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パーキンソン病の理学療法Up to date

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 755 ∼ 756 頁(2015 パーキンソン病の理学療法 年) Up to date. 755. モーニングセミナー. パーキンソン病の理学療法 Up to date * 岡 田 洋 平 1)2)3). パーキンソン病の理学療法の効果. とにより神経栄養因子のレベルが上昇することやトレッドミル トレーニングによりドーパミン D2 受容体の機能が向上するこ.  パーキンソン病(Parkinson’s disease:以下,PD)は緩徐. とも報告されている。PD 患者に対する早期からの長期リハビ. 進行性神経変性疾患である。PD のおもな病態は中脳黒質緻密. リテーションを実施することにより,疾患による症状の進行を. 部のドーパミンニューロンの脱落変性であるが,その他の神経. 抑制し,抗パーキンソン病薬の内服量を軽減する効果が期待さ. 系にも疾患の影響が及ぶことが知られており,PD は多系統疾. れる。. 患として捉える必要がある。PD は振戦,固縮,無動,姿勢反 射障害といった運動症状だけでなく,認知機能障害,精神障害,. 無動,すくみ足に対する介入戦略. 自律神経障害,睡眠障害などの非運動症状も引き起こす。PD.  PD の理学療法を行ううえで無動に対する介入は重要な Point. の症状はその原因により,疾患由来の症状(振戦,固縮,無動,. となる。無動に対する理学療法を行う際,関連する病態,残存. 姿勢反射障害,遂行機能障害など),長期の投薬治療に伴う症. する神経機構の理解に基づいて介入戦略を考えることが重要と. 状(ウエアリングオフ現象,オンオフ障害,ディスキネジアな. なる。. ど),加齢に伴う症状,廃用症候群,それらの複合的原因によ.  PD では中脳黒質緻密部のドーパミン神経が脱落変性した結. る症状(歩行,バランス障害,姿勢異常,日常生活動作の障害. 果,大脳基底核からの抑制性出力が強まり,視床を介して大脳. など)に分類される。疾患由来の症状や長期の投薬治療に伴う. 基底核と神経ネットワークを形成している補足運動野の機能が. 症状はおもに医師による治療対象となるが,加齢に伴う症状や. 低下している。補足運動野は内発的に運動を行う際の運動の準. 廃用症候群,複合的原因による症状は,リハビリテーションの. 備状態や運動プログラムの生成に関与している。PD 患者では,. 主要な介入対象となる。. 補足運動野の機能が低下し,内発的に随意運動を行う際の運動.  日本神経学会 PD 治療ガイドラインや日本理学療法士学会. プログラムの生成が障害されることにより無動が生じると考え. PD 理学療法診療ガイドライン,最新の PD の理学療法の効果. られる。. に関するコクランシステマティックレビューにおいて,理学療.  PD の無動に対する介入戦略として,External cue,Cogni-. 法は歩行能力,バランス能力,PD の機能障害の評価尺度とし. tive strategy,Feedforward,Feedback 誤差学習が挙げられる。. て Golden standard になっている Unified Parkinson’s Disease. External cue として視覚刺激,聴覚刺激,体性感覚刺激などを. Rating Scale(UPDRS)を短期的に改善することが示されて. 用いることにより,PD 患者の無動は顕著に改善することが知. ‒3). いる 1. 。しかし,PD は緩徐進行性神経変性疾患であるため,. られている。その機序は,External cue により運動を行う際に. 疾患の経過の中で理学療法の効果を長期効果としても捉える. は,PD において障害される基底核や補足運動野などの内発性. 必要である。Hoehn and Yahr(以下,HY)1 ∼ 1.5 や HY3 の. 随意運動の神経機構を介さず,運動前野や小脳など外発性随意. PD 患者に対して 4 週間,1 日 3 時間の短期集中入院リハビリ. 運動の神経機構を介して運動が発現されるためであると考えら. テーションを年に 1 回実施することにより,運動機能や日常生. れている。一定期間継続して External cue を用いた介入を行. 活動作能力の低下を長期的に予防し,抗パーキンソン病薬内. うことにより,External cue のない状態での歩行も改善するこ. 服量の増加を抑制する効果があることが報告されている。早. とが報告されており,近年ではさらに介入の中で動作の改善に. 期 PD 患者に対して集中的なリハビリテーションを実施するこ. 伴い,External cue の使用頻度を徐々に下げたほうが,介入後 の持続効果が高いことも報告されている。. *. Physical Therapy for Parkinson’s Disease - Up to Date 1)畿央大学健康科学部理学療法学科 (〒 635‒0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中 4‒2‒2) Yohei Okada, PT: Department of Physical Therapy, Faculty of Health Science, Kio University 2)畿央大学大学院健康科学研究科 Graduate School of Health Science, Kio University 3)畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター Neurorehabilitation Research Center of Kio University キーワード:パーキンソン病,理学療法,無動.  Cognitive strategy,Feedforwad,Feedback 誤 差 学 習 は, 内発性随意運動自体を改善しようとする介入戦略である。近年 本邦においても着目されている Lee Silverman Voice Training (以下,LSVT)BIG は,それの介入戦略を適用したものであ ると考えられる。LSVT BIG では,通常よりも高い努力性で「大 きい」動きを意識して集中的にトレーニングを行う。PD 患者 は自身の動きの大きさや軌道を体性感覚により正確に認識でき.

(2) 756. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. ていない可能性を示唆する結果が報告されている。介入の中で. 足側が疾患優位側である場合には,歩行開始動作が停滞する可. 対象者の動きが小さい際には,徒手や口頭指示により十分な大. 能性がある。方向転換動作の回転方向にも疾患優位側と利き側. きさの運動を実施できていないことをフィードバックし,さら. の関係が影響すると考えられる。歩行開始動作を行う際にはど. に大きな運動を実施するよう促していく。大きな動きを引き出. ちらの足から振り出し開始するとよいか,方向転換動作を行う. すことは重要であるが,対象者が平衡を失わない範囲で可能な. 際には,どちらの方向に回るとよいかを意識することにより動. 限り大きな動きを行うよう指導するべきである。PD 患者は自. 作が改善する症例も存在し,症状の左右差や利き側などに配慮. 発運動の際,基底核を中心とした神経ネットワークは低下して. した動作指導を行うことも重要であると考えられる。. いるが,小脳を中心とした神経ネットワークは残存しているこ.  FOG は発症後 17 年の間に約 80%の症例に認められることが. とが報告されている。小脳は Feedforward,Feedback 誤差学. 報告されている。PD は疾患の進行とともに,徐々に遂行機能. 習において重要な役割を担っている。PD における LSVT BIG. 障害や注意の問題などの認知機能障害が顕在化してくることが. において,小さな動きにフィードバックを与えながら,適切な. 多い。各症例の疾患の経過の中で認知機能障害が顕在化する前. 大きさの運動が発現するよう促すプロセスにおいても小脳が代. に,FOG に対する認知的な運動制御の指導を行う必要がある. 償的に機能している可能性がある。. と考えられる。.  すくみ足(Freezing of gait:以下,FOG)は,日常生活に 与える影響が大きく,患者を悩ます重要な問題である。FOG. 今後の展望. の発生するメカニズムとして,歩行中の歩幅の低下やケイデン.  本邦において疾患早期からの長期リハビリテーションを実現. スの上昇が蓄積し,一定の限界点を超えると生じる閾値モデ. するためには,医師や PD 患者へのリハビリテーションの効果. ル,歩行時に認知,情動に関する情報処理が課せられた際に認. に関する教育,外来リハビリテーションや短期集中入院リハビ. 知的な歩行運動制御と競合が生じた際に生じるとする干渉モデ. リテーションの実施施設の充足,診断施設とそれらのリハビリ. ル,歩行中に速度や方向を切り替える必要が生じた際など葛藤. テーション施設との連携,在宅におけるリハビリテーションの. する場面で意思決定を要求されると情報処理能力の低下によ. 実施をサポートするシステムの構築などが必要であると考えら. り FOG が生じるとする認知モデル,歩行開始時など認識して. れる。. いる自己の意図と意識にのぼらない運動の準備との解離により.  PD の理学療法の効果に関する研究で使用されている評価指. FOG が生じるとする分離モデルなどが提唱されている。. 標は,Hoehn and Yahr stage, UPDRS の他は歩行能力やバラ.  PD 患者は運動制御において認知の動員の必要性が上昇して. ンス能力に関するものが多い。PD 患者が医療により十分に改. いると考えられている。FOG が発生する直前の脳波を計測し. 善しないと感じている症状に関する本邦の調査では寝返り動作. た研究では前頭領域の θ 帯域の活動が上昇していることが報. の障害や非運動症状も含まれているが,それらに対する理学療. 告されている。これは,FOG が発生する際にはその直前から. 法に関する研究は非常に少ないのが現状である。今後歩行,バ. 認知的負荷が上昇していることを示している。認知的負荷が過. ランス障害に加えて,さらに PD 患者が真に困っている症状に. 剰となり,効率的に認知的な運動制御が遂行不可能になった. 目を向け,それらの機序に関する基礎研究と理学療法介入の可. 結果,FOG が発生していると推測される。FOG への対処法を. 能性について模索し検証する臨床研究の蓄積が望まれる。. PD 患者に指導する際,各症例において適切な認知的な制御の 方法を症例とともに考えることが重要である。  FOG への対処法を指導する際に,左右差への配慮は重要な ポイントのひとつとなる。通常歩行開始時の振り出し開始側は 一定であるが,FOG を呈する PD 患者は歩行開始時の振り出 し開始側の下肢が一定しないことが報告されている。また,疾 患の優位側と利き側が一致することが多いことについても報告 されている。歩行開始側は利き足側となることが多いが,利き. 文  献 1) 日本神経学会(監):日本神経学会パーキンソン病治療ガイドライ ン 2011. 2) 日本理学療法士協会:日本理学療法士学会診療ガイドライン(第 一版)パーキンソン病. 3) Tomlinson CL, Patel S, et al.: Physiotherapy versus placebo or no intervention in Parkinson’s disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 9: CD002817..

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