幼児期の文字にかかわる経験に関する研究―保育園におけるあそびを中心に―

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− 41 − 幼児期の文字にカ功追わる経験に関する研究 →呆育園におけるあそびを中心に一 人間教育専攻 幼年発達支援コース 木 元 玲 奈 1.問題の所在と研究の目的 近年、小学校に入学直後の子どもたちに起こ る、授業が成り立たない様子の小1フ。ロプレム が問題視されている。保育所保育指針では、求 められていない「文字を書くjということが、 小学校に入学するといきなり求められ、それに よっては混乱が起こ札小1プロブレムの一因 に発展しているのではなし、かと考える。この状 況に対応するために、保育園によって小学校入 学前準備として、文字学習や文字を使ったあそ び、を行っている保育園も少なくない。そこで本 研究においては、保育園の子どもたちはどのよ うにして文字を使って遊んで、いるのか、またど のようにして文字に触れたり、かかわったりし ているのかを保育園で、のあそびを中心に探って いきたい。また、文字を保育士が教える際に は、どのような指導や支援を必要とし行ってい るのかを探っていきたい。 2.研究方法 (1)調査対象 徳島県徳島市内のA保育園に通う幼児 (5歳 児)と担当保育士(A保育者) (2)調査時期 平成28年 11月 平成 29年 8月まで 3. 調査方法 (1)あそび、の観察とエヒ。ソードま録 保育園での「文字」にかかわる幼児のあそび (自由あそびと設定あそび)の観察を行い、エ 指 導 教 員 塩 路 晶 子 ピソード記録をとる。また、子どもがあそびの なかで書いた文字そ喉育者の環掛薄成などを写 真撮影する。調査データは修士論文のみに使用 し、匿名性を保つことなどを確認した。 ( 2)インタピ、ュー調査 「保育士の考える文字にかかわる経験」につい て担当保育士へのインタビュー調査を行う。 4.分析方法 (1)文字にかかわるあそび、のエヒ。ソード記録 の分析 (2)インタビュー調査の分析 1 Cレコーダーに録音したインタビュー内容を 文字化し、

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法によって分析する。 5. 結果と考察 子どもたちは、あそびの中に文字を取り入れ ることに臨時することなく、自然と受け入れ溶 け込んであそびが展開されている。文字が書け る、 書けないにかかわらず子どもたちがあそび を展開するうえで重要なあそびの道具となって いる。文字を正しく書くことよりも、文字を書 くことの楽しさ明喜しさを味わうことが最優先 されている。一方で子どもがあそびの中で、文 字を間違って書く場面は多くある。多くの場合、 文字を書いた本人は、気付いていないことが多 し 、。 しかし、 5歳児クラス前半では、子どもの文 字の間違いを修正させる姿は他の子どもたちゃ、 A保育者にも見られなかった。それは、 書くこ との楽しさを最優先させるという思いが、 A保

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− 42 − 育者の中にあるからである。 また、子どもたちも文字をあそびの中に取り 入れる子どもが少ない。間違いを見つけた場合 であっても、 A保育者は直させたり、注意した りすることはなく、あそびを常に見守る姿が見 られ

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'4, また、文字を聞かれた時にはしっかり と発音して見せる姿も見られた。保育室の環境 構成に関しても、文字が至る所に取り入れられ、 常に目に入るような環境が構成されていた。低 年齢児のクラスでは絵で表すものが、 5歳児ク ラスになると絵と文字の両方で表されていた。 自然と文字を環境の中に取り入れることにより、 なんとなくで、も子ど、もたちが文字を目にする機 会を得られるような配慮、があっ

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'4, インタビュ ーにおいても、子ど、もに味あわせたいものとし て、文字を書くことの楽しさや嬉しさを味わっ てほしいということが語られた。5歳児クラス 後半になると、文字を使ってあそぶ子ど、もたち がほとんどで、あった。また、文字はあそびの中 で必要不可欠なものとなる。あそびの中で文字 の間違いがあった場合、それを指摘したり注意 したりするのは子ども同士であった。文字を間 違って書いた子どもも、注意されたことに怒る ことなく、 素直に間違いを受け入れている。受 け入れてはいるが、あそびの最中に指摘があっ た場合には、間違いを直すことは今回の観察事 例で、は見られなかった。あそびを最優先にした い気持ちゃ他の子どもたちとのあそびの流れを 逸絶えさせることになってしまうためで、あった。 また、あそびの中での文字についての考えとし ての保育士の対応として、子どもの発達伏況に 合わせ、子どもたちが文字を書くことに対して 嫌気を感じることがないように経験させている ことも分かった。 設定保育でのプリント学習の際には、間違い を指摘したり、注意したりするのはA保育者で あった。その際は、必ず子どもたちが間違いを 直す姿が見られた。いつものあそびとは違った、 プリントと鉛筆、消しゴ、ムを使った時間に子ど もたちの中で、特別な時間とし、う認識があるの かもしれない。椅子の座り方や、鉛筆の持ち方、 姿勢について意識付けるような環境のなかで行 われるためである。子どもたちに小学校入学を 意識させ、戸惑わないような援助であると言え る。幼児期の子どもの文字を使った経験として、 達胸惑や満足感を経験することがA保育者が考 える文字指導の基礎で、あった。文字を正しく書 いても、間違って書いても達成感や満足感が感 じられるようは配慮が常にあった。正しく書く ことが良い、間違って書くことが悪いという考 えではなく、子どもが文字を書くことによって 楽しむことや感じるものが重要であるとされて いた。書くことの意欲を失わないような取り組 みの中で保育がなされていた。また、文字を教 える際にも子ども一人ひとりに合った指導がな されており、決して一斉指導だけはなかった。 設定保育においては一斉に指導しながらも、個 人的な指導や子ど、もの発達伏況に合った指導を 通して子どもに文字を指導していた。指導をす る際に大切なことは、楽しさ明喜しさを味あわ せることから始まり、 一人ひとりに合った指導 を行うことである。 本研究の中で、保育において子どもと文字に かかわる環境や道具、全てに意味があることが 明確になった。 保育者が子どもの鞘敷や発達状況をしっかり と把握し、どのように指導したいのか、文字に かかわらせたいのかを明確にすることから保育 における子どもの文字へのかかわりは始まるの かもしれない。

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