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多元主義経済教育論

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Academic year: 2021

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要旨  英米における経済学教育内容のスタンダード化論争と日本の需給図教授批判論を検討することにより,多 元主義経済カリキュラムの必要性を論じた。英国では 1970 年代に大学受験資格試験(GCE)の新古典派経 済学による一元化,米国では 1980 年代に学校経済教育フレームワークの新古典派総合による一元化に対し て,それぞれ批判がなされた。近年,英国ではブラントらによる,批判的実在論に依拠した GCE 批判がな されている。日本でも 1990 年代に塩沢由典に依拠した需給均衡図の学校教育排除論が展開された。これら をふまえて,経済学教育の目標・内容・方法は,多様な経済学派を反映させた多元主義経済教育論に基づく カリキュラム開発が必要である。 キーワード:多元主義,需給図,意義ある学習,サービスラーニング

Ⅰ.はじめに

 本稿は,英国と米国における中等経済教育内容のス タンダード化を巡る論争および,日本での需給図教授 批判論を検討することにより,カリキュラムの多元性 の必要性を論じる多元主義経済教育論を提示する。  2016 年の経済教育学会研究大会でのシンポジウム のテーマには,経済学内容の「参照基準」問題が内包 されているが,もとより教育学を専攻する筆者にその 資格は無い。しかしながら,幾ばくかの役割を果たせ るとすれば,学校教育での経済教育カリキュラムの位 置づけや内容の検討をすることであろう。  これについては,既に中等教育でのスタンダード化 を巡る論争や批判がなされている。それは,新古典派 経済学に単一化される学校カリキュラムへの危惧,批 判であり,日本国内では,塩沢由典の議論が論拠とさ れた。米国や日本では,再論されることはなかったが, 英国では現在再び,批判が巻き起こっている。  そこで,米国と英国の論争および日本の需給図の教 材性批判をふり返り,代替的なカリキュラムとしての 多元主義カリキュラムの必要性を論じる。

Ⅱ.英米の経済教育スタンダード化に対す

る論争

1.米国経済教育のカリキュラム論争─1984年 版フレームワークを巡って  この論争を巡って,筆者は過去に論じている(猪瀬, 1998)。すなわち,米国の民間教育団体・経済教育協 議会(Joint Council on Economic Education, 現在の CEE) が満を持して改訂した 1984 年版学校経済教育 内容(Sanders et al.1984)に関して,批判派も含め て検討するためにマサチューセッツ工科大学で開催さ れた招待会議での論争を整理したものであった。  そもそも,JCEE とは冷戦を受けて 1949 年に各州協 議会を連合させたものとして設立され,経済教育を全 米に展開させる政府主導の民間団体だった。その目的 は,幼稚園から高等学校までの経済教育の目標・内 容・方法を研究・開発・普及させるための,多様な活 動であった。  対象となったのは,1984 年に改訂された「フレー ムワーク」であり,批判派として,ガルブレイス,ハ イルブローナー,サロー,擁護派として,サミュエル

多元主義経済教育論

-中等経済教育のスタンダード化を巡る論

争をふまえて-

The Journal of Economic Education No.36, September, 2017

A Theory of Pluralism in Economics Education: From the Curriculum Confrontation of Secondary Economics Education Standardized

INOSE, Takenori 猪瀬 武則(日本体育大学)

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ソン,サンダース,ウォルスタッドらが並んだ。  詳細は,拙稿を参照いただきたいが,おおよそは, JCEE が提唱する希少性などの基本的経済概念批判, 社会厚生関数に依拠した意思決定モデルの批判,経済 理論教授より経済史・経済思想史教授の優先などが論 じられ,それに対して,サミュエルソンやウォルス タッドらが反論したのである(猪瀬,1998)。  ここでの論争は,直後に再論もされたが,現在に至 るも CEE(JCEE の現在の名称)のカリキュラム内容 への批判は確認されない。 2.英国中等経済学教育の転換─新古典派経済 学へのスタンダード化  本項の内容も,一昨年の研究大会で既に論じ,『経 済教育』誌 35 号に収録されている(猪瀬,2016)。  ここで論じたのは,英国での大学入試科目としての 中等後期の経済学内容の妥当性を巡っての,ライオネ ル・ロビンズ,そして英国ジャーナリズムをも巻き込 んでなされた論争である。そして,いま再び,ロンド ン大学のジャセク・ブラント(Jasec Brant)が批判 的実在論に依拠しつつ再批判を試みたのである(猪瀬, 2016)。  英国の「制度化された経済学教育」に対するオール タナティブとしての「批判的経済学教育」とは,筆者 が名付けたものであり,ブラントらが文字通りの提唱 をしているわけではない。ブラントの批判とは,まさ に,現在の英国経済学教育に対する全体的・全面的な 批判であった。ブラントは,英国経済教育の泰斗ピー ター・デイビス(Peter Davies)とともに,シティズ ンシップ教育としての経済教育にも深く関わる具体的 な教材開発,教員養成プログラム,カリキュラム開発 などのユニークな取り組みをしてきた教育学者である。  批判の趣旨は,英国の大学入試要件の経済学テスト 内容(GCE,General Certificate of Education,中等 教育修了一般試験の A-レベル試験)が,新古典派経 済学カリキュラムによって「制度化」「一元化」され, 多様性を失っているというものである。その理論的根 拠を,批判的実在論にもとめ,基準化,スタンダード 化への対抗経済教育論を提唱したのである。基準化し ようとする経済理論の根底を支える新古典派経済学へ の対抗,批判の基盤は,ローソンやバスカーの批判的 実在論にあり,それに基づいて,彼独自の経済学教育 論を展開したのである。

Ⅲ.1990 年代の日本の経済教育内容批判

1.元視学官・柿沼利昭の批判─塩沢由典に依 拠して  日本国内では,経済教育内容の一元化批判よりむし ろ,新古典派の価格理論教授を学校教育へ導入するこ とへの批判がなされた。  その嚆矢は,柿沼利昭による中学校社会科での需給 図による価格学習批判である。彼は,1980 年代に文 部省(現在,文部科学省)の教科調査官,視学官を歴 任する中で,学校教育での需給図活用についての批判 と再考を促した(柿沼,1998)。  柿沼の主張は,大きく二つある。第一が,新古典派 経済学批判である。柿沼自身は,この言葉を一切使用 していない。しかし,その展開は,塩沢由典に依拠し て均衡論を批判し,複雑系の経済学によって市場の恒 常性を相対化している。第二に,佐伯胖の認知科学の 成果に依拠して,生徒にとっての意味を追求する経済 教育を提唱したのである。  柿沼は,実際の授業での子どもの素朴な疑問から, マーシャリアン・クロスとしての需給図による授業の 限界と課題を指摘した。そして,「値段が上がれば買 い手は買い控え,逆に値段が下がれば買い手が増える だろう,といった程度の経済常識の学習を目指すなら, 需給均衡図は不要」だと喝破した。  柿沼の論述は,塩沢に依拠しつつ,ほぼ同様の議論 を新古典派経済学批判の文脈で展開した。もちろん, 彼はいずれの論考にも「新古典派経済学」との言及は していない。むしろ,経済学批判以上に,子どもの認 知に基づいた「意味の追求」の重視にあり,均衡論と 子どもの認識のギャップを埋める作業を行ったともい えるのである。  柿沼の批判の根幹には,塩沢の所論があり,論の中 心をなしている。彼の批判に対して留保する部分があ るとすれば,それは,オールタナティブを主張するこ とによるオールタナティブの絶対化であろう。  おそらく中学校社会科公民的分野教科書での扱いは, もともとはアダム・スミスの見えざる手のメタファー 程度の意味しか持たなかったろうから,限定的な活用 で十分であった。しかし,高等学校においては需給曲 線のシフトを扱うことにより,また,大学受験にも出 題されることから,「需要」を中心とした価格を考察 させるための「教材」としての妥当性に「なんともご 都合主義に揺れる教材であることか」(柿沼,1998: 3)と揶揄せざるをえなかったのだろう。

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 柿沼は,塩沢(1990,1997)の『市場の秩序学』と 『複雑系』に基づき,これら塩沢著書の博覧強記ぶり を随所に引用しつつ,概して,学習指導要領という枠 組みを保持した中で,一元的な「新古典派経済学」の みの導入を峻拒したのである。 2.越田年彦の批判  越田も柿沼と同様に,需給図批判を展開した(越田, 2000)。越田の批判に,新井明が翌年の経済教育誌で, 反論を試みている(新井,2000)。詳細は,同誌に展開 されているので参照されたい。  越田が塩沢に依拠しつつ,高等学校現場での価格学 習のオールタナティブを提唱した点で評価できること は,新井自身も認めている。しかしながら,越田の批 判の限界を論じようとする試みは,必ずしも成功して いるとはいえない。事ほどさように,塩沢を論拠とし た価格学習の相対化には説得力があった。  それにしても,柿沼・越田ともに,塩沢に依拠しつ つ議論を展開しており,当時,西山も含めた複雑性論 議をもとに,自明視されていた需給図による価格学習 を批判したことには意義があるといえよう。

Ⅳ.多元主義経済教育の示唆するもの

1.多元主義経済学教育の提唱  経済教育における新古典派経済学への一元化に対し て,英米でカリキュラム批判,日本の需給図による価 格学習批判を瞥見した。もし,これらに欠けているも のがあるとすれば,それは,批判から包括的なカリ キュラムや目標・内容・方法に亘る経済教育論が欠如 していることである。  このことについては,一元化に対抗する多元主義経 済学,多元主義カリキュラムとその必要性として,英 国・米国で既に論じられていた。すなわち,異端派経 済学(Heterodox Economics)が,いわば非主流派経 済学の集合であるとすれば,多元主義経済学教育 (Pluralism in Economics Education)が,非主流派の 経済学総体を内包した教育論として,提唱されている のである。1)

 たとえば,リーマンショック直後に刊行された In︲ ternational Review of Economics Education で,「 経 済学教育における多元主義(Pluralism in Economics Education)」の特集が組まれ,「多様な経済学派があ るのに制度化された経済学教育では,新古典派のみが 教授されている」現状を批判し,経済学教育が多元的 である必要を論じたのである(Denis, A. 2009)。  そもそも議論のはじまりは,英国高等教育質保証機 構(Quality Assurance Agency for Higher Educa-tion: QAA)が提唱する経済学のベンチマーク(Sub-ject Benchmark Statement for Economics (SBSE)) による一元化に対する批判である(Denis, A. 2009 : 6)。  そこでは,多元主義経済学のバウンダリーをあらわ にするため,新古典派とその親和性を持つ学派として, 新古典派ケインジアン,マネタリスト,ニューケイン ジアン,リアルビジネスサイクル理論派,新制度学派, 新経済地理学派をあげ,それらとは異なる多元主義経 済学として,ポストケインジアン,マルクス学派, オーストラリアン学派,制度学派,ジョージ学派, フェミニズム,批判的実在論学派があげられている (Denis, A. 2009 : 7)。そして,デニスは,後者の学問 的成果をベンチマークに導入することにより学部教育 が豊饒化することを主張したのである。 2.多元主義経済教育論の概要  それでは,多元主義経済教育論の目標・内容・方法 は,どのようなものになっているのだろうか。  ピーターソンとマクゴールドリク(Peterson J. and McGoldrick K.)は,多元主義経済教育論について, Aerni の論説(Aerni et al., 1999 : 29) から,次のよ うに位置づけている。

 すなわち,その目標は,「民主主義社会における市 民としての参加」と「世界の理解」であり,個別学習 から協同学習,さらなる学びの共同体への移行である (Peterson & McGoldrick 2009 : 74)。その根底には, ジョン・デューイやパウロ・フレイレの経験主義教育 があり,ベンジャミン・ブルームの評価論がある (Dorman 2002)。そこでは,教室内の皆で考え方を分 かち合い,自分のとらえ方を構成することによって理 解し,より効果的に協同で学び合い,どのような考え 方も他者との出会いによって構成され,経験から由来 し,批判的思考や問題解決技能が要求されるのである (Peterson & McGoldrick 2009 : 74)。

 内容に関しては,政策選択ができる技能を開発する ため,経済行動を基礎づける人間的価値と広範な経済 現象に触れることができるような内容の設定を提唱す る。その多元主義内容は,主流プラスアルファアプ ローチ,多元主義経済学からの教授アプローチ,並行 アプローチである(Mearman, 2007)。  これらを具体化する方法として,バンクスのサービ

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スラーニングが提唱されているとする。またこれとは 別に,経済問題学習も提起されている。それらを実現 する上では,「学生の参加」,「意義ある学習」が重要 であり,次のように説明される。  まず,「学生の参加」である。これは,第一に,ア クティブ・ラーニングに依拠するものである。これに よって学生は,学習が深化拡大する際,いっそう反省 的になり,広い内容理解に飛躍できるという。第二に, 参加の意味は研究目標を持った学生参加であることだ。 それは学生が直接的経験を持って学ぶことである。そ れは,経験学習の伝統に基づき,現実世界と切り結ぶ ことに基づいている。第三に,研究主題の文脈を持っ た学生参加である。学際的学習であり,社会的市民的 文脈への配慮を含んでいる。第四に,社会的市民的文 化的な人間の条件を携えた参加である。これは学生が 自らと他者をより深く理解するために,他者とふれあ うサービスラーニングのような活動を通して求めるも のである(Peterson & McGoldrick 2009 : 76-77)。  次に「意義ある学習」とは,フィンク(Fink, 2003) によって提唱されており,次の 6 点からなる。すなわ ち, (1) 基礎的知識(ほかの学習をする上で必要と なるものであり,知識や考えを理解し,記憶す ることを含む) (2)学び方を学ぶ(授業が終わった後も,主題に ついて学び続ける方法を知る) (3) 活用(基礎的知識を活用し,複雑な研究課 題を処理することと同様の,多様な技能や思考 [批判的・創造的・実践的]の育成を含む) (4) 統合(考え,人々,人生の側面が互いに関 連していることを含む) (5) 人間的側面(学生が学習することの人間的 意義を伝えるために,自己と他者について学習 する過程にふれる) (6) 気遣い(新たな感情,関心,価値の育成を 含む)  以上のフィンクの教育論は,日本では既にアクティ ブ・ラーニングの説明として紹介されてきた。いわゆ る学習方法を説明する上で,主流派経済学と非主流派 あるいは多元主義と断ることもない,自明の教育方法 改革の一環ととらえた方が良いだろう。 3.サービスラーニングとしての経済学習  ピーターソンとマクゴールドリク(Peterson & McGoldrick 2009)は,この多元主義経済教育論を展 開する上での重要な学習方式として協同学習とサービ スラーニングを提唱している。前者は,特別の学習方 式とはいえないため,ここでは,サービスラーニング についてのみ敷衍することとしたい。また,彼女たち はこれらの具体的内容開発として,「サービスラーニ ングと生活賃金」,さらに「経済コースでのサービス ラーニングと女性」を提示しているが,これらについ ては稿を改めて考察したい。  さて,サービスラーニングは,社会科では唐木など によって詳細な紹介があり,その学習原理も解き明か されている。経済教育学会でもこれまで,実践と共に 経済学教育でのサービスラーニングの展開が提示され ている(山田,2009),(水野・井草,2013)。  山田は,経済教育誌 29 号でジャコビーの定義を訳 して「学生の学びや成長を増進するような意図を持っ て設計された構造的な機会に,学生が人々や地域社会 のニーズに対応する活動に従事するような経験教育の 一形式である」とする。文字通りの意味はかくの通り であるが,経済学教育としての定義は,相当に深い学 びを要請するものとなっている。  経済学教育では,むしろ「人格の陶冶,市民的活動 の喚起,内容を抽象理論にまで高める」(Peterson & McGoldrick 2009 : 81)ことがねらわれ,「世界を検証 するために批判的思考を活用」し,「問題解決のため の道徳的リーダーシップ」と「他者の要求に対する奉 仕」が求められ,情報収集から文献,論述の技能を含 めた学修技能が要求されるのである(82)。まさに, 経済学学修を統合する意味合いが込められているので ある。  表 1 は,ピーターソンとマクゴールドリクが,統合 的参加学習,有意義学習,明確な多元論の成果,サー ビスラーニングの成果として,その共通性と相違点を 6 つの観点から整理したものである。  有意義学習の「基礎的知識,学び方を学ぶ,活用, 統合,人間的側面,配慮」を,それぞれ参加学習では どのような要素として展開されるか,多元主義ではど のような成果がもたらされるか,サービスラーニング としてはどうか,それぞれ細目が示されている。その 段階は,知識・技能・思考・関心・態度に対応したも のといえよう。  全般的な教育理論・哲学には,構成主義・経験学 習・問題解決学習,協同学習があり,多元主義経済教

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表 1 統合的参加学習,有意義学習,明確な多元論の成果,サービスラーニングの成果 有意義学習 参加学習 多元主義の成果 サービスラーニングの成果 基礎的知識 学習の手段として,教師は参 加を促すことに努力する。 ・学生の世界理解・主要な認知技能 ・現前する経済社会を理解するための有 用な方法 ・正統性の理解 ・自分自身の知識と理解の確立 ・経済政策へのよりよい理解 基礎的知識 学び方を学ぶ 学習過程を伴う生徒の参加 (アクティブ・ラーニング) ・評価技能の育成・学習過程での参加者の積極的な参加 ・自己の理解を構成する ・より深い学習の創出 ・意図的学習過程 帰納的推理の学習 活用 研究課題への参加(体験的) ・民主主義社会の市民としての十分な参 加 ・未来の地域社会への参加を促すための きっかけ ・拡大する理解を構成する学生のための 学習の足場の提供 ・地域社会の問題に取り組み,社会と地 域の問題に関する従来の見方を乗り越 える。 知識の適用,批判的思考, 分析 統合 文脈を踏まえた参加(学際的 学習) ・経済学の領域の拡大・経済現象のさらなる多様性をあらわに する ・地域に対する学生の奉仕,コース内容 とクラスの討議,学生の研究論文を統 合する ・経済学を教授するための学際的アプロ ーチを議論する 総合的知識 人間的側面 人間的条件をもった参加 ・開かれた心と寛容 ・教室は社会的環境である ・より多様な学生集団 ・多様な人間が,基本的な人間の経済的 行動と選択を価値づける ・いかなる考え方も他者との出会いから 離れて理解されることはあり得ない。 文化的多様性についての学 習 配慮 参加に関する最も重要な貢献 は,学習に対して学習者の個 人的関係を切り結ぶことが焦 点化されることである。 ・個人的社会的変容に導く ・個人的変化を引き起こす ・自己と他者の価値観の探究 ・学生の学習に対する当事者意識 ・経済的選択は道徳的側面を持つ ・問題解決に関する心理的・感情的技能 価値観の涵養

(出典:Peterson J. & McGoldrick K.(2009) Pluralism and Economic Education: a Learning Theory Approach, International Review of Economics Education, 8(2), 83-84.)

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育論の基底をなすともいえるが,経済学教育のそれぞ れの場面での Relevance を腑分けすることによりその 実相が明らかになるだろう。

Ⅴ.おわりに─一元化と多元主義のはざまで

 英国と米国における中等経済教育内容のスタンダー ド化を巡る論争と,日本での需給図教授批判論を検討 し,英米の多元主義経済教育論を吟味した。  残された課題は,具体的内容開発を詳述することが できなかったことである。ピーターソンとマクゴール ドリクが開発した「サービスラーニングと生活賃金」, さらに「経済コースでのサービスラーニングと女性」 を明らかにすると共に,多元主義経済教育での具体的 な展開を今後示していくこととする。 註 1) 直訳の異端派経済学は,ゆがんで伝わる可能性があるた め多元経済学が妥当だ。それは,正統な経済学に対して, 異端であることを認めないというのではなく,「異端」と いう用語自体が,外部に誤ったメッセージを与えるから だ。吉原(2011)の指摘の通り,「日本語では『異端派』 としばしば訳されるが,本来の意味は『相互異質的・多 様的・多元的』という意味であ」り,経済問題に関する, 「マルクス,ネオ・リカード,ケインズ,シュンペーター 等の学説の流れをも汲むような多様なアプローチを唱道」 する経済学という意味で,「多元経済学」をあてたい。な お,2009 年より International Journal of Pluralism and Economics Education 誌が刊行され,経済教育における多 元主義は,継続的に研究されている。

参考文献

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表 1 統合的参加学習,有意義学習,明確な多元論の成果,サービスラーニングの成果 有意義学習 参加学習 多元主義の成果 サービスラーニングの成果 基礎的知識 学習の手段として,教師は参 加を促すことに努力する。 ・学生の世界理解・主要な認知技能 ・現前する経済社会を理解するための有 ・正統性の理解用な方法 ・自分自身の知識と理解の確立 ・経済政策へのよりよい理解 基礎的知識 学び方を学ぶ 学習過程を伴う生徒の参加 (アクティブ・ラーニング) ・評価技能の育成 ・学習過程での参加者の積極的な参加 ・自己の理解

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