ペトリネットについて (3)
篠沢昭二・松島俊章
先月号で.PN の基本的な解析手法である到達可能木, 標号機械(略称 TM) ,および線形代数手法について述べ Tこ. 本号では,通信システムの実際例をとりあげ,その P N 記述と解析,およびタイムベトリネット(略称 TPN) による発火時間条件の考察について述べることにする.8
.
コマンド再送機能をもっ片方向伝送 本誌 7 月号第 2 節で,簡単な 2 局間データ通信,すな わちコマンドの流れ方向が一方向に固定されている片方 向伝送の通信制御手順について述べ,その PN 記述を図 2 に示した.しかし,実際の通信制御手11原のモデル化と して図 2 は適切であろうか? たとえば,現実には,伝 送中に信号が外乱等により減衰したり消滅し,相手局に コマンドやレスポンスが達しないこともおこりうるので ある.しかるに,図 2 に示した PN において,これらの 事象や状態はモデル化されておらず,また仮りに,位置 れあるいはれから標号が消滅することを記述したとし ても,それに対する正常動作への復帰機能を記述してい ない.このことは,図 2 の位置 P2 あるいは h から標号 が消滅したとき,図 6 に示した TMに関し図 9 の点線で 示す遷移がおこり,れああるいはあ P. という停止状態 に陥り,修復不能であることからも明らかであろう. そこで,実際の通信システムにおいては,このような 停止状態に陥り,修復不能にならないように,片方向伝 送では一般に 次局側にレスポンス受信監視用タイマ をもっている.そしてこの受信監視用タイマにより 次局側はコマンド送信後,ある設定時間以上経過しても レスポンスが受信できない,いわゆるタイムアウトが発 生したとき,コマンドの再送を行なっている[1 ].この コマンド再送機能をもっ片方向伝送の PN 記述を図 10 に 示す [2J
[3
J
.
図 10において,位置 P, -P. , 転位九 -t7 はそれぞれ, 図2における位置ム -P.. 転位九 -t. と同じ意味をもっ ており,新たに書き加えられている PIO は,伝送路外の 状態を意味している.また,転位 t8• らはそれぞれ, コ マンド伝送中の信号喪失, レスポンス伝送中の信号喪失 を意味し,転位 t,o はコマンドの再送信を意味している. ここで,図 10の PN の TMを書いてみると,図 11 となり, 明らかに停止状態は存在せず修復可能となっている. P,
P,
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p,から標号喪失 p,から標号喪失 p,如何一ーーーーーーーーーーー-p , p , 唾ーーー-ー一ーー"、1
t p,
p,
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t J 9 9 p h p h h d HIll--+ 町 11111V 吋 h 出‘ふ‘ p' 日'pa 日ヨ pa 込司 4F h7 、‘, 、 P ‘、、戸 巴司 a ,‘‘, 、 pa 、、, 弘、号 +i4\V\γ/ ~標一〈 j~i/ 、 iコ-、、, 、 J 旬、、, \失一\\/ \喪一\、/ 7 ‘ 7h ‘』 E P 、 -sp 、 6 川旬、 444 3 t s t D t 9 t pill-+ 匹 Ill11 , MIll--v 川・ pill-+ 4 4 1 1 p p p,
p,
トに標号カ入る
PIP9P" しのぎわ しょうじ 日本電気情報処理営業支援本部 まつしま としあき 日本電気伝送通信事業部 図 B 図 2 のPN で P2P6 から標号が爽失したときの TM5
4
2
さて,以上に述べたコマンド再送を行 /一、 1, なう片方向伝送において,タイムアウト(、 12u 〉ー一一一一一 時聞をどれほどに設定するか,あるいは, 〆 いったん設定された時間が正しいか否か を検証することは,しばしば重要な問題 となる.このようなタイムアウト時間の 設定に関する問題は, PN の各転位に発 火時刻許容範囲を指定した TPN (7月 号第 4 節参照)を用いることにより,次 のように換言され明確化される.すなわ ち, r転位九 -t7の発火時刻j許容範囲が, t, ; ['1",*,'1",紳J t2;['I"2* ,'I"2紳] t7 ; ['1"7*, '1"7紳] と知ることができるとき,転位 t,o の発 火時刻許容範囲 ['1"'0*, '1"'0帥]を決定,あ るいは検証せよ. J という問題となる. t
,
図 10 通信制御手順の PN 記述(コマンド再送機能有) ここで, TPN の概念を把握するために,図 10に示す のは,標号がれあるいはれに存在する聞に限られ,l.-PN の各転位に発火時刻許容範囲を付した Tのは,標号がれあるいはれに存在する聞に限られ,l.-PN におい たがってら,らの発火時刻に関する制限条件はおのずと て,発火列が t, t2tat5t6t7 九としたときの発火時刻許容範 算出され,次のようになる. 簡と発火時刻をタイムチャートで例示しておく. ら ['1"6ホ, '1"6料 J=[0,'I"2**J さて,図 10 の転位九~んの発火時刻許容範囲が上記の t. ; ['1".*, '1".料J=[0,'I"6帥] ように既知であるとすると,らあるいはらが発火可能な また,タイムアウト時聞は,伝送路外に信号が喪失さ J t j t 9 町 Illi--v 円 Ill111V 叫時
4111 ト 1vuh--ト 1+M11111申1ill--v p-p. ,但 a , ug3
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0 4 F O S I r -! papA1 れド ll mAil--,知 11111V I a -o P P 1 : t p.p.p,
P,
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P,
P,
P. 函 11 図 10の PN の TM 1981 年 9 月号 1,
れず正常に通信が行なわれたときの 1 次局のコマンド送 信からレスポンス受信までに要する最大時間より大きく 設定されねばならない.これを図 10の TPNt 上で対応 させて考えると,九発火後 ρ'0 に標号が存在することな く,らが発火するまでの最大時間,すなわち位置わが 標号を連続して保持する最大時聞を求め,この時間より 大きな値を'l'10* とすればよいことがわかる . p,O に標号 が存在せずに,あが標号を連続して保持している問の発 火列としては,図 11 の TM より下記の 6 通りがあり,そ れぞれの場合について , P7 の標号保持最大時間を h1max, … h6maxで表わすと, ①発火列t2tatst6の場合 h, max= 'I"z柿+'I"a紳 +'1"5柿 +'1"6帥 ②発火列 t2tat, t5t6の場合h.~.v=J h, m日 ('1",*出向料のとき)
2 ロlRX-ll
'1"2紳十九料 +'1",榊 +'1"6材 ('1",**>'1"5紳のとき) ③発火列 t2t3t5t, t6の場合 ha max=h2 max ④発火列ら t2t3t5t6の場合 h, max=r'**- 'Z"5*-'6本 -'1"7*- '1",*+'1"2**+ '1"3**+ T 料 +'1".**5 寸-'1"6 (ただし, ".*-"5柿 -'1"6材一'1"7料 -'1",紳註 O が必要) ⑤発火列九九九九九 t6 の場合h5max= 'I",**-'I"5*- 'I"6*- 'I"7本 -'1",事 +'1"2柿+'I"a紳+
(55)
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4
3
礼子間 信する,いわゆる複合局間の両方向 伝送の通信制御手)1頃について.
P N
により記述,解析を行なうことにす る. 1 つの複合局は,データリンク 制御に関し相互に対等の責任をもっ ており,片方向伝送における l 次局 機能と 2 次局機能をあわせもってい る.しかし,一般には,伝送路の物 理的な容量の制約から,一方の局で のコマンド送信とレスポンス送信の 競合は避けるようにし重要度の高 いコマンドあるいはレスポンスを優 先して送信するようにしている.こ のような重要度を判定し,優先順位 を決定するのは,図 1 におけるリシ クレベルより高位のレベルのプロト コルである. このような何方向伝送の伝送制御 手順の PN 記述を図 13 に示す.ただ し,実際には両方向伝送においても タイムアウトによるコマンド再送を 行なっているが,簡単のためにここ ではこの機能を記述していない.図 13 中で位置および数 字添字は,それぞれ図 2 の対応する数字添字をもっ位置 および転位と同じ意味をもち,図中の位置,転位の英添 字 A. B は,複合局 A. 複合局 B を表わす添字である. また PlOA. Pl0Bはそれぞれ .A 局側. B 局側のリング レベルより高位のレベルの状態を示す位置であり,コマ ンドとレスポンスの競合を避け,優先順位をつける役割 を果たしている. さて,この図 13 の PN のままで TMを考えてもよいの であるが,これは非常に複雑な TM となる. (興味ある読 者は試みられたい.図 11 の TMに比し飛躍的に複雑にな ることが,おわかりいただけると思う.)
しかるに. PN では. PN 中のあるまとまった位置や 転位の集合を 1 つの位置で、置き換えたりつの転位で 置き換える階層的記述 (hierarchical description) が可 能である [5 J. たとえば,図 13 の PN 中の(イ)の部分を 1 つの位置 ρA に,また(ロ)の部分を位置 ρB に置き換 えることができる.図 13 の PN にこのような置換を施す ことにより,その TMは簡単化され図 14のようになる. 図 14から明らかなように,置換された ρA.ρB の中が 活性であり,かっ有界(安全)て、あるならば,図 13 の PN は活性であり,かつ有界(安全)であることがわかる. 発 火 能 性 /ア ,1 事一--t'! ιμ 発 発発発 火 j< 火火 発火時刻j許容範囲と発火時刻のタイムチャート例 (図 10における発火列んら tst
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6 t, らに対して)hfllL、ん
/I11 也、ら //11 也、お /ll 、九 /fit-h//lL 『む τt一一一一一同.
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τs τf ら発火 MM h発火図
研 lv 火 発 t'.**+料,~~-rt'6 (ただし, 1:"'*-'Z"'5榊-t'6料-t',柿-t'1榊ミ O が必要) ⑥発火列 t, t2tSt, 九九の場合 h6ffiロ =hsmaxしたがって t'lO*>MAX [h1ffiax• h2回ax,ん max ,
h5ffiロ]が t10 の発火時刻に対する制限条件であり,求め るタイムアウト時聞はこの条件式より決定すればよい. 一方,図11 の TM より,図 10 の TPN が活性であり, かっ有界(安全)であることが確認できるが,参考のため に付録に線形代数手法によりこの TPN の不変性,無矛 盾性を示しておく. また,ここで述べた例はコマンド再送のみを考慮した PN モデノレであるが,文献 [4J には伝送路からレスポ ンスも喪失したときのレスポンス再送の PN モデルが述 べられている. さらに,実際の通信制御手JI闘では,いくつかのコマン ドが連続して送信されることもあるが,このようなコマ ンド列, レスポンス列の送受信を記述した PN モデルも 報告されている [2].
9
.
両方向伝送の PN 記述 前節では,コマンドの流れ方向が一方向に固定されて いる片方向伝送について. TPN による考察を行なった が,本節では,コマンドおよびレスポンスの両方を送受 九発火 むすぴpf ,ー、 I ,豆、 I~ “目 、 PU; 、, A t'1
p
P
B7 t (," B'~ p",
図 13 両方向伝送における伝送制御手順の PN 記述 7 月号から 3 固にわたり,ベトリネットで用いられるt
PN も TPN も,その図形表現上の差違はなく,転 用語の意味,および通信制御手順を例に,ペトリネット 位に発火時間条件が付されているか杏かの違いだけであ の記述・解析の具体例を述べてきた. る.また,換言すると PN は,そのすべての転位の発火 本文では誌面の関係で言及できなかったが,論理回路 時刻許容範囲が [0 ,∞]の TPN であるといえる. のモデル化にもペトリネットは応用されている [6J
[付録] 生起行列 [ 7].また,形式言語の研究の立場からペトリネットをP
l
P
2
P
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p
, P5 ρ6P
1
P
s
P
9
P
lO 扱った論文や [8J[9J , PN の複雑さ,到達可能性の決 c=九一 11
。 。 。 。 。 。 。 定問題を,オートマトンによりアプローチした論文 [10Jt
z
o -1
。 。 。 。o -1
。 [11J も多い. ts 。o -1
。 。 。 。 。 筆者の考えるところ,ペトリネットの長所は,システ t, 。 。o -1
。 。 。 。 。 ムの構文 (syntax) 記述能力の高さと,その形式的な解 t5
。 。 。o -1
。 。 。 。 析が可能である点にあると思う.ペトリネットによりシ t6
。 。 。 。o -1 -1
。 。 ステムの意味 (semantics) を記述する試みも種々行なわ t1
。 。 。 。 。o -1
。 。 れているが,現在のところ,決定的なものはないようにt
s
o -1
。 。 。 。 。 。 。 思われる. t. 。 。 。 。o -1
。 。 。 今後,動作の順序関係の複雑なシステムのモデル化技 t1
0
。 。 。 。 。 。 。o -1
術として,さらに応用範囲が広がることが予想されるが, 問(列数 )=10 η( 階数 )=7 同時に,より形式化されたペトリネットの解析法の発展 基本解: (nl- r.) 伺 =3 個 が期待される. (完) x1=
(J1 1 0 1 1 0 1 0
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1981 年 9 月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.(
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図 14 図 13 の PN の TM X2=(0 0 1 1 0 0 0 0 1
O)t X8=(0 1 1 0 1
1 ー 10 0
l)t 完全 p 回路 たとえば, X=2X1+ X2- X8(21
2 1
1 1
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I)t であり,完全 p-回路存在.したがって,不変. 生起行列の転置行列Ct
n2( 列数 )=10 r2( 階数 )=9 基本解: (n2-r2) 個個 Yl=(
t
1 1 1 1 1 1 1 1
l)t 完全 t 回路 存在し,無矛盾 参考文献[
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日本規格協会: JIS ハンドプック,情報処理 1980[2 J P
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D. J
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Farber :
Recoverability
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