• 検索結果がありません。

3. 本稿は 2007 年 5 月 31 日付のリポート 消費者ローン ABS の格付け分析の手法と想定 を更新するとともに 現在適用している国内クレジットカード債権 ABS 案件の格付け規準を包括するものである なお 本稿では 特に以下の点に焦点を当てて解説している 日本のクレジットカード債権と消

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "3. 本稿は 2007 年 5 月 31 日付のリポート 消費者ローン ABS の格付け分析の手法と想定 を更新するとともに 現在適用している国内クレジットカード債権 ABS 案件の格付け規準を包括するものである なお 本稿では 特に以下の点に焦点を当てて解説している 日本のクレジットカード債権と消"

Copied!
26
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2010 年 9 月 29 日 【旧版】格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:

国内クレジットカード・消費者ローン債権証券化の格付け手法と想定

アナリスト: 松尾俊宏、東京 電話 03-4550-8225 山岡隆正、東京 電話 03-4550-8719 【編集注】本格付け規準は、現在は適用していません。日本のクレジットカード・消費者ローン債権証券化の分 析には、2014 年 10 月 9 日付「Criteria | Structured Finance | ABS: Global Methodology And Assumptions For Assessing The Credit Quality Of Securitized Consumer Receivables」(和訳版:2014年12月17日付「格 付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS: 消費者向け債権証券化のグローバル格付け手法と想定」) を適用しています。 1. 本稿では、スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「スタンダード &プアーズ」)が、日本におけるクレジットカード債権および消費者ローンを裏付けとした 資産担保証券(ABS)案件の格付け分析に採用している手法と想定について解説する。本 稿は、国内クレジットカード債権および消費者ローン債権ABS に対するスタンダード&プ アーズの格付け手法について、セクター間、地域間および時間軸を超えた格付けの比較可 能性の向上を図るとともに、市場関係者の理解を深めることを目的としている。本稿で説 明する格付け規準は、2007年5月29日付リポート「Principles-Based Rating Methodology For Global Structured Finance Securities」(日本語版は、2007 年 7 月 3 日付の「原則に 基づいた格付け手法」)と関連している。

格付け規準の概要

2. スタンダード&プアーズは、セクター間、地域間および時間軸を超えて格付けが比較可能 なものとなることを目標としており、今回、その観点から日本のクレジットカードおよび 消費者ローンABS に関する格付け規準の見直しを実施した。この見直しによって長年使用 してきた格付け定義を再確認するものである。スタンダード&プアーズの「AAA」のよう な格付け符号は、その場所や時間を問わず信用力の比較可能な全体観を含意することを目 指している。一般に、地域にかかわらずクレジットカードABS に対しては、同一の格付け 手法を適用する。日本のクレジットカードおよび消費者ローン証券化に適用する格付け規 準は、その他地域で採用されるクレジットカードABS、特に米国における格付け手法(2010 年4 月 19 日付のリポート「General Methodology And Assumptions For Rating U.S. ABS Credit Card Securitizations」、英語のみ)の分析手法に沿ったもので、日本国内の市場特 性、クレジットカードや個人向けローン商品の特徴、証券化の仕組みや法規制の違いにつ いて調整が行われている。さらに、更新された格付け規準の手法と想定は、国内およびグ ローバルの裏付け資産のクレジットカードおよび個人向けローン市場におけるパフォーマ ンスとその動向に関するスタンダード&プアーズの見解を反映している。 「スタンダード&プアーズ・レーティ ングズ・サービシズ(Standard & Poor’s Ratings Services)」が発行し た本リポートに記載されている格付 け規準は、スタンダード&プアーズ・ レーティング・ジャパン株式会社に おいて採用されております。 また、本格付け規準は、日本スタン ダード&プアーズ株式会社において も採用されております。

The criteria in this report issued by "Standard & Poor’s Ratings Services” is adopted by Standard & Poor’s Ratings Japan K.K.

This criteria is also adopted by Nippon Standard & Poor’s K.K.

(2)

3. 本稿は、2007 年 5 月 31 日付のリポート「消費者ローン ABS の格付け分析の手法と想定」 を更新するとともに、現在適用している国内クレジットカード債権ABS 案件の格付け規準 を包括するものである。なお、本稿では、特に以下の点に焦点を当てて解説している。 • 日本のクレジットカード債権と消費者ローンとの特徴の違いに関するスタンダード& プアーズの見方 • 日本のクレジットカードおよび消費者ローンABS に適用するストレス・シナリオにお ける想定に関して、格付けの比較可能性向上の観点からの議論 • 2010 年 6 月から完全施行となった改正貸金業法も含めた国内法制度のアップデート

格付け規準更新の概要

4. 本稿は、2007 年 5 月 31 日付の「消費者ローン ABS の格付け分析の手法と想定」を更新す るものである。本稿における格付け規準の要旨は、以下のとおり。 • 2007 年 5 月の格付け規準では国内の消費者ローン ABS のみをカバーしていたが、今 回の更新で、クレジットカード債権まで適用範囲を拡大する。 • 日本のクレジットカード債権および消費者ローンABS にベンチマーク・プールの概 念を導入する。 • 通常の経済サイクル期におけるベンチマーク・プールに対する「AAA」ストレスのデ フォルト率想定は33%に設定する。 • グローバルのスタンダード&プアーズ格付けに関する比較可能性を向上する目的で、 ストレスの想定に関する変更ならびに拡充を実施する。 • 米国クレジットカードABS の格付け規準との差異に関する要因についての説明、特 に、ベンチマーク・プールのプロフィール、ポートフォリオ・イールドの想定、元本 返済率の想定、および「グレーゾーン金利」に関する国内特有の分析に関して説明を する。

既存格付けへの影響

5. 今回の格付け規準の公表に伴って、国内のクレジットカード債権および消費者ローン ABS の既存格付けへの影響はない。

発効日および移行期間

6. 本格付け規準は、新規および既存すべての国内のクレジットカード債権および消費者ロー ンABS に対して、ただちに適用される。

手法と想定

国内クレジットカードおよび消費者ローン債権 ABS の概要 クレジットカード債権 7. 国内クレジットカード債権とは、カード利用者が物品・サービス等を購入した場合(以下「シ ョッピング債権」)または金銭の借り入れを実施した場合(以下「キャッシング債権」)に

(3)

発生する。カード利用は利用者とカード会社との間で締結されるクレジットカード規約に 基づくが、ショッピング債権とキャッシング債権とでは異なる法律により規定される。前 者は割賦販売法に、後者は貸金業法に基づくものとされる。 8. ショッピング債権では、カード保有者が加盟店におけるクレジットカード利用時に通常、 ①翌月一括払い(マンスリークリア)、②1 回または 2 回分割によるボーナス月での支払い (ボーナス払い)、③支払い回数指定による分割払い、④リボ払い――のうち、いずれかの 支払い方法を選択する。近年は、翌月払いを選択した利用者に対して、予定支払日までに インターネットまたはコールセンターに連絡をすることでリボ払いへの変更が可能となる サービスを提供するクレジットカード会社も一般的になっている。 9. キャッシング債権では、カード保有者が限度額の範囲内で提携金融機関および自社 ATM で 現金を引き出す。通常の返済方法は上記③または④であるが、カード保有者がATM からの 入金または送金により元本の繰り上げ返済をするオプションもあるのが一般的である。 10. 一般に信販会社が発行するクレジットカード債権においては、約定返済額がカード利用者 (債務者)の銀行口座から自動引き落としされ、仮に預金残高の不足により口座引き落とし ができなければ、延滞債権として認識されるのが通例である。したがって、信販会社のキャ ッシング債権も含め、クレジットカード債権における正常債権は通常、少なくとも約定返済 額どおりの支払いが行われているとみなされる。この点が、クレジットローン債権と消費者 ローン債権とで、格付け上の分析の想定が異なる重要な要素であり、本稿においては銀行引 き落としの有無により、「クレジットカード債権」と「消費者ローン債権」とを区分する。 本格付け規準においては、クレジットカード債権は債務者の銀行口座からの直接引き落とし を伴うものとし、消費者ローンはこの自動引き落としを伴わない債権と分類する。 消費者ローン債権 11. 一般に、消費者金融会社が提供する個人向け無担保・無保証で資金使途を問わないローンが、 消費者ローン債権に該当する。上述のとおり、消費者ローンの場合には、月次の返済方法 は自社および提携会社ATM を通じた入金、ならびに銀行振り込みであり、銀行口座からの 自動引き落としではない。 12. 消費者ローンにおいては、リボルビング方式の貸し付けが多く、各債務者別に一定の限度枠 設定がなされ、限度額の範囲内で追加貸し出しが行われる。また通常、約定返済額としての 最低支払額(元本および利息)の入金がなくても、約定利息分の入金があれば、消費者金融 会社の管理システム上は延滞債権として認識していない場合がある。したがって、消費者ロ ーン債権では、契約書で約定元本の返済義務の規定と、債務者からの実際の返済が事務管理 上では直接リンクしていないケースも多い。この点に鑑み、消費者ローン契約上の最低支払 額からは想定する元本返済率などの指標が乖離することを理解することが重要である。 証券化スキームの特徴 13. 一般的なクレジットカードおよび消費者ローン債権を裏付け資産とする証券化案件のスキ ーム上の特徴として、1)利息回収金で格付け対象債券(信託受益権やローンなども含む; 以下同様)の元本償還を補う仕組み(デフォルト・トラップ)が備わっている、2)リボル ビング方式による追加貸し出しに対応するためにセラー持ち分が設定される、3)格付け対

(4)

象債券の残高を一定期間維持するための期間(リボルビング期間)が設定される――ことな どが挙げられる。詳細については、「APPENDIX I:国内証券化スキーム例の概説」を参照。

信用力分析

14. スタンダード&プアーズでは、セクター間、地域間および時間軸を超えて格付けの比較可 能性を高めるために、「AAA」シナリオについては大恐慌(The Great Depression)時点の 極めて強い経済的ストレスを参照にして格付け規準を構築することとしている。しかしな がら、同ストレス下における日本のクレジットカードおよび消費者ローン債権のパフォー マンスが参照できる有意なデータは存在しないため、米国クレジットカードの格付け規準 (2010 年 4 月 19 日付「General Methodology And Assumptions For Rating U.S. ABS Credit Card Securitizations」)を参照とすることとした。2003-2005 年の日本の信販会社 のキャッシング債権と米国のバンクカードのインデックス〈S&P Credit Card Quality Index (“CCQI”)〉の水準を比較すると、1)日本の失業率は米国水準より平均約 0.7%ポイ ント低い、2)日本の失業率も低下局面にあるにもかかわらず国内キャッシング債権のイン デックスはやや悪化傾向が見られる、3)検討対象期間は短い――ことなどが見て取れるも のの、両者は同水準の信用力を持つと、スタンダード&プアーズは評価している(図8)。 事実、直近の両インデックスのパフォーマンスは10%程度のデフォルト率/ロス率を示し ているとともに、米国では失業率が10%付近まで上昇し、日本ではグレーゾーン金利に対 する最高裁判決以降の事業環境悪化している(段落68-70 を参照)ように、両セクターの 背景は異なるものの、中程度のストレスがかかっていると考えている。したがって、国内 クレジットカードのキャッシング債権のベンチマーク・プールのデフォルト率は「AAA」 のストレス・シナリオにおいてはピークで33%に達すると評価している。これは、米国ク レジットカードABS の格付け規準における CCQI のベンチマーク・プールの想定と同水準 である(詳細は、「APPENDIX II:日本のクレジットカード債権のデフォルト率において 想定するストレス・シナリオ」で解説)。 15. クレジットカード債権および消費者ローンを裏付け資産とする証券化案件を格付けする際 には、オリジネーターから提出された過去データ、属性データなどに利用して、デフォル ト率、元本返済率、イールドなどの重要な変動要因についてスタンダード&プアーズの見 方を固める。一般的には、現在および将来におけるマクロ経済環境、および証券化対象プ ールの強みや弱みに対する見通しをもとに、過去の傾向値から将来のパフォーマンスを予 測するアプローチが中心となる。 16. 将来パフォーマンスの予測に際しては、提供されるデータと情報の持つ意味を理解し、案件 に影響を及ぼす可能性のある定量的・定性的な要素を判断するために、オリジネーターとの レビュー・ミーティングを実施する。最終的にはこれら複数のファクターに基づき、スタン ダード&プアーズは各案件について重要な変動要因に関するベースケースとストレス・シナ リオを決定する。各証券化案件の諸条件、ストラクチャーおよび主要変動要因に対するイン プットに基づき、通常、キャッシュフロー・モデルを構築し、各トランシェの信用補完水準 で想定される格付けレベルのストレス・シナリオに耐えうるかどうかを検証する。以下、各 種データの利用方法とともに、各変動要因について分析の際の考え方を解説する。

(5)

属性データ 17. 属性データとは、ある一時点における、項目別構成比率データにより債権プールの特徴を 示している。各項目について、当該債権プール内の債権・債務者の分布状況を把握する上 で役立つ。スタンダード&プアーズは、主に以下のプールの特徴を把握するために、入手 可能な属性データを分析している。 • 債務者の借り入れ状況 • 債務者の雇用状況と収入 • 地域、年齢、性別などの集中 • 過去の借り入れ状況と適用利率 • 現在の借り入れ条件 18. 属性データを分析することにより、当該証券化対象プールの主な特徴を把握できる。さらに、 1)オリジネーターが保有する同種の債権全体(母体債権プール)と比較してどのような違い があるのか、2)同じセクターの債権プールと比較してどのような特徴があるのかを中心に、 分析を行う。これらの属性データを分析した結果は、最終的にキャッシュフロー分析を行う 際に想定するデフォルト率、元本返済率、イールドなどを決定する上で参考資料となる。 過去データ 19. 過去データとは、あるオリジネーターが過去もしくは現在において保有する債権プールに ついて、過去数年間にわたるパフォーマンスの推移を示すデータを意味する。過去データ には、1)ある一時点において発生した債権のその後の時系列のパフォーマンス推移を示す スタティック・データ、2)対象となる債権の残高が変動する状態(新規貸し出しによる増 加、あるいは返済による減少がある状態)で、特定のオリジネーターが時点ごとに保有す る債権の時系列のパフォーマンス推移を示すダイナミック・データ――などがある。 20. 特定のオリジネーターについて、月次デフォルト率、元本返済率などの各要素が過去にど のようなパフォーマンスを示していたのか、直近はどのような傾向にあるのかを把握する のに役立つ。スタンダード&プアーズでは、主として以下の要素に着目し、証券化対象で あるローン債権のオリジネーターが保有する母体債権プール等の過去データを分析する。 デフォルト率 21. ベースケースの想定: スタンダード&プアーズがデフォルト率のベースケースを想定す る際に、オリジネーターから提供される過去データ(主として、母体債権に関する月次ダ イナミック・データ)が重要な指標となるものの、マクロ経済環境、オリジネーターの事 業運営方針、業界動向、予定される関連法規制の変更なども含め、その他の定性的要因が ベースケースに影響を与える。 22. デフォルトの定義: オリジネーターの回収方針によって異なるが、多くの証券化案件で は、「デフォルト」債権を下記のように定義することが一般的である。 • 90-120 日以上の延滞(今後の継続支払いが不能と判断される延滞日数) • 債務者の法的破綻(破産、民事再生) • 弁護士等の第三者介入 • 条件緩和(債務の一部免除、金利の減免、最低支払金額の低減など)

(6)

23. デフォルト率の算出方法: 上記で定義されるデフォルト金額を分子とし、デフォルト債 権を除く総債権残高を分母として算出されるのがデフォルト率である。ローン債権残高が 急速に増加している場合などは、分母が大きくなることにより、一見すると過去データが 示すデフォルト率が低く見えることから、スタンダード&プアーズでは、6 カ月前など一定 期間前の時点における残高を分母として過去データを補正することがある。また、同種案 件のサーベイランス・データがある場合には、それらも参考にしてベース・デフォルト率 を決定することになるが、実績のデフォルト率の水準のみならず追加貸出率の推移に着目 することが多い。 24. 高い格付け水準では高い安定性: スタンダード&プアーズの格付けは一般に、対象証券 の元利払いに支障が生じることなく耐えられるストレス水準に対する見方を反映したもの である。格付けカテゴリーが高くなるほど、経済環境が悪化したシナリオにおいて、より 強固な金融債務の履行能力を持つものと評価している。対象証券が資本構成上の優先順位 で劣後に位置すればするほど、当該証券のストレス・シナリオはベースケースに近づくよ うになり、通常では「B 格」のストレス・シナリオと想定するベースケースの経済シナリ オとをほぼ同等なものと定義している。したがって、「B 格」のストレス・シナリオは経済 環境およびその見通しの変化に伴い変更されることとなり、より高い格付けのストレス・ シナリオと比較すると、ベースケースの想定の変化に対してより高い感応度を持つことと なる。例えば、好況期に「B」格付けを付与された証券は、仮にその後急速な景気後退に見 舞われた場合には、より高い格付けの証券に比べて、格下げやデフォルトとなるリスクが 高い。対照的に、より高い優先順位のトランシェに対するストレス・シナリオは既存のベ ースケースからは離れている(より強いストレス)ため、「AAA」格付けのシニア証券は比 較的安定していると考えられる。 図 1:日本のインデックスにおけるデフォルト率の推移 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 2003 年1 月 2003 年5 月 2003 年9 月 2004 年1 月 2004 年5 月 2004 年9 月 2005 年1 月 2005 年5 月 2005 年 9 月 2006 年1 月 2006 年 5 月 2006 年9 月 2007 年1 月 2007 年5 月 2007 年9 月 2008 年1 月 2008 年5 月 2008 年9 月 2009 年1 月 2009 年5 月 2009 年9 月 2010 年1 月 消費者ローン クレジットカード キャッシング債権

(7)

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 5% 10% 15% ベースケースのデフォルト率 ストレス・シナリオの ピーク・デフォルト率 AAA ストレス A ストレス BBB ストレス B ストレス 25. ベンチマーク・プールと「AAA」アンカーの想定: 個別証券化案件プールごとに特性が あるものの、スタンダード&プアーズが格付けを付与している信販会社がオリジネートす る国内キャッシング債権(クレジットカード)のインデックスの構成プールを、平均的な 証券化案件のベンチマークと考えている(図1 参照)。同インデックスのデフォルト率がお よそ年率 10%以下という、通常または平均よりも良好な経済状況においては、「AAA」の ストレス・シナリオにおけるピーク・デフォルト率を33%と想定している。言い換えれば、 ベンチマーク・プールに対してベースケースで想定するデフォルト率が10%以下の場合に は、「AAA」ストレスで想定するピーク・デフォルト率は 33%の固定値をアンカーとして 下限(フロア)が設定されている。通常の経済サイクルでは「AAA」ストレスのピーク・ デフォルト率が一定であるということは、良好な経済状況においてデフォルト率が低下し た時には、損失に対するカバレッジ倍率が結果的に上昇することとなる。一方で、「B 格」 のシナリオは経済サイクルに沿って想定を変化させることとなり、「BBB 格」や「A 格」 のシナリオは「AAA」と「B」の中間に位置することとなる(図 2 参照)。実際の証券化プ ールの信用リスクを評価する場合には、ベンチマーク・プールや同種債権プールと比較考 察する。スタンダード&プアーズの評価においては、各オリジネーターの母体プールの過 去パフォーマンス、証券化プール独自のローンや債務者特性、フォワードルッキングなベ ースケースのパフォーマンスのレビューを実施する。実際の証券化プールとベンチマー ク・プールおよび同種債権プールとの比較をした後、オリジネーターの過去および将来期 待されるパフォーマンスがベンチマーク・プール、あるいは同種債権プールとの比較、あ るいはローン種別や債務者の特徴との比較による違いによって、実際の証券化プールの 「AAA」ストレスのデフォルト率に与える影響度合いにより調整をする。 図 2:ベンチマーク・プールのベースケースとストレス下におけるピークのデフォルト率 26. 証券化プールごとの調整: 上記の図 2 はベンチマーク・プールのストレス・シナリオにお けるピーク・デフォルト率を示しているものであり、個別案件ごとのストレス・シナリオに おけるピーク・デフォルト率はベンチマーク・プールと比較した上で調整されることから、 異なりうる。調整する際に考慮するファクターの具体例としては、ベンチマーク・プールと の比較における証券化プールの債務者およびローンの特徴や過去のパフォーマンス、案件の リボルビング期間とトリガー水準、証券化プールの債務者属性の集中度などが挙げられる。

(8)

例えば、図1 で示すとおり、過去のデフォルト率は消費者ローンの方がクレジットカード債 権より高く、現在多くの消費者ローンプールの「AAA」ストレスにおけるピーク・デフォル ト率は、前述のベンチマーク・プール(前述のとおり、クレジットカード債権が対象)の33% を上回っている(しかしながら、このことは将来案件すべてにわたって、消費者ローンプー ルのストレス時のピーク・デフォルト率がクレジットカード債権プールよりも高いことを意 味するものではない。グレーゾーン金利の問題は消費者ローンのパフォーマンスにより大き な影響を与えたが、2010 年の法改正の施行(段落 68-70 に詳細を記載)によって長期的に はこの悪影響が縮小すると予想されることから、過去のパフォーマンスの差異は今後減少す ることも考えられる)。ベンチマーク・プールの想定から乖離する別の事例として、証券化プ ールのパフォーマンスとオリジネーターの信用状況の間に高い相関があると想定される場合 には、一般にデフォルト率の想定にとってネガティブなストレス要因と考えている。また、 業界平均よりも高水準のデフォルト率を示している証券化プールの場合には、ストレス後の デフォルト率はベンチマーク・プールのそれよりもさらに高い水準となる一方で、各格付け のストレス倍率のレンジでは低めとなる傾向がある。実際のプールで適用する格付け水準ご とのストレスとピーク・デフォルト率の想定は、プールの特徴と過去のパフォーマンスに関 するベンチマークのインデックスとの比較によって異なる。 27. 米国格付け規準との比較: 日本のベンチマーク・プールはショッピング・クレジットでは なくキャッシング債権で構成されており、米国のクレジットカードABS におけるベンチマ ーク・プールは主に現金引き出し(cash-advance)ではなく、物品・サービスの購入という ショッピング・クレジットと同等の債権で構成されている(2010 年 4 月 19 日付「General Methodology And Assumptions For Rating U.S. ABS Credit Card Securitizations」)。日本 のベンチマーク・プールに対応する「AAA」ストレスのピーク・デフォルト率は、米国と同 水準の 33%を固定のアンカーポイントと考えている。これは、国内クレジットカードのキ ャッシング債権と米銀発行のクレジットカードの信用力がほぼ同水準であるとのスタンダ ード&プアーズの見方を反映している。2006-2008 年に日本のキャッシング債権インデッ クスのデフォルト率は高水準であったが、これは主として「グレーゾーン金利」の問題に影 響を受けた結果と考えられる。スタンダード&プアーズの見方では、2009-2010 年におけ る日本と米国の両ベンチマーク・プールのパフォーマンスは、同様のストレス環境下におい て同水準に達したものと考えている(詳細については「APPENDIX II」を参照)。米国と日 本におけるチャージオフ(またはデフォルト)の定義の違いについても、過去のパフォーマ ンスを比較する際には注意を払う必要がある(具体的には、米国では180日超の支払い遅延 でチャージオフと認識される一方で、日本の証券化では90-120日で認識する)。 28. キャッシュフロー分析における想定: スタンダード&プアーズは、格付け水準に応じた 複数のストレス・シナリオを設定し、最終的にはキャッシュフロー・モデルにおいてスト レス後のデフォルト率を適用し分析を実施する。ストレス後のピーク・デフォルト率に達 するまでのタイミングは、「BBB 格」より高い格付けストレス・シナリオではベースケー スから12 カ月間を想定するのが一般的である。しかしながら、証券化プールが大きな過払 い金返還リスクにさらされている場合には、オリジネーターの信用状況が証券化プールの パフォーマンスに大きな影響を与えると考えられる。そのような場合には、キャッシュフ ロー分析のモデル上において、より短期間でストレス後のピーク・デフォルト率に達する と想定することがある。

(9)

29. 早期償還トリガー: なお、デフォルト率に関する早期償還トリガーは、スタンダード& プアーズの各種想定を超えた水準で設定された場合には、必ずしも当該トリガーが案件に おいて有効に機能するとは考えない場合もあることに注意が必要である。さらに、長期に わたるリボルビング期間を設定する案件において、パフォーマンス・トリガーの水準が適切 でない場合、また追加債権の適格基準が厳格に設定されていない場合などには、将来の証 券化プールの信用力を正しく評価することが困難となることも考えられる。 30. 表 1 は、クレジットカード債権および消費者ローン ABS における、一般的なストレス時の デフォルト率のレンジをベースケースに対する倍率で表示したものである。 表 1:ベースケースのデフォルト率想定に対するストレス(国内クレジットカード、消費者ローン) 格付けカテゴリー 一般的なストレス時のデフォルト率(ベースケースに対する倍率) AAA 3.0-6.6 倍 AA 2.5-5.0 倍 A 2.0-3.75 倍 BBB 1.5-2.5 倍 BB 1.25-1.5 倍 31. 米国クレジットカードABSの格付け時に適用される格付けシナリオごとのストレス時のチ ャージオフ率は、表1 に記載している日本のクレジットカードおよび消費者ローンのデフ ォルト率とほぼ同水準である。 元本返済率 32. 元本返済率は、毎月回収される元本額を前月貸付総残高(デフォルト債権を除く)で除し て求める。裏付け資産プールの悪化という信用リスクにさらされるABS の投資家にとって は、元本返済率によってそのリスクにさらされる期間が影響を受ける。元本返済率が高け れば高いほど、ストレス悪化時のシナリオにおいてより早期に投資家は投資資金の回収を 図ることが可能となる。米国やその他の市場のクレジットカード債権と対照的に、国内ク レジットカードを裏付けとする証券化プールは一般的にユーザーのカード利用方法(「ショ ッピング債権」か「キャッシング債権」か)と、返済方法(「指定回数払い」か「リボ払い」 か)といった形式で分別されていて、これらサブプールごとに分析が実施される。 33. クレジットカード債権の元本返済率想定: 通常では、リボ払いのショッピング債権、キャ ッシング債権ともに、カード規約で規定される返済額テーブルにより返済方法が決まるとさ れている。ショッピング債権、キャッシング債権それぞれの現在残高に沿って適用される返 済額テーブルに従って、一定額の約定元利金返済が債務者の預金口座から直接引き落としさ れる。一般的な返済額テーブルでは、元本残高が大きいほど、適用される元本返済率は低く なる傾向にある(つまり、返済スピードが遅い債権)。さらに、十分な返済資金が債務者の口 座にある場合でも、追加的な事務手続きが生じるために、限られたカード利用者が期限前(ま たは繰り上げ)返済を実施するにとどまる傾向がある。したがって、クレジットカード債権 の元本返済率においては、繰り上げ返済を考慮しない前提で、各商品(または、共通の返済 額テーブルが適用されるサブプール)に規定される返済方法に沿った元本返済パターンを想 定する。米国のクレジットカード債権や国内消費者ローン(後述)における分析と異なり、 国内クレジットカードABS では格付け水準ごとのストレス後に一律に低下する元本返済率

(10)

の想定を適用しない。これは、国内クレジットカードの利用者は返済テーブルに沿った銀行 口座からの自動引き落としのため、残高に対する返済額を毎月検討するといった習慣は一般 的ではないからで、口座残高不足に伴う元本返済の遅延のリスクはデフォルト率の想定でカ バーされている。国内クレジットカードABSにおける元本返済率で考慮すべきファクターは、 各債務者の利用残高の変化によって、返済テーブルに沿って適用される返済額のうち元本相 当部分のスピードが変化するリスクである。キャッシュフロー分析におけるストレス・シナリ オでは、一般的に証券化プール全体に占める返済スピードが遅い債権の割合が増加すること を想定する。返済スピードの遅い債権の占める割合が増加するストレスの想定は、クローズ 時点における残高分布、適用される返済テーブル、オリジネーターの母集団で観察される過 去データ、現在・将来におけるオリジネーターの事業運営方針など、複数の要因に左右される。 34. 消費者ローン債権の元本返済率想定: 消費者金融会社によっては、ローン契約で約定返 済額が規定されているが、金利相当分が支払われている限りは延滞債権と認識していない 事務フローになっているケースも見受けられる。したがって、スタンダード&プアーズで は、オリジネーターから提供される過去データ(主として、母体債権に関する月次ダイナ ミック・データ)を利用するとともに、オリジネーターの業務運営方針に関する定性要因 を加味して、元本返済率のベースケースを想定する。過去の同種案件のサーベイランス・デ ータがある場合には、それらも参考にして、元本返済率に関するベースケースを決定する。 35. ベースケースの元本返済率を決定した後、格付け水準に応じたストレス・シナリオの想定 を決定する。消費者ローン債権の元本返済率に関する標準的なストレス・ヘアカット率を、 表2 に示す。なお、ベースケースにおける元本返済率の想定が低水準の場合には、通常は 2% をストレス後の月率元本返済率のフロアとして設定する。 表 2:標準的な国内消費者ローン債権のストレス後の元本返済率 格付けカテゴリー ストレス後の元本返済率想定 AAA ベースケースの 50% AA ベースケースの 55% A ベースケースの 60% BBB ベースケースの 70% BB ベースケースの 80% 36. 米国格付け規準との比較: 上記ストレス後の元本返済率のベースケースに対する想定は、 「BBB」格付けカテゴリー以上において米国クレジットカード ABS で一般に適用する水準 よりもおよそ 5-10%ポイント高いものとなっている。この違いは一般的な日本の消費者ロ ーンに採用するベースケースの想定が非常に低い水準であることを反映している(図3 に示 すとおり、米国クレジットカード・インデックスのCCQI における返済率は 18-19%だが、 日本の消費者ローンベンチマーク・プールは3-5%)。米国クレジットカード債権には、ク レジット目的ではなく利便性(現金の代替として)を目的とした利用者が相応に含まれてお り、そのような利用者の返済率は非常に高い。日本では、そのような利用者はクレジットカ ードにおける翌月一括払いで対応しているため、消費者ローンABS に含まれることはない。 貸金業協会の自主規制上の最長貸出期間である3-5年を考慮して、日本の証券化のプールレ ベルにおけるストレス後の元本返済スケジュールを調整する場合もある。貸金業法に基づき 設立された業界団体は政府の認可がなされ、貸金業協会における自主規制ではリボルビング 払いの返済期間を3年(30万円を超える信用枠の場合には5 年)としている。

(11)

0% 5% 10% 15% 20% 25% 2003 年1 月 2003 年5 月 2003 年9 月 2004 年1 月 2004 年5 月 2004 年9 月 2005 年1 月 2005 年5 月 2005 年9 月 2006 年1 月 2006 年5 月 2006 年9 月 2007 年1 月 2007 年5 月 2007 年9 月 2008 年1 月 2008 年 5 月 2008 年9 月 2009 年1 月 2009 年5 月 2009 年9 月 2010 年1 月 日本の消費者ローン 日本のクレジットカード キャッシング債権 米国のCCQI 図 3:日本と米国の返済率の比較 ポートフォリオ・イールド 37. ポートフォリオ・イールドは、譲渡された債権から発生する金利収入を総債権残高で除し て求める。ポートフォリオ・イールドは、案件期間中、債権の適用金利の下方への条件変 更、低金利債権の追加、高金利債権の早期返済、または延滞債権の増加などの要因によっ て低下する可能性がある。 38. 証券化案件の格付け分析におけるポートフォリオ・イールドの想定は、1)対象となるロー ンの金利に関するオリジネーターの運営方針、2)実際の適用金利の分布、3)限度額・残 高の分布、4)過去データにおける推移、5)債権の適格条件、6)ポートフォリオ・イール ドに関する早期償還トリガーの設定値、7)他社および他の金融商品との競合状況などをも とに、決定される。ただし、キャッシュフロー分析の際に用いるポートフォリオ・イール ドは利息制限法の上限金利を下回る水準である。 39. 米国格付け規準との比較: 国内クレジットカードおよび消費者ローン ABS における格付 け水準ごとのストレス後イールドのベースケースに対する想定は、米国およびその他市場 のクレジットカードABS で一般的に適用するイールド水準よりもおよそ 10-20%ポイン ト高いものとなっている(表3)。この違いの理由については、主に段落 40-43 で挙げた 4 つの要因を理由としている。 表 3:標準的なストレス後のポートフォリオ・イールド 格付けカテゴリー ストレス後のイールド想定 AAA ベースケースの 60-80% AA ベースケースの 65-85% A ベースケースの 70-85% BBB ベースケースの 75-90% BB ベースケースの 80-95%

(12)

40. 限定的な手数料: 第 1 に、国内クレジットカードおよび消費者ローンの利用者は、米国 やその他市場のクレジットカードと異なり遅延手数料(late payment fees:国内における 一般的な遅延損害金とは異なる概念)、信用枠超過手数料(excess limit fees)、インターチ ェンジ(interchange)といった手数料負担が一般に存在しない。米国やその他市場では、 これら各種手数料がイールドの一部を構成していて、日本のように基本的に利息のみで構 成される市場と比べて変動性が高い。 41. 金利負担のない(あるいは低い)債権の増加するリスクが限定的: 第 2 に、国内クレジ ットカードおよび消費者ローンABS セクターを分析する際には、金利負担のないように利 用額全額を翌月全額返済するカード利用者の増加や、他の利用者よりも低い金利が適用さ れる利用者の増加するリスクを考慮する必要性は限定的である。国内案件のキャッシュフ ロー分析においては、米国のクレジットカード ABS と異なり、カードの追加利用率 (purchase rate)の想定を一切見込まず、案件に新たな債権が加わるというクレジットを 与えていない(段落59 の「追加利用・追加貸し出し」を参照)。追加利用による低金利債 権の増加によりポートフォリオ・イールドは低下する可能性があるが、キャッシュフロー のモデル上のストレス・シナリオでは新規資産発生のクレジットを与えていないために、 このインパクトを懸念する必要はない。また、いわゆる「マンスリークリア」と呼ばれる 翌月一括払い債権から通常イールドは発生しないが、キャッシュフロー分析においてはこ ちらもクレジットを与えていない。米国においては、同種の債権がクレジットカードABS のイールド算出には含まれているため、リボルビング期間中に金利ゼロまたは低金利債権 の比率が上昇してプール全体のイールドが低下するというリスクを分析上で考慮する必要 がある。 42. イールド・トリガー: 第 3 に、国内債権の上限金利は規制上、年率 18%(または、残高 10 万円未満の場合は 20%)に設定されていること、および一般にポートフォリオ・イール ドに関する早期償還のトリガーが上限金利から2-4%ポイント程度低い水準に設定されて いることから、日本の証券化オリジネーターはトリガー抵触を回避するためにプール債権 の金利水準を低下させることに慎重であることが多い。 43. 低い元本返済率: 第 4 に、国内クレジットカード債権および消費者ローン ABS セクター における月率元本返済率はおよそ3-6%で、米国バンクカードの約20%と比べると非常に低 水準である。したがって、国内債権の場合には証券化プールの多くが非常に低金利の新規債 権に置き換わるリスクは限定的である。さらに、低い元本返済率ではプールの変化がより時 間をかけて発生することから、イールド・トリガーがより有効に機能することと考えられる。 過払い金返還リスク 44. 証券化プールにグレーゾーン金利(16 ページの「リーガルおよび規制リスク」の項を参照) が適用されたクレジットカード債権や消費者ローン債権が含まれる場合には、案件が過払 い金返還請求にかかるリスクにさらされる可能性がある。債務者による過払い請求がなさ れた場合、既存債務の残高がある場合にはまずその元本の減額として充当され、請求残額 がある場合は債務者に当該残額相当額が返還される。

(13)

45. これら過払い金返還請求にかかるリスクを評価するにあたって、元本充当相当部分につい てはベースケース、ストレス想定ともに、通常の証券化案件における「デフォルト」の定 義に基づけば、返還請求を実施した債務者の元本全額をデフォルト債権として評価してい る。一方で、過払い返還請求によってSPV(Special Purpose Vehicle、特別目的事業体) から債務者に対して現金による返還(キャッシュアウト)として支払われる金額を別途、 評価する(詳細は、「APPENDIX III:過払い金返還リスクの分析例」を参照)。 46. 過払い金返還発生にかかるリスクは、債権プールに含まれる個別債権に関する、①取引期 間の分布、②過去に適用された金利、③借入残高の推移のほか、④案件の期間(リボルビ ング期間を含む)の長さによっても影響を受ける。また、追加信託などによって取引期間 の分布などが変化する可能性もある。 47. スタンダード&プアーズは通常、オリジネーターがデフォルトした場合に過払い金返還請 求が急増することを想定したストレスのもとで分析を行う。また、発生する過払い金返還 額のうち、案件SPV の負担の上限は、信託開始後に債務者から回収した元利金を前提と考 えている。なお、過払い返還請求にかかるリスクは、債権プールの信用力やオリジネータ ーの業務方針などさまざまな要因によっても影響を受けるため、他のリスク要因と併せた 総合的な信用補完による手当てが一般的である。 国内クレジットカード債権におけるコミングリング・リスク 48. 国内証券化案件におけるコミングリング・リスクへの対応については、超過担保・劣後水準 の増額により対応する方法、最低セラー持ち分額として設定することで対応する方法、回 収金の前払いにより対応する方法などが存在する。スタンダード&プアーズはサービサー の格付けが十分高くない場合には通常、債務者からの回収日、回収金引渡日などのスケジ ュールから、将来発生する可能性があるコミングリング・ロスを想定している。 49. クレジットカード債権では、債務者のショッピング・クレジットの支払い方法によってコ ミングリング・ロスの金額に対して一般的に影響を与える可能性がある。「翌月一括払い」 債権と「ボーナス払い」債権がプールに多く含まれる場合には、コミングリング・ロスの想 定される金額が大きくなることが一般的である。 キャンセル・リスク 50. クレジットカードのショッピング債権の場合には、購入物品の販売店への返却、事務手続 きの過誤、不正利用などの発生により、一度発生した債権を「キャンセル」するという処 理が一般的に行われる。証券化SPV に一旦譲渡された債権にキャンセルが発生した場合、 当該債権は適格基準違反により通常オリジネーターが買い戻す義務を負っている。 51. このようなキャンセルが発生した債権に対する債務者の債務履行義務は消滅することから、 「ダイリューション」とも呼ばれる。通常の証券化案件では、オリジネーターによるキャ ンセル債権の買い戻し義務履行のリスクを緩和するために、追加の信用補完による手当て、 または一定水準以上のセラー持ち分維持による対応がなされる。 52. 国内クレジットカードの特性および商習慣を背景として、キャンセルの発生量は限定的で ある。ただし、キャンセル・リスクを考慮する際には、一括払い、分割払い、リボルビン

(14)

グ払いといった支払い方法別の過去データの分析を実施することで、ベースケースやスト レス・シナリオを想定する。なお、キャンセルの発生は一般に、債権の発生時点から、時 間の経過につれて減少していく傾向が見られるため、スタティック・データがあればこれ を重視し、時間の経過とともにキャンセル発生が減少するというシナリオをキャッシュフ ロー分析に適用するケースもある。

支払いの仕組みとキャッシュフローのメカニズム

53. 案件に特有の仕組みやリスクなどを考慮した上で、案件で提供される信用補完によって格 付けレベルで想定される複数のストレス・シナリオの下において、格付け対象証券の利息 が遅滞なく、元本が法定期日まで償還できるかどうかを、キャッシュフロー分析により評 価をする。 54. 特にクレジットカード債権については、ショッピング債権とキャッシング債権といった異 なるパフォーマンスが想定される複数のサブプールから構成される案件もある。スタティ ック・プールの場合は各サブプールを個別に評価をすることが一般的であるが、リボルビ ング型で債権が入れ替わる可能性がある場合には、リボルビング期間の長さ、オリジネー ターの業務運営方針などを評価する上で、案件ごとにサブプール構成比に関するストレ ス・シナリオを検討する。 55. 原則として、スタンダード&プアーズは複数のシナリオでキャッシュフローの分析を実施す るが、その中には早期償還が異なるタイミングで発生するケ-スも含まれる。各案件にとっ てワースト・ケースとなるようなタイミングをストレス・シナリオとして想定する。個別案 件によって、回収金の配分方法(ウォーターフォール)、償還方法、また案件コストの水準が 異なるため、各案件にとってワースト・ケースのシナリオが異なるからである。多くの案件 においては、案件スタート直後もしくはリボルビング期間の設定があるような場合には、リ ボルビング期間終了直後におけるサービサー交代がワースト・ケースとなりやすい。 案件コスト 56. 各証券化案件の運営にかかる諸費用(信託報酬、サービシング手数料、投資家クーポンな ど)については、キャッシュフロー分析の際に必要コストとして織り込んでいる。バック アップ・サービシング手数料については、当初よりバックアップ・サービサーが任命され ている場合においても、案件途中で当該バックアップ・サービサーが何らかの事情により 交代する可能性を勘案し、新たなバックアップ・サービサーにとって魅力ある水準として マーケット標準に見劣りしない一定の料率を想定し、分析に織り込んでいる。 57. 具体的には、主要なサービサー業者を中心にヒアリングを行った結果、マーケットの状況 や個別案件の特色(件数、債権総額、予定している回収方法など)に応じて、当該裏付け 資産の回収の対価として標準的と思われる手数料率と、実際に契約上規定しているバック アップ・サービシング手数料との間で高い方を、原則として想定コストとして採用してい る。一般的なサービシング費用で想定する水準は、クレジットカード債権で残高対比年率 1.5-2.0%、消費者ローン債権で 2.0-2.5%である。

(15)

サービサー交代 58. 超過担保による信用補完に加え、流動性補完について別途考慮が必要な点は、他のアセッ ト・クラスを裏付けとする国内証券化案件と同様である。証券化案件においては、サービ サーが何らかの事情により証券化対象債権に関する契約上のサービシング義務を果たせな いような場合に備え、バックアップ・サービサーがあらかじめ任命されていることが多い。 サービサーの交代には相応の時間を要する可能性があり、交代が完了するまでの間、案件 のキャッシュフローが一時的に中断するリスクがある。このリスクは通常、数カ月分の利 息と費用の支払いをするために十分な額の現金準備金を設定する、または流動性補完提供 者による資金提供のコミットメントを確保することにより軽減される。一般的に想定され るサービサー交代に要する期間は、クレジットカード債権、消費者ローン債権ともに3-6 カ月であるが、証券化対象債権の性質によっても左右される。 追加利用・追加貸し出し 59. 金融機関などのオリジネーターが債務不履行(デフォルト)となった場合においても、ク レジットカード保有者の追加利用、継続利用が想定されるケースも考えられる。ただし、 一般的な国内証券化案件のように、オリジネーターのデフォルトなどによるサービサー交 代事由発生後にはSPVに譲渡された債権については追加利用が停止する旨が契約で規定さ れている場合には、想定するストレス・シナリオで債務者の追加利用を見込むことはない。

オペレーショナル・リスク

60. 国内 ABS の分析における最も重要な側面の 1 つは、オリジネーターの事業運営方針のレビ ューである。証券化のプロセスにおいて、クレジットカードおよび消費者ローン債権のオ リジネーター/セラーは通常、当該債権の原契約に関するサービシングを継続している。 したがって、サービシング業務にかかる体制、債権管理、後述の法令遵守および原契約の 債務者に対する与信管理方法等は、証券化案件の信用力に影響を及ぼす。 61. オリジネーターのオペレーションをレビューには、効果的なサービシングと信託債権の回 収に不可欠な、オリジネーターの組織的、技術的なインフラと資源の質の評価を実施する。 通常、以下の項目がオリジネーター・レビューに含まれる。 • オリジネーションのプロセスとマーケティング営業方法 • 対象市場の分類 • ターゲットとする市場 • 契約商品の種類・分類 • リスク管理方針 • クレジット・スコア・システム • 回収に関する手順 • 社員教育および社員採用基準 • 事務処理システムの技術的なプラットフォーム 62. クレジットカードおよび消費者ローン債権に関するオリジネーター/サービサーのオペレ ーションで特に重要と考えられる項目の1 つとして、法令順守(コンプライアンス)に関 する組織体制、業務運営方針、社員教育などの取り組みが挙げられる。後述するとおり、

(16)

クレジットカード業界と消費者金融業界は、消費者保護ならびに多重債務者問題への対策 を目的として、これまで数多くの法令変更が実施されてきているため、法令に沿った適切 な事業運営が不可欠である。また、特に消費者金融業界に関しては、監督官庁から業務改 善命令や一部業務の停止命令などが発令されるケースもあり、重大な行政指導などの場合 には、証券化債権のサービシング業務のみならず、プールのパフォーマンスに悪影響を及 ぼす可能性もある。 63. また、個別案件の裏付け資産の特性や前述のオリジネーター/サービサーのオペレーショ ンを踏まえ、サービサー交代時におけるサービシング業務の引き継ぎに関して円滑に実施 することができるかという観点からも評価を行う。

リーガルおよび規制リスク

64. 通常、クレジットカードのキャッシング債権と消費者ローンについては、貸金業法による 規制を受けた業者が個人向けにファイナンスを実施したものとされる。一方、クレジット カードのショッピング債権は、翌月一回払いを除き、基本的に割賦販売法による規制に基 づいて発生したものとされる。 65. キャッシング債権および消費者ローンにとって、大きく影響を受ける重要な法律は貸金業 法と出資法である。貸金業法は1983 年、出資法は 1954 年に初めて施行された後、何度も の改正を経て今日に至っている。貸金業法改正の歴史は、多重債務者問題を発端とした規 制強化の歴史であり、出資法改正の歴史は、適用可能上限金利低下の歴史でもある。 貸金業法の規制などに関する法律に基づく書面交付義務 66. 貸金業法においては、貸付債権を第三者に譲渡する場合には、当該債権の譲受人から債務 者に対して、譲り受けた事実および対象債権の内容に関する一定事項を通知するよう定め られている(貸金業法第24 条第 2 項)。現在のところ、一般に、当該証券化案件が、1)裏 付け資産の譲渡が信託譲渡によって行われ、2)オリジネーターが引き続きサービサーを務 める場合であって、かつ3)案件期間中、オリジネーターが劣後受益権を保有し続けるなど、 一定の要件を満たす場合には、当該通知の送付を証券化案件組成時において留保すること は法令違反ではない、と解する見解が有力である。当該通知を債務者に発送した場合、オ リジネーターに対する問い合わせが殺到するなど、混乱が生じると想定されることから、 証券化案件組成時には当該通知を留保することが選択される傾向にある。その結果、証券 化案件の仕組みとして、信託方式のスキームが利用されることが多い。 67. なお、当該通知が当初留保されたとしても、オリジネーターがサービサーを解任されるケ ースなど案件期間中に上記条件を満たさなくなった場合や、受託者が当該通知の送付が必 要であると判断した場合、または行政・裁判所などによって当該状況における通知送付が 必要との判断が示された場合には、債務者宛てに当該通知を行うことが契約上規定されて いる。また、そのような事情をトリガー事由として早期償還となる案件が多い。これは、 前述のように、債務者に混乱が生じる可能性が高いからである。

(17)

上限金利の設定 68. 2010年6 月18日に改正資金業法、出資法が完全施行される前においては、貸金業者に適用さ れる上限金利は、利息制限法と出資法の2つの法律で規定されていた。改正前の出資法は年率 29.2%を上限金利とし、これを超える利息を受領した場合に刑事罰が課せられることとなって いた。一方、利息制限法では、上限金利を、貸付債権元本総額が100 万円以上の場合は年率 15%、10万円以上100万円未満の場合は年率18%、10万円未満の場合は年率20%と定めて いる。両者の間に存在していた差額部分は一般に「グレーゾーン金利」と呼ばれてきた。 69. 利息制限法は、グレーゾーン金利の契約を「無効」と定めており、貸主はこれを裁判上請求 できない。1964 年と 1968 年の判例では、債務者がグレーゾーン金利を任意に支払った場合 には、当該超過部分はまず元本に充当され、その残額については債務者が返還を請求できる とされたが、1983年に成立した貸金業法では、債務者が貸金業者に対してグレーゾーン金利 を任意に支払った場合には、一定の条件の下でそれを有効な利息の弁済とみなし、債務者は その返還を請求できないとする、いわゆる「みなし弁済」規定(43条)が設けられた。この ため、上記判例にもかかわらず、貸金業者においては、グレーゾーン金利の支払いを元本で はなく利息に充当することが一般的慣行として続けられていた。 70. ところが 2006 年以降、みなし弁済規定適用の要件を厳格に解釈する判例が相次いだため、 1964 年と 1968 年の判例に基づいて、支払い済みグレーゾーン金利を元本支払いとして引 き直し計算して残存元本を減額し、残額について返還することを求める債務者が急増した。 なお、2010 年 6 月 18 日以降、出資法においても上限金利が年率 20%へ変更されるととも に、改正貸金業法の完全施行により上記「みなし弁済」は廃止された。

サーベイランス

71. スタンダード&プアーズでは、格付けを付与している日本の ABS について継続的なモニタ リングを行い、案件の信用リスクが変化した場合には必要に応じて意見のアップデートを 行い、格付けを変更する。サーベイランスの分析に用いられる分析手法は、基本的に新規 案件の分析に用いられるものと同一である。案件に関する最新情報とともに、最新の見通 しに関する意見が、サーベイランスの分析に組み込まれる。サーベイランスのプロセスで は、スクリーニング・ツールを用いてリポートが作成される。このリポートは定期的に作 成され、格付けに関してより包括的な精査が必要な案件を抽出する。個別案件の精査に加 えて、クレジットカード債権または消費者ローンABS セクターの見通しについても、定期 的なレビューを実施する。 72. 当該リポートは、サービサー/受託者が定期的に(通常は月次で)提出する報告に基づき、 ポートフォリオのパフォーマンスについて重要な指標を把握するものである。クレジット カード債権および消費者ローンABS の主要な項目は、延滞、デフォルト、元本返済率、ポ ートフォリオ・イールドなどである。また、過払い金返還請求リスクにさらされる債権の 場合には、過払い金返還請求の発生状況についても定期的にモニタリングする必要がある。 73. 前述の定期的なレビューに加え、予期しない事態が発生した場合には、臨時の精査が行わ れることがある。例えば、関係当事者の信用力の変化、関連法令・規制などの変更、案件 の仕組みの変更が生じた場合などである。

(18)

APPENDIX I: 国内証券化スキーム例の概説

74. 国内 ABS 案件の一般的な仕組みの例として、図 4 のようなスキームが挙げられる。クレジ ットカード債権および消費者ローンを裏付け資産とする証券化案件においては、特に信託 を利用したスキームが多用されている。 デフォルト・トラップ 75. デフォルト・トラップは、デフォルト債権が発生した場合に、ローンプールが生み出す超 過収益により当該損失を補填する仕組みである。超過収益は、裏付け資産である消費者ロ ーン債権の利息回収金から、ABS の投資家クーポン、案件コスト(信託報酬、バックアッ プ・サービサー手数料など)を差し引いて算出する。 76. 具体的には、一旦利息回収金として収受したもののうち、当該回収期間内に発生したデフ ォルト債権額相当額を信託勘定内で利息勘定から元本勘定へ振り替えることにより、元本 回収金としての利用が可能になる。その結果、劣後配当として流出するはずであった超過 収益をABS の元本償還の原資として取り込むことが可能になる。なお、デフォルト債権自 体は、劣後部分保有者(一般にはオリジネーター)に配当として現状有姿交付されること が多い。 セラー持ち分 77. 返済がリボルビング方式の場合、債務者が限度額の範囲内で借り入れ、返済を繰り返す。 このようなリボルビング型債権の証券化の際には、1 債務者の 1 契約であるにもかかわらず、 債務者の追加借り入れに起因して、証券化案件サイドで保有する債権とオリジネーターが 保有する債権として両者に分属し、権利関係が複雑化する可能性がある。 78. このような事態を回避するために、証券化案件組成時において、将来の追加借り入れによ って発生する債権(将来債権)についてもあらかじめ譲渡しておくスキームが一般的であ る。これにより、債務者が追加借り入れをするたびに証券化プールの残高が増加する可能 性があるが、投資対象としての優先部分であるABS が増加することはない。 79. 一方、証券化プールを保有する SPV の資産・負債バランスを考えると、劣後部分が増額す ることになり、一般的に劣後部分が際限なく膨らむことは真正売買の観点から好ましくな いと考えられている。したがって、優先部分・劣後部分以外で、当該追加貸し出しによる 残高増加を吸収する仕組みが必要となる。これが「セラー持ち分(売主持ち分)」である。

(19)

80. 例えば、信託方式の仕組みの場合、しばしばセラー受益権が設定される。当該受益権は、 優先受益権と劣後受益権を一体と見た受益権(通称、「インベスター受益権」)と、回収金 の配分、貸し倒れなどの損失配分の点でほぼ同一の地位にあり、追加借り入れによる残高 増加に対応する調整機能を担っている(図5)。 81. また、仕組み上、セラー持ち分にコミングリング・リスクを補填する信用補完機能を持た せているような証券化案件も多い。具体的には、コミングリング・ロスとして想定される 金額を最低セラー持ち分額として維持・保有することをオリジネーター/サービサーに義 務付け、契約上、SPV のサービサーに対する回収金引き渡し請求権と SPV のセラー元本支 払い債務との相殺を可能にすることで、コミングリング・リスクを補填する仕組みとなっ ている。 リボルビング期間 82. リボルビング期間は、「投資対象としての優先部分である ABS を償還しないで残高を維持 する期間」として、設定される。例えば、信託方式スキームの場合、リボルビング期間中 は、優先受益権、劣後受益権およびセラー受益権に相当する一定の信託財産を維持するこ とになる。 83. デフォルト発生に伴う信託財産の減少については、まずはデフォルト・トラップやオリジ ネーターによるデフォルト債権の買い戻しなどで対応することが多い。元本回収金をセラ ー受益権の償還としてオリジネーター宛てに交付する場合には、交付相当分だけ信託財産 が減少する。そのため、既存譲渡債権の追加貸し付けだけでは一定の必要債権金額(必要 維持基準額)を維持できない場合、新たな適格債権を追加信託することで基準額を維持し、 同時に元本回収金をセラー受益権者に交付することで信託財産内のバランスを維持するこ とが可能なスキームになっている(図6 参照)。

(20)

早期償還事由 84. 証券化案件においては、一般に早期償還事由の仕組みが設定される。「早期償還」とは、一 定の事由が発生した場合に、上位クラスの償還ペースを速める仕組みである。早期償還事 由の発生により、上位クラスのクーポンと案件コストの支払い後、裏付け債権からの回収 金すべてを上位クラスの元本償還に充当する仕組み(ターボ償還)により、一定水準を超 えたパフォーマンス悪化や外部環境変化が発生した場合に、償還ペースが速まることによ る効果があると考えられる。 85. 早期償還事由のトリガー水準や内容により、格付け水準に応じて想定されるストレス・シ ナリオにおいて、格付け対象証券が償還される蓋然性が高まることが考えられる。クレジ ットカード債権や消費者ローン債権を裏付け資産とした証券化案件における代表的な早期 償還事由は、以下のとおりである。 • サービサー交代事由が発生した場合 • 裏付け資産のデフォルト率が一定水準を上回った場合 • 裏付け資産の元本返済率が一定水準を下回った場合 • 裏付け資産のポートフォリオ・イールド(プール利回り)が一定水準を下回った場合 • 過払い金返還発生率が一定水準を上回った場合 • リボルビング期間において、劣後部分の金額が維持必要金額を下回った場合 • セラー部分の金額が最低維持金額を下回った場合 • 流動性補完としてのキャッシュ・リザーブ額が必要額を下回った場合 • 貸金業法第24 条 2 項の通知送付事由の発生 • 米国のクラス・アクションに相当する訴訟制度を導入する法律が国会で成立した場合 • 予定償還スケジュールどおりに償還できない場合 • タックス・イベントが発生した場合

(21)

0 2 4 6 8 10 12 14 1992 年 1 月 1992 年 7 月 1993 年 1 月 1993 年 7 月 1994 年 1 月 1994 年 7 月 1995 年 1 月 1995 年 7 月 1996 年 1 月 1996 年 7 月 1997 年 1 月 1997 年 7 月 1998 年 1 月 1998 年 7 月 1999 年 1 月 1999 年 7 月 2000 年 1 月 2000 年 7 月 2001 年 1 月 2001 年 7 月 2002 年 1 月 2002 年 7 月 2003 年 1 月 2003 年 7 月 2004 年 1 月 2004 年 7 月 2005 年 1 月 2005 年 7 月 2006 年 1 月 2006 年 7 月 2007 年 1 月 2007 年 7 月 2008 年 1 月 2008 年 7 月 2009 年 1 月 2009 年 7 月 2010 年 1 月 日本のクレジットカード債権デフォルト率 米国のクレジットカード債権指標損失率 日本の失業率 米国の失業率 (%) 注:日本のクレジットカード債権のパフォーマンスはキャッシング債権のみ(ショッピング債権を除く) 出所:スタンダード&プアーズ

Appendix II: 日本のクレジットカード債権のデフォルト率において想定するストレス・シナリオ

86. 日本における経済的ストレスに関しては、1986年から1989年にかけて日本の不動産価格と株 価が急騰し、その後、長期にわたって大きく下落した。スタンダード&プアーズはこの国内の バブル崩壊後のストレスを「BBB」(日本)、「BB」(グローバル)相当であったと考えている (2009年6月3日付の「Understanding Standard & Poor's Rating Definitions」、日本語版は 2009 年 8 月 4 日付の「スタンダード&プアーズの格付けの定義を理解する」の付属資料 V を 参照)。現在の日本の経済状況全般が依然「BBB格」のストレスにあるとは見なしていない。 87. しかしながら、2006 年以降、現在(2010 年)に至るまで、スタンダード&プアーズが想 定する国内クレジットカードおよび消費者ローン業界を取り巻く環境は、中程度(「BBB 格」)のストレスが継続していると評価している。その理由の1 つとしては、2006 年以降 のクレジットカード債権および消費者ローン債権のパフォーマンス悪化は、マクロ経済お よび個人消費者の信用力の変化というよりも、むしろ、2006 年の最高裁判所によるグレー ゾーン金利の貸し出しに対する有効性を厳格化する判例を契機として、過払い返還請求を 実施する債務者が急増したことによる影響が大きかったことが挙げられる。 88. さらに、専業消費者金融大手 4 社のうち 2 社が、2009 年後半に選択的債務不履行に陥った ことから、業界の経営環境の厳しさを示唆している。また中堅・中小の消費者金融事業者 を中心に新規貸し出し停止や事業撤退が相次ぎ、1990 年代には事業者数が 35,000 社を超 えて推移していたものが、2010 年 3 月には 5,000 社を割り込むほど激減した。 89. 日本における過去の失業率は、終身雇用に代表される大企業を中心とする雇用慣行、およ び雇用調整助成金を通じた政府の経済対策などにより、景気後退局面においても比較的低 位に推移しマクロ経済環境変化との感応度は総じて低い。したがって、これまでのクレジ ットカードに代表される個人向け債務のパフォーマンスと失業率の推移との相関は低い (2003 年以降の信販キャッシング債権のインデックスと季節調整後の完全失業率の 12 カ 月間の変化率の相関は-0.23)。 図 7:失業率とクレジットカード債権パフォーマンスの日米比較 1992-2010 年

参照

関連したドキュメント

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

12―1 法第 12 条において準用する定率法第 20 条の 3 及び令第 37 条において 準用する定率法施行令第 61 条の 2 の規定の適用については、定率法基本通達 20 の 3―1、20 の 3―2

トリガーを 1%とする、デジタル・オプションの価格設定を算出している。具体的には、クー ポン 1.00%の固定利付債の価格 94 円 83.5 銭に合わせて、パー発行になるように、オプション

当日 ・準備したものを元に、当日4名で対応 気付いたこと

学校の PC などにソフトのインストールを禁じていることがある そのため絵本を内蔵した iPad

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも

いてもらう権利﹂に関するものである︒また︑多数意見は本件の争点を歪曲した︒というのは︑第一に︑多数意見は