(東京女医大誌第27巻第12号頁766一 773昭和32年12月置
心臓疾患死亡率に関する一考察
一静岡県における死亡牽の推移について一
1 緒 東京女子医科大学衛生学教室(主任吉岡博人教授) 安 楽 城 元 ア ラ キ ハジメ(受付昭和32年10月10日)
言 心臓疾患死亡率が最近におけるわが国国民死因 の主因の一つとなってきたことに注目し,1)一.5)rg 者はさきに本邦心臓疾患死亡率の年代的推移を究 明し,その結果種々なる知見を得た4)、15)。 その得た知見のうちの一つとして,府県別死亡 率の年代的推移を明らかにすることにより二三の 興味ある傾向を観察し得た。すなわち各府県の心 臓疾患死亡率の年代的推移をみるに,その死亡率 の推移の傾向によって上昇型,静止型および下向 型に大別することが出来るものと考えられるユ。)。 今回は死亡率の推移にとくに著しい変動がな く,上昇の程度も極めて緩徐にてほぼ横這い状態 をしめして静止型と考えられる静岡,和歌山,高 知ほか数県のうち10),静岡県をこれら諸県の代表 として,主として全国と比較しつつその年代的推 移を襯察してみた。 ■ 資料および研究方法 資料;明治31年,明治36年,明治41年,大正2年 人口静態統計 大正9年,大正14年,昭和5年,昭和10年,昭和 22年,昭和25年 国勢調査報告 明治32年∼昭和18年,昭和22年∼昭和25年 人口動態統計 研究方法:明治32年,36年,41年,大正2年,9 年,14年および昭和5年,10年,22年,25年の10編年 の各年度について,全国総数,男女別ならびに静岡県 総数,男女別のそれぞれの粗死亡率および訂正死亡率 を算出し,これに加え上記各年度における全国および 静岡県の性別年令別死亡率を算出し観察した(但し, 明治32年は明治31年末人口を用いた)。 なお訂正死亡率は昭和5年度全国人口を標準人口と して計算した。皿 研究結果
1.総数の観察 表一1に上記10三年の各年度における男女総数 の粗死亡率ならびに訂正死亡率を,全国および静 岡県についてしめした。 また図一1は二一1を図示したものである。 二一1 心臓疾患死亡率(人口10−万対) 総数 全国・静岡県\全
国 静 岡 県揮嶢証死亡鞄死亡率訂曜亡率
明治32年!48.・3.45.・4 36 7 50.61 47.6 41 i 59.I L 54.5 !大正2年157.2 56.6
g 」 62.ol sg.g 14 1 64.0 1 62.9昭和5年158.2 57.9
10 i 57.6e 57.4 22 1 62.21 62.0 25 1 65.01 63.9 64. 4 1 60. 5 1 62. 6 i 64. 4 60. 8 64. 9 l E 58. 8 i 60. 8 62. 6 i 64. 8 60. 4 56. 5 59. 1 62. 0 61. 0 61. 1 56. 5 63. 7 62. 9 62. 9 図によって,静岡県の死亡率の年代的推移を全 国と比較しつつ観察してみる。 まず全国における推移は,年次をふるにしたが い粗および訂正死亡率ともに漸次上昇する傾向を しめしている。すなわち昭和25年は明治32年よ り,粗死亡率においては人ロ10万に対し16.7(65.0Hajime ARAKI (Department of Hygiene, Tokyo Women’s Medical College) : An observation on the death−rates of heart diseases 一Secular Changes of the death−rates in Sizuoka Prefecture (1899.v 1950)一
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図・一1 心臓疾患死亡率(人口10万対) 全国総数・静岡県総数 (昭和25年)一48.3(明治32年))だけ上昇し,訂正 死亡率においては18.5(63.9(昭和25年)一45.4(明 治32年))だけ上昇している8)。 これを静岡県についてみると,図にしめすごと く粗ならびに訂正死亡率とも死亡率の推移は年度 により若干の変動はあるも,特別大きな変化をし めさずに,死亡率は各年度とも人口10万に対し60 前後をしめしつつ,静止型の様相をしめしてい る。明治32年と昭和25年の死亡率を比較すると, 粗死亡率においては0.4(64.8(昭和25年)一no4.4 (明治32年前),訂正死亡率においても2.5(62. 9(昭 和25年)一60.4(明治32年))のごとく,両死亡率 とも昭和25年は明治32年より極めて僅か死亡率は ⊥昇するにすぎな1,・。 各年度について全国死亡率と比較すると,粗お よび訂正死亡率ともにほとんどすべての年度にお いて静岡県死亡率は全国死亡率より高率となって いる。すなわち粗および訂正死亡率ともに昭和25 年,これに加え粗死亡率においては大正9年,訂 正死亡率においては大正14年,昭和5年のみ全国 死亡率が静岡県死亡率より高率で,他の各年度は いずれも静岡県が全国より高率となっている。し かし前述のごとく上昇傾向をしめす全国死亡率 と,比較的静1ヒの状態をつづける静岡県死亡率の 両者の差は年度とともに僅少となり,明治32年に は粗死亡率において16.1(64.4(静岡県)一48.3 (全国)),訂正死亡率において15.0(60.4(静岡県) 一45.4(全国))と静岡県死亡率は全国死亡率を大 きく凌駕していたが,大正2年にはその差が粗死 亡率において7.2,訂正死亡率において5. 4と減 じ,昭和25年においては過曇における状態とは逆 に粗死亡率において0.2(65.0(全国)一64. 8(静岡 県)),訂正死亡率において1.G(63. 9(全国)一62.9 (静岡県))のごとく全国死亡率が静岡県死亡率よ りわずかに高率をしめすにいたった。 つぎに静岡県訂正死亡率が各都道府県訂正死亡 率中において占める順位をみるべく,明治,大正, 昭和(戦前)および昭和(戦後)の各年代の代表 として,明治36年,大正2年,昭和10年ならびに 昭和25年の各年度の順位,および全国ならびに静 岡県死亡率を表一Hにしめした。 表一H 静岡県訂正死亡率が府県別訂正死亡率中に 占める順位,静岡県・全国訂正死亡率「\避難贈正閥纏1
明治36年1 7 56. 5 47.6大正2剣
12 62. 0 56. 6隣郷⑪酬
12 II 63.7 1 57. 4Vz和25年i 24/・2.・{・3.・
表にしめすごとく,年代の推移とともにその順 位が低下している。すなわち明治年代においては 第7位の高位をしめしていたが,六正,昭和(戦 前)の両年代になるとややその順位は下り,全府 県のほぼ%にあたるエ2位となる。戦後の昭和25年 になるとさらに下降し,24位にて全府県のほぼ半 ばに位するまでになった。・この死亡率順位の低下 は,先に発表せるごとく,大多数の府県が年代と ともに心臓疾患死亡率が上昇する傾向をしめして いるにかかわらず10),静岡県死亡率が比較的静止 の状態を保持しているためである。なお表示せる ごとく4力年のうち昭和25年のみ全国が静岡県よ り高率をしめしている。 2.男女別による観察 表一皿は全国男女別および静岡県男女別の粗死 亡率ならびに訂正死亡率を表にしめしたものであ る。 1)男子について 図一Hは表一皿中の男子の死亡率についてのみ表一皿 心臓疾患死亡率(人口10万対):全国・静岡眼
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?D11’ 全 国 男 子 女 子添付率註死弊概弊i証死亡率
明治32剣.
22 ,1 大正’Q到
g l ,4 .1 昭 和 5 年 10 22 25如1
49. 0 55. 6 54. 1 58. 0 61.6 1 45. 7 47. 1 54. 0 51. 0 55. 9 64. 2 55.3f 58.7 57.4 1 61.2 61.9 1 66.0 64.9 j 68.9r
48. 8 52. 3 62, 7 61. 7 66. 0 66. 4 61. 1 57.・8 62.4 1 65.1 1 45. 6 48. 8 55. 7 59. 8 62. 2 63. 1 58. 4 55. 1 59. 7 60. 3 静 岡 県 男 子 粗死亡率「訂正死亡率 i 61. 4 56. 1 E9.9 58. 3 53. 3 59. 1 女 子 i“ .. .i 粗死亡率…訂正死亡率1 61. 3 Jr7. 5 60. 9 54. 3 52. 9 66. 7 64. 5 60. 1 56. 4 61. 1 52. 7 64. 9 70. 6 67. 5 6z3 1 63.i 6s.o 1 60.s 65.5 1 61.5 67. 6 64. 2 68. 8 63. 4 58. 6 58. 8 65, 1 65. 0 61.5 , 66.6 i 60.6 1 6z s I sz 4 1 61. 0 pe 心9。蹴
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図一∬ 心臓疾患死亡率(人口10万対) 全国・静岡嗅男子 図示したものである。 図のごとく,全国,静岡県の各々の死亡率の推 移は,総数の場合と同様な状態をしめしている。 全国男予についてみると,粗およば訂正死亡率と もに年代のすすむにつれて漸次上昇する傾向をし めしている9)。これを静岡県男子についてみると, 粗ならびに訂正死亡率ともに年度による死亡率の 推移に著朋な変化なく,年次とともに極めて緩徐 にやや上昇する傾向をしめしている。すなわち昭 和25年は明治32年より死亡率は粗死亡率において 3.1(64.5(昭和25年)一61.4(明治32年)),訂正死 亡率においては9. 2(67. 5(昭和25年)一58.3(明治 32年))だけ上昇している。 この全国,静岡県両死亡率を各年度について比 較すると,粗死亡率においては明治年代の各年度, および大正2年,ならびは昭和22年の計5力年, 訂正死亡率においては明治年代の各年度,大正2 年,9年および昭和ユ0年,22年の計7力士は,い ずれも静岡県死亡率は全国死亡率より高率で,と くに年度のさかのぼるにつれて死亡率の差が大と なっている。すなわち大正中期頃までは全国死亡 率は静岡県死亡率より低率で,その差がやや大で あったが,その後上昇傾向をつづけた全国死亡率 は,横這い状態をつづける静岡県死亡率に接近 し,戦後の昭和25年においては粗および訂正死亡 率ともに全国死亡率は静岡県死亡率を凌駕してい る。 静岡県男児の粗死亡率と訂正死亡率を比較する と,表一皿,図一Hにしめしたごとく,大正9年 までの前半の各年度,および昭和5年の,それぞ れの年度は訂正死亡率は粗死亡率よりやや低く, その他の年度は逆に訂正死亡率が粗死亡率よりや や高率をしめすも,一部の年度をのぞき他の各年 度とも両死亡率の差は極めて僅少で,人口10万に 対し12.0の差をしめした昭和10年をのぞいては, 各年度ともその差はほぼ1. 0∼3.0をしめすのみで ある。 2)女子について 図一田は全国ならびに静岡県のそれぞれの女子 の粗および訂正死亡率の年代的推移を図示したものである。 全国女子についてみると,粗および訂正死亡率 ともに死亡率は年代とともに徐々に上昇する傾向 をしめしている9)e
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図一皿 心臓疾患死亡率(人口10万対) 全国・静岡県 女子 静岡県女子においては表一皿,図一皿にしめす ごとく,死亡率の年代的推移は粗および訂正死亡 率ともに極めてわずかに低下する傾向をしめし, 昭和25年は明治32年より粗死亡率においては2.2 (67.3(明治32年)一65.1(昭和25年)),訂正死亡率 においても2.1(63。1(明治32年)一6ユ.0(昭和25 年))だけ低率となっており,上述のごとく差は 粗・訂正死亡率とも僅少で,かつまたほぼ同率を しめしている。また両死亡率とも全体的にみれば 横這い状態をしめしている。 全国死亡率と静岡県死亡率を各年度について比 較すると,粗死亡率においては大正9年および昭 和22年,25年のみ全国が静岡県より高率,あるい は同率をしめすのみで,‘その他の各年代各年度は いずれも静岡県が全国より高率で,その差は年代 のさかのぼるほど大となる傾向をしめしている。 これを訂正死亡率についてみると,昭和22密なら びに大正9年のわずか2力年のみ,全国死亡率が 静岡県死亡率より高率をしめすのみにて,観察せ る全年代全年度のうちほとんどすべての年度は, いずれも静岡県死亡率が全国死亡率より高率で, その姜は粗死亡率と同様に年代のさかのぼるほど 大となる傾向をしめしている。この現象は上昇傾 向をしめす全国死亡率と,ほぼ横這い状態をつづ けている静岡県死亡率の年代的推移によって生じ たものである。 静岡県女子の粗死亡率を比較すると表一皿,図 一皿にしめすごとく,両死亡率はほぼ同様で,両 死亡率間にほとんど特記すべき著変をしめさずに 推移している。すなわち昭和10年のみをのぞき他 のすべての年度は,いずれも粗死亡率が訂左死亡 率よりやや高率をしめして推移するも,その差は 極めて僅少で,人口10万に対しわずかに2.0∼4.0 の差にすぎない。 3) 男女の比較について 静岡県男女死亡率を比較するため,図一rvに男 女の粗および訂正死亡率の年代的推移をしめし た。 ioo前
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図一・rv 心臓疾患死亡率(人口10万対) 静岡県 男子・女子 図によって比較観察すると,粗死亡率において は,昭和22年のみ男子が女子より高率をしめすだ けで,他の各年度はいずれも女子が男子より高率 である。なお両死亡率ともに年代的推移はほぼ横 這い状態をしめすも,男子においてはやや上昇す る傾向をしめし,女子においては逆にわずかに低 下する傾向をしめしている。 訂正死亡率についてみると,10熟年の年度のう ち,昭和5年以前の各年代各年度は女子が男子よ り高率であるが,昭和10年以降近年においては逆 に男子が女子より高率となり,男女死亡曲線は昭和初期において交叉している。これは粗死亡率と 同様に訂正死亡率にわいても男子は年代とともに やや上昇傾向をしめし,女子においてはわずかな がら下向傾向をしめしているために,このような 現i象をしめしたものである。 3.性別年令別死亡率の観察 心臓疾患は主として高年層を侵し!6)∼18),各年 代各年度の全国ならびに各府県の男女とも老人層 において本疾患死亡率は高率をしめし,心臓疾患 による性別年令別死亡率の死亡曲線は高年層にお いて急激に上昇していることを観察し発表した8) へ10)。 静岡県における性別年令別死亡率においても各 年度とも同様な現象をしめしている。 図一Vは各年代における静岡県性別年令別死亡 率をみるべく,明治36年,大正2年,昭和】0年お sso 500
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薗一v ヨゆ ヨひ ゆ ゆ む ニゆり 昇 命 年令別心臓疾患死亡率(人口10万対)・ 静岡県・男子 よび昭和25年の各年度の男子年令別心臓疾患死亡 率を,明治,大正,昭和(戦前)および昭和(戦 後)の各年代の男女の代表として図にしめしたも のである。 図にしめすごとく,各年代各年度とも本疾患が 老人性疾患としての特徴を明らかにあらわし,死 亡率は年令とともに高率となり,死亡曲線は老人 層において急激に上昇している。 つぎに性別年令別死亡率の各年令階級における 死亡率について,年代的推移の関係的変化をみる べく,図一VIにおいて半対数図表によってしめし た。 図のごとく,各年令階級とも死亡率の推移は年 度により若干の変動はあるが,40∼49才の壮年層 においては大きな変化をしめさず,それよりも高 年層においては死亡率は上昇する傾向をしめし, 若年層においては逆に低下する傾向をしめしてい る。これらの推移によって,それぞれのしめす死 亡曲線は全体的にみて年代のすすむとともに上下 に扇形にひらきつつある。この高年層における死 亡率の上昇と,若年層における低下が互に相殺し て,年度による死亡率の推移の上に特別なる変化 をもたらさずに横這い状態をしめしているものと おもわれる。 なお各年度各年令における男女死亡率を比較す ると,0∼14才においては男女死亡率の高低は年 度によって若干の相異をしめすも,15∼49才の青 壮年層においては各年度を通じてほぼ共通に女子 が男子より高率をしめし,それより以上の高年層 になると逆に男子が女子より高率となる傾向をし めし,とくに60才以上においては各年度いずれも 男子死亡率は女子死亡率を凌駕している。これは 全国および各府県とほとんど同様なる現象として 観察し得た8)∼ユ。)。 また図のごとく,男女とも60才以上の高峯層に おける死亡率は年度とともに明らかに上昇をしめ し,この老入層における本疾患死亡率の上昇は, 近年心臓疾患を含む老人性疾患が国民死因の主因 となっていることを,裏づけるものとして注目され る。 IV 総 括 以上静岡県における心臓疾患死亡率について観 察を行った。これを総括ずるとつぎのごとくであ る。農
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心臓疾患による性別年令階級別死亡率の年代的推移(入口10万対)静岡県 1,総数の観察 (a)静岡県粗および訂正死亡率とも年度により 若干の変動はあるも,・特別大きな変化はしめさ ず,各年度とも死亡率は60前後をしめしつつ,ほ ぼ横這い状態にて推移している。 (b)全国と比較すると,粗および訂正死亡率と もにほとんどすべての年度において静岡県が全国 より高率である。しかし上昇傾向をしめす全国 と,比較的静止の状態をしめす静岡県死亡率の差 は年度とともに小さくなり,昭和25年には逆に全 国の方が静岡県より高率となる。 (c)静岡県訂正死亡率の各都道府県訂正死亡率 中に占める順位け年代の推移とともに低下する。 これは大多数の府県が上昇傾向をしめすのに反 し,静岡県においては比較的静止の状態をしめし てL)るためである。 2.男女別による観察 1)男子について (a)粗および訂正死亡率ともに死亡率の推移に 著明な変化なく,年次とともに極めて緩徐にやや64. 上昇する傾向をしめしている。 (b)全国と比較すると,大正中期頃までは全国 は静岡県より低率で,その差もやや大であった が,その後上昇傾向の全国と,横這い状態の静岡 県死亡率は接近し,昭和25年には粗,訂正死亡率 ともに全国が静岡県より高率をしめす。 (c)粗死亡率と訂正死亡率を比較すると,ほと んどすべての年度ともほぼ同率である。主として 前半の各年度は訂正死亡率は粗死亡率より低く, 後半の各年度は逆に訂正死亡率は粗死亡率より高 率をしめすも,大部分の年度においてその差は僅 少である。 2)女子について (a)粗および訂正死亡率ともに年代的推移は極 めてわずかに低下する傾向をしめすも,全体的に みてほとんど横這い状態をしめしつつ経過してい る。 (b)全国と比較すると,粗および訂正死亡率と もに,観察せる全年代全年度のうち,ほとんどす べての年度はいずれも静岡県死亡率が全国死亡率 より高率をしめしており,その両死亡率の差は年 代のさかのぼるほど1大となっている。これは上昇 傾向をしめす全国と,ほぼ横這い状態をしめす静 岡県死亡率の年代的推移によるものである。 (c)粗死亡率と訂正死亡率を比較すると,ほと んどすべての年度で粗死亡率が訂正死亡率よりや や高率をしめすもその差は僅少で,両死亡率間に 特記すべき三富をしめさずに推移している。 3) 男女の比較について (a)粗死亡率においては,昭和22か日のぞき他 の各年度はいずれも女子が男子より高率をしめ す。なお男子ではやや上昇する傾向をしめし,t女 子ではわずかに低下する傾向をしめす。 (b)訂正死亡率においては,「昭和5年以前の各 年度は女子が男子より,昭和1G年以降の各年度は 逆に男子が女子より高率をしめし,昭和初期に交 叉している。これは男子においてはやや上昇する 傾向をしめし,女子はわずかながら下向傾向をし めしているからである。 3。性別年令別死亡率の襯察 (a)静岡県においても金国および各府県と同様 な現象をしめし,各年代記年度とも本疾患が老人 性疾患の特徴をしめし,死亡曲線は老人層におい て著明に上昇している。 (b)各年令階級の死亡率の推移は,壮年層では 著変なく,高年層では一L昇傾向を,若年層では低 下の傾向をしめし,それぞれの死亡曲線は全体的 にみて扇形をえがき,この高年層の上昇と,若年 層の低下が互に相殺して年度による死亡率の推移 に著変をしめしていないものと考えられる。 (c)男女死亡率を比較すると,各年度ほぼ同様 な状態をしめし,青壮年層では女子が男子より, 高年層では逆に男子が女子より高率となる現象を しめしている。なお男女とも60才以上の高二三に おける死亡率が年度とともに著明に上昇する傾向 をしめしていることは注目に値する。 稿を終るに臨み終始御懇切なる御指導,御校閲を賜 った吉岡博人教授ならびに諸岡妙子助教授に謹んで謝 意を表す。 文 献 1)吉岡博八・整岡妙子:本邦都鄙別老年疾患死亡 率について,日本人口学会肝要,No.2,50(昭29) 2)操 細道:老人病について,臨床と研究,32, 530 (日召30) 3)心臓血管病ヘルスセンター:医学のあゆみ,19, 14 (日召30) 4)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第1報 一昭和(戦後)における死亡率について一 東京 女医大回,25,156∼162(昭30) 5)安楽城元;本邦心臓疾患死亡率の研究 第■報 一昭和(戦前)における死亡率について一興京女 医大誌,25,255∼264(昭30) 6)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第皿報 一大正における死亡率について一 東京女医大回, 26, 174∼182 (日召31) 7)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究第IV報 一明治における死亡率について一 東京女医大誌, 26, 306(ノ313 (H召31) 8)・安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第V報 一全国総数における死亡率の年代的推移について一 東京女医大回,26,382∼386(昭31) 9)安楽城元=本邦心臓疾患死亡率の研究 第VI報 一書国男芦別死亡率の年代的推移について一門 京女医大誌,26,416∼423(昭31) 10)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第田報 府県別死亡率の年代的推移について一 東京女 医大誌,27,21∼32(昭32) 11)安楽城元:最:近における死因分類別にみた心臓 疾患死亡に関する研究,:東京女医台下,27,171’v 185 (構召32) e
12)安楽城元:最近における府県Blj死因分類別心臓 疾患死亡に関する研究,東京女医大誌,27,247(・ 260 (日召32) 13)安楽城元:戦前における死因分類別心臓疾患死 亡に関する研究,東京女医大誌,27,311∼366 (昭32) 14)安楽城元:職業別心臓疾患死亡に関する研究, 東京女医大誌,27,373∼382(昭32) 15)安楽城元:心臓疾患死亡率に関する一考察