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いま,何を成すべきか

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Academic year: 2021

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い ま 、 何 を 成 す べ き か

―産 婦 ケ ア の 原 点 に 立 っ て ―

第8回 日本助産学会学術集会

会長

田 八千代

は じめ に 現 代 社 会 は全 く変 化が 激 し く、 しか も急 速 で あ る こ とに 目を 見張 らず を得 ない。 産 婦 を取 り巻 く環 境 か ら、 そ の ケ アに 至 るまで に この約50年 間 に、 何 と多 くの変 化 を遂 げて きた こ とか 。 分 娩 の場 の大 移 動 が あ り、 自宅 分 娩 か ら病 産 院施 設 内分 娩 へ と変 わ り、 法 の改 正 に よ り人 口妊 娠 中絶 が 、急 激 に増 加 し、次 第 に減少 の 傾 向 を辿 って きて はい るが 、 しか し厳 然 と して未 だ 後 を絶 た な い。 出生率 が 低 下 し家 族 は核 化 が 急速 に進 行 した。 外来 の風 潮 の影 響 を受 け母乳 育 児 が減 少 した が、 再 び 見直 されて また そ の ニ ーズ が高 ま り つ つ あ る。 また病 産 院で は、 母 児 異 室制 をGHQの 指導 下 で 、 余儀 無 くされ たが 近年 再 び同室 制 が評 価 され るな ど挙 げつ らえ ば枚 挙 に 暇が な い。 我 が 国で 最 も特 徴 的 で あ った、 正 常 な妊 産 褥 婦 の管 理 が助 産 婦 の 責任 にお い て成 さ れ、 自然 分 娩 が圧 倒 的 であ った事 実 も、 その 名分 にお い て は変 わ って いな い が、 現 実 は変 わ りつ つ あ る。 否、 変 わ った と言 って も差 し支 え 無 さ そ うで あ る。 分 娩 監視 装 置 (ME)の 導 入 に して然 り、 会 陰切 開 に して また然 り。 ニ ー ズが あ るか ら と言 い なが ら麻 酔 下で の 分娩 、 そ して 計画 分 娩 とい わ れ る形 の人 工分 娩 が 行 わ れ て もい る。 ひ とた び病 産 院施 設 内分 娩 に 目を向 け る とこれ また、 ル チ ー ン化 され た処 置 、 ケ ア の 多 さに驚 か され る。助 産 婦 は そ の 中で何 を判 断 し、 どこに個 別 性 を 見 い だ しどん な 独 自性 、専 門性 が発 揮 されて い るので あ ろ う。 こ こ まで くる と1972年 、第16回ICM (国際 助産 婦 連盟)大 会 で、 採 択 された 助 産婦 業 務 の一 つ に 「あ らゆ る人工 介 入 か ら 産婦 を守 る」 こ との一項 が あ った こ とを改 め て思 い 出す の で あ る。 1.産 婦 の 変 化 (1)産 婦 自身 の変 化 妊娠 ・出産 ・育 児 をめ ぐる知識 は豊 か に な り、 か って の そ れ とは比 較 に な らな い 程 の水 準 を得 て い る。 結 果 と して保 健 生活 水 準 も高 め られ た。 健 康 診 査受 診 率 も高率 を示 し、 産 後検 診 も徹 底 した。 しか し、 依然 と して 産婦 の不 安 は高 い。

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(2)不 安 の 質 の変 化 妊産 婦 死亡 率 の 高 か った 、 また妊 産 婦 異 常 の 多 か った1960年 以前 に は、 難 産 や 児 の異 常 、 分娩 時 の 苦痛 に対 して高 い不 安 、 恐 怖を抱 く もの が顕 著 だ った。 しか し、精 神 予 防 性無 痛 分娩 に始 まる ラ マ ー ズ法 等 の実 施 に伴 い 、 同 時 に また異 常 分 娩 、 妊 産婦 死 亡 の 減少 と共 に、 異常 や苦 痛 へ の 極度 な不 安 は軽 減 され た。 とは い え表 に示 す よ うな産 婦 の 不安 が み られて い る。 こ こで示 した の は10例 の 産 婦 の不 安 で はあ るが 、 全 体 を指 し示 して い る傾 向 と見 る こ とが で き よ う。 極 度 な不 安 は な い に して も依 然 と して 、 産痛 と児 の生 命 に対 す る不 安 は認 め られ 、10名 中8名 までが 、 従前 と同様 に持 ち続 けて い る不 安 で あ る こ とが わ か る。 また 不安 は い く つ かの 因 子 を併 せ持 って い る こと も確 か で あ る。 産 婦 の 不 安 91'第22回母性看護学会 雨宮博美他、山梨医科大学付属病院 「分娩I期・II期における産婦の不安への援助」よ り事例抜粋 筆者一部改変

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この よ うに 程度 の 差 こそ あれ、 児 の生 命 や産 痛 に対 す る不 安 は依 然 と して 消 え 去 らな い不 安 と して 産婦 の心情 を左 右 して い る。 しか し、知 識 を得 た こ とや多 様 な情報 量 の故 に もつ 分娩 の経 過 や児 へ の対 応 に 自信 が な い た め に起 こる不 安が あ る。 従 って、助 産 婦 は援 助 にあ た り、 今 この状 態 を産 婦 が どの よ うに受 け とめて い るの か 的確 に把 握 す る こ とが 、援 助 の適 否 を 決定 す る と言 って 差 し支 え な い。 (3)新 しい ニ ー ズ 自主 的 な産 婦 が 出現 し自 ら自分 の手 で 出産 体 験 を、 満 足 の ゆ く もの に しよ う と い うニ ー ズが 現 れ、 次第 にそ の 輪が 広 げ られ よ う と して い る。 その 人達 は夫 立会 い分 娩 を望 み 、夫 婦 で新 しい生 命 の誕 生 を迎 え よ う、 分 娩 の苦 しみ も、 喜 び も夫 婦 で共 有 したい とい うニ ー ズを 持 って い る。 既 に こ う した 希 求 は あ って、 そ れ を 実現 して い る助 産施 設 もあ る。 特 に助 産婦 と産 婦 の よ り緊 密 な 充足 度 の高 い 相互 関 係 の 中で 出産 した い と してお り、 この グル ー プは、 助 産 所 分 娩 を求 め る傾 向 に あ る。 2.産 婦 ケ アの基 本 生 理 的 に進 行 し変 化 す る妊 娠 ・分 娩 が正 常 で あ る わ けで あ る こ とか ら、 母 児の 安 全 確 保 とい う大 前 提 か らみ れ ば、 その 確 認 が最 優 先 され るの は 当然 で あ る。 助 産婦 はそ の 専門 的 知 ・技 に 基づ き細 心 の 注意 を以 て観 察 し、微 細 な 所 見 も見逃 さな い。 もち ろ ん 心 ・身 の それ で あ る。 ため に産婦 との 密接 な 接触 を通 して知 識 を駆 使 し、 五 感 を用 い手 と眼 ・言 葉 か ら投 げか けた羅 針 に対 す る相 手 の身 体 的 サ イ ン ・心 の 投影 を厳 格 に 受 け取 り正確 に返 す。 そ の頻 度 の密 な る こ とが 重 要 で あ る。 分娩 が 開 始 して 入 院す るわ けで あ るか ら、一 対 一 の 関係 を 保持 しなが ら過 緊張 に 陥 らな い よ う支援 して ゆ く。 キ ャ ッチ した情 報 は必 ず チ ー ムで 共 有 す る システ ム を確立 して お く必 要 が あ る。 観 察 は(接 触)そ れ 自体 ケ アで あ り産 婦 へ の安 息 と して作 用 し て い る筈 で あ る。 で な けれ ば プ ロ フ ェ ッシ ョナ ル と して の価 値 が 疑 わ れ る。 助産 婦 は、 もち ろん 全 人格 を 通 しそ こに存 在 す る職 業 人 で あ るか ら、 無 意 味 な言 動 は許 されな い。 言 葉 も動 作 も全 て 意 味 を な し、 しか も産 婦 へ の 安 らぎの ひ と駒 ひ と駒 とな る よ う、 自 己を鍛 練 して おか な けれ ばな らな い。一 人 一 人 に 注 ぐ観 点 は、 異 な って も傾 注 す る神 経 は 同質 の もの で あ る こ とが 望 まれ る。 そ して 、 既述 の 不安 を軽 減 す る方 向 に存 在 ・機 能 し、 産婦 を人 工 介 入 か ら守 り、 ル

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チ ー ンワー クを極 力 解 消 し、 個 別 の 判 断 で対 応 を成 す べ きで あ る。 助 産 婦 自身 が、 自 立 してい な けれ ば、 産 婦 の主 体 性 を 守 る こ とな ど到 底 で きな いで あ ろ う。 そ れ に は た ゆ まざ る研鑽 を積 む こ とで は な いか 。 た ゆ ま ざ る研 鑽 は相 容 れ ざ る内 容 を も許 容 し、 自己変 革 を も惜 し まぬ ゆ と りを もつ こ とか と私 は思 う。 3.価 値 あ る変 化 を生 み出 す行 動 を 助 産婦 が 産 婦 を守 り産 婦 の ニ ー ズを 満 たす た め に は、 自分 の決 断 が 必 要 で あ ろ う。 つ ま り決 断 とは意 思決 定 で あ り、 あ る意 味 で は、 業務 の 日常 性 を破 る決 断 と も言 え よ う。 日常 の 業 務 が ル チ ー ン化 して いれ ば、 一 応 はそ の ル ー ル に従 って 行 動 す れ ば よ い の で あ るか ら、 こん な に楽 な こ とはな い。 そ うで はな くよ り専 門 性 の 高 い判 断 と実 践 が あ って こそ プ ロ フ ェ ッ シ ョナル の価 値 が あ る と思 うの で あ る。 例 え ば分娩 進行 を促 進 させ る一 助 をな す 洗腸 に して もその 時期 の判 断 を個 別 に行 うこ とに よ り、 目的達 成 度 の確率 も高 くな るで あ ろ う し、産 婦 に い たず らな苦 痛 を与 え な く と もよい 。分 娩 後 の子 宮 収縮 の 良否 を的 確 に と らえ れ ば、 子 宮底 へ の氷 嚢貼 用 を ル チ ー ン化 す る こ と も な い。 そ の こ とに よ り、 人手 不 足 の上 に更 に忙 し くし、与 え な くて よい 不快 や不 安 を 産婦 に敢 え て もた らす こ とにな る。 母 乳 育児 を勧 め るに して も誰 も彼 も乳 管 開通 ・開 通 と騒 ぐ必 要 もな くな ろ う。 何 よ り も戒 め た い の は、 不 必要 な処 置 や ケ アを 一 律 に誰 にで も行 い 、 ゆ っ く り と休 息 を した い産 婦 に迷 惑 をか けた り、 回復 上 の ロ ス をつ くら な い こ とで あ る。 入 院 中 に心 か ら安 定 して 休 め る環 境 や、 条件 を構 成 す る こ と も助 産 婦 の大 きな 役 割 の一 つ で あ ろ う。 4.母 にな る過 程 で の支 援 妊娠 中か ら既 に母 と して の意 識 が高 ま り、 母 と しての 自覚 が次 第 に 強化 され て 分 娩 に望 む産 婦 ばか りで はな い 。漠 然 と した 母 ら しさに近 寄 りつ つ 、離 れ なが ら母 な る もの を形 成 して い く母 性 もい る。 また逆 に全 く母 に な りた くな い っ まで も拒 否 的 な 者 もい る。 いず れ か を 見極 め な が ら、 分娩 時 の ケ ア にお い て、 助 産 婦 自身 の根 底 に存 在 す る母 性 性(こ の 時 は産 婦 へ の心 か らの支 援 の行 動)を 発揮 し、 今 、 産 婦 が 何 を考 え 何 に苦 しみ 困 って い るの か を探 り接 近す る こ とで あ る。相 手 の物 言 わ ぬ 心 の 動 きが と らえ られ た 時 程 、 両者 の 共感 の大 きい こ とは な い。 心 の疎 通 と言 お うか 。 満 た し満 た され る喜 び と充足 感 は何 に も増 して 産婦 を安 定 させ る。 目の前 の苦 痛 や 不 安 、 た とえ 些 細 な こ とを で も、 細 や か に対 応 し産 婦 を安 定 させ る こ とは 、次 な る課 題 へ の 挑戦 欲

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を 高 め る こ とに な る。分 娩 後 の 課題 は育 児 で あ る。 そ れで な くて も育児 に不 安 を持 つ 産 婦 が増 えて い る現 在 、 自己の 身 に 降 りか か る苦 痛 や疑 問 の一 つ 一 つ が速 や か に解 決 され 、説 明が 加 え られ て安 定 して い る こ とは、 産 婦 に 自信 を つ け させ 、 や る気 を起 こ させ る。 そ して 、 子 供 の 扱 い につ い て見 本 を示 しなが ら導 いて い く。 母 へ の 移 行 を ゆ った りと した 援助 関 係 の なか で 、 安心 して 子供 にか か われ るよ うに支援 す る こ とで あ る。 産婦 が 自信 を得 るた め の支 援 は、 日常 の小 さな ニ ー ズを速 やか に 適切 に解 決 す る こ とか ら始 ま る。 そ の 母 な る産 婦 が 行 お う と して い る子 供 へ の 対 し方 一 つ 一 つ に 「そ れで 良 い― そ の通 り」 とい う肯 定 と激 励 の サ イ ンを送 る こ とで あ る。 お わ りに 我 が国 の助 産 婦 活動 は、 国際 社 会 の 中 で も、異 色 を放 ち高 く評 価 され て きた。 それ は、地 域 社 会 に根 を 下 ろ し、 自己の 責任 に おい て周 産期 管 理 を遺 漏 な く遂 行 し得 て き た と ころ にあ る。 この活 動 もまた我 が 国 固有 の土 壌 ・文化 か ら発 して い るこ とは言 を 埃 た な い。 この伝 統 文化 の上 に築 か れ た妊 娠 ・出産 ・育 児 が 家族 と と もに、恙 な く遂 行 され 、 日本 の母 性 像形 成 へ の 支援 と して、 助 産婦 が機 能 す る こ との 意 味 を再確 認 し たい 。 病 産 院 とい う組 織 の 中 で、 ル チ ー ンの業 務 を た だ漫 然 と こな して い るだ けの 、気 楽 さ はそ う した 責任 を 自 ら果 た さず、 決 断 も必 要 と しな い。 この と こは助 産婦 の職 業 的 ア イデ ンテ ィテ ィの希薄 さを 物語 って い る と言 え よ う。 産 婦 が送 る様 々のサ イ ン、 眠 れ な い、 美 味 し くな い、疲 れ る、頭 が 痛 い、 どう した らよい か わか らな い、赤 ち ゃん が心 配 とい う、 これ らを救 い、 解 決 しどれ だ け満 足度 の高 い ケ アが もた らされ るか を 、 も う一 度助 産 婦 の原 点 に立 ち戻 って深 く内 に省 み る 時で はな いか 。 産婦 援 助 の基 本 に忠 実 で あ る ため に も、 高度 な母性 支 援 の達 成 の た め に も、 今、 助 産 婦 が歩 を進 め る道 は、 対 象 のニ ーズ に応 え るこ とで あ り、 助産 婦 の 勇 気 あ る決断 と実 践 の具現 で はな い か と思 う。

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