デジタルラジオ受信機における移動受信性能向上アルゴリズムの検討
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2016-AVM-93 No.4 2016/8/8. 案手法の適用効果を計算機シミュレーションにより明 ら か に す る と 共 に ,DSP 実 装 に よ る 聴 感 評 価 の 結 果 を. Differential demodulation r(m+1). y(m+1). まとめている. 1-symbol r(m) conjugate delay. 2. DAB 基 本 受 信 方 式 2.1. 概 要 DAB 受 信 機 で は , DQPSK を 用 い て 音 声 情 報 が デ ジ. 図 2. タ ル 変 調 さ れ , こ れ を 送 出 す る た め に COFDM (Coded. 従 来 の DQPSK 復 調 方 法. Orthogonal Frequency Division Multiplexing) に よ る キ ャ リ ア 変 調 が 行 わ れ て い る .従 っ て ,DAB 受 信 機 で は , COFDM 信 号 復 調 の た め の マ ル チ キ ャ リ ア 復 調 機 能 と , DQPSK 信 号 復 調 の た め の デ ー タ 復 調 機 能 の 両 方 を 備 え る 必 要 が あ る .図 1 に ,DAB 受 信 機 の 構 成 例 を 示 す .. 2.2. 従 来 の復 調 方 法 (遅 延 検 波 ). (m) (m 1) (m) ( m) (m 1) (m). (4). 2.3. 課 題 伝送路変動周期がシンボル時間長に対して十分に. DQPSK 信 号 の 復 調 機 能 は ,受 信 シ ン ボ ル と 1 つ 前 の. 長 い 場 合 は , 振 幅 ・ 位 相 変 動 は そ れ ぞ れ (m+1)= (m). 受信シンボル(遅延シンボル)との複素乗算により構. =A 及 び (m)=0 と 近 似 す る こ と が 可 能 で あ る .さ ら に ,. 成されるのが一般的である.この手法は遅延検波と呼. CNR が 高 い 場 合 は , 雑 音 電 力 N(m)の 大 き さ が 受 信 信. ば れ る . 図 2 に , こ の よ う な 遅 延 検 波 に よ る DQPSK. 号に対し十分に小さいとみなせるため,この値を無視. 信号復調例のブロック図を示す.. で き る . 従 っ て , 送 信 さ れ た 変 調 位 相 (m)を 正 確 に. ベ ー ス バ ン ド に お け る DQPSK 信 号 x(m)を , 次 式 の ように定義する.ただし,m は受信シンボルの出力タ イミングである.. 検出することが可能となる. これに対し,伝送路変動周期が速い場合や受信信号 電力が小さい場合,受信シンボルと遅延シンボルが歪. x(m) exp j (m). (1). ま た , (m)は 情 報 ビ ッ ト 毎 に 対 応 し た 変 調 位 相 で あ り , DQPSK の 場 合 は (2k-1)/4 (k= 1,2,3,4) と な る . る熱雑音や伝送路における振幅・位相変動の影響を受 けるため,受信信号歪みが発生する.よって,受信信 号 r(m)は 等 価 低 域 系 を 用 い て 次 式 の よ う に 表 さ れ る . (2). 上 式 に お い て , (m)及 び (m)は そ れ ぞ れ 振 幅 及 び 位 相 の 変 動 成 分 , N(m)は 熱 雑 音 成 分 で あ り , シ ン ボ ル 間 干渉の影響は無視している.このとき,次式のような 計算により復調信号が得られる.. 方 式 を 用 い る QPSK の も の に 対 し 急 激 に 劣 化 す る こ と 移動受信性能を向上する独自の信号復調アルゴリズム を開発した.. 3. 受 信 性 能 向 上 ア ル ゴ リ ズ ム 3.1. 概 要 今 回 考 案 し た DAB 受 信 性 能 向 上 ア ル ゴ リ ズ ム で は , 基準シンボルの生成・更新機能が必要となる.この基 準シンボルは,過去の受信シンボルを参照して生成す る.図 3 に,複素数平面で表現した 4 つの基準シンボ ル Z p (m) (p= 1,2,3,4) の 例 を 示 す .m 番 目 の 遅 延 シ ン ボ ル r(m)が 得 ら れ た 場 合 , ま ず 初 め に , 複 素 数 平 面 に お. y ( m 1) r ( m 1)r * (m) (m 1) (m)e. る .こ の た め ,DQPSK の シ ン ボ ル 誤 り 率 は ,同 期 検 波 となる.この課題を解決するため,今回,雑音耐性と. 上述のような放送信号を受信する際,受信機におけ. r (m) (m) exp j (m) (m) N (m). みの影響を強く受けるため,検出位相が高速に変動す. いて遅延シンボルから基準シンボルまでのユークリッ j ( m ) ( m ). . (3). . f N ( m 1), N * (m). ド 距 離 C p (m)を 計 算 す る .. C p ( m) r ( m ) Z p ( m ). た だ し ,f{u,v}は u と v の 関 数 で あ り , (m)及 び (m). Q. は次式の通りである.. C2(m). DAB 受 信 機 の 基 本 ブ ロ ッ ク 構 成 図. ⓒ 2016 Information Processing Society of Japan. C1(m) Z1(m) r(m) I. FEC Decoding. De-mapping. Differential demodulation. FFT. GI elimination. ...... ...... I/Q demodulation. Z2(m). ...... Tuner. Receiver antenna. 図 1. (5). C3(m). C4(m) Z4(m). Z3(m). 図 3. 遅延シンボルと基準シンボルの関係. 2.
(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2016-AVM-93 No.4 2016/8/8. また,上式で得られた 4 種類のユークリッド距離の. 変 調 位 相 (k)は 固 定 値 p に 置 換 し た . さ ら に , 熱 雑 音. うち最小のものを選択し,そのインデックス p を選択. N(k)の 足 し 合 わ せ 効 果 を 考 慮 す れ ば , 式 (8)は 次 式 の よ. インデックス s として保持する.さらに,インデック. うに等価変換できる.. lim Z p (m) expj p exp j . ス に 対 応 し た 基 準 シ ン ボ ル Z s (m)を 用 い て 遅 延 シ ン ボ. m . ル r(m)を 置 換 す る . 例 え ば , 図 3 の 場 合 , 4 種 類 の ユ. . . m1 lim (1 ) m k 1 N (k ) m k 0 . ー ク リ ッ ド 距 離 C p (m)の う ち 最 小 の も の は C 1 (m)と 推 定されるため,選択インデックス s は 1 となり,遅延. (9). シ ン ボ ル r(m)を 基 準 シ ン ボ ル Z 1 (m)に 置 換 す る . 次 に , 次 式 を 用 い て 基 準 シ ン ボ ル Z s (m)を 更 新 す る .. 式 (9)か ら 明 ら か な よ う に , 基 準 シ ン ボ ル Z p (m)は , 伝 送 路 変 動 成 分 , に 応 じ て 回 転 し つ つ 変 調 位 相 p を 維. Z s ( m 1) (1 ) Z s ( m ) r ( m ) (0 1). (6). 持する能力と,熱雑音成分を指数オーダで抑圧する能 力とを備えることとなる.. た だ し , は ス テ ッ プ サ イ ズ で あ る .ま た ,次 式 に よ り. 3.2. 移 動 受 信 性 能 の向 上. 全 て の 基 準 シ ン ボ ル Z p (m+1) (p≠ s)を 決 定 す る .. Z p ( m 1) Z s ( m 1)e. 放送信号の移動受信時は,伝送路状態が時々刻々と 変 化 す る .従 っ て ,上 述 の 式 (9)に お け る ス テ ッ プ サ イ. ps j 2 . (7). (1 p 4, p s ). ズ を 適 応 制 御 す る こ と で ,移 動 受 信 性 能 を 向 上 す る こ とが可能となる.そこで,今回の考案アルゴリズムで は,伝送路推定部とその推定結果に基づいたステップ. 図 4 に ,式 (6)と (7)に 対 応 し た 基 準 シ ン ボ ル 更 新 の 例. サイズ適応制御機能を導入している.. を示す.このように,本手法では,複素数平面上にお. 図 5 に ,伝 送 路 推 定 部 の 機 能 ブ ロ ッ ク 構 成 図 を 示 す .. いて正方形の形状を維持しつつ全ての基準シンボルを. また,図 6 に伝送路推定部における信号処理内容の概. 更 新 す る こ と に よ り ,伝 送 路 の 振 幅 /位 相 変 動 に 追 従 す. 要を示す.. る こ と が 可 能 と な る .こ の と き ,式 (6)及 び (7)を 解 く こ. ま ず ,シ ン ボ ル 結 合 部 に お い て FFT 出 力 信 号 す な わ. と に よ り , 基 準 シ ン ボ ル Z p (m)の 収 束 値 を 次 式 の よ う. ち DQPSK 信 号 を 4 乗 し , 受 信 し た シ ン ボ ル を 周 期 的. に表すことができる.. に 複 素 数 平 面 上 の 一 点 に 集 約 す る ( 図 6(a)). DAB 信 号にはパイロット信号が含まれていないため,このよ. Z p (m) (1 ) Z p (0) m. m 1. . expj ( p ) (1 ). m k 1. k 0. . (1 ). m k 1. N (k ). (8). . データを生成する.ここでは,このデータを集約信号 と呼ぶ.正規化信号(固定データ)を用いて集約信号 を正規化することで,集約信号に重畳されている伝送 路 変 動 成 分 が 算 出 さ れ る ( 図 5(a)).. k 0. 上式では,伝送路の変動周期がシンボル時間長に対. (a). (b). 1-. freq. freq. symbol. た ,受 信 信 号 r(k)は 各 々 の p に 対 し 固 定 値 で あ る た め ,. symbol. … = (m- 1)= 及 び (0)=… = (m- 1)= と 近 似 し た . ま. (c). freq. し 十 分 に 長 い 場 合 を 仮 定 し ,伝 送 路 の 変 動 成 分 を (0)=. symbol. m 1. . うな信号処理を行うことでパイロット信号に相当する. 基準シンボル 更新部へ. FFT . r(m). ★. シンボル 結合. 複素除算. 時間内挿 フィルタ. 周波数内挿 フィルタ. シンボル 展開. Q Z1(m). Z2(m+1). 正規化信号 生成. Z1(m+1). メモリ. r(m). 図 5. Z2(m). 伝送路推定部の機能ブロック構成図. I. 時間内挿 周波数内挿 フィルタ. Z4(m) Z3(m+1) Z3(m). 図 4. Z4(m+1). 基準シンボルの更新. ⓒ 2016 Information Processing Society of Japan. DQPSK信号 (4点のいずれか). 図 6. 4乗+正規化 =パイロット化 (a). シンボル候補展開 (4点に展開) (b). 基準シンボルの ステップサイズ制御. 伝送路推定部の信号処理内容概要. 3.
(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2016-AVM-93 No.4 2016/8/8. 次に,集約信号の存在するサブキャリアに対し,時. -1. 10. 間 方 向 の 伝 送 路 変 動 成 分 の 内 挿 を 行 う( 図 5(b)).ま た , BER. この時間内挿結果を用い,残り全てのサブキャリアに 対して周波数方向の伝送路変動成分を内挿する(図 5(c)).最 後 に ,理 想 シ ン ボ ル 点 の 候 補 を 4 点 に 展 開 し ( 図 6(b)),基 準 シ ン ボ ル と の 差 異 を 監 視 し な が ら ス テ ップサイズを適応制御する.. -2. 10. 4. シ ミ ュ レ ー シ ョ ン. 4. 6. 8. 今回考案したアルゴリズムによる復調性能向上効 果を計算機シミュレーションで確認した.図 7 に,復. 図 9. 10 12 E b /N0 [dB]. 14. 16. シミュレーション結果(移動受信環境). 調 信 号 処 理 モ デ ル を 示 す .DSP 実 装 を 前 提 と し た 演 算 量削減のため,全ての受信シンボルを 4 乗変換して基. 次に,図 9 に,移動受信環境におけるシミュレー. 準シンボルを生成・更新する構成とした.また,ステ. ション結果を示す.高速走行時の受信を想定し,伝送. ップ係数の制御を行うため,時間及び周波数軸の内挿. 路 モ デ ル は TU6 を 使 用 し た .同 図 よ り ,移 動 受 信 環 境. フィルタを導入した.. であっても考案アルゴリズムの適用効果が得られてお. 図 8 に,強雑音環境(弱電界環境)を想定した計算. り , BER= 10 -2 に お け る 所 要 C/N の 向 上 効 果 は お よ そ. 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 を 示 す .同 図 よ り ,AWGN と. 0.4dB で あ る .. 2 波マルチパス環境のいずれにおいても復調性能が向. 5. DSP 実 装 に よ る 聴 感 評 価. -2. を評価指標とし. 本 ア ル ゴ リ ズ ム を DSP に 実 装 し ,上 述 の 計 算 機 シ ミ. た と き の 所 要 C/N の 向 上 効 果 は , 最 大 で お よ そ 1.5dB. ュレーションと同等の検証試験を実施した結果,平均. である.この評価指標は,地上デジタル放送において. で お よ そ 1.2dB の 所 要 C/N 向 上 効 果 が 確 認 で き た .シ. 信 号 復 調 後 に 必 要 と さ れ る BER を 参 考 に し た 値 で あ. ミュレーションとの差異の要因は,固定小数点化や三. り,実運用上で十分に有意な効果が得られていると考. 角関数演算の離散化など,ビット制約によるものが支. えられる.. 配的であった.. 上 し て い る こ と が 分 か る . BER= 10. また,実際のラジオ放送番組を用いて聴感テストを (遅延検波) Tuner. 乗算. FFT シンボル 遅延. 検波 出力. 複素 共役. シンボル 置換. 用いた試験を行い,評価結果の精度向上を試みる.. 6. ま と め 本稿では,デジタルラジオ受信機の雑音耐性と移動. γ 基準信号 更新. 受信性能を向上する独自の信号復調アルゴリズムを提 案した.. μ. (4乗ディメンジョン) 時間軸 フィルタ (TFIL). 向上効果が確認できた.今回は,特定のラジオ放送番 組で聴感試験を実施したため,他のジャンルの番組を. 基準信号 選定. シンボル 変換 (BND). 実 施 し た 結 果 , 複 数 名 平 均 で お よ そ 0.3dB の 所 要 C/N. 今回考案したアルゴリズムは,過去の複数の受信信. 周波数軸 シンボル フィルタ 候補展開 (CFIL) (UBND). 号を参照して基準シンボルを更新する機構を備え,こ れを用いて信号復調を行うためベース受信性能を向上. 図 7. 復調信号処理のシミュレーション構成. できる.さらに,独自手法を用いて疑似パイロット信 号 を 生 成 す る こ と で 伝 送 路 推 定 が 可 能 と な る た め ,雑. -1. -1. 10. 音耐性と移動受信性能が向上できる.これらの効果. 10. -2. 10. を ,計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 及 び DSP 実 装 に よ る 聴 感. -2. 10. -3. 10. -4. 10. BER. -5. 評価で明らかにした.. -3. 10. BER. -4. 10. 文. 10. -6. 10. -5. 10. -7. 10. Eb /N0 [dB]. -8. 10. 4. 5. 6. 7. 8. 9 10 11 12. (a) AWGN 環 境 図 8. -6. 10. D/U= 10dB Eb /N0 [dB] 4. 5. 6. 7. 8. 9 10 11 12. (b) 2 波 マ ル チ パ ス 環 境. シミュレーション結果(強雑音環境). ⓒ 2016 Information Processing Society of Japan. 献. [1] ETSI EN 300 401 v1.4.1, Radio Broadcasting Systems, June 2006. [2] M. Velez et al., "Field measurement based performance analysis of digital audio broadcasting reception in mobile channels," in Proc. IEEE VTC-Spring, May 2005, pp. 247-251. [3] A. Goldsmith, Wireless Communications, Cambridge University Press, 2005, pp. 172-182.. 4.
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