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学会誌にみる経済教育研究の最近の動向(投稿原稿(査読付))

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Ⅰ.はじめに

 経済教育学会の会則には,学会の目的が,「広く経 済に関する教育(経済学・経営学・会計学,および商 業・消費者教育などを含む)の目的・内容・方法・評 価・制度を調査研究し,…(略)」と定められているよ うに,学会誌『経済教育』(2003 年発行の第 22 号まで は『経済学教育』。同年11月の会則改正により第23号 から『経済教育』)には経済学ばかりでなく,それ以 外の分野の研究成果も数多く掲載されてきた。そこで, 本論では 2000 年以降の学会誌に掲載された論稿を調 査することを通じて,近年のわが国における経済教育 (経済学教育を含む)およびその周辺ないし関連領域 の教育に関する研究動向を明らかにし,最近の特徴を 検討しようとするものである。したがって本論は,あ くまでも学会誌に掲載された論稿に表われた研究動向 という限定的な現象に着目するものであり,経済教育 に関連する一般的な研究動向を調査したり,学会誌に 見られる研究動向の背後にあると考えられる要因を探 るような,原因究明的あるいは探索的な分析を行った りするものでもないことをお断わりしておく。  なお,現行の学会誌編集規程によれば,第 1 条③に おいて,「本誌は,経済教育及び経済学教育に関する 研究論文,書評,学会の活動報告等を掲載する」とさ れ,また第 3 条においては,「本誌に研究論文等を投 稿することができるのは,…(略)」とあるように,掲 載されているのは研究論文ばかりではない。実際に最 近の『経済教育』を見ても,その構成は,大会報告や 会務報告を除けば,各年の経済教育学会全国大会にお けるゲストスピーカーによる講演やシンポジウム参加 者の報告,分科会における自由研究発表,および投稿 原稿である。さらに投稿原稿も,投稿要領の 5.(2)に よれば,研究論文以外に,「論考,調査報告,実践記 録,資料紹介・資料分析,書評,翻訳,研究ノート等 の論稿…(略)」とあり,そのジャンルは多岐にわたっ ている。ただし,第 18 号(1999 年 4 月発行)までは, 投稿規定には論文以外に,「書評・調査レポートなど」 と記載されているだけであった。  そこで本論では,学会誌に掲載されたものはすべて 「論稿」と表わすことにし,また,その論稿の質に関 しては問わずに,単に論稿のテーマに的を絞って分類 し,分析するものとする。

Ⅱ.全体的動向

 『経済教育』は年刊 1 冊であるので,2000 年以降 2012 年までに第 19 号から第 31 号までの計 13 冊が発 行された。この 13 冊について,掲載された論稿を テーマ領域別に分類して,その数を示したのが表 1 で ある。掲載された論稿は合計 292 篇であり,1 冊当た り平均 22.5 篇となる。また,1 冊当たりの最少掲載数 は第 20 号の 16 篇であり,最多掲載数は第 30 号の 32 篇である。  テーマ領域のうち,純粋に経済教育の範疇では,そ の目的・内容,方法,実践,教材開発・授業案,資料 分析,制度・課程という 6 項目に分けて表 1 に示した。 なお,論稿の主題が 2 つの項目に重複している場合に は,それぞれのテーマ領域に 0.5 ポイントずつを与え た。6 つのテーマ領域のうちもっとも掲載数が多いの は,「経済教育の目的・内容」の 58 篇であり,それに 次ぐのが「経済教育の実践」の48篇である。この2つ のテーマ領域で合計 106 篇となり,13 年間の合計 292 篇の 36.3%を占めている。さらに,査読付き投稿論文 の掲載数で見ても,前者のテーマ領域には 10 篇,後 者には8篇の合計14篇あり,査読付き投稿論文の全掲

Data Analysis

The Journal of

Economic Education No.32, September, 2013

資料分析

学会誌にみる経済教育研究の

最近の動向

The Recent Trends in Economic Education Research in Japan : An Analysis of the Japanese Journal

of Economic Education

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表 1  『経済教育』におけるテーマ領域別掲載論稿の数 1 論稿のテーマ領域 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 小計 % 経済(学)教育の目的・内容 4.5(1) 3 7.5 4.5(1) 4.5 (1.5) 5 5.5 (0.5) 4(1) 0.5 3.5(2) 2 6.5 (2.5) 7(0.5) 58(10) 19.9 (25.6) 経済教育の方法 0.5 (0.5) 1.5(1) 1.5(1) 3 2.5 2 1.5 (0.5) 1.5 3(1.5) 2(1) 1.5 (0.5) 3 1 25.5(6) 8.7(15.4) 経済教育の実践 2 5.5 (0.5) 3.5(1) 1.5(1) 4.5 2.5 (0.5) 3.5 4 1.5 3(1) 3.5(1) 6.5 (0.5) 5(1.5) 3.5(1) 48(8) 16.4 (20.5) 経済教育の教材開発・授業案 0.5 0 0 0 0 1 1.5 2.5 2(0.5) 2 1.5 1.5 0 12.5 (0.5) 4.3(1.3) 経済教育の資料分析 3 0.5 0.5 0 1 0 0 0 1(1) 1 0 0 1 0.5 (0.5) 5.5(1.5) 1.9(3.8) 経済教育の制度・課程(初等・中等教育) 0.5 0.5 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 3(0) 1.0(0.0) 経済・金融リテラシー,金融倫理 4 2 1 1 0 2 2(1) 3.5 2(1) 2 2 1 1(1) 1 20.5(3) 7.0(7.7) 金融・投資教育   目的・内容・現状 0 0 0 0 0.5 0.5 1 2.5 1 0 0 0.5 1 7(0) 2.4(0.0)   教育方法・教材・実践 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 1 4(0) 1.4(0.0) キャリア教育 0 0 0 0 0 1 1.5 1 2(1) 2 1.5(1) 3.5(1) 2.5 15(3) 5.1(7.7) 経営学・商学・起業家教育,産学連携推進   目的・内容 1 1(1) 0 0 0 0 0 0 1 0.5 0 0.5 0 4(1) 1.4(2.6)   実践 5 2 0 0 0 0 3 5(1) 1 1 4.5 3(1) 3.5(1) 4(1) 27(4) 9.2 (10.3) 経済学の内容・研究,その他の個別テーマ 6 2 3 4.5(1) 6 0 2 1.5 1 2.5(1) 3 3 3 1.5 33(2) 11.3(5.1) 書評,その他 7 4 2 1 1 5 2 1 2 4 4 0 1 2 29(0) 9.9(0.0) 合 計 23(2) 16(3) 17(3) 20(1) 17(2) 22(1) 26(2) 20(3) 25(5) 27(4) 22(3) 32(7) 25(3) 292(39) 100.0 (100.0) 出所:経済教育学会『経済教育』第 19 号〜第 31 号までの各号にもとづき筆者作成。 注:1.カッコ内は査読付き投稿論文の数を示す。また,主題が 2 つのテーマ領域にまたがっている論文等は,各テーマ領域に 0.5 ポイントずつ与えた。 2.経済教育の実践内容,及び(または)その実践から得られた知見について論述したもの。 3.資料分析の例として,教科書の記述内容,大学入試問題の分析がある。 4.経済・金融リテラシーあるいは金融倫理の内容・調査,測定(アセスメント)の結果,その関連分野と応用に関する論文等から成る。 5.たとえば地域との連携による商店街やコミュニティの活性化,商品開発と販売,企業見学,ボランティア活動,外部講師による講演など 。 6.その他の個別テーマには,たとえば農業・食料問題,環境問題,年金教育,リカレント教育,情報教育,会計学教育,村落の経済,大学 ・学部の教育・教育課程(経済関連)などが含まれる。 7. そ の 他 に は , 経 済 学 や 経 済 教 育 と は 無 関 係 な 論 稿 が 含 ま れ る 。 た と え ば 大 学 経 営 , 大 学 改 革 , 大 学 ガ バ ナ ン ス , 植 民 地 教 育 , 在 外 研 究 の 体 験 な ど 。 東 日 本 大 震 災 , 原 子 力 発 電 所 の 問 題 , 全 国 大会の記念講演も該当する。 表 2 学校段階による掲載論稿の分類〔経済(学)教育の目的・内容〕 学校段階 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 経済(学)教育の目的・内容   大学・大学院 2 1 4.5 3(1) 1.5 (0.5) 2.5 4(0.5) 1.5 0.5 2(1) 1 4.5(1) 2.5 30.5(4)   短期大学・高等専門学校 * 1 0.5 1.5   高等学校 2.5(1) 2 1 1(0.5) 0.5 1.5 1.5 (0.5) 1(0.5) 0.5 0.5 1.5 13.5(2.5)   小学校・中学校 1(0.5) 1(0.5) 0.5 (0.5) 1.5 (0.5) 4(2)   高大連携・接続  0.5 0.5 (0.5) 1(0.5)   全般(小中高対象を含む) 1 1 1 2 1(1) 1.5 7.5(1) 合 計 4.5(1) 3 7.5 4.5(1) 4.5 (1.5) 5 5.5 (0.5) 4(1) 0.5 3.5(2) 2 6.5 (2.5) 7(0.5) 58(10) * 論稿により専修学校を含む場合がある。

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載数 39 篇のうち,この 2 つのテーマ領域で 46.2%を占 めていることからも,この学会誌の基本的な性格が見 てとれる。  3 番目に掲載数が多いのが「経済教育の方法」の 25.5 篇であり,4 番目が「経済教育の教材開発・授業 案」の 12.5 篇,5 番目が「経済教育の資料分析」の 5.5 篇,そしてもっとも少ないのが「経済教育の制度・課 程」の 3 篇である。これら 6 項目で合計 152.5 篇とな り,全テーマ領域を通じて掲載された論稿の総数 292 篇の 52.2%となる。したがって,残りの 48%弱は,純 粋に経済教育に関するテーマとは異なる範疇に入る論 稿である。そこからは,『経済教育』に掲載された論 稿の半数近くが,純粋に経済教育とは言えない範疇の テーマに関するものであるという近年の学会誌の別の 一面が見てとれる。  純粋に経済教育の範疇に入るテーマ領域とは異なる 領域として,「経済・金融リテラシー,金融倫理」「金 融・投資教育」「キャリア教育」「経営学・商学・起業 家教育,産学連携推進」「経済学の内容・研究,その 他の個別テーマ」「書評,その他」という 6 項目を設 けた。これらのテーマ領域には合計 139.5 篇の論稿が 含まれ,全テーマ領域を通じて掲載された論稿の総数 292 篇のうち 47.8%を占めている。そのうち「書評, その他」を除く 5 項目を経済教育の周辺ないし関連領 域と見なせば,そこには計 110.5 篇の論稿があり,全 体の 37.8%を占めている。  個々のテーマ領域に属する論稿の内容については次 節でふれることにするが,ここで特徴的なことは, 「キャリア教育」と「経営学・商学・起業家教育,産 学連携推進」(その中でも「実践」)という 2 つのテー マ領域の論稿が,2005 年の第 24 号以降に顕著に増え ていることである。前者のテーマでは計 15 篇の論稿 が,後者では計 25 篇の論稿がそれぞれ第 24 号以降, 毎年途切れずに掲載されているが,この事実は最近の 研究動向を明確に示していると言えよう。  なお,毎号の学会誌に掲載された論稿の多くが,前 年度の全国大会におけるシンポジウム参加者の報告や 会員の自由研究発表であることを考えれば,各年の大 会テーマが掲載論稿の傾向に影響していることが考え られる。しかし,これも裏を返せば,大会テーマがそ の時々の経済教育を取り巻く状況(たとえば学生の学 力低下や“経済学離れ”,初等・中等教育における学 習指導要領の改正など)や経済・社会情勢(たとえば 日本経済の長期不況,若年者の就職困難,東日本大震 災など)を勘案して学会理事会(旧幹事会)と大会開 催実行委員会で検討のうえ決定されたとすれば,大会 テーマ自体が当学会および会員間の関心対象や研究動 向をそれなりに反映していると言えよう。1)

Ⅲ.テーマ領域別の動向

 ここからは,『経済教育』の第19号から第31号にか けて掲載された論稿を,個々のテーマ領域ごとに詳し く見ることによって,最近の研究動向を探ってみたい。 1.経済(学)教育の目的・内容  まず初めに,表 2 では,「経済(学)教育の目的・ 内容」について論じた 58 篇の論稿を学校段階別に分 類している。そのうち約半数の 30.5 篇が,大学・大学 院レベル2)の経済(学)教育の目的ないし内容をテー マに取り上げている。次に多いのは高校レベルを扱っ た論稿の 13.5 篇であるが,大学・大学院レベルの論稿 数はその 2 倍以上となっている。  大学・大学院レベルで経済(学)教育の目的・内容 について取り上げた論稿の個別のテーマ例は,次のと おりである。 マルクス経済学からみたマクロ経済学の内容,韓 国の経済学教育,中央大学のマルクス経済学,導 入教育としての経済学史,中央大学の導入教育失 敗,中国の(私立)大学における経済教育,京都 大学の経済教育,社会経済学原論,危機管理能力 の育成,経済学教育の新課題,需要曲線の図解, 教育学・倫理学との融合,地域と経済教育,ロー スクールの経済学教育,導入教育(ジュニア・ア チーブメント),童戯,労働経済論の内容,資本 論,功利主義,経済概念(例:信用創造,効率と 公正,固定資本減耗)の教育,教員養成,人材育 成,自由貿易への否定的見解  短期大学・高等専門学校レベルの論稿のテーマは, 次の 3 篇である。 女子短期大学の経済学教育,経済学史,ジェン ダー視点  高校レベルの論稿のテーマ例は,次のようなもので ある。 価格均衡論批判,市場メカニズム,高校の経済教 育のあり方,経済的論理思考(日経 STOCK リー グ),カリキュラム,資本主義的価値理念,グ ローバル化した経済と経済教育,海外(例:韓国, ミャンマー,米国の NCEE,ニュージーランド, フィリピン,ベトナム)の経済教育,経済概念

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(機会費用・国富・GDP 等)の教育,学習指導要 領,道徳と経済教育(便乗値上げ)  小・中学校レベルで論じた論稿は計 7 篇あるが,そ の中には中学校と高校の経済教育を中等教育レベルと して一緒に論じた論稿も数篇ある。たとえば米国の全 米経済教育協議会(NCEE,現CEE)が作成した経済 教育の内容案や,現代のグローバル化した経済に対応 した経済教育の内容を扱ったものであるが,それらは 上記の高校レベルにおける論稿としても重複して (0.5 ポイントずつ与えて)数えている。単に中学校レ ベルだけを扱った論稿の例としては,中学校公民教科 書の分析に関するものがある。  高大連携・接続の視点から書かれた論稿の例として は,ビジネス基礎(商業科)と大学経済教育,高校で の学習と関連させた大学の導入授業の 2 篇がある。  全般レベル(学校段階を限定していない意)では, 次のようなテーマの論稿が掲載された。 韓国・米国の経済教育,機会費用概念,地域と経 済教育,経済教育のあり方(経済理論の教授), 経済教育と本学会のあり方,労働(小学校・中学 校・高校)  このように見てくると,これまで多様なテーマの論 稿が書かれてきたことがわかるが,その中でも執筆者 自身による学校現場での教育経験にもとづくものや, 特定の経済理論や経済概念の教育に関するもの,経済 教育のあり方を論じたもの,諸外国の経済教育につい て論じたものなどが幾つか,あるいは多くあることに 気づく。 2.経済教育の方法  表 3 は「経済教育の方法」に関する論稿を学校段階 別に分類している。ここでも計 25.5 篇のうち半数以上 の 14.5 篇が大学・大学院レベルを対象とした論稿であ る。このテーマ領域では,査読付き投稿論文も,計 6 篇中 5 篇が大学・大学院レベルのものである。  経済教育の方法に関する大学・大学院レベルの論稿 の個別テーマの例は,次のとおりである。 参画型授業,カードとレポート,教育に新聞を (NIE),対話型授業,フィールドワーク,外部の 力の活用,統計・図表の作成,「解説付き資料」 の利用,図解的説明,ゼミナール,メディア授業, e-learning, 参加型学習,情報通信技術(ICT) の利用,公共経済学の講義法,双方向授業,コン ピュータ・シミュレーション,ビデオ電話,課題 レポート,サービスラーニング,実況放送型講義  短期大学・高等専門学校レベルの論稿は,次のとお りである。 グループワーク,経済記事教育,新聞記事データ ベースの利用,出席レポート  高等学校レベルの論稿は,下記のとおりである。 TV 番組(世の中なんでも経済学)の利用,新聞 チラシ,地域経済データによる横浜研究,為替予 想,ウェブサイトの利用,高校経済教育の姿勢, 株式学習ゲームの課題,調査教育,国富・GDP の教え方  小・中学校レベルの論稿の例は,直接・間接金融の 教え方である。  全般レベルでは,ことわざを利用した経済概念の教 育に関する論稿がある。 3.経済教育の実践  「経済教育の実践」に関する論稿についても,学校 段階で分類した表4を見ると,計48篇のうち約半数の 25 篇が大学・大学院レベルのものである。それに次 いで多いのが高校レベルを対象とした論稿であり,合 計数の約 4 分の 1 にあたる 11.5 篇ある。  大学・大学院レベルの論稿のテーマ例をあげると, 下記のとおりである。 参画型授業,女子大文学部の経済学教育,教員養 成における経済教育,経済情報処理,マクロ経済 学,野麦峠越え(ゼミ合宿),カードとレポート, 教育に新聞を(NIE),経済政策論,対話型授業, フィールドワーク,中学公民教科書の利用,外部 の力の活用,需要曲線の図解,ドイツの大学での 教授体験,地域調査,近江・草津論,初年次教育 (経済入門),貿易ゲーム(農産物),経済情報処 理,双方向授業,高校での学習と関連させた大学 の導入授業  短期大学・高等専門学校レベルの論稿のテーマ例は, 次のとおりである。 女子短期大学の経済学教育,グループワーク,経 済学史,経済記事教育,ジェンダー視点,ツーリ ズム  高校レベルの論稿のテーマ例は,次のとおりである。 TV 番組の利用,新聞チラシ,地域経済データに よる横浜研究,為替予想,ウェブサイトの利用, 経済合理性(行動経済学),産業・企業の学習, 企業の社会的責任(CSR),アルバイト調査,定 時制高校生の仕事選択,便乗値上げ,経済計算と 規範意識

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表 3 学校段階による掲載論稿の分類(経済教育の方法) 学校段階 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 経済教育の方法   大学・大学院 0.5 (0.5) 1(1) 1 0.5 2 1(0.5) 1.5 3(1.5) 2(1) 1.5 (0.5) 0.5 14.5(5)   短期大学・高等専門学校 0.5 0.5 0.5 0.5 1 1 4   高等学校 1(1) 1.5 1.5 0.5 0.5 5(1)   小学校・中学校 1 1   全般 1 1 合 計 0.5 (0.5) 1.5(1) 1.5(1) 3 2.5 2 1.5 (0.5) 1.5 3(1.5) 2(1) 1.5 (0.5) 3 1 25.5(6) 表 4 学校段階による掲載論稿の分類(経済教育の実践) 学校段階 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 経済教育の実践   大学・大学院 5.5 (0.5) 2(1) 2 2(0.5) 2.5 1.5 1 1.5 (0.5) 1 3.5 (0.5) 1(0.5) 1.5 25(3.5)   短期大学・高等専門学校 1.5 0.5 1 0.5 1 1 5.5   高等学校 1(1) 1.5 1.5 0.5 1.5(1) 1 3(1) 1.5(1) 11.5(4)   中学校 1 0.5 (0.5) 2 1 4.5(0.5)   高大連携・接続  1 1   全般 0.5 0.5 合 計 5.5 (0.5) 3.5(1) 1.5(1) 4.5 2.5 (0.5) 3.5 4 1.5 3(1) 3.5(1) 6.5 (0.5) 5(1.5) 3.5(1) 48(8) 表 5 掲載論稿のテーマ別分類(経済教育の教材開発・授業案など) 論稿テーマ 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 経済教育の教材開発・授業案 0.5 1 1.5 2.5 2(0.5) 2 1.5 1.5 12.5(0.5) 経済教育の資料分析 0.5 0.5 1 1(1) 1 1 0.5 (0.5) 5.5(1.5) 経済教育の制度・課程(初等・中等教育) 0.5 0.5 1 1 3 合 計 1.5 1 0 1 0 1 1.5 3.5(1) 4(0.5) 2 2.5 2.5 0.5 (0.5) 21(2) 表 6 掲載論稿のテーマ別分類(経済・金融リテラシー,金融倫理) 論稿テーマ 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 経済・金融リテラシー,金融倫理   内容,調査(測定)の目的・実施 1.5 1 0.5 3   測定(アセスメント)の結果 2 1 1 2 1 1.5 1.5 (0.5) 2 1 0.5 1(1) 1 15.5(1.5)   関連分野,応用 1(1) 0.5 0.5 (0.5) 2(1.5) 合 計 2 1 1 0 2 2(1) 3.5 2(1) 2 2 1 1(1) 1 20.5(3)

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 中学校レベルの論稿のテーマ例は,次のとおりであ る。 ワークショップ型教材(習得・活用・探求,地球 温暖化),インタラクティブな授業,議論・討論, 公共性を育む授業  高大連携・接続に関する論稿には,導入教育として の高大連携の 1 例がある。  全般レベルの論稿としては,労働(小学校・中学 校・高校)を取り上げた 1 例がある。 4.経済教育の教材開発・授業案など  表 5 には,表 1 の中から「経済教育の教材開発・授 業案」「経済教育の資料分析」「経済教育の制度・課程 (初等・中等教育)」の3項目を再掲した。計21篇のう ち約 60%にあたる 12.5 篇が「経済教育の教材開発・ 授業案」に関する論稿である。これらの論稿は,2005 年の第 24 号から 2011 年の第 30 号まで継続的に掲載さ れていることが特徴的である。それに対して,「経済 教育の資料分析」と「経済教育の制度・課程(初等・ 中等教育)」に関する論稿は,篇数が少なく,掲載も 断続的である。  「経済教育の教材開発・授業案」に関する論稿の テーマ例は,次のとおりである。 市場メカニズムの教え方,シミュレーション教材, 産業組織論,どんぐりマーケット(ゲーム),公 共性(公的年金問題),南北問題,公共経済学, 欧州連合(EU),デジタル映像教材,お笑い教材  「経済教育の資料分析」に関する論稿のテーマ例は, 次のとおりである。 韓国の高校教科書,NCEE 学習内容基準の分析, 特例国債,NCEE 教材の分析,大学入試問題の分 析,中学校公民教科書の分析  「経済教育の制度・課程(初等・中等教育)」に関す る論稿のテーマは,ミャンマーの経済教育,韓国の (高校)経済教育,日韓比較の 3 つである。 5.経済・金融リテラシー,金融倫理  表 6 は,「経済・金融リテラシー,金融倫理」に関 する論稿を,さらにそのテーマによって「内容,調査 (測定)の目的・実施」「測定(アセスメント)の結 果」「関連分野,応用」の 3 つに分類している。この うち「測定(アセスメント)の結果」に,計 20.5 篇の 約 4 分の 3 にあたる 15.5 篇が集中している。生徒,学 生あるいは社会人の経済または金融分野の知識・理 解・応用力を測定するためのテストが,それだけ実施 されてきていることをこの数字は示唆している。学習 者に経済(学)や金融の学習効果がどれだけ表われた かを測定し,学習者の経済・金融リテラシーの水準を 測るとともに,知識や理解の乏しい経済・金融分野に ついて確認することは,経済・金融教育の改善と発展 に欠かせないと考えられる。  「内容,調査(測定)の目的・実施」に属する論稿 のテーマ例は,次のとおりである。 パーソナル・ファイナンシャル(PF)リテラ シー,経済的社会化と経済リテラシー,全米学力 調査,韓国の経済認定テスト  「測定(アセスメント)の結果」に関する論稿の テーマ例は,次のとおりである。 日本の高校生・大学生の金融リテラシー,PF リ テラシー,日・中・韓・比・米各国における経 済・金融リテラシー,金融倫理  「関連分野,応用」に属する論稿のテーマ例として は,次のものがあげられる。 公認会計士試験の経済学出題,経済学検定試験 (ERE)と公務員試験対策 6.金融・投資教育  近年,学校の内外で盛んに実施されているのが金融 教育である。それは学校教員によるだけでなく,日本 銀行金融広報中央委員会や東京証券取引所,銀行・証 券の業界団体や個々の企業,NPO 法人など多種多様 な主体によって担われている。しかし,学会誌に掲載 されたこの分野における論稿の数は決して多くなく, 全部で 11 篇にすぎない(表 7 参照)。これは,金融・ 投資を専攻あるいは研究分野とする学会員が少ないこ とに起因するかもしれないが,今後この分野における 研究成果が蓄積されることが期待される。  金融・投資教育の「目的・内容・現状」に関する論 稿のテーマ例としては,大学・大学院レベルでは投資 リスクの教育,高校レベルでは高校経済教育の課題, 日経 STOCK リーグ,米国・韓国の金融教育(小・中 学校レベルと重複),全般レベルでは OECD 金融教育 プロジェクトがあげられる。  「方法・実践・教材」に関する論稿のテーマ例とし ては,大学・大学院レベルでは大学生による小学生へ の金銭教育,高校レベルではハワイの金融教育,直 接・間接金融の教え方,金融システム史,小・中学校 レベルではハワイの金融教育があげられる。

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7.キャリア教育  キャリア教育は職業教育とともに,初等・中等・高 等教育段階を通じて児童・生徒・学生の勤労観,職業 観を育成し,就業能力を高めて学校教育から職業生活 へのスムースな移行を促し,生涯にわたるキャリア形 成を支援するものである。3)こうした意図を持った キャリア教育が,現在では小学校から大学に至るまで 実施されており,その教育内容や実践例に関する研 究・調査の蓄積が生まれ始めている。  本学会誌においても,2005 年の第 24 号以降の毎号, キャリア教育をテーマとした論稿が掲載されている (表8参照)。その数は計15篇であるが,そのうち半数 を超える 8.5 篇が短期大学・高等専門学校のレベルで ある。これは同一の執筆者が毎年のように寄稿してき たためである。これに次いで論稿数が多いのが,大 学・大学院レベルの 5.5 篇である。したがって,15 篇 中 14 篇が高等教育レベルの論稿であり,それ以外は 高校レベルのわずか 1 篇である。キャリア教育が,初 等教育段階から高等教育段階までを通じて実施・推進 されているにもかかわらず,本学会誌に掲載された論 稿が高等教育段階に偏していることは,1 つの特徴と 言えるであろう。  大学・大学院レベルの論稿のテーマ例としては,海 外インターンシップや YES −プログラム(厚生労働 省による若年者就職基礎能力支援事業)に関するもの, 短期大学・高等専門学校レベルではインターンシップ や公務員養成講座に関するものがある。 8.経営学・商学・起業家教育,産学連携推進  このテーマ領域では,特に実践に関する論稿が多い のが特徴的である(表 9 参照)。まず,「目的・内容」 に関する論稿は 4 篇であるが,「実践」に関しては 27 篇もある。しかも,そのうち約 3 分の 2 にあたる 18.5 篇が大学・大学院レベルの論稿である。また,短期大 学・高等専門学校レベルでも 7.5 篇と,少なくない数 の論稿がこのテーマ領域においては存在する。経済教 育の周辺ないし関連領域で,このように掲載論稿が近 年増えてきていることは,学会員の専攻分野ないし調 査・研究対象の多様さと広がりを如実に表わしている と言えよう。  「目的・内容」における具体的な論稿のテーマ例と しては,大学・大学院レベルでは日本型 MBA 教育が, 短期大学・高等専門学校レベルでは商学連携の街づく りがあげられる。  また,「実践」における大学・大学院レベルの論稿 では,次のようなテーマ例が見られる。 大学コンソーシアム京都のインターンシップ,コ ミュニティ・ビジネス,ゼミの社会貢献,経営学 史の授業,経営実践特別講座,ソーシャルビジネ ス,産学官連携と商品開発・販売  同じく短期大学・高等専門学校レベルの論稿のテー マ例は,次のようなものである。 マーケティング調査,ケースメソッド,学店,商 学連携の街づくり,大月学  全般レベルでは,アントレプレナーシップ教育に関 する論稿が 1 篇だけある。 9.経済学の内容・研究,その他の個別テーマ  この領域では計 33 篇の論稿が掲載されたが(表 10 参照),そのうちもっとも多いのが,経済に関連した 「大学・学部の教育・教育課程」であり 12 篇ある。そ のほか,「経済学の内容・研究」をテーマとした論稿 が 7 篇,「環境問題」に関する論稿が 5.5 篇,「リカレ ント教育」に関する論稿が 3 篇ある。ここでも,経済 教育の周辺ないし関連領域の論稿が取り上げられ分類 されているが,純粋に経済学の研究内容を論じたもの が少ないことも,特に米国のThe Journal of Econom︲ ic Education と比べた時に本学会誌の特徴の 1 つと見 なせるであろう。4)  掲載された論稿のテーマ例としては,「経済学の内 容・研究」では次のとおりである。 ミクロ経済学(無差別曲線にもとづく消費者選好 理論)批判,女性の社会進出と少子化,資本主義 の発展,マクロ経済学の導入教育,功利主義,日 本経済の現状(格差,雇用,賃金)  「農業・食料問題」では,地域における農業問題教 育があげられる。  「環境問題」では,NO2調査の結果,環境会計を導 入した大学の調査結果があげられる。  「年金教育」では,年金教育の紹介と構想がある。  「リカレント教育」では,リカレント教育における 経済学教育,社会人大学院生のキャリア類型があげら れる。  「情報教育」では,高校の情報教育を取り上げた論 稿が 1 篇ある。  「会計学教育」では,大学を対象としたアンケート 調査の結果に関する論稿がある。  「村落の経済」では,長野県の一村の戦後経済の変 遷を論じた論稿が 1 篇ある。  「大学・学部の教育・教育課程(経済関連)」では,

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表 7 学校段階による掲載論稿の分類(金融・投資教育) 学校段階 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 目的・内容・現状   大学・大学院 1 0.5 1.5   短期大学・高等専門学校 0   高等学校 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 2.5   小学校・中学校 0.5 0.5 1   全般 1 1 2 小 計 0 0 0 0 0.5 0.5 1 2.5 1 0 0 0.5 1 7(0) 方法・実践・教材   大学・大学院 1 1   短期大学・高等専門学校 0   高等学校 1 1 2   小学校・中学校 1 1   全般 0 小 計 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 1 4(0) 合 計 0 0 0 0 0.5 0.5 1 2.5 2 0 0 2.5 2 11(0) 表 8 学校段階による掲載論稿の分類(キャリア教育) 学校段階 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 キャリア教育   大学・大学院 1 0.5 1(1) 2.5(1) 0.5 5.5(2)   短期大学・高等専門学校 1 1 1 2 0.5 1 2 8.5   高等学校 1(1) 1(1)   中学校 0   全般 0 合 計 0 0 0 0 0 1 1.5 1 2(1) 2 1.5(1) 3.5(1) 2.5 15(3)

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表 9 学校段階による掲載論稿の分類(経営学・商学・起業家教育,産学連携推進) 学校段階 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 目的・内容   大学・大学院 1 1(1) 0.5 2.5(1)   短期大学・高等専門学校 0.5 0.5   高等学校 0   中学校 0   全般 1 1 小 計 1 1(1) 0 0 0 0 0 0 1 0.5 0 0.5 0 4(1) 実践   大学・大学院 1 3 3 3.5 2(1) 3(1) 3(1) 18.5(3)   短期大学・高等専門学校 1 2(1) 1 1 1 0.5 1 7.5(1)   高等学校 0   中学校 0   全般 1 1 小 計 2 0 0 0 0 3 5(1) 1 1 4.5 3(1) 3.5(1) 4(1) 27(4) 合 計 3 1(1) 0 0 0 3 5(1) 2 2 5 3(1) 4(1) 4(1) 31(5) 表 10 掲載論稿のテーマ別分類(経済学の内容・研究,その他の個別テーマ) 論稿テーマ 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 経済学の内容・研究 1 1 0.5 1 1.5(1) 2 7(1) 農業・食料問題 1 0.5 1.5 環境問題 1 1 1 1 0.5 1 5.5 年金教育 1 1 リカレント教育 1 1(1) 1 3(1) 情報教育 1 1 会計学教育 1 1 村落の経済 1 1 大学・学部の教育・教育課程(経済関連) 1 1 2.5 3 2 2 0.5 12 合 計 2 3 4.5(1) 6 0 2 1.5 1 2.5(1) 3 3 3 1.5 33(2) 表 11 掲載論稿のテーマ別分類(書評,その他) 論稿テーマ 発行年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2000 ~ 2012 号 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 合計 書評 1 1 2 4 その他 4 2 1 1 5 2 1 1 3 2 1 2 25 合 計 4 2 1 1 5 2 1 2 4 4 0 1 2 29(0)

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次のようなテーマ例がある。 社会人対象自由大学院,神戸商科大学商経学部の 経済政策論講義,中央大学経済学部における経済 学教育の課題,福岡工業大学社会環境学部の開設, 新時代の大学教育,河上肇の経済学教育,オリ ター団の新入生教育,授業づくり,参画型教育, 高大接続,教員養成大学のカリキュラム,編入教 育 10.書評,その他  本学会誌に掲載された書評は,4 篇のみである。そ れに対して,「その他」に分類される,経済学や経済 教育(とその周辺・関連領域)とは無関係の論稿が 25 篇ある(表 11 参照)。  書評は,会員の最近の出版図書に関する別の会員に よる紹介・批評であるが,具体的な書名や図書の内容 についてはここでは省く。  「その他」に含まれる論稿の中には,全国大会のシ ンポジウムに招いた学会外からのゲストスピーカーに よる講演やパネリストの報告もあるが,学会員による 論稿のテーマ例としては,学習ケアセンター構想,就 職難時代の大学教育,就職協定廃止後の大学教育,留 学生教育,京都大学大学院の改革,協働的実践による 6 つの力の獲得,京都橘大学・大学院の文化政策学な どがあげられる。これらは会員自身の問題意識や会員 自身の所属する学校が直面する問題を取り上げたもの であり,会員の関心と研究対象が経済や経済学にとど まらず,広く学校教育や高等教育にまで拡大している ことを反映している。

Ⅳ.執筆者別の特徴

 分析対象にした『経済教育』の計 13 冊に掲載され た論稿総数 292 篇を,掲載時の執筆者の所属先によっ て分類したのが表 12 である。これを見てもわかるよ うに,計 292 篇の論稿のうち 53.4%にあたる 156 篇が, 大学・大学院教員だけの単独ないし共同執筆によるも のである。前節Ⅱにおいては,大学・大学院レベルの 論稿が特に多いテーマ領域が幾つもあったが,執筆者 を見ても大学・大学院の教員による論稿が半数以上あ ることがわかる。  次に多いのが,高等学校・中等教育学校の教員によ る 32 篇(共同執筆を含む)の 11.0%であり,大学・ 大学院教員が執筆した論稿数の 5 分の 1 にまで減る。 それ以外にも,短期大学教員,高等専門学校教員,海 外研究者による論稿がそれぞれ 5 〜 6%あり,中学校 教員による論稿は 4 篇のみの 1.4%である。  また,「その他」にあるように,教員や研究者が執 筆した論稿以外に,元教員(大学ないし高等学校の教 員経験者 4 名)による論稿や,大学の学部生(ゼミ生 を含む)や大学院生らと教員との共同執筆になる論稿 が,それぞれ 11 篇と 10 篇あり,大学院生の単独論稿 も 7 篇ある。さらに,学校種(大学・短期大学・高校 など)の異なる教員どうしの共同論稿が 9 篇,企業・ 地方公共団体・NPO 法人・研究所に属する者による 論稿が 7 篇ある。  なお,執筆者の所属先にもとづいて論稿を分類する 際に,そもそも学会員の構成の特徴(たとえば中学・ 高校・大学という学校段階別の会員数とその割合な ど)は検討の対象外である。その構成は毎年変化する ものであるが,本論の目的は,会員の構成変化を分析 するものではないし,学会誌に見られる近年の研究動 向の背後にある要因(会員の構成変化や執筆者の属性 もその 1 つ)を探るものでもないからである。した がって,執筆者の所属先と論稿の種類・テーマという 変数間でクロスセクション分析やパネルデータ分析を 行なったり,所属先以外に執筆者の特徴や属性を精査 したうえで,掲載された論稿をさらに細かく分類し, 分析したりすることは今後の課題としたい。 表 12 掲載論稿の執筆者別分類 執筆者 論稿数 大学・大学院教員 156 短期大学教員 17 高等専門学校教員 14 高等学校・中等教育学校教員 32 中学校教員 4 海外研究者* 18 その他 51   元教員 11 大学教員と大学院生・ゼミ生・学部生・ 卒業生の共同執筆 ** 10   大学・短大・高校教員らの共同執筆 9   大学院生 7 企業・地方公共団体・NPO法人・研究所 の勤務者 7   教員と企業員・研究員の共同執筆 4   大学の非常勤講師 2   高校生(共同執筆) 1 合 計 292 *海外研究者の国別内訳は,韓国 8 名 10 篇,中国 3 名 4 篇,フ ィリピン 2 名 2 篇,ミャンマーと米国各 1 名 1 篇。なお,日 本人と海外研究者(ニュージーランド)の共同論文は,日本 人(大学・大学院教員)の執筆によるものに加えた。 **大学教員と学生らのほかに研究員を含む場合がある。なお共 同執筆以外は単独執筆。

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Ⅴ.おわりに─最近の 3 つのトピック─

 ここまで,学会誌『経済教育』(旧『経済学教育』) の第 19 号(2000 年)から第 31 号(2012 年)までに掲 載された論稿を,そのテーマ領域あるいは執筆者の所 属にしたがって分類し,さらにテーマ領域ごとの論稿 は学校段階別に小分類したり,個々の論稿の内容を精 査することで,近年の経済教育研究に見られる特徴や 推移を考察してきた。そこから明らかになったことは, (1)掲載された論稿をテーマ領域別に見ると,純粋に 経済教育にかかわるテーマを扱った論稿は全体の 52.2%である,(2)純粋な経済教育の範疇ではないが, 経済教育の周辺ないし関連領域のテーマを扱った論稿 は,全体の 37.8%である,(3)純粋に経済教育にかか わるテーマ領域では,大学・大学院レベルの論稿が他 の学校段階の論稿に比べて多い,5)(4)執筆者を見て も,大学・大学院教員による論稿が全体の半数以上を 占めている,(5)経済教育の周辺ないし関連領域のう ち,「キャリア教育」と「経営学・商学・起業家教育, 産学連携推進」(特にその中の「実践」)という 2 つの テーマ領域の論稿が,2005 年の第 24 号以降,顕著に 増えてきた。  本学会誌の第 19 号(2000 年)以降に掲載された論 稿が扱っているテーマは,経済教育の周辺ないし関連 領域を含みつつ,その外延を拡大してきているが,そ れは執筆者である学会員の関心や研究対象の広がりだ けでなく,キャリア教育に見られるように教育行政の 変化や学校教育を取り巻く時代背景も反映してい る。6)今後は,経済教育の研究領域・対象に関して, その範囲の拡大とともに分析と実践の蓄積をさらに増 やし,集積した個々の研究成果を体系化する努力が期 待される。  最後に,わが国の経済教育研究における最近のト ピックから 3 つを取り上げて,簡単にふれておきたい。 これら 3 つのトピックは,今後わが国の経済教育の研 究を深化させるうえでも,また学校(一般的な中等・ 高等教育機関だけでなく教員養成校も含めて)におけ る経済教育の内容・方法と実践を改善するうえでも, とりわけ重要だと考えられるものである。  まず第 1 に,教員教育の問題である。筆者らが高等 学校で経済を教える全国の公民科教員を対象に実施し た ア ン ケ ー ト 調 査(2009 年 ) で は, 回 答 者(n= 1,574)のうち大学(大学院を含む)時代に経済学を 専攻した者は 4 分の 1 弱しかいなかった(淺野・山 岡・阿部 2012)。残りの 4 分の 3 強は,大学時代に教 育学,法律,歴史,哲学,地理などを専攻した者であ り,そうした者の中には,高校で教える経済の内容に ついて正確な知識や理解を持たないために,生徒に教 えることに自信が持てないと回答した者がいる。7) た,教員養成大学では将来の初等・中等教育を担う教 員を教育・養成しているが,そこで学ぶ学生にとって 経済学を学習する時間がカリキュラムの上で十分に確 保されているとは言いがたい。そのために経済学に関 する彼ら・彼女らの知識と理解は限られており,将来 に社会科・公民科の教員として経済を教えることに自 信を持てない者も出てくる。このように公民科教員と して経済学の知識と理解が不足している者に対しては, 経済学の再教育を強化することが求められる。  第 2 に,経済だけでなく,広く社会問題に関する意 思決定と評価基準に関するトピックである。8)その例 として,効率と公正という概念の問題を取り上げてみ たい。『中学校学習指導要領解説 社会編』(文部科学 省 2008)の公民的分野の中に,効率と公正について 次のような記述がある。 …現代社会をとらえる見方や考え方の基礎として, 対立と合意,効率と公正などについて理解させる。 …(120 頁)  まず「効率」については,社会全体で「無駄を 省く」という考え方である。すなわち,「合意」 された内容は無駄を省く最善のものになっている かを検討することを意味しているのである。一方, 「公正」については「みんなが参加して決めてい るか,だれか参加できていない人はいないか」と いうような手続きの公正さや「不当に不利益を 被っている人をなくす」「みんなが同じになるよ うにする」といった機会の公正さや結果の公正さ など,「公正」には様々な意味合いがあることを 理解させた上で,「合意」の手続きについての公 正さや「合意」の内容の公正さについて検討する ことを意味している。(123 頁)  効率とは,上述のように「無駄を省く」という意味 で,まさに経済学的な概念である。それに対して公正 とは,平等,公平,正義という概念と同様に価値判断 をともなう社会的規準の 1 つである。さらに,『高等 学校学習指導要領解説 公民編』(文部科学省 2009) では,次のような記述がある。 …中学校社会科公民的分野における経済的内容の 学習を踏まえ,経済的な選択や意思決定において は,効率を追求することが目指されるが,それは

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公正な所得の分配を必ずしももたらすものとはな らないこと,逆に公正の観点だけでは資源の配分 が非効率になり,経済発展を阻害することにもな ることがあり,現実の経済においてはこのような 効率と公正を調整し,両者がともに成り立つこと が要請されていることに気付かせる必要がある。 (48 頁)  高等学校で経済を教えている公民科教員に対する筆 者らのアンケート調査の結果によれば,一般的に公民 科教員は平等主義的な考え方を有しており,自由な経 済活動を保障する市場経済システムには同意するもの の,それがもたらす人々の間の所得格差には同意しな い者が非常に多い。9)つまり市場経済システムの持つ 資源配分上の効率性には同意するが,そこで発生する 所得格差は(おそらく公正でないという理由で)容認 できないという,アンビバレントな認識を保有する公 民科教員が多数を占めている。市場が持つ資源配分機 能とそれが所得分配にもたらす結果の間で,効率と公 正の視点から公民科教員が有するそうした二律背反的 な認識を調整のうえ両立させ,現在の主流派経済学の 理論的基礎に置かれた市場経済システムの優位性への 信頼を保つ方法の 1 つは,不公正な所得格差,不平等 な所得分配を是正するために,政府が介入して所得再 分配政策を採ることである。10)  自由競争を前提とした市場経済システムで,政府の 積極的な役割を重視する「大きな政府」を是認する立 場は,経済学的にはケインズ主義と見なせる。高等学 校公民科教員の多数がケインズ主義者と同じ立場であ るというのは,筆者らのアンケート調査結果からの推 論の帰結であるが,効率と公正という概念を経済教育 の中で取り上げ生徒に教える上で,公民科教員の考え 方や価値観がそこに反映されることは当然考えられる。 その際,個人として平等主義者という特徴を持つ多く の公民科教員の間では,市場経済システムについて上 述したような認識と立場が,自覚しているにせよ潜在 意識にせよすでに共通に保有されているとすれば,効 率と公正という概念(それは実現目標でもあり判断基 準でもある)を教える上で,そのような認識と立場が 1 つの方向性を示していると言うことができる。  第 3 に取り上げるのは,学修成果11)のアセスメン トという視点から見た経済教育に関する最近のトピッ クである。こんにち,どの高等教育機関も教育の質保 証という観点から,学修の到達目標を設定し,学生が 修得すべき学修成果を明らかにすることが求められて いる。わが国では初等・中等教育と異なり,高等教育 段階における学修内容は国家によって規定されていな いが,経済学に関しては,主流派経済学の内容が世界 の多くの国々の大学で学修されるべきものとされ,そ のため経済学の学修内容は国際的にもある程度標準化 されていると言える。しかし,経済学に限らずどの学 問分野においても,また国内的にも国際的にも,大学 生の学修成果は一様ではない。そこで高等教育におけ る学修成果の水準を,国際的な共通尺度で測定し評価 しようというプロジェクトが実施された。それが経済 協力開発機構(OECD)の Assessment of Higher Ed-ucation Learning Outcomes(AHELO)Feasibility Study である。12)日本においても,大学教育の分野別 質保証の在り方に関して,文部科学省から審議依頼を 受けた日本学術会議が中心となって 2008 年以来,検 討が行われてきている。具体的な検討事項は,当該分 野における教育課程編成上の参照基準の作成について であり,経済学分野においても2013年1月から検討が 始まった。  教育課程編成上の参照基準とは,「各大学が,各分 野の教育課程(学部・学科等)の具体的な学習目標を 同定する際に,参考として供するものである。その意 味では分野別の学習目標の一種の雛形とも言うべきも のであるが,参照基準では,あくまで一定の抽象性と 包括性を備えた考え方を提示するに留め,それを参照 した各大学が,それぞれの理念と現実に即して自主 的・自律的に具体化する」(日本学術会議(2010)『回 答 大学教育の分野別質保証の在り方について』16 頁)と定義されているが,参照基準の基本的な構成項 目としては,以下のように述べられている(上掲書, 17 頁)。 1.当該学問分野の定義 2.当該学問分野に固有の特性 3. 当該学問分野を学ぶすべての学生が身に付け ることを目指すべき基本的な素養 4. 学習方法及び学習成果の評価方法に関する基 本的な考え方 5. 市民性の涵養をめぐる専門教育と教養教育と の関わり  このうち 3 については,さらに次のような項目から 構成されている。 (1)当該分野の学びを通じて獲得すべき基本的な 知識と理解 (2)当該分野の学びを通じて獲得すべき基本的な 能力 a 分野に固有の能力:専門的な知識や理解

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を活用して,何かを行うことができる能 力 b 分野に固有の知的訓練を通じて獲得する ことが可能であるが,分野に固有の知識 や理解に依存せず,一般的・汎用的な有 用性を持つ何かを行うことができる能力  この参照基準の基本的な構成項目の 3(1)に関して 言えば,経済学を専門的に学ぶ大学生が,学修成果と して獲得することが望まれる基本的な知識と理解,た とえば経済学における基本的概念・原理や経済学的な 考え方の基礎,換言すれば経済学の学修における minimum essence が設定されることになろう。ただ し,注意しなければならないことは,「参照基準は 『基準』という言葉を用いているが,(中略)学力に関 する最低水準や平均水準を設定するものでもなく,ま た,カリキュラムの外形的な標準化を求めるコアカリ キュラムでもない」(上掲書,16 頁)とされているこ とである。  しかし,今,国内的に経済学分野における大学教育 の質保証をはかるだけでなく,将来,国際的に学位授 与条件の標準化を実現するためには,大学生が獲得す べき学修成果としての経済リテラシー,すなわち経済 学の知識・理解力・応用力と経済学的思考法に,到達 すべき一定の基準(ベンチマーク)を設定することが いずれ必要とされるようになるだろう。経済学の学修 内容が標準化しているならば,学生が獲得する経済リ テラシーも一定の水準にあることが期待されるのは, 国内的にも国際的にも当然のことである。  本論は,2013 年 1 月 24 日に国立ソウル大学で開催された韓 国経済教育学会主催の東アジア経済教育会議における筆者の口 頭発表 “Recent Trends of Research on Economic Education in Japan: Basing on the Analysis of the Japanese Journal of Eco︲ nomic Education” に,一部加筆修正を行ったものである。 註 1) 各年の大会テーマについては,経済教育学会『ニューズ レター』No.17(2012 年 5 月)の 2 頁を参照せよ。 2) 主に大学レベルであり,大学院における経済教育等に関 する論稿は,対象とする 13 年間の全篇を通じてきわめて 少ない。 3) わが国の各学校段階におけるキャリア教育の内容につい ては,次を参照のこと。中央教育審議会(2011)『今後の 学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について (答申)平成 23 年 1 月 31 日』,文部科学省(2011)『小学 校キャリア教育の手引き〈改訂版〉』,同(2011)『中学校 キャリア教育の手引き』,同(2011)『高等学校キャリア 教育の手引き』

4) 米国の The Journal of Economic Education(Philadelphia:

Taylor & Francis Group, LLC.)に掲載される論稿は,次 の 5 つのジャンル(テーマ)に分類されている(同誌の Instructions to Authors, General Guidelines から)。 ・Research in Economic Education 経済教育の研究

教育方法,学習態度と関心,学習教材,あるいは学習プ ロセスなどの分析と評価を扱った独創的な理論的,経験 的研究。

・ Content Articles in Economics 経済学の内容に関する論 稿 経済学教育に影響を及ぼしたり経済学教育に役立つと思 われる,経済学に本質的な問題,経済学上の新しいアイ ディア,経済学における研究上の発見を扱った論稿。 ・Economic Instruction 経済教育の実践 伝統的もしくは新規のテーマを扱うために,教育学・ ハードウェア・教材・方法においてなされたイノベー ションを扱った論稿。そこでは,経済学を教える方法に 関する問題が強調される。

・Features and Information 特集と情報

調査,国際比較や制度の比較,経済学のカリキュラム・ 教材・教育実践・アカデミックな議論に関する分析的な 研究を扱った論稿。 ・Online オンライン 経済学の教育と学習に役立つ適切な資料(ウェブサイ ト)のうち,インタラクティブな利用が可能か,さもな ければ印刷物では手に入らない資料の紹介。そこでは, 革新的な電子技術を用いて教材を制作している経済学者 や教育者による非商業的な成果物を特に取り上げている。 5) ちなみに韓国経済教育学会の学会誌では,高等学校を主 体とした中等教育レベルの論稿が多いことが特徴である (2013 年 1 月 24 日に開催された東アジア経済教育会議に おける筆者の発表に対する金振榮氏(韓国開発研究院経 済情報・教育センター経済教育部門専門家)のコメント から)。 6) 文部科学省が推進するキャリア教育については,上記の 注 3 以外にも,次を参照せよ。中央教育審議会(1999) 『初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答 申)』,キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力 者会議(2004)『キャリア教育の推進に関する総合的調査 研究協力者会議報告書〜児童一人一人の勤労観,職業観 を育てるために〜平成 16 年 1 月 28 日』 7) 筆者らが 2009 年に実施した全国の高等学校公民科教員へ のアンケート調査では,質問項目の 1 つとして「あなた 自身が経済の授業で困ったり,不満に思うことは何です か」と尋ねた。それに対して設けた回答のうち,「経済の 教科書で教える内容の中に,先生ご自身が理解できない ものがある」に同意する者が 45.5%あった(n = 1,533)。 また,「経済を生徒にわかりやすく教える適切な方法がわ からない」に同意する者は 47.5%あった(n = 1,532)。こ のように,教員自身が経済に関して教える内容を理解で きなかったり,わかりやすく教える方法を知らないとい う割合が 50%近くあることは,深刻に受け止めなければ ならない事実であろう。 8) この問題についてふれたものとして,次の文献をあげら れる。Wight, Jonathan B. and John S. Morton (2007), Teaching the Ethical Foundations of Economics, National Council on Economic Education. 特にその中の Lesson 8 - Is Efficiency an Ethical Concept? を参照せよ。猪瀬武則 (2008)「経済教育批判にどう答えるか?─NCEE 教材

『経済学の倫理的基礎付けの教授』からの示唆─」経済教

育学会『経済教育』第 27 号,104-112 頁。猪瀬武則・高 橋桂子・山根栄次・栗原久(2012)「経済学を学べば金融

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経済倫理は低下するか?」経済教育学会『経済教育』第 31 号,111-117 頁。加納正雄(2011)「効率と公正を学ぶ ための経済教育」経済教育学会『経済教育』第 30 号, 109-114 頁。 9) 公民科教員の経済に関する考え方について尋ねたアン ケート調査項目のうち,「人も企業も,自由な経済活動が 保障されるべきだ」という質問に対して同意する者は 75.4%あった(n=1,534)。他方で,「市場メカニズムに任 せると,経済格差が生じてよくない」という質問に同意 する者も 67.4%いた(n=1,527)。 10) 市場メカニズムの持つ効率性とそれがもたらす結果の不 平等,そしてそれを補正するための「分配の正義」につ いては,猪木武徳も論じている(猪木 2012)。特に,その 第 10 章「分配の正義と交換の正義─体制をいかにデザ インするか」を参照せよ。 11) 学校の教育課程を通じて学生が修得する成果という意味 で,学習成果ではなく学修成果と表記している。 12) AHELO については次を参照のこと。OECD (2012),As︲

sessment of Higher Education Learning Outcomes, OECD. OECD (2012),Economics Assessment Frame︲ work, OECD. OECD (2011),“Tuning-AHELO Concep-tual Framework of Expected and Desired Learning Out-comes in Economics,” OECD Education Working Papers, No.59, OECD Publishing.

参考文献 [1] 淺野忠克・山岡道男・阿部信太郎(2012)「高等学校公民 科教員の研究:経済教育の視点から〔1〕」『山村学園短期 大学紀要』第 23 号,1-49 頁 [2] 猪木武徳(2012)『経済学に何ができるか』中央公論新社 [3] 岩田年浩・水野英雄(編)(2012)『教員養成における経 済教育の課題と展望』三恵社 [4] 経 済 教 育 学 会『 経 済 教 育 』 第 19 号(2000) 〜 第 31 号 (2012)の各号 [5] 中央教育審議会(2008)『学士課程教育の構築に向けて』 (答申)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/ chukyo0/toushin/1217067.htm(2013 年 4 月 5 日 確認) [6] 日本学術会議(2010)『回答 大学教育の分野別質保証の 在り方について』 [7] 文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説 社会編』 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/ micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/01/05/1234912_ 003.pdf(2013 年 4 月 5 日 確認) [8] 文部科学省(2009)『高等学校学習指導要領解説 公民編』 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/ micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/07/22/1282000_4. pdf(2013 年 4 月 5 日 確認)

参照

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