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第 2 章第 3 債務者の変更 155 第 3 債務者の変更 1 相続による債務者の変更 Q66 債務者の死亡 1 債務承継登記 抵当権の債務者が死亡した場合に 相続人の 1 人が他の相続人 が相続した被担保債務を引き受けるためには どのような登記を すべきか A 相続人全員は 債権者 ( 抵当権者

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第3 債務者の変更

1 相続による債務者の変更

66 債務者の死亡①―債務承継登記 抵当権の債務者が死亡した場合に、相続人の1人が他の相続人 が相続した被担保債務を引き受けるためには、どのような登記を すべきか。

相続人全員は、債権者(抵当権者)の同意を得て、債務の 承継者を遺産分割協議で定めることができる。この場合は、 債務の承継者のみを債務者とする変更登記をすることができ、共同 相続人全員を債務者とする変更登記はする必要がない。 債務の承継者を定める遺産分割協議がされていないときは、共同 相続人全員を債務者とする変更登記をしなければならない。その後 に、債務引受の変更登記をすることになる。

抵当権の債務者甲に相続が発生したことによる債務者の変更登記 は、次の1または2の区分に応じた方法による(昭33・5・10民甲964)。 1 遺産分割協議で特定の相続人が債務を引き受けた場合 抵当権の債務者に相続が開始すると、その債務者が負担していた被 担保債務(以下「相続債務」という)は、相続人全員(相続放棄者、 欠格者、被廃除者を除く)が法定相続分に応じて承継する(民899)。各 相続人が負担する相続債務を特定の共同相続人が引き受けるには、次 の(1)または(2)の方法による。

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(1) 共同相続人全員を債務者とする抵当権の債務者の変更登記が されていない場合 (イ) 債権者の承諾ある遺産分割協議に基づく債務者の変更登記 共同相続人A・B全員を債務者とする抵当権の債務者の変更登記が されていない場合において、共同相続人A・B中のAが、債権者の承 諾を得て、遺産分割協議により、抵当権で担保されている亡債務者甲 の債務を引き受けたときは、Aは、遺産分割協議の遡及効により(民 909)、亡債務者甲の相続開始の時にさかのぼって甲の抵当債務を承継 する。 債権者の承諾を得て債務引受者を定めた遺産分割協議によった場合 は、共同相続人全員の相続による債務者の変更登記を経ることなく、相 続人Aを債務者とする変更登記をすることができる(昭33・5・10民甲964)。 〔抵当権の被担保債権の相続による承継の登記手順〕

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(ロ) 申請情報・添付情報 債権者の承諾を得た遺産分割協議により、共同相続人中の1人Aを 債務者とする債務者の変更登記の申請情報および添付情報は次のよう になる。 登 記 申 請 書 登記の目的 何番抵当権変更 ❶ 原 因 平成〇年〇月〇日相続 ❷ 変更後の事項 ❸ 債務者 〇市〇町〇丁目〇番地 A 権 利 者 〇市〇町〇丁目〇番〇号 ❹ 株式会社C銀行 (会社法人等番号 〇〇〇〇―〇〇―〇〇〇〇〇〇) 代表取締役 D 義 務 者 〇市〇町〇丁目〇番地 ❺ A 添 付 情 報 ❻ 登記原因証明情報 登記識別情報 会社法人等番号 代理権限証書 (以下省略) ❶ 変更すべき抵当権を特定する。 ❷ 債務者の死亡の日。 ❸ 本例は、債権者の承諾を得て、遺産分割協議により共同相続人中のAが債務 を引き受けた場合の例である。 ❹ 抵当権者。

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❺ 抵当権設定者。 ❻ 登記原因証明情報(不登61) 被相続人の出生から死亡までの除戸籍謄本、相続人の戸籍謄抄本が該当する。 相続放棄者があるときは相続放棄申述受理証明書も提供する。債権者の承諾を 得て遺産分割協議によって債務引受者を定めた場合は、遺産分割協議書も提供 しなければならないが、債権者は当該変更登記の申請人(権利者)となるから、 遺産分割についての債権者の承諾を証する情報は不要である。 (参考) 抵当権の変更登記には、登記義務者の印鑑証明書を要しない(不登規 47三イ(1)、昭30・5・30民甲1123)。ただし、登記識別情報を提供するこ となく事前通知または資格者代理人による本人確認情報(不登23)によ り申請する場合は、登記義務者の印鑑証明書の提供を要する(不登規48 ①・49②)。 <登録免許税> 不動産1個につき1,000円(登税別表一・一・(十四))。 <共同相続人の1人が遺産分割により、債権者の承認を得て債務を引き受け た場合(記録例410参照)> 1 抵当権設定 平成〇年〇月〇日 第〇号 原因 平成〇年〇月〇日金銭 消費貸借同日設定 債権額 金〇万円 利息 年〇% 損害金 年〇% 債務者 〇市〇町〇丁目〇番 地 甲 抵当権者 〇市〇町〇丁目〇 番〇号 株式会社C銀行 付記1号 1番抵当権変更 平成〇年〇月〇日 第〇号 原因 平成〇年〇月〇日相続 債務者 〇市〇町〇丁目〇番 地 A

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(2) 共同相続人全員を債務者とする抵当権の債務者の変更登記が されている場合 共同相続人全員(A・B)を債務者とする抵当権の債務者の変更登 記がされた後に、債権者の同意を得て、遺産分割協議で特定の相続人 Aが債務を引き受けた場合、その債務者の変更登記の原因は「年月日 遺産分割」である(不動産登記書式精義中(一)783頁)。 2 遺産分割協議によらない場合 債務者に相続が開始した場合には、相続人は法定相続分の割合によ り債務を承継する(民896・899)。遺産分割協議で抵当権の被担保債務 を承継する者を定めなかった場合において、共同相続人A・Bのうち Aを債務の承継者とするためには、まず、①「年月日相続」を原因と して、抵当権の債務者を共同相続人全員(A・B)とする変更登記を する(昭33・5・10民甲964)。 前記①の変更登記をしたうえで、②債権者との債務引受契約(免責 的債務引受)により、または、債権者の同意を得て、共同相続人間の 債務引受契約(免責的債務引受)に基づき「年月日Bの債務引受」を 原因とする抵当権の債務者の変更登記をする(昭33・5・10民甲964、不動 産登記書式精義中(一)783頁参照)。なお、共同相続人がA・B・Cの場合 に、AがB・Cの債務を引き受けたときは、登記原因を「年月日B及 びCの債務引受」とする。 〔2―1:亡債務者の債務について遺産分割協議がされていないために相続 人全員を債務者とする申請情報・添付情報〕 登 記 申 請 書 登記の目的 何番抵当権変更 ❶ 原 因 平成〇年〇月〇日相続 ❷

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新債権法への対応

78 連帯債務者1人の債務免除 債権者が連帯債務者の1人の債務を免除した場合、免除の効力 は他の債務者に及ぶか。

民法の改正により、連帯債務者の1人に対する債務の免除 は、他の債務者に効力を及ぼさないこととなった。したがっ て、抵当権の変更登記も民法の改正前と異なることになる。

改正前の民法437条[連帯債務者の1人に対する免除]は、民法の 改正により、全文削除された(筆者注:下線は筆者による)。 【改正前の民法437条】 連帯債務者の1人に対してした債務の免除は、その連帯債務者 の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、そ の効力を生ずる。 1 相対的効力 改正後の民法では、連帯債務者の1人に対する債務の免除の規定(改 正前民437)が削除された。削除の効果は、次のように異なる。 (1) 改正前の民法では〜絶対的効力 改正前の民法437条[連帯債務者の1人に対する免除]では、連帯債 務者の1人に対する債務の免除は、その免除を受けた連帯債務者の負 担部分の限度で絶対的効力を生ずるとしている。例えば、連帯債務者 BとCが債権者Aに対して600万円の連帯債務を負い、その負担部分

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が平等(Bの負担部分300万円、Cの負担部分300万円)である場合に おいて、債権者が連帯債務者Bの債務の免除をすると、その効力は、 Bの負担部分300万円を限度として、他の連帯債務者Cに及ぶ(債務免 除の絶対的効力)。この結果、連帯債務者Cは自己の負担部分300万円 を債権者に弁済すればよいことになる。ただし、相対的免除の特約が ある場合は、その定めに従う(新債権総論Ⅱ596頁参照)。 (2) 改正後の民法では〜相対的効力 改正後の民法では、改正前の民法437条の「連帯債務者の1人に対し てした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の 連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。」とする条文が削除 された。 これにより、債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除する意 思表示をしても、免除の効力は他の連帯債務者に及ばない(債務免除 の相対的効力(改正民441本文))。例えば、連帯債務者BとCが債権者A に対して600万円の連帯債務を負い、その負担部分が平等(Bの負担部 分300万円、Cの負担部分300万円)である場合において、債権者が連 帯債務者Bの債務の免除をしても、連帯債務者Cには何らの影響も及 ばず、Cは600万円を債権者に弁済しなければならない。 なお、債権者および他の連帯債務者Cが別段の意思を表示したとき は、当該他の連帯債務者Cに対する効力は、その意思に従う(合意に よる債務免除の絶対的効力(改正民441ただし書))。これを具体的にいえ ば、連帯債務者Bに対する免除の効力をCに及ぼすためには、債権者 と連帯債務者Cとの合意があれば足り、他の連帯債務者Bの同意を要 しない、ということである(新債権総論Ⅱ598頁参照)。

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〔民法改正前と改正後の連帯債務者の弁済の比較図〕 2 抵当権の変更登記 (1) 債務免除の別段の意思表示がない場合 改正後の民法では、改正前の民法437条の規定[債務免除の絶対的効 力]が削除されたことにより、債権者が連帯債務者の1人Bに対して債 務を免除する意思表示をしても、債務免除の別段の意思表示がない限 り、免除の効力は他の連帯債務者Cに及ばない(債務免除の相対的効 力(改正民441))。他の連帯債務者Cは、前掲1(2)の例でいえば、依然と して債権額600万円の債務を負う。 したがって、債務免除の別段の意思表示がない場合には、抵当権の 変更登記は、登記原因を「年月日債務免除」、変更後の事項「連帯債務 者 住所 B、住所 C」とあるのを「債務者 住所 C」とする変

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更登記のみで、債権額の変更登記は申請できない。 (2) 債務免除の別段の意思表示がある場合 債権者が連帯債務者の1人Bに対し債務の免除をし、この免除の効 果は他の連帯債務者Cにも及ぶとする債務免除の別段の意思表示がさ れたときは(改正民441ただし書)、連帯債務者間の内部負担が各300万円 とすると、次の抵当権の変更登記を申請することになる。 ① 登記原因「年月日債務免除」 ② 変更後の事項「連帯債務者 住所 B、住所 C」とあるのを「債 務者 住所 C」 ③ 債権額「金600万円」(1(2)の例の債権額〜登記記録上の債権額) とあるのを「金300万円」

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137 抹消の原因・その日付 不動産登記法70条3項後段[弁済期から20年経過後の供託]の規 定により抵当権(休眠担保権)を抹消する場合の原因・その日付 は。

「年月日弁済」である。

抹消登記の登記原因・その日付は「年月日弁済」であり、「その日付」 は供託の効力が生じた日である(昭63・7・1民三3456)。「供託の効力が生 じた日」とは、供託金が払い込まれた日である(登研494・125)。この供 託は民法494条の弁済供託であるから、債務履行地の供託所に供託す る(民495①)。

138 抵当権者の相続登記の要否 休眠担保権に該当する抵当権者が死亡している場合、抹消登記 をするについて相続による抵当権の移転登記をしなければならな いか。

要しない。

不動産登記法70条3項後段[弁済期から20年経過後の供託]の規定は、 登記義務者(抵当権者)が死亡し、その相続人は判明しているが行方 不明の場合も適用があると解されている(昭和63年登記官会同147頁)。こ の場合、相続による抵当権の移転登記は要しない(昭和63年登記官会同81 頁)。

参照