地方の高齢者が望む在宅死を支える多職種連携システムの構築
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(2) 研究成果. 【研究目的】本研究は高齢者の療養に関する希望を支えている、地域医療と介護にかかわる 多職種が感じる連携における職種間の認識のずれや課題を、質問紙とインタビュー調査か ら明らかにし、地方においても高齢者が人生の最期に住み慣れた自宅で死を迎えることが 出来るよう、多職種で支援できるシステム構築をすることを目的とした。 ・本研究は、岩手県内盛岡医療圏(二次保健医療圏)における「終末期高齢患者の在宅療養 支援」に関する実態調査を研究 1 とし、地方における高齢者の在宅死を支援する多職種連 携システムの構築に向けたインタビュー調査を研究 2 と位置づけ、二段階での調査を行っ た。ここからは研究 1 について述べる。 用語の定義 多職種:訪問看護に従事する看護師、病院の地域連携室の看護師、居宅介護支援事業者の ケアマネジャー 〈研究 1〉 【研究方法】 (1)調査対象:岩手県盛岡医療圏内の 20 床以上の病院 31 施設の地域連携室に勤務する看 護師、47 施設の訪問看護ステーション(以下訪問看護)に勤務する看護師、174 施設の 居宅介護支援事業所(以下居宅)に勤務するケアマネジャーとした。施設間の差を考慮し、 地域連携室と訪問看護には 1 施設 3 名ずつに協力を依頼し、地域連携室 93 名、訪問看護 141 名、居宅 174 名の計 408 名を対象とした。 (2) 調査項目:①対象者の属性(年齢・経験年数)②藤田らの「在宅ケアにおける医療・ 介護職の他職種連携行動尺度」の 17 項目を用い、5 件法で回答を求めた。 (3)期間:2019 年8月1日~9月 30 日 (4)分析方法:各項目の記述統計を算出し、項目ごとの平均点を算出した。対象者を地域連 携室、訪問看護、居宅の 3 群に分け、大項目ごとに分散分析を行った。統計的有意水準は 5%とし、有意差があった項目について Tukey 法を用いて多重比較を行った。データの解 析には SPSS Statistics Ver25 を用いた。 【倫理的配慮】 岩手医科大学看護学部倫理委員会の承認を得て実施した(N2019-2) 。 【結果】 全体の回収数は 167 名、回収率は 40.9%(地域連携室 23 名 24.7%、訪問看護 49 名 34.7%、居宅介護支援事業所 89 名 51.1%) 、有効回答率は 96.4%であった。平均年齢は.
(3) 地域連携室 49.04 歳、訪問看護 44.12 歳、居宅介護支援事業支所 51.51 歳であった。連携 尺度の平均点は「予後予測の判断」は地域連携室 11.4 点、訪問看護 12.0 点、居宅 10.4 点、 「ケアの方針調整」では地域連携室 11.0 点、訪問看護 10.3 点、居宅 11.6 点で訪問看 護と居宅に有意差が見られた。 「24 時間体制」は地域連携室 5.8 点、訪問看護 7.3 点、居 宅 7.1 点で地域連携室と訪問看護、地域連携室と居宅の間でそれぞれ有意差が見られた。 【考察】 訪問看護師と居宅のケアマネジャーは、在宅で療養する患者家族の日々の変化を間近 で見守っている。「予測判断の共有」は、今後起こり得る利用者の病状や生活状況の変化 を予測する必要があり、「ケア方針の調整」ではケアプランに関する内容が挙げられるた め、訪問看護師とケアマネジャーがそれぞれの専門性を発揮していることが示唆された。 また「24 時間体制」では訪問看護と居宅は日頃から地域という同じフィールドで情報共 有することができているが、地域連携室は院内での活動が主であり、地域とは顔が見えづ らい関係性を築いている可能性がある。地域連携室は地域と病院をつなぐ仲介の役割を 担っており、今後、自宅へ帰る患者や家族の思いを、在宅で携わる訪問看護や居宅へ、地 域連携室から情報を伝える役割の認識について明らかにしていく必要がある。また、それ ぞれが専門性の違いを認識し、互いの専門性を認めたうえで、情報共有や提案のできる関 係を構築できるための指針やシステムを作成していく必要があることが示唆された。本 研究は 2019 年度公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成を得て行った研究の一部 である。 ・次に研究 2 について述べる。 〈研究 2〉 【調査方法】 (1)調査対象:本研究のインタビュー調査協力に対して同意が得られた、岩手県盛岡医療 圏内病院(地域連携室)の看護師5名、訪問看護ステーションの看護師4名、居宅介護支 援事業所ケアマネジャー10 名 (10 名のうち看護師資格を有する者は6名)を対象とした。 (2)データ収集:インタビューガイドに基づき、対象者への半構成的面接を行った。イン タビュー内容は、「今まで経験した高齢者の在宅死の事例の中で、多職種との事例がうま くいった事例」「在宅死を取り巻く状況における専門性」「高齢者の在宅死の希望を叶え るための多職種との情報共有や連携」 「高齢者の在宅死の希望を叶えるために必要だと思 うこと」などとした。インタビューはプライバシーが確保できる場所で行い、インタビュ ー内容は事前に同意を得て、IC レコーダーで録音し、対象者ごとに逐語録を作成した。 (3)期間:2020 年2月 12 日~3月 23 日 (4)分析方法:逐語録を繰り返し読み、「高齢者の在宅死を多職種で支援するための協働 に対する考え方」「在宅死を取り巻く状況における専門性」「高齢者の在宅死の希望を叶.
(4) えるための多職種との情報共有や連携」などについて語られている文章をコード化した。 今後、結果の分析・解釈にあたり、在宅療養支援に関わる専門スタッフからの助言を受け て、信頼性と妥当性の確保を図る。 【倫理的配慮】 岩手医科大学看護学部倫理委員会の承認を得て実施した(NH2019-16) 【結果】 対象者 18 名にインタビューを実施した。対象者へのインタビュー時間は、一人あたり 平均 32 分(16~56 分)であった。高齢者の在宅療養、在宅死を支援する実態として、病 院の看護師からは【病院から出て地域を知る】【多職種がお互いの役割や強み・弱みを知 る】【病院にいつでも入院できる保証】、訪問看護ステーションの看護師からは【本人や 家族の背中を押す】【見取りは怖いことではないと伝える】【慌てないための準備】のカ テゴリーが生成された。看護師資格を有する居宅介護支援事業所のケアマネジャーから は【他職種の訪問時に合わせて足を運び高齢者の状況を把握する】【起こり得る状況を把 握し対応する】のカテゴリーが生成された。 【考察】 病院の看護師は【病院にいつでも入院できる保証】を高齢患者が在宅療養を継続するた めに重要な要因と捉え、このことは患者や家族だけでなく地域で支援する多職種の心理 的負担を軽減することも示唆された。一方で、病院によっては緊急時に対応する体制整備 など十分ではない状況も考慮し、地域全体の課題として検討する必要がある。また、病院 の看護師が【病院から出て地域を知る】【多職種がお互いの役割や強み・弱みを知る】た めには、機会が限られており、今後地域における多職種が交流できる機会を図ることが課 題であると考える。訪問看護師は、地域で高齢患者や家族を支え、同時に【見取りは怖い ことではないと伝える】【慌てないための準備】というように、地域の中で介護職者など 多職種を支える役割を果たしていた。看護師資格を有するケアマネジャーは、病状や状況 を判断できることを自身の専門性として認識しており、【起こり得る状況を把握し対応す る】ことで、高齢患者が在宅死を迎えられるよう、患者や家族の意思決定支援や多職種と の調整役を担っていることが明らかとなった。 これらの結果から、地方において、高齢者が人生の最期に住み慣れた自宅での死を迎え ることができることを目的とした、システムを構築していく必要がある。 本研究は 2019 年度公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成を得て行った研究の 一部である。 【感想】 質問紙調査からは、病院と地域との間で連携行動の認識に差があることが分かった。病 院は地域の状況を知る機会が少なく、地域は病院に期待していると感じた。またインタビ ュー調査を通して、それぞれの看護職は組織を超えた看護職間のネットワークの必要性.
(5) を感じているが、アクションを起してはいないことが分かった。このことから、在宅療養 に関わる多職種における、顔の見える関係を作るための機会を作り、そこから多職種連携 システムの構築へ繋げていきたいと考える。また、今回は支援する看護職を対象とした調 査であり、患者本人や家族の評価は反映されていないため、今後患者家族を対象とした調 査を行う必要がある。.
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