食肉の衛生管理講習会テキスト
食肉衛生管理ハンドブック
食中毒を防止するために食肉事業者と消費者が
理解すべきこと
■初めに、本書の目的と活用法
お肉は、色々な機会に、さまざまな方法で、多くの人に食べられるよ
うになってきました。
お肉は、若者の成長や栄養素として優れていること、近年には、食肉
の化学分析や統計により、高齢者が毎日お肉を食べることが、健康・
長寿にとって良いことも消費者に理解されてきました。
その消費者(お客様)の食肉に対する第1の関心事は「安全・安心」です。
私共食肉専門店や企業は、これら健康・長寿に良い美味しい食肉を「安
全」にお客様に提供することが、第1の使命となります。
一旦、食中毒事故を起こせば、営業停止はもとより、食肉事業者の存
続が危ぶまれる事となります。
こうした事故を未然に防止するためには、食肉加工上の危害の分析を
し、日常の重要な管理ポイントを把握することが肝要です。
そして、私共の得意先である、「焼き肉店」「すき焼き・しゃぶしゃぶ
店」「ステーキハウス」等の飲食店での、調理や飲食提供方法について、
また、消費者が家庭に持ち帰る途上や、料理する際や、食べる時に注
意いただくこともあり、飲食店や消費者に衛生管理情報を共有しても
らうことも必要となります。
本書は、牛の生食の提供も含め、食肉専門店や食肉企業の規模に応じ
て、食肉を衛生的に扱う基本を示し、飲食業界や消費者に協力いただ
く情報を記述してありますので、衛生的な加工場と売り場づくりや、
従業員の衛生指導・教育、さらに、得意先や消費者への情報提供・伝
達に活用頂ければ幸いです。
■食肉の嗜好の広がりと食中毒
○食肉の効用 焼き肉は、子供が好んで食べ、焼き肉女子会が頻繁に行われ、毎日一定量の食肉を摂る高齢者も 増えてきました。 ☆食肉には人間が食品から摂取しなければならばい、必須アミノ酸が豊富である。 ☆牛肉にはカルニチンが豊富で、体の代謝が促進され、肥満を防止する。 ☆牛肉に多く含むセロトニンはうつ病予防に効果がある。 ☆豚肉はビタミン B1 が多く疲れを取る。 ☆鶏肉はビタミン A、コラーゲンが豊富、美肌と免疫力高揚に効果がある . 等、科学者が食肉の効用について、頻繁に情報提供された効果によるものと思われます。又、最 近は食肉事業者に大きな事故が無く、食肉に対する信頼が回復してきたことも大きい要因です。 ○食中毒 しかし、口から入る食品は人の健康・栄養に寄与する一方、一歩間違えば毒物に変身します。 そして、届けられただけでも 食中毒の件数は驚くほど多く あります。 厚生労働省の資料によると、 右のグラフ 1 の通り、食中毒 は 毎 年 約 1,000 件 ~ 1,300 件、20,000 人 ~ 27,000 人 に達する患者数の発生となっ ています。 <食肉関連食中毒事件> 食肉関係では、平成23年4月に焼き肉チェーンが起こした腸管出血性大腸菌(O・111等) による中毒事件や角切りステーキ中毒事件が思い出されますが、何れも肉表面のトリミングの不実 行や加熱不足といった、初歩的なミスによるものであり、少しの衛生管理知識があれば、未然に防 止できたものでした。 これら中毒事件を起こした事業者は、アウトサイダー(会員外)であり、衛生講習会等に参加や、衛 生管理ハンドブックの頒布が出来なかったことが、悔やまれます。 <食中毒事件の患者数など> 厚労省の資料は、あくまで各地 の保健所等に届けられたもの で、実際の発生件数・患者数共 にもっと、多くのものであるこ とが想像できます。 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 1,300 1,125 950 775 600 400 300 200 100 0 27,000 24,000 21,000 18,000 1,500 1,254 25,972 21,616 26,699 20,802 19,355 1,062 1,100 931 976 グラフ1:食中毒発生件数 グラフ3:年次別・食品別食中毒発生件数 グラフ2:食中毒患者数 ●菓子・複合調理品・その他・ 不明なものを除いてグラフに ■野菜及びその加工品 ■穀類及びその加工品 ■乳類及びその加工品 ■卵類及びその加工品 ■肉類及びその加工品 ■魚 介 類 加 工 品 ■魚 介 類 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 1,300 1,125 950 775 600 400 300 200 100 0 27,000 24,000 21,000 18,000 1,500 1,254 25,972 21,616 26,699 20,802 19,355 1,062 1,100 931 976 グラフ1:食中毒発生件数 グラフ3:年次別・食品別食中毒発生件数 グラフ2:食中毒患者数 ●菓子・複合調理品・その他・ 不明なものを除いてグラフに ■野菜及びその加工品 ■穀類及びその加工品 ■乳類及びその加工品 ■卵類及びその加工品 ■肉類及びその加工品 ■魚 介 類 加 工 品 ■魚 介 類 平成 27 年10月 全国食肉生活衛生同業組合連合会 会長肥後辰彦
平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 総 数 1,254 1,062 1100 931 976 細 菌 580 543 419 361 440 サルモネラ属菌 ぶどう球菌 腸炎ビブリオ 腸管出血性大腸菌(VT産生) その他の病原大腸菌 ウェルシュ菌 セレウス菌 カンピロバクター・ジェジュニ/コリ そ の 他 の 細 菌 73 67 40 34 35 33 37 44 29 26 36 9 9 9 6 25 16 13 25 8 24 5 11 3 24 24 26 19 25 15 10 2 8 6 361 336 266 227 306 3 11 11 11 8 ウイルス 403 302 432 351 301 ノロウイルス その他のウイルス 3994 2966 41616 32823 2938 寄生虫 110 122 科学物質 9 12 15 10 10 自然毒 139 69 97 71 79 植物性自然毒 105 47 70 50 48 動物性自然毒 34 22 27 21 31 その他 28 68 107 1 不明 95 68 30 28 23 ○食品別食中毒発生件数 食品別の食中毒の発生件数は下記のグラフ3の通りです。 最も多いのは魚介類とその加工品であり、肉類はその次に多く発生していることが解ります。 ○病因物質別食中毒発生件数 病因物質別の食中毒発生状況をみると、平成2年(1990 年)の前半には魚に起因する腸炎ビブリ オの発生が多く、それに次いでサルモネラによるものが多くありました。 平成8年(1996 年)には腸管出血性大腸菌(O・157)の全国的な発生があり、これも含め病原 大腸菌によるものが多くなり、これは、食肉に起因することから、その源である食肉のと畜場・食 肉処理場の衛生対策(と畜場法の改正など)が強化されました。 平成 10 年(1998 年)に、ノロウイルスに起因するものが多く発生し、それ以降もウイルスを病 原物質とした食中毒の大半であり、食中毒全体としても上位を占めることになります。 ノロウイルスは、牡蠣(カキ)等の2枚貝によるものですが、これに罹った人のおう吐物や咳、そ して糞便等にウイルスを排出し、これに接触した場合の伝染力が強いことから、食肉の加工段階で も、これからの2次汚染防止に努めることが必要とされます。 たとえば、ドアのノブその他、手に触れるものを殺菌・消毒しておくことが大切です。 近年、細菌性のものでは圧倒的にカンピロバクターに起因するものが多く、食肉では、食鳥肉(と くに鶏さしが多い)や牛豚の内臓によるものが多くあります。 ●衛生管理の基本3原則は「持ち込まない」「発生させない」「排除する」とされています。 ●食中毒予防の3原則は、細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」とされています。
■ 加工室に細菌を持ち込まない(つけない)
◇清潔な作業服を着て、良く洗浄殺菌した作業靴(長靴・運動靴)を履いて入室する。 ◇手を洗浄殺菌して入室する。 ◇運搬具(台車等)を洗浄殺菌しておく。 ◇害虫(ゴキブリ、ハエ等)、ネズミを進入させない。■ 加工室から細菌を発生させない(ふやさない)
◇毛髪がはみ出ないよう帽子をかぶり、マスク、ビニール手袋を着用する。 ◇加工室の床・壁・作業台と機械・器具は洗浄殺菌して使用する。 ◇加工室の温度を 18℃以下(理想は 15℃)に温度管理する。 ◇1つの肉塊を加工する時間は 20 分以内とし、速やかに冷蔵保管する。■ 加工室内から異物・雑菌を排除する
◇加工に必要な肉塊、器具以外は置かない。 ◇1つの肉塊の作業毎に、ナイフ(包丁)を 83℃以上の熱湯で洗浄消毒する。 ◇1つの肉塊の作業毎に、作業台・まな板の洗浄消毒を行う。 (肉汁・肉片の除去後、洗浄し、殺菌する。) ◇包装資材(肉塊のパック資材)、段ボール、カット後のくず肉はかたづける。 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 1,300 1,125 950 775 600 400 300 200 100 0 27,000 24,000 21,000 18,000 1,500 1,254 25,972 21,616 26,699 20,802 19,355 1,062 1,100 931 976 グラフ1:食中毒発生件数 グラフ3:年次別・食品別食中毒発生件数 グラフ2:食中毒患者数 ●菓子・複合調理品・その他・ 不明なものを除いてグラフに ■野菜及びその加工品 ■穀類及びその加工品 ■乳類及びその加工品 ■卵類及びその加工品 ■肉類及びその加工品 ■魚 介 類 加 工 品 ■魚 介 類衛生管理の基本
1.
食品衛生の3原則
▲整理された、衛生的な加工作業室の例 表 1:年次別・病因物質別食中毒発生件数3
1
2
■ この章では、生食用食肉加工に対応した、衛生的な加工作業マニュアルを例示していますが、 生食用食肉を加工・販売しない場合でも、衛生的な加工のため、これを参考にして、独自の 加工作業マニュアルを作成することをお薦めします。 <加工作業マニュアル作成の内容・目的> ① 作業に携わる作業員に徹底するために使用する。 ② 解りやすい言葉(平易な言葉)で、簡潔に表現する。 ③ 加工現場にあわせて作る。 *加工場の広さ、設備などにあわせて変える。 *現場作業員の意見を取り入れる。 *エリア毎に、衛生のレベルを変える。 ■ 衛生的な加工作業の基本は5S(下記、整理=ローマ字の SEIRI などの頭文字) 加工作業を衛生的に行う基本は5S(エス)と言われています。 マニュアルにもこれを盛り込み ます。 <衛生的加工作業の5S> ① 整理 加工作業台の上には、作業中の器具、肉塊のみにし、それ以外のものは 置かない。 ② 整頓 原料の肉塊、加工品、用具等は決められた場所に置く。 ③ 清掃 一つの作業後には清掃をおこなう。 機械・用具などをダスターなどでよく拭く。 ゴミ、段ボールなどは、決められた場所に廃棄する。 ④ 清潔 施設、設備、器具、作業着、肉塊などをきれいな状態に維持・管理し 続けること。 ⑤ 習慣 決められたことを、継続的に行う。衛生的な加工作業の
マニュアルの作成
○衛生責任の所在を明らかにする・・・食品衛生責任者を設置する。 ○講習会の受講 ☆生食加工を行う場合は、都道府県の市区町村で開催される、「生食用食肉を取り扱う者として適 切とする認められる者を認定する講習会」に参加し、認定を受けることがきめられています。 ☆生食以外の衛生講習会にも、積極的に参加する。 ☆小規模経営(夫婦2人で従事するなど)の場合も、夫婦のいずれかが 食品衛生責任者として、衛生管理に責任を持ちます。 ◇加工の衛生責任者は、従業員の健康状況をチェックし適切に対処するようにします。 ①加工従事者の定期的な健康診断の受診。 ②定期的な検便検査。 ③発熱、咳、下痢(腹痛)の症状を示す者を、加工作業に従事させない。 ④手指に傷や化膿のある者は、加工作業に従事させない。 ■清潔な加工用作業着の着用 ◇作業着は毎日洗濯した、清潔なものを着ます。 ◇以下の時、着衣を着替えます。 ①加工作業開始時 ②トイレに行く時 ③食事に行く時 ④加工作業を替わる時 ◇服装・身だしなみ。2.
食品衛生責任者の設置
加工従事者の健康管理
加工従事者の服装・身だしなみ
☆生食の場合の加工従事者 ⅰ講習を受け、認定された者 ⅱ講習を受け認定された者が直接指導・監督を受けた者 (注意)認定生食用食肉取扱者が不在で、他の従業員(アルバイト等を含む)が加工することは 出来ません。靴
長靴、運動靴は白色できれいに、 長靴からズボンを はみ出さない。頭 髪
帽子または紙キャップを着用 (耳が隠れるタイプが良い)頭髪は短く、 えりあしは短く。 頭髪は、毎日数十本抜ける。 食肉への異物混入が多くクレームの 対象となっている。着 衣
マスクは常時着用(鼻を出さない)。 作業着・エプロンは毎日洗浄して、 きれいなもの。顔
男 ヒゲを剃る、もみ上げは短く。 女 化粧はうすく (派手なものは避ける)手・爪
爪は短く切る。指輪、時計、 アクセサリーは外す。マニキュアはしない。 ビニール手袋の装着。 布製(軍手等)のものは、 使用しない。原料納品 ドッグシェルター 玄 関 生 食 用 食 肉 以 外 の 加 工 施 設 事務所 入り口 事務所 通 路 入り口 エアーシャワー 手洗い 資材置場 出 口 原料冷蔵庫 加熱設備
生食用食肉加工施設
作業台 作業台 冷却設備 洗浄設備 器具保管 製品冷蔵庫 包装室 原材料搬入路 商品 出荷 搬入 入室 退室 パック 作業台 まな板 まな板 ❸ 生食用 洗浄設備 2 層シンク ❺ 生食用 冷蔵庫 ❷ 生食用加工作業台 ❶ 生食加工エリア(クリーン・エリアゾーン)を緑色 ❺ 生食以外用 冷蔵庫 ❷ 生食以外の加工作業台 ❶ 生食以外の加工エリア(加熱調理用など)を灰色 ❹ 加熱設備 ❹ 加熱設備 ❸ 生食以外用 洗浄設備 2 層シンク 生食用 まな板 生食用 まな板 生食以外用 まな板 生食以外用 まな板 生食用 まな板5
4
■食中毒予防の 3 要素である、細菌を持ち込まない ( つけない)、という全ての衛生管理の基 本です。 手指の表面にはあらゆる雑菌によって汚染されています。洗剤を泡立て、5 回程度よくこすり、流 水(出来れば温水)で洗い流します・・・・これが基本です。 ■いつ手洗いをするか ①作業の開始前(その都度) ②トイレに行ったあと。 ③異なる肉塊、食材を取り扱う前。 ④異物に触ったり、肉汁などで汚れた時。 ■手洗いのしかた 食肉を加工し販売する場合、食品衛生法第51条で定める34業種に対し、都道府県が条例によって 施設の基準を定めることになっています。 ■営業許可 ●地元の保健所に届け出て、都道府県知事の「営業許可」を取得します。 ●生食用食肉を加工する場合は、専用の設備を備えることのほか、新たな基準が設けられています (厚労省:生食の衛生基準) ■生食を加工する施設 ○生肉を加工する施設は、生食用食肉の加工場を、他の部屋と隔壁などで分離した設備とすること を理想とします。 ●しかし、費用、スペースの関 係で無理な場合が多くあり、 その場合下記のように、1つ の加工作業室をエリアで区分 して行うことになります。 ❶生食加工エリアと、生食以外の加工 エリアを区分して使用する。 出来れば、床を色別する。 ❷加工作業台は、「生食用」と「生食以 外用」の加工作業台2台を備える。 ❸洗浄設備 洗浄用2層シンクと、給湯・給水設 備をそれぞれ2台備え、1台を「生 食用」、もう1台を「生食以外用」で 使用する。 ❹加熱(殺菌)設備 加熱設備は、「生食用」と「生食以外用」 の設備を2台備える。 ❺製品保管冷蔵庫 生食商品を保管する冷蔵庫は、「生食 用」と「生食以外用」合計2台を備 える。手洗いの徹底
加工施設の設置・区分
温水で手の汚れを落とす。 洗剤を手につける。 よく泡立て、指の間、手首の肘の付け根まで洗剤でこする。 爪ブラシで爪の間をこする。 温水で、洗剤を洗い落とす。 ペーパータオルで拭く(又は温風で乾かす) 消毒用アルコール(エタノール70%)で殺菌する。 手袋(ゴムまたはビニール)を着用する。 軍手は着用しない・・・細菌の温床となる。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ○生食用加工施設の区分方法その1・・ 加工室は1室、設備は2設備 すすぎ 洗剤 手もみ ブラッシング 温水洗い 乾燥 殺菌 手袋❶ 生食以外の加工作業台 ❶ 生食用加工作業台
生食以外用
まな板
レジ
販
売
シ
ョ
ー
ケ
ー
ス
出
入
り
口
❷
生食
以外用
洗浄設備
❷
生食用
洗浄
設備
❹
生食用冷蔵庫
❹
生食以外用冷蔵庫
❸
加熱設備
❸
加熱設備
仕切り版
生食用
まな板
パック
作業台
6
○生食用加工施設の区分方法その2・・・加工室は1室、設備・器具を区分しておこなう ○加工施設の区分方法その3 ○加工作業などの区分の原則とその工夫 ❶加工作業台は、1 台とし、「生食用」と「生食以外用」の加工作業を、仕切り板、まな板等 で区分する。 ❷洗浄設備 2層シンク1台の設備で1層を「生食用」1層を「生食以外用」熱湯給湯設備とする。 ❸製品保管冷蔵庫 生食商品を保管する冷蔵庫は1機とし、冷蔵庫内を区分して使用する。 「生食用」と「生食以外用」の保管を保管容器等で区分保管する 別途に加工場を増設するものから、1 台の設備を区分して使用するに至るまで様々な 加工施設を区分するパターンがある。 各事業者の加工施設のスペースなどを考慮して、選択することになります。 原材料となる生肉(枝肉・部分肉・ブロック肉)の表面、加工器具、加工作業者の手 指は、細菌汚染されていることを前提にして、生食用の生肉が生食用以外の生肉など に付着している細菌に汚染されない工夫をしましょう。 ❶生食用の加熱(殺菌)加工作業と、それ以外の加工作業の交差を避ける。 ア . 生食加工エリアとそれ以外の加工エリアを設ける。 イ . 生食用の加工と、それ以外の加工には、別の作業員が行う。 *作業服の色分け、作業靴の使い分けを行う。 ウ . 生食用の加工と、それ以外の加工を行う時間帯を変える。 * 1 日の加工作業のスケジュールの第 1 番目に、生食の加工を行う。 ❷生食用の原材料となる生肉や、加熱殺菌済みの肉塊、その他の生肉等との接触を避 ける。 ア . 加熱殺菌済みの肉塊は、蓋付きの容器に入れ収納する。 イ . 生肉用原材料とそれ以外の原材料を分けて冷蔵保管する。 ウ . 原材料は、冷蔵庫の下段に、加工(殺菌)した肉塊は冷蔵庫の上段に保管する。 (作業台を仕切る工夫) 作業室が狭く、十分な作業台のスペースを設け られない場合。写真のように、ステンレスの仕 切り板によって作業台を分割することも一つの 工夫です。 (1)照明 *作業台(85㎝付近)の明るさは、100ルクス以上とし、肉質の見分けが出来る自然光の 照明とします。 (2)室温と換気 *作業室内の温度を18℃(理想は15℃)湿度は65%となるような空調設備を備えます。 (法律で、食肉の保存温度が10℃以下と決められています) (3)防虫・防鼠(ネズミ) *ネズミ、虫等の加工室への進入を防ぐため、配管の隙間のないようにします。 *排水口には、トラップを設けます。 (4)洗浄・殺菌設備 *器具・容器などを洗浄するための給湯(83℃以上の温度の給湯可能なもの)2層シンクを 設置します。 (5)材質など *床は排水・清掃がし易い構造で、不浸透性材料の素材を使います。 *作業台はステンレス製、まな板はプラスチック製のものを使用します。加工施設の構造・設備
(1)器具・機械の洗浄消毒 ●加工作業台・まな板・その他の器具、スライサー・チョッパー等の機械の洗浄消毒はすべて、 下記の手順で行います。 (1)仕入原材料の管理 ❶仕入れた部分肉や商品を床に直置きしない(パレット・台車等に置く)。 ❷仕入れた部分肉や商品は、速やかに冷蔵庫に収納する。ダンボールから取り出して収納する ことが原則(冷却の効果のため)。 ❸先入れ・先出しの徹底(古い物から使用・販売する) (2)冷蔵保管区分 ❶最上段は商品、原材料は最下段に保管する。 ❷食肉の種類毎(牛・豚・鶏)に区分して保管する。 ❸生食用と生食以外の物を区分して保管する。 <冷蔵庫が2台の場合の保管例> 1台は主に原材料用・・・牛・豚・鶏の原材料は、それぞれ別の棚に保管する。 2台目は、主に商品、仕掛品の冷蔵庫・・・上段より、生食用商品、仕掛品、生食用原材料の 順で保管する。 (2)洗浄・消毒の頻度・時期 ●器具・機械の洗浄消毒は、下記の頻度を目安として行います (1)器具等の区分 ❶生食用とそれ以外の区分 器具備品は、生食用のものと、それ以外の食肉の加工用とは、 別のものを使用する。 ❷牛・豚・鶏の区分 生肉以外の加工にあっても、「牛肉」「豚肉」「鶏肉」それぞ れ別の器具等を使用する。 ❸区分する器具等 ⅰ 細切器具(包丁等) ⅱ まな板(合成樹脂など不浸透性のもの) ⅲ 保管・陳列用容器(トレーなど) ⅳ フキン (2)器具の洗浄・消毒など *使用した器具は、1 肉塊の作業終了の都度、 洗 浄 し 熱 湯 (83℃以上)で殺菌消毒する。 (この場合の1肉塊とは、1つの部分肉をいう。 1 つの部 分肉からその場で連続して出来た、小分割部分肉や柵につい ては、一連の加工作業終了の都度、器具等の殺菌洗浄を行う) *作業台や、使用機械等についても、1肉塊の作業終了の都度、 別掲の殺菌液などで、洗浄・消毒をする。 *殺菌消毒した包丁などは、生食用専用ケースに収納する。
器具の区分使用
施設・器具等の衛生管理
商品・原材料の衛生管理
❶
目
に
見
え
る
肉
片
等
を
除
去
❷
温
水
で
洗
浄
す
る
(
す
す
ぐ
)
❸
洗
剤
洗
浄
(
ブ
ラ
ッ
シ
ン
グ
)
❹
薬
剤
殺
菌
❺
温
水
洗
浄
❻
拭
き
取
り
・
乾
燥
対象となる場所・機械・器具 頻度・回数・時期 備 考 包丁・まな板・ビニール手袋・ フキン等 1つの肉塊の加工の終了都度(肉 塊とは、部分肉のことであり、1 つの部分肉から作られた複数の柵 を連続して加工する場合は、一連 の加工終了の都度行う) 生食用食肉の場合 同一商品加工の都度 生食用食肉以外の場合 スライサー・チョッパー・ フライヤー・オーブン 同一商品加工の都度 アルコールでの拭き取り 毎日 1 回作業終了後 機械を分解し洗浄 床・作業台・ショーケース 1 日の加工作業・終了後 1 日の販売終了後(ショーケース) 排水ます・グリーストラップ 冷蔵庫・冷凍庫・計量器・ 台車等 毎週 1 回作業終了後 照明器具・壁面・天井 毎月 1 回作業・販売終了後 原材料保管冷蔵庫[ 冷蔵庫が 2 台の場合の保管 ]商品・仕掛品保管冷蔵庫 [ 冷蔵庫が 1 台の場合の保管 ] 鶏 原材料 鶏 原材料 豚 原材料 豚 原材料 牛 原材料 牛 原材料 生食用以外 商品 牛 生食用 商品 生食用以外の 仕掛品 牛 生食用 仕掛品 生食用以外の 仕掛品 牛 生食用 原材料 生食用以外の 商品 牛 生食用 商品 生食用以外の 仕掛品 牛 生食用 仕掛品 生食用以外の 原材料 牛 生食用 原材料9
8
7
■牛肉の形態 使用する牛肉の原材料の形態は、下記①、②、③の何れとする。 枝肉から切り出された肉塊(部分肉)を使用するもの。 枝肉から切り出され、シュリンクパックされた、部分肉・ブロック肉を使用するもの。 ■加工(加熱殺菌)の方法 加熱殺菌の方法は、下記の3つの方法の何れかで 行うこととする。 ①寸胴などで水を加熱し、沸騰水に肉塊を漬けて 行う方法。 本テキストでは、小規模事業者が、容易に出来 て失敗しない、この方法を推奨し、解説する。 ◆機器の整備が少ない・・・寸胴さえあれば良い。 ◆殺菌温度管理が容易・・沸騰している様子は、 見れば容易にわかる。 ②コンべクションオーブンなどで、直火で行う方法。 ③フライヤーなどで、油を加熱し、その油の中に肉塊を漬けて行う方法。 ②③の方法で加熱殺菌加工する場合は、沸騰水と同様に、温度測定をして記録を取り、地元の 保健所に届け出て、認可をもらうようにする。 ■厚労省が示した基準に適合した、加熱殺菌時間と温度 ①ユッケの商品作りのための加熱殺菌方法 ☆5kgの真空包装した肉塊(うちもも)を沸騰水で、18 分加熱殺菌する。 ②タタキの商品作りのための加熱殺菌方法 ☆5kgの肉塊(うちもも)から、600gの柵(5本)を取り、真空包装して 沸騰水で、11 分加熱殺菌する。 厚生労働省の加工殺菌基準では、「肉塊の表面から1㎝以上の部分までを60℃で2分間以上、 加熱する」 とされている。5kgの真空包装した肉塊(うちもも)を沸騰水で16分加熱すると、 表面から1㎝の所が60℃に達する。 加熱を止めて2分間してから、肉塊を取り出すと 「表面から1㎝以上の部分で、60℃2分間以上殺菌している」こととなり、 厚生労働省の基準と同等以上の殺菌方法であることになる。(タタキの柵も同じ) ■表面から1㎝の温度測定 殺菌温度と殺菌時間を守って行えば、厚労省の基準は満たされるが、 少しでも条件が違う場合は、温度測定、細菌検査等を定期的に行うことが肝要。 ■細菌検査と記録 ◇定期的な細菌検査 ●生食用食肉は、腸内細菌科菌群が陰性で無ければならない(食品衛生法) 年に1回は、加熱殺菌した肉塊の細菌検査(25gの牛肉、25検体を検査)をして、腸内細 菌科菌群が陰性であることを確認する。 ◇記録・保存 ●検査記録は1年間保存する。 ●生食用食肉の加工(加熱殺菌)を行った場合も、その都度加工記録をする。 *加工記録用紙は下記(23 ページ)を参照のこと。 ■牛肉の態様等 ①10℃以下で冷蔵されたもの(冷凍態様のものは使用しない) ②と畜された日から6日以内のもの(熟成が進んでいないもの) テキストで殺菌消毒実験した牛肉…、ユッケ用は、と畜後6日目のもの、タタキ用は、と畜後 10日目のもの。 生食の営業許可を取る場合には、と畜後何日後のものであるかを示し、所管の保健所に、腸内 細菌科群がフリーである細菌検査の結果表を提出して行う。 ③テンダライズ処理、タンブリング処理(調味料に浸潤させる処理)など腸管出血性大腸菌などの 病源微生物が、肉塊内部に浸潤するような処理をしたものは使用しない。 ■肉の表面温度、加熱殺菌温度の測定 ①加熱殺菌に使用する温湯、オーブンの 温度、フライヤーの温度を正確に測定 するため、作業の前後には、センサー 温度計等により計測する。 ②肉塊の表面の温度が10℃を超えるこ との無いように、加工作業場の室温を 15℃~18℃に保持する。
牛・生食(ユッケ・タタキ)
加工基準
3.
1
使用する牛肉の原材料
①部分肉(うちもも) ② 5kg に分割・整形したもの コンベクションオーブン ③タタキ用・柵(さく)600gの柵状にしたもの6本 肉塊の表面温度の測定2
加工の手順(沸騰水で加熱殺菌)
(第1)原材料の準備(整形・加工)
(第2)真空包装
(第 3)加熱殺菌加工
本書では、約 10kgの「うちもも」を2分割 して、使用したが、他の部位、例えば「しん たま」でもよいし、「かた」の一部である」「と うがらし(チャックテンダー)」でもよい。 ①表面脂肪等を除去・整形(グリヌキに整形) した部分肉を準備する。 ②うちもも(約 10 kg)を、半分(約5kg) に分割する。 ③肉塊をシュリンクパックする。 あらかじめ、5kgに分割しシュリンク パックした部分肉を使用しても良い。 ④ユッケ用の肉塊は、真空包装した後、表面 温度が 10℃になるよう冷蔵保管しておく。 ①真空包装した肉塊を、網かごに入れ、沸騰 した寸胴に浸す。 *タイマーを準備しておき計時する。 ② 16 分後ガスを止める ③その後2分間(沸騰水に入れてから18 分) 経過後、網かごごと肉塊を取り出す。 ①お湯を沸かす。 直径45 ㎝以上の寸胴に水道水を満たす。 *ガス台で加熱する。 *沸騰するまで加熱しておく(95℃以上) ☆うちもも 5kg(ユッケ用)の場合は 40 ㍑以上の湯量。 ☆ 600 gの柵 5 本(タタキ用)の場合は の場合は 20㍑以上の湯量。 ①「うちももかぶり」と「うちもも本体」 に分離しそれぞれ8×8×17 ㎝ (約 600g)の柵(ブロック)を作る。 ③タタキ用柵は、1柵ごとに真空包装する。 ④タタキ用の柵は、真空包装した後、表面温 度が 10 ℃になるよう冷蔵保管しておく。 ①真空包装した柵を、網かごに入れ、沸騰し た寸胴に浸す。 *タイマーを準備しておき計時する。 ② 11 分経過したらトングで柵を取りだす (網かごごと柵を取り出してもよい)ユッケ用の肉塊(うちもも5kg)
ユッケ用部分肉の真空包装
ユッケ用肉塊(部分肉)の殺菌
タタキ用柵作り
タタキ用柵の真空包装
タタキ用柵(ブロック)の殺菌
うちもも1本の半分(5k)の整形後の写真 写真は600gの柵を5本作った、約 3 kgを示す。 肉塊毎に、洗浄・消毒 2つ以上の肉塊(うちもも)の分割・整形を行う場合は、包丁・まな板などの 器具の洗浄・消毒、手指の洗浄・消毒を、1つの肉塊(うちもも)の加工毎に行う。< ユッケの個食パック写真> 40 ~ 60 グラムの個食用に スライスパックし、冷凍保管・ 流通したもの ■加熱殺菌したままの販売 シュリンクパック等をした状態で、加熱殺菌した肉塊(部分肉)や柵(ブロック)を、パックを解かずに、 そのまま販売(外食産業や小売店等)する場合があります。 加熱・殺菌工程をを終了した牛肉は、真空包装のまま、生食用としてブロック販売すること以外に、 肉塊(部分肉)を細切したり、スライスしたりして、小分けしたパック商品を販売することが有り ます… <ユッケ> ○個食パック商品の販売 外食産業で生食用牛肉を提供する場合も、区分された衛生的な調理場で、 上記の殺菌加工・調理を行い定期的な細菌検査等を行うことになっています。 外食産業へは個食用としてパックしたものを販売し、外食店では調理しないでそのままお客様に 提供し、お客様が開封してお好みの調味をして召し上がる「生食商品」が見受けられます。 ユッケ用肉塊(うちもも半分) 加工(殺菌)冷蔵保管後のもの 加工(殺菌)冷蔵保管後のものタタキ用柵(ブロック)
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4
部分肉・柵(ブロック)販売
小分け・細切・販売
○外食産業・小売店ではこれらを仕入れ、調理し、提供・販売します。 (ここからは生食衛生加工基準にある、細切・調理過程になります)➡
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(ユッケの小分け細切) (タタキの小分けスライス) *︎熱変化した表面の肉を整形します。 *︎細切りにして、提供します。 *︎柵のまま、塩・胡椒し、表面にコゲメを付けます。 *︎柵をスライスしてパックします。(第 5)温度計測・保管
①容器に 20㍑の冷水と氷5kgを注入したもの を準備する。 ②沸騰水から取り出した肉塊(又は柵)を、冷却 水に浸し急速冷却を行う。 ③包装パックの破損がないか確認する。 …破損していた場合は、生食用のラインから 外す。 ④ 10 分以上冷却水に入れた後、肉塊(又は柵) を取り出し、冷蔵庫内に保管する。 ①温度計測 殺菌加工され、冷却された肉塊(又は柵)の表 面温度が 10℃以下になっているか確認する。 ②冷蔵保管 洗浄殺菌された容器に入れ、4℃以下で保存す る。冷蔵保管は、冷蔵庫の最上段で行う。 ③冷凍保管する場合は- 15℃以下で保存する。 湯量と牛肉重量の関係 沸騰水の湯量は、牛肉 5 kgにつき、8 倍の 40㍑で実験したものである。湯量がこの比率 より、多いもので加工することが肝要です。フライヤー(油浴)の場合も、油と肉塊の比 率も同様とします。 作業終了後、機械、器具の洗浄殺菌消毒を行う。<加熱殺菌加工のポイント>
肉の温度 原 料 牛 肉・ 肉 塊 の 温 度 を 限 り な く、 10℃に近い 10℃以下にしておくこと が肝要です。 原料肉を保管する温度は、4℃以下にし ておくことが理想なので、加熱殺菌す る1 日前に 10℃の冷蔵庫に移し、温 度を上げておきます。 表面温度をセンサーで計測する(第 4)急速冷却
< タタキ> ○定量スライスパック商品 タタキを商品として販売する場合、表面を直火であぶり、焦げ目をつけたり、塩・胡椒などで味付 けし、スライスして50~100g ( 5枚~10枚)の定量パック商品にします。 タタキのために行う、表面の焦げ目(熱処理)や、塩胡椒などの味付け、スライスパックの 調理課程については、次に詳しく解説します。 ☆注意すること 加熱殺菌後の部分肉などを小分けして販売する場合は、2次汚染の恐れがあります。 ①細切器具(ナイフなど)、まな板、作業台を改めて 83 ℃以上の熱湯で洗浄殺菌し他のものに接触 しないように、加工を行います。 ②落下細菌などが少ないよう、加工室内の空気清浄につとめます。 ③賞味期限を別途定めるとともに、定期的な細菌検査を実施します。