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分校の研究 重複障害児童生徒の授業づくり ~ 教材 教具の工夫 ~ 1 はじめに平成 21 年度から 重度重複障害のある児童 A を対象とした中期目標 ( 重複障害のある子どもの学習づくりと そのための効果的な教材 教具の開発を行う ) に取り組み 今年度はその最後の年である 昨年度末から 国立特別

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Academic year: 2021

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分校の研究

「重複障害児童生徒の授業づくり~教材・教具の工夫~」

1 はじめに 平成21年度から、重度重複障害のある児童Aを対象とした中期目標 (「重複障害の ある子どもの学習づくりと、そのための効果的な教材・教具の開発を行う。」)に取り組 み、今年度はその最後の年である。昨年度末から、国立特別支援教育総合研究所(以下、 特総研)の助言で、新しい支援機器レッツチャット(パナソニックヘルスケア株式会社・ 製造)を取り入れ、言葉を綴ることを中心に授業を行ってきた。レッツチャットに手応 えを感じ、今年度はレッツチャットで言葉を綴ることによって主体的コミュニケーショ ンに取り組んでいくことができるように実践を深めていきたいと考え た。 Aは現在小学部に在籍しており、神経系の疾患により生後 3カ月から入院している。 自力で体を動かすことができず、A自らの反応としては主に、まぶたや視線を動かすこ とである。右手と右足がわずかに動くため、教具を自分で意識して動かせるように工夫 して活用している。呼吸器を装着しているため病室での授業を行い 、自立活動を中心と した授業で、コミュニケーションへの意欲を高めるためにパソコンやスイッチ等を使用 している。 今年度も昨年度に引き続き全教員でAの授業を担当し、月に1回Aの授業に関する打 ち合わせや研究授業・研究協議等を計画し、それぞれが目標を設定して計画的に研修会 を設定することで全員での取り組みという意識を共有することにした。 2 昨年度の取り組みの成果と課題 (1) パソコンソフトの開発、おもちゃの改造、PPS スイッチの活用 成果としては、高知江の口養護学校本校の教諭と高知工科大学の准教授の協力で、 コンピュータのプログラミングに挑戦し、パソコンソフトを利用して「アンパンマン の色当てゲーム」「動物当てゲーム」を作製できたことである。この2つのゲームにA は興味関心を示し、繰り返し行うことですぐに正解できるようになった。このことよ り、色の違いを理解して選び、言語の理解ができていることが明確になった。 また、高知東工業高校で改造を依頼した「アンパンマンのクレーンゲーム」 では、 クレーンを左右・前後に動かし、アンパンマンのキャラクターの フィギュアの入った カプセルを掴む操作をピエゾニューマティックセンサースイッチ(以下 PPS スイッ チ)で行った。スイッチでの操作が難しくカプセルがなかなか取れないが 、Aは「や りたい!」と何度も伝えて意欲的に取り組むことができた。 また、まぶたスイッチから PPS スイッチに変更することで、スムーズにスイッチを 操作することができ、パソコンのゲームや改造したおもちゃなどを楽しむことができ た。 課題としては、Aは色当てや動物当てが完全にできるようになると興味関心を示さ なくなった。そのため新しいゲームの作製が必要であったが、我々教員が専門家の援 助なしにゲームを完成させることはできなかったことで、容易に作製できなかった。 また、「アンパンマンのクレーンゲーム」は、たいへん興味関心を示し何回も挑戦し た が、使いすぎて故障し、修理を依頼したが時間がかかり、今年度ほとんど使うことが できなかった。このようにソフトの作製やおもちゃの修理など他校の力に依存しなけ ればならないことに連携の難しさを痛感した。 PPS スイッチをつける位置が教員間で共有できておらず、授業の時Aがクリックし ても、パソコンやおもちゃを操作できなかったことがあり、膝の高さや足首の角度を どのようにするかということが課題となった。

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(2) レッツチャットの活用 成果としては、平成24年3月16日の学習の記録「…レッツチャットを中心に授 業を行った。最初に動物のスライドを見てもらって、動物の名前を意識付けて、動物 の名前をレッツチャットで打ってもらおうと思ったが、文字版が『はい』『いいえ』『間 違いました』などだったので、その練習を行った。最初は戸惑い気味であったが、繰 り返すうちにスムーズに『はい』『いいえ』『間違いました』を選んだ。次に、 文字版 を五十音にかえて『あ』『か』『い』を打つように言ってみた。最初は、他のところを 打ったりしていたが、繰り返すうちに確実に打てるようになり、自分の名前 も打てる ようになった。」のように、それまではできていなかったが、特総研の専門家が授業参 観に来ていたことでAが頑張ったのか、「はい」「いいえ」「あ」「か」「い」や自分の名 前などをレッツチャットで答えたり打ったりすることができ、手応えを感じたことで ある。 課題としては、まぶたで「はい」「いいえ」を答えるだけのコミュニケーションを 広げるために特総研の専門家からレッツチャットをすすめられたが、教員が操作に慣 れなかったり、Aがレッツチャットに慣れなかったりで、なかなか言葉を綴ることが できずレッツチャットをうまく活用できなかったことである。このような課題を克服 しつつ、今年度は、従来のまぶたで「はい」「いいえ」を伝えるだけでなく、レッツ チャットで言葉を綴ることで、コミュニケーションを広げていくことを中心に取り組 んでいきたいと考えた。 3 今年度の取り組み (1) レッツチャットを活用した取り組みの実際

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また、上記以外のAの反応として、Aが右腕を怪我した後での授業で、 レッツチャ ットで突然「悲しい」という言葉を選んだので聞いてみると、熱が38℃あり右腕が 痛いらしく、「気持ちカード」で確かめてみると「腕が痛い」と答えた。 このように、意思表示がはっきりしている時と曖昧な時とがあり、今までの取り組 みの工夫では十分とは言えないので、更なる工夫が必要であると考えた。 (2) レッツチャットを活用した取り組みの工夫 コミュニケーションの方法として、Aはまぶたで「はい」「いいえ」と答えるだけで 十分と思い、レッツチャットで言葉を綴ることに必要性を感じなくなったのか、「今日 はレッツチャットをやらない」と意欲的でない時があった。 2学期の初めに、福祉機器販売のリハエンジニアを講師として、レッツチャットの 研修会を行って、基本的操作を教員間で共有した。そのとき、プリンターに 接続して 選んだ言葉を印刷することができることを学び、それを利用していろいろな人に手紙 を書く取り組みを思いついた。 目的意識をもたせて意欲的に取り組めるように、レッツチャットにプリンターを接 続して、いろいろな人に手紙を書くように工夫した。以下は、研究授業での実践例で ある。

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授業中Aは、サンタクロースに手紙を書くために言葉を選ぶ 時、伝えたい言葉を一 生懸命考え、できあがった手紙がプリンターから出てくるのを、目を輝かせながら見 ていた。 このように、スライドを見て質問に「はい」「いいえ」で答えたり、五十音図を見て 「あ」「い」などを打つことだけでは意欲が高まらないが、校外学習で案内してくれた 人や音楽会で演奏してくれた人、いつも世話になっている家族、医師、看護師の人な どに感謝の気持ちを表す手紙を書くという目的があると意欲的に取り組むことができ た。 また、既成の文字版だけでなく下のようなオリジナルの文字版を作成して授業で活 用した。下の写真のように、①では、家族、医師、看護師、教員などの名前を書いて、 誰に手紙を書くかを決めるときなどに活用し た。②では、余りにも選択肢が多すぎて 選べないことを考慮して「はい」「いいえ」、「○」「×」、「男」「女」、「すき」「きらい」 だけにして活用した。また、校外学習で行ったコンビニエンスストアーや病院にある コンビニエンスストアーのマークを文字版に貼り付けて興味関心がもてるように工夫 した。 ①名前の文字版 ②「はい」「いいえ」だけの文字版 (3) その他の取り組み 今年度は、講師の都合でコンピュータのプログラミングの研修会を計画することが できずパソコンソフトの開発もできなかったが、同じソフトで作成された電子絵本の フリーソフトを授業に活用した。特にAが気に入っている電子絵本を以下に紹介する。 1つは、「おしゃれなぴょんこちゃん」という電子絵本で、1ページが読み終わって 画面の右下の矢印にマウスのポインターを持って行くと、自分でクリックしてページ をめくることができた。絵本を見て聞くだけでなく、ぴょんこちゃんがピクニックに 出かける時の洋服を選ぶことができ、Aはいつも青い洋服と青い帽子を選んで楽しむ ことができた。 「おしゃれなぴょんこちゃん」 「洋服えらび」 もう一つの「ごめんなさい」では、絵本のなかで主人公が地獄から脱出するのを助

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けるために「いいこと?わるいこと?」クイズを一生懸命考え正解を出すなど 、以前 二択問題に興味を示さなかったが、このようなソフトを活用することで主体性が見ら れるようになり、積極的に取り組めるようになった。 「ごめんなさい」 「いいこと?わるいこと?クイズ」 昨年度は、圧電素子(ピエゾ)のセンサーを右足首につけてPPS スイッチを活用し ていたが、スイッチをつける位置や感度によってスムーズに 動作できなかった。そこ で、今年の2学期から空圧(ディップスポンジ)のセンサーを下のように右手の下に 設置することにした。わずかな力で操作可能なので感度を調節しながら活用すると圧 電素子のセンサーよりもスムーズに動作できた。 ピエゾセンサー ディップスポンジセンサー 4 今年度の取り組みの成果と課題 (1) 成果 レッツチャットで言葉を綴ることに目的意識をもたせるため、レッツチャットにプ リンターを接続して手紙を書くことに取り組んだ。 前述した人以外にも校外学習で案 内してくれた人や、音楽会で演奏してくれた人に「おもしろかった」「また行きたい」 「また聞きたい」を伝えるために手紙を書いたりした。このように目的意識を もたせ ると、一生懸命言葉を選んだり、プリンターから手紙が出てくるのを楽しみに したり するなど、積極的に取り組むことができた。ただ単にレッツチャットで 言葉を選んだ り言葉を綴ったりする授業では「今日はレッツチャットはイヤ!」というサインを送 ることがあったが、プリンターで手紙を書く授業では「今日は○○さんに手紙を書き たい!」と意欲的に取り組むことができた。

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以下にAがレッツチャットで書いた手紙の一覧を紹介する。 また、家族・医師・看護師・教員の名前を書いたオリジナルの文字版を作成 し、誰 に手紙を書くかを決めるのに活用することによって、Aが意思表示しやすくなった。 その他の取り組みの成果としては、Flash(AdobeSystem 株式会社・製造)で作製 されたフリーソフト(電子絵本)を見つけて活用できたことである。昨年度は他校の 協力なしでは教材開発できなかったことがあったが、Aの興味関心に対応したソフト を活用することで、より意欲的に電子絵本を読むようになり、他者との関わりの基礎 などについて考える良い教材となった。また、PPS スイッチをつける位置が教員間で 共有できていなかった昨年度の課題が、空圧センサーを使うことによって解消された ことなど、Aの授業の物的環境・人的環境が整ってきたことが何よりもAの成長を促 したと思われる。 それは、Aのコミュニケーション能力が伸び、Aの世界が広がることによって情緒

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面での成長が見られるようになったことである。それとともに我々教員は、Aの性格、 自我に触れ、Aにふさわしい教材を更に考えることができるようになった。このよう に好転することにより、Aが主体的に学習に取り組む場面が多く見られるようになっ た。 (2) 課題 レッツチャットに意欲的に取り組めるように、プリンターを接続して手紙を書く方 法をとったが、「はいはいありがとういいえ…」と意味もなくただ言葉をつなげて 遊 んでいるようにも思われるが、「さんたくろーすさん! でぃーぶいでぃー ぷれぜん と ください。」ときちんと意思表示ができている 時もある。Aが考えていることに 合った言葉がなかったのか、教員がAの言語認識の把握ができていなかったのか、 た だ単に言葉を綴るだけでなく意思表示がきちんとできるようになるために、何が必要 か見つけることが今後の課題である。レッツチャットの操作性、PPS スイッチの反応 などの問題もあるが、Aが手紙を書くことの意味を理解してきちんと意思表示できる ような環境づくりに更に努めることも大切であると考える。 今年度はパソコンのソフト作製の代わりに、同じようなフリーソフトをホームペー ジ上で見つけてダウンロードして活用した。 そのソフトも数回授業で活用するとすぐ 飽きてしまう。今後、Aの実態を把握して「どのようなソフトが効果的か」教員間で 話し合い、具体的に構想を練り、専門家に相談しながらソフトの作製を依頼するか 、 既成のソフトを紹介してもらう方法をとることにより、効果的なパソコンソフトの活 用につながっていけるのではないかと考える。 5 おわりに 平成21年度から中期計画を立て、重度重複障害のある児童Aを対象とした「授業充 実のため、一人ひとりの児童生徒の実態に即した教材・教具の開発を行う」ことを目標 にして取り組んできた。3年間を振り返ってみると、パソコンソフトによる二択問題か らFlash(Adobe)による教材開発へ、まぶたスイッチから PPS スイッチへ、研究体制 を小学部の担当教員からから全教員へ、地域の学校と連携してのおもちゃの 改造やパソ コンソフトの製作といろいろな取り組みを行うことによって、Aのコミュニケーション 力や情緒的な面での成長に大きく影響したと思われる。 最後の年である今年度は、最も重要と考えるコミュニケーションを広げるための支援 機器レッツチャットを中心に取り組んだ。プリンターに接続することによって「手紙を 書く」という目的意識ができ意欲的に取り組むことができた。これらの取り組みによっ て、昨年度より更にAの内面の成長が見られ、主体的で明るくなったよう に思 われ る。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 広 げ る た め の 支 援 機 器 レ ッ ツ チ ャ ッ ト に 課 題 が 見 え て き た こ とを考えると、新しい支援機器iPad(apple 株式会社・製造)や脳波によるスイッチな ども視野に入れながら、支援機器を活用しコミュニケーションが円滑にできるように 、 今後も教材・教具の工夫に取り組んでいきたい。 最後に本年度、研究を進めるにあたり、ご指導を頂いた特総研に感謝いたします。ま た、多くの知識やご示唆を頂いた、福祉機器販売のリハエンジニア、 視覚・聴覚の特別 支援教育コーディネーター、レッツチャットの開発者の皆様に感謝いたします。

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