B問題を作成することを通じて学習指導要領を読み解く力を身に付ける ―「 小学校国語科教育法」実践報告(その1) ―
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第₁号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68, No.1. 平 成 29 年 ₈ 月 August, 2017. B問題を作成することを通じて学習指導要領を読み解く力を身に付ける ― 「小学校国語科教育法」実践報告(その1) ―. 菊 野 雅 之 北海道教育大学釧路校国語研究室. Acquiring the Reading Ability for the Elementary Course of Study Guidelines of the Japanese Language: The Practical Report of Japanese Language Teaching Methods (Part 1) KIKUNO Masayuki Department of Japanese Language educaion, Kushiro campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿は,北海道教育大学釧路校において開講している「小学校国語科教育法」の実践報告で ある。国語科教育法の講義のあり方については先行研究による一定の蓄積があるが,いずれも 模擬授業の提案である。しかし,本講義のような大人数の中で模擬授業を実行することは現実 的ではない。また,「教育法」と冠する講義内では,指導案の作成を課すことも多いが,やや もすると単元の展開や授業の展開,その手立てに注目がいきがちで,指導事項や言語活動例の 具体的な把握を中心的な目標として示すことは少ない。本学の「小学校国語科教育法」では, 指導事項と言語活動例の理解を深めるために,全国学力・学習状況調査の活用問題,いわゆる B問題を自作することを講義全体を通じての課題に設定して講義設計を行った。本稿はその「B 問題を自作する」講義の実践報告である。. 1 問題の所在・研究の目的と方法. なる。 60名の学生相手の講義でありながら,小学校国. 本稿は,北海道教育大学釧路校において開講し. 語科の授業のあり方について効果的に学ぶことを. ている 「小学校国語科教育法」の実践報告である。. 実現する講義形態とはどのようなものだろうか。. この講義は前期後期を合わせて3クラスに分けら. 国語科教育法については,遠藤・渡辺(2005),. れて180名程度の学生が受講する。1クラス平均. 町田(2008),都築(2011),勘米良(2016)など. 60名前後の学生を対象に行っている。教育実習を. があり一定の蓄積があるが,いずれも模擬授業の. 半年から一年後に控えている2年生が受講対象と. 提案である。模擬授業の効果についてはその効果. 109.
(3) 菊 野 雅 之. を十分に理解しつつも,本講義のような大人数の 中で模擬授業を実行することは現実的ではない。 その他の講義形態としては,指導案の作成を課す ことも多い。指導案作成も授業構想という意味で. 第4回 全国調査指導事項対応表の作成と担当 決め 第5回 指導事項報告会とB問題作成について の説明. は一定の効果を見込めるが,ややもすると単元の. 第6回 自作B問題検討会Ⅰとフィードバック. 展開や授業の展開,その手立てに注目がいきがち. 第7回 自作B問題検討会Ⅱとフィードバック. で,指導事項を達成した際の学習者の姿を具体的. 第8回 自作B問題検討会Ⅲとフィードバック. に想定することは少ないのではないだろうか。ま. 第9回 自作B問題検討会Ⅳとフィードバック. た,指導事項や言語活動例の具体的な把握を促す. 第10回 総括―身に付けた技能を自覚し,教育. ことにも課題があるだろう。. 実習に生かす―. 以上のような問題意識から,稿者の担当する「小. 2.2 第1回. 学校国語科教育法」では全国学力・学習状況調査. 第1回では,シラバスを資料として講義の目標,. の活用問題,いわゆるB問題を自作することを講. 学生の到達目標,各講義の内容と日程等の説明を. 義全体を通じての課題に設定し,その課題を達成. 行い,講義全体の見通しをもたせることとしてい. するために講義を重ねていくように講義設計を. る。講義の目標は,次の3点である。①『小学校. 行った。本稿はその「B問題を自作する」講義の. 学習指導要領解説国語編』(以下『解説』と略記. 実践報告である。. する)の読み方,扱い方を理解する。②3領域1. なお,この実践報告は論稿を2本(実践報告そ. 事項における指導事項の内容を理解する。③教材,. の1,実践報告その2)に分けて報告することと. 言語活動,指導事項,学力,単元構想に関する基. する。本稿(実践報告その1)では,本実践の具. 礎的な知見を得る。とくに『解説』の読み方,扱. 体的な実践内容を記述し,次稿(実践報告その2). い方を理解することを本講義では重視している。. でその総括を行うこととする。. 知識として指導事項などについて理解を深めるこ とも重要だが,それ以上に単元構想・授業構想の. 2 講義の概要―B問題作成を通じて指導事 項を具体的に捉える―. 際に『解説』を適切に活用するための知識と技能 を獲得させることが重要である。後で詳述するが, 『解説』中の「各学年の目標及び内容の系統表(小・. 2. 1 本講義全体の流れ. 中学校)」(以下「系統表」と略記する)と「第3. B問題の作成は,15回予定されている講義中,. 章 各学年の目標と内容」(以下,「目標と内容」. 10回の講義を通じて行われる。残りの5回は「実. と略記する。)を適宜必要に応じて開いて読み,. 地指導」という名目で現場経験の豊富な外部講師. B問題作成に活かすスキルが必要となる。. による現場に即した講義内容を展開している。こ. 2.3 第2回. こでは,主にB問題作成に関わる10回分について. 第2回は,実際に行われたH27年度全国調査の. その講義の流れに即して述べていきたい。第1回. 知識・技能の問題,いわゆるA問題を解答した上. から第10回までの講義のテーマは以下の通りであ. で,各設問に充てられた指導事項は何かをグルー. る。. プワークで類推する活動を行う。この活動に入る. 第1回 オリエンテーション. 前に,系統表の説明を行う。3領域1事項に国語. 第2回 全国学力・学習状況調査と指導事項の. 科の内容は分類されていること,小学校から中学. 関係を捉える(A問題編). 校へ各領域において系統性が意識されて指導事項. 第3回 全国学力・学習状況調査と指導事項の. が配列されていること, 「A話すこと・聞くこと」. 関係を捉える(B問題「書くこと」編). であれば,「話題設定や取材」,「話すこと」 ,「聞. 110.
(4) B問題を作成することを通じて学習指導要領を読み解く. くこと」 , 「話し合うこと」といったように指導事. おいては,何度も「目標と内容」を読み込み,指. 項は大枠の表現で整理されており,個々の指導事. 導事項の求める内容をより詳細に捉えようとする. 項の記述とともに指導事項を捉える重要な情報で. ことが,B問題のアイディアを構築する早道であ. あること,指導事項は学習過程を意識した順序で. ることを助言するようにしている。. 配列されていること,指導事項の略記の仕方など. 2.4 第3回. の説明を行う。. 第3回はB問題「書くこと」と指導事項の関係. それぞれの調査問題に関連付けられている指導. を捉える回である。B問題(H27年度B□ 2 )を解. 事項を推定する際には,各設問のリード文から. 答した上で,対応する指導事項を類推する。H27. キーワードを探す必要がある。例えば,ある文章. 年度のB□ 2 は,新聞を編集・執筆する言語活動の. を読んで,その内容を「人物関係図」にまとめて. 中で,「構成」(設問一),「記述」 (設問二,三). いる設定の場合には(H27A□ 6 ),この「人物関. の指導事項に対応した問題が出題されている。こ. 係図」がキーワードとなる。C56エ「登場人物の. の各設問に対応する指導事項をグループ(4~5. 相互関係や心情,場面についての描写をとらえ,. 人)の中で話し合いながら確定させていく。. 優れた叙述について自分の考えをまとめること。」. 設問一は,新聞のレイアウトを整理する問題で,. の「登場人物の相互関係」がこのキーワードと合. 対応する指導事項は「構成」B56イである。学生. 致することが分かると,該当する指導事項を明ら. はアの指導事項「課題設定と取材」を選ぶ場合が. かにすることができる。もちろんキーワードが特. 多い。これは56アの「考えたことなどから書くこ. に見当たらない場合もあり(H27A□ 7 ),その際. とを決め,目的や意図に応じて,書く事柄を収集. には実際に行われている言語活動や問題が求める. し,全体を見通して事柄を整理すること。」の「全. 知識・技能が何かを俯瞰的に捉え,該当する指導. 体を見通して事柄を整理すること」に着目したた. 事項を類推しなければならない。H27A□ 7 は,作. めである。「課題設定と取材」(56ア)は,新聞紙. 品募集の案内から応募に関する必要な情報を読み. 面の構成を決める前段階の新聞の取材方針・実際. 取ることを求めた問題だが,指導事項の記述の直. の取材・その取材内容の取捨選択・整理の段階に. 接的に交わるような文言はリード文などには見当. 対応した指導事項である。つまり,実際に取材が. たらず,学生は該当する指導事項を答えるのに苦. 終わり,紙面の構成を考える段階にある設問一に. 労するようである。そこで,さらに『解説』の「目. は56イが対応しているということとなる。指導事. 標と内容」の箇所を確認する作業が必要であるこ. 項の理解の難しさは,その表面上の解釈だけでは. とを説明する。C56イの「効果的な読み方」の指. なく,「書くこと」で言えば,「課題設定や取材」. 導事項については,「効果的な読み方には,比べ. →「構成」→「記述」→「推敲」→「交流」といっ. 読みのほか,速読,本や文章全体を概観しながら. た学習過程に沿った配列になっており,言語活動. 拾い読みする摘読,同じ課題で多くの本を重ねた. の分析の視点としても重要であることも加えて理. り並行させたりして読む多読などがある。」(『解. 解する必要があること,それに対応する「目標と. 説』p.88 以降断りがない限り下線は稿者によ. 内容」も十分に読み込む必要があることなど様々. る) とあり, 問題の設定と合致することがわかる。. な要因がある。また,新聞の構成を問う問題が56. 指導事項の文言のみに留まるのではなく,その「目. イとなっていても,56イの詳述箇所に,新聞に関. 標と内容」に戻ると,問題の設定と直接的に関わ. する記述はなく,一読してその関係を見通すこと. る文言を見付けることができることを学生には説. は難しい(注1)。講義では,上記のような内容を解. 明している。この「目標と内容」に戻る技能は一. 説しつつ,学生自身が本講義で知り得た知見など. 度では定着せず,講義の各回において適宜促すこ. を, 『解説』にメモ書きしノート代わりに活用し,. とが大切である。とくにB問題を作成する過程に. 『解説』の情報を常に自身で補完し続けるように. 111.
(5) 菊 野 雅 之. 指導している(注2)。. の前段階のトレーニングとしてB問題作成を課し. 2. 5 第4回. ている本講義においても,髙木の提案は有効であ. 第4回では, 調査問題指導事項対応表(【図1】. る。. 参照。以下 「対応表」と略記する。)の作成を行う。. 例えば,B56エの「表現の効果などについて確. この対応表は,H25からH28の調査問題から「書. かめたり工夫したりすること。」では,「目標と内. くこと」の指導事項に対応した問題を,指導事項. 容」においては,「「表現の効果などについて確か. ごとに分類するようになっており,学生たちは. める」とは,」, 「「工夫したりする」とは,」といっ. 個々に,それぞれの問題がどの指導事項の空欄に. た書き出しで,指導事項が分割され,それぞれが. 入るのかを,全国調査の『報告書』を利用しなが. 分析されているのである。まずはその分割と分析. ら記入していく。これによりそれぞれの指導事項. がなされた叙述を読み解き,自身のB問題作成に. に対応した4年間の問題の配置の全容が把握でき. つなげる見通しをもつことが必要となる。そこで,. るようになり,. 担当する指導事項についての「目標と内容」を参. 指導事項の具体. 照しつつ,分割と分析を行い,資料を作成して報. 的な理解を促. 告する課題を課すこととしている。加えて,担当. し,かつ,それ. する指導事項に対応する過去問の分析を行うこと. ぞれの指導事項. で,抽象度の高い解説を具体的に把握する(説明. に対応した調査. する)作業も行う。指導事項を達成するための授. 問題の調査・分. 業構想力を養うためには,指導事項の正確な理解. 析をスムーズに. が求められるが,そのためには,こういった地道. 行う見通しをも. な作業が必須である。本講義に留まらず現場にお. つことができる. いても求められる必須の研究姿勢であるため,本. ようになる。. 講義では折に触れて,現場においても求められる. この対応表へ 【図1】調査問題指導事項対応表. 作業であることを説明している(注3)。. の書き込みの. 2.6 第5回. 後,次回の講義では,今のグループ中で担当する. 第5回は指導事項報告会の回である。前回に担. 指導事項を決め,それぞれ指導事項について調査. 当を割り振られた指導事項について調査し,それ. をし,報告を行うことを伝える。この指導事項報. ぞれが資料を持ち寄ってグループワークの中で. 告会を通じて,学生は担当の指導事項についてグ. 「B書くこと」の56年の指導事項アからカについ. ループメンバーに説明するために大きく2つの作. て報告し合うこととなる。これにより,自身は担. 業をこなすことが求められる。1つは「指導事項. 当の指導事項の理解を解説を通じて深めるととも. の分割と分析」であり,もう一つは対応する過去. に,他のメンバーによって担当外の「書くこと」. 問の分析である。. の指導事項についての理解を広げることができ. 「指導事項の分割と分析」とは,髙木(2013). る。この後,同じ指導事項を担当した者同士でも. が提案する指導事項を捉える方法論である。指導. グループを改めて形成した上で,指導事項報告会. 事項の文言を短く分割し,その分割された内容を. を再度行う。これは,同じ指導事項担当者が交流. 具体的に分析することで,指導事項の詳細な捉え. することで,担当した指導事項の理解を一層深め. に根ざした授業を計画するということである。髙. ることをねらいとしている。. 木自身が,学生の指導案指導の中でのアドバイス. 終盤には,次回からいよいよ自作のB問題の提. が発端となったらしく,指導案作成につまづく学. 出とその報告会が始まることを受けて,作成の際. 生の手立てとして有効だったと言う。指導案作成. の条件(書式なども含む)や注意点について説明. 112.
(6) B問題を作成することを通じて学習指導要領を読み解く. を行う。条件や注意点は多岐にわたり,学生には. 点). それらを全て行うのは難しいため,段階的に進め. ③ 書式が整っているか。(3問構成,正答例(記. ればよいと説明している。条件や注意点,B問題. 述式には採点規準も必要) ,指導事項対応,総. の採点規準について以下に列記する。. 括(アピールポイント,問題の意図,苦労話, 参考文献))(1点). 〈条件(自作B問題(ver.1)の構成や書式)〉 ・全国学力・学習状況調査の書式に合わせる。. ④ 誤字脱字はないか。推敲を行っているか。 (1 点). ・設問は1問(最終的には3問)。. ―各設問ごとの評価(3問×2点=6点)―. ・領域は「B書くこと」. ① 採点可能な問題か。採点規準が明確か。正答. ・記述問題を必ず1問設定する(通常は設問3)。 短答式の問題とは区別。. 例が適切か。(1点) ② 指導事項と問題の関係は適切か。(1点). ・B問題,正答例,B問題構想表(各設問と指導 事項の対応,言語活動). これらの説明の時に繰り返して強調するのは,. ・PC (Word, 一太郎等)による作成が望ましい。. 採点規準の「オリジナリティ」に関してである。. ただし,直筆(ボールペン等。鉛筆は不可。). このオリジナリティとは,問題の独創性・新奇性. も可。. ということのみを指すのではなく,個々のB問題. ・対象学年は5・6年。基本的には指導事項も. が作り上げられるまでに費やした調査や試行錯誤. 5・6年となる。例外は認める(例:H27□ 3は. も含めている。過去問の枠組みを超えていなくと. 3・4年) 。. も,そこに教材の自主的な作成や過去問の広範か. (注4). つ深い研究を読み取れるものであれば,大いに評. して提出。. 価することを強調する。実際,そのオリジナリティ. ・ユニパ. 上に提出する際には,PDFに変換. の評価点が他の項目に比べても大きい比率になっ 〈注意点〉. ており,本講義の評価に大きく関わる観点である. ・ 「A話すこと・聞くこと」,「C読むこと」では. ことを伝えている。本年度で言えば,第3回でH. 作成しないこと。. 27B問題□ 2 「新聞記事を書く」を実際に解いてい. ・ 「言語活動例」の解説も熟読すること。. るのだが,本年度もこれを踏まえた問題が最初の. ・単なる作文ではなく,読み手を想定する。書い. 提出で半分近くを占めた。この点については,講. た物を誰が読むことになるのか。読者意識。. 義中に扱ったB問題の言語活動以外で作成するこ. ・何のためにその言語活動をしているのか。「目. とを次回以降の条件とすることを検討している。. 的や意図」をはっきりさせる。目的意識。 ・達成感のある問題を作成する。. これにより,過去問の自主的な調査が必要となり, 提出される問題にも多様性が確保されるだろう。 2.7 第6回. 〈採点規準〉. 第6回は,第5回開催日から2・3週間ほど日. 13点を50点に換算し(小数点切り上げ),出欠. をあけて行われる。その間に学生たちはB問題の. 点の持ち点(50点満点)と合わせて評価を行う。. 設問を個々に作成している。そのB問題を持ち. ―問題全体の評価(7点)―. 寄って,第6回から第9回までの計4回の講義で. ① 講義外での独自の調査・研究の成果,創意工. はB問題検討会と銘打って,自作B問題の交流会. 夫がみられるか。オリジナリティ。(4点). が行われる。この交流会を通じて,互いの作品を. ② 十分な量の教材・素材を扱うことで問題を充. 批評し合い,次回の再提出に向けての修正の観点. 実したものとしているか。見開き2頁程度。 (1. などを共有することとなる。B問題のブラッシュ. 113.
(7) 菊 野 雅 之. アップという課題に対して学生相互が協働してい. が簡便となり,また,グループ以外であっても,. くのである。加えて,自作されたB問題は,講義. 講義者のコメントを確認することで,何が課題と. の3日前までにデータとして講義者に提出され,. なりえるのかを事前に把握することができる(注5)。. 講義者から事前にチェックを受け,コメントが提. 2.8 第7回・第8回・第9回. 出した全員に返信される。これにより検討会の段. 検討会2回め以降も,提出とコメントは同様に. 階で個々の作品の課題が明らかとなっており,検. 行われる。そのコメントの全ては一覧表として印. 討会での意見交流が効率的に行われることとな. 刷・配付され,学生全体が共有できるようになっ. る。また,この事前提出により学生の進捗状況を. ている(【図2】参照。学生番号,氏名などは削. 逐一確認することができるため,検討会直前の全. 除している)。. 体の説明において,学生の状況に応じた全体指導. コメントの内容は個々のB問題の進捗状況に. を行うことができる。本学には講義ごとに,配付. よって異なってくる一方,共通して指摘している. 資料,出席状況,課題提出,学生・講義者相互か. 点もある。それらを列挙すると以下の通りである。. らのコメント,成績入力などの講義者・受講者が. ① 設定されている言語活動の成果物は,何の目. 双方向に利用できる「ユニバーサルパスポート」. 的で,誰を読者と想定し,どのような状況で読. というシステムがあり,本講義を成立させる際の. まれることを想定しているのか(目的・相手・. 重要なシステムとなっている。これにより,学生. 場面・方法)。また,それは目的を達成するた. がB問題をweb上に提出し,それに対して講義者. めに十分充実した内容となっているか(評価)。. からコメントを行うことが可能となっている。なお, 学生全員に行ったコメントは,一覧表(エクセル). ② 問題中の素材(新聞や手紙)の徹底的な研究 が必要(言語活動研究・教材研究)。. として出力し,講義当日には全員へのコメントを. ③ 対応する指導事項の再検討。. 確認することができるようにしている。グループ. ④ 感想文,日記,ノート,作文などは5つの言. ワークは毎回おおむね4~6人の幅で行われる. 語意識(目的,相手,場面,方法,評価)を意. が,それぞれに付されたコメントを確認すること. 識しづらいので今回のB問題では避ける。. 【図2】コメント一覧表(一部抜粋して掲載). 114.
(8) B問題を作成することを通じて学習指導要領を読み解く. ①と④は5つの言語意識と呼ばれているもので. 思われる指導事項について触れることはしない。. ある(小森〔1999〕 ) 。 「書くこと」の指導の際に. あくまでも学生自身が『解説』を何度も読み返し,. この5つの観点を学習者には意識させながら,言. 自身で根拠と答えを導き出さなければならない課. 語活動を行わせることが重要である。学生のB問. 題である。. 題では,この5つの言語意識の全てが欠落してい. 第8回も同様のプロセスで講義が展開し,この. るものから,一部が不足しているものまで様々で. 2回を通じてB問題のおおよその形が見えてくる。. あるが,第7回では,検討会の直前に稿者が5つ. 第9回では,B問題全体の形に一定程度のまと. の言語意識について説明を行い,特に目的・相. まりができ,特に記述の指導事項へのコメントを. 手・場面については問題の最初のリード文にしっ. 意識して行う。実際にコメント例を一部以下に示. かり位置付けることで問題の方向性(言語活動の. す。. 方向性)を明確にすることができると伝えた。な お, この5つの言語意識については『解説』 (p.80). ・事実を書くのみに留まっていて,事実や意見. にも同様のことが説明されている。. を区別して,詳しく書く問題としては物足り. 小学校における書くことのまとめとして,. ない。「詳しく書く」ための手立てが問題の. 書く目的や意図,相手に応じ,文章の種類を. 中に位置付けられる必要がある。. 選択し,考えたことを十分に反映させ,文章. ・「感想」だけを参考にする手立てに留まらず,. 全体の構成を考えながら適切に書いていくこ. さらにもう一工夫ほしい(H27『報告書』や. とを求めている。. アイディア例を参考にする)。. 「目的や意図」を目的,「相手」は相手,「文章. ・事実と意見を区別して詳しく書く問題を作っ. の種類を選択」は方法と場面, 「考えたことを十. てほしい。現状では,感想を書く問題に留まっ. 分に反映させ,文章全体の構成を考えながら適切. ている。. に書いていく」は評価となる。また,「交流」の 指導事項も評価の言語意識と捉えられよう。 ②は教材研究不足あるいは成果物の充実度が不 足していることへの指摘である。新聞であれば, 目的や意図に応じた紙面構成が採られるわけだ が,その紙面構成が不自然である,目的と対応し ていないといった課題がある。これは教材研究不 足であり,学生自身の言語活用能力の不足でもあ. ・設問3は事実だけに留まらず,意見や考察(分 析)も書かせたい。 ・設問3は「結びつけて」という条件が「詳し く書く」手立てとして優れている。 ・設問3は再取材の設定(手立て)が「詳しく 書く」問題としてとても優れている。 ・今の文面では,事実と感想は区別して書いて いるが,詳しく書くことはできていない。. る。教師自身に「書くこと」の学力が求められる. ・設問3は「目的に応じて詳しく書く」問題と. のは言うまでもないことだが,本講義では学生自. しては,条件などがおおざっぱ。Bの記事部. 身の「書くこと」の力の伸長も求められる。手紙. 分を作り込む(詳しく書く)ことを通じて,. の問題で頭語結語を適切に書くことができない者. 再度問題を作り直す。. も少なくない。学生自身の手紙を書く力の状況が 露呈する瞬間である。. 「書くこと」の領域で作成されるB問題におい. ③は,指導事項が設問と合致していない場合で. て記述の指導事項ウおよびエが重視されるが,特. ある。明らかに「構成」の設問を「記述」とする. にウを理解するためには,設問(解答例)を実作. など,指導事項の分析や全国調査の分析不足から. する中で具体的に研究することが必要となる。こ. くる誤解である。こういった事例については指導. の56Bウについて『解説』(p.82)には次のよう. 事項を再検討せよとだけコメントをし,適切だと. にある。. 115.
(9) 菊 野 雅 之. 高学年では,このような「事実」と自分の. 講義ではB問題に関連して国立教育政策研究所か. 感想,意見などとを区別して書くことを重視. ら示される各種資料『解説資料』『報告書』『授業. する。また,その目的や意図に応じて,事実. アイディア例』を活用することを勧めている。例. と感想,意見などを詳しく書いたり,簡単に. えば,H27B□ 3 三であれば,これに対応した授業. 書いたりするなど事実と感想,意見のそれぞ. アイディア例が示されており,記事を詳しく書く. れの記述の仕方について工夫することが必要. ために再取材を行う手立てを提案している。授業. である。. アイディア例から再取材の手立てを学び,問題に. この際に設問作成の課題となるのが, 「詳しく. 組み込んだ学生もおり,資料の的確な活用が認め. 書く」ための手立て(プロセス)である。学生が. られるこういった問題については高い評価を付け. 最初にB56ウで作成する際は,字数を一定程度指. ている。. 定した上で,いくつか使用するべきキーワードを. 2.9 第10回. 示す設問のパターンになりがちである。こういっ. 第10回は,総括の時間となる。B問題の最終的. た設問に対しては,とくに「詳しく書く」ための. な提出はこの総括の後となるが,講義としては,. 手立てが設問から読み取れるように工夫するよう. これまでの学びをふりかえりつつ,学生が身に付. に指摘している。B問題の作成を通じて,指導事. けた力を確認し,それを授業実践につなげていく. 項と言語活動を具体的に捉えることを促すのであ. ことについて整理する時間となる。. る。 『解説』においても「詳しく書く」ための具. 指導事項の分割と分析,『解説』の読み方,『報. 体的なプロセスなどが説明されることはない。こ. 告書』や『授業アイディア例』を利用した具体的. れは1人1人の教員の裁量に任されているわけだ. な分析といった,指導事項を的確に把握するため. が,教師教育の観点から言えば,指導事項を的確. のスキルとそれを活用することができる力を養っ. に理解するための学び方を示し,体験することを. てきたことをパワーポイントを通じて整理をして. 通じて,単元構想のための基礎的な力を養うこと. いく(【図3】は指導事項(56Bア)の分割と分. が重要であろう。その学び方は様々だろうが,本. 析の結果が,どのような発問に至るのか,資料調. 【図3】パワーポイントの一部. 116.
(10) B問題を作成することを通じて学習指導要領を読み解く. 査に至るのかを説明している資料である) 。そし. 引用文献. て,指導事項に基づいた単元構想・授業構想の重 要性について述べ,来夏にほとんどの学生が参加. 〇遠藤庄治,渡辺春美(2005)「沖縄国際大学国語科教職. するであろう教育実習の授業構想の際に『解説』. 課程の歩みと指導構想」『沖縄国際大学日本語日本文学. を十分に活用するように促したところで本講義は 閉じることとなった。. 研究』9⑴,pp.1-27 〇勘米良祐太(2016) 「いわゆる「国語科教育法」の模擬 授業における省察の実態」『浜松学院大学教職センター 紀要』5,pp.1-14 〇小森茂編,東京都文京区立窪町小学校著(1999) 『音声. 3 中まとめ. 言語能力の育成:国語科をひらく「総合的な学習」の 創造』国土社. 本講義は,B問題の作成という活動を通じて,. 〇髙木まさき(2013)『国語科における言語活動の授業づ. 『解説』を精読するための知識及び技能を身に付. くり入門 指導事項の「分割」と「分析」を通して』. けることを目ざして展開してきた。この成果と課 題について次稿(実践報告その2)にて述べるこ ととする。. 教育開発研究所 〇都築則幸(2011)「「国語科教育法」の授業改善に関す る一考察―私立大学を中心に―」『早稲田大学大学院教 育学研究科紀要 別冊』19⑴,pp.251-262 〇内藤一志,黒田諭(2012)「 「中学校国語科教育法Ⅰ」の. 注 (注1)なお, 「読むこと」の言語活動例56ウには, 「編 集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読む言 語活動」があり,「記事は,逆三角形の構成と呼ば れることもあるように,結論を見出しで先に示し, リードから本文へと次第に詳しく記述されている。 また,事件や出来事の報道記事だけでなく,社説・ コラム・解説などの記事もある。」(『解説』p92). 実践報告 その2」 『北海道教育大学紀要.教育科学編』 62⑵,pp.45-60 〇町田守弘(2004) 「大学における「国語表現」の授業構 想」 『 早 稲 田 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 紀 要 』14, pp.165-178 〇文部科学省(2008) 『小学校学習指導要領解説 国語編』 東洋館出版社. (釧路校准教授). と説明されている。 (注2)内藤,黒田(2012)でも,『解説』をノート代わ りに「書き込んで汚す」指導をしているという。 (注3)髙木(2013)は優れた授業者の多くが,それぞ れの形で指導事項の分割と分析を行っていたと述 べている。 (注4)ユニバーサルパスポートシステムの略称。講義 ごとのページに学生から課題を電子媒体で提出し, 教員側はそのページから課題提出をダウンロード することができる。 (注5)ただし,60名の受講者のB問題が計4回提出さ れるので,のべ240問のB問題を講義者は確認する こととなり,本講義における大きな負担となって いる(前期では同様の講義が2コマあるため,倍 の480問近くを確認し,コメントすることとなる) 。 この負担の大きさと講義の内容とのバランスにつ いては,改めて次稿(実践報告その2)にて述べ たい。. 117.
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小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2
を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に
を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に
具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.