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絵本作りと環境教育 : ニホンザリガニの絵本作り(シンポジウム報告 絵本作りと環境教育)

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Academic year: 2021

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Carcinological Society of Japan

絵本作りと環境教育

ニホンザリガニの絵本作り

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picture book of Camharoides japonicus and environmental education

野中俊文

l Toshifumi Nonaka . は じ め に 日本国内で,Iザリガニ」といえば,大人も子供 もほとんどの人が知っている有名な生き物である. しかし,残念ながらそのザリガニは,ほとんどの場 合が「アメリカザリガニ (Procambarusc/arkii)

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の ことを指している.これは,インターネットを使っ た検索で,ザリカ"ニをキーワードにヒットするペー ジのほとんどがアメリカザリガニに関連しているこ とからもうかがうことができる.現在,日本国内に は,このアメリカザリガニを含め,

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ニホンザリガ ニ CCambaroidesjaponicus)

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ウ チ ダ ザ リ ガ ニ (Pacifastacus leniusculus)Jの3種のザリガニが分布・ 生息している.このうちアメリカザリガニ,ウチダ ザリガニは外来種で,在来種はニホンザリガニだけ である.

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再来ザリガー アメリカザリガニは,食用ガエル(ウシガエル (Rana catesbe叩1a)) の餌として輸入 (1927年)さ れたものが,飼育池から逸出し,またたく聞に全国 に拡がって,今では,全国各地の平野部から丘陵部 にかけて生息が確認されている.また,それらと同 時に水草の減少や水生昆虫類の減少など水辺の生態 系に与える影響が決して小さ くないことが判明する 1株式会社建設技術研究所北海道支社環境室 干060-0003 北海道札幌市中央区北 3条西3丁目1-6 CTI Engineering Co., Ltd. Hokl岨idoEnvironment Section 1-6, nishi3chome, kita3joh, chuo-ku, Sapporo-shi, Hok-kaido 060-0003, Japan E-mai1: [email protected] とともに危機的な状況が各地で報告され, 日本の在 来の水辺生態系を脅かす外来種として様々な場所で 駆除等が行われている(苅部・西原, 20日).本種 は,真っ赤な体色といかにも強そうな容姿が子供た ちに受け入れられたこと,生息環境が水辺で,そこ は子どもの良い遊び場であったこと,捕まえやす く,飼いやすいことなどで理科の教材に選ばれたこ となど,様々な要因から人々に注目され,身近な生 き物として受け入れられてきた.これらが比較的短 い期間に全国的に拡散した大きな要因のーっと考え られる. もう一種の外来種ウチダザリヵーニは,人の食用と して 1926~1930 年の聞に当時の農林省(現在の農 林水産省)が5回の輸入により,北海道から九州ま でのほとんどの都道府県の水産試験場に配布した. 各地で養殖には成功したものの実用化されることは なかった(川井, 2007). しかし,その後,摩周湖 をはじめとして北海道内に生き残った.現在では, 道内ばかりでなく,本州でも福島県や福井県などで 生息が確認されつつあり,

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特定外来生物による生 態系等に係る被害の防止に関する法律J(平成16年 6月交付)により特定外来生物(外来生物であって, 生態系,人の生命・身体,農林水産業へ被害を及ぼ すもの,又は及ぼすおそれがあるもの)に指定され ている. . ニ ホ ン ザ リ ガ ー 一方,在来種ニホンザリガ、ニについては,分布が 北海道及び東北地方の北部に偏っており,多くの人 が目にする機会が少ないこと,小さくて地味な存在 日 本 甲 般 類 学 会 物 ゆ 側 側 陶!

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図1. 書庖に並ぶサ‘リガニに関する児童書. であることなども手伝って,全国的には情報量が乏 しし本種を知っている人も大変少ない状況であ る.近年,ニホンザリガニにかかわる人々が生態写 真や,生息地の様子,保護・保全活動の状況など, 様々な情報について,インターネット等を通じて発 信することにより, 一般の人にもその存在は知られ るようになってきた.しかし,全国的な知名度はま だまだ低い.このことは,書屈で取り扱っているザ リガ、ニ関連の書籍にニホンザリガニを中心とした書 籍が少ないこと(ある大型書庖の検索により,確認 したザリガニ関連書籍のうち,ニホンザリガニを対 象とした書籍は 2/104であった)ましてや児童書に 至っては,ザリガニの本は,すべてアメリカザリカ ニを対象としていることからも容易にうかがうこと ができる(図1). 現在,ニホンザリガニは,北海道内には広く分布 しているものの,宅地造成や道路事業,ダム建設な どでその生息地が減少している.さらに一部では, ウチダザリガニの分布拡大によって生息地を追われ ている事例も見られるようになり(川井.2009). 今後,その生息に大きな影響を受けると予想されて いる.加えて近年,北海道内でのアメリカザリカ。ニ の定着,分布拡大により直接影響を受けることだけ でなく,同時にもたらされると考えられる寄生虫や 病気などからもさらなる脅威にさらされている. . ニ ホ河 川 ニ の { 語 の た め に 前述のようにニホンザリガニを取り巻く状況は危

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機的な状況であるといえる.このような中で, ニホ ンザリガニを保全し,将来にわたって生息を維持し ていくために我々にできることは何か,様々なアプ ローチがあると考えられるが,著者はこれまでの経 験から,環境教育が一つの主要な方法であると考え ていた. 著者は,これまでに環境教育に興味を持ち,見虫 等を題材に毎年自然教室を行っている.その中で, 様々な子供達と接し,自分の培ってきた自然観と現 在の子供たちの自然、観の「ずれ」を感じるととも に,子どもたちに自然、のことを 「伝える

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大切さを 実感してきた.環境教育の実践には,本物を見せて その場で感じてもらう方法が最も効果的だと思う が,すべての人に自ら実施することは不可能であ る.そのため,より多くの人に,知ってもらうこと を一つの目標とし,その方法として,絵本の作成が よいと考えた. . 絵 本 の 作 成 大切な自然を守るためには,守るべき自然、やその 対象の生物を知っていないと,人々は行動を起こす ことがで、きないことは, これまでの各種経験からわ かっている. したがってニホンザリガニを今後も保 全し,守っていくためには,より多くの人に知って もらう必要がある.その手段として「絵本

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は誰 にでも読むことができ,知ってもらうための入口と してふさわしいと考えた. しかし,絵本をはじめと する児童書は,アメリカザリガニに席巻されている のが現状である.そこで,在来種ニホンザリガニに ついてより多くの人に知ってもらい,外来種問題や 将来的な保全を目的とした環境教育の一環として, ニホンザリカびニの絵本作りを企画した. . 絵 本 の 内 容 絵本の作成にあたっては,編集者と伝えたい内容 について議論を重ね.1)日本には,はるか昔からニ ホンザリガニが生息していた.2)水のきれいな森林 に生息し,落葉を食べて暮らしている.3)成長には 時聞がかかる.4)豊かな白然、の中で生き続ける.こ れらのことを中心に文章を作成した.また,これら

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図2. 完成した絵本 「にほんざりがに」 の文章とともに,ニホンザリガニの“らしさ"を描 き上けてもらうため,画家と現地を何度も訪れ,生 息地でのニホンザリガニの様子を観察することによ り,著者が感じていることを現場で伝え,絵をかい てもらった(図2).

国語本の利用

絵本は2014年7月l日に発売になり,全国で販売 が開始された.著者の自然教室の中でも,読み聞か せを行い日本に普からニホンザリガニがいたという こと,これからも生き続けるには健全な森林環境が 必要なこと,アメリカザリガニとの違いなどを教え た(図3). また,出版社には,ニホンザリガニと その生態を知ったことなど読者の声も届き,多くの 人々に知ってもらっている実感を得ることもでき た.今後は,いろいろなところで,この絵本を使っ て子供たちにニホンザリヵーニを知ってもらい,将 シンポジウム報告 図3. 絵本を使った環境教育実施状況. 来,ニホンザリヵーニをはじめ日本の自然環境を守る ことができる人材を育てていきたいと考えている. ~わりに 最後に,絵本の共著者であるとともに,日頃から ニホンザリガニに関して,様々な助言,協力をいた だいている川井唯史博士(稚内水産試験場),我々 の意図を組み,素晴らしい絵をかきあげてくださっ た画家の浅井粂男氏,そして,絵本完成までに著者 を励まし,編集の労を取られた山形昌也氏(福音館 書庖)に,この場を借りてお礼申し上げる.

冨 支

苅部治紀・西原昇吾,20日 エビ ・カニ・ザリガニ 淡水甲殻類の保全と生物学(川井唯史・中田和義 編).生物研究社,東京, pp.315-328. 川井唯史, 2007.ザリガニの博物誌里川学入門,東 海大学出版会,東京,pp.20-21. 川井唯史, 2009.ザリガニ ニホン・アメリカ ・ウチ ダ岩波書庖,東京, pp.95-96.

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図 2 . 完成した絵本 「 にほんざりがに」 の文章とともに,ニホンザリガニの らしさ"を描 き上けてもらうため,画家と現地を何度も訪れ,生 息地でのニホンザリガニの様子を観察することによ り,著者が感じていることを現場で伝え,絵をかい てもらった(図 2 )

参照

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