用 す る デ ー タ は 金 先 物 市 場 の す べ て の 約 定 が 記 録 さ れ た も の で あ り , 約 定 の 日 時 , 限 月 , 約 定 価 格 , 約 定 数 量 が 記 載 さ れ て い る . サ ン プ ル 期 間 は ,夜 間 立 会 の 取 引 時 間 が 延 長 さ れ た 2010 年 9 月 21 日 を 挟 ん で 前 後 半 年 間 ず つ ,計 1 年 間 で あ る .前 半 は 2010 年 3 月 23 日 ~ 9 月 21 日 ,後 半 は 2010 年 9 月 22 日 ~ 2011 年 3 月 23 日 で あ る .デ ー タ の 1 日 は 夜 間 立 会 開 始 の 17 時 か ら ス タ ー ト し ,翌 営 業 日 の 15 時 30 分 に 終 了 す る( 図 2).取 引 時 間 が 延 長 さ れ た 2010 年 9 月 21 日 の 夜 間 立 会 は デ ー タ の 上 で は 9 月 22 日 に 入 る た め , そ の 日 は 後 半 の 開 始 日 に な っ て い る . 図 2 デ ー タ に お け る 1 日 間 (出 典 ) 東 京 商 品 取 引 所 資 料 よ り 筆 者 作 成 . 図 3 に は , サ ン プ ル 期 間 の 金 先 物 価 格 ( 6 番 限 ) と 取 引 高 ( 全 番 限 ) を 図 示 し た . 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 以 後 , 半 年 間 の サ ン プ ル 期 間 よ り も 長 く す れ ば 金 先 物 価 格 が 一 方 向 に 上 昇 す る 過 程 に 入 る た め , 十 分 な サ ン プ ル 期 間 を と る こ と も 考 慮 し て , こ の よ う な サ ン プ ル 期 間 を 設 定 し た . 9:00 15:30 17:00 4:00 終値 データ上の 1日の始ま り 夜間立会 日付上の1日の始まり 日中立会 0:00

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7 図 3 サ ン プ ル 期 間 中 の 金 先 物 価 格 と 取 引 高 の 推 移 ( 注 ) 先 物 価 格 は 6 番 限 の 日 次 価 格 デ ー タ の 終 値 ( 円 /g). 取 引 高 は 全 番 限 の 取 引 高 の 合 計 (1 枚 = 1kg). グ ラ フ 中 の 縦 線 が 夜 間 立 会 時 間 延 長 の 日 を 表 し て い る . 一 般 的 に , 納 会 日 ま で の 期 間 が 最 も 遠 い 期 先 物 で 取 引 が 多 く , 納 会 日 ま で の 期 間 が 短 く な る と 取 引 高 が 減 少 す る . 言 い 換 え る と , 各 限 月 は 取 引 が 盛 ん な 期 先 の 時 期 を 経 て , 徐 々 に 取 引 が 少 な く な り , 最 終 的 に 取 引 が 最 も 少 な い 期 近 の 時 期 を も っ て 取 引 最 終 日 に 至 る . つ ま り , 各 限 月 の 流 動 性 は 一 代 の 取 引 期 間 内 ( 金 先 物 で は 1 年 間 ) に 大 き く 変 化 す る . そ こ で , 本 研 究 で は 限 月 ご と の 分 析 は 行 わ ず に ,取 引 高 が 同 程 度 の 限 月 を 組 み 合 わ せ て「 番 限( ば ん ぎ り )」と 呼 ば れ る 新 し い 系 列 を 作 成 す る6 番 限 と は , サ ン プ ル 期 間 中 の 先 物 を 限 月 の 古 い 順 に 並 べ た 時 , 各 日 に お い て 取 引 さ れ た 先 物 に つ い て ,そ れ ぞ れ の 納 会 日 の 近 い 先 物 か ら 昇 順 で 番 号 を 振 り , 同 一 の 番 号 の も の を 毎 日 つ な ぎ 合 わ せ て 作 成 し た 系 列 で あ る . こ の た め ,1 番 限 は 常 に 期 近 限 月 で つ な が れ た 系 列 と な り , 反 対 に ,6 番 限 は 期 先 限 月 で つ な 6 番 限 の 作 成 方 法 に つ い て は , 芹 田 ・ 濱 田 ・ 荒 木 ・ 坂 本 (2005), 芹 田 ・ 坂 本 ・ 山 岡(2008)と 同 様 の 方 法 を 採 用 し て い る . 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 200,000 2,900 3,000 3,100 3,200 3,300 3,400 3,500 3,600 3,700 3,800 3,900 20 10/0 3 /23 20 10/0 4 /09 20 10/0 4 /28 20 10/0 5 /21 20 10/0 6 /09 20 10/0 6 /28 20 10/0 7 /15 20 10/0 8 /04 20 10/0 8 /23 20 10/0 9 /09 20 10/0 9 /30 20 10/1 0 /20 20 10/1 1 /09 20 10/1 1 /29 20 10/1 2 /16 20 11/0 1 /07 20 11/0 1 /27 20 11/0 2 /16 20 11/0 3 /07 取引高(枚,右軸) 価格(円,左軸)

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8 が れ た 系 列 と な る . 表 2 は サ ン プ ル 期 間 に お け る 一 代 ご と の 先 物 と 番 限 と の 関 係 を 図 示 し た も の で あ る . こ の よ う に , 同 一 番 限 に は 限 月 が 異 な る 系 列 が 含 ま れ て い る が , 納 会 日 ま で の 近 さ の 順 位 が 同 一 で あ る こ と か ら 売 買 頻 度 は 比 較 的 安 定 的 に な り , 番 限 間 の 比 較 が 可 能 に な る . 表 2 限 月 と 番 限 の 対 応 ( 出 所 ) 芹 田 ・ 濱 田 ・ 荒 木 ・ 坂 本(2005)を 参 考 に し て 筆 者 が 作 成 . 4. 分 析 本 節 で は , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 の 前 後 で 金 先 物 の 取 引 高 , 流 動 性 , 価 格 発 見 が ど の よ う に 変 化 し た の か を 分 析 す る . そ の 際 ,1 番 限 ~ 6 番 限 の 6 系 列 に 違 い は あ る の か に 注 目 す る . 最 後 に , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 に よ っ て 日 中 立 会 時 間 の 価 格 効 率 性 が 改 善 し た か を 検 証 す る . 4.1 取 引 高 ま ず , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 の 前 後 で 取 引 高 が 増 え た の か を 調 べ る . 表 3 の 上 段 で は 1 時 間 当 た り の 取 引 高( 枚 数 )の 期 中 平 均 ,下 段 で は 1 日 の 取 引 高 に 占 め る 1 時 間 当 た り の 取 引 高 の 比 率 ( 期 中 平 均 ) を 表 に ま と め て い る . さ ら に , 上 段 と 下 段 の そ れ ぞ れ に お い て , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 を 挟 ん だ 前 半 と 後 半 が 比 較 さ れ て い る . 2010/3/23 2010/4/27 2010/6/28 2010/8/27 2010/10/27 2010/12/24 2011/2/24 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 2010/4/26 2010/6/25 2010/8/26 2010/10/26 2010/12/22 2011/2/23 2011/3/23 2010年4月 1 2010年6月 2 1 2010年8月 3 2 1 2010年10月 4 3 2 1 2010年12月 5 4 3 2 1 2011年2月 6 5 4 3 2 1 2011年4月 6 5 4 3 2 1 2011年6月 6 5 4 3 2 2011年8月 6 5 4 3 2011年10月 6 5 4 2011年12月 6 5 2012年2月 6 限月

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9 ま ず , 上 段 の 取 引 高 ( 枚 数 ) を み る と ,1 番 限 ( 期 近 ) か ら 番 限 が 上 が る ほ ど 取 引 高 が 高 く な り , 最 も 納 会 日 に 遠 い 期 先 物 は 期 近 物 に 比 べ て 1 日 平 均 取 引 高 が 300~ 400 倍 に な っ て い る こ と が 確 認 で き る . 期 先 物 と 期 近 物 の 取 引 高 に は 大 き な 違 い が あ る . 次 に , 上 段 の 右 端 に 書 か れ た 1 日 平 均 取 引 高 ( 枚 数 ) を 前 半 と 後 半 で 比 較 し て み る と ,1 番 限 や 5 番 限 , 6 番 限 で は あ ま り 変 化 が な い も の の , 2 番 限 で は 3.81 倍 , 3 番 限 で は 3.78 倍 , 4 番 限 で は 2.03 倍 と 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 後 の 取 引 高 が 大 幅 に 増 加 し て い る . 表 3 金 先 物 市 場 取 引 高 ( 枚 数 , 比 率 ) で は , 日 中 ・ 夜 間 の 取 引 パ タ ー ン は 変 化 し た の で あ ろ う か . 図 4 は 取 引 高 比 率 を グ ラ フ に し た も の で あ る が , 図 を 見 や す く す る た め に 1,3,6 番 限 の み を 示 し た .ま た ,表 4 は 1 日 を 3 つ の 時 間 帯 に 分 け て 取 引 高 比 率 の 前 半 と 後 半 の 変 化 を 見 た も の で あ る . 取引高(枚) 前半 17-18 時 18-19 時 19-20 時 20-21 時 21-22 時 22-23 時 9-10時 10-11 時 11-12 時 12-13 時 13-14 時 14-15 時 15- 15時30分 1日平均取 引高(枚) 1番限(期近) 7.0 3.5 1.7 1.3 2.5 2.5 26.7 15.2 8.4 5.8 8.9 9.7 9.9 103.1 2番限 8.7 3.5 2.6 0.8 1.2 2.7 45.7 24.3 12.5 9.7 14.4 14.1 21.5 161.9 3番限 14.1 7.2 3.7 2.7 2.5 3.3 66.6 43.1 32.8 30.7 34.2 26.2 45.1 312.4 4番限 46.4 23.4 12.2 7.2 13.7 16.5 239.0 133.8 70.1 74.4 100.9 101.3 114.7 953.7 5番限 336.4 183.1 116.6 93.5 126.2 174.5 1378.0 836.6 426.3 579.3 520.8 522.4 701.8 5995.5 6番限(期先) 2936.0 1670.0 1108.1 1148.0 2396.6 3056.2 7960.9 4555.3 2074.6 2000.7 2548.1 3274.1 3236.1 37964.8 後半 17-18 時 18-19 時 19-20 時 20-21 時 21-22 時 22-23 時 23-0 時 0-1時 1-2時 2-3時 3-4時 9-10時 10-11 時 11-12 時 12-13 時 13-14 時 14-15 時 15- 15時30分 1日平均取 引高(枚) 1番限(期近) 8.6 2.7 2.6 1.6 2.0 3.2 1.4 0.8 0.4 0.4 0.2 62.0 16.8 12.3 11.3 15.5 13.3 13.1 168.0 2番限 20.7 8.5 4.8 2.6 3.1 3.7 2.0 1.8 1.5 1.2 0.8 145.8 86.7 50.6 53.6 83.7 80.0 66.5 617.5 3番限 53.8 17.5 8.7 6.8 6.9 11.5 7.8 5.8 6.3 4.4 2.0 299.3 185.7 93.8 82.8 123.8 127.4 136.5 1180.7 4番限 80.8 39.0 28.0 16.3 22.8 23.5 17.2 14.6 12.3 9.7 5.5 536.8 265.6 143.4 130.2 189.5 198.5 202.3 1936.1 5番限 325.3 177.0 131.5 107.7 156.4 192.6 147.9 132.6 82.4 66.7 46.5 1766.6 815.7 463.3 389.8 519.7 556.6 569.6 6647.8 6番限(期先) 2211.5 1352.8 1102.4 1053.4 1535.6 2558.5 2105.7 1715.6 1120.7 823.6 582.0 7823.1 4295.4 2374.7 1978.8 2448.1 2841.4 2690.5 40613.8 取引高(比率) 前半 17-18 時 18-19 時 19-20 時 20-21 時 21-22 時 22-23 時 9-10時 10-11 時 11-12 時 12-13 時 13-14 時 14-15 時 15- 15時30分 後半/ 前半 1番限(期近) 0.068 0.034 0.016 0.012 0.024 0.025 0.259 0.147 0.081 0.056 0.086 0.094 0.096 1.630 2番限 0.054 0.022 0.016 0.005 0.008 0.017 0.282 0.150 0.077 0.060 0.089 0.087 0.133 3.814 3番限 0.045 0.023 0.012 0.009 0.008 0.011 0.213 0.138 0.105 0.098 0.110 0.084 0.144 3.780 4番限 0.049 0.025 0.013 0.008 0.014 0.017 0.251 0.140 0.073 0.078 0.106 0.106 0.120 2.030 5番限 0.056 0.031 0.019 0.016 0.021 0.029 0.230 0.140 0.071 0.097 0.087 0.087 0.117 1.109 6番限(期先) 0.077 0.044 0.029 0.030 0.063 0.081 0.210 0.120 0.055 0.053 0.067 0.086 0.085 1.070 後半 17-18 時 18-19 時 19-20 時 20-21 時 21-22 時 22-23 時 23-0 時 0-1時 1-2時 2-3時 3-4時 9-10時 10-11 時 11-12 時 12-13 時 13-14 時 14-15 時 15- 15時30分 1番限(期近) 0.051 0.016 0.015 0.009 0.012 0.019 0.009 0.005 0.002 0.002 0.001 0.369 0.100 0.073 0.067 0.092 0.079 0.078 2番限 0.034 0.014 0.008 0.004 0.005 0.006 0.003 0.003 0.002 0.002 0.001 0.236 0.140 0.082 0.087 0.136 0.130 0.108 3番限 0.046 0.015 0.007 0.006 0.006 0.010 0.007 0.005 0.005 0.004 0.002 0.253 0.157 0.079 0.070 0.105 0.108 0.116 4番限 0.042 0.020 0.014 0.008 0.012 0.012 0.009 0.008 0.006 0.005 0.003 0.277 0.137 0.074 0.067 0.098 0.103 0.105 5番限 0.049 0.027 0.020 0.016 0.024 0.029 0.022 0.020 0.012 0.010 0.007 0.266 0.123 0.070 0.059 0.078 0.084 0.086 6番限(期先) 0.054 0.033 0.027 0.026 0.038 0.063 0.052 0.042 0.028 0.020 0.014 0.193 0.106 0.058 0.049 0.060 0.070 0.066

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10 図 4 取 引 高 比 率 ( 時 間 平 均 ) 前 半 後 半 表 4 取 引 高 比 率 ( 時 間 帯 平 均 ) 図 4 の 前 半 と 後 半 と 比 較 す る と , 前 半 で は 夜 間 立 会 ( 17~ 23 時 ), 日 中 立 会 (9~ 15 時 30 分 )を 問 わ ず ,取 引 開 始 時 に お い て 取 引 高 が 高 く な り ,そ の 後 低 下 し , 取 引 終 了 時 に は 再 び 高 く な る 傾 向 が 見 ら れ る . 一 方 , 後 半 に な る と 夜 間 立 会 (17~ 4 時 ) の 取 引 終 了 時 に か け て 取 引 高 が 低 下 し て い く 傾 向 に 変 わ っ て い る . 前 半 に お い て 見 ら れ る 夜 間 取 引 終 了 間 際 の 23 時 付 近 で 取 引 高 が 増 え る 傾 向 は 後 半 で も 引 き 続 き 見 ら れ る . こ れ は 欧 米 発 の ニ ュ ー ス に よ っ て 取 引 が 増 加 し て い る と い う よ り , そ の 時 刻 に 取 引 を 終 了 す る 市 場 参 加 者 が 多 い と み る べ き で あ ろ う . 前 半 が 欧 米 の 夏 時 間 , 後 半 が 標 準 時 間 な の で , 前 者 が 原 因 な ら ば 取 引 高 比 率 が 高 ま る 時 間 が 日 本 時 間 で は 1 時 間 ず れ る は ず だ か ら で あ る . 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) 前半 17-23時 9- 15時30分 1番限(期近) 0.179 0.821 2番限 0.121 0.879 3番限 0.107 0.893 4番限 0.125 0.875 5番限 0.172 0.828 6番限(期先) 0.324 0.676 後半 17-23時 23-4時 9- 15時30分 1番限(期近) 0.122 0.019 0.859 2番限 0.070 0.012 0.918 3番限 0.089 0.022 0.889 4番限 0.109 0.031 0.861 5番限 0.164 0.072 0.764 6番限(期先) 0.242 0.156 0.602

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11 次 に ,後 半 で は 9~ 10 時 に お い て 1 番 限( 期 近 )の 比 率 が 増 加 し て い る こ と や 13~ 15 時 に か け て 2 番 限 が 増 加 し て い る こ と が 窺 え る . し か し , 表 4 の よ う に 時 間 帯 ご と に 取 引 高 比 率 を 比 較 し て み る と , 日 中 立 会 に お い て 取 引 高 比 率 が 増 加 し た の は 1, 2 番 限 だ け で あ り , 3~ 6 番 限 で は 減 少 し て い る . 夜 間 立 会 の 17~ 23 時 の 時 間 帯 で は , す べ て の 番 限 で 取 引 高 比 率 が 低 下 し て お り , そ の 結 果 , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 が 延 長 さ れ た 時 間 帯 (23~ 4 時 ) に 取 引 が シ フ ト し て い る .そ の 中 で も 特 に 6 番 限 は 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 が 延 長 さ れ た 時 間 帯 で の 取 引 が 多 い こ と が 窺 え る . 4.2 流 動 性 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 に よ っ て 市 場 の 流 動 性 が ど の よ う に 変 化 し た の か に つ い て は ,Amihud(2002)が 提 案 し た 低 流 動 性 指 標 (illiquidity)を 用 い る . 第

d

営 業 日 に お け る

i

番 限 の

t

1

時 ~

t

時 の 時 間 当 た り の 価 格 変 化 率 を

r

i,t,d

同 時 期 の 取 引 高 を

V

i,t,dと す る と ,低 流 動 性 指 標(illiquidity measure)

ILLIQ

i,t

(1)式 で 表 さ れ る . な お ,

D

i,tは サ ン プ ル 期 間 の 日 数 で あ る .

it D d itd d t i t i t i

V

r

D

ILLIQ

, 1 ,, , , , ,

|

|

1

(1) Amihud(2002)の 低 流 動 性 指 標 と は , 取 引 高 1 単 位 当 た り の 価 格 変 化 率 の 絶 対 値 の 期 間 平 均 値 で あ る . 流 動 性 が 低 い 番 限 や 時 間 帯 な ら ば , 取 引 高 が 低 く て も 大 き な 価 格 変 化 が 生 じ , 低 流 動 性 指 標 は 大 き な 値 を と る . す な わ ち , 取 引 が 金 先 物 価 格 に 与 え る プ ラ イ ス ・ イ ン パ ク ト を 反 映 し た 指 標 と な っ て い る . た だ し , 取 引 の 活 発 で な い 番 限 で は 約 定 が 全 く 成 立 し な い 時 間 帯 が あ り , 低 流 動 性 指 標 の 分 母 が ゼ ロ と な る た め に , 計 算 で き な く な っ て し ま う 問 題 が 発 生 す る . こ の よ う な 取 引 が 少 な い 番 限 こ そ , 低 流 動 性 の 問 題 が 存 在 す る こ と を 考 慮 す る と 別 の 指 標 も 必 要 で あ ろ う .そ こ で ,無 取 引 比 率(Liu(2006))と ゼ ロ リ タ ー ン 比 率(Lesmond, et al. (1999))を 各 番 限 , 毎 時 間 ご と に 計 算 す る . 無 取 引 比 率 と は あ る 時 間 帯 に お い て 取 引 が な か っ た 日 数 の サ ン プ ル 期 間 に 占 め る 比 率 で あ る . 一 方 , ゼ ロ リ タ ー ン 比 率 と は 1 時 間 当 た り の リ タ ー ン が ゼ ロ の 日 数 の サ ン プ ル 期 間 比 率 で あ る . こ れ は 流 動 性 が 高 く プ ラ イ ス ・ イ ン パ ク ト が な い た め に 価 格 が 変 動 し な い 場 合 と は 逆 に , 流 動 性 が 低 く 取 引 コ ス ト が か か る と き フ ァ

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12 ン ダ メ ン タ ル 価 値 が 大 き く 変 動 し な い 限 り 取 引 を す る 人 が 現 れ な い た め , ゼ ロ リ タ ー ン と な る 現 象 を 捉 え て い る ( 太 田 ・ 竹 原 ・ 宇 野 (2011)). 図 5 低 流 動 性 指 標 1 番 限 2 番 限 3 番 限 4 番 限 5 番 限 6 番 限 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 前半 後半 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 前半 後半 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 前半 後半 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 前半 後半 0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 前半 後半 0.0000 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.0010 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 -15.5 時 前半 後半

(14)

13 図 6 無 取 引 比 率 前 半 後 半 図 7 ゼ ロ リ タ ー ン 比 率 前 半 後 半 図 5 に は 低 流 動 性 指 標 ,図 6 に は 無 取 引 比 率 ,図 7 に は ゼ ロ リ タ ー ン 比 率 の 前 半 と 後 半 の 比 較 が 表 さ れ て い る . 図 5 に よ る と , 後 半 の 低 流 動 性 指 標 は , 前 半 と 比 較 可 能 な 時 間 帯 で は い ず れ も 前 半 よ り も 低 く , 後 半 に お い て 流 動 性 が 高 ま っ て い る こ と が 分 か る . も と も と 流 動 性 の 高 い 5, 6 番 限 の 日 中 立 会 を 除 い て , す べ て の 時 間 帯 で 流 動 性 が 改 善 し て い る こ と は 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 が 延 長 さ れ た こ と が 日 中 立 会 や 夜 間 立 会 の 17~ 23 時 の 時 間 帯 に も 影 響 し て い る こ と を 示 し て い る . な お , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 が 延 長 さ れ た 時 間 帯 で の 低 流 動 性 指 標 は 他 の 時 間 帯 よ り も 高 く ,1 日 の う ち で 最 も 流 動 性 が 低 い 時 間 帯 と な っ て い る . こ れ は こ の 時 間 帯 の 取 引 高 が 低 い こ と と 整 合 的 で あ る . ま た , 後 半 の 流 動 性 改 善 度 合 い が 高 い の は 2 番 限 , 3 番 限 で あ る . こ の こ と は ,2 番 限 ・ 3 番 限 で 取 引 高 が 大 幅 に 増 加 し た こ と と 関 連 し て い る . 図 6 の 無 取 引 比 率 や 図 7 の ゼ ロ リ タ ー ン 比 率 を み て も ,後 半 の 流 動 性 改 善 効 -0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) -0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 1番限(期近) 3番限 6番限(期先)

(15)

14 果 が 確 か め ら れ る .1 番 限 や 5, 6 番 限 に は 顕 著 な 違 い は 見 ら れ な い が , 2, 3, 4 番 限 の 流 動 性 が 改 善 し て い る . 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 が 延 長 さ れ た こ と に よ る 取 引 高 の 増 加 に よ っ て 流 動 性 は 改 善 し て い る と い え よ う . 4.3 価 格 発 見 価 格 発 見 と は 新 し い 情 報 が 価 格 に 反 映 さ れ て い く 過 程 を 表 し て お り , こ こ で

は ,Barclay and Warner (1993) が 最 初 に 使 用 し た WPC ( Weighted Price

Contribution) と い う 指 標 を 用 い て 価 格 発 見 を 分 析 す る . WPC と は 日 中 の い つ の 時 間 帯 に 価 格 が 変 化 す る の か を 調 べ る の に 適 し た 指 標 で あ り , 仮 に 終 値 が 平 均 的 に み て フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 に 等 し い な ら ば ,1 日 の う ち で ど の 時 点 で 価 格 発 見 が 行 わ れ て い る の か を 計 測 す る こ と が で き る . 第

d

営 業 日 に お け る

i

番 限 の

t

1

時 ~

t

時 の 時 間 当 た り の 価 格 変 化 率 を

r

i,t,d , そ の 日 の 日 次 価 格 変 化 率 を

r

i,d, サ ン プ ル 期 間 の 日 数 を

D

i,tと す る と ,

WPC

i,tは (2)式 で 表 さ れ る .

 

it t i D d id d t i D d id d i t i

r

r

r

r

WPC

, , 1 , , , 1 , , ,

)

|

|

|

|

(

(2) つ ま り ,WPC は 日 次 価 格 変 化 率 に 対 す る あ る 時 間 帯 の 価 格 変 化 率 の 比 率 の 加 重 平 均 と な っ て い る . 加 重 の 仕 方 は 絶 対 値 で み て , 価 格 変 動 が 大 き い 日 に ウ ェ イ ト を 大 き く し て い る . 図 8 に は 1 時 間 ご と の WPC を グ ラ フ に , 図 9 で は 時 間 帯 ご と の WPC を 表 に ま と め て い る . 前 半 で は , 夜 間 立 会 の 取 引 終 了 時 か ら 日 中 立 会 の 取 引 開 始 時 ま で の 取 引 中 断 時 で の WPC が 大 き か っ た . ニ ュ ー ヨ ー ク 市 場 で の 価 格 変 化 を 踏 ま え て 取 引 さ れ る 東 京 の 日 中 立 会 の 取 引 開 始 時 に 多 く の 情 報 が 価 格 に 反 映 さ れ る か ら で あ る .一 番 大 き い 1 番 限( 期 近 )で 53% ほ ど ,一 番 小 さ い 6 番 限( 期 先 )で 37% ほ ど の 価 格 変 動 は 夜 間 立 会 の 取 引 終 了 時 か ら 日 中 立 会 の 取 引 開 始 時 ま で の 取 引 中 断 時 に お い て 起 こ っ て い た . 後 半 で は 夜 間 の 取 引 中 断 時 が 短 縮 さ れ ,4~ 9 時 の WPC は 29%( 1 番 限 ) ~ 17%( 6 番 限 ) と 大 幅 に 縮 小 し た . し か し , こ れ で は 比 べ て い る 時 間 の 間 隔 が 異 な る の で 比 較 す る の は 不 適 切 で あ ろ う . 前 半 と 比 較 可 能 な 23~ 9 時 の 時 間 帯 で 後 半 の WPC を 計 測 す る と , 1 番 限 を

(16)

15 除 い て WPC が 増 加 し て お り ,特 に 4,5,6 番 限 の WPC の 増 加 が 顕 著 で あ る . 夜 間 の 取 引 中 断 時 の WPC が 小 さ か っ た 4, 5, 6 番 限 は は と も に 23~ 9 時 の 時 間 帯 で の WPC が 54%ほ ど に 増 加 し て お り ,反 対 に ,日 中 立 会( 9-15 時 30 分 ) の 時 間 帯 で WPC が 大 幅 に 低 下 し て い る . 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 に よ っ て 価 格 形 成 に お け る 夜 間 の 重 要 性 が 高 ま っ て い る こ と が 窺 え る . 図 8 WPC( 時 間 平 均 ) 前 半 後 半 表 5 WPC( 時 間 帯 平 均 ) 4.4 効 率 性 最 後 に , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 延 長 が 価 格 効 率 性 に 与 え た 影 響 を 分 析 す る . こ -0.050 0.050 0.150 0.250 0.350 0.450 0.550 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 9 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 引け -寄付 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) -0.050 0.050 0.150 0.250 0.350 0.450 0.550 17 - 18 時 18 - 19 時 19 - 20 時 20 - 21 時 21 - 22 時 22 - 23 時 23 - 0 時 0 - 1 時 1 - 2 時 2 - 3 時 3 - 4 時 4 - 9 時 9 - 10 時 10 - 11 時 11 - 12 時 12 - 13 時 13 - 14 時 14 - 15 時 15 - 15.5 時 引け -寄付 1番限(期近) 3番限 6番限(期先) 前半 17 - 23時 23 - 9時 9 - 15時 30分 15時30分 - 17時 1番限(期近) 0.211 0.531 0.258 0.043 2番限 0.232 0.511 0.256 0.063 3番限 0.333 0.423 0.244 0.041 4番限 0.341 0.423 0.237 0.066 5番限 0.392 0.364 0.244 0.055 6番限(期先) 0.393 0.369 0.239 0.055 後半 17 - 23時 23-9時 (23-4時) (4 - 9時) 9 - 15時 30分 15時30分 - 17時 1番限(期近) 0.311 0.510 0.216 0.294 0.179 0.053 2番限 0.236 0.543 0.414 0.128 0.221 0.011 3番限 0.322 0.474 0.358 0.116 0.203 0.030 4番限 0.311 0.548 0.377 0.171 0.141 0.031 5番限 0.277 0.543 0.377 0.165 0.180 0.054 6番限(期先) 0.287 0.541 0.372 0.169 0.171 0.065

(17)

16

こ で は ,Biais, Hillion, and Spatt (1999)に よ っ て 提 案 さ れ た “unbiasedness

regressions” と い う 回 帰 分 析 の 手 法 を 使 用 す る . Biais, Hillion, and Spatt (1999)は こ の 方 法 に よ っ て , 証 券 価 格 に フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 に 関 す る 情 報 と ノ イ ズ の ど ち ら が 反 映 さ れ て い る の か を 検 証 し た . 具 体 的 に は , 最 終 的 に 明 ら か に な る フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 を

v

, 時 点 0 で の フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 の 推 定 値 を

E

(

v

|

I

0

)

, 時 点

t

(

t

0

)

で の 価 格 を

P

tと し て ,

e

I

v

E

P

I

v

E

v

(

|

0

)

t

t

(

t

(

|

0

))

(3) と い う 回 帰 式 を 推 計 す る . も し , 時 点 0 か ら 時 点

t

ま で の 間 に フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 に 関 す る 情 報 が 価 格 に 反 映 さ れ て い な い 場 合 , つ ま り 価 格 に ノ イ ズ が 反 映 さ れ て い る な ら ば , t t

E

v

I

P

(

|

0

)

な の で ,

t

0

と な る . 反 対 に , 時 点 0 か ら 時 点

t

ま で の 間 に フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 に 関 す る 情 報 が す べ て 価 格 に 反 映 さ れ て い る 場 合

)

(

P

t

v

, 時 点

t

の 価 格 が 効 率 的 と な り ,

t

1

が 成 立 す る . 検 定 は 時 点

t

で の 価 格 が 効 率 的 で あ る こ と を 帰 無 仮 説 と し て ,

t

1

を 棄 却 す る こ と が で き る か を 検 定 す る .

Biais, Hillion, and Spatt (1999)は 取 引 日

T

の 終 値

P

c,Tを フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価

v

と み な し ,取 引 日

T

1

の 終 値

P

c,T1を 時 点 0 で の フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 の 推 定 値

(

E

(

v

|

I

0

))

と み な す こ と で , t T c T c t t t T c T c T c

P

P

P

P

P

P

    1 , 1 , 1 , 1 , , (4) と い う 回 帰 式 の 推 計 を 行 っ て い る . こ の と き ,

)

(

)

,

(

1

1 , 1 , ,  

T c t T c t t T c t

P

P

Var

P

P

P

P

Cov

と な る .

t

1

の ケ ー ス は ,

Cov

(

P

c,T

P

t

,

P

t

P

c,T1

)

0

で あ り ,取 引 日

T

1

の 終 値

P

c,T1か ら 取 引 日

T

の 時 点

t

ま で の 価 格 情 報 を も っ て , 取 引 日

T

の 終 値

P

c,T価 格 を 予 想 で き な い こ と , つ ま り , 時 点

t

の 価 格 に 情 報 が す べ て 反 映 さ れ て い る こ と を 意 味 し て い る . こ の こ と を も っ て , 時 点

t

の 価 格 が 効 率 的 で あ る と み な す . も し ,

Cov

(

P

c,T

P

t

,

P

t

P

c,T1

)

0

で あ る な ら

t

1

で あ り ,こ の 場 合 に は 効 率 的 な 価 格 に 比 べ て 過 剰 反 応 が 起 こ っ て い る 可 能 性 が あ り , 逆 に ,

(18)

17

0

)

,

(

P

c,T

P

t

P

t

P

c,T1

Cov

の と き は

t

1

で あ り ,こ の 場 合 に は 効 率 的 な 価 格 に 比 べ て 過 小 反 応 が 起 こ っ て い る 可 能 性 が あ る . 以 下 で は , 日 中 立 会 の 終 値 (15 時 30 分 の 価 格 ) が 平 均 的 に フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 と 等 し い と み な し , 日 中 立 会 の 始 値 (9 時 の 時 点 の 価 格 ) か ら 1 時 間 ご と の 価 格 の 情 報 効 率 性 を 検 証 す る7 表 6 効 率 性 検 定 表 6 に は 日 中 立 会 の 1 時 間 ご と の 各 時 点 の 効 率 性 の 検 定 結 果 を 示 し て い る . 前 半 と 後 半 の 単 回 帰 の 係 数 が そ れ ぞ れ 1 と な る ,つ ま り 各 時 点 の 価 格 が 効 率 的 で あ る こ と を 帰 無 仮 説 と し て 検 定 し て い る . 差 ( 後 半 - 前 半 ) は 前 半 と 後 半 の 単 回 帰 の 係 数 の 差 が 0 か ど う か を 検 定 し て い る . 表 6 に 示 さ れ た 効 率 性 の 検 定 結 果 は 明 ら か で あ る .前 半 は ど の 時 点 の 価 格 も 効 率 的 で は な か っ た が , 後 半 に な る と 効 率 的 に な っ て い る . ま た , 前 半 と 後 半 の 係 数 の 差 は 有 意 で あ る こ と が 多 く , 夜 間 取 引 延 長 に よ る 価 格 の 効 率 性 の 改 善 が 見 ら れ る . 7日 中 立 会 の 終 値 が 平 均 的 に フ ァ ン ダ メ ン タ ル 価 値 と 等 し い こ と は ,非 常 に 重 要

な 仮 定 で あ る . そ こ で , 別 途 ,Stoll and Whaley (1990)の 分 散 比 検 定 を 行 い ,

終 値 が 効 率 的 な 価 格 で あ る こ と を 確 認 し た . 9時 10時 11時 12時 13時 14時 15時 1番限(期近) 前半 1.08 * 1.12 *** 1.09 *** 1.07 *** 1.05 ** 1.02 1.03 *** 後半 0.93 0.98 1.00 1.00 0.98 0.99 1.00 差(後半-前半) -0.16 ** -0.14 *** -0.09 ** -0.07 * -0.07 ** -0.03 -0.02 * 2番限 前半 1.10 ** 1.13 *** 1.12 *** 1.09 *** 1.09 *** 1.05 ** 1.03 *** 後半 1.00 1.04 1.00 1.01 0.99 0.98 0.99 差(後半-前半) -0.10 -0.09 * -0.12 ** -0.08 ** -0.10 ** -0.06 ** -0.04 *** 3番限 前半 1.08 ** 1.11 *** 1.11 *** 1.08 *** 1.08 *** 1.05 ** 1.03 *** 後半 1.00 1.03 0.99 0.99 0.97 0.98 0.98 差(後半-前半) -0.08 -0.08 * -0.11 *** -0.09 ** -0.11 *** -0.07 ** -0.05 *** 4番限 前半 1.10 ** 1.12 *** 1.11 ** 1.09 *** 1.09 *** 1.06 *** 1.05 *** 後半 0.95 1.03 1.00 0.99 0.97 0.98 0.98 差(後半-前半) -0.15 ** -0.09 * -0.11 *** -0.10 *** -0.12 *** -0.08 ** -0.07 *** 5番限 前半 1.08 * 1.11 *** 1.10 *** 1.09 *** 1.09 *** 1.05 ** 1.04 *** 後半 1.02 1.03 1.00 1.00 0.98 0.98 0.98 差(後半-前半) -0.06 -0.08 -0.10 ** -0.09 ** -0.11 *** -0.07 ** -0.06 *** 6番限(期先) 前半 1.09 ** 1.11 *** 1.10 *** 1.08 *** 1.09 *** 1.05 ** 1.04 *** 後半 1.00 1.03 1.00 0.99 0.97 0.98 0.98 差(後半-前半) -0.08 -0.08 -0.10 ** -0.09 ** -0.11 *** -0.07 ** -0.06 *** (注) 「係数(前半,後半)=1」という帰無仮説、および「係数の差=0」という帰無仮説を検定し、棄却される場合には    *,**,***を付ける。*,**,***はそれぞれ10%,5%,1%で棄却されることを指す。

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18 前 半 に お い て ,係 数 が 1 よ り も 大 き な 値 を と る こ と が 多 い こ と は 効 率 的 な 価 格 に 比 べ て 過 小 反 応 が 起 こ っ て い る 可 能 性 を 示 し て い る . さ ら に , 効 率 性 の 改 善 は 流 動 性 の 上 昇 が 見 ら れ た 2 , 3 番 限 の み な ら ず , す べ て の 限 月 で 見 ら れ る . つ ま り , 流 動 性 の 上 昇 が 見 ら れ な い 番 限 で も , 流 動 性 の 向 上 が 顕 著 な 番 限 と 連 動 す る 形 で 効 率 性 の 改 善 が 見 ら れ る こ と が 示 さ れ た . 5. お わ り に 本 章 で は , 東 京 工 業 品 取 引 所 ( 当 時 ) が 2010 年 に 行 っ た 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 が ① 取 引 高 , ② 市 場 流 動 性 , ③ 価 格 発 見 , ④ 価 格 効 率 性 に 与 え た 影 響 を 分 析 し た . 夜 間 取 引 の 延 長 に よ っ て 1 日 の 平 均 取 引 高 が 上 昇 す る の は 2~ 4 番 限 で あ り , 1 番 限( 期 近 )や 5~ 6 番 限( 期 先 )で は 取 引 高 の 変 化 が あ ま り 見 ら れ な か っ た . た だ し ,5~ 6 番 限 は 延 長 さ れ た 夜 間 取 引 の 時 間 帯 で の 取 引 が 高 ま る 一 方 で 他 の 時 間 帯 の 取 引 が 低 下 し て お り ,1 日 の 取 引 パ タ ー ン の 変 化 が 生 じ て い る . 低 流 動 性 指 標 や 無 取 引 比 率 , ゼ ロ リ タ ー ン 比 率 で 計 測 し た 流 動 性 の 向 上 が 最 も 顕 著 に 見 ら れ た の は ,1~ 4 番 限 で あ っ た .そ れ ら の 番 限 で は ,夜 間 立 会 の み な ら ず 日 中 立 会 で も 流 動 性 の 向 上 が 見 ら れ る こ と が 興 味 深 い 発 見 で あ る . 価 格 発 見 の 指 標 か ら み る と , 夜 間 取 引 延 長 の 時 間 帯 お よ び 夜 間 の 取 引 中 断 の 時 間 帯 の 価 格 寄 与 率 は 2~ 6 番 限 で 上 昇 し て お り , 価 格 形 成 に お い て 夜 間 の 重 要 性 が 高 ま っ て い る . さ ら に , 日 中 立 会 に お け る 価 格 の 効 率 性 は す べ て の 番 限 で 改 善 さ れ て い る こ と が 明 ら か に な っ た . 流 動 性 の 上 昇 が 見 ら れ な い 番 限 も 含 め て す べ て の 番 限 で 効 率 性 が 改 善 さ れ て い る の は , 番 限 間 で 価 格 が 連 動 し て い る こ と が 原 因 と 考 え ら れ る . 上 記 の 結 果 を 踏 ま え る と , 夜 間 立 会 の 取 引 時 間 の 延 長 に は 市 場 の 流 動 性 と 価 格 の 効 率 性 に プ ラ ス の 効 果 が あ っ た と い え よ う . た だ し , 本 研 究 で は 最 も 取 引 高 が 大 き く ,国 際 的 に 同 質 な コ モ デ ィ テ ィ で あ る 金 先 物 を 分 析 対 象 と し て お り , 他 の コ モ デ ィ テ ィ も 同 様 の 結 論 に 至 る の か , 他 の 市 場 を 分 析 す る こ と が 今 後 の 課 題 と い え よ う .

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19 参 考 文 献 太 田 亘 ・ 竹 原 均 ・ 宇 野 淳 (2011)『 株 式 市 場 の 流 動 性 と 投 資 家 行 動 - マ ー ケ ッ ト ・ マ イ ク ロ ス ト ラ ク チ ャ ー 理 論 と 実 証 』 中 央 経 済 社 . 飯 島 慶 雄 ・ 加 藤 英 明 ・ 徳 永 俊 史(2000)「 金 先 物 価 格 の 時 系 列 分 析 : 日 米 比 較 」 先 物 取 引 研 究 ( 日 本 商 品 先 物 振 興 会 ), 第 4 巻 , 第 2 号 . 坂 本 智 幸 ・ 芹 田 敏 夫 ・ 濱 田 隆 道(2006)「 取 引 メ カ ニ ズ ム が 異 な る 市 場 間 競 争 が 価 格 」 市 場 構 造 研 究 所 ワ ー キ ン グ ペ ー パ ー No.06-1. 芹 田 敏 夫 ・ 坂 本 智 幸 ・ 山 岡 博 士(2008)「 ガ ソ リ ン 先 物 市 場 の 日 中 の 価 格 形 成 と 流 動 性 : 取 引 デ ー タ に 基 づ く 実 証 研 究 」 先 物 取 引 研 究 ( 日 本 商 品 先 物 振 興 会 ), 第 11 巻 , 第 1 号 , pp.33-59. 芹 田 敏 夫 ・ 濱 田 隆 道 ・ 荒 木 浩 介 ・ 坂 本 智 幸(2005)「 金 先 物 市 場 の 日 中 の 価 格 形 成 と 流 動 性 : 取 引 デ ー タ に 基 づ く 実 証 研 究 」 市 場 構 造 研 究 所 ワ ー キ ン グ ペ ー パ ー No.05-1. 羽 森 茂 之 ・ 羽 森 直 子(2000)「 商 品 先 物 市 場 に お け る 収 益 率 の 時 系 列 特 性 : ボ ラ テ ィ リ テ ィ の 日 米 比 較 」 先 物 取 引 研 究 ( 日 本 商 品 先 物 振 興 会 ), 第 4 巻 , 第 2 号 . 程 島 次 郎 ・ 森 本 孝 之(2008)「 ガ ソ リ ン , 灯 油 , 原 油 の 3 つ の 商 品 先 物 の 高 頻 度 デ ー タ に よ る 時 系 列 相 関 分 析 」 研 究 助 成 金 対 象 論 文 集 ( 日 本 商 品 先 物 振 興 会 ),No.101. 森 保 洋(2008)「 金 先 物 市 場 の マ イ ク ロ ス ト ラ ク チ ャ ー - テ ッ ィ ク ・ デ ー タ を 利 用 し た 実 証 研 究 」先 物 取 引 研 究( 日 本 商 品 先 物 振 興 会 ),第 11 巻 ,第 1 号 , pp.151-168.

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参照

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