• 検索結果がありません。

Ⅰ 分娩事故の発生状況スライド2は 先ほど齊藤さんの資料にも出ていました 胎子死は 62% 新生子死というのが 12% です 新生子死というのは 生まれたのは確認したけれども どういう原因か分からないが その日のうちに死んでしまったものです 胎子死についてです 子牛共済が胎齢 240 日から入ること

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Ⅰ 分娩事故の発生状況スライド2は 先ほど齊藤さんの資料にも出ていました 胎子死は 62% 新生子死というのが 12% です 新生子死というのは 生まれたのは確認したけれども どういう原因か分からないが その日のうちに死んでしまったものです 胎子死についてです 子牛共済が胎齢 240 日から入ること"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

6

乳牛と新生子牛のための分娩管理

帯広畜産大学 石井 三都夫

皆さん、こんにちは。今日はよろしくお願いし ます。この講演のお話を頂いて、とても楽しみに してきました。それは、これまでも時々根室へ来 る機会はありましたが、これまでは現場の獣医さ ん方と話をする機会が多くて、初めて農家の方 々やそれを取り巻く技術者の方々と話ができる からです。今日は、午前と午後で、尐し長い時 間を取って頂きましたので、ゆっくりお産のお話 をさせて頂きたいと思います、よろしくお願いし ます。 今日は「乳牛と新生子牛のための分娩管理」 という題でお話をさせていただきます。牛の分 娩にあたって、普段、どのようなことを意識して いるかというと、分娩する乳牛と生まれてくる子 牛に対してどのような影響があるのかという所で す。様々な事情や人の都合、忙しさの中でお産 管理をする事が子牛に及ぼす影響や、それに 加えて親牛に及ぼす影響も大きいところがある からです。 今日の話の進め方です。まず先程、齊藤さ んの方から非常に詳しく説明があった、分娩事 故の発生状況について簡単に説明します。後 は難産の原因とその対策について、分娩の経 過と分娩の異常について、助産について、さら には、その助産や分娩が子牛に及ぼす影響に ついて、初乳の給与法についても若干触れた いと思います。お産の中には胎盤の排出も含ま れるので、今日は胎盤停滞についても尐しお話 ししていきたいと思います。それと、実際の分娩 管理対策を行った中で、効果が上がった事例 がありますので紹介したいと思っています。 スライド 1 ※石井先生の意向により、講演内容の一部を削除しています。

(2)

7

Ⅰ 分娩事故の発生状況

スライド2は、先ほど齊藤さんの資料にも出て いました。胎子死は 62%、新生子死というのが 12%です。新生子死というのは、生まれたのは 確認したけれども、どういう原因か分からないが、 その日のうちに死んでしまったものです。 胎子死についてです。子牛共済が胎齢 240 日から入ることができるので、共済加入後分娩 までに胎子が死んでしまったと言うのがこの胎 子死です。胎子死の多くは生まれてきたけども 死んでいた、あるいは、生まれた時に生きてい たかどうか分からないのも全部胎子死としてカウ ントされますが、分娩で死亡している牛が殆ど です。新生子死と胎子死を合わせた約 75%位 (3/4)が分娩事故によるものです。だから、子牛 の事故を減らすためには、分娩管理を見直さな い限り、減らないと言うことです。 スライド3は北海道全体の分娩事故率です。 全道平均は 8.8%ですが、組合毎、地域ごとに 事故率が異なっています。高いところでは 12%、 低いところでも 6%程度です。地域でこれだけ の差があるということは、農家毎では、さらに大 きな差があります。多い農家では、半数近く死 産があると聞いたことがあるし、全く無い農家も あります。 分娩事故、分娩の管理を考える時に、自分 の農場の事故率を考えて貰いたいと思います。 分娩事故率が 5%を越える農場については、分 娩の管理に尐し問題があるので、分娩管理を 見直したら良いのではないかと思います。では、 「分娩の事故をどうしたら減らすことが出来るの だろうか?」ということを考えていきたいと思いま す。 スライド 2 スライド 3 スライド 4

(3)

8

Ⅱ 難産の原因と対策について

難産は何故起こるのか?単純に考えると産 道が狭い(狭小)。胎子が大きい。これらは物理 的な問題ですから、なかなか減らすことが出来 ないかもしれません。後は、胎子の失位です。 胎子失位というのは、脚が一本遅れて出てきた り、首が折れていたり、逆さまに出たりするもの です。これも良くあることです。こういったことも、 実際にはコントロールする事が可能なのかな? と考えられます。 子宮捻転も難産の一つです。子宮捻転につ いても、最近徐々にその発生が多くなっていま す。子宮捻転は農家の方であれば必ず経験さ れていると思います。しかし、子宮捻転の捻れ の原因も色々あるだろうし、それを予防するの は難しいので、難産は本当に予防できるのかな と思われるかと思います。 ■難産の人為的発生要因 一方で、難産がどうして増えているのだろう? 牛は変わらないのに、ここ15年位の間に死産 率は上がってきている訳です。だから、お産に 関わることで「人為的な発生要因というものは無 いだろうか?」という事を考えてみたいと思いま す。 <乳牛の改良> 先ず、乳牛の改良が進んでいて、大型化、高 泌乳化していることがあります。大型化は単純 に体が大きくなれば、産道を通過する際に問題 が生じる可能性があると思います。次に、高泌 乳化です。乳牛は高泌乳化によって、今までと は考えられない量の牛乳が出るので、それに対 して沢山飼料を食べなくてはいけないが、十分 に食べることが出来ないため、体がどんどん低 エネルギーになり、色々な問題が生じてくるとい うことがあると思います。 スライド6 <多頭化> 多頭化することで、実際に飼養スペースが制 限されたりします。後は、農場を管理する人達 の能力などが関連します。同じ2人であっても、 昔は 40、50 頭搾乳していたものが、今は 100 頭 単位で搾乳しなくてはならない状況になってい ます。このような状況の中で、一頭の牛にかける 時間、管理する時間が尐なくなってきているの が現状だと思います。 <施設の増設> 多頭化に向けて新しい施設を建てたり、増設 していくことがよく行われています。よく見られる のは、古い牛舎をそのまま使い、育成牛を置い たり、乾乳牛を置いたり、分娩舎として使われた りします。現実に、古い牛舎の施設改善がなさ れないで使われると、そこで問題が生じてくる可 能性があります。 <通年の舎飼い> 根釧では牛が放牧されている姿が見られま すけれど、十勝の帯広近郊では、牛を外で見る ことは非常に尐なくなっています。フリーストー ルとはいえ、牛舎の中で飼養されています。そ んな通年舎飼いの農場では、どうしても運動不 足になり、牛舎内で分娩を行うことが多いと思い ます。 スライド 5 スライド 6

(4)

9

<多忙・難産への不安> それと、牛のお産について、ついつい手をか けてしまうことも大きいかと思います。実際に牛 が足を出している状況で、ついつい分娩に手を 出してしまい、それが、早すぎる分娩介助に繋 がっているようなことがあるのかと思います。 <泌乳量の増加> 泌乳量の増加と言うことでは低カルシウム血 症とか、それに伴う陣痛の微弱であるとかが生 じて来ている可能性もあります。あとは、起立不 能症もあります。 乳 牛 は 、 現 在 初 産 牛 の 乳 量 が 8,000kg 、 9,000kg、多い牛では1万 kg を出すような時代 になっています。このような状況で、出産をして 泌乳のピークになるまでに体の筋肉の 25%が 消費され、牛乳に置き換わっていきます。そうい うことでボディコンディションは段々下がっていく 訳です。脂肪を燃やしているだけではなく、筋 肉も燃やして、それを糖新生してエネルギー源 として利用していくということが行われています。 分娩や妊娠を繰り返す中で、実際にはボディコ ンディションが高くなったり、低くなったりを繰り 返しますが、コンディション的に戻っているよう に見えますけど、実際にはすべての筋肉が戻 ったわけではなく、弱った筋肉はそのままで、元 に戻っているように見えるのは脂肪に置き換わ った弱い筋肉と考えることができます。 今度は妊娠期間中の胎子への栄養供給で す。胎子への栄養供給では、体脂肪を燃やし て脂肪酸に変えられたものは、分子サイズ的に 胎盤を通過しないと言われています。胎盤を通 過できるのは、筋肉由来のアミノ酸であり、アミノ 酸は胎子の栄養供給の 50%を占めると言われ ています。 胎子が大きくなっていく段階でも、妊娠牛は 筋肉を消費しなくてはいけない状況になります。 2・3年以上分娩や妊娠を繰り返し、やせ細って 筋肉が脂肪に置き換わった様な弱々しい牛た ちが、また妊娠をして更に弱ってということが多 いと思います。そんな状況でお産をすると、お 産のために子宮をギュッと縮める必要があるの に縮められず、筋肉が弱々しく、立ち上がるの もようやく立ち上がるような状況になります。実 際にはそんな牛たちが分娩をしているのが現状 じゃないかと思っています。

難産の原因 最初に産道の狭小であるとか、胎子の過大 であると言う話をしましたが、これらは助産と関 係があります。産道がまだ十分に緩んでいない うちに助産すると、産道が狭いと感じるかもしれ ません。また、胎子が大きいと感じるかもしれま せん。早すぎる助産というのが先ず1つあると言 うことです。 もう1つ気を付けなければならないのが、早 すぎる交配です。牛のサイズが十分出来ていな いのに種付けをしてしまって、妊娠させてしまう ことです。初産分娩時に親牛の牛群サイズより も小さい体格でお産をさせているところがあると すると、そこの分娩は非常に困難になります。 後は、胎子の失位であるとか子宮捻転につい てです。子宮捻転は舎飼いの牛に多く発生す ると言われています。外で放牧していて、十分 に運動している牛達には、子宮捻転がほとんど ありません。子宮捻転について尐し説明します。 牛の子宮は皆さんご存じのように、双角子宮と 言って2つありますよね。妊娠するのは胎子1つ だとすると、右が妊娠、左がカラとなり、必ず子 宮は傾きます。子宮捻転の牛から産まれてくる 子牛は、体重が重めの牛が多いです。子宮捻 転する牛は、胎子が大きいとやはり子宮の傾き 自体も大きくなります。それでいて、子宮捻転の 8割は左側です。牛を後ろから見て左回りです。 スライド 7

(5)

10

左側には何があるかというと、大きい容積を持っ た第1胃があります。左側を下に子宮が傾いて いても、第1胃が邪魔をして傾いたまま戻ってこ ない。そういった状況が考えられます。そのまま お産が進んでいって、いよいよ破水をする時期 になった時に捻れがあって、子宮捻転が初めて 分かると言うわけです。子宮捻転の原因は、スリ ップなどによる突然の事故では無くて、寝起き をするときに勢いを付けて寝起きをしたり、例え ば、床が硬く、滑りやすいので、寝起きしにくい 状況で、ようやく起きたり、寝るときにも急に倒れ るような反動をつけた動作にあるようです。これ らが、子宮捻転の原因じゃないかと言われてい ます。首を繋がれている産室では、立ちにくくな ります。だから勢いを付けて立ち上がろうとしま す。そう言った状況が子宮捻転を起こしやすく、 同じような理由で胎子の失位も起こってきます。 胎子の失位については、足が片方だけ尐し遅 れているようなものは、寝起きをしているうちに 自然に直ります。牛が寝起きをするときには、後 ろから上がります。当然前は下がっているわけ ですから、角度が付きます。角度が付くと子宮 は前の方に戻され、出てきかけた胎子は、一旦 子宮の方に戻されます。もし胎子失位をしてい たとしても、それが寝起きをしたときに子宮の中 に戻るわけで、その時に胎子が生きていれば胎 動も加わり、胎子が自分で動いて、また寝たとき には正常な位置に戻ってくれると言うことが考え られます。牛がお産をするときには、寝起きを繰 り返すことが非常に大事なのです。もし寝起き がしづらい分娩房があったとしたら、こういった 子宮捻転、胎子の失位が起こりやすいということ が考えられます。

スライド8は難産の発生について、帯広畜産 大学の二神さんが畜産学会で 2007 年に報告し たものです。乳検データから見ると、初産牛に おいて過去 15 年位の間に難産が減っていて、 2産目、3産目についてもそんなに増えていな いことになっています。ほんとに難産減っている の?という感じですね。難産については、牛群 サイズが大きい 91 頭以上を 1 とすると、牛群サ イズが小さくなると、オッズ比が上がります。と言 うことは、牛群サイズが小さい所は難産が多いと いうことです。 一方、死産についてです。死産は各産次で 増えています。この増えている死産については、 牛群サイズ規模が小さくなると死産が減ります。 難産が増えて、死産が減っています。何がおこ っているのかな?という事ですが、私が考える その理由としては、分娩に手をかけられず、監 視が出来ていないので死産率が上がっていて、 監視が出来ていない中で、自然の分娩が増え ているからだと思います。 「牛群が小さくなると難産率が上がって死産 率が下がっている」と言うことは、手を掛ける分 娩、こちらは逆に分娩に手を出し過ぎていて、 難産になっていると言うことが考えられます。 しかし、難産になっているけれども何とか殺さ ないで済んでいるという状況が小さい農場のお 産の形だと思います。 スライド 8 スライド 9

(6)

11

スライド 13 のような農場もそうですけど、新し いフリーストール牛舎を建てて、古い牛舎を分 娩スペースとして利用していると、普段、牛はフ リーストールで生活しているのに、お産の時に なると繋がれます。昔の狭くて、硬く、滑りやす いコンクリートの床です。敷きわら(草)は沢山敷 いてあるように見えますけど、起きようと思って 牛が踏ん張ると草が全部無くなってしまいます。 写真の牛は死産をして、その後子宮脱となり、 今、治療をしているところです。結局、こういった 首を繋がれた狭い、硬い、滑りやすい床で分娩 することで、死産とか難産とかを引き起こしてい るのではないかということです。スライド 14 の分 娩舎は大きくて、反対側にも乾乳牛達がいます。 この牛舎を建てて何が起こったかと言うと、お産 が楽になりました。お産が楽になったので、だん だん畜主もお産に手を掛けないで様子を見るこ とが出来て、これは楽だなということになりました。 もともとこの農場では 20%近くあった分娩の事 故率も5%に下がりました。 分娩房の条件としては、寝起きがし易いと言 うことで、広さは1頭あたり 20 ㎡以上と広ければ 広いほど良いと思います。最低でも 20m2としま したが、お産をする時に牛が寝て、その後ろ側 に十分スペースが確保出来る状態が好ましい ので、広さについてはまだまだ広ければ広い方 が良いと思います。それと、滑らないということで は土や砂も良いと思います。土や砂はメンテナ ンスがしづらく、現実的にはコンクリートでそこに スライド 10 スライド 11 スライド 12 スライド 13 スライド 14

(7)

12

厚いマットを敷いて、敷きわらを十分に敷いて 対応します。加えて、四方は壁じゃない構造が 理想だと思います。分娩房の端で出産が起こっ たとしても、パイプであれば何とか下のスペース から引き出すことが出来るだろうし、見ていない 中でも子牛を無事に生ませることが可能だと思 います。分娩房に壁があると、壁際にお尻を向 けて出産が始まると、どうしても事故が起こる可 能性があります。狭ければ狭いほど、そういった 危険性が増すわけです。 分娩牛が単独になれるというのは非常に良 いことですが、牛は牛群の中で生活しているも のですから、単独にして個別の房に入れた時に は非常にストレスになると言われています。特に 壁で仕切られていて、他の牛達が見えない環 境に牛が入れられると非常にストレスになるとい われています。出来れば群で飼っていて、そこ から単独になれるようなスペースが作れるような 構造の分娩舎が良いのではないかと思ってい ます。あとは、牛を吊り上げ出来るよう天井が高 いことです。私も獣医としてお産に関わって、牛 を吊り上げする機会が時々あります。子宮脱で すとか起立不能であるとか、色々な場面で牛を 吊り上げしたいという時があります。その時に天 井が低いと使いづらいものです。もし、低い天 井しか無いのであれば、天井にチェーンブロッ クを設置し、フックがあればそれでよいと思いま す。 ■確実な分娩監視は死産を減らすことができる スライド 15 は北海道 NOSAI から頂いた資料 です。監視装置としてビデオモニターを付けて、 導入前 10 ヶ月と導入後 10 ヶ月の分娩事故をグ ラフに表したものです。図を見ると、A 農場、B 農場にしても、さらにDも E も導入の前よりも導 入してから事故が減っています。F農場につい ては、導入前にこれだけ事故があったのに、導 入後は一頭も事故がありません。唯一、C農場 だけが尐し増えましたが、ここは元々尐ないとこ ろでした。やはり、分娩を監視することで事故を 減らす事が出来るのが、お分かり頂けるかなと 思います。 スライド 16 は今私たちも使っている、お産の 監視装置の一例です。左上が発信機です。こ の発信機を産道の中に入れておくと、第1期破 水のタイミングで、発信機が産道から落ちます。 産道から落ちると、受信装置に光と温度に感知 するセンサーがあり、知らせる仕組みになって います。暗い産道に入っているので、外に出た ら明るいですよね。夜中であれば、電気が点い て無くても反応して貰わなくてはいけないので、 夜中の場合には温度の変化でセンサーが作動 してくれます。両方とも作動してくれるので安心 です。受信装置で受信された際、次に受信装 置からは携帯電話に電話をかける仕組みにな っています。私の携帯に電話がきます。電話を とると、「お産です、お産です」と音声でしらせま す。お産ですという電話が来るので、恐怖の電 話ですね。電話が来るタイミングは破水した時 なので、破水してからどの位お産が進んでいく のかが確認出来るということで、とても良い装置 じゃないかなと思っています。価格もそんなに 高くないので、牛一頭助けられれば、この装置 を何とか買えるような金額だったと記憶していま す。 スライド 15 スライド 16

(8)

13

■体格と分娩事故との関係 当然ですが、母牛の体格が小さいと問題が あるし、子牛の体格が大きくても、問題がありま す。子牛の体重が大きくなればなるほど、分娩 の事故率は上がっていることがわかります。 次は、妊娠期間です。牛の妊娠期間は皆さ んご存じの通り 280 日ですね。280 日よりも早く 産まれたケースでは、早ければ早いほど死産が 多くなります。これは当然ですね 280 日を越えて、290 日を超えていくと死産が 増加します。体重が大きくなると言うことで事故 が多くなってきます。一番尐ないのは、分娩予 定日の2日後位で、282 日位がこのデータでは 一番低い死亡率だったと言えます。 スライド 20 は初産分娩時の子牛の生死と体 格で、うちの研究室で調べたデータです。親牛 の体重や胸囲、手関節囲や腰角幅、尻長、な ど色々な体格要素と出生した子牛の体重を測 って見たところ、やはり親牛の体重が重いほど 子牛の生存が多く、子牛が死亡した方は親牛 のサイズが尐し小さめであるということです。逆 に子牛の方は体重が軽めで生まれた方が生き ていて、死んだ子牛の平均体重はちょっと重い ことがわかります。母子体重比ですが、生存の 場合は母子体重比が 6.7、死亡しているほうは 7.7 ということで、死亡しているほうが尐し大きい ことが分かりました。 スライド 17 スライド 18 スライド 19 スライド 20

(9)

14

スライド 21 は、帯広畜産大学の農場のデータ です。私が赴任した際、分娩事故率が高く、特 に初産分娩事故が多いので、分娩するときの 体高を調査しました。体高が 130~135 ㎝まで の一番小さいサイズで死産がなんと5割もありま した。体高が 140 ㎝を越えるとどうやら無事に産 まれてくる率が尐し高くなっていました。そして、 あまり大きすぎると良くないところが分かりまし た。 大型の農場の事故対策の事例です。大型法 人を立ち上げたばかりの時期で、年々死廃事 故が増えていった農場がありました。 スライド 22 は共済金の支払い金額が初年度 375 万円でした。それが3年後には 1,300 万円と 増加しました。この農場のある診療所にたまた ま私が赴任しました。 この支払い金額の内訳を見てみたら、初産 の事故が全体の半数以上で、6 割近くを占めて いました。各年度、やはり初産が多い状況でし た。この年、初産が5頭第四胃変位になって、4 頭が死廃になりました。分娩の事故率が 10%以 上だったという農場です。 この農場の初産牛を調査したところ、初産牛の 体格が小さいことがわかりました。育成牛の体格 が小さいのに、13ヶ月齢になったら種付けした方 が良いという事で、実際には体格も見ないで、13 ヶ月齢で種付けをしていました。お産の時の体高 としては、小さいままとなっていました。大きな農 場ですので、人数は沢山いたので、お産になると 皆で集って、子牛を引っ張るということをやられた わけです。大人数での早すぎるけん引分娩という のがよく見られていました。なんとか、子牛は産ま れたけれど、母牛のほうが四肢の神経麻痺など になったりしていました。対策としては、とにかく スライド 21 スライド 23 スライド 24 スライド 22

(10)

15

スライド 26 スライド 25 小さい牛には交配しない、体高については125㎝を目安にして、そこを越えるまでは絶対種付けしないで下 さいと話をしました。あと、多人数での牽引助産をしないで、出来るだけ踏ん張らせましょうと話をしました。 初産牛に対してこれらを実践したところ、翌年には初産牛の事故が非常に減っています。初産牛の事故が 減ったため、全体の事故も減りました。その後、また頭数も増え、今度は経産牛の事故対策も必要になりま した。以上が、大型法人での分娩事故は防げたという事例です。 ■難産をなくすための種雄牛の選択 初産牛にもホルスタインを種付けして、後継牛としてホルスタインを確保することを前提とした話しをしま す。これは輸入牛のブルブックです。アメリカの種雄牛については、分娩難易度の情報が示されています。 分娩難易度と言うのは、低いほど良くて、平均は8%でそれよりも低いものはお産が軽いという意味になりま す。色々な体格情報があります。その中で母牛が持っているべき形質として、お産が楽になりそうなのは尻 の幅になります。尻の長さも関係ありますが、尻の長さはここには紹介されていません。

(11)

16

スライド 27 スライド 26 が、ブルブックに載っている種雄牛の一覧です。スライドの右上に示されているのが、分 娩難易度です。ちょっと気を付けて貰いたいのは、スライドの右下に示されたところです。カナダの種牛 情報ですが、カナダでは分娩能力として紹介されています。数字が高い方が分娩能力も高いと言うこと になります。平均が 100 で 85 から 115 までの範囲で示されています。スライド 27 に示されているように 難産率であるとか、死産率が示されています。娘牛というのは、種付けして生まれた娘牛が備えている 形質ということになります。 難産率とか死産率については、率ですから低い方が良いと言うことになります。難産率については7%が 平均です。死産率は平均6%であり、これを下回る種雄牛を選定して授精していくようにします。この牛( スライド27)でいくと、難産率が5%ということなので、安産タイプであることが読み取れます。これらの形質 の中では、先程説明した座骨幅が広ければ、お産が軽くなる可能性があると思っています。これまで説明 したことを参考に種雄牛を選定すると良いと思います。種雄牛の選定についてのまとめはスライド28です 。種雄牛の選択では、雌の選抜精子を選定することです。雌は雄よりも体重が尐なく、難産が尐なくなるこ とが予想されます。雌の選抜精子は受胎率が下がる可能性がありますが、未経産牛に用いる場合であれ ば、もともと受胎率が高く、それほど影響がないので、実際にも雌選抜精子を種付けてしている人は沢山 出てきています。実際、私が通っている農場でも、雌の選抜精子を授精しています。あと、和牛の受精卵 であるとか、和牛の精液についても、当然子牛が小さくなりますから、分娩の難易度は下がる可能性があ りますが、先程から説明したように、ホルスタインの雌を産ませると言うことからは、ちょっとはずれます。和 牛の受精卵を移植するのであれば、子牛を販売することで有利になりますが、これらの選択は農家の考 え方次第だと思います。和牛子牛の場合は、育成に一工夫必要になってくると思います。和牛の初乳は ホルスタインの初乳に比べて、相当濃いようですから、ホルスタインの初乳で十分かどうかというのは、ちょ っと疑問なところがあると思います。

(12)

17

■体格と分娩事故のまとめ 分娩事故は初産が多く、初産時の体格が小さく、 子牛の体重が重く、骨盤が小さい牛は死産を増加 させると言うことが分かりました。対策としては、体 格の小さい牛には種付けしないようにします。言い 換えると骨盤が狭い牛には交配しない。しっかりと 骨盤が出来てから、種付けしましょう。それと、分娩 までに十分に成長する管理を行い、分娩時の体型 の目安としては、体重600㎏以上で、体高は140㎝ 以上とします。現状145㎝位あっても良いのかと思 っています。子牛を大きくしない為には、分娩難易 度の低い種雄牛を選択することと、分娩の予定日 を過ぎたら注意します。初産牛であれば予定日を 一週間過ぎると危険が増してくる可能性があります。 一週間を超えた段階で、分娩誘起、安全な分娩誘 起ということも、今は考えられてきているので、そう いったものを取り入れていただきたい。 スライド 28 スライド 29

(13)

18

Ⅲ 分娩の経過と分娩異常

■分娩機序と分娩経過 分娩の機序と分娩の経過については、簡潔に 話をしたいと思います。分娩機序と関わりがあるの は、ホルモンの流れになります。様々なホルモンが 関わっています。お産が始まるサインとして、子牛 から発せられるのは、コルチゾールで副腎皮質ホ ルモンです。 子牛がお腹の中にいて、最初は広々とした部屋 でどんどんその部屋も大きくなっていってくれます。 おなかの中で子牛は成長し、ある一定の大きさに なると親牛のお腹もパンパンになってきます。する と、子牛の成長に合わせて部屋を大きくすることが 出来なくなります。そうなると、子牛はどう感じるかと いうと、居心地が悪くなってきます。居心地が悪く 身動き取れない状態となり、もうここから飛び出した い状況になると胎子から信号が発信(ホルモン分 泌)されるわけです。それが、コルチゾールです。 コルチゾールと関連して胎盤中にあるプロジェステ ロンがエストラジオールに変わり増加していきます。 それに伴って、プロスタグランジンが分娩の前に増 加していきます。そして、いよいよ子宮が縮まり、最 後にオキシトシンが出て、分娩が起こるという流れ になります。このような分娩に係るホルモンの流れ をある程度理解した中で、分娩誘起が行われるべ きだと思っています。過去、分娩誘起で色々な薬 を使ってきましたが、得てして単体の薬、例えば副 腎皮質ホルモン単体であるとか、プロスタグランジ ン単体の注射をしていましたが、それを出来るだけ 自然に近い形にする事で、事故を最小限に出来る ということです。分娩誘起に使われるホルモンは、 今、副腎皮質ホルモンとか、プロスタグランジン、エ ストロラジオールなどが考えられます。そういった数 種類のホルモンの組合せ投与が必要かと思いま す。 ■安全な牛の分娩誘起 スライド32の①はプロスタグランジンとデキサメサ ゾンの同時注射で、黒毛和種で行われている取り 組みです。②はプロスタグランジンとデキサメサゾ ンとエストラジオール3種類の同時注射です。それ ぞれ、定時性も求められるので、24時間から36時 間に85%位が産まれました。死産率は3.5%でした。 こちらは、定時性は尐し落ちて64%になるけども胎 子死が0.7%で非常に優れていたと言うことです。 定時性についてです。分娩が始まっている状況で 注射を打てば、当然早く産むので定時性は悪くな ります。しかし、安全性を考えると分娩が始まって いる状況で誘起すれば安全に産まれてきます。こ れは、表裏一体のもので、全く分娩兆候がなけれ ば分娩の定時性が高まり、2日後に産まれる確率 スライド 30 スライド 31 スライド 32

(14)

19

が高くなります。 黒毛の場合は、この定時性が求められるので、 こういった形で獣医さんが日中様子を見に行って 分娩介助を考えます。同じように、酪農場でホルス タインを対象に考えられたものです。夜中の分娩を 避けるために、昼間産ませようという取組みです。 昼間産ませるためには、分娩予定日の5日前に乳 房の張りを確認して、注射を打ちます。この時使わ れたのがデキサメサゾンとプロスタグランジンです。 これを同時注射した結果です。分娩誘起した分 娩事故率は4%で、処置しなかったほうは夜中の 分娩が多くなってしまい、夜中の分娩も含めると事 故発生率が20%近くになっています(スライド34)。 これは大型の農場で、分娩が夜中にあると事故 が多くなるという中で、昼間産ませることで成功して きた事例です。注射を打ってから分娩するまでの 平均が36時間位。勤務時間内となる朝4時から夜 8時までに分娩した割合が95%になったという事で 助産を行うことができて、分娩事故を減らすことが 出来たという事例です。実際には分娩の監視が24 時間可能であれば、お産の始まる直前に、乳房が 十分張って、そして胎子も大きく育っていて分娩誘 起を行えば、定時性は尐し落ちるかもしれないけ れど、安全性についてはもう尐し上げることが出来 る可能性があります。 ■分娩の兆候 分娩兆候としては、乳房が張ってきたり、外陰部 が変化したり、骨盤靱帯が弛緩したり、しっぽの力 が無くなったり、体温が下がったりという兆候が見ら れます。これらの兆候の中で、有用な情報としては、 尾根部の靱帯の弛緩になります。仙坐靱帯とか骨 盤靱帯といいますが、その弛緩によりくぼみができ ます。この深さが前の日よりも5㎜以上弛緩した場 合で急激に凹んだ場合は24時間以内に分娩する 確立が96.4%ということです。その時期には、靱帯 が当然弛緩するので、しっぽを振る力が弱くなりま す。しっぽが軽くあがるようになってきます。 スライド 34 スライド 36 スライド 33 スライド 35

(15)

20

もうひとつ有用な兆候としては、体温の変化です。 朝夕出来れば検温した方が良いです。夕方検温 をしたときに前日よりも0.5度以上下がって、そして 39度未満の場合には、24時間以内に72%、48時 間以内に92%分娩すると言われています。 気を付けなければいけないのは、体温が下がっ てから、分娩が始まると寝起きを頻繁にするので、 体温が逆に上がってくる傾向があります。分娩が 始まっているのか、始まっていないのかを確認する ことと、体温が下がったことをきちんと測定しなけれ ば、体温測定は間違った評価となる可能性もありま す。 スライド38は骨盤靱帯の弛緩の程度について図 に示したものです。 分娩の前日に急激に変化するのが骨盤靱帯の 弛緩と体温です。体温は、分娩の前に39度から39 度の後半になります。39度以上になってから分娩 の前日に急激に下がります。39度未満となった段 階で翌日に産まれるということです。 お産の時は、いよいよ陣痛が始まり、寝起きが重 要だということは先程お話しました。スライド39の牛 の姿勢のように、寝起きにより子宮が前の方に落ち 込み、胎子の足が出ていたのが一度引っ込みます。 寝起きを繰り返せることが重要だということです。 スライド40は、ある初産の牛の分娩経過を追跡し たものです。陣痛が始まってから、右側を下にして 寝ていました。次に、立ち上がって、また右に寝ま した。さらに、立ち上がって、今度は左に寝たという ようになります。

スライド訂正→第2次破水

スライド 37 スライド 38 スライド 39 スライド 40 スライド 41

(16)

21

第1次破水が起こって、右に寝て、立ち上がって、 今度は左に寝ています。右、左、右と順番に寝まし た。見事に左右交互に寝ています。 分娩が始まるとこのように立ち上がっては、反対 側になるということが、自然に行われています。な ので、牛の寝起きを制限することがあれば、それで はお産が進まないだろうし、それが難産につながる ことを意味します。 分娩の後半の方は、寝たまま踏ん張るような状 況が続きます。この牛の場合は、最終的にある程 度のところから分娩が進まないので、助産すること で、子牛が産まれました。 分娩の経過についてです。お産は3つのステー ジに分けることが出来ます。 第1期というのが、子宮の入口の緩む時期で、子 宮頸管が拡張する時期です。この時期は牛によっ てまちまちですが、初産でも5、6時間位までには 終わるはずです。 この時期には、胎子はお腹の下の方にいて背 中を下にしています。どちらかというと仰向けもしく は横向きの状態でお腹の中にいます。第1期から 分娩が進み、子宮頚管が拡張して完全に胎子が 産道の中に入ってくる段階では、下の方にいた胎 子は回転し、頭を上にして産道に進入します。分 娩の最初の時期で、初期陣痛が始まったときに手 を入れて確認すると、多くの場合胎子の蹄がまだ 上を向いている状況が多いものです。この時期に 手を入れて、胎子が逆さだからとあまり慌てないこ とが大切です。 第2期というのは、完全に子宮頚管が開いて腹 圧を伴った陣痛であり、母牛は踏ん張ります。そし て胎子が娩出されるまでが分娩の第2期です。 助産を行う目安となるタイミングは胎子の足が出 てきて、第2次破水してから胎子が娩出されるまで が重要で、時間的な目安となるものです。分娩第3 期については分娩して胎子が娩出した後、胎盤が 排出されるまでの時間です。 スライド 17 スライド 17 スライド 42 スライド 43

参照

関連したドキュメント

どんな分野の学習もつまずく時期がある。うちの

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

○○でございます。私どもはもともと工場協会という形で活動していたのですけれども、要

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

子どもたちが自由に遊ぶことのでき るエリア。UNOICHIを通して、大人 だけでなく子どもにも宇野港の魅力

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを