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ウニ卵母細胞における核小体内DNAの組織化学的検索

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( 東 女 医 大 誌 第54巻 第9号) 頁 851~860 昭和59年9月)

ウニ卵母細胞における核小体内

DNA

の組織化学的検索

網 蔵

東京女子医科大学 第二解剖学教室〔主任:飯沼守夫教授〕

コ 子

一 円 ム ポ ド ( 受 付 昭 和59年6月28日〉

A Histochemical Study on the Intranucleolar DNA in Sea Urchin Oocytes Reiko M. AMIKURA

Department of Anatomy (Head: Prof. Morio IHNUMA) Tokyo Women's Medical College

The main component of the nuc1eolus is transformed from fibrillar to granular along with the growth of the oocyte during sea urchin oogenesis. In order to visualize the intranuc1eolar DNA embedded in the fibrillar component area, two stain techniques; NOR-silver staining and Feulgen reaction, are employed. The fibrillar component area is stained intensely by NOR-silver staining and the area also exhibits the positive reaction by Feulgen stain. In addition to this observation

the components of the nuc1eolus are investigated by electron microscope after digestion by pronase and RNase. In contrast to the complete removal of the granular component, the fibrilar component remains after a certain incubation time. These results indicate the existance of intranuc1eolar DNA in the fibrillar component area of the nuc1eolus. 緒 自 種々な動物の卵母細胞の成長過程において,核 小体は著しい形態的変化を示す加.卵黄形成を開 始する以前の幼若な第一次卵母細胞では, rDNA の細糸の周囲に,繊維成分に富んだ核小体が出現 し,卵黄形成期の卵母細胞の核小体では, pre -ribosomal granulesの 形 成 に と も な っ て 繊 維 成 分の周囲に頼粒成分が生じる.卵黄形成を終了し, 成熟した卵母細胞では,頼粒成分に富んだ核小体 が形成される(マウス3),Xenopus laevis4),硬骨 魚5)).著者はウニ卵母細胞においても同様に,繊 維成分に富んだ接小体から頼粒成分に富んだ核小 体へと形態的変化を示すことを,電子顕微鏡によ る観察ならびに光学顕微鏡レベルでの Nucleolar Organizer Regions CNOR)銀染色により明らか にした6)7) NOR銀染色は染色体上のrDNAの存在部位, 即ち核小体形成部位 CNOR)を検出する方法とし て知られているが伽この方法で静止期の細胞の 核形質を染めると,核小体の繊維成分および繊維 成分中心 CFibrillarCenter)が染まることが知ら れており10) この部分にrDNAが存在することが 電顕組織化学的手法によって明らかにされてい る1九卵母細胞におけるrDNAの存在は光学顕微 鏡レベルで、は,Xenopus laevisの幼若な卵母細胞 の核小体にDNAのキャップとよばれる Feulgen 反応陽性部位として報告されている12) 卵黄形成 期のウニ卵母細胞の核小体ではFeulgen反 応 陽 性部位は認められていないし13) 卵祖細胞や幼若 な卵母細胞を用いてのFeulgen反応による核小 体内DNAの検索は行なわれていないので, NOR 銀染色と Feulgen染色を行ない,染色部位を比較 することにより,光学顕微鏡レベルで、の核小体内 DNAの 存 在 を 明 ら か に す る た め に 本 研 究 を 行 なった. 材料および研究方法 卵黄形成期のパフンウニ CIler.nicentrotus

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ul -cherrir.nus )の卵巣を凶切り出し,カルノア液に よって室温で 4時間固定後直ちに95%エタノール を経て純エタノールで、脱水し, Histosec Cメルク

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社〉に包埋した.厚さ3μmの切片を作成し,洗浄 したスライドグラスに貼付し,乾燥後キシレンを 用いて Histosecを 除 い た あ と でNOR銀染色あ

るいはFeulgen染色を行なった.

NOR銀染色はLikovskyとSmetana(1981)15) の方法を改変して用いた 20mgの硝酸銀 (Ac -culate Chemical & Scientific CoJを3回ガラス 蒸留した水(D.D.WJ20mlに溶解して硝酸銀溶液 を作成した.ホルマリン還元液の作成は原法に 従った.スライドグラス上に硝酸銀溶液を8滴お とし,室温で約10分間放置する.次にホルマリン 還元液を8滴加え,カバーグラスをかけて, 600 C に加温したホットプレート上にのせる.この際白 熱灯を用いてスライドグラスに3,000ルクスの光 をあて,約10分後標本が,肉眼でみて黄色に変化 するのを確かめる.蒸留水で余分の染色液を洗い おとし,脱水,封入する. Feulgen染色は,1NのHClにより,60o Cで8分 間加水分解したのち, Shi出i百

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試薬でで、染色したl削6引) 電顕の酵素消化法はl

)L,次のようにして行なつ た.細切した組織片を2%パラホノレムアルデヒド と2.5%クソレタールアノレデヒド液 (O.lMカコジル 酸ナトリウム液, pH 7.3)を用いて 1時間固定, さらに四酸化オスミウム溶液(カコジル酸ナトリ ウム液, pH 7.3)で1時間後固定し,脱水後,エ ポキシ樹脂に包埋する.超薄切片をホルムパウル 膜をはったニッケルメッシュ上にすくいとり,切 片を下がわにして12%過 酸 化 水 素 水 に30分間浸 す.水洗してから3TCの0.05%pronase (科研化 学〉溶液 (pH7.3)で3時聞から18時間処理後蒸 留 水 で 洗 浄 し , RN ase (W orthington Bio -chemical CoJ溶液 (lmg/ml)で3TCにて2時聞 から

4

時間反応させたのち蒸留水で洗浄,酢酸ウ ラン水溶液とクエン酸鉛水溶液で染色して電顕観 察を行なった.RNase溶液は,はじめpH5.0の 酢酸ナトリウム水溶液に溶かし, 800 Cで10分間加 熱してDNaseを失活させたのち冷却して, pH 6.5に調整して使用した.酵素消化法の対照群とし ては,切片を作成し(a) 12%過酸化水素水処理を 行なわずに酢酸ウラン水溶液とクエン酸鉛水溶液 で染色したもの, (b) 12%過酸化水素水処理後, 染色したもの, (c) 12%過 酸 化 水 素 水 処 理 後 pronaseによる消化のみを行ない染色したもの, (d) 12%過酸化水素水処理後,RNaseのみによる 消化を行ない染色したものについて観察した. 結 果 核小体の形態変化に基づいてパフンウニ卵形成 過程の細胞を6段 階 (stage1 ;卵祖細胞.stage 2;幼若な卵母細胞.stage 3 ;成長期Iの卵母細 胞.stage 4 ;成長期IIの卵母細胞.stage 5 ;成長 期IIIの卵母細胞.stage 6;卵 細 胞 〉 に 区 分 し た6ト8) NOR銀染色を行なうと(Figs.1a~ f),卵 祖細胞 (Fig.1a, stage1)の核小体(矢印〉は核 膜に接して位置し強く染色される.小さな卵母細 胞 (Fig.1b, stage 2 ; Fig.lc, stage 3)では核小 体の中心部分が強く染色され,周囲を弱L、染色域 がとり囲んでいる.成長した卵母細胞 (Fig.1d, stage 4)では核小体空胞をとりかこむようにして 弱L、染色域が認められ,その中にいくつかの強く 染まる部分が観察できる.卵黄形成を終了した卵 母細胞 (Fig.1e, stage 5)では核小体は全体的に 弱く染まり,内部に強く染まる小領域と数個の核 小体空胞とが認められる.卵細胞 (Fig.lf)では 細胞形質中に好銀性頼粒が多数認められる.これ らの好銀性頼粒は卵祖細胞や卵母細胞の細胞形質 には認められなかったものである.卵核胞はすで に崩壊し雌性前核 (PN) が形成されている. NOR銀染色を行なったものと同じ成長段階の 細胞について Feulgen染色 (Fig.2a-IIからFig_ 2f-II)を行ない,同一細胞を位相差顕微鏡で(Fig. 2a-IからFig.2f-I)観察した.卵祖細胞 (Fig.2 a, stage1)では,核形質のクロマチンと核小体が 強染され,クロマチンと同様に核小体も, Feulgen 反応陽性であることが確認できる.卵巣組織を縁 どりするように並んだ細長い核は卵巣上皮細胞の 核である (Figs.2a~ c).幼若な卵母細胞 (Fig.2 b, stage 2)では卵核胞のクロマチンおよび核小体 の中心部分がFeulgen反応陽性である.さらに成 長した卵母細胞 (Fig.2c, stage 3)でも同様にク ロマチンと核小体の中心部分が陽性であるが, stage 2 (Fig. 2b)と比較すると染色性は弱い.顕 微鏡下ではこの部分は赤紫色を呈していた.NOR 852ー

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銀染色の結果と比較すると, NOR銀染色による 強染部位 (Figs.1a -c)とFeulgen反応陽性部位 (Figs. 2a -c)とはほぼ重なっている.さらに成長 の進んだ段階である stage4 (Fig. 2d)やstage5 (Fig. 2e)ではFeulgen反応陽性部位を確認する ことは困難ではあるが, stage 4 (Fig. 2d)では卵 核胞 (N)のグロマチンと同様に核小体内部が弱 い赤紫色を示し, stage 5 (Fig. 2e)では核小体周 囲部が弱く Feulgen反応陽性である.stage 6 (Fig. 20では卵細胞の雌性前核がFeulgen反応 陽性である.Fig. 2dで認められる核(矢印〉は卵 巣のAccessorycel1の核である.stage 4 (Figs. 1d, 2d)の細胞については酵素消化法を行なった のち電顕観察した.この時期の核小体は直径8μm におよぶ較小体空胞をもちCFig.3a),繊維成分と 頼粒成分とから構成される (Fig.3b;f, g).同一 切片ではないが,Fig.3bはFig.3aの時期の他の 核小体の一部拡大像である.卵核胞にはnu

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ear bodyあるいはmicronu

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eo1iとよばれる構造が 認められる(Fig.3a,矢印).細胞形質中には卵黄 頼粒が多数認められる(Fig.3a).切片をpronase で18時間, RNaseで4時間処理すると(Fig.4a), 核小体空胞を取り囲む核小体部分がリング状に消 化された.micronu

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eo1iや卵黄頼粒も消化され た.また酵素による消化時聞を短縮し,pronaseで 3時間, RNaseで2時間処理した場合(Fig.4b) でも同様に核小体構成成分が消化されたが,核小 体空胞 (NuV)や核形質は消化されなかった.処 理条件は異なるが,Fig.4bはFig.4aの時期の他 の核小体の一部拡大像である.核小体構成成分の うち頼粒成分は直径15nmの粒子状 (Figs.3b, c, 矢印〉の構造を呈するが,酵素処理を行なうと粒 子状 (Figs.4b, c,矢印〉あるいは不定形野として 白くぬけ (Fig.4b; g),繊維成分に富んだ領域 (Fig. 3b; 0 は酵素処理を行なっても消化されに くい領域 (Fig.4b; 0であると思われる.対照群 のうち, 12%過酸化水素水処理を行なったものと 行なわないものとでは多少電顕像のコントラスト に差が生じるが,微細構造の変化は認められな かった.pronase処理のみ,あるいはRNase処理 のみによる消化法では核小体構成成分の除去は不 完全であった. 考 察 卵形成過程にあるパフンウニの生殖細胞につい て, NOR銀染色を行なうと核小体の繊維成分に 相当する部位が強く染色され, NaOHやタンパク 質分解酵素による前処理によって染色性が失なわ れ,DNase,RNase, HClなどによる前処理では染 色性が低下しないことから,この方法で特異的に 染色される物質は酸性タンパク質であることが明 らかにされている7) 今回ノ之ラフィン切片での Feulgen反応と NOR銀染色の結果を比較してみ たところ,核小体内部のFeulgen反応陽性部位と NOR銀染色による強染部位とは,卵祖細胞(Fig. 1a, Fig. 2a)やstage1やstage3の卵母細胞(Fig. 1b, Fig. 2b; Fig. 1c, Fig. 2c)では一致していた. この部位が繊維成分によって構成されていること は既に報告したベ stage4の卵母細胞について酵 素消化処理を行なったのち電顕観察を試みた結 果, NOR銀染色で強く染まる部分である核小体 の繊維成分域はpronaseとRNase処理によって は,穎粒成分域よりも消化されにくかった.この ことは繊維成分域にRNP(ribonu

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eoprotein)の 他にDNAが存在するとL、う可能性を否定するも のではない.事実,培養細胞

(TG

cel1)を用いて オスミウム・アミンを用いた染色法により DNA を検索し NOR銀染色による好銀性タンパク質の 分布と電顕レベルで、比較したところ,核小体の繊 維成分域にDNAおよび好銀性タンパク質が重 なって分布していたとの報告がみられる11) さら に両生類 (Pleurodeles)卵母細胞の核を微小遠沈 法CMi11er'stechnique)19)~こより展開し,グロマチ ンを分散させメッシュにすくいとり, NOR銀染 色を行ない電顕観察をすると, rDNAの軸糸に そって NOR銀染色による銀粒子の沈着が認めら れる20) これらのことから,卵形成過程のウニ卵母 細胞についても核小体に認められたFeulgen反 応陽性部位にはDNAが分布しており,その分布 はNOR銀染色による強染部位と重なっており, 形態的には核小体の繊維成分域に相当するといえ る 本研究により,光学顕徴鏡レベルでも, NOR銀

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染色による強染部位と Feulgen反応陽性部位と が重なった分布を示すことがはじめて明らかにさ れた.卵母細胞の成長にともない,核小体内部お よび卵核胞中のFeulgen反 応 陽 性 部 位 の 判 定 が 難しくなってくるのは,これらの部位においては, グロマチンが極めて分散しているためと思われ る. NOR銀染色を行なうと卵母細胞では細胞形質 に好銀性頼粒が認められないが,卵細胞では好銀 性頼粒が多数認められた(Figs.1e, lf).このこと は既に報告してあるが7) 最近行なったイトマキ ヒトデを用いた実験で,

1

.

メチルアデニンによっ て卵成熟を誘起し,卵核胞崩壊過程での好銀性物 質の分布の変化を追跡したところ,卵核胞崩壊と 同時に細胞形質に好銀性物質が出現することがわ かった(未発表). したがってウニ卵母細胞におい ても細胞形質中の好銀性頼粒は,卵母細胞の卵核 胞に蓄積した物質に由来するものと考えられる. 稿を終えるにあたり,御指導,御校聞をいただきま した飯沼守夫教授に深謝致します.また材料の採集に 御協力いただきました東京大学理学部付属三崎臨海 実験所,お茶の水女子大学理学部付属舘山臨海実験所 の皆様に感謝致します. 〔本研究の一部は東京女子医科大学基礎プールの補 助を受けた.) 文 献 1)Goessens, G.: Nuc1eolar structure. Int Rev Cyto 87 107 -157 (1984)

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Fig. 1 Seaurchinoogenetic cells.NOR.silverstaining.a, stage1, oogonium(og), nucleolus (aπow); b, stage 2, oocyte(oc); c, stage 3, oocyte(oc), Nucleus(N), Nucleous (Nu); d, stage 4, oocyte, Nucleolarvacuole (NuV); e, stage 5, oocyte;f, stage6, ovum (ov), femle pronucleus (PN), argyrophilic particles inegg cytoplasm (arrows).

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NU Fig, 2 Sea urchinoogenetic ceJls.Feulgenstaining. a. stage1; b. stage2 ; c. stage 3; d. stage 4 ; e. stage 5 ; f. stage 6. The ceJls were observed with phase contrastmicroscope(Ieft series. from a-I.tof-I)afterFeulgenstaining(rightseries. from a-IItof-II).Abbreviations are referred to

Fig.1.

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Fig. 3 Oocyte and nucleolusat stage4目Smallpartofring-shaped nucleolus(a) is magnified(b)

(a); micronucleoli(arrows), nuclear membrane (N M), yolk granules(Y), (b);nucleolar vacuole(NuV), Nucleoplasm (N), granular components (arrows), granularcomponent area

(g), fibrillarcomponent area(0, fibrillogranular component area(fg). (c) ; granular component ofthe nucleolusathigh magnification.

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Fig. 4 Oocyte and nucleolus atstage4. Specimens are incubated in pronase for 18 hours and RNase for4 hours(a), and in pronase for3 hours and RNase 2 hours(b). Small partofring.

shapednucleolus(a) is magnified(b). Abbreviationsarereferred to Fig. 3.Granular component

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