Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
1
日
本
に
お け
る
心
身
障
害 者 体 育
の史
的 研 究
(
第
12
報 )
昭和
40
年 代 後
期
か ら 同
50
年
代
に
か
け
て
の
精
神
薄
弱 体 育
に
つ いて
北 野 与
一
AHistorica
.
I
Study
of
Physical
Education
for
the
Handicapped
in
Japan
(
澗
)
On
Physical
Education
for
the
Mentally
Retarded
Children
,1970
〜 ’84
Yoichi
Kitano
1
は じ め
に わが国の精 神 薄 弱 体 育の発 展 を 史 的に明 らかに し よう と して,
既に 「日本にお ける心 身 障 害 者 体 育の史 的 研究
(第
8
〜11報
)」 (北 陸 大 学紀
要第
7
〜
9
号,北陸体
育学
会紀
要第
22
号 ) を報 告 した が,
本 稿 は そ れ らに続 く報 告である。周 知の よ うに
,
わ が国
の 精神
薄 弱 教 育 界には,
戦後
二つ の大 きな論
争が生 起し てい る。 その一
つ は,
昭 和30
年 代 半 ば 頃にお ける 「教
科か領 域か」の 戦 後 初の教 育 課 程 編 成に係
わる論 争で あ る。他
の一
つ は,
昭 和40
年 代 半ば
頃か ら顕
現化
し始め た対 象 児 童・
生 徒にお ける障害
の重 度 ・ 重 複 化に伴う 「社会適 応 論・社
会 自 立 論が発 達 保 障 論・
全面 発 達 論か 」の教 育 理 念に係 わる論争
で ある。本
稿では,
昭 和40
年 代 半 ば か らの精
神 薄 弱 体 育,
特にその学 校 体 育に視 点 を 当て,
後 者の問 題や その影響
にっ いても触
れ な が ら,
そ の変容
め実
態 を概
観 するもので あ る。E
研
究
目
的
昭 和40
年 代 半 ば か ら同50
年 代にか けて の精 神 薄 弱 教 育}こお ける変 容と,
それIC
伴 う体 育 教 育 の変 容に関 して , その一
端 を 明ら か にす
る 。 皿研 究 方 法
精 神 薄 弱 教 育 史,
精神
薄 弱 教 育 関 係 著 書・
学 会 誌・
専 門 誌,
体 育 関 係 著 書 ・学 会 誌 ・専門
誌,
1652 北 野 与 学 習 指 導 要 領及び 国立
特殊
教育
総 合 研 究所 (編 )r
特 殊 教 育 諸学
校・
教育
研究
所等における研 究 課 題 等の調 査 報 告』な どを 主 なる史・
資 料と して検 討 する。IV
結
果 と考
察
1.
教 育 事 情の変 容 (1
) 新 事 情の 生 起全日
本特殊教育
研究
連盟 (編
)のr
日本の精 神 薄 弱 教 育 』 (第4 〜 6
巻,
日本 文 化科
学社 ,
昭54
)に は,
戦 後30
年 間にわた る各 都 道 府 県1
こおける精 神 薄 弱 教 育の実 践史が報 告さ れ てい る。 その報 告に よ れば,
地域
的に時期
的 違いが若干
見 られ る が,
昭 和40
年 代 (以 下,
年 号 を省 略 す U} 12} る) 以 降,
わ が 国の精 神 薄弱 教 育 は,
従 来の 「充 実 期 」あ
るい は 「伸長
期」 とい わ れ た時代
か (3) 〔4[ 15〕 ら 「転換期
」,
あ るい は 「問い 直し 」の 時期
や 「足ぶみ 時 代 」へ と移 行 して い る 。こ の
転
換,
ある いは問い直 しを余 儀 な くさせた 主要
な原因
は,特殊学級
や養護学校
の増設
と 義 務 教 育 化に係わ る重度 ・
重 複 障 害児童・
生徒
の就 学 増 加に よるもの であっ た。 重度
・重複 化 [6[ t7}、
傾 向の顕 現 時 期は,
東 京 都や大 阪 府のよ うに40
年 前 後 か ら顕 現 し始めた地 域 もある が,
概 して45
年 前後
で あっ た。 この時期
の就 学 児童 の変容
につ い て松 原 隆三 は,
「養 護 学 校 校 長 会 に よ る 昭和35年度
の実
態調査 に よ れば,
大体
IQ
を参 考にすれ ば,50〜60
が ほ と ん どで あっ た。 そ れ が昭 和45
年 度に な ると,30〜50
程 度の者が70
パー
セン トを 占めるようになっ た,
さ らに,
最 近では,
測 定 不 能,
測 定 困 難 という 児 童 が非 常に増 加 しており,
特に小 学 部の 低 学 年,
中学 年 〔8] は ほとん ど 重度
に該 当 する とい わ れて い る ほ どで あ る。」と報 告 している
。こ の
変
容状
況 は,
文 部 省の障害
教 育 施策
の推進 と も深 く係わっ て い た。34
年12
月の 中央 教 育 (9[ 審 議 会の 「特 殊 教 育の充 実 振 興につ い て の答 申」 に基づ いて文 部 省は,
特 殊 学 級 (精 神薄弱 教 育 )の設 置に力 を 入 れ,36
年 度 か ら5
年 計 画を
もっ て市 及 び人口3
万 人 以 上5
万 人 未 満の町 村 が小 学 校2
学 級,
中学 校2
学 級,
人口5
万 人ごとに一
定 数の特 殊 学 級の設 置 を計 画 的に推 進 し た。一
方,31年 6 月
に 「公 立 養 護 学 校 整 備 特 別 措 置 法」 が成 立し,養護
学校
は他
の公 立 義 務 教育諸学校
と同様
に国の財 政 的援助
が受 け られ る ようにな り,
従 来 法 令 上未
解 決な課 題であっ た 養 護 学 校におけ る就 学 義 務 と養 護 学 校の 設 置 義 務の 発 動 が,48
年11
月20
日付の 政令
第339
号に 1 よっ て54
年4
月1
日 と確 定 する。 その結
果,
以下
に掲 げた よ うに,特
殊 学 級の設 置は順 調に進 み,
ほぼ 全 県にわ たること とな り,
養 護 学 校 も また54
年の義 務 制}t
向 かっ て設 置 が 計 画 的に促 進 さ れ たの で あ る。こ の特 殊 学 級 増 加 傾 向の な かで
,精神薄
弱教育
で は,
そ れ と は 逆 に児童 ・
生徒数
の減少傾向
鰤 ttO が 全国
的に45年度前後
か ら顕 現 化 し始 め,50
年 度 以 降には 学 級 減 や 学 級増
の停 滞 が 現 わ れ る。 その間,
「養 護 学 校 す ら も対 象としない重度 ・
重複障
害 児」 が,特殊
学 級や養 護 学 校に就 学す 臘 口n る ように な る。 こ う した教 育 情勢
下で特殊
学 級と養
護 学校
の対 象 児童・生徒
の 問 題,
学級編制
や教職員の定数
問題
な ども,40年
代に入っ てか ら急 激に整 備・改
善 されて い く。 「特 殊 教 育の基
本 的 施 策の あ り方につ い て」 (44
年3
月 )や 「重 度・
重 複 障 害 児に対 する学 校 教育
の在り方
につ いて 」(50年
3
月)の検 討,
あるいは学 習 指 導 要 領の改 訂 (45
年
度 版,54
年 度 版 ) も示 す ように,
教 育 施 設の増 加,
対 象 児 童・
生徒
の拡
大は,精神
薄 弱教 育の見直 しや問い直 しを 余儀 な く させたのである。 体 育 教 育 も,
こ の転 換の過 程,
換 言 す れ ば,
上 記の拡 充が進 展 する過 程Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 日本に
お
ける心 身 障害者体育の史 的研究 (第12
報)3
特 殊 学 級数 (児 童・
生徒 数)及 び養護学
校 教 (児童・
生 徒 数 うの推移国
・
公・
私立計 特 殊 学 級 (精 神 薄 弱 教育以外も
含む) 養護 学 校 (精 神 薄 弱教 育 ) 区 分 学 級 数 児 童・
生 徒 数 児 童・
小学 校 中学 校 合 計 小 学 校 中 学 校 合 計 学 校 数 生 徒 数 年 度 学級 年度 年 度 人 人 人 校 校311
7
』
004
3141 β1819,
7654
,
55924
,
324 2不 明
:
321,
037
3971
,
43417
,
3145
,
75523,
0
β9
7
(1
)690
331
距
253 5381,
79118,
6216,
67025
,
291 8(1)866
341
,
5297142
,
24320,
2568
,39928 ,65514
1,
264
352,
029
9082,
93724,
40610,
43034,
83617 (1) 1,
676362
,
5551
,
1123
,
66728
,
54612
,
89041,
43623 (2
)2,
437
37 ・
3,2031 β744,
57734,
33915,
88550
,22428
(2)3,
013
383
,
9201
,
7935
,
71339、
68719,
60159,
28834 (2
)3,
350
394,
6672
β677,
03445,
84824
,
71970,
56742 (2) 4,
026405
,
4853,
0448
、
52951
,
45030
,22181,
67155 (3
)4,
923
416
,4293,
83810,
267.
噛
58,
20637,
23895
,44463 (2)5,
892
427,
2984
,
56211
,
86063
,
55δ 42,
.
885
,
106,
43868
(4
) 6,
617 438,
067.
5,
22213,
28938,
74948
,
245116
,99472 (5) 7,
008448
,
7205
,
80714
,
舅
2771
,30551
,
611122
,
91
β79
(10
)7,
914
459,
2906
,
25015、
54072,
67652,
971125
,
64783
(13) 8,
584 469,
8256,
58716
,
41274
,
02853
,
559127
,
58797 (14)9
β74
4710,
5626
,
76817,
33077,
60352,
663130
,266107
(15) 11,524 4811,
7067,
00218
,
70881
,
65252
,081133,
733135
(19
)14,
650
4912
,
5507
,
13319,
68382,
88249
,
823132
,
705163 (24) 17,
055 5013,
3137,
26020,
57384,
20448,
165132 ,369180 (21) 19,
081
5113,
7867
,
223L21
,00984 ,49646
,
444130,
940180
(21
)21,
449
5214,
1297 ,29621 ,32583,
73745
,
223128
,
960220
(23) 23,7685314
,
3537,
15521,
50882,
12642,
949125
ρ75264
(18) 27、
353 5414,
0836 ;78220
,
86577
,
13138
,
580115,
711338
(62
)40’
,
422,
5514
,
3366
,72521 ,06176,
39836,
802113,
200355
(59) 43,
8915614
,
6226,
689,
21,
31175,
96135,
394111
,355365 (63) 46,
755
57
・
14,8826
,
72321
,
60575
,
63034
,
938110,
568371
(60
)48,
3795815
,
0956,
75921,
85474,
54634,
205108
,751380 (57) 48β53r
囲1
.
(内 は 分校 数べ あり,.
外 数で ある’
e2.
昭 和47年 度 以 前の デー
タ には沖縄県分 を含ま ない 。 3.
各年 度 5 月1
日現在 で直 接・
間 接に多
くの影 響 を 受 け ると
ととなる。 教 育 目標 論の 対 立社
会 適応論 ・社
会 自立論戦
後
い ち はや
く開
設さ れ た東 京 都 品 川 区 立 大 崎 中学 校 特 殊 学 級 を中
心に して ,精神
薄弱児 童・
生 徒帥
「竝 的 生 勧を
身につ け,
・
・*±会 生 活 鬮 応で きる燗覧
して とら え ら れ,
生駐
義教育
が追求
さ れ展 開されて い く。 その後,社
会 適 応 ・社 会 自立 を 目指 した生 活 主 義教 育 思 潮 が,
わが
国の精神
薄弱
教 育の本
流 を 占め るに至る。
35
年11
月の 「学 習 指 導 要 領 作成
委 員 会 研 究 討 議 資 料一
養 護 学 校11、学 部・
中学 部 学 習 指 導 要 領 精 神 薄 弱 教 育 編の暫 定 案につ いて 」のなかで,
「精神
薄 弱 者の 教育
の目標
は及ぶ か ぎり社 会 【ls へ 参 加 し自立的な 生活を営め る ようにすること に あ る 」 と,社
会 自立が強 調された。 こ の趣 旨 は,38
年3
月 通 達 され たr
養 護 学 校 小 学 部・
中学 部 学 習 指 導 要 領 精神
薄 弱 教 育 編」 にも継 承さ 1674
北 野 与一
れ,
こ の教 育の 目標 が 「そ の能 力に応 ずる知 識・
技 能 を 授 けると と もに,
その社
会 的適 癒性
を 助 長 する よ う な具体的
で総 合 的な指 導 を行
ない , もっ て 生活
の 自立を ね らい と し た人格
の 形成
lces
める 」 もの と さ れ た。
」
45年10月教育
課程審議会
か ら文部大臣
に出
された 「畜
学校 ,聾学校
お よび養
護学校
の教育
課 程の改 善につ い て 」の答 申のな かで,
精 神 薄 弱 教 育のね らいが,
「可 能な限 り能 力を伸 ばし,
身 辺 自立の習慣
を身
にっ け,社会的
適 応性
を助
長 して,社
会に参
加していく
た め の知識 ,技能
お よ び 態度を養 うこと」と示され,
前 記の学 習 指 導 要 領が46
年3
月に改 訂さ れ る。 こ の要 領で も,
先に述べ た前 要領
の趣 旨 が 継 承 さ れ た。48
年 に義 務制
実施
の予 告 政 令が出
さ れ,
養護学 校 数の飛 躍 的な増加 と対 象 児童・
生徒の重度・
重 複 化の傾 向はいっ そ う強 ま り,50
年3
月に は,
特 殊 教 育に関 する調 査 研 究 会によ る 「重 度・
重 複障
害児 に対す
る学校教育
の在 り方につ い て 」の報告
が な さ れ る。 この報告
で,
「その者
の 障害
がい か に重度
であり重複
して い る場合
で
あ ろ う とも,
もと よ り教
育 基本
法に掲
げる目 的の 達成
を 目指 して行 わ れるべ きも
の」であることが確 認 さ れ,
「個々 の者の 心 身の状 況 を 出発 点 と して これに対 応し た教 育 を 行 う」必 要 性 が 指 摘され
る。’
障害
の重 度・
重 複 化 と小 学 校・
中 学校
学 習指導要
領の改 訂 (52年
) に対
応 し て,54
年7
月
第2
次
の改訂 が行な わ れ る。 こ の改 訂で は,
r
盲 学 校,
聾 学 校 及び養 護 学 校 小 学 部・
中 学 部 学 習 指 導 要 領』 と して一
本 化され,
精 神 薄 弱教
育に関 する独 自の 目標は規 定さ れ な かっ た。 しかし,53
年10
月の教
育 課 程 審 議 会の 「盲 学 校,
聾 学 校 及 び 養 護 学 校の 小 学 部・
中 学 部 及び高 等 部の 教 育 課 程の 改 善につ い て」の答 申に よ れ ば,
そ の 改 善の基本
方 針の一
つ に 「社 会 自立を目指 した 職 業に係 る教 育の充 実 を 図ること」 が挙 げら れ てい た。
ま た改訂要
領の 「生 活」科
における目 標 も第一
次
改訂
要領
と同一
目
標 を挙
げてい ること か ら,
要 領のな かで独自
の 目標は規 定さ れ な か っ た が, こ の教
育の 目標とする社
会 適応・
社 会 自立の理念は な お生 き続 けて い た もの と考え られる。発達 保 障論
・
全面
発達 論対
象
児 童・
生徒
の障害
の重度 ・
重 複化傾
向 が 逐年強
まっ て い く過程
で従来
の社
会 適 応 論・社
会自
立 論の 反 省 か ら,
堯
達 保障
論・
全面
発 達 論が一
部で唱 え られる。す
なわ ち,従来
の理 念は 「重 症 児に適用 しが たい ことが 認識され (中 略 ) 障 害の 軽 重にかかわりな く適用で きる普 遍 的 な発 達 観 や 目標 論が求められ 」t 両論
につ いての激
しい論 議が交
わさ弗
ていく
。30
年 代半
ば頃
か ら40年
代 初 期にか けて,
小 宮 山 倭や糸 賀一
雄 らにより 「一
般 性・
連 続 性 強 調 論」 や 「自
己実 現論
」 が提 起され,
従 来の教
育理 念に対 する批 判や反 省が な さ れ る。
42年8
月,
「障害者
の権 利を守 り,
そ の発 達 を 正 しく保障
するた めに,
理論 と実 践 を 統一
的にと らえた自 主的 ・ 民 主 的 研 究 運 動を発 展さ せ る 」目的
を掲げ
た 全国障害者問
題研
究が発 足 する。
ま た 翌 年 の 日本教育学会 (
第
27
回大会
)には,
課 題 研 究 と して 「障 害 児の教 育 を 受 け る権 利」が設 定さ 勸 れ,
「全 面 発 達 論,
普 通 教 育 論 」 など につ い て の活
発な論 議が な される。障害者
の権利保障
に 関 する思 潮の高 ま りは,
わが国 独自
の もので は な く,第
4
回 国際精
神
薄弱者
援 護 連 盟 世 界 会 議(
43年
)に お け る精神
薄弱者
の 権 利 宣 言 (ADeclaration
ofGeneral
Special
Right
of,
theMentally
Retarded
)も示 すよ う に,
世 界 的な傾 面で あっ た。 わが国の場 合,
ア メ リ カn
やソ ビエ トの精
神
薄 弱 教 育の影 響 を 強 く受 け,
この教 育の転 換を迫る波が広が りを増し, しかも深
化
して い っ た。
Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 日本に おける 心身障害者 体育の史 的 研 究 (第
12
報)5
糸賀
は,
「私
たちとこ の人
た ちとは実
はちっ とも違わ ない。 (中略
)発 達とい うことをr
人
間 吻 にな る』 とい うふ うに考えますと,
どの 子も どの子 も全 部 発 達 してい ぐわけです。」と,
人 間、
にな る過 程 を 発 達 ととらえた。 ま た飯 野は,
「た と えどん なに重い障 害を もっ た 子 ど もで も重複
した障害
を もっ た子 ど もでも
遅々 た る歩
み で はあっ て も,
毎 日毎 日の わずか な進 歩が積 み重 なっ て,
限り なく成 長 し,
発達 して い く」 もので あると,
従 来の発 達 限 界 説 を 否 定 した。 さ ら にまた,
田中
昌 人は,
「教 育の内容
は全面
発 達を保障
するもの で な けれ ばな らない (中 略 ) 障 害 児 を 類型的
に考え , 発達 にお ける機 能 別の一
方 向 的・
連続的 ・
適 応 重視
とい う差 別的
管理へ の 発 達観
を変革
し,発
達 的に みて人間
と して の共通機
制 を把
握 し,統
一
的 ・
全 面的 ・質的変革
を重 視 した科 学 的 発 達 観に立つ 教 育の実 現を め ざす。 (中 略 )発 達の単 位をき りは な された個 人 を単
位 としてのみ ること を 改 める。
そ して,
子 ど もの個 人の系
か・
ら と して は発 達の質 的 転 換 岡 期 との関係で吟 味 さ れた発 達 的に等 質・
同 質・
異 質な集 団 構 成を保 障 する。 (後 略 )」と述べ,
従 来の 発達観 を否 定 し,
基本
的 人 権 を保 障 する という思 想 的 基 盤に立っ て の全 面 発 達 論 を 主 唱 し た。 金 田利 子 もまた,
「人はみな,
ヒ トから 「人
間
』へ と成
長す
る過程
のな か で自
己と外界
との関 係 を 変 革 しま す。 外 界へ の と り くみの新 しい しか たを 獲 得します。 これ が発 達のい と な みで す。 (中略
)発達と は, ひと
り個 人め発 達で はな く.
関
係
の発
達である」 と.
と らえ,
「発 達’
のす1
じみちの共通性」 と 発 達の 「無 限 性」を 主 張 した。以 上のよ うな発 達 保 障 論
・
全面 発達論は,
提 唱さ れ始あ た当 初か らこ の教 育 界に 全 面的に受 け 入れ られたわ けでは ない。 こうし た教 育理 念に対して,
三木 安正 や杉田裕らの厳 しい 批 判と 反 論 が あっ た。 例えば,
飯 野 らの考 え 方に対して,
三木 は 次の ように反 論 した。私 ど も も精神薄 弱 児の知能の働き と正常児の知能♀)働き とを比べ てみ る とき
,
質的な違いがある とい5
.
てきているのであるが,
量的にみ れ ば 限 界 が あ り, 質的 に み れ ば 限 界 が ない とい う よ うにい いき ること はど うか と思 うし,
ミ クロ の世界において みれ ば 「か ぎ りな く細かで豊 か な変化 がつ け られる 」 とい う ことは た しか に そ う で あ ろう けれ ど,
それセ無 限の教 育の可能 性があるといえるの であろうか (中 略 ) ミ クロの世 界での微 小な変 化,一
年に一
セ ンチ メt トル 進 む というよ う電 ものを“
無限の可能!腔がある とい うことは,
普通の言葉の使い方 と して は 理解しがたい。
(中略) 「すべ ての子 ど も,
すべ て の人 聞の 発 達の無限の可能性 」 な ど とい う 表 現 は,
誇 大 広 告の文 面の よ う に と られる。
そ し Lそのあ とに続 く 「全面発 達 論 」 は, 精神薄 弱 児を対 象にして構築された 理論で は な く,一
般の教育の 理論を借 りてきた もの で あ り,
さらに政 治 的 実 践と結びつ か なけれ ば 意味の ない もの とい うように展開さ れてい く。 (中 略 )社会 的 適 応 とい う こ と も, こう したことを 基礎
に し た もの と考え れば,
適 応 性の高い子 ど もの方
が 望ま しい こ とは当 然で , 社 会 的 適 応と は搾取的体制の中に は め こ む こ と であるというよう な言い方は,
きわ めて歪曲し た考え方で あると思 う。続
い て,杉
田 もまた,
次の ように批判
を して いる。 精神薄弱児の教 育が,
その社会的 自立と自 己実現 を 指向して い るこ とは 言 うまで もない。 (中略 ) 精 神薄 弱 児の社会 的自立は,
具体的な生 活 を 確 実にし,
その属 する社 会で の社 会 的 存 在 と して の社 会 化炉
強調 さ れ るもので あ る。 こ の た め,ま
ず,
基本的 な生 活 習 慣の確 立,
その属 する社 会へ の適 応 が と りあ げられるの は当然であろう。 (中略) 能 力の低い人,
障 害をもつ 人 た ちの教育を, 低 賃 金で易々.
として 働 く人たちに 型 は め に し て差 別に甘んずる人 間 をつ く る もの と考 え,
む しろこれ らの解 放 を 特 殊 教 育の 眼 目とL.
て 主張する人た ち もある。
た しかに , ひとつ の必 然 的な姿 と して ある型 を前 提 し,
適 応べ っ た 169 N工 工一
Eleotronie Library6 北 野 与 り主 義のや り方は批 判さ れ るべ きで あ ろう。 し か し, ロ ビ ン ソ ン
・
ク ルー
ソー
的 人 間に対 し,
具体 的な 生 活 建 設を も た ない観念的な俊 寛 的な 型 は,
もともと精 薄 児の最 も不 得 手 なことであ り,
彼 らの生 存の 基 底 を 自 ら くずして ゆくもので ある。 生 活者と して の具体的,
意 欲 的なもの は確実につみ 上 げて ゆ くよ うに し たい。
こう し た
両論
の対
立のな か で,
全面発
運
論的
発 達観
に立つ 目標論
は,
50
年代
に入っ て漸次
現 場に浸 透 して い っ た軌現 場の状 況 を全
国的
観 点でとら え ることは至難
で あ る がt その一
端
を 概 観で きるもの と して 国 立 特 殊 教 育 総 合 研 究 所の 『特
殊 教育
諸 学 校・
教 育 研 究 所 等にお け る研 究 課 題 等の 調 査 報 告』 がある。 同 報 告の50
年度
以降にお ける研 究 課 題 を 全 面発達論
(以下 ,
発達 論 と略 す )的
立 場で検討
し た と きJ 発 達 論 的 観点
に立つ 課 題が急 増し,
特に50
年 度 後半
に そ の傾向
が顕著
と なり,
しか もその 内 容に若 干の 変 化 も現 わ れる。 す な わ ち、
当初の発 達 論で主 唱 さ れ た 「無 限の可 能 性 」か ら一
歩
後 退 した 「発 達 実 態に即 し、
可 能 な 限 り最 大 限の発 達 を 図る」という即 応 ・促 進 關 の教 育理念が,
重度 ・
重複
児童・
生 徒 対 象に唱えられる よ う に なっ た。
一
方,
社 会 自立 論 (以 下,
自立 論と略 す ) 的 立 場に立つ 研 究 課 題 も少な くは な く,
決して発 達 論に押されて消 滅 して しまっ た わけで はなかっ た。 しか し,
現 場では,
こ の立 場におい て も,
{41} 対 象 児 童・
生 徒を中・
軽度障
害 に考え よ うとする傾 向が強 く なっ てい た。 つ ま り,
重 度 ・重複
障害
は発 達論
的 立 場で,
また中・
軽 度障害
は自立 論的
立 場で構 築し ようとする姿勢
が強まっ た ように思 わ れる。 〔また50 年 代に は, 両 論の 融
合 ,
あるい は連 合された課 題さ えも登場
し,
注 目され た。以 上
,
現 場の研 究 課 題 を 中 心に,
自立 論と発 達 論 を 概 観 したが,
精 神 薄 弱 教育
にこ の発 達 論 が登 場 した 主 要な契 機は,
先に も述べ た よ うに対 象 児 童・
生 徒の障 害の重 度・
重 複 化の強 ま り で あ り,
その 登場は,
従 来の 自立論に 反省
を 加 え, 重度・
重複児教 育の目標設定IC
新
しい 方 向 を示 唆し た ものと して注 目すべ きこ とであっ た。 今 後,
この両 論が さらに対立 を深めて い くの か,
あ るい は上 記の傾向
で定着
して い くのか な ど,
その動向
に強
い関心 が寄
せ ら れて い る。
学 習 指 導 要 領の改 訂とそ の特 徴46
年3
月
改訂
された45
年度
版学習
指導
要領
は,
小学部
が46年 4
月 ユ 日か ら,
中 学 部 が47年 4
月1
日か ら施 行さ れ た。 ま たこ の要 領は,54
年7
月 再び改 訂さ れ た。
こ の54
年 度版学 習指導 要 領は,55
年4
月1
日か ら各学 部 がそれぞ
れ 学 年 進 行 を もっ て実 施に移 され,
現 在に至っ て い る。 以下,
r
養 護 学校
(精神
薄 弱教育
) 学習指 導要
領 解 説』張
びr
特
殊 教 育 諸 学 校 学 習 指 導 要 領 解 働 説一
養護 学 校 (精 神 薄 弱 教 育 ) 編一
』を参 考ic
,
それぞれの特徴を検 討 するこ とに し たい 。45
年 版 学習
指導要領
の特
徴、
この改 訂 版の 特 徴には
,
以下
に掲 げ た よ うない くつ かの特
徴 が 見ら れた が,
最 も注 目すべ き ことは,
生 活科
と養
護・
訓練
領 域の新
設に あ っ た とい え るだろ う。ア
.
37年
度 版学
習指導要領
の教育
目標 を精
選し,
こ の教育独自
の目標にま とめ た。す
な わ ち,
旧要
領の一
般 目標8
項 目 及 び 具 体 目標27
項 目 を小 学 部5 項
目,
中 学 部2
項 目と し た。イ
.
「日常
の生活
習慣
を確 立 し、集
団生活
へ の参加
に 必要
な態度
や技能
を身
につ け,社会
や 自然の し くみ や はた らきなどにつ い て 理解 を も たせ,
社 会 自立のた めの基 礎 的 能 力 と態 度 を養 う。
」を 目標
とした生 活科
が,小学部
に新設
さ れた。Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty 日本に おける 心身 障 害 者 体育の史的 研究 (第12報 ) 7
ウ
.
37
年 度 版 学 習 指導
要 領では,・
教科内
容が小 学 部3
段 階,
中学 部一
括の4
段 階に分 け られ て いたが,
改 訂 版では,
小 学 部 と中 学 部の2
段 階に分 け られ た。エ
.
養 護・
訓 練が,
領域の一
つ とし て新設 さ れ た。 この 養護・訓
練は,精神
薄 弱 教育
養護学 校 以 外の特殊
教 育 諸 学 校に従
来から設 け られて い た領 域で あっ た。 改 訂 後,
先に褐 げた生 活 科 と ともに そ の在 り方に関 する活
発な研 究が行な わ れる。オ
.
従 来統合
できる領域
は各 教科 ,
特 別 活 動,
学 校 行 事 と規
定されてい た が,改
訂によ り 道徳
が加え ら れ た。’
カ
.
学 習 指導
要領
を 捕 完す
るもの と して,
「養 護 学校
(精神
薄弱
教 育 ) 小 学 部・中学
部学
習指導要
領 資 料 』が作成
さ れた。 こ の 資料
は、教
育 課 程 を 編 成 する隙
,
各 教 科IC
具 体 的な内 容を 提 供 し た。54
年 度 版 学 習 指 導 要 領の特徴
こ の学
習
指 導要領
の改 訂 は,
小 学 校、
中 学 校 及 び 高 等 学 校にお ける
学習
指 導 要領
の改 訂 方針
に基づ いて行なわれ た も のである。従
っ て その内容
は,一
般の教育
に おける教
育 課 程 改 善のね らい を 達成 し,
し か も障 害児童・
生 徒の教育 的特 性を も考慮 し た もの と なっ てい た。
精 神 薄 弱 教 育に関 す る改 訂の特
徴 を ま とめる と,
−
概
略以 下の ようであ る。ア
,
前 要 領の独
自の 目標が,
特 殊 教 育 諸 学 校 共通の 目標に改め亀
れた。イ
.
道 徳 教育
及 び体育
教育
が , よ り重 視される よ う に な っ た。ウ
.
小 学 部 高 学 年 及び中学 部における各学
年の 総 授 業 時 数が,10
%削 減さ れ た。エ
.
訪 問 教 育にお ける教 育 課 程 編成
につ い て の特 例が設 けら れ た。
各教科及 び 各領 域の目標 や内容の一
部,
または 各 教 科IC
か えて養 護・
訓 練を主 と して指 導がで きるこ と と なっ た。オ
.
小 学校
及び中
学 校との交 流 教育
を促 進す
る た めの配 慮が なされ た。
カ.
児 童 福 祉 施 設 及 び 医 療 機 関 との連 携 を 密にす るた めの配 慮 が な さ れた。キ
.
各 教 科の目標 及 び内容は,
中 度・
重 度の 児童・
生 徒 を対
象 とし たもの とな り,
各 学部
そ れ ぞ れ 全学 年 総 括 した もの と なっ た。 ま た 「指導計
画の作成
と内容
の取 扱い」 が精選 さ れ た。 な お各 教 科の具 体的
内 容 が,
小 学 部 か ら高 等 部にわ た る5
段 階 形 式IC
改めb
れた。 すなわ ち,
従 来の学 年 段 階 別が発 達 段 階別
に改あられ たので
ある。ク
.
道徳
の 目標
及 び内容
が,
改善
さ れ た。ケ
.
特 別 活 動の 目標及 び内 容が改 善さ れ,
小 学校 ,
中 学 校 及び 地域 社 会との交 流を積 極 的に推
進す
る よう,
に示
され た。
コ
.
』
養 護。
訓 練の 「指 導 計 画の作成
と内容の取 扱い」に関 する事 項が,
精選 さ れ た。 精神
薄弱 教 育 養 護 学 校にお け る養 護・
訓 練は1
「発 達の遅 れよ りは 発 達の偏 りに対 応 するための領 域 」 と し て位置 づ け られ た。以 上 , 2 回にわ た る改 訂 版の主要な
特徴
を概
観し た が , 注 目すべ きこ と は,
そ れ ぞ れ が そ れ」
そ れの時
点で,
対 象 児 童・
生徒
の障害
の重度 ・
重複化
に対 応 し,
現実
に即 応さ せ た点
にあっ た といえ るだろう。荒
川 勇 も指 摘 して いる ように,
いかに教 育 課 程 を 弾 力 化 しても
幾つ かの疑 問 はぬ ぐい難 く,
「教育
内容
を多様
な障害児
の それぞれの発
達や学
習 上の必要
に即 し て検討す
る 1姻 こ と 」 が,
現場
に あっ て いっ そ う必要視
さ れ るこ と に なっ たの であ る。2 .
体 育 教 育の変 容 171 N工 工一
Eleotronlo Llbrary8
北 野 与一
先に述べ た2
回の改 訂には,
対 象 児 童・
生 徒の障 害の重 度・
重 複 化 傾 向 促 進に対 す る対 応,
こ の教 育に お けう
独自
性の 顕示,
あるいは他の障 害 教育
や一
般
教 育へ の同
調 などが あっ た。 こ う した事 情 も踏ま え な炉
ら!・
改 訂版 要 領と現場にお ける実 践指導
(p
変
容 を 体 育 的視
点か ら検 討 を加えて い くことにする。 (1
) 体 育 教 育に関 する学 習 指 導 要 領 改 訂の要 点指
導機会
の拡
大化
45
年 度 版 学習
指 導 要 領では,一
般の小 学 校 及 び 中 学 校 と 同 じ く次に掲 げ た よ うな 「第 5
体 黝 育 」・
が新
設さ れ,体育
の 重要性 ζ指導す
べ き領域
が明 らか に さ れ た。 第5
’
体 育 健 康で安 全な生 活 を営 むの に必 要な習 慣や態 度を養い.
,
心 身の調 和 的 発達 を図る た め,
体 育に関 する 指導につ い ては,
児童 ま た は 生 徒の心 身の 障害の状態や発 達 段 階に即して,
学 校の教育活 動 全体を通 じ て適 切に行 な う もの とする。 時にt 体 力の向 上につ いては,
小 学 部の体 育 科 および 中 学 部の保 健 体 育 科の時 間 は もちろ ん,
特 別 活 動お よび 養 護・
訓練に おいて も,
じゅう ぶ ん指 導 する よ う配 慮 しな け ればならな い。
こ の ように
,
指 導は学 校の教 育 活 動 全 体 に,
特に特 別 活 動 や 養 護・
訓 練の各 領 域にまで及ぶ もの と された。 さ らに54
年 度 版 学 習 指 導 要 領の 「第1
章 総 則 」には,
「日常 生 活における適 切な体 育 的 活動の実 践が 促 さ れ る よ う 配慮し な け ればな ら ない 」.
が付 加さ れ,
学校
の教
育 活動 全体に と ど ま らず,
日常 生 活における活 動に まで指 導 的 意 図が拡 大さ れ たの であ る、教 科 目標の 具 体 化 T
− 一
「手
び き 」を中心 に 37年 度 版学 習 指 導 要 領では,
体 育 科の 目標 は 具体 的に示さ れ,
し か もそれ は独 自性の豊 か な もの で あっ た。
しか し45
年 度 版 及 び54
年 度 版 学 習 指 導 要 領では,
具 体性 は弱 ま り,一
般 的 な健 康の増 進 と体
力の向
上が強調 さ れ たの み となっ た。 その改
訂の背
景には,37
年度
版 学 習指導 要 領の大 臣通 達か ら告 示に変 わっ た ことにより,
簡 潔に大 綱を示そ うという当 局の意 図が あっ た もの と思 われ る。 こう した事情
もあ り;
そ れを 補完
する意味
で47年
に精神薄弱体
育関係者
に よっ てr
体育指
導の 手 びき 』書が編 集さ れ,
文部省
に よっ て刊 行される。 そ れによ る と,
例えば,・
小 学部
体 育 科の教 科 目標は,解
説付
きで次の と おり示 さ れて いた。適切な 運 動の経 験 や 心 身の健 康につ い て の理 解 を 通 して
,
運 動の能力をでき る だ け伸ばy
.
t 健 康の増 進と体 力の向上 を図るとともに, 健 康で安 全な生活を営 む 態 度 を養 う。
1 適 切 な 運 動 を 行 な わせ ることIC
よっ て, その能 力 をできるだ けイ申ば し, 健 康 な 身 体 を 育 成 し, 体 力 の向 上 を 図る。
2.
運動の方 法や基礎 的な技能を習得さ せ,
運動に対 する興味や関心を育て生 活を 明るくする態度を養 う。3
運動やゲー
ム を 通して 情緒の安定を図 り,
互いに協力して 自己の役割を果たすな ど,
集団生活に必 要な能力と態 度を養 う。4
身体的 機 能 や 運 動機能の矯 正
,
訓練な どを通 し’
t
諸機 能の伸長 を 図る。 5日常 生 活にお げる健 康
,
安 全につ い て関心 をも
た せ,
健 康につい て の初歩的な知 識 ∫技 能 を 習 得 さ せ,
健 康で安全な生 活に必要な 能 力や態 度 を 養 う。
Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty 日本にお ける心 身障害者 体育の史 的研究 (第
12
報) 9こ の ように
,
体 育 科 (保 健体育科
)の 目標
は,
総 括 目標と具 体 目標で示さ れ,
45
年 度 版は学 習 指 導 要 領の 目標 を 具 体 化 した もの になっ て い た。 そ こ に は,37
年 度 版学 習 指 導 要 領 と 同じく’
独自性
を打ち出
そうとする姿勢
が見 ら れ た。 現場
で もこうし た目標
は受
け 入 れ られてお り,
こ の 「手び き 」に掲 げら れ た具 体 目標
は,54
年度
版 施 行 後も継
承さ れて い っ た ものと考え ら れ る。
啣 働 しか し な が ら,50
年 代 後 半 期には,
東京
都 立小
岩 養 や 長 崎 県 立 久 原 養に も見 られた よ うに,
各校
独自
の具体化
さ れ た目標
も設定
さ れ る よ う に なり,学
習指導要領
の弾
力化
と ともに 目標の具 体 化が強まっ て い っ た。 指 導 内容の実 態へ の即 応 化r
体
育指導
の手 びき 』 を参考
に し て45
年度
版学
習 指導要
領を37
年度
版 学 習 指 導要 領
と比較し た とき,45
年 度版
には,
概 略 次のよ うな改 訂 点が見 られた。ア
.体育科 ,保健
体育科
とも
に6
運動
領域
が設定
さ れて いた が,
r
体育指導
の手びき 』に よ」
れ ば,
体 育 科に矯 正 補 強 運 動が,
また保 健 体 育 科に格 技,
ス キー,
ス ケー
ト及び矯正補 強運動 が,
それぞれ補完的
な運動領域
と して示 されてい た。 イ.
領 域 別の指 導 項 目に関して,
削 除と補 充が な さ れ た。 すな わち,37
年 度 版 学 習 指 導 要 領 にお ける指 導 項 目 が 「発 展段
階的
に」 再 構 成 さ れたの であ る。特
にそれは,
水 泳 ボー
ル 運 動 及びダン ス に おい て顕 著 で あっ た。ウ
.37
年 度 版 学 習 指導
要 領よ り も領域
別の指導項
目の 程 度が,
さ ら に一
段 低い 段階
に下 げ ら れ た。 例え
ば,
こ の こと は,
陸 上運動における走 距 離や走 時 間の短縮
や軽 減に見 られ た野
工.
保 健に関 する内容は,
新 設の生 活 科で指 導 する こと となっ た。 た だ し,
保 健 体 育 科では,
従 来 どおり保健
に関す
る内容
が 取 り扱 わ れ た。以上の各 項 も示 すように
,
45
年度
版学
習 指導要
領に おける体
育 科 (保健
体育科
)の指導
内容
に関 する改 訂 も,
他 教 科と同じく障 害の重 度・
重 複 化、
あ るいは学 校や学 級の教
育 的な実態に 即 応させる ための ものであっ た といえ よう。 こう しt
対 応策
によっ て教 育 的な問 題 点が一
応 解 決し た かに見え た が,
就 学 児 童の 障 害の 重度・
重複 化 傾 向は さらに 速度を 速め,
強まっ たの で ある。,
そ の結 果,従
来 経 験 し な かっ た問 題も生 起 して新た な教 育 的 対 応が求め ら れ る ようにな り,45
年度
版 学習
指
導
要領
では対 応 しき れ な くな る。54
年度
版 学 習指導
要 領では,
こ の重度 ・
重複
児童・
生徒
に即応 し た柔軟
で弾
力性
の あ る指導
を行なうた めに,
これ まで にな か っ た簡 略 化が断 行された。 体 育 科で は, 3
段 階 方 式力擁
止さ れ, 運動領域別
の指導項 目
もなく
なる。 以 下に54
年 度 版 学習指 導 要 領にお ける体 育 科 及び保 健 体 育 科の内 容と,
「指 導 計 画の作 成と 砌各教科
全体
にわた る内容
の取扱
い 」を示す
と,次
の と お り で あ る。
体育 科の 内容 (1
) 歩 く, 走 る, 跳 ぶ な どの運 動 を 楽 し く行 う。 固 定 施 設 や 器 具・
用 具 を使っ た 遊 び, 水 遊 びなどの運 動 を す る。 (3
) き まりを守り,
み ん な で仲 良 く,
安 全に運 動 をする’
e 中 学部 保健体育 科の内容 {1
) 自己の体力に応じ た体操をする。
簡単なス ポー
ツやダン ス などの運 動 を する。
(3
} きま りを守 り,
互い に協 力して,
安 全に 運動をする。173
N工 工一
Eleotronlo Llbrary10 北 野 与
一
(4
) 保 健・
に関 する初 歩 的 な 事 項 を 理 解 する。
高 等部保健 体 育 科の内容 ω 体 操,
個 人 的ス ポー
ツ,
集 団 的ス ポー
ツ,格 技,
ダン ス な どの運動を する。
進 んで規 則 を守り
,
・
互い に協力して,
安全に運動 する。’
保健に関 する基 礎 的な事 項 を理 解 する。 指 導 計画 の作成と各教科全体に わ た る内容の 取扱い 1各教 科の内容の全部若 し くは
一
部を合わせ,
又 は各教 科,
、
道 徳,
特別 活 動 及 び 養 護。
訓 練の内容 の 全部 若しくは一
部 を統 合 して指 導 計 画 を作 成 す るに当 たっ て は, 個々 の児 童の実 態に即 して適 切に工 夫する。 2指 導 計 画の作 成に当たっ て は
,
児童
の精 神 発 達の遅 滞の状態や経 験 等 を考 慮 しな が ら,
実 際に指 導 する事項を選定し,
配列して,
効果 的 な指導を 行 うことが で きる ように配慮する。
54 年度版
学
習指導要
領では,
こ の よ うに指 導 内 容は極
めて簡略
に示1
されて い た。 その姿
勢の背景
には,例
え ば,高
等部
の運動領域
の設定 ,
あ るい は その 「内
容
の取扱
い 」.
も示す
よ うに,
一
般 諸 学 校 学習
指 導 要領
へ の準
拠 と,
重 度・
重 複 化に対す
る対 応 策 と して の弾 力 性のあ
る指 導 を可能
にする た めの模 索があっ た もの と考え られる。従
っ て、
現 場では,
ζうし た学 習指導
要領
の趣旨
を受 け
て教育
課程編成
のた めの自
主的研究
が,
50
年代後半
以降再
び活発化す
ること と なる。 こ の動 向は,30
年 代 前 半のそれと異質 な もの で あっ たが,
新 しい重 度・
重 複 化 とい う教育現
実に庫
面
しだ精神薄
弱教育
が再
び新
しい教育
を求
め て苦悩
し始
めたことを 意 味 していた。現 場に おける体 育 教 育の変
容
現 場の 体 育 教 育における障 害の 重度
・
重 複 化に対 する対 応に関して,
『特
殊 教 育 諸 学 校・
教.
育研究所等における研 究 課題等の調査 報 告』 を中
心に,
その一
端 を明 ら かに し たい。
発 達 論 的立 場に立っ 体 育
教育
の普
及障
害
の重 度・
重 複 化が強 まる な かで,
こ の教
育を発 達 論 的 立 場か ら見直
ぞうとす
る動き
が生 起 し た こ と にっ い て は前
述の と お り で あ る が,体
育 教育
に おいて も例外
で は な かっ た。40
年 代 後 半 期の体 育 事 情 は,
半 場 正 信のr
精 神 薄弱
児の体 育 指 導腎
,
文 部 省のr
体 育指
導の 働、
手 び き』 及び木
庭修一 ・斉
藤 義 夫・
植 野 善 太 郎の 「精 神 薄 弱児の体 育 指 導』な どに よっ て も明 らかの よ う に,
発
達論
的 立 場の弱い もので あっ た。
勿論,
それぞ れが 「発 達 段階
に応.
じ疼
指 導 」 を 指 向して い た が,
そ の 立場
は社
会 自立 論・社
会 適 応 論 的 立場
の 強いも
のであっ た。 しか しな が ら,50
年 代に入る と,
発 達 論 的 立 場に立っ て体育教
育 に 関 する諸 問 題 を検
討し始
める学校
が 翻増
加その後
糊
こは そ噸 向 力‘さ ら噸 著 と な る ・ その状 況 は 消 時干哘 され奮
鱒
書 や諸報告 ,
あ るいは 『特 殊 教育
諸 学校 。教
育
研究
所等に お け る研究
課題等
の調 査報告
』 におけ る 精 神 薄 弱 部 門の各 年 度 研 究 課 題 報 告 を 検 討 す れ ば 明 らかであ る。 以 下に発 達 論 的 立 場に立つ各 年度 研 究 課 題 報 告の若 干の 事 例を挙 げて おこう。 ただ し,
この 事例
は 上 記報告書
か ら無作
為で 取 り上げ
た もの で あり,
そ の報
告数
は後半期
以降
急増
してい るC・
と を付
記して おきたい。
岩 淵 吉 助,
「予 ど もの発 達に即 応 し た 指 導 内 容 を 求めて の 資 料 作 り(体 育 科, 図工美 術 科 )」 (50年 度 前 掲 報 告,
4021)“t
浅 野 幸一
,
「じょ うぶな 体 をつ く り, がんば る 力 をつ ける」 (51年 度 前 掲 報 告, 4158)斉 藤 均ほか
,
「ボー
ル あそびにっ い て の発 達 段 階 別指導 法の考 察 」 (52 年度 前 掲 報 告,4134
)中 山 泰 子
,
「か らだの発 達 を 促 す指
導につい て」 (53年 度 前 掲 報 告,4105
)Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 日本に おけ る心 身 障害者 体 育の史 的 研 究 (第