接続詞の二重使用の承接順序について ―『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を用いた再検討―
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(2) 接続詞の二重使用の承接順序について ― 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を用いた再検討 ― 馬 場 俊 臣 1 はじめに 本稿では、 (1) (2)の「けどしかし」「そして一方」のように、接続詞が重ねて 1) 使用される「接続詞の二重使用」 を対象として、「けど」 「そして」のように先行. する接続詞と「しかし」「一方」のように後続する接続詞との承接順序の傾向につ いて、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)の「書籍」データ2)の検索 結果を利用して再検討を加える。 (1) こんなにくっきり見える以上、確かにすき焼きを食べたに違いない。け どしかし、朝からすき焼きなんて、常識で考えれば極めてありえないこと だ。(佐藤ケイ『天国に涙はいらない』メディアワークス)3) (2) 福江島一つとっても、堂崎の教会や水の浦の教会など、歴史も古く堂々 たるものであった。そして一方、宮原教会のように、ほとんど民家のよう な家の上に、ぽつんと十字を乗せたものまである。 (中西進『日本のかた ち こころの風景から』産経新聞出版) 接続詞の二重使用の承接順序の傾向については、2節で概観するように、既に、 馬場(2003)、石黒(2005)、多田(2010)において、大量の用例を用いた実態の解 明と特徴の分析が行われているが、それぞれの調査資料及び方法には違いがある。 本稿では、 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)の検索結果を利用して、 それぞれの調査結果を比較しながら、より一般化できる承接順序の原則を示したい。. 2 先行研究における調査内容の概観4) 本節では、馬場(2003)、石黒(2005)、多田(2010)を取り上げ、それぞれの調 査資料、調査対象の接続詞の種類、調査集計方法などを示し、問題点と本稿で行う 調査との違いを示していく まず、馬場(2003)を取り上げる。馬場(2003)では、CD-ROM版『新潮文庫 の100冊』(翻訳作品は除外)、 『朝日新聞 天声人語・社説1985-1991増補改訂版』 、 『朝日新聞 一面記事1989-1993秋』、『CD-毎日新聞‘93』 、電子ブック版『日本 大百科全書 改訂第2版』を調査資料として用いているが、これら以外にも調査時 点で入手できた電子化された小説類も調査資料として用いた5)。対象とした接続詞 は、市川(1978)の7種の連接類型6)に挙げられた「接続語句」90種類の組み合わ せ(90種類×90種類=8100組から同じ語の組み合わせを除いた8010組)である。テ - - 1.
(3) キスト処理用ツールの一つであるJgawk(日本語文字対応のawk)を用いて該当文 字列を検索した後に手作業により該当例を抽出した。なお、市川(1978)の「接続 語句」には「やがて、そのうちに、次の瞬間」のような副詞あるいは指示語を含む 連語など接続詞からは除いた方がよい語句も含まれており、検索結果を検討する際 にそうした用例は接続詞の二重使用からは除いている。調査の目的は、二重使用が 可能な組み合わせの有無を連接類型別に網羅的に調べることと、先行接続詞と後続 接続詞が異なる連接類型である異種併用の際の承接順序の傾向を明らかにすること である。二重使用が可能な組み合わせを表にまとめている。表1(後出)の各組み 合わせの欄の左上の小枠に、馬場(2003)の表に基づいて可能な組み合わせを示す。 「○」は「実例を見つけている組み合わせ」、「×」は「実例を見つけていない組み 合わせ」 、 「△」は「稀な用例あるいは限られた用例」 (1例しかなくしかも極めて 稀な使い方である場合、連接類型の1つの下位区分でしか用例がない場合、用例の すべてが指示語系接続詞である場合)である。さらに、 馬場(2003)では、 「順接型」 「補足型」は二重使用されにくいこと、異種併用の際には、大きく「逆接型 転換 型」「添加型 対比型」「同列型」の順序が認められることを指摘している。 この調査によって、接続詞の二重使用の実態が示され承接順序があることが明ら かにされた。しかし、二重使用が可能かどうかに主眼をおいた調査であるため、ど のような組み合わせが多いかという数量的な傾向は明らかになっていない。また、 表1の「×」 (実例を見つけていない組み合わせ)は、あくまでも調査において実 例を見つけていない組み合わせであり、必ずしもその組み合わせがありえないこと を示しているわけではないことにも留意が必要である。 次に、石黒(2005)を取り上げる。石黒(2005)では、 「 『毎日新聞CD-ROM』 2001年度版」を調査資料としている。対象とした接続詞であるが、 まず市川(1978) の89種類7)の接続語句の出現頻度調査を行い、その結果、原則として使用頻度1000 以上となった14語(順接型「だから」、逆接型「しかし、だが、でも、ところが」 、 添加型「そして、さらに、しかも、また」、対比型「一方」 、転換型「さて」 、同列 型「たとえば」 、補足型「ただ、もっとも」)の組み合わせ(14語×14語=196組か ら同じ語の組み合わせを除いた182組)を対象としている。石黒(2005)では全182 組の各用例数を一覧表にして示している。表1(後出)の各組み合わせの欄の左下 の小枠に、石黒(2005)の一覧表に基づいて、本稿において連接類型ごとに合計し た用例数を示す。順接型、対比型、転換型、同列型どうしの組み合わせは調査対象 の接続詞がそれぞれ1語であり同じ語の組み合わせとなるため空欄にした。 この調査では二重使用の実態が定量的に示されている。二重使用の用例数は全部 で230例であるが、 「二重使用のさいの相互承接の順序」の原則(「転換型>逆接型 >添加型>順接型・対比型>同列型」「ただし、転換型は単独で用いられることが 多い」)(「補足型の接続詞は単独で用いられる傾向がある」 )及び二重使用の使用理 - - 2.
(4) 由・表現効果の3タイプなどを挙げており、意義ある調査研究である。ただし、対 象とする接続詞の種類及び二重使用の用例数を増やして再検討することにより、よ り一般化できる結論が得られると期待される。なお、石黒(2005)では、 「しかし 8) だから」など「包摂」 のタイプを「多層的構造の提示(後続の文脈の入れ子型構. 造を示す) 」と呼び、二重使用に含めているが、馬場(2003)では二重使用には含 めていない。本稿の調査でも「包摂」は二重使用には含めない。 最後に、多田(2010)を取り上げる。多田(2010)の目的は、「複合接続詞の全 9) 体像」 の考察であるが、調査分析の一部に接続表現の二重使用の調査が含まれて. いる。「BCCWJ2008年度版」を調査資料として使用している。第一段階として 「BCCWJ2008年度版の書籍データを茶豆(unidic-mecab)で形態素解析」したデー タから「文頭部分の2gramから7gramのngramデータ」を作成し、 この「ngramデー タ」から「相互に承接している接続詞」を取り出し、その接続詞について「BCCWJ 全体をHimawariで検索して語順の先後を調べる」ことを行っている。第二段階で 「こ れに複合接続詞を加え」て二重使用の傾向を示している。対象とした接続詞は、第 一段階では12語(順接型なし、逆接型「が、しかし」、添加型「そして、しかも、 さらに(更に) 、かつ、また(又)」、対比型「あるいは、いっぽう(一方) 」 、転換 型「じゃあ」、同列型なし、補足型「なお(猶)、ただ」 ) 、第二段階ではこの12語に 加え17語( 「だが、でも、さて、ところが」など)である。多田(2010)では、第 一段階の全132組(12語×12語=144組から同じ語の組み合わせを除外)の各用例数 を一覧表にして示している。表1(後出)の各組み合わせの欄の右下の小枠に、多 田(2010)の一覧表に基づいて、本稿において連接類型ごとに合計した用例数を示 す。多田(2010)の表では用例数「0」を空欄にしているが、表1では「0」と表示 した。ただし、順接型及び同列型の接続詞は調査対象となっていないため空欄にし た。転換型どうしの組み合わせは調査対象の接続詞が1語であり同じ語の組み合わ せとなるため空欄にした。なお、第二段階の結果は「後行接続詞の異なり語数が多 いもの」のみを示しているため本稿では扱わない。 この調査の特徴は、 「BCCWJ2008年度版の書籍データ」の「茶豆(unidic-mecab) 」 の形態素解析の結果を利用して「BCCWJ2008年度版」全体から大量の用例を調査 している点である。ただし調査対象となる接続詞の種類が限られている。また、接 続 詞 と 副 詞 の 両 用 法 が あ る「 ま た 」「 た だ 」「 さ ら に 」 「 な お 」 な ど は、 「茶豆 (unidic-mecab) 」の解析結果をそのまま利用し手作業での確認は行っていないよ うであり、副詞の用例もカウントされているようである。 「また」「ただ」「さらに」 「なお」などは誤解析がある程度含まれており手作業による確認がやはり必要であ ろう。 以上、3つの先行研究を示してきた。近年、コーパスが整備され、また形態素解 析の結果が手軽に利用できるようになっている。本稿では、『現代日本語書き言葉 - - 3.
(5) 均衡コーパス』(BCCWJ)(「書籍」データのみ)の形態素解析の結果を利用して、 大量の用例に基づいた定量的な分析を行うことによって、接続詞の二重使用の承接 順序の傾向に関して再検討を加えたい。. 3 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』について 本稿の調査では、 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』 (BCCWJ)を利用する(以 下、BCCWJに関する説明は特記しない限り国立国語研究所コーパス開発センター (2011)による)。 BCCWJは、2011年に一般公開された「国立国語研究所が中心となって開発した 日本語に関する初めての大規模均衡コーパス」であり、 「出版サブコーパス」 (書籍、 雑誌、新聞)、「図書館サブコーパス」(書籍)、「特定目的サブコーパス」 (白書、教 科書、ベストセラー、Yahoo!ブログ、国会会議録など)からなる約1億語(短単位) ・ 約8千万語(長単位)のコーパスである。 調査対象を馬場(2003)とできるだけ揃えるために、 本稿の調査では、 「書籍」デー タ( 「出版サブコーパス」 (書籍)、 「図書館サブコーパス」 (書籍) 「特定目的サブコー 、 パス」(ベストセラー)を指す)のみを調査対象とする10)。「書籍」データ全体の語 数は約6267万語(短単位)、約5114万語(長単位)である。 「短単位」とは「用例収集に適した」単位であり「形態論的に一貫した言語単位」 として認定されている単位である。「長単位」とは「主に複合語を把握する」こと が可能になる「言語的特徴の解明に適した」単位である。例えば、 「だから」 「とこ ろが」は、短単位ではそれぞれ「だ」「から」、 「ところ」 「が」の2語に分かれるが、 長単位では「だから」「ところが」の1語となる。本稿の調査では「長単位」によ る検索を行う。なお、調査の集計は「語彙素」を利用する。「語彙素」とは「国語 辞典の見出しに相当」するものであり、「語形の変異や表記のゆれ」のある語を同 じ語としてまとめて見出しとしたものである(小椋・冨士池(2011) ) 。 BCCWJの形態素解析では、「短単位解析には解析エンジンMeCabと形態素解析 用辞書UniDicを、長単位解析には短単位解析結果から長単位を自動構成する解析 器」を使っている。 UniDicにおける接続詞(短単位)は30語である。さらに、長単位では32の連語 が接続詞として挙げられている。それぞれ連接類型別に分類した上で (3) (4) に示 す11)。本稿の調査ではBCCWJの接続詞の認定を基本的にはそのまま利用する。そ のため、市川(1978)の「接続語句」とは若干のずれがある。なお、本稿の調査で 接続詞の二重使用として使用された語には「*」を付している。 (3) UniDicにおける接続詞(短単位)30語(語彙素) 順接型 から、されば*、たら、で、では*、と 逆接型 が*、けれど*、されど、ばってん、然し*、然りとて* - - 4.
(6) 添加型 そして*、且つ*、及び、更に*、而して*、然も*、又*、扠又 対比型 或いは*、一方*、若しくは*、乃至 転換型 では*、扠* 同列型 即ち* 補足型 但し*、尤も*、唯*、猶* (4) 長単位において接続詞と認定される連語32語(語彙素) 順接型 従って*、すると、其れで*、だから*、だったら*、ですから*、 では*、なので、故に、因って 逆接型 然しながら*、其れでも*、だが*、だけれど、だけれども*、だっ て*、って言うか、ですが、ですけれど、ですけれども、でも*、 所が*、なのに* 添加型 そうして*、其れから*、並びに 対比型 其れとも、又は 転換型 では*、其れでは*、所で* 同列型 要するに* 補足型 因みに*. 4 検索方法と集計結果 BCCWJを用いた接続詞の二重使用の用例検索に当たっては、品詞情報を用いた 検索が可能な検索ツール「中納言」を使用し長単位での検索を行い、接続詞が連続 する用例を収集した。先行接続詞と後続接続詞の間に読点などがない場合とある場 合とがあるため、「後方共起条件」の「キーから1語」及び「キーから2語」で検 索を行った。検索対象は「固定長・可変長」両方である。検索で得られた用例すべ てが二重使用に該当するわけではない。特に形態素解析等の誤りのある用例12)も多 く、手作業で該当する用例を確認した。集計は「語彙素」を利用して行った13)。 本稿の調査で得られた用例数を、表1の各組み合わせの欄の右上の小枠に示す。 なお、本稿の調査で行った検索結果は、馬場(2013b)で使用したデータと同じ ものである。ただし、用例を再確認し、計28例を二重使用から除外した。2例は副 詞「さて」及び単語境界の誤判別がある「ただ」の用例、7例は「包摂」の用例、 7例は「で」をフィラーとみなし二重使用には該当しないと判断した用例、12例は 「猶且つ」を副詞とした用例である14)。. 5 連接類型別の検討 本節では、表1に基づきながら、馬場(2003)と本稿の調査結果との相違のうち、 馬場(2003)が「×」「△」であるが本稿の調査で用例がある組み合わせを主に検 討対象としていく。 - - 5.
(7) 表1 本稿の調査結果及び先行研究での調査結果の一覧 計. 補足型. 同列型. 転換型. 対比型. 添加型. 逆接型. 順接型. 後続 先行 順接型. 逆接型. 添加型. 対比型. 転換型. 同列型. 補足型. 計. ×. 0 △. 0 × 0. ×. 32 ○. 12 △. 3 ×. ×. 0 ×. △. 0 ×. △. 0 ×. ×. 0. 41 6. 15. 0. 45 1 ×. 0 381. 492. 1035. 11. 0. 0. 0. 32. 1. 0. 5. 0. 0 1 ×. 0. 50 ○. 0 0 ×. 0 0 ×. 0 0 ×. 0 0 × 0. 0. 22. 2. 4. 4. 0 9. 41. 凡例 左上の小枠は馬場(2003)の二重使用が可能な組み合わせのまとめ。 右上の小枠は本稿の調査における用例数。 左下の小枠は石黒(2005)の調査結果に基づく用例数。 右下の小枠は多田(2010)の調査結果に基づく用例数。. 715. 71 171 251 2. 721. 35. 42 820. 0. 185. 16. 0 601. 0. 81. 0. 1. 0. 1 ×. 81 0. 1. 0 1 ○. 20. 2. 3 ×. 0 ○. 107. 57 1931 113. 1. 0. 2 ×. 0 ○. 0 ×. 26 ×. 0. 0. 0. 22. 0. 8 ○ 1. 0. 43. 7. 2 ×. 30 ○. 0 ×. 13 ○ 0. 12 × 0. 5. 0 585. 0. 0. 13. 0. 0. 47 ×. 183 ○. 0 ×. 6 ×. 96. 29 766. 0 ○. 52 △. 657 ○. 10 ○ 0. 0. 3. 0. 27 154. 1 ○ 0. 0. 18. 0 ×. 137 ○. 9 ○ 2. 0. 1 460 ○. 4. 1. 18 ○. 45 1. 0 2. 48. 15. 15 420. 6. 1771. 0 137 230 2137 馬場 本稿の (2003) 調査 石黒 多田 (2005)(2010). 5.1 順接型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。15) 「順接型+添加型」18例(「だから又」1例、 「では其れから」1例、 「従って又」 12例、 「其れで更に」1例、 「其れで其れから」1例、 「其れで又」1例、 「即 - - 6.
(8) ち又」1例16)) (5)のような「従って又」は二重使用として扱うことができ、用例数もある程度 認められる。二重使用が可能な組み合わせ(○)に修正する。 (5) 個人コレクションにとっていちばんだいじなことは、そこにコレクター の個性が出ていることである。それを、はじめから、歴史の流れとか、系 統的にとかを意識してのコレクションでは、個性もなければ、楽しさもな い。したがってまた、ぬくみも感動も感じられない。 (山田清機『卵でピ カソを買った男』実業之日本社) 5.2 逆接型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。 「逆接型+順接型」32例(「がだから(こそ)」3例、 「だがだから(こそ) 」3 例、「だってだから」1例、「でもだから」2例、 「でもだから(こそ) 」3 例、 「でも其れで」1例、 「然しされば(こそ)」1例、 「然しだから(こそ) 」 16例、「然しだったら」1例、「然し其れで」1例) 「逆接型+転換型」30例(「けれどもでは」1例、 「だがでは」2例、 「だが其 れでは」3例、 「だけれどもでは」1例、 「でもでは」6例、 「でも其れでは」 1例、「でも扠」2例、「然しでは」5例、「然し其れでは」9例) 「逆接型+補足型」2例(「が唯」1例、「然し唯」1例) 「逆接型+順接型」の多くは(6)のように「こそ」が付いた「だからこそ」が後 続する用例であり、当該の理由があるためにより強く後続する内容を主張できるこ とを示すものである。(7)の用例の後続する接続詞「だから」も「だからこそ」に 置き換えることができる。それ以外には(8) (9)のような用例がある。 (8) の 「だっ たら」は仮定条件を表し、問い掛けの意味やノダ形の文末などが後続しやすいよう であり、使われ方が限定されている。また、(9)の「それで」は指示語とも解釈で きる例又は指示語系接続詞である。このように、 「逆接型+順接型」 は用例はあるが、 意味的にある程度限定された組み合わせのみが可能である。 「△」に修正する。 (6) 人生は、圧倒的にコントロールできないものたちからできあがっている のだ。しかし、だからこそ、そのコントロール不能性を乗り越えようとし て創造性が立ち上がる。(茂木健一郎『脳と創造性』PHPエディターズ・ グループ) (7) 「ね、ビリッチ。あたしはママのことが好きなの。とっても好きなの。 でも、だから、ゆるせないの。」(倉橋燿子『青い天使』講談社) (8) 「艦の長さそのものは、それほどでもないんですがね、 (中略)確かに、 ちょっとやそっとのことでは沈まんでしょう」 「そうか! なるほど… 大和に長官とくれば、こりゃあ、確かに、聯合艦隊“主力”に違いあるま - - 7.
(9) い」 「まったく、こんなところで、大和見物ができるとは思わなかった」 鳥居一飛曹らも、急に、うずうずしはじめた様子だ。 「…しかし、だっ たら、なぜ、ひと言教えてくれんのだ。そうと知っておれば、何も、ぶつ くさ言うことはなかったんだ」(川又千秋『ラバウル烈風空戦録』中央公 論社) (9) 「でも何かが留まると、怖いような気がするの。どうしてかしら? 臆 病なのかしら? みんながやってきて、そして去っていくの。でもそれで ほっとするの。(中略)」(村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』講談社) 次に、「逆接型+転換型」であるが、馬場(2003)では、後続するのは転換型の 下位区分のうち「区分」の意味を表す「それでは」に限られるため「△」としてい る。本稿の調査でも「でも扠」の2例以外は「区分」の「其れでは、では」が後続 している。「でも扠」は(10)のような例である。「△」のままとする。 (10) ぼくは、ダニの前に 立ちはだかった。でも、さて、どの手をつかって こいつを やっつけようか。 ぼくの ぶきは、自分の体だ。 そこで ダニのやつには、いちばんの とくいわざで いどむことにした。 (舟 崎克彦『ハナクソ太郎のぼうけん』学習研究社) 「逆接型+補足型」は(11)のような用例であり、「唯」に限定されている。この 組み合わせは「△」に修正する。 (11) 「 (中略)まだ総角の頃から荒馬に乗つて嶺谷を駆け巡り。六十年七十 年を狩で暮す者も多かつたのである。何も偏土の御家人に問はずとも。立 派に巻狩は出来たことであらうから。此説は信用するには及ばぬ。が唯こ の荒漠たる火山の裾野が原も。阿蘇の古武士にとつては神の恵の楽園であ つて。代々の弓取が其生活の趣味を悉く狩に傾けて居つたことは明かであ る。(中略)」(高田宏『われ山に帰る』岩波書店) 5.3 添加型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。 「添加型+順接型」3例(「そしてですから」1例、 「又だから(こそ) 」2例) 「添加型+逆接型」9例(「そして然し」1例、「そして其れでも」4例、「又 然し」1例、「又其れでも」3例) 「添加型+補足型」2例(「そして唯」1例、「又猶」1例) 「添加型+順接型」は、(12)のような例である。馬場(2003)では「そのため」 のような指示語系接続詞に限定されるということで「△」にしているが、「○」に 修正する。 (12) すべてこれらの矛盾した解釈は三角形の形をしていますが、そのどの一 つとして作品によって要求されたものはありません。そして、ですから、 - - 8.
(10) 一つとして他を排除して受け入れられるものではありません。 (ルドルフ・ アルンハイム(著)/関計夫(訳) 『芸術心理学』地湧社) 「添加型+逆接型」は、(13) (14)のような例である。 「其れでも」という指示語 系接続詞が後続している用例が多い。この組み合わせは「○」に修正する。 (13) しかし、時間はないのだ。ご隠居がいかにおれたちを月光仮面的に気づ かい、今生の別れにゆっくりと結び合わせてやりたいと思っていても残り の時間が僅かであることに変りはない。そして、しかしそうした切迫感は われわれの官能性を過剰にしていた。松風が漂ってきて、離れの障子は開 け放されていて、欲望は刺戟を受けた。(筒井康隆『最後の伝令』新潮社) (14) もしかしたらもう生きて戻ってこられないかもしれない、そう思うと身 体が震えます。でも、お姉様は今まで何度もこんな思いをしていらした。 そして、それでも私たちのために、戦地へと赴いておられたのですよね。 (高崎悠『黒百合、白薔薇』新風舎) 「添加型+補足型」のうちの1例「そして唯」の「唯」は (15) のように副詞とし ての解釈の余地がある。もう1例「又猶」は(16)のような用例であり、稀にではあ るが使われるようである。この組み合わせは「△」に修正する。 (15) おばあさんは、そんな東助を見てもしからなかった。そして、ただ、ひ とりごとのように、 「まあ、いいよ。わたしだって、にがしたでしょうよ。 」 とつぶやいた。(香山彬子『とうすけさん笛をふいて!』講談社) (16) 成年後見監督人選任の請求権者に被後見人が加えられたのと同じ理由か ら、さらにこれを進めるものとして、家庭裁判所が成年後見監督人を選任 するに当たっては、「成年被後見人の意見」を考慮しなければならないこ とになっています。また、なお、これらの事情は、あくまで例示であって、 家庭裁判所は、これら以外の様々な事情を考慮して成年後見監督人を選任 することができることは当然です。(前田裕司 『Q&A成年後見制度解説』 三省堂) 5.4 対比型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。 「対比型+逆接型」1例(「或いは其れでも」1例) (17)がその用例である。「其れでも」は指示語系接続詞であり限定されている。 この組み合わせは「△」に修正する。 (17) 「 (中略)ところが、その水が熱を奪って行くんだ。少しずつ、ほとん どお前が知らないうちにな、バットマン。だから、お前は低体温症になる かも知れない、そうだろ? あるいは、溺れ死にするかも知れない。ある いは、それでも生き残れるかも知れない」(デイヴィッド・ローン (著) /平 - - 9.
(11) 田敬(訳) 『復讐の残響』新潮社) 5.5 転換型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。 「転換型+逆接型」10例(「所で然し」1例、 「其れではでも」1例、 「扠然し」 7例、「扠其れでも」1例) (18) (19)に「扠然し」「所で然し」の用例を挙げる。この組み合わせは「○」に 修正する。 (18) こういう立派な後輩をもっているということ、これは老年の学者にとっ て最大の幸福だと思っております。要するに、師と友と弟子、この三つに 恵まれていたということは、たいへんな幸福でした。 さて、しかし、私が中国古代史研究を始めようと思ったときに、じつは ひじょうに困ったのです。(貝塚茂樹『最終講義』実業之日本社) (19) もうひとつ、『ハックルベリー・フィンの冒険』論で常に最大の問題と なってきた、ジムがつかまり、ハックが「より(ママ) 、それなら、おれ は地獄へ行く」と決心してジムの救出に赴く個所以後の、長々しい茶番の 部分を大胆に削ってしまったことも、エリオットやトリリングの観念的解 釈への痛撃とうけとめることができ、私などつい顔をほころばせてしまう。 ところで、しかし、ハック・フィンは序文でミスター・ヘンリー・ナッ シュ・スミスの批評にまで言及しているから、たぶんもう百歳を越えて、 なおかつ現代に生きている人の筈だが、小説の内容にまで現代の世界を引 きずり込むことはできなかったようだ。(本間長世他編『現代アメリカ像 の再構築』東京大学出版会) 5.6 同列型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。 「同列型+添加型」1例(「即ち又」1例) (20)がその用例である。稀な組み合わせと考えられる。 「△」に修正する。 (20) 「神は宇宙の根本であって兼ねて我等の根本でなければならぬ、我等が 神に帰するのは基本に帰するのである。又神は万物の目的であって即ち又 人間の目的でなければならぬ」 (同、百七十四頁) 。 (西谷啓治 『西田幾多郎』 河出書房新社) 5.7 補足型が先行する二重使用 検討対象に該当する組み合わせは次の通りである。 「補足型+順接型」6例(「尤もだから」2例、 「尤もだから(こそ) 」2例、 「唯 - - 10.
(12) だから(こそ)」2例) 「補足型+逆接型」12例(「但し其れでも」1例、 「唯然し」4例、 「唯其れでも」 7例) 「補足型+添加型」26例(「但し又」1例、「尤も又」1例、 「猶又」24例) 「補足型+転換型」1例(「尤も其れでは」1例) 「補足型+補足型」2例(「猶因みに」1例、「但し因みに」1例) 「補足型+順接型」のうち4例は(21)のように「だからこそ」が後続する。「だ からこそ」ではない(22)のような例も「だからこそ」に置き換えることができる。 この組み合わせは後続表現が限定されている。「△」に修正する。 (21) 左目がまったく“ものを認識していない”状態ということは、イコール 左目を司る右脳の機能の一部が休んでいるということである。右目だと左 脳が休んでいるわけだ。だから、適切な機能回復訓練をほどこして休んで いる脳の一部を起こしてやれば、劇的によくなる。特に子供の場合は、周 囲がそれと気づきさえすれば、けっして回復作業の難しい機能障害ではな いという。ただ、だからこそ、「周囲がそれと気づきさえすれば」という 部分が問題になってくるのだ。(宮部みゆき『模倣犯』小学館) (22) オオサカンデビルことキャロさんがわたしの横にきて、煙草を喫いだし た。 この人、お医者さまのくせに、煙草は喫うわ、大酒はくらうわ、博 奕を打つわ。もっとも、だから、大阪の不道徳医師なのである。 (森巣博 『極 楽カシノ』光文社) 「補足型+逆接型」の用例として(23)を挙げる。この組み合わせは「○」に修正 する。 (23) ある人は科学の興隆を叫び、ある人は芸術の発展を主張しております。 また学問や教育の再建こそが文化の第一歩だといい、宗教の復興が文化国 家の使命だと主張する人もあります。 その一つ一つはまことにもっともなことであり、少しの誤りもないと思 います。ただしかし、そのいずれも文化の一つの側面をとりあげて論議さ れているのではないかと思います。(松下幸之助『松下幸之助の哲学』 PHP研究所) 「補足型+添加型」の殆どは「猶又」である。『日本国語大辞典 第二版 第十巻』 (小学館、2001年)には、「なお」の子見出しとして掲載されており、全体で補足 型として機能しており複合語化が進んでいる(馬場(2013b) ) 。二重使用とすべきか、 その扱いには問題が残る。用例数の多寡の検討の際に留意が必要である。「猶又」 以外は(24)のような用例である。この組み合わせは取りあえず「△」に修正する。 (24) 自己資本当期利益率と総資本事業利益率(rate of return on assets、略 称ROA)との関係はつぎのように表わされる(中略) すなわち、負債 - - 11.
(13) 利子率i(=ROA)を支点として、負債比率がいわば梃子(lever)の役 割を果たすことによって、ROEの変動をROAの変動以上に大きくするの である。これを財務レヴァリッジ(leverage)効果という。この効果を考 慮してROEを高めるために負債金融をおこなって、資本構成を利用する ことをトレイディング・オン・ジ・エクイティ(trading on the equity) という。ただしまた、財務レヴァリッジ効果によって、負債の割合が大き くなるほどROEの変動幅は大きくなることから、将来の利益にたいする 不確実性は高まる。これを財務リスクという。 (田淵泰男 『会計学の基礎』 有斐閣) 「補足型+転換型」の用例は(25)である。稀な例であり包摂の可能性もあり、扱 いは保留する。 (25) 「血液酸塩基平衡より観た枇杷葉療法」の学術的スジ金 もっとも、それではなぜ、枇杷葉が諸病に効くのか─。各種データから 新幸機療法(井上氏が考えだした電熱器と送風機を組み合わせて作った枇 杷葉療法の機械)に絶対の自信を持っていた井上新太郎氏も、皮肉な専門 家からこう問われると、応えに窮したようです。 (長司哲冏 『癌ストップ!! 枇杷葉温圧』光雲社) 「補足型+補足型」は2例とも(26)のように「因みに」が後続しており限定され ている。この組み合わせは「△」に修正する。 (26) 「私は、鍼治療でガンが治せるとは思っていません。やはり、ガンの治 療は医学先端の西洋医療に頼るべきです。ただし、ちなみに私が発見した 百人のガン患者のうち、半分の五十人ほどが、その後、私の鍼治療を受け ているんです。(中略)」(段勲『私はこうして「がん」を克服した』日本 能率協会マネジメントセンター) 5.8 石黒(2005)、多田(2010)の調査結果との比較 前節まで、連接類型別に、馬場(2003)の調査結果との違いを見ながら再検討を 行ってきた。再検討後の判断が「×」「△」の組み合わせでも、石黒(2005)又は 多田(2010)の調査では用例があるとされている組み合わせがある。本節では、そ れらの組み合わせについて検討を加える。 まず、再検討後の判断が「×」の組み合わせのうち、石黒(2005)又は多田(2010) の調査では用例があるとされている組み合わせは次の通りである。 「添加型+転換型」(多田(2010)1例)(「またじゃあ」1例) 「対比型+補足型」(多田(2010)16例)(「あるいはなお」2例、 「あるいはた だ」14例) 「補足型+対比型」(石黒(2005)11例)(「ただ一方」11例) - - 12.
(14) 「補足型+転換型」(多田(2010)2例)(「ただじゃあ」2例) 多田(2010)の調査で示されている「またじゃあ」1例、 「あるいはなお」2例、 「あるいはただ」14例、「ただじゃあ」2例について、BCCWJ全体(2013年9月現 在公開版、 「中納言」利用、長単位検索、品詞「接続詞」指定、キーから1語及び 2語、検索対象「固定長・可変長」両方)で用例検索を行った17)。検索された用例 は、包摂である((27))か、あるいは「なお、ただ」が副詞と判断されるなどの誤 解析である((28)~(30))かのいずれかであり、いずれも二重使用には該当しない。 (27) 下のお子さんが2歳ということは少なくとも最低二十年は教育資金込み で考えなければなりません。また上の方も言っているように国内生保の場 合殆どが掛け捨てで期限のある定期保険特約でその年数があと二十年以下 の場合更新がありますので必ず保険料が大幅アップします。入院が少ない などと言っている場合ではなく近い将来大幅アップで払えないかも知れな いとと(ママ)いうことも考えなくてはいけません。またじゃあどこかに 入りなおそうと思ってもその当時から年齢アップしていますし予定利率も 今は最低ですので現状可能な限り更新が目前ではない場合いじらないが基 本です。(Yahoo!知恵袋) (28) 地方公営企業は、いわゆる石油危機による物価高騰等により、昭和四十 九年度の経営状況が急激に悪化し、このため、これまでかなりの団体にお いて料金の適正化が行われてきたが、適正化が時期的に遅れ、あるいは、 なお不十分なものも見受けられるので、今後においては適時適切な料金改 定を実施するよう格別の配慮を払うべきである。 ( 『地方財政白書』昭和51 年版) (29) 自分の過去をたどる内観療法 内観法あるいはただ内観ともいいます。吉本伊信によってはじめられた、 日本独自の、広い意味での精神療法のひとつです。 (樋口正元『神経症を 治す』保健同人社) (30) 点悪かったらヾ(▼д▼#)ただじゃーおかねぇぞ!!(Yahoo!ブログ) 石 黒(2005) の 調 査 で 示 さ れ て い る「 た だ 一 方 」11例 に つ い て も 同 様 に、 BCCWJ全体で用例検索を行った。その結果、(31)のような用例を国会会議録で3 件見つけることができた。この「補足型+対比型」は「ただ一方」以外の例は見つ けていない。この組み合わせは「△」に修正する。 (31) 大蔵省といたしましては、引き続きこの統合運用の原則を維持してまい りたいと考えております。ただ一方、こうした資金は資金運用部資金法で もございますが、預託者の利益にも配慮しなければいけないという観点が ございます。先ほど年金局の方から御答弁がございましたが、厚生省から もそういった点で昨年以来お申し出をいただきまして、いろいろ協議をし - - 13.
(15) ております。(国会会議録 第102回国会 衆議院/社会労働委員会) 次に、再検討後の判断が「△」の組み合わせのうち、石黒(2005)又は多田(2010) の調査では用例があるとされている組み合わせは次の通りである。 「逆接型+順接型」 (石黒(2005)12例) (「しかしだから」5例、 「だがだから」 2例、「でもだから」5例) 「逆接型+転換型」(多田(2010)1例)(「しかしじゃ」1例) 「逆接型+補足型」(多田(2010)71例)(「がなお」1例、 「がただ」2例、 「し かしなお」26例、「しかしただ」42例) 「添加型+補足型」(多田(2010)35例)(「そしてただ」7例、 「しかもなお」 5例、「しかもただ」10例、「かつただ」4例、 「さらになお」2例、 「さら にただ」2例、「またなお」2例、「またただ」3例) 「補足型+添加型」(多田(2010)381例)(「なおかつ」332例、 「なおさらに」 11例、「なおまた」33例、「ただかつ」1例、「ただまた」4例) 「補足型+補足型」(多田(2010)15例)(「なおただ」15例) 「逆接型+順接型」であるが、石黒(2005)と本稿の結果との違いは、特に「包 摂」を二重使用に含めるか否かということの違い及び「しかしだからこそ」「しか しだからといって」の用例の扱いの違いのため生じている。本稿では「包摂」及び 「しかしだからといって」は二重使用の集計には含めず、 「しかしだからこそ」は「逆 接型+順接型」であるが限定された組み合わせであると判断し「△」とした。 「逆接型+転換型」の「しかしじゃ」のBCCWJ全体の検索結果1件(検索方法 は前に同じ)は(32)であり、形態素解析の誤解析である。 (32) わしの念仏は偽物じゃ。そう思い悩んだ。しかし、しかしじゃ。毎夜毎 晩、心にしみわたるこのさびしさ、涙さえ出ぬほどの深いさびしさは、決 していつわりではない。(五木寛之『蓮如』中央公論社) 「逆接型+補足型」以下に関しては、「逆接型+補足型」の「がただ」 「しかした だ」は5.2で、 「添加型+補足型」の「そしてただ」「またなお」は5.3で、 「補 足型+添加型」の「なおまた」は5.7で既に扱っている。 「補足型+添加型」の「な おかつ」は全体を接続詞として扱うことはできるが他の二重使用とは同一には扱え ない。「補足型+添加型」の「ただまた」は国会会議録で(33) のような用例が2例あっ たが稀な例と思われる。 (33) それでは、今、既存の羽田空港、成田空港、これは羽田の方は新C滑走 路が完成して、二十四時間化も実現できてきた。しかし今後、沖合展開、 まだまだ計画があるのか、それによって航空容量がどれぐらいふえるのか。 そして、成田空港の方も、二千年に開港を目指す、平行滑走路が完成する か、そうするとどれぐらい容量がふえるのか。ただ、また、二千年に開港 するには、今の反対派の農家の皆さんをいつごろまでに説得しなければで - - 14.
(16) 表2 接続詞の二重使用が可能な連接類型の組み合わせと用例数 計. 補足型. 同列型. 転換型. 対比型. 添加型. 逆接型. 順接型. 後続 先行 順接型. ×. 0 △. 0 ○. 18 ○. 0 ×. 0 ○. 2 ×. 0. 20. 逆接型. △. 32 ○. 460 ○. 137 ○. 52 △. 30 ○. 2 △. 2. 715. 添加型. ○. 3 ○. 9 ○. 657 ○. 47 ×. 0 ○. 3 △. 2. 721. 対比型. ×. 0 △. 1 ○. 183 ○. 0 ×. 0 ○. 1 ×. 0. 185. 転換型. △. 0 ○. 10 ○. 13 ○. 8 ○. 50 ○. 0 ×. 0. 81. 同列型. △. 0 ×. 0 △. 1 ×. 0 ×. 0 ×. 0 ×. 0. 1. 補足型. △. 6 ○. 12 △. 26 △. 0 ×. 1 ○. 1 △. 2. 48. 9. 6. 1771. 計. 41. 492. 1035. 107. 81. 凡例 「○」は二重使用が可能な組み合わせ。 「×」は二重使用が不可能だと判断される組み合わせ。 「△」は二重使用の用例はあるが稀な若しくは限られた組み合わせ。. きないのか。この二つの空港についての将来の計画、容量についてお聞か せいただきたいと思います。(国会会議録 第142回国会 衆議院/予算委 員会) 上記以外の「がなお」 「しかしなお」 「しかもなお」 「しかもただ」 「かつただ」 「さ らになお」 「さらにただ」 「またただ」 「なおさらに」 「ただかつ」 「なおただ」及び「そ してただ」については、BCCWJ全体の検索結果(検索方法は前に同じ)の用例を 検討した結果、特に後続する「なお、ただ、さらに、かつ」や「また」は副詞とし て使われていると判断される用例であった。 5.9 本節のまとめ 本節での再検討の結果に基づいて、二重使用が可能な連接類型の組み合わせをま とめると、表2の通りとなる。網掛けをした組み合わせは、本稿で修正した組み合 わせである。本稿の調査結果の用例数も右枠に付している。. 6 承接順序の傾向──用例数の検討も含めて まず、表2に基づいて、用例数の多い二重使用の連接類型の傾向をまとめる。本 稿の調査で得られた用例数を見ると、二重使用が際立って多いのは (34) に挙げる組 - - 15.
(17) み合わせである。これら4種の組み合わせの合計は1437例であり、全用例数1771例 の81.1%を占める。また、同じ連接類型の組み合わせである同種併用の用例数及び 表2の「△」 「×」の用例数を除いた用例数を示すと、(35)のようになる。このよ うに、逆接型、添加型、対比型が関わる二重使用が極めて多い18)。 (34) 「添加型+添加型」657例、「逆接型+逆接型」460例 「対比型+添加型」183例、「逆接型+添加型」137例 (35) 順接型(先行する場合 20例、後続する場合 3例、計 23例) 逆接型(先行する場合191例、後続する場合 31例、計222例) 添加型(先行する場合 62例、後続する場合351例、計413例) 対比型(先行する場合184例、後続する場合107例、計291例) 転換型(先行する場合 31例、後続する場合 0例、計 31例) 同列型(先行する場合 0例、後続する場合 9例、計 9例) 補足型(先行する場合 13例、後続する場合 0例、計 13例) 同じ連接類型の組み合わせである同種併用の二重使用に関しては、馬場(2003) で「同種併用は、逆接型・添加型・対比型・転換型にはあるが、順接型・同列型・ 補足型にはない。」としている。本稿で、「補足型+補足型」が稀ではあるが用例が あることを指摘した。「同種併用は、逆接型、添加型、対比型、転換型にはあるが、 順接型、同列型にはない。補足型は極めて稀にある。」と修正する。 異なる連接類型の組み合わせである異種併用の際の先行接続詞と後続接続詞の連 接類型の承接順序のおおまかな傾向について、馬場(2003)では、大きく「逆接型 転換型」「添加型 対比型」「同列型」の順序が認められるとともに「順接型」「補 足型」の異種併用は極めて稀であることを指摘している。 本稿の調査結果に基づいて承接順序について再検討する。ただし、「△」は二重 使用の用例はあるが稀な若しくは限られた組み合わせであるため、再検討に際して は考慮せずに、大きな原則を示すことを目指す。 順接型、補足型は二重使用されにくいため、この2種の連接類型を除いた承接順 序の原則を示すと(36)のようになる。転換型と同列型も、二重使用の用例数は少な いが、転換型は先行する組み合わせが、同列型は後続する組み合わせが可能( 「○」 ) である場合が殆どであり承接順序も明確であるため、含めて示す。なお、 「添加型」 については、「逆接型+添加型」「添加型+逆接型」及び「添加型+対比型」「対比 型+添加型」の両方の組み合わせがそれぞれ可能であるが、 「逆接型+添加型」 「対 比型+添加型」の方が用例数が多いため、「(添加型>)」のように括弧書きで重複 して示す19)。 (36) 転換型>(添加型>)逆接型>対比型>添加型>同列型 二重使用されにくいながらも、順接型、補足型が関わる二重使用の承接順序の原 則をあえてまとめると、それぞれ(37) (38)のようになる。 「順接型+添加型」と「添 - - 16.
(18) 加型+順接型」の両方が可能であるが、前者の方が用例数が多いため、 「 (添加型>) 」 のように括弧書きで重複して示す。 (37) (添加型>)順接型>対比型>添加型>同列型 (38) 補足型>逆接型>同列型 以上のように、二重使用の際の承接順序は(36)~(38) の原則にまとめることがで きるが、では、なぜ、このような順序になるのであろうか。二重使用の可否につい ては、個別の接続詞の意味や語形などが関わっており、単純に扱うことができない ため、本稿で詳細な検討をする用意はないが、ここでは、各連接類型の特徴を大ま かに捉えながら、承接順序の理由として考えられることを試みとして示してみる。 まず、転換型が最も先行しやすいことに関しては、接続機能の及ぶ範囲が関わっ ていると思われる。「前文の内容から転じて、別個の内容を後文に述べる型」 (市川 (1978))である転換型は、話題の転換を明示し大きく段落(文群)と段落(文群) との関係に基本的に関わるものであり、接続機能の及ぶ範囲が最も広い連接類型で ある。したがって、二重使用の用例は少ないが、二重使用されれば最初に位置する と考えられる。 また、 「前文の内容と同等とみなされる内容を後文に重ねて述べる型」(市川 (1978))である同列型が最後に位置しやすいことに関しては、同列型は先行表現 内容20)を繰り広げようとする発展的・拡張的な文脈展開ではなく、後続表現内容が 先行表現内容の反復・例示であることを明示するものであり、いわば副詞的な性格 が強いものであることが関わっていると考えられる。 「前文の内容を補足する内容を後文に述べる型」 (市川(1978) )である補足型も、 先行表現内容を繰り広げようとする発展的・拡張的な文脈展開ではないという点で は同列型と似ている。補足型の二重使用は極めて稀であるが、先行表現内容とどの ような関係(逆接的、同列(反復・例示)的)を持つ内容の補足であるかを明示す るために、逆接型と同列型が後続する例がありうると思われる。 添加型を含む二重使用の種類及び用例が多く、また添加型の使われる位置も複数 ありうるのは、添加型が他の連接類型に比べて先行表現内容と後続表現内容との論 理的関係を示す働きが弱いためと思われる。言わば、次の文へと繫げる勢いを示し ているのが添加型である。これに対し、順接型、逆接型、対比型は、先行表現内容 と後続表現内容との論理的関係を明示するものである。ただし、順接型が表す順接 的関係は接続詞を使わなくても関係が捉えられやすいのに対し、逆接型と対比型は それぞれの関係を表すために接続詞の明示が必要になりやすい。こうした違いが、 順接型と逆接型・対比型の二重使用における違いに関わっていると思われる。. 7 おわりに 本稿では、接続詞の二重使用の承接順序の傾向について、『現代日本語書き言葉 - - 17.
(19) 表3 接続詞の二重使用が可能な連接類型の組み合わせ 補足型. 同列型. 転換型. 対比型. 添加型. 逆接型. 順接型. 後続 先行 順接型. ×. △. ○. ○. ×. ○. ×. 逆接型. △. ○. ○. ○. △. ○. △. 添加型. ○. ○. ○. ○. ×. ○. △. 対比型. ×. △. ○. ○. ×. ○. ×. 転換型. △. ○. ○. ○. ○. ○. ×. 同列型. △. ×. △. ×. ×. ×. ×. 補足型. △. ○. △. △. ×. ○. △. 凡例 「○」は二重使用が可能な組み合わせ。 「 ×」は二重使用が不可能だと判断され る組み合わせ。 「 △」は二重使用の用例はあるが稀な若 しくは限られた組み合わせ。. 均衡コーパス』(BCCWJ)の書籍データの検索結果に基づいて馬場(2003)の結果 に再検討を加え、より一般化できる原則を得ることができた。 接続詞の二重使用が可能な連接類型の組み合わせを表3に改めて示す。本稿で 行った指摘をまとめると(39)のようになる。 (39) 本稿のまとめ ① 逆接型、添加型、対比型が関わる二重使用の組み合わせの種類及び用 例数が多い。特に、同種併用の「添加型+添加型」 「逆接型+逆接型」 及び異種併用の「対比型+添加型」 「逆接型+添加型」の用例数が際立っ て多い。 ② 順接型及び補足型が関わる二重使用の用例数は少なく、二重使用の組 み合わせの種類も限定されている。 ③ 転換型及び同列型が関わる二重使用の用例数は多くはないが、それぞ れ先行及び後続する場合に二重使用の組み合わせが可能である。 ④ 同種併用は、逆接型、添加型、対比型、転換型にはあるが、順接型、 同列型にはない。補足型は極めて稀にある。 ⑤ 二重使用(異種併用)の際の先行接続詞と後続接続詞の連接類型の承 接順序には、 「転換型>(添加型>)逆接型>対比型>添加型>同列型」 - - 18.
(20) という原則がある。 ⑥ 順接型及び補足型が関わる二重使用(異種併用)の際の先行接続詞と 後続接続詞の連接類型の承接順序には、「(添加型>)順接型>対比型> 添加型>同列型」「補足型>逆接型>同列型」という原則がある。 今後は、各連接類型の特徴と関連付けながら、接続詞の二重使用に承接順序が生 じる理由に関して詳細に検討することが必要である。また、巨視的に大きく連接類 型別に見るだけでなく、「そして又」「しかし一方」などの個別の二重使用の特徴に ついても詳細な検討が必要である。 注 1 接続詞が連続して使用される「接続詞の連続使用」は、 「単なる連続」 「同語反復」 「包摂」 「二重使用」の4タイプに分けることができる。 「単なる連続」 「同語反復」 「包摂」は、 それぞれ次のア「だから、でも」 、イ「だから、だから」 、ウ「しかし、だから」のよう な場合である。 ア そんなことは分かっていたよ。だから、でも、諦めきれないんだよ。 (作例) イ 「三年生にとっては、今度は恐らく最後の試合になる。弱いかもしれないが、 一生懸命、丸二年間の成果を生み落すつもりでやるだろう」 「僕もやります」 「お まえにはまだ先がある、何度でも試合に出る機会がある」 「だから、だから今度も 出たいんです」 (高橋三千綱『九月の空』河出書房新社) ウ BSE(牛海綿状脳症)騒ぎを契機に、食料政策が変わろうとしている。食品の 安全性が重視され、虚偽の食品表示を厳しく取り締まることになる。もちろん食 料政策が変われば、農業政策も変わる。農水省も従来の生産者寄りから、消費者 寄りへと政策の軸足を移すと宣言した。消費者の期待が膨らみ、生産者の不安が 広がる。しかし、 だからどうなるのだという疑問が浮かんでくる。 (尾野村祐治 『 「食」 と「農」の政策評価』家の光協会) 「単なる連続」は言い直したため結果的に接続詞が連続した場合、 「同語反復」は同一 の接続詞が連続した場合である。 「包摂」は二つの接続詞の接続機能が及ぶ後続部分が異 なっている場合であり、ウの「しかし、だから」は「しかし、 「だからどうなるのだ」と いう疑問が浮かんでくる。 」のように、 「しかし」と「だから」のそれぞれの接続機能が 及ぶ後続部分が異なっている。それぞれ詳しくは、馬場(2013b)参照。また、 「接続詞 の二重使用」に関する研究の流れは馬場(2011)参照。 2 本稿第3節参照。 3 本稿の用例は特記しない限り『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の用例である。検 索ツール「中納言」を用いて用例を収集した。用例中の下線及び「 (中略) 」 「 (ママ) 」は 引用者(馬場)によるものである。また、読み易さを考慮して段落冒頭(一字空白箇所) で引用者(馬場)が改行を行った場合がある。なお、検索ツール「中納言」は利用許諾. - - 19.
(21) を得て使用している。 4 第2節の記述は、馬場(2011) 、馬場(2013a)の記述内容と一部重複がある。 5 馬場(2003)の調査対象や調査方法の詳細に関して、馬場(2003)では明示していな いことも示した。 6 市川(1978)が挙げている8種の連接類型のうちの「連鎖型」は「接続語句は普通用 いられない」型であるため、それを除いた7種を取り上げている。各類型の「接続語句 のおもなもの」に挙げている語句を次に示す。ただし、下位分類の枠組みは省略する。 順接型 だから、ですから、それで、したがって、そこで、そのため、そういうわ けで、それなら、とすると、してみれば、では、すると、と、そうしたら、かくて、 こうして、その結果、それには、そのためには 逆接型 しかし、けれども、だが、でも、が、といっても、だとしても、それなのに、 しかるに、そのくせ、それにもかかわらず、ところが、それが 添加型 そして、そうして、ついで、つぎに、それから、そのうえ、それに、さらに、 しかも、また、と同時に、そのとき、そこへ、次の瞬間 対比型 というより、むしろ、まして、いわんや、一方、他方、それに対し、逆に、 かえって、そのかわり、それとも、あるいは、または 転換型 ところで、ときに、はなしかわって、やがて、そのうちに、さて、そもそも、 いったい、それでは、では、ともあれ、それはそれとして 同列型 すなわち、つまり、要するに、換言すれば、言い換えれば、たとえば、現に、 とりわけ、わけても、せめて、少なくとも 補足型 なぜなら、なんとなれば、というのは、ただし、もっとも、ただ、なお、 ちなみに 7 順接型の「では」と転換型の「では」を1種類として調査していると思われる。 8 注1参照。 9 多田(2010)では、 「文頭ngramの語連接」が「文の連接関係」 ( 「同一」 「等価なこと がらを並置」 「何らかの意味で序列のある事態を並べる」 )を表す場合に「複合接続詞」 としており、 「あとで、おかげさまで、しかしながら、したがって、それでも、だから、 だとしたら、要するに」など約200語を挙げている。 10 「出版サブコーパス」の「新聞」も対象とすべきであろうが、 「新聞」データでは接続 詞の二重使用の組が6組しかなかったため、 「書籍」データと混ぜることはせず、除外す ることにした。また、 接続詞の二重使用の使用比率には文章ジャンル(書籍、 国会会議録、 白書、Yahoo! 知恵袋)による違いがある(馬場(2013a) )ため、 「書籍」データのみを調 査対象とし、その特徴をより明らかにしたいという理由も、 「書籍」データに限定した理 由の一つである。 11 UniDicにおける接続詞は接続詞辞書(Conjunction.csv) (UniDic-mecab version 1.3.12) に基づく。 「では」はUniDic接続詞辞書と国立国語研究所コーパス開発センター(2011). - - 20.
(22) の長単位の連語リストの両方に含まれるが、UniDic接続詞辞書の「では」の(書字形) 出現形は「じゃ、じゃぁ、じゃあ、じゃァ、じゃー、ぢゃ、んじゃ」である。本稿の調 査では、注13にも示す通り併せて語彙素「では」として扱った。また、 (3) (4) では「で は」は順接型と転換型に重複して示している。なお、 「夫れ」 (転換型)はUniDic接続詞 辞書には登録されていないが、BCCWJでは短単位で接続詞と認定されている。また、本 稿の調査結果の二重使用には使われていないが、長単位の連語リストには記載がない連 語(例えば「して」 )が長単位で接続詞と認定されている場合がある。なお、UniDicmecabは継続して拡張されており、 現在version 2.1.2 (2013年3月)が利用可能である(http:// sourceforge.jp/projects/unidic/) 。 12 形態素解析の誤りとしては、副詞の「また、ただ、さらに、なお」などが接続詞と解 析されている場合が目立った。これらの語の品詞判定に当たっては、 「再び、単に、いっ そう、まだ」などの副詞類義表現への置き換えの可否、 「またまた、ただただ、ただ…だ け(のみ) 、しかもなお」などの共起表現の有無などを目安とした。 13 集計では、独自に、 「扨は」 (添加型)を語彙素に追加したほか、語形変異等のあるも の( 「けれども、けれど、けど」→「けれども」 、 「だけども、だけど」→「だけれども」 、 「では、じゃ、じゃあ」→「では」 、 「一方、一方で」→「一方」 )を同一の語彙素(矢印 の後の形)とした。なお、 「先行する内容の理由があるとしても後続する内容は認められ ない」という意味を表す「だからと言って」 「だからって」を含む150例は、逆接の意味 を表し「包摂」と似た構造となるため、集計から除いている。 14 フィラーの「で」と見做した用例は次のような用例であり、 主に会話文で使われている。 詳しくは馬場(2013b)参照。 ア 僕はお舟遊びという言葉からなんとなく平安貴族を連想してしまった。それを 念頭において言った。 「まるで貴族ですね」 「そうや。それや、貴族の遊び や」 皮肉が通じないのである。 「で、それで、たこ焼きですか」 「たこ焼 きちゃうで。多幸焼きや」 (花村萬月『惜春』講談社) イ 「何か理由があったとしても、アギなら、目的にかなった別の方法を探したの ではないかと思えるのです、ご老人。あの絵を描かせたのは、自分の血には無頓 着な者だと思う」 サイプレスが、頷いて同意を示した。 「当たっていると思 う。アッシュの奥方も、アギは血統のことで、自分を憎んでいると言っていたわ。 で、それから?」 リュークは、座ったまま、一揖した。 「これで、意見が一 致したわけだな。ひとまず、奥方がジェドにせがんで、あるいは、夫をそそのか して、 肖像画を描かせたのだと仮定しよう。奥方は、 なぜそんなことをしたのか?」 (草上仁『黒真珠の瞳』スクウェア・エニックス) ウ 「 (中略)さっそく会員登録をさせていただきますので、ご心配なく。で、ちな みに参加予定人数のほうは?(中略) 」 (原宏一『姥捨てバス』ベネッセコーポレー ション). - - 21.
(23) また、 「猶且つ」については、 「猶」 (接続詞) ・ 「且つ」 (接続詞)で(短単位及び長単位) 検索される用例が「書籍」データでは12件あるが、語彙素「尚且つ」 (副詞)で(短単位 及び長単位)検索される用例が287件ある。BCCWJでは、短単位で語彙素「尚且つ」を 副詞として扱っている(UniDicの副詞辞書(Adverb.csv) (UniDic-mecab version 1.3.12) に「尚且つ」が登録されている) 。 「猶且つ」を接続詞として扱うにしても、全体で複合 語化しており他の二重使用とは同一には扱えない。 15 二重使用の組み合わせを「先行接続詞の連接類型+後続接続詞の連接類型」のように 示す。例えば「順接型+添加型」は「順接型」の接続詞が先行し「添加型」の接続詞が 後続する組み合わせを表す。 16 「即ち又」の「すなわち」は「包括すればすなわちまたこの一事に収まる」 (谷沢永一『無 私と我欲のはざまで』清流出版)のように順接型での使用である。 17 「あるいはなお」 (語彙素「或いは」 「猶」 )の検索で「なお」が接続詞として形態素解 析されているのは1例のみであった。品詞を指定せず検索したところ、 (ア)の用例が検 索されたが「なお」は副詞として形態素解析されている。また、 「あるいはただ」 (語彙 素「或いは」 「唯」 )の検索で「ただ」が接続詞として形態素解析されているのは7例の みであり、 「ただ」が副詞として形態素解析されている用例が9例あった。 ア 分化した意識にとっては、明らかにこの卵は心から生まれたシンボルにすぎず、 あるいは─なお悪いことには─気まぐれな思弁にほかならず、それゆえ「現実性」 をまったくもたない幼稚な幻想に「ほかならない」ことになる。 (C.G.ユング (著) / 林道義 (訳) 『元型論』紀伊國屋書店) 18 逆接型、添加型、対比型の接続詞は、単独使用の場合でも使用頻度が高い。本稿の調 査対象と同じBCCWJの書籍データでの「接続詞」の使用頻度を調べてみた。検索は「中 納言」を使用した(長単位検索、 品詞「接続詞」指定、 検索対象「固定長・可変長」両方) 。 検索結果は全403,645件であり、延べ語数403,645語、異なり語数378語(ただし誤解析を多 く含む)である。使用頻度上位10語及び上位20語(括弧内)の異なり語数を連接類型別 にまとめると、次のようになる。上位10語のみの数値データを示しておく。 順接型1語(2語)、逆接型3語(5語)、添加型4語(6語)、対比型2語(3語) 転換型0語(0語)、同列型0語(1語)、補足型0語(3語) 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. 接続詞 然し 又 そして でも 及び だが 或いは だから 又は 更に. 連接類型 逆接型 添加型 添加型 逆接型 添加型 逆接型 対比型 順接型 対比型 添加型. 延べ語数 53,233 45,638 45,079 17,938 17,715 16,037 15,972 14,875 13,834 11,690. - - 22. 使用率(%) 13.2 11.3 11.2 4.4 4.4 4.0 4.0 3.7 3.4 2.9. 累積使用率(%) 13.2 24.5 35.7 40.1 44.5 48.5 52.4 56.1 59.5. 62.4.
(24) 19 石黒(2005)では、 「転換型>逆接型>添加型>順接型・対比型>同列型」という原則 を示している。順接型の扱いに関して本稿と異なっている。順接型の扱いの違いに関し ては、本文の5.8に記している。また、添加型と対比型の順序に関しては、石黒(2005) では対比型の接続詞として「一方」のみを対象としているが、本稿の調査では、 「一方」 以外の対比型の接続詞も対象とし、 「或いは又」 「一方又」などの「対比型+添加型」の 用例が見付かっている。 20 接続詞が受けて繫げる先行する内容を仮に「先行表現内容」と呼ぶ。また、 接続詞によっ て繫がる後続の内容を仮に「後続表現内容」と呼ぶ。それぞれ節や文のこともあれば文 群のこともある。. 参照文献 石黒圭(2005) 「接続詞の二重使用とその表現効果」中村明・野村雅昭・佐久間まゆみ・小 宮千鶴子(編) 『表現と文体』明治書院 pp.160-169 市川孝(1978) 『国語教育のための文章論概説』教育出版 小椋秀樹・冨士池優美(2011) 「第1章 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の言語単位」 小椋秀樹・小磯花絵・冨士池優美・宮内佐夜香・小西光・原裕『 『現代日本語書き言葉均 衡コーパス』 形態論情報規程集 第4版 (上) 』 (国立国語研究所内部報告書(LRCCG-10-05-01) )国立国語研究所 pp.1-10 国立国語研究所コーパス開発センター(2011) 『 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』利用 の手引 第1.0版』国立国語研究所コーパス開発センター 多田知子(2010) 「複合接続詞──文の文頭部分の階層性──」 『国文論叢』 (42)神戸大学 文学部国語国文学会 pp.52-39/要旨p.68 伝康晴・山田篤・小椋秀樹・小磯花絵・小木曽智信(2009) 『UniDic version 1.3.12 ユーザー ズマニュアル』 ( 「unidic-mecab1312src」内文書) 馬場俊臣(2003) 「接続詞の二重使用の分析─用例と各接続類型の特徴─」 『北海道教育大 学紀要 人文科学・社会科学編』53 (2) 北海道教育大学 pp.1-17(馬場(2006)所収) 馬場俊臣(2006) 『日本語の文連接表現─指示・接続・反復─』おうふう 馬場俊臣(2011) 「接続詞の二重使用に関わる研究について」 『語学文学』 (49)北海道教育 大学語学文学会 pp.1-10 馬場俊臣(2013a) 「接続表現の二重使用と文章ジャンルについて」 『北海道教育大学紀要 人 文科学・社会科学編』63 (2) 北海道教育大学 pp.17-28 馬場俊臣(2013b) 「接続詞の連続使用・二重使用──複合接続詞的使用も含めて──」藤 田保幸(編) 『形式語研究論集』和泉書院 pp.205-232. - - 23.
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