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Fig.1 Fig. 1 Segmentation of the of the liver liver with with respect to to the tree of the Glissonean pedicle 7) 7) A / B Anterior Segment Left lobe

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Academic year: 2021

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Japanese Journal of Acute Care Surgery 2013; 3: 61~69

原著

重症肝外傷に対するダメージコントロール手術としての

グリソン一括処理法の応用

小泉 哲 佐治 攻 片山真史 岸 真也 小林慎二郎  中野 浩 平 泰彦 大坪毅人  要旨 【はじめに】重症肝外傷に対する治療戦略は、肝周囲のガーゼパッキングを行い、その後も持続する動脈性出 血に対して血管塞栓術を付加するのが標準的であるが、この戦略では十分に止血しえない症例に対して有効な 新しい治療戦略を紹介する。 【グリソン一括処理法を応用した治療戦略】グリソン鞘単位で肝臓は大きく3つの区域にわけられ、各々肝外で 処理することができる。損傷肝区域グリソンを初回手術時に結紮し、完全な出血コントロールを行った後、根 治術として結紮した区域肝切除を行う。至適待機時間は12時間以内である。 【結果】2例の重症肝外傷症例に対し、損傷肝区域グリソン結紮を行った後、根治術として肝右葉切除を行い良 好な成績が得られた。 【考察】グリソン一括処理法は、手技の習得に時間を要するという問題点を抱えているが、重症肝外傷症例に おけるダメージコントロール手術の手段のひとつとして有用であると考えられる。 【キーワード】肝外傷、ダメージコントロール手術、グリソンー括処理

はじめに

外傷に対する外科治療といえば,完全な止血とすべて の損傷臓器の修復に目を向けられていた1980年代までと 異なり,最近では deadly triad 1) を認知した場合には一旦 手術を撤退し,集中治療室で生理学的異常の改善を図り 体制を立て直して再手術を行うdamage control (DC)2) 概念に基づいた治療戦略が本邦でも普及しつつある。術 前よりショック状態に陥っていることが多い重症肝外傷 症例は大血管損傷と並んで,このDCが適用される代表的 な病態である。手術開始時点で既に循環動態、凝固機能 ともに不良となっている重症肝外傷に対するDCとは、① ガーゼパッキングにより損傷部の門脈系・肝静脈系の出 血制御を行い、②その後も持続する動脈性出血に対して は経動脈的塞栓術により止血を補完するものである。し かし、実際にはこの手順だけでは対応困難な症例に遭遇 することも否めない。そういった症例に対して我々が行 い、良好な経過が得られた重症肝外傷に対するダメージ コントロール手術としてのグリソン一括処理を応用した 新たな治療戦略の一選択肢を紹介する。

グリソン一括処理法

3) a. グリソン鞘の分岐形態による肝区域の考え方 肝区域に関する定義は色々なものが知られているが4∼6) 脈管分布形態から理論的に行われたものや病理学的な見 地から行われたものが多い。その中で純粋に外科的立場 からの要求を満たす形で生まれた考え方がグリソン鞘分 岐形態による肝区域である3)。肝動脈,門脈、胆管の肝内 での分岐形態は様々で、分岐点のずれも大きいことから 個々の脈管の相互理解は困難である。しかしこれらはい ずれもグリソン鞘内を走行しているものであると考える と、肝臓を大きく3つの区域として考えることができる7) (Fig.1)。そしてこの3つの区域グリソン内を他区域の胆管、 動脈、門脈が走行することはない8)。これら3つの区域グ リソン鞘は各々肝外で処理することが可能でありこの手 技をグリソン一括処理と呼んでおり、肝臓外科領域では 常識的な手技のひとつとなっている。 b. 肝外グリソン鞘の処理 グリソン鞘と肝実質の剥離に関しては、先細のメッ ツェンバウム剪刀と攝子を用い、肝実質とグリソン鞘境 界で肝漿膜を1枚剥離するように、肝実質側に結合織が全 く残らないように剥離を進めるとよい9)。この際、第1助 手が左手第2,3指で肝十二指腸間膜を挟み圧迫することで 肝流入血(動脈・門脈)を遮断しつつ尾方へ牽引すると 操作が容易となる。本稿では左葉グリソン鞘の処理につ いては割愛し、右肝グリソン鞘の処理について詳述する。 所属:聖マリアンナ医科大学    消化器・一般外科 住所:〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生 2-16-1

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Fig.2 Glissonean pedicle transection method at the hepatic hilus

A

B

Fig.1 Segmentation of the liver with respect to the tree of the Glissonean pedicle

7)

Left lobe

Anterior Segment

Posterior Segment

Caudate lobe

A / B

Fig. 1-A

Anterior, Posterior segments, and left lobe are nourished respectively by each secondary branch. The caudate lobe is

nourished directly by the primary branch.

Fig. 1-B

Three components (artery, vein, and bile duct) wrapped with connective tissue and anatomically the same structure,

extend into the liver.

Fig. 2-A

Detaching and taping of the right anterior glissonean pedicle using forceps.

Fig. 2-B

This is the subtraction method for the taping of the right posterior glissonean pedicle. The right main pedicle is taped.

The right posterior glissonean pedicle can be taped following the right main pedicle.

A

B

Fig. 1 Segmentation of the liver with respect to the tree of the Glissonean pedicle

7)

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Fig.3

A B

C D

Fig.4

Fig. 3-A

(Case 1) State immediatery after crash laparotomy. A large amount of blood has accumulated in the abdominal cavity.

Fig. 3-B, C, D

(Case 1) Three parts of the large type IIIb injury can be seen in the right lobe of the liver.

Fig. 4

(Case 1) CT scan post damage control surgery. Right lobe of the liver has fallen to ischemic state completely.

A C

B D

Fig. 3

(4)

前区域グリソン鞘の処理に先立って、まず胆嚢を摘出す る。胆嚢頸部付着部には前区域グリソン鞘の腹側を覆っ ている胆嚢板と呼ばれる結合織の部分が存在する。この 胆嚢板は個々によってその幅や厚みが異なっているので 注意を要する。胆嚢板の結紮・切離を行うと前区域グリ ソン鞘が肝実質に入り込む部分が観察される。前区域グ リソン鞘の左右より肝実質との間を全周性に剥離をすす めテーピングする(Fig.2-A)。テーピングには通常3号ネラ トンを用いている。次いで後区域グリソン鞘の処理に入 る。後区域グリソン鞘は前区域グリソン鞘に対しほぼ直 角に尾側背側に分岐していることが多い。後区域グリソ ン鞘右縁の剥離は尾状葉突起に分岐するグリソン鞘の末 梢で行うことが重要である。後区域グリソン鞘を単独で 直接テーピングできればよいが、背側へ分岐する枝が多 い場合などは直接テーピングすることが困難なため、前 区域グリソン鞘をテーピングした後に、右一次グリソン 鞘をテーピングし、これより前区域グリソン鞘を外す様 にすると後区域グリソン鞘のテーピングが容易にできる (Fig.2-B)。各々のグリソン鞘にテーピングしたネラトン チューブを十二指腸側に牽引しながら、その末梢側で二 重結紮を行う。2回目の結紮は非吸収糸による刺通結紮を 行っている。

手術の実際

症例1 48歳、男性。自動車運転手の単独交通外傷により右体 幹 部 強 打 し 受 傷 。 救 急 搬 送 時 、 シ ョ ッ ク バ イ タ ル で non-responderの状態にあった。Primary surveyで実施 されたfocused assessment with sonography for trauma (FAST)においてモリソン窩にエコーフリースペースを認 めた。レントゲン検査上、右多発肋骨骨折と血気胸を認 めるのみで、骨盤骨折は認めなかった。腹部内臓損傷に よる腹腔内大量出血によるショックと判断し直ちに緊急 開腹手術を行った(病院到着から手術開始まで55分)。 腹部正中大切開にて開腹すると既に腹腔内には約6Lの出 血を認めていた(Fig.3-A)。ガーゼパッキングに際し肝 表 面 に 触 診 上 複 数 箇 所 の 損 傷 を 確 認 し た た め 直 ち に Pringle法を実施し肝流入血を遮断したところ出血の勢い は治まり詳細な観察が可能となった。肝右葉に3か所の 大きなIIIb型損傷部を認めた(Fig.3-B,C,D)。頭側2か所 の損傷部には断面に右肝静脈が露出しており肝縫合を行 い可及的に止血した。損傷部最頭側端で右肝静脈根部の 分枝に破綻を認めたため、これを縫合閉鎖。肝右葉を前 後面より十分に圧迫できるようガーゼパッキングを行い、 Pringle法を解除すると肝損傷部からの出血がコントロー ルされない状況となったため、損傷部全体の止血を得る ため、右肝グリソン結紮の適応と判断した(この時点で 体温34.8℃、pH7.1、B.E.-5.5)。胆嚢を摘出した後、胆嚢 間膜を結紮・切離し、前区域・後区域を各々3号ネラト ンチューブでテーピング(胆嚢摘出開始から約10分、手 術開始から73分)。前・後区域グリソンに通したネラト ンチューブを牽引し鉗子で挟み血行遮断したところ、肝 右葉の3か所の損傷部は完全に止血されることが確認で きたので、各々のグリソンを2重結紮した。肝周囲に ガーゼパッキングを施し、Open abdomen(創をフィル ムラッピング)のままICU帰室(総手術時間94分、総出血 量約9800ml)。ICU帰室直前に施行した腹部CTを示す (Fig.4)。肝右葉の血流は完全に遮断されていることがわ かる。24時間のICU治療の後、Definitive operationとし て肝右葉切除を行った。血行遮断されていた肝右葉は壊 死性変化を起こし始めており、腐敗臭を伴っていた。こ のため壊死物質の全身循環への還流を抑止するために、 肝 切 離 に 先 ん じ て 右 肝 静 脈 の 結 紮 ・ 切 離 を 行 っ た ( F i g . 5 - A ) 。 肝 切 離 は ペ ア ン ク ラ ッ シ ュ 法 で 行 っ た (Fig.5-B)。肝門部まで実質離断が進んだ時点で先に結紮 しおいた前・後区域グリソンの末梢側でグリソンを切離 (Fig.5-C)。中肝静脈の右側で肝実質切離を進め、尾状葉 下大静脈部を温存し先に結紮・切離した右肝静脈根部ま で切離を行い、肝右葉切除完了(Fig.5-D,Fig.6)。術後経過 は良好で第30病日に軽快退院された。 症例2 43歳、男性。自動二輪運転中、自動車と衝突し受傷され 救急搬送。来院時は循環動態安定していたが、secondary surveyで行ったCT検査中にショック状態となり直ちに蘇 生開始。またCT検査にて肝右葉の肝表面から肝門部にお よぶ大きなIIIb型損傷が疑われたため (Fig.7)、緊急手術と なった(病院到着から手術開始まで約80分)。腹部正中大切 開にて開腹すると腹腔内には約8Lの血液貯留を認めた。 肝損傷の存在が既に指摘されていたため、直ちにPringle 法にて肝門部流入血遮断を行ったところ、活動性の出血は 治まった。外傷手術の手順に従い、腹腔内4点パッキング を行い、腹腔内検索をおこなったところ、肝右葉の巨大な IIIb型肝損傷(Fig.8-A)と横行結腸間膜内において副右結腸 静脈の上腸間膜静脈合流部で破綻が確認された為、同部を 修復。次いで肝損傷部の観察を行ったところ、後区域グリ ソンの根部付近で亜区域グリソンの破綻が見られたため、 肝右葉の温存は困難と考え、ダメージコントロール手術と してのグリソン一括処理の適応と判断(この時点で体温 35.2℃、pH7.2、B.E.-2.2)。胆嚢摘出に続いて、肝門部にお いて前・後区域の一括処理を症例1と同様に行った(手術 開始から70分)。他に腹腔内出血を来す損傷がないことを 確認し、open abdomen(創をフィルムラッピング)のま まICU帰室(総手術時間85分、総出血量11500ml)。全身状 態改善を図り、凝固系機能の回復が確認された8時間後に definitive operationとしての肝右葉切除を行った(Fig.8-B)。 症例1の時と異なり、血行遮断された右肝に腐敗臭はな かった。変色域に沿って系統的肝右葉切所除術を施行。術 後経過は良好で、肝右葉切除術後10日目に副損傷としての 右足リスフラン関節脱臼骨折の手術を整形外科で実施。第 31病日に軽快退院された。

(5)

Fig.6

Fig.5

A B

C D

A C

B D

Fig. 5

(Case 1) The scene of right hepatectomy as definitive operation.

Fig. 6

(Case 1) Resected specimen of right hepatectomy.

Fig. 5

(6)

Fig.7

Fig.8

A / B

Fig. 7

(Case 2) CT performed as the first step of secondary survey. A large type IIIb injury in the right lobe of the liver can be seen.

Fig. 8

After Glissonean pedicle ligation of the right lobe of the liver as damage control surgery, right hepatectomy was performed.

Fig. 7

(7)

考 察

外傷の主な病態を「外力によって生じる生体各所の“臓 器の破綻”による“出血”と“感染・炎症”」と考えると, 外傷治療の原則は①“出血制御”,②“感染・炎症の制 御”,③“臓器機能保持(修復)”の3つに集約される10) 肝損傷においてもこの原則は当てはめることができる。 即ち、肝損傷においても第一に行われるべきは出血制御 である。肝外傷手術手技において、肝損傷部の出血制御 に対し簡便かつ有効な方法はPringle法であることは言う までもない11)。しかし、このPringle法による肝流入血遮 断は一時的にのみ行える手法であって永続的には行うこ とができない。従って、実際にはPringle法を行い肝損傷 部の出血制御をしている時間内に損傷部の処置を行い終 えなければならない。損傷部の範囲が小さければ肝縫合 や大網パッキングなど既存の手技で修復しうるが、修復 しきれない程の広範囲あるいは重症損傷の場合には肝受 動後に損傷部を挟み込むようにガーゼパッキングし、後 の血管塞栓術等のInterventional radiology(IVR)手技 に繋げるというのが、現在、重症肝外傷に対する治療戦 略として一般的であるとされている12,13)。しかし重症肝外 傷症例で既にdeadly triadに陥っている様な状況で必ずし も血管塞栓術が奏功するとは言えず、そもそもすべての 症例において肝周囲のガーゼパッキングで確実に門脈 系・肝静脈系の出血コントロールが可能といえるのか疑 問である。またガーゼパッキングからIVRに繋げられ、 デパッキングまで行いえたとして、重症肝損傷部に障害 が残ることはないかという問題も挙げられる。例えばグ リソン系損傷により同部の胆道損傷を併発していた場合 には、その後の難治性胆汁瘻等の胆道系併発症を免れな い14)。このように考えると、外傷により破綻した肝臓に、 生理学的に元の状態に戻すことができない程の損傷が あった場合に出血制御と感染・炎症の制御を確実に行う ためには損傷部を含めた解剖学的系統的肝切除が妥当と いえるだろう15)。しかし、deadly triadに陥っていること が多い重症肝損傷症例の初回緊急手術時において肝葉切 除を行うことは危険であることも事実である。今回我々 が提示したダメージコントロール手術としてのグリソン 一括処理法の応用(損傷肝区域グリソン結紮)は、ガー ゼパッキングからIVRへ持ち込む戦略における不確実性 と初回手術で肝切除を行う危険性の双方の問題点を克服 できる手法であるといえる。即ち、修復困難な程の重症 損傷を受けた肝区域のグリソンのみを結紮することで、 損傷部からの出血コントロールを短時間で確実なものと し、全身状態改善の後に根治手術(損傷区域切除)を行 うことで術後の感染性併発症を免れることができる。 肝外傷におけるグリソン一括処理適用のコンセプトは 損傷部の確実な出血コントロールである。そして損傷部 分を含めた解剖学的系統的肝切除に繋げることができる 手段であるともいえる。従って、肝外傷であるからと いってやみくもにこの手技を適用することは厳に慎まな ければならない。具体的には、一般的に知られる肝外傷 手術手技では出血コントロールが困難な肝門部付近にお よぶ重度の損傷により低次グリソンが破綻していると考 えられる症例に対して適用すべきと考える。そしてグリ ソン一括処理(結紮)を行った部分は経時的に壊死に陥 るため、全身状態改善の後速やかに切除する必要がある。 初回手術(DCS)から次回手術(根本的手術)までの待 機時間は現時点では経験的に12時間以内が妥当であると 考えている。注意すべきこととして、肉眼的に肝硬変が 明らかな症例ではグリソン遮断は1区域までに留めなけ ればならず、definitive operationとしての肝切除につな げられないような肝両葉におよぶ損傷症例では本法は適 応とならない。また、肝静脈損傷や肝部下大静脈損傷を 伴っている場合(流出路系損傷)には損傷区域グリソン 結紮(流入路遮断)のみでは確実な止血が行えないこと も留意すべきである。 しかし、重症肝外傷に対してグリソン一括処理法の応 用を実施するにあたって、いくつかの問題点が残る。 第一は、グリソン一括処理法は現在本邦の肝臓外科領 域では周知の手技であり、実際非常に多くの肝臓外科医に よって肝臓の定時手術に用いられている手法ではあるが、 外傷外科領域ではほとんど知られていないことが挙げられ る。では、その手法の説明を聞いた、あるいは見たからと いってPringle法と違い、すぐに外傷外科医が実践できる 手技ではない。不慣れな場合、グリソン周囲の剥離を行っ ているつもりで、グリソン内部を破壊してしまうことや、 グリソン周囲の肝実質の損傷範囲を拡げてしまう可能性も あるからである。グリソン一括処理の基本手技を習得して おり、数多く実践した肝臓外科医であれば、定時手術の肝 切除症例において胆嚢摘出開始からグリソン一括処理まで に要する時間は約10分程度であろう。しかし、ショック状 態に陥った外傷患者において外傷手術の手順を知らない肝 臓外科医が対応できるものでもない。 第二は、グリソン一括処理を行った場合には、その後 速やかに根治術としての肝切除術を実施しなければなら ないことが挙げられる。ダメージコントロール手術とし てのグリソン一括処理自体は肝損傷部の止血を主な目的 としているが、同時に損傷区域の不可逆的な血流不良域 と胆道閉塞域とを人工的に作っているため、可及的速や かにこの領域を切除しなければならない。我々が経験し た症例からグリソン結紮から24時間後には肝に壊死性変 化と腐敗を生じてしまうことがわかっており、肝損傷区 域グリソン結紮後12時間以内に根治手術を行うことが理 想であると考えている。裏を返せば、12時間以内に肝切 除を実施できない施設ではグリソン一括処理法を実施し てはならないということになる。 これら二つの問題点を解決するには、外傷外科医が十 分な肝臓外科手術トレーニングを受けるか、肝臓外科医 が外傷手術トレーニングを受けるしかないのではないか と考える。 我々はこれまでに重症肝損傷に対してグリソン一括処

(8)

理を応用し損傷肝区域グリソン結紮を行った後、根治術 を行い良好な経過を辿った2症例を経験しており、グリ ソン一括処理法は重症肝外傷に対するダメージコント ロール手術手技のひとつの選択肢として有効な手段と考 えている。しかし、ダメージコントロール手術手技は、 その性格上、簡便かつ効果的でなければならないもので ある為、グリソン一括処理法が真にダメージコントロー ル手術手技のひとつとして有用であるといえるのは、外 傷外科領域にこの手技が普及された後のことであろう。

引用文献

1) Eddy VA, Morris JA Jr, Cullinane DC: Hypothermia, coagulopathy, and acidosis. Surg Clin North Am, 80:845-854, 2000

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(9)

Glissonean Pedicle Ligation Method as the Optional Technique of

Damage Control Surgery for Severe Liver Trauma

Introduction

Treatment strategy for severe liver trauma is peri-hepatic gauze packing as a damage control surgery and

vascular embolization after surgery. However, we sometimes encounter cases that cannot be adequately

treated with only this strategy. So we introduce a new optional treatment strategy for severe liver trauma or

“Glissonean pedicle ligation method”.

Method

The Glissonean pedicle consists of three kinds of vessels: portal vein, hepatic artery, and bile duct. Given

Glissonean pedicle unit, the liver can be separated into three segments. And we can taping processed

separately anterior and posterior segmental branch extra hepatic portion. By ligating the segmental

Glissonean pedicle of damaged area, stop bleeding completely. After improving the general condition, we

will perform hepatectomy of the segment of Glissonean pedicle was ligated as a definitive operation.

Waitable time is 12 hours.

Results

In the past, we performed right hepatectomy as a definitive operation, after ligation of the anterior and

posterior segmental Glissonean pedicle as a damage control surgery, twice. Both patients has gotten a good

course.

Discussion

Although there is a problem that it takes many time to learn the procedure, Glissonean pedicle ligation

method is useful as an option of damage control surgery.

Key words :Liver traurma, Damage control surgery, Glissonean pedicle transection method

Satoshi Koizumi 1), Osamu Saji 1), Masafumi Katayama 1), Shinya Kishi 1), Shinjirou Kobayashi 1),

Hiroshi Nakano 1), Yasuhiko Taira 2), Takehito Otsubo 1)

Division of Gastroenterological and General Surgery, St. Marianna University School of Medicine Department of Emergency and Critical Care Medicine, St. St. Marianna University School of Medicine

参照

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