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操作–応答系の分散識別における心理物理的特性の検討

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DOI: http://dx.doi.org/10.14947/psychono.34.10

操作–応答系の分散識別における心理物理的特性の検討

1

上 田 祥 代

a,

*・薬 師 神 玲 子

b

・石 口   彰

a

aお茶の水女子大学・b青山学院大学

Psychophysical characteristics of operation-response noise perception

Sachiyo Ueda

a,

*, Reiko Yakushijin

b

, and Akira Ishiguchi

a

a Ochanomizu University, b Aoyama Gakuin University

Human observers have the ability to rapidly extract summary information about many items’ features. Regard-ing passive perception, many studies have explored abilities such as makRegard-ing statistical summary representations of many different feature dimensions in various sensory modalities. In real life, however, human operators actively in-teract with the environment and deal with specific objects or systems. It is conceivable that operators can obtain use-ful information about the conditions of the operating system by accumulating information over time about the rela-tionship between their operations and the system’s responses. In particular, variance of operation-response noise is important information because it can indicate abnormal and possible high-risk conditions of the operation system. In this study, we conducted an experiment involving discriminating the variance of operation-response noise to in-vestigate information-processing mechanisms underlying perception of such noise (Experiment 1). We also exam-ined (Experiment 2) the effect of active observation on variance discrimination by having observers passively per-ceive the same visual motion stimuli as in Experiment 1. The results suggested that compared with passive observation, active observation facilitated the perception of the variance of visual motion. In addition, the just- noticeable difference first fell and then rose as pedestal variance increased, which produced a ‘dipper’ function in both conditions.

Keywords: operation-response noise, variance discrimination, dipper function, statistical summary representa-tion, action effects

私たちを取り巻く環境は,複雑で多様な刺激で構成さ れる一方で,例えば,河原の小石やシマウマの群のよう に,一定の領域や同じカテゴリに属するオブジェクトや 生物の集合が,特徴的な分布パターンに従って存在する という傾向を併せ持っている。そのため,分布の代表 値,例えば平均や分散などを知覚することで,環境の情 報を効率よく把握することが可能であり,実際に人間の 脳にはそのような要約統計量を知覚する処理過程が備 わっていることが示されている(e.g., Chong, Joo, &

Treis-man, 2008; Morgan, Chubb, & Solomon, 2008; Parkes, Lund, Angelucci, Solomon, & Morgan, 2001; Pollard, 1984)。ただ し,これらは視覚刺激(e.g., Chong et al., 2008; Parkes et al., 2001)や聴覚刺激(e.g., Albrecht, Scholl, & Chun, 2012) を受動的に知覚する場合について検討されたものであっ た。 これに対し,受動的に知覚される環境情報だけでな く,能動的な操作とそれに対する応答との間の関係の知 覚においても,要約統計量が有用な情報になることが考 えられる。例えば,コンピュータや自動車など日常生活 で用いられるものから,ロボットなどの産業機械に至る まで,私たちはさまざまなシステムを制御している。通 常,操作に対するシステムの応答には小さなノイズが含 まれているが,問題なくシステムを制御することができ る。しかし,故障など何らかの異常が発生すると,操作– 応答ノイズの分散が大きくなり,システムは制御不能な 状態に陥る。そのため,自分の操作するシステムがある Copyright 2015. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. *Corresponding author. Department of Human

Develop-mental Sciences, Graduate School of Humanities and Sci-ences, Ochanomizu University, 2–1–1 Ohtsuka, Bunkyo-ku, Tokyo 112–8610, Japan. E-mail: [email protected]. ac.jp

1 本研究は平成 26年度科学研究費補助金(基盤研究

(B))課題番号 23330214 (研究代表者: 石口 彰) の助成を受けた。

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種の異常な状態にあることを認知するためには,通常状 態のノイズと異常時のノイズの大きさを識別する必要の ある場合が考えられる。このように,操作–応答系の分 散知覚は,操作者と環境との関係性を把握するために重 要な情報となりうるものであり,本研究ではその情報処 理の基礎過程を明らかにするため,操作とその応答との 間のノイズの分散の大きさを識別する際の心理物理的特 性について検討を行った。 操作–応答系におけるノイズの分散の大きさを把握す るためには,操作とその応答との間の対応関係を時系列 に沿って集積し,複数の刺激を統合して,そのばらつき を知覚することが必要である。これまで,複数の刺激を 統合して全体の特徴をつかむ要約統計量の知覚について は,主に平均値の知覚について,方位(e.g., Parkes et al., 2001; Robitaille & Harris, 2011),円の大きさ(e.g., Ariely, 2001; Attarha, Moore, & Vecera 2014; Chong & Treisman, 2003),明るさ(e.g., Bauer, 2009),長さ(Weiss & Ander-son, 1969),スピード(e.g., Emmanouil & Treisman, 2008), 運動方向(e.g., Watamaniuk, Sekuler, & Williams, 1989)な ど か ら, 顔 の 表 情(Haberman, Harp, & Whitney, 2009; Haberman & Whitney, 2009)や性別(Haberman & Whit-ney, 2007)などの情報に至るまで,多様な刺激において 検討されてきた。また,視覚に限らず聴覚に関しても, 音高の平均の知覚の正確性を示す知見(Albrecht et al., 2012)などがあり,複数の感覚モダリティの刺激におい て平均値の知覚が可能であることが示されている。この ような平均値を知覚する利点は,均質性や冗長性の高い 環境の情報を圧縮し効率的に表象できること,また, 個々の刺激知覚において生じるノイズの影響を小さく し,オブジェクトや領域の全体としての傾向を正確に把 握できる点にある(Alvarez, 2011)。 これに対し,分散の知覚は,刺激の集合や一定範囲の 領域の中心的傾向ではなく,全体の分布パターンを捉え るものである。通常,均質性の高い環境の中で大きなノ イズの分散を知覚することは,先に述べたシステムの制 御不能事態を含め,何らかの異常性の信号である可能性 も高く,リスクの大きい状態を知覚することにもつなが る。このように,分散も平均値と同様に,外部環境に関 する重要な情報となるものであり,私たちがどのように 分散を知覚するのかについて詳細に検討していく必要が ある。 分散知覚に関する先行研究は平均知覚と比べ少なく, 主に方位 (Morgan et al., 2008; Solomon, 2010) や円の大き さ(Solomon, Morgan, & Chubb, 2011)など視覚刺激に関 するものに限られており,今後研究の深められていく分 野であると考えられる。その中で,Morgan et al. (2008) は,分散識別の基本的な心理物理的特性について検討を 行った。結果,方位の分散識別において数種類の標準刺 激に対する丁度可知差異(just-noticeable difference,以下 JNDと記述する)を求めると,標準刺激の値が小さい範 囲ではその刺激値の増大はJNDの減少(ネガティブ・マ スキング (Green, 1960b; Raab, Osman, & Rich, 1963b)) をも

たらし,大きい範囲では刺激値の増大が JNDの増加を

もたらす(ウェーバーの法則),すなわち「柄杓(dipper)

型」の関数関係が得られることが示された。このような ネガティブ・マスキングは,分散識別以外でも以前より 知られている。例えば,ノイズからの音の検出(Raab, Osman, & Rich, 1963a)や,音の強度の識別(Hanna, von Gierke, & Green, 1986),触覚刺激強度の識別(Arabzadeh, Glifford, & Harris, 2008),コントラストの識別(Legge & Foley, 1980; Nachmias & Sansbury, 1974),刺激のブラーの 識 別(Pääkkönen & Morgan, 1993; Watt & Morgan, 1983) などである。そのメカニズムに関しては,物理的な刺 激の強度に対し感覚神経レベルでの反応が非線形(シ グモイド型)の関数を示すことに由来すると考えられ ている(e.g., Daar, Or, & Wilson, 2012; Legge & Foley, 1980; Nachmias & Sansbury, 1974)。 こ れ に 対 し Morgan et al. (2008)は,方位の分散知覚においては,個々の刺激(方 位)に対する神経レベルでのノイズ(内部ノイズ)が分 散の知覚に影響を及ぼしうることを示し,内部ノイズに 影響されるような小さな分散をキャンセルする感覚閾値 の存在を仮定することでネガティブ・マスキングを説明 するモデルを提唱した。そして,内部ノイズと感覚閾値 を想定したモデルから導かれる理想的観察者のパフォー マンスと,方位の分散識別に関する人間のパフォーマン スがよく適合することを示した。一方,Solomon (2009) は,Morgan et al. (2008)のデータを標準偏差ではなく分 散の単位で表した場合,ネガティブ・マスキングを示す 柄杓型関数が消失することを示し,理想観察者の信号検 出はエネルギー(あるいはパワー)検出である(Green, 1960a)ことを根拠に,柄杓型の関数関係について議論 するためには,分散を単位として表した上での関数関係 について検討する必要があると指摘している。 これらの研究はすべて,受動的に刺激を知覚する際の 分散知覚について検討していた。現実場面では,観察者 の能動的な操作によって外部環境にはたらきかけること が多くあり,操作に対する応答のばらつきは,操作対象 の状況を把握するための重要な情報となる。したがっ て,能動的に刺激を操作する際の操作–応答関係のばら つきを知覚する能力についても心理物理学的な観点から

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詳細に検討することが必要である。本研究では,操作と その応答との間の関係性の知覚に関する検討の1つとし て,操作–応答系のノイズの分散知覚に関し,標準刺激 とJNDとの間の関係について検討した(実験1)。また, 操作–応答系と同様の視覚刺激の提示される受動的な分 散知覚課題を設定し,そのパフォーマンスと比較するこ とにより,操作–応答系の分散識別の知覚特性について 検討した(実験2)。 先行研究では,受動的な観察の場合と比較し,能動的 行動と関連のある刺激を観察する場合,その知覚が促進 される場合と抑制される場合の両方があることが報告さ れている。促進される場合の例として,双方向の運動が 知覚されうる多義的な回転刺激を観察する際,ノブを左 右どちらかに回す動作を行うと,刺激の運動方向がノブ を回す方向に知覚されやすくなる(Wohlschläger, 2000)。 また,フラッシュラグ効果 (Nijhawan, 1994)に関し,運 動する刺激を観察者が操作する条件では,フラッシュラ グ効果が減少し,物理的に正確な知覚が促進されること が示されている(Ichikawa & Masakura, 2006, 2010)。一方 で,能動的行動によって引き起こされた刺激の知覚は, 受動的に与えられた刺激の知覚と比較して弱められるこ とも示されている。例えば,キー押しとガボールパッチ の出現との間の因果関係を学習した後では,受動的に 観察する場合と比較して,ガボールパッチの検出に対す る感受性が低くなる(Cardoso-Leite, Mamassian, Schütz-Bosbach, & Waszak, 2010)。また,観察者が一定方向に手 を動かしながらモニタ上のドットの進行方向の変化を検 出する場合,手の運動方向と同方向への変化は,手の動 きと反対方向に変化するドットの動きよりも検出が難し い(Zwickel, Grosjean, & Pronz, 2007)。

本研究では操作–応答系の刺激として,キー押し(操 作)とそれによって引き起こされる視覚運動刺激(応答) を用い,視覚運動刺激の移動距離の分散の知覚について 検討した。上記の先行研究が示すように,能動的な観察 が刺激の知覚に及ぼす影響は状況や刺激によって異なる ものであるが,観察者の能動的な操作が分散知覚に及ぼ す影響としては,2つの相対する可能性が考えられた。 1つめは,能動的な操作が分散知覚処理を促進する場合 である。これは,観察者の能動的操作が視覚処理全体を 促進することや(Ichikawa & Masakura, 2006),一般的に, 視覚刺激の運動タイミングが予測できることにより,操 作対象への注意が高まる可能性があることなどから考え

られる。2つめは,能動的な操作が応答刺激知覚に対し

て抑制効果を持つ場合である。能動的操作が視覚刺激の 検 出 感 度 を 低 下 さ せ る(e.g., Cardoso-Leite et al., 2010;

Müsseler & Hommel, 1997)ことから,1回のキー押しと その応答である視覚運動刺激について,視覚運動刺激の 移動距離の知覚の正確性が低下することが考えられる。 その結果,それらの知覚を統合して判断する分散の知覚 の正確性も低下することが考えられる。以上のことか ら,操作–応答系の分散識別の閾値は,受動的に知覚さ れる刺激の分散識別よりも,低くなる場合(パフォーマ ンスが向上する)と,高くなる場合の両方が考えられ た。 本研究では,実験 1で操作–応答系の分散識別のJND を測定し,実験2では,操作–応答系と同様の視覚運動 刺激を用い,受動的な分散識別の JNDを測定した。そ して,両者の比較を行うことで,上記の2つの可能性の 検証を行った。 実 験 1 方 法 実験参加者 成人女性7名(内,筆者1名)。全員が正 常な視力,または矯正視力を有していた。 装置 刺激は20インチCRTモニタのスクリーンに提 示した。刺激の生成,制御および反応取得は,Power Mac (Mac OSX)上で動作するMATLAB 7およびPsycho-physics toolbox Version 3.0.9 (Brainard, 1997; Pelli, 1997) に よって行った。画面解像度は 1152×864 pixelで,リフ レッシュレートは75 Hzに設定した。提示画面の観察に は,あご置き台を使用し,参加者から57 cmの距離にモ ニタを設置した。参加者による視覚刺激の操作,およ び,課題への回答は,Apple Keyboard (テンキー付き) を用いた。 刺激 モニタ上の黒の背景画面の中央に,赤色の水平 線が呈示され,その左端に白円が呈示された。黒背景の 輝 度 は 1.22 cd/m2 (CIE xy 色 度 座 標,x=0.27, y=0.43), 赤色の輝度は21.3 cd/m2 (CIE xy色度座標,x=0.542, y= 0.411),白色の輝度は,91.4 cd/m2 (CIE xy色度座標,x= 0.26, y=0.34)であった。水平線の長さは視角18°,白円 の直径は視角1°であった。白円はスタートボタンととも に,自動的に,右上45°,または右下45°のどちらかの方 向に進んだ。どちらの方向に進むかはランダムであり, 視角 4.5°/秒の速さで等速直線運動を行った。そのた め,白円は赤線から離れていくが,参加者は,白円がな るべく赤いライン上に重なるように,テンキーを用いて 操作するよう教示された。白円は,“8”キーを押した場 合は真上に,“2”キーを押した場合は真下に,視角1.2° 移動した(Figure 1a)。キー操作によって移動した白円 は,その直後,再び右上45°,または右下45°のどちらか

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の方向(ランダム)に自動的に動き出すため,そのたび に,参加者は白円を赤線に重ねるようキー押しによって 白円を操作することが求められた。1系列の長さは約3.4 秒であり,白円が赤線の右端に到達する前に画面は次の 系列に切り替わり,再び白円が赤線の左端に呈示されて 同様の刺激が呈示された。 実験では,このような状況において,参加者がキー操 作を行ったときの白円の移動距離(視角 1.2°)に操作– 応答ノイズが加えられた。この操作–応答ノイズは,平 均0,分散σ2の正規分布N∼(0, σ2)に従う乱数であり, キー押し操作のたびに分布から決定された。 手続きと課題 参加者はキー押しによる白円の操作に 慣れるため,操作–応答ノイズのない状態で,白円を赤 線に重ねることのできるタイミングでキー操作を行える よう練習試行を行った。練習30試行の後,本試行が行 われた。本試行では,キー操作時の白円の動きにばらつ きが生じることが参加者に伝えられた。参加者の課題 は,2つの連続する系列で,なるべく白円が中央線に重 なるように操作を行った後,操作–応答ノイズのばらつ きが大きいと思う方の系列番号(1または2)を答える ことであった(二肢強制選択法)。各試行では,系列番 号が 500 ms呈示された後,各系列が約3.4秒続き,2系 列終了後に“Answer”の文字が呈示され,参加者は白 円の動きのばらつきが大きいと感じた系列番号を,メイ ンキーボードの“1”または“2”キーで答えた(Figure 1b)。 標準刺激は5種類(σ=0°, 0.1°, 0.2°, 0.4°, 0.8°,すべて 視角)であり,比較刺激のノイズの大きさはそれぞれ, 正答率82%を閾値と設定するQUESTアルゴリズム(Wat-son & Pelli, 1983)を用いて決定された。分布は累積ワイ

ブル関数を仮定し,β=1.0 (傾きのパラメータ),δ=0.01 (刺激を見ずに反応した試行の割合)と設定した。各標 準刺激についての閾値は50試行終了後に算出されるよ う設定された。すべての標準刺激を同一ブロック内でラ ンダムに呈示したため(すなわち,5種類の標準刺激× 50試行=250試行がランダムに提示された),250試行終 了後に 5つの閾値が算出された。これらは50試行ずつ 5つのブロックに分けられ,ブロック間では短い休憩が とられた。参加者の反応に対するフィードバックは与え られなかった。上記と同様の手続きが3回行われ,3回 の平均を各被験者の閾値として用いた。JNDは閾値から 標準刺激の値を引くことで求められた。本課題の場合, 被験者のキー押しは任意のタイミングであるため,その 回数には多少のばらつきはあるが,個人内ではほぼ共通 する傾向があり,1系列内で行われたキー押し回数の平 均は,被験者 1から被験者7までの順でそれぞれ,10.6 回,8.4 回,7.2 回,8.8 回,7.7 回,8.1 回,7.0 回 で あ っ た。この回数が操作–応答ノイズの分散を知覚する際の サンプル数となる。 結果と考察 分析のためのデータは,すべて分散(σ2)を用いた。 ただし,記述を簡潔にするため,本文中では単位を標準 偏差 (σ) で記す。Solomon (2009) は,標準刺激とJNDと の間のいわゆるネガティブ・マスキングおよびそれを踏 まえた柄杓型関数は,刺激のパワー (power) 尺度で表し た時に消失する場合のあることを指摘しており,パワー 尺度で表した後も柄杓型関数が維持される場合において のみ,その柄杓型を説明する感覚処理メカニズムについ て議論することが可能であるとしている。よって,本研 Figure 1. (a) A schematic view of the stimuli used in Experiments. Broken lines indicate automatic motion of the circle,

white thick arrows indicate the motion by observer’s key operation. (b) A schematic view of the stimuli used in the vari-ance discrimination task.

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究ではパワー尺度である分散を用いて分析を行った。 7人の実験参加者について標準刺激とJNDの関係をグ ラフに示したところ,標準刺激σ=0°に対して標準刺激 σ=0.1°のJNDは低下し,その後 JNDは標準刺激に比例 して増大した。7人の各被験者のデータ,および,被験 者の平均の値をFigure 2に示す。この結果を統計的に検 討するため,JNDについて,標準刺激の分散の大きさを 独立変数として1要因の分散分析を行った結果,標準刺 激 の 大 き さ の 主 効 果 が 有 意 で あ り(F(4, 24)=30.49, p<.001),フィッシャーのLSD検定による多重比較の結 果,σ=0°とσ=0.1°の差が有意であった(p<.05)。σ= 0°とσ=0.2°の差,および,σ=0.1°とσ=0.2°の差は有意 ではなく(p>.10), σ=0.2°, σ=0.4°, σ=0.8°においては, JNDが有意に増大した(σ=0.2°とσ=0.4°の差,および, σ=0.4°とσ=0.8°の差について p<.01)。すなわち,操 作–応答ノイズがない状態(σ=0°)ではJNDは比較的高 い値を示し,ノイズが小さい段階(σ=0.1°)でJNDは いったん下降し(ネガティブ・マスキング),さらにノ イズが大きくなるとノイズの大きさに比例して JNDも 増大するという柄杓型の関係が,操作–応答ノイズの分 散の識別において示された。 序論で述べたように,方位の分散識別に関して示され た標準刺激とJNDとの間の柄杓型の関係(Morgan et al., 2008)は,単位を分散に変換した場合には消失すること が示されている(Solomon, 2009)。しかしながら,本実 験では,単位を分散に変換した場合でも,ネガティブ・ マスキング,および,それをふまえた柄杓型の関係が示 された。 実 験 2 実験1では,操作応答系における分散知覚の特性を検 討した。しかしながら,操作者(以下,能動的観察者と する)は,フィードバック情報としての運動刺激を,操 作とは独立に観察していた可能性もある。その場合に は,操作を伴わない運動刺激の分散知覚は,操作を伴う 場合と変わらないことが予想される。実験2では,この 可能性も含め,前述した観察者の能動的な操作が白円の 動きの分散知覚に与える影響を検討するため,実験1と 同等の視覚運動刺激を提示し,かつ,実験参加者の操作 を伴わない実験状況を設定して,標準刺激の分散の大き さとJNDとの間の関係性について調べた。 方 法 実験参加者 実験1と異なる成人女性7名(内,筆者 1名)。全員が正常な視力,または矯正視力を有してい た。 装置 実験1と同じであった。 刺激 実験2では,実験1のフィードバック情報をシ ミュレートして,操作とは独立に提示した。すなわち, 操作と同時並行的に,別の観察者が,運動刺激を観察す る設定にはなっていない。本研究では,個々の能動的観 察者の操作タイミング等の情報は,受動的な観察者には ノイズに相当すると想定したからである。そこで,以下 の点を除き,実験1と同様の刺激を用いた。白円は自動 的に,右上45°,または右下45°のどちらかの方向に進む 中,観察者のキー押しではなく,任意のタイミングで, Figure 2. Graph (a)–(g) show each participant’s data in Experiment 1. Graph (h) shows mean data across all subjects for

Experiment 1. Error bars show standard error. The leftmost point of the abscissa refers to the Pedestal=0 condition, but we substitute 10–3 for this value to accommodate it on the logarithmic scale.

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1系列内で7∼10回(回数は系列ごとにランダムに決定 される),真上,または,真下に移動する動きを行った。 真上,または,真下に動くタイミングは,系列全体の時 間を,動く回数(7∼10回)で均等割したものにジッ ター(±10 msの範囲でランダムに決定)をかけること で決定された。白円は,赤線よりも下にある場合は真上 に,赤線よりも上にある場合は真下に動いた。実験1と 同様に,白円の移動距離(視角1.2°)には条件に応じて ノイズ(出力としては操作–応答ノイズと同じ)が加え られた。白円の動く回数が 7∼10回であるのは,実験1 で被験者の行った1系列内におけるキー押し回数の平均 が約8.3回であり,それと同水準に合わせるためであっ た。また,実験1では白円をなるべく赤線上にのせるよ うに教示していたため,赤線と白円の位置関係に対し, 白円が真上,または,真下に動く方向は,実験1と実験 2で同じとなるようにした。 手続きと課題 以下の点を除き,実験1と同様であっ た。実験参加者には,白円が右上,または,右下に自動 的に進む中で,任意の位置,タイミングで,真上,また は,真下に動くことが伝えられた。動くタイミングはコ ンピュータによって任意に決められることや,白円が赤 線よりも上にある場合は真下に,下にある場合は真上に 動くことも伝えられた。練習試行として,白円の移動距 離にノイズが加えられない状態で,視覚運動刺激を 30 試行観察した。続けて本試行が行われた。本試行では, キー操作時の白円の動きにばらつきが生じることが参加 者に伝えられた。参加者の課題は,2つの連続する系列 で,白円の移動距離のばらつきが大きいと思う方の系列 番号(1または2)を答えることであった(二肢強制選 択法)。 結果と考察 実験1と同様に,分析のためのデータは,すべて分散 (σ2)を用いた。ただし,記述を簡潔にするため,本文 中では単位を標準偏差 (σ)で記す。7人の実験参加者に ついて標準刺激とJNDの関係をグラフに示したところ, 標準刺激σ=0°に対して標準刺激σ=0.1°, σ=0.2°のJND は低下し,その後JNDは標準刺激に比例して増大した。 7人の各被験者のデータ,および,被験者の平均の値を Figure 3 に示す。この結果を統計的に検討するため, JNDについて,標準刺激の分散の大きさを独立変数とし て1要因の分散分析を行った結果,標準刺激の大きさの 主効果が有意であり(F(4,24)= 44.31, p<.001),フィッ シャーのLSD 検定による多重比較の結果,σ=0°とσ= 0.2°の差が有意であった (p<.05)。σ=0°とσ=0.1°,およ,σ=0.1°とσ=0.2°の差は有意ではなかった(p>.10)。 σ=0.2°, σ=0.4°, σ=0.8°においては,JND が有意に増大 した(σ=0.2°とσ=0.4°の差について,p<.05, σ=0.4°と σ=0.8°の差について p<.01)。すなわち,実験 1 と同様 に,白円の移動距離のノイズがない状態(σ=0°)では JNDは比較的高い値を示し,ノイズが小さい段階(σ= 0.2°)でJNDはいったん下降し(ネガティブ・マスキン グ),さらにノイズが大きくなるとノイズの大きさに比 例して JNDも増大するという柄杓型の関係が,白円の 動きを受動的に観察する際の分散識別においても示され た。ただし,JNDが最も低くなったのは,実験1では

Figure 3. Graph (a)–(g) show each participant’s data in Experiment 2. Graph (h) shows mean data across all subjects for Experiment 2. Error bars show standard error. The leftmost point of the abscissa refers to the Pedestal=0 condition, but we substitute 10–3 for this value to accommodate it on the logarithmic scale.

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σ=0.1°であったのに対し,実験2ではσ=0.2°となった。 実験1と実験2の比較 白円の運動距離の分散知覚に関する観察者の操作の効 果を検討するため,実験1と実験2で得られたJNDにつ いて,被験者間計画の2要因(実験; 2水準×標準刺激 のSD; 5水準)の分散分析を行った。結果,標準刺激分散の大きさの主効果(F(4,48)= 104.68, p<.001),お よび,実験の主効果(F(1,12)=6.28, p<.05)が有意で あった。交互作用(F(4,48)=0.76, n.s.)は有意ではな かった。すなわち,観察者の能動的な操作の結果である 白円の動きを観察する場合,同様の視覚運動刺激を受動 的に観察する場合よりも,全体的にJNDが低下するこ とが示された(Figure 4)。 総合的考察 本研究では,操作–応答系における分散識別に関して 5段階の標準刺激に対するJNDを測定し,標準刺激の大 きさとJND との間の関係について検討した。さらに, 操作–応答系の刺激と同様の視覚運動刺激を受動的に観 察する場合のパフォーマンスを測定し,能動的観察の場 合と比較することで,操作–応答系の分散知覚の特性に ついて検討した。結果,操作–応答系,および,受動的 な分散知覚の両方において,標準刺激とJNDとの間に, 柄杓型の関係が示された。また,操作–応答系の分散識 別を行う場合,受動的な分散識別課題と比較して,全体 的に JNDが低下することが示された。本研究で得られ た結果は,以下の点で重要である。 1つめは,操作とその応答との間に混入するノイズの 分散知覚に着目し,心理物理学的手法を用いてその特性 について検討した点である。序論で述べたように,要約 統計量の中でも操作–応答系の分散は外界の状態に対す る重要な情報となると考えられるが,これまでその知覚 について検討したものはなかった。人間が自分の操作す る対象の変動の大きさをどのように知覚するかを初めて 示した点は重要である。 2つめは,視覚刺激に対する能動的な操作が分散知覚に 促進的な効果を与えることを示したことである。観察者 自身がアクションを起こし,外界の対象を操作するよう な場合,受動的にその対象を知覚する際と比較して,知 覚の変化が生じることは多くの先行研究により示されて いる(e.g., Blakemore, Frith, & Wolpert, 1999; Cardoso-Leite et al., 2010; Haggard, Clark, & Kalogeras, 2002; Ichikawa, & Masakura, 2006, 2010; Short & Ward, 2010)。これらの知見

から,操作–応答の因果関係や,操作と視覚運動刺激と の間の一致度によって個々の刺激の知覚が変化すること が考えられる。しかし,それらの情報を統合して刺激の ばらつき(分散)を把握する段階においては,能動的な 操作が視覚刺激の知覚にどのような影響を及ぼすのかに ついて明らかになっていない。よって,視覚刺激に対す る能動的な操作が,受動的に刺激を観察する場合と比較 して,分散知覚に促進効果をもたらすことを示した本研 究の結果は重要である。 操作–応答系の分散識別が,受動的観察の場合と比較 して促進された理由としては,次のことが考えられる。 まず,Ichikawa & Masakura (2006)が示したように,能 動的な操作を行うことが,視覚情報処理全体を促進した ことが考えられる。彼らは,能動的に運動刺激を操作し た場合にフラッシュラグ効果が減少することを示し,こ のとき,運動刺激とフラッシュ刺激の両方への反応が早 くなることを報告している。視覚刺激への反応時間の速 さと,本研究で用いられたような視覚運動刺激の移動距 離知覚の正確さが直接関係するかは明らかではないが, 能動的な操作が視覚刺激の情報処理を促進するという面 がある可能性はある。また,本研究では能動的観察の場 合に白円が動くタイミングを予測することができるた め,視覚運動刺激に対して効率的に注意を向けることが できることも考えられる。注意を向けることで,1回の キー押しとそれに対する視覚運動刺激の移動距離を正確 に知覚することができるようになり,それによって分散 知覚の正確性が高まった可能性もある。ただし,序論で 述べたように,観察者自身の操作によって引き起こされ Figure 4. The graph shows the mean data across all

sub-jects for our experiments. Square markers indicate the data in Experiment 1. Triangle markers indicate the data in Experiment 2. Error bars show standard error. The leftmost point of the abscissa refers to the Pedes-tal=0 condition, but we substitute 0.001 for this value to accommodate it on the logarithmic scale.

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た刺激の知覚は弱められることも先行研究では示されて いる (e.g., Blakemore et al., 1999; Cardoso-Leite et al., 2010)。 そのような知覚の変化が運動移動距離の知覚では生じな いのか,分散の知覚には影響を及ぼさないのか,あるい は,上記の促進効果がその効果を上回ったのかについて は明らかでなく,複合的な要因が合わさった結果として 促進効果が生じたことも考えられる。 3つめは,刺激が継時的に呈示される場合の分散識別 能力について検討した点があげられる。分散の知覚につ いて視覚刺激を対象とした先行研究は,複数の刺激が同 時呈示された場合の分散知覚を扱っている(Morgan et al., 2008; Solomon, 2010; Solomon et al., 2011)。しかしなが ら現実場面では,本研究で想定するような操作とその応 答との間の関係や聴覚刺激など,連続して呈示される刺 激属性の情報を蓄積し,その分散を判断する必要がある 場合が多い。よって,継時的に呈示される刺激の分散を 知覚する能力について検討することは,より多様な状況 での分散知覚について明らかにすることにつながる。同 じ要約統計量という点では,平均値の知覚では,継時的 に刺激が呈示される状況についても検討が行われてい る。例えば,円の大きさの知覚について,同時呈示され る場合と同程度の正確性が保たれることや(Chong & Treisman, 2005),動的に変化する円の大きさの平均も知 覚可能であること(Albrecht & School, 2010)が示されて いる。また,時系列で呈示される顔の表情の平均の知覚 は,刺激の提示速度やセットサイズの大きさに対しても 頑健であり,効率的な知覚が行われていることも示され ている(Haberman et al., 2009)。 本研究の課題では刺激が同時呈示された場合の成績と 直接比較することはできない。しかし,能動的,受動的 観察の両方で,分散を単位とした場合でも標準刺激と JNDとの間に柄杓型の関係が見られた点は,同時呈示時 の受動的な分散知覚に関する先行研究(Solomon, 2009) と異なっている。視覚刺激が方位と運動距離という違い もあることから,このことが同時呈示と継時呈示におけ る分散知覚の処理メカニズムの違いを示すものにはなら ないが,今後,分散知覚の基礎となる感覚処理メカニズ ムについて両者に関わる過程を明らかにしていくことが 必要である。 分散知覚と平均知覚の処理メカニズムの比較という点 では,能動的な操作が平均知覚と分散知覚それぞれにど のような影響を及ぼすのかを検討することも考えられ る。要約統計量を知覚する処理段階では,個々の刺激に かかるノイズ(早発ノイズ,early noise)と,知覚され た刺激サンプルから要約統計量を算出するまでにかかる ノイズ(遅発ノイズ,late noise)を想定することができ る。受動的な観察では,このうち,早発ノイズの大きさ は平均や分散の知覚にはほとんど影響を及ぼさないこと が示されている。例えば,方位の分散と平均の知覚につ いて,クラウディング,すなわち,刺激が密集している 状況では,個々の刺激の知覚の正確性は低下する(早発 ノイズが大きくなる)が,それらの刺激の平均や分散の 知覚にはほとんど影響がない(e.g., Parkes et al., 2001; Sol-omon, 2010)。 一 方, 分 散 を 知 覚 す る 際 の 人 間 の パ フォーマンスの効率や正確性は,平均の知覚よりも良い ことが示されている(Solomon, 2010)。また,円の大き さの知覚に関しても,分散知覚の方が平均知覚よりも高 い正確性を示すことから,平均知覚に影響を及ぼすと考 えられる遅発ノイズが分散知覚には影響を及ぼさない処 理過程の存在が主張されている(Solomon et al., 2011)。 このように,分散の知覚メカニズムについては,少なく とも一部分は平均値とは別個の処理過程が存在する可能 性が示されており,能動的な操作の影響を検討すること は両者の知覚メカニズムに関して新たな知見を提供する ことになるものと思われる。 本研究の限界として,本研究で設定した実験状況が, 操作–応答ノイズに敏感になりやすい課題であったこと があげられる。本研究では,観察者は画面中央の水平線 にできるだけ白円を当てるよう教示されていたため,能 動条件においては,必然的に白円の運動距離のずれに敏 感になると考えられる。しかし,そのような明確な操作 の目的をもたないような状況の場合,対象を操作してい るという操作感,あるいは,制御感が強いほど,操作と その応答との間のずれに気づきにくいこともありうる。 よって,操作の目的指向性の有無なども実験条件として 設定し,能動的操作が分散知覚に及ぼす影響を比較する ことも必要であろう。 また, 本研究の実験2では,実験1のフィードバック 情報をシミュレートして,操作とは独立に提示した。す なわち,操作と同時並行的に,別の観察者が,運動刺激 を観察する設定にはなっていない。本研究では,個々の 能動的観察者の操作タイミング等の情報は,受動的な観 察者にとってはノイズに相当すると想定し,受動観察条 件(実験2)ではそれらのノイズを白円の運動タイミン グのジッターノイズとして設定してシミュレートした が,この点に関しても,検討の余地があろう。 本研究で用いられた実験刺激では,白円が赤線から 1.2°の距離にあるときにキー操作を行うことが白円を赤 線に重ねるための最適方略であった。実験1の能動的観 察者がその方略を用いていた場合,赤線からのずれを基

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準として白円の移動距離を測ることが容易となり,それ が能動条件での分散知覚の精度を向上させることも考え られる。ただし,ノイズが小さい条件ではこの方略は分 散識別に有効かもしれないが,ノイズが大きい条件で は,キー操作の結果白円が移動する位置が赤線から遠く 離れる状況が頻繁に生じるため,白円が赤線から1.2°の 距離に来るまでキーを押さないという方略では分散識別 に十分な大きさのサンプルが採れない可能性が高く,こ の方略は必ずしも有効とは言えない。また,ノイズが大 きい条件では,白円の到達位置の変動の大きさに影響さ れて,赤線に白円を当てるという意図を持った能動的観 察者がキーを押す時の白円位置の変動が大きくなること も考えられる。このような理由から,本研究の受動条件 (実験 2)では赤線からの距離を基準にしたシミュレー ションではなく,能動条件(実験 1)の観察者の平均 キー押し回数を基準にしたシミュレーションを採用し た。今回の能動条件では,白円を赤線に当てるという意 図と分散の識別という課題要求の両方が含まれている。 前述の問題点とも関係するが,本研究で得られた能動条 件と受動条件との違いが何に依拠しているのかを明確に するためには,最適方略を用いることの効果や課題達成 の意図や目標を統制した実験を行うことが必要であろ う。 今後の課題としては,操作–応答系の分散知覚に関す る感覚情報処理モデルを作成することがあげられる。先 行研究(e.g., Daar et al., 2012; Nachmias & Sansbury, 1974) では,標準刺激とJNDとの間の柄杓型の関数関係を示す データは,非線形の変換器(transducer)(物理量–知覚 量のシグモイド型の関数関係)を想定することで説明で きるものとしていた。しかし,分散を単位とする本研究 のデータにDaar et al. (2012) のモデルを適用したところ, よいフィッティングが得られなかった(標準偏差を単位 とした同じデータに対してはよくフィットした)。これ は,値を2乗することで,標準刺激の値の増加分に対す るJNDの低下の幅の比率が非常に大きくなり,このよ うなデータに適合するような非線形の感覚スケールの関 数を導けないためだと思われる。先行研究でこのモデル をフィットさせている実験のデータは,パワー(power)

の単位ではなく,振幅 (amplitude) (Daar et al., 2012)の 単位であり,パワーの単位で表したときの,標準刺激と JNDとの間の関数関係を説明するための数式表現は,別 に考える必要があるのではないかと考えられる。一方, Morgan et al. (2008)のモデルは分散知覚を扱ったモデル であり,単位を分散にした場合にも適用できる。内部ノ イズや感覚閾値のパラメータを設定しているため,能動 的,受動的な分散識別の知覚の違いにこれらの値の影響 があるのかについて検討することは興味深い。しかし, Morgan et al. (2008)のモデルは同時提示課題を想定して おり,分散知覚に利用していると考えられる刺激のサン プル数も,パラメータとして設定している。時系列で提 示される刺激において,このようなサンプル数のパラ メータを同様に扱うことができるかは検討の余地があ り,記憶など他の要因の影響との兼ね合いも含めて考え る必要がある。 序論で述べたように,外界のオブジェクトやイベント の集合に関する分散情報は,その状態を把握するため の非常に重要なシグナルとして機能すると考えられる が,特に,操作–応答系のノイズの分散に関しては,観 察者とその操作対象となる外界の事象との間の関係性が 正常/異常のどちらに属するかにつながる情報として活 用されることが考えられる。そのため,今後は本研究で 用いた操作–応答系の課題を含め,さまざまな条件や感 覚モダリティの刺激を用い,多面的に分散知覚に関わる 処理過程を明らかにしていくことが重要である。 引用文献

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Figure 2. Graph  (a) – (g)  show each participant s data in Experiment 1. Graph  (h)  shows mean data across all subjects for  Experiment 1
Figure 3. Graph  (a) – (g)  show each participant s data in Experiment 2. Graph  (h)  shows mean data across all subjects for  Experiment 2

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