特集にあたって (特集 外国を研究すること)
著者
相沢 伸広
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
216
ページ
2-2
発行年
2013-09
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003622
なぜ、外国を研究するのか。そ のきっかけは偶然であったとして も、外国を主たる研究の地として 続けるには、研究者それぞれに、 また学問ごとに異なる理由がある だろう。特定の国について研究す る事を専門とする事で、その国を 研究し続ける場合もあれば、特定 の 現象の所在ゆえという場合もあ る だ ろ う。 「 外 国 を 研 究 す る 」 と いう営為には、自国を研究するの と は こ と な る 基 礎 的 な 環 境 が あ る。調査を行う為には、自分の生 活圏を離れ、異なる言語を話し、 聴く。異なる生活様式の中で思索 し、絶えず複数の読者を想定しな がら、研究成果を形作ることを意 識する。さらには、所属大学、研 究機関が存在する国 の政策次第で 特定の国、地域の研究支援体制は 容易に左右される。 だからこそ、 絶えず変化する研究環境にあって 変わらず特定の国、地域の研究を 継続することは容易ではない。 現代は、研究環境、 とりわけ 情 報環境の急速な変化の中にある。 第一にこの三〇年で国際航空券の 価格は劇的に安くなり、海外に赴 くことは、外交官や商社マン、研 究者といった特定の職種の人間で なくとも簡単になった。外国に赴 く人の裾野は広がり、また外国に 滞在する期間はおおむね、短縮さ れた。第二に、インターネットが 普 及 し 瞬 時 に 世 界 中 の 最 新 の ニュースが手に入るようになり、 現 地 の 新 聞 は も ち ろ ん の こ と、 F a ce b o o k 、 T w itt er や Y o u tu b e 等でマスメディアが取り上げない ような市井の人々の声にも 現地に 赴かずとも 触れられるようになっ た。第三にオンラインの検索エン ジ ン の 進 化 や ネ ッ ト 上 の デ ー タ ベースの充実は、学びの方法を根 本から変え、外国について、過去 の情報も含めてかつてとは比べよ うのないほど容易に手に入るよう になった。最先端の研究成果の発 信も、書籍や論文、新聞といった 媒 体 が 独 占 し て い た 時 代 は 終 わ り、 ウ ェ ブ 上 で、 イ ン フ ォ グ ラ フィックスやショートムービーな どでも発表されるようになった。 そして第四に「発展途上国」とみ なされる国々であっても、その国 で分析を行う研究者たちは、世界 の一流大学で長期間にわたってト レーニングを受け、流麗な英語で の情報発信力を兼ね備えた研究者 であることが少なくない。鍛えら れた能力に加え、アップデートさ れた現地の情報や豊かな人脈を常 に 備 え た 自 国 の 研 究 者 が 大 勢 い る 。 このような状況で 外国を研究す る研究者に、果たして、今後なん らかの大きな知的貢献が可能であ ろうか。 も っ と い え ば、 こ の よ う な 研 究、 情 報 環 境 に あ る 現 代 に お い て、 「 外 国 を 研 究 す る 者 」 は、 と りわけ対象国にいる同業者とどの ように勝負すべきであろうか。ま た、この変化した情報、交通状況 を研究の創意工夫にどのように生 かすべきだろうか。あるいは自国 を研究する研究者と比べて、外国 を研究する研究者にはどのような 強みや弱みがあるのか。そして、 とりわけ「日本で」研究すること にはどのような利点や役割がある のだろうか。本特集ではこれらの 問いに対して、様々な分野で活躍 する各研究者に、これまでの経験 や各研究者が現状の変化をどのよ うに捉えているか、その考えを紹 介して頂く。そうした経験や観察 の中から各学問分野において「外 国研究者」が立ち向かっている課 題を直接的に、また間接的に紹介 して頂き、その考えを読者の皆様 にお伝えしたい。 ( あ い ざ わ の ぶ ひ ろ / ア ジ ア 経 済 研究所 法・制度研究グループ)