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最 大 となる520 億 ドル(うち ドナーからの 拠 出 は 出 資 252 億 ドル 融 資 44 億 ドル)のプレッジ 額 を 達 成 した( 融 資 貢 献 方 式 は 今 次 増 資 において 初 めて 導 入 ) 今 次 増 資 交 渉 の 最 大 のテーマは 譲 許 的 融 資 と い

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(注)本稿で言及されるデータ等は、文末に掲げ た参考文献等、公開情報をソースとするも のである。また、本稿において意見の表明 に当たる部分は、筆者個人の見解であり、財 務省、日本政府の意見を代表するものでは ない。また、英語で記された原文の日本語 訳は筆者によるものであり、公式の翻訳で はない。

1.はじめに

2012年11月から2013年12月にかけて国際開発 協会(IDA(アイダ):InternationalDevelopment Association)の第17次増資交渉が行われた。IDA は、世界銀行グループ*1の中で、所得水準の特に 低い開発途上国に対して超長期・低利の融資や贈 与、技術支援を行い、当該国の経済開発や貧困削 減を支援する国際開発金融機関であり、3年に一 度、必要資金の補充のため増資を行っている。 この3年に一度の増資のための交渉は、途上国 の開発に携わる政府関係者の最大のイベントであ る。世銀事務局が用意する膨大な政策ペーパーを 基に、1年以上にも亘るドナー国代表者*2間の討 議を経て、開発政策が国際的に煮詰められ、今後 3年間の援助方針として国際社会に共有される。 IDAは、その支援規模や国際影響力の大きさ故に 世界の開発分野のリーダーとして認知されている が、資金拠出のための高い説明責任を背負った各 国の代表者が途上国開発政策の様々な論点につい て国際的な合意形成を行う増資交渉自体の意義も 大きい。 IDA第17次増資交渉は、2012年11月のアビジャ ン(コートジボワール)に於けるIDA16中間レビ ュー会合を皮切りに、パリ、マナグア(ニカラグ ア)、ワシントンDCでの公式会合、大小様々な無 数の非公式会合等を経て、2013年12月17日にモ スクワで合意に達した。日本を含む多くのドナー 国は厳しい財政状況に直面し、援助資金の負担能 力には限界がある中、最終的には事業規模で過去

国際開発協会(IDA)

第17次増資について

国際局 開発機関課長 

大 石 一 郎

      課長補佐 

杉 浦 達 也

*1)世界銀行グループは、中所得国及び信用力のある貧困国へ貸付等を行う国際復興開発銀行(IBRD、1945年設立) と、最貧困国向けの贈与・貸付等を行う国際開発協会(IDA、1960年設立)、民間企業向けの投融資を行う国際 金融公社(IFC、1956年設立)、外国投資家が途上国に直接投資を行う場合の政治リスク等を保証する多国間投 資保証機関(MIGA、1988年設立)等の機関から構成される。IBRDとIDAを総称して世界銀行(世銀)と呼ん でいる(施設や職員はIBRDとIDAで共通)。2014年6月時点のIBRD加盟国は188か国、IDA加盟国は172か 国である。 *2)総務(日本は財務大臣)の副官(「IDA-Deputy」と呼ばれる)が増資交渉を行う慣例となっている。日本は武内 良樹大臣官房審議官(国際局担当)がIDA-Deputyとして交渉を担当。

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ないものとして慎重論も強く、非常に激しい議論 が行われた。この他、IDA17支援における特別テ ーマの設定と成果測定システムの改定、脆弱国向 け資金配分の強化とPBA配分方程式の変更、イン ド向けの卒業経過措置の導入等において特に議論 が深められた。 我が国は、IDAの主要ドナー国として、資金面 での貢献だけではなく、主要議題であった融資貢 献方式の導入等、政策面においても終始議論をリ ードし、その結果として、日本の主張の多くが IDAの政策に反映されることとなった。また、世 銀も日本との関係を大変重視し、キム総裁が2013 最大となる520億ドル(うち、ドナーからの拠出 は出資252億ドル、融資44億ドル)のプレッジ額 を達成した(融資貢献方式は今次増資において初 めて導入)。 今次増資交渉の最大のテーマは、譲許的融資と いう形式での新たなドナー貢献方式(=IDAの資 金調達方式)の導入であった。上述の通り、ドナ ー各国が厳しい財政事情にある中においてIDAが 必要とする資金量を確保できたのは、この新たな 貢献方式を導入したことが大きい。しかしながら、 この新たな貢献方法の導入に対しては、伝統ドナ ー国の出資(グラント)での貢献額を減らしかね (表1)IDA第17次増資交渉会合(公式なもの) 開催日 場所 IDA16 中間レビュー会合 2012年11月13~15日 アビジャン(コートジボワール) 第1回交渉会合 2013年3月19~21日 パリ 第2回交渉会合 2013年7月1~3日 マナグア(ニカラグア) 第3回交渉会合 2013年10月14~15日 ワシントンD.C. 第4回交渉会合 2013年12月16~17日 モスクワ (図1)世界銀行グループの概要 国際復興開発銀行(IBRD) ◯中所得国及び信用力のある低所得国を対象 ◯市場から調達した資金で長期融資を提供 ◯ 資本金 2,784億ドル(日本のシェア7.2%、米 国(16.7%)に次ぐ第2位) ◯ 年間承諾額 152億ドル、融資残高 1,438億ドル 国際開発協会(IDA(アイダ)) ◯低所得国を対象 ◯ 加盟国からの出資金を原資として、超長期・低 利子の融資及び贈与を提供 ◯ 3年に一度増資(資金補充)を実施。直近2014 年の全体の増資規模は520億ドル ◯ 資本金(累積払込みベース) 1,845億ドル(日 本のシェア18.2%、米国(20.8%)に次ぐ第2位) ◯ 年間承諾額 163億ドル、融資残高 1,251億ドル 国際金融公社(IFC) ◯途上国の民間部門を対象 ◯ 市場から調達した資金で途上国の民間部門に対 して投融資及び技術支援等を提供 ◯ 資本金 26億ドル(日本のシェア6.3%、米国 (22.2%)に次ぐ第2位) ◯ 年間承諾額 183億ドル、融資残高 347億ドル 多数国間投資保証機関(MIGA(ミガ)) ◯ 途上国向けの民間投融資に、戦争等に対する保 険を提供 ◯長官は日本人の本田桂子氏 1. 世界銀行グループとは    途上国の貧困削減と持続的な経済成長の実現を使命と して、金融支援、技術支援等を提供している。主に右 の4機関で構成。   世銀(IBRD)は1945年に設立され、現在の加盟国は 188ヶ国。 2. 組織   所在地:ワシントンD.C.   総 裁:ジムヨン・キム(米)(2012年7月-) 3. 日本と世銀の関係    日本は1952年に世銀(IBRD)に加盟。かつては最大 の借入国の一つであった。世銀からの融資は、東海道 新幹線や東名高速道路、黒部第四水力発電等のインフ ラ整備や電力や製鉄等の基幹産業を中心に活用。    現在日本は、いずれの機関においても、米国に次ぐ第 2位の出資国。

IBRD/IDA IFC MIGA グループ合計 職員総数 3,719人 1,232人 79人 5,043人 日本人職員数 74人 35人 2人 112人 <参考:職員数>

※資本金・融資残高・職員数は2013年6月時点、承諾額は2013世銀年度(2012.7-2013.6)のもの。

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年中に2度も日本を訪問したことに加え、インド ラワティ専務理事や副総裁等の世銀幹部が頻繁に 日本を訪問し、日本政府や国会議員等との政策対 話や意見交換、記者会見を通じた国民への説明、 市民社会団体との対話等を熱心に実施した。特に キム総裁が6月に国会(参議院政府開発援助等に 関する特別委員会)において世銀の業務について の説明を行い、12月には麻生財務大臣と共同記者 会見を実施したことは特筆に値する。 以上を踏まえ、日本としては、非常に厳しい財 政状況に加えて、前回増資よりも約10%も円安と なるなど、大きな貢献を行うことが難しい状況で ある中、約3,120億円の追加出資と約1,904億円の 融資貢献を行うこととした。これは、貢献割合で 前回増資と同様の第3位(10.0%)、資金量ベー ス(出資と融資の単純合計)では第1位の貢献で ある。 我が国では、増資会合で合意したIDAの追加増 資に応じるためには加盟措置法を改正することが 必要であり、政府は、加盟措置法の改正に関する 法律案を第186回国会に提出した。同法律案は、 衆議院財務金融委員会及び参議院財政金融委員会 での審議を経て、2014年3月25日に衆議院、28日 に参議院において全会一致で可決され、成立した。 本稿では、IDAの仕組み、増資交渉における主 要論点、日本や主要国の貢献状況、国会における審 議についてまとめている。本稿が今後の我が国の 開発政策の策定、各国際開発金融機関(MDBs)の 増資での方針策定の一助となることを期待する。

2.IDAの仕組み(主に資金面)

IDA増資交渉について説明する前に、IDAの仕 組みを概観したい。 世界銀行グループの中でIBRDが、主として国際 資本市場での債券(世銀債)発行による調達資金 を原資として、中所得国に準商業ベースでの貸付 を行っているのに対し、IDAは、主に先進加盟国 からの出資金を原資として、特に所得水準の低い 開発途上国に非商業ベースでの貸付を行ってい る。IDAの融資条件は、原則、超長期・無利子(手 数料として年0.75%のみ)と非常に緩やかなもの である。貸付原資が主に先進加盟国からの出資金 によって賄われていることから、3年に一度、先 進加盟国による資金拠出の規模や使途等について の増資交渉が行われ、3年単位で資金計画が立て られている。例えば、第17次増資交渉の対象とな る期間は、2014年7月から2017年6月までの3年 間であり、第17次増資期間(IDA-17)と呼ばれる。 図2は、IDA-17における資金計画を示したもの である。IDA-17の事業規模は520億ドル。その財 源は、ドナー国からの拠出(252億ドル)、IBRD やIFCからの資金移転(32億ドル)、過去のIDA融 資からの返済金やIDAの流動資産から生み出され る投資収益(143億ドル)、今回新たに導入された

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ドナー国からの融資(44億ドル)等となっている。 これに加えて、2005年のグレンイーグルスG8サ ミットで合意された多国間債務救済イニシアティ ブ(MDRI)*3の下でのドナー国からの拠出(45億 ドル)がある。 こうして集められたIDA資金は、82カ国の低所 得国*4の開発支援に活用される。原則として、政 策・制度環境の良好度(パフォーマンス)に応じ て人口1人当たりの資金が手厚く配分されるよう 仕組まれるPBA(Performance-BasedAllocation) 方程式に基づき各国に割り当てられる。PBA制度 において、資金配分を決定する主な要素は各国の 経済成長・貧困削減促進政策の履行実績であり、 国別政策制度評価(CPIA)によって評価される*5 IDAでは、このようなPBA方程式による配分を 原則としつつも、国際社会に復帰したばかりの国 (Re-Engaging国)や紛争後の国(Post-Conflict国) に対しては、開発初期の投資の重要性に鑑みて、 特別に手厚い配分が行われている。また、複数国 に跨る大型で調整が複雑な案件等、国際機関とし てのIDAの強みを発揮できる分野に対する支援、 経済危機や大規模な自然災害に備えた危機対応の 準備金が別枠で充てられている。更にIDA-17では、 後述の通り、インドのIDAからの卒業経過措置と して、インドに対してIDA-16の支援規模の3分の 2程度の資金を配分することとした。 資金の大半は、超長期(満期38年、うち据置6年) *6・無利子(手数料0.75%のみ)の融資で拠出さ *3)ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた取組を促進するとの観点から、重債務貧困国のIDA債務を先進国 が代わり負担をするもの。日本は総額(約370億ドル)の13. 17%を負担することに合意。IDA増資のタイミ ングで、IDAへの拠出を行っている。 *4)IDAの支援対象国は、①相対的に貧困であること(一人当たりGNI(国民総所得)が毎年度定められる上限(2014 世銀年度では1,205ドル)を超えないこと)、②IBRDの融資を得るだけの信用力を持たないこと、の2つの基 準を満たす必要。 *5)IDA-17におけるPBA制度については、IDA(2014)Annex 2(89~92頁)を参照のこと。 *6)IDA-17では、これまで満期40年(うち据置10年)であった通常融資の貸付条件をやや厳格化している。 (図2)低所得国を対象としたIDAの仕組み(IDA-17の場合)∼第17次増資(対象期間:2014年7月∼ 2017年6月)の場合∼ ドナーからの拠出 (出資) (MDRI負担分) 借入国からの返済・ 運用益 (卒業国による繰上償還 等を含む) 世銀グループ内の純益移転 IDA17の総額:計520億ドル ① 英 13.0% ② 米 11.1% ③ 日 10.0% ④ 独 6.1% ⑤ 仏 4.9% IBRDより21億㌦ IFCより11億㌦ 複数国に跨る地域プロジェクト (資金調達) (IDAによる支援) 国別のパフォーマンス に基いて支援額を 決定 ・贈与(赤/黄信号国を対象) ・通常融資: 金利なし、手数料0.75%、 満期38年(据置6年) ・条件を厳格化した融資 (所得水準が一定水準に達した国 を対象) インド向け卒業移行措置 ドナーからの融資 重債務貧困国に対する債務 救済費用(2005年のグレン イーグルス・サミットでの合意 に基く) 国際社会に復帰する国を支援する ための特別な配分:(例)アフガ ニスタン、ミャンマーへの支援等 危機対応ウィンドウ: 自然災害や経済危機に迅速に対 応するためIDA16において導入 (注)第17次増資における日本の出資貢献額は、約3,342億円(MDRI負担分含む)、融資貢献額は約1,904億円。出資貢献分については出 資国債で払込みを行い、融資貢献分についてはJICAを通じ融資を行う。

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れる。ただし、債務持続可能性分析で赤信号(貸 付不可)と判定された国に対しては全額贈与(グ ラント)で拠出、黄信号と判定された国に対して は50%を贈与、50%を通常融資で拠出される*7 なお、所得水準が一定水準に達し、IBRDからも一 部借入が可能な国(ブレンド国)に対しては、条 件をやや厳格化した融資が行われる。卒業経過措 置下のインドに対しては更に厳格化した条件での 融資が行われる。

3.増資交渉の主要論点

IDA第17次増資は、2012年7月に就任したキム 総裁にとって初の増資であり、増資交渉では、彼 の掲げた「極度の貧困の撲滅」及び「繁栄の共有 の促進」という世銀グループの二大目標*8を達成 するためにIDAをどのように有効に活用するのか との議論が行われた。 IDAは、発展途上国において、インフラ整備、 初等教育、基本的な保健サービス、水と衛生、環 境セーフガード、ビジネス環境の改善、組織・制 度の改革など、開発のための幅広い取組みを支援 しており、増資交渉の論点は非常に多岐に亘っ た*9。それらの全てをここで紹介することは限ら れた紙幅の中では不可能であるため、ここでは公 式会合において特に時間をかけて議論された主要 な論点について紹介したい。

3.1.新たな貢献方法(譲許的融資方式)

の導入

世銀グループの新たな二大目標を実現するため には、脆弱国に対する支援の強化を図るとともに、 国内に多数の貧困人口を抱える中所得国への支援 (表2)IDA支援対象国の一覧(2014世銀年度(2013/7〜2014/6)の区分) 低所得国の対外債務の水準(GDP比、輸出比、歳入比等)や政策運営のパフォーマンス(CPIA:国別政策・制度評価)によって判断される 長期的な債務返済リスクに基づき、IDA のグラントと譲許的貸付の配分比率を決定(信号機システム): 赤信号は高リスクを示し100%グラント、 黄信号は中程度のリスクを示し50%グラント、50%貸付、青信号は低リスクを示し100%貸付。

国名(赤信号国) 1人あたりGNI 国名(黄信号国) 1人あたりGNI 国名(青信号国) 1人あたりGNI 国名(ブレンド国) 1人あたりGNI

アフガニスタン NA ブルキナファソ 660 アンゴラ 4,580 アルメニア 3,720 エリトリア 450 中央アフリカ共和国 490 バングラデシュ 830 ボリビア 2,220 ブルンジ 240 コートジボワール 1,220 ベナン 750 ボスニア・ヘルツェゴビナ 4,660 チャド 740 ガンビア 510 ブータン 2,420 カーボベルデ 3,810 コモロ 840 ギニア 460 カンボジア 880 ドミニカ国 6,460 コンゴ民主共和国 220 ギニアビサウ 550 カメルーン 1,170 グルジア 3,280 ハイチ 760 キルギス共和国 990 コンゴ共和国 2,550 グレナダ 7,110 キリバス 2,210 ラオス人民民主共和国 1,260 ジブチ NA インド 1,530 モルディブ 5,910 レソト 1,380 エチオピア 400 モンゴル 3,180 マーシャル諸島 4,140 マラウィ 320 ガーナ 1,550 パキスタン 1,260 ミクロネシア連邦 3,310 マリ 660 ガイアナ 3,390 パプア・ニューギニア 1,790 サモア 3,220 モーリタニア 1,110 ホンジュラス 2,070 スリランカ 2,920 サントメプリンシペ 1,320 モザンビーク 510 ケニア 840 セントルシア 6,530 ソマリア NA ネパール 710 コソボ 3,610 セントビンセントグレナディーン諸島 6,380 スーダン 1,360 ニカラグア 1,650 リベリア 370 東ティモール 3,670 タジキスタン 880 ニジェール 370 マダガスカル 430 ウズベキスタン 1,720 ツバル 6,060 ルワンダ NA モルドバ 2,070 ベトナム 1,400 イエメン NA シエラレオネ 580 ミャンマー NA ジンバブエ 680 ソロモン諸島 1,130 ナイジェリア 1,430 南スーダン 610 セネガル 1,040 トーゴ 500 タンザニア 570 トンガ 4,240 ウガンダ 440 バヌアツ 3,080 ザンビア 1,350 ※前年からの変化 東ティモール(青)がブレンド国へ IDA支援対象国2014世銀年度(2013/7 ∼ 2014/6)の区分 *7)贈与(グラント)を受ける場合は、PBA配分額から20%減額される。 *8)2013年4月の世銀IMF合同開発委員会において、各国総務に承認された。具体的には2030年までに絶対的貧 困層を3%以下にすること、及び各国の所得下位層40%の人々の実質所得を引き上げることを掲げている。 *9)事務局が公式会合のために作成した政策文書は24、総ページ数は1,135。この他、数多くのプレゼン資料やバ ックグラウンドの解説ペーパーが事務局からドナー国に提出された。

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を一定程度継続する必要がある。他方、多くの先 進ドナー国は厳しい財政状況に直面しており、今 次増資におけるグラント貢献額の増加が見込めな い状況において、IDA事務局は、ドナー国からの 新たな資金貢献方式として、融資での拠出を可能 とすることを提案した。事務局の狙いとしては、 伝統ドナー国からの出資額は確保しつつ、新興ド ナー国により多くの金額を拠出してもらうための 手段を導入することに主眼があったと思われる。 そのため、当初の事務局案では、融資拠出の条件 として、IDA16比で一定規模のグラント拠出を維 持すること、及び新興ドナー国に優先的にローン 拠出枠を割り当てることが提案されていた。 日本としては、新たな貢献策が検討されている ことを歓迎する一方、ドナー間の公平性が保たれ るよう丁寧な制度設計を行うよう繰り返し強く要 請した。また、融資貢献方式の導入にあたって課 題となり得る事項については、2012年11月の交 渉スタート時から早々と事務局と議論を開始し、 幾度となくIDA増資担当副総裁(2014年1月まで はヴァン・トロッツェンバーグ副総裁、2月以降 はフォン・アムスバーグ副総裁)と日本のIDA-Deputy(武内審議官)との直接交渉の場を設け、 詳細な論点まで詰めていった。 この新たな貢献方法の導入への主な懸念として は、中長期的には、IDAの支援対象国のうち債務 持続可能性分析で赤・黄信号と判定される国や脆 弱国の比率が高まり、今よりも譲許的な資金が必 要と見込まれる一方、融資貢献者に対する元利返 済のための原資を確保する必要があり、IDA資金 の譲許性に制約が生じる可能性が高いことが挙げ られる。このため、融資貢献においても一定程度 の譲許性を確保することや、IDA融資受入量もイ ンド向け卒業経過措置やブレンド国への支援量を 踏まえ、IDAの長期財政持続可能性分析を行い上 限量(DebtLimit)を設定することにより、上記 の問題に対応することとした。 また、この新たな貢献方式の導入に対して懐疑 的な国の多く(主に北欧諸国*10)は、伝統ドナー 国がグラント拠出を融資拠出に置き換える代替リ スクについて強い懸念を持ち、IDA-16におけるグ ラント拠出の一定割合のグラント拠出を融資拠出 国に義務付けるべきだとの主張を展開した。しか しながら、そのような義務付けは、増資毎にドナ ー国が任意で新たな拠出をするというIDA増資の 本来の大原則になじまず*11、また、IDAが必要な 資金を確保する観点からも、融資拠出の抑制に働 く条件を導入することは得策ではないのは明らか である。上記を踏まえ、日本としては、フランス 等の融資貢献に理解を示すドナー国の協力を得な がら、融資貢献方式導入に関する共同ステートメ ントの発出や個別面会等を通じて、地道に懐疑派 の説得に努めていった。また、事務局は、日本の 想定される拠出金額を念頭に、融資貢献を検討す るドナー各国に対して「義務」ではなく「目安」 となるIDA-16比のグラント拠出額を示すことによ って、懐疑派の理解を得ていった。 この他、融資貢献導入に伴う種々の技術的な課 題(投票権の付与方法、譲許的融資のグラント相 当分を計算する際の割引率の水準、供与・返済に 係る通貨等)についても、日本は、常に議論を主 導し、事務局としても日本の意向になるべく沿う 形での決着を図った。最終的には、ドナー間の公 平が保たれる形での制度設計が行われ、日本、フ ランス、ドイツ、中国、サウジアラビアがこの新 たな貢献方式を活用することとなった。 このように、IDA-17において融資貢献方式が導 入され、IDAが資金量を拡大することができたの は、日本の働きによるところが大きいと自負して いる。日本が増資交渉において大きなプレゼンス *10)この他、北欧諸国の懸念として、IDAに対する譲許的融資の拠出がODA事業量にカウントされるとグラントの み拠出する国との不公平が生じるというものがあったが、この主張は、IDAからの返済時にはODA事業量はマ イナスにカウントされるので、当を得ていない。 *11)ドナー国は、これまでも前回増資の拠出金額如何に関わらず、増資交渉を踏まえ、任意で拠出金額をプレッジ することとなっている。

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を発揮できたのは、検討の初期段階から事務局と 緊密に意見交換を行い、制度設計に大きく関与し、 G7等の主要ドナー国の意見集約を行うといった役 割を果たしたことが要因であったと言えよう。

3.2.IDA17支援における特別テーマ

の設定と成果測定システムの改定

ドナー国は、第1回の公式会合(於:パリ)に おいて、限られた援助資金を最大限有効に活用し ていくべきとの考えの下、IDA-17全体のテーマを 「開発効果の最大化」に設定した。これに加えて、 IDAがどのような分野に重点的に支援を行うべき かについて、特別テーマを設定することとした。 基本的には、IDA-16における特別テーマ(①危機 対応、②ジェンダー平等、③脆弱・紛争後国、④ 気候変動)が踏襲され、①については新たな世銀 グループの目標を踏まえ、「包摂的成長(inclusive growth)」に変更することとされた。 IDA支援の特別テーマについては、各国ともに 増資の意義を国内関係者に理解してもらうために も、自国の開発政策にできるだけ重点を合せるよ う活発な議論が行われた。各国は、上記のテーマ の他にも、民間セクター開発や雇用、農業・食料 安全保障、中所得国支援、国境問題等を特別テー マに設定すべきと主張した。日本としては、大規 模な自然災害は一度発生すれば、人命が脅かされ、 そして、それまでの発展のための努力や成果も一 瞬にして奪われてしまうこと から、先進国・途上国共に、 防災を開発の重要課題として 位置付け、自然災害への事前 の備えを踏まえた開発計画を 適切に実施すべきだとして、 特別テーマに「防災(disaster riskmanagement)」 を 含 め るよう主張した。 このような日本の主張は、 事務局にも他のドナー国にも なかなか理解されなかった が、2012年10月 のIMF世 銀 東京総会の特別イベントとして、キム総裁やラガ ルドIMF専務理事の参加を得て実施した「防災と 開発に関する仙台会合」の実績、日本政府と世銀 で防災支援のため1億ドル規模の共同イニシアテ ィブの立ち上げの表明、G7諸国や事務局との意見 交換等よって、徐々に浸透し、最終的には、2013 年4月の開発委員会コミュニケにおいて「防災」 が 特 別 テ ー マ に 含 ま れ る こ と が 明 記 さ れ た。 (IDA-17の特別テーマは、①包摂的成長、②ジェ ンダー平等、③脆弱・紛争後国、④防災を含む気 候変動。) たとえ増資会合において重要性が確認され、特 別テーマに設定されたとしても、IDA資金は特定 分野への紐付け(イヤマーク)はなされないため、 IDAがそれらの分野にどれだけの事業を行い、ど れだけの開発効果を挙げるのかについてはIDA(及 び途上国政府)に任されることとなる。そのため、 ドナー国がIDAに対して、どのような開発成果を 出させるか、その成果のためにどのような体制を 採らせるのか等をモニターする方法として、毎回 の増資交渉において、成果測定システム(Results MeasurementSystem:RMS) が 作 成 さ れ る。 IDA-17では、特別テーマへの取組みがより分かり やすく示されるようRMSを大幅に改定し、新たに 特別テーマに含まれた防災の取組みに関する指標 等も盛り込まれた。 RMSは、IDAの成果をドナーに示す説明責任の

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道具であると同時に、IDAの業務・組織運営を向 上させるための管理ツールとして活用される。 IDA17期間中にIDAが実施を約束する行動が53、 及び当該行動を通じて実現したい成果と向上させ たい業務・組織運営を定量化した指標が111提示 されている*12。これらの行動や指標については、 IDA事務局が毎年集約・把握し、IDA-17中間レビ ュー会合(2015年秋に開催予定)や理事会等の場 でドナー国に報告される。

3.3.脆弱・紛争後国向け資金配分の

強化とPBA配分方程式の変更

今次増資の主要議題の一つには、脆弱・紛争後 国(FCSs)向けの資金配分を強化することがあっ た。FCSs向けの資金配分の強化は、IDA-16期間 に開催されていたワーキンググループ等の議論を 経て、増資交渉が開始する前に、既に決定的な流 れとなっていた。欧州の主要ドナー国や事務局は、 現在のPBA制度に基づく資金配分方式では、パフ ォーマンスの低いFCSs向けの資金を十分に確保で きないとの問題意識の下、資金配分方式の大幅な 変更を模索した。 これに対して日本は、支援再開国や紛争後国へ の特別な資金配分の必要性は認めるものの、援助 資金を最大限効果的に使用していくとの観点から これまで長年の議論を経て築き上げてきたパフォ ーマンスに基づく配分メカニズムを尊重すべきで あることを繰り返し主張した。交渉の結果、PBA 方程式に以下の修正が施されることで決着した。 ①



新たに「転換期に直面する国(=turn-around 国)」との概念を設け、PBAによる配分の例外 (支援再開国及び紛争後国への特別配分)の対 象を拡大するとともに、例外的な配分を受ける 国に対する支援額を1.5倍程度増額する。 ②



配分額を定める方程式においてパフォーマン ス指標のウェイトを下げる。 ③



最低基礎配分額を年間3百万SDRから4百万 SDRへ増額する。 事務局試算*13によると、これらの手当てを施す ことにより、FCSsへの資金配分はIDA-16に比べ 約2割増加する。今回の増資交渉の議論では、単 にFCSsに対する資金配分の拡大を目指すような議 論に流れがちであったが、日本としては、FCSsは 総じて政府のガバナンスに課題を抱える国が多い ことを指摘し、援助資金を最大限効果的に使用し ていく観点からは、個別の国別支援フレームワー クにおいて具体的な支援内容が計画され、上記の 成果測定システム等を通じて開発成果がきちんと モニターされることが重要であることを説き、オ ランダとの共同ステートメントでFCSs支援に関す る課題を指摘する等、FCSsへの資金配分強化に寄 りすぎた議論を正常化する役割を担った。

3.4.中所得国に対する支援の考え方

(インド向け卒業経過措置の導入)

今次増資のもう一つの主要な論点は、一人当た り所得が中所得国の水準に達した国に対する支援 のあり方であった。特に、IDA資金配分の約11% を占めるインドがIDAの支援終了(IDAからの卒 業)対象であったが、インドについて、他の卒業 対象国(アンゴラ、アルメニア、ボスニア、グル ジア)と同様にIDA資金を皆減すべきか否か、経 過措置が必要ではないか等の議論が行われた。 この議論の前提として、所得水準が向上した中 所得国における所得格差の是正は税収等の自己財 源によって賄われることが基本であり、限られた IDA資金は、低所得国の開発を促進し、貧困を削 減するために充当されるべきであるとのドナー国 間で共通の理解がある。なお、IDAから卒業した 国は、IBRDから借り入れを行うことが可能であり、 通常、世銀グループとしての資金支援総額の減少 が問題として挙げられることはない。 ただし、インドについては、既にIBRDの大口与 信規制(SingleBorrowersLimit:SBL)に到達し *12)IDA (2014) Annex 1(60~88頁)に全てがまとめて記載されている。 *13)IDA (2013) 24頁Table 2を参照のこと

(9)

つつあり、IDAからの支援資金の減少分をIBRDか ら借入れることは困難であった。他方、インドに は世界の最貧困人口*14の約3分の1が居住して おり、世銀グループの二大目標を達成するために も、引き続き世銀グループとしてインドの貧困削 減政策に関与していくことが肝要である。加えて、 今次増資においては、上述の通り、融資方式の導 入により、インド向け支援資金を確保できること が見込まれていた。そこで、我が国としては、イ ンドに対してIDAの融資条件を厳格化し融資規模 を抑制した上で、支援を継続させる経過措置を導 入することが望ましいと考え、事務局が提案した ①一人当たり所得が相対的に低い、②貧困削減ニ ーズが大きい、③IDA卒業により世銀グループか らの融資額が著しく減少する国を対象とした経過 措置の導入を支持した。議論の結果、米国、英国 を含む多くの国が我が国の主張に呼応し、インド 向けの卒業経過措置が導入されることとなった。

4.拠出金額・シェア

増資交渉会合の最大の目的は、増資総額を確定 し、各国の割当額を合意することである。IDA増 資はIMFの増資や国連拠出金とは異なり、世界経 済に占める経済規模等を踏まえて一定の方程式に 基づいた割当がなされる訳ではなく、各国が自国 の財政状況やODA政策を踏まえて任意に拠出金額 を定める*15。そのため、増資の都度、拠出順位や シェアに大幅な変動が生じる。 図3 主要国シェアの推移 各国の国際開発協会(IDA)への貢献 10.9% 米:11.1% 英:13.0% 20.8% 20.0% 20.0% 18.7% 16.0% 12.2% 10.0% 日:10.0% 独:6.1% 仏:4.9% 加:3.9% 伊:2.1% 中:0.9% 0% 5% 10% 15% 20% 25% IDA9

(1990年) (1993年)IDA10 (1996年)IDA11 (1999年)IDA12 (2002年)IDA13 (2005年)IDA14 (2008年)IDA15 (2011年)IDA16 (2014年)IDA17

イギリス アメリカ 日本 ドイツ フランス カナダ イタリア 中国 表3 主要国の累積拠出額・シェアの順位(2013年6月末) (単位:百万ドル) 国名 累積出資額 % アメリカ 46,543.24 20.75% 日本 40,890.74 18.23% イギリス 24,976.23 11.14% ドイツ 24,068.28 10.73% フランス 15,898.60 7.09% カナダ 10,228.32 4.56% イタリア 9,551.68 4.26% オランダ 8,201.18 3.66% スウェーデン 7,459.65 3.33% オーストラリア 4,076.81 1.82% 全体 224,303.00 100.00  *14)世銀は、絶対的な貧しさを測るための国際的な水準として、1日1.25ドルを「最貧国ライン」と定め、それ以 下で生活する人々を最貧困人口と呼んでいる。

(10)

日本は、1960年のIDA設立年からIDAの主要ド ナーであり、1980年代後半から90年代にかけて 20%以上のシェアとなる拠出を行う等、累積出資 額では米国に次ぐ第2位となっている。 図3を見ると、2000年代に米国・日本が拠出割 合を大幅に減らす一方、英国が拠出割合を増やし、 IDA-15及び今回増資においては、米国を抑えて第 1位となっていることが分かる。 今回の増資への拠出について、日本としては、 増資交渉の過程で日本の主張がIDAの政策に大い に反映されたことを評価し、厳しい財政状況に配 慮しつつも、国際社会に対して日本が途上国支援 を積極的に行っている姿を示すため、出資と融資 を組み合わせることで、IDAの業務量拡大へ貢献 することとした*16。具体的には、第4回会合(於: モスクワ)にて、出資3,119億6,051万円(円建で ▲4.4%減、SDR*17建で▲13.6%減)、融資1,903 億8,645万円の拠出を行うことを表明した。貢献 シェアについては、融資による貢献額も譲許性部 分をグラント相当額として一定程度算入されるこ とから、シェア二桁となる10.0%を確保し、順位 についても前回同様第3位となった(累積では第 2位)。なお、出資と融資を単純に合計した資金 量ベース(34.0億SDR)では、英国(33.5億SDR) を抑えて第1位となった。 これに加え、2005年のグレンイーグルス・サミ ットでの合意に基づき、MDRI費用の我が国負担 分222億8,053万円をIDAに払い込むこととした。

5.国会審議

上記IDAへの資金拠出のうち、融資による貢献 分を除き、第17次増資に係る出資分及び重債務貧 表4 IDA17主要国のコミット額 貢献シェア (今回←前回) グラント拠出 (百万SDR) 前回比SDR建 (自国通貨建) ローン拠出 (百万SDR) 資金量計 (百万SDR) 英 13.00% ←12.00% 2,857.8 6.0%増 (5.6%増) 493.6 3,351.4 米 11.13% ←12.08% 2,568.4 ▲5.3%減(▲5.0%減) ― 2,568.4 日 10.01% ←10.87% 2,110.2 ▲13.6%減(▲4.4%減) 1,287.9 3,398.1 独 6.05% ← 6.45% 1,396.5 ▲3.6%減(▲5.2%減) ― 1,396.5 仏 4.91% ← 5.02% 1,014.2 ▲10.1%減(▲9.8%減) 373.5 1,387.7 加 3.92% ← 4.05% 904.0 ▲0.5%減(▲0.6%減) ― 904.0 瑞 3.46% ← 2.95% 797.9 20.0%増 (6.4%増) ― 797.9 蘭 2.81% ← 2.99% 649.3 ▲3.3%減(▲7.6%減) ― 649.3 スイス 2.30% ← 2.10% 530.9 12.6%増 (12.6%増) ― 530.9 伊 2.14% ← 2.36% 495.0 ▲6.4%減(▲8.1%減) ― 495.0 中 0.86% ← 0.48% 199.1 86.0%増 (86.6%増) 663.5 862.5 サウジアラビア 0.34% ← 0.33% 77.6 同額 (0.3%増) 78.1 155.7 計 16,823 2,896 19,719 ※2014年5月5日成立総務投票時 *15)そのため、各国の拠出金額総額が、増資設定(目標)額に届かない事態が生じる。増資設定額と各国の拠出金 額総額の差は「構造ギャップ(Structural Gap)」と呼ばれ、増資期間中に各国からの任意の追加拠出により 埋められることが期待される。 *16)また、同時に増資プロセスを行っているアフリカ開発銀行グループのアフリカ開発基金、日本人がトップを務 めるグローバル環境ファシリティ(GEF)への貢献額も同時に検討する必要があった。 *17)SDRは、IMFの割当額(クォータ)やIDAの増資規模と言った国際的な公的取引・取極めの表示単位としても 使用されており、その価値は現在4通貨のバスケットにより決定されている(米ドル41.9%、ユーロ37.4%、 英ポンド11.3%、日本円9.4%)。IDA-17では2013年3~8月の平均レート(1SDR=147.83円)で設定 された。前回増資の際は1SDR=133.67円であり、9.6%の円安となっている。

(11)

国際開発協会(IDA)第17次増資について

困国に対する債務救済費用の我が国負担分の総額 3,342億4,104万円の払込みを行うためには、「国 際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律」を 改正し、IDAに対し追加出資する権限を政府に付 与することが必要である。 国会では衆議院財務金融委員会及び参議院財政 金融委員会で「国際開発協会への加盟に伴う措置 に関する法律の一部を改正する法律案」の審議が 行われ、IDA出資と国益との関係、国民への広報 のあり方、IDAの財務健全性や業務内容、世銀に おける日本人幹部や職員の増加策等について活発 な議論が行われた。こうした議論を経て、同法律 案は、本年3月25日に衆議院、28日に参議院にお いて全会一致で可決され、成立した。 財務省としては、現在、国会審議を踏まえ、国 会で指摘された事項等を実現すべく取り組んでい る。例えば、広報については、IDA増資のプロセ スや意義を日本語で広く説明すべきとの意見を頂 戴したことを受け、世銀に増資交渉のとりまとめ 文書の要約の日本語訳を行うよう要請した。その 文書の翻訳*18や本稿が、IDA増資プロセスの理解 向上の一助になれば幸いである。 また、日本人職員については、財務省政務三役 を含めた日本側からの強い働きかけにより、日本 人のみを対象とした東京での採用面接が実施され ており、この数年で徐々にではあるが職員数は増 えてきている。上級幹部については、本年5月23 日に、財務省大臣官房審議官の仲浩史氏が世銀の 副総裁兼総監査長に任命されたことは特記すべき ことであろう。

6.最後に

今次増資では、日本を含め多くのドナー国が厳 しい財政状況に直面し、援助資金の負担能力には 限界がある中、途上国支援に必要な資金量を確保 できるよう、ドナー国と世銀事務局が互いに知恵 を絞り、新たに融資貢献方式を導入したことによ り、過去最大の資金規模を達成することができた。 今次増資交渉において、日本が終始議論を主導 することができたのは、増資会合の場で日本代表 団が様々な角度から効果的な発言を重ねたことも 大きいが、それに加えて、交渉妥結の1年以上も 前から今次増資の最重要課題は融資貢献方式の導 入であることを見定め、事務局と共に非常に綿密 な分析を行いその制度設計にも大きく関わってい たことで、他国も日本の意見を尊重する状況を作 ったこと、そして、脆弱国に対する資金配分強化 に流れがちであった議論に対して、バランスを取 るよう努めたことで、インドやベトナム等のアジ ア受益国や中南米や東欧・中央アジアの代表者か らも日本をサポートする雰囲気が出来上がったこ とにもよる。 IDAに対して、融資貢献を可能としたことは今 次増資交渉の大きな成果であり、今後の他機関の 増資にもインプリケーションを持つこととなろ う。本稿が今後の我が国の開発政策の策定、他機 関の増資における方針策定の一助になれば幸いで ある。 *18)以下のサイトに掲載されている。 http://www.worldbank.or.jp/ida/pdf/ida17/IDA_Executive_Summary_J.pdf 参考文献

IDA(2013)“Updated IDA17 Financing Framework and Key Financial Variables”

IDA(2014)“Additions to IDA Resources: Seventeenth  Replenishment - IDA17: Maximizing Development Impact”

参照

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