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公的年金制度と長期的人口変動

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公的年金制度と長期的人口変動

Public Pension Systems and Long-Run Population Change

塚本 純

TSUKAMOTO Jun

1.はじめに

本稿の目的は、公的年金制度に対して、人口の長期的変動が実体経済へ与える影響について分析す ることである。 年金問題を経済学として扱う場合には、制度が個人へ与える影響とそれによりもたらされる個人の 誘因を重視する必要があり、ミクロ的な考察は不可欠である。しかし、それだけでは不十分であり、 マクロ的に考察される必要もある。そのような理論的な分析は、Barr(2002)や Brown(1997)な どにおいて示され、多くの知見が得られている。そのうちのひとつに年金の運用利回りが経済成長率 から独立に決まるわけではないということがある。この点については、高山(2002)が、「社会全体 としての年金積立は個人の年金貯蓄とは異なるのであり、運用利回り不変の仮定は「合成の誤謬」を 犯している」1)とそれまでの結論をまとめている。この事実は、賦課方式の年金制度の場合には理 解しやすいが2)、Barr や 高山 が指摘しているように、積立方式の年金制度であっても成り立つも のであることが知られている。それゆえ、少子化が進行し人口が減少する中で現役世代の負担増加が 問題となる場合においては、賦課方式から積立方式にするというような年金制度の変更によって問題 を解決することは不可能であり、「むしろ生産物の数量をどれだけ増大させることができるかという 問題の方がはるかに重要である」3)という主張が成立する。 ところで、これらの結果は、個別的な貯蓄とそれから得られる所得を社会的に集計することによっ て求められており、生産の側面を考慮はしていない。本稿では、生産を含んだ一般均衡分析によって、 上記の結論について再考察する。成長経済への政策的効果を考察する枠組みとしては、内生的成長を 可能とするモデルを考える。それらにおいて各時点の賃金率はその時点の資本存在量に比例し、この 両者は定常状態においてどちらも同率で増加していく。それゆえ、定常状態であっても個人の生涯所 得は世代ごとにその成長率で増加していく。そして、個人の効用への効果もその増加の影響を受ける ことになり、個人への効果を考察することができるからである。 内生的成長については、Romer(1986, 1987, 1990)が行った一連の研究を契機として、様々な想定 の下にそれが可能となる経済モデルが提示されてきた。労働人口や係数に関する特定の条件を満たし、 持続的成長が可能になる場合について、Barro and Sala-I-Martin(2004)や Jones(1998)などにま

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とめられているが、人口変化を考慮に入れた成長経済のモデルも数多く示されている。そのうち、 Barro and Sala-I-Martin(2004)第6章に示されているように、中間生産物のバラエティが増加する ことが生産性の増加をもたらすという考えを定式化し、技術進歩が製品の種類の拡大という形で現れ るようなモデルがある。最終生産物あるいは労働の投入がストックとして計られる知識を生み出すた めに必要とされると考えるもので、それぞれにおいて特定の技術的条件が満たされるときに人口の変 化を考えることが可能になる。4)基本的には同様の結論となるので、最終財をあらたな知識生産のた めに用いる場合に限定して分析する。このような人口変化を想定できる内生的成長経済のモデルにつ いて、年金制度を組み込んだ形で定式化するのが、2.節である。 対象となるモデルにおいては、与えられた技術その他の条件によりある固定した値に収益率が決ま り、同時にモデルの構造で内生的成長が可能になっている。3.節では、資産の収益率が明示される 状況で、定常的経済成長率の求め方を示す。 以上の予備的考察のもと、人口成長率が異なることが資本の収益率にどのように影響するか、そし て生産の量を示し結果的には個人の効用へ影響を与える成長率にどのように影響するかといったこと について、一般均衡を成立させる状況で家計の貯蓄への影響を具体的に分析しながら述べる。マクロ 的な問題ではあるものの、主要な問題は個人が受け取る賃金率であり、その賃金率に関連する一人あ たり成長率の考察が中心となる。 4.節では、生産に関する技術的条件を満足していることを前提にして年金制度それぞれごとに成 立する成長率を求め、政策導入の効果について考察する。資産の選択に影響を与える政策を行う場合 において、一般的には資産の収益率を変化させる力が働くが、内生的な成長を可能とする状況で貯蓄 に影響を与えるような政策変更は、明示される収益率をとおしてまた直接的に成長率を変化させる。 以上の検討にしたがって、それぞれの年金制度が存在することが成長率にどのような影響を与えるの かを考察するのが第一の論点である。さらに、人口の変化が外生的に生じた場合の均衡の変化を分析 し、人口成長率の違いが成長率に与える影響について考察する。5.節では、積立方式と賦課方式の 年金制度について得られた結果を比較する。そして、異なった年金制度相互の関係に人口変化の与え る影響について考察する。 最後に、6.節で、政策に関して得られた結果を整理し、本稿のまとめとする。

2.モデル

モデルは、内生的成長を可能とする生産関数を定式化し、資産を明示的に含んだ重複世代モデルで ある。内生的成長を可能とする技術的な条件は、Barro and Sala-I-Martin(2004)や 塚本(2007) で示されたような5)特化の経済で考え、かつ以下に示すように、人口の変化を考慮することが可能 な条件を備えているものとする。最終財はすべて同質で、種々の用途に完全代替的に用いられる。ま

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た、公的年金制度を含んでおり、それにしたがって個人および政府に関する予算制約式の定式化がな される。 ○個人の選択 個人に関しては、二期間生存する個人が毎期生まれてきて、重複世代構造を構成している。 期に 生まれる個人を 世代と呼び、各世代の人口が成長率 で変化している場合を考える。 世代の人口 を で表すとき、 (1) となっている。個人の生存の第一期目は労働を供給する若年期、第二期目は退職後の老年期と名付け られる。そして、個人の選好は世代内でも世代間でも同質であることを仮定する。 政府が公的年金制度を運営している経済での個人の行動は、 期における労働賃金率、資産の収益 率をそれぞれ 、 で表すとき、以下のようである。 世代の個人は、若年期に初期保有として与 えられている労働を非弾力的に1単位供給するとする。このことにより受け取る の賃金所得から、 公的年金の保険料(掛金) を政府に支払うとともに、 (≧0)の消費と の貯蓄を選択する。 老年期にはその個人は労働を供給しないものとする。このとき、老年期の個人の所得は、貯蓄からの 収益と元本の合計に政府から受け取る公的年金の給付金 を加えた額である。それを、自らの消 費 (≧0)に充てることになる。 以上で述べた個人の選択は、 世代の個人の若年期と老年期それぞれに関して、以下のような予算 制約式としてまとめることができる。 (2) (3) 世代の個人の効用水準 は、若年期の消費 と老年期の消費 の関数として、 (4) と表される。ここで、 (・,・)は、各要素について連続微分可能かつ厳密に単調増加な準凹関数で あり、またそれはホモセティック、かつ →0のとき →∽、 →0のとき →∽であると仮定 する。 世代の個人は、(2)と(3)の予算制約式の下で、効用 ( , ) を最大化するように、( , , ) を選択する。この最適化問題の解 ( , , ) は、効用関数(4)の下では、一階の条件および 予算制約式(2)と(3)を解くことによって求めることができる。このようにして求めた ( , , ) は、 ( , , , ) の関数として与えられる。 ○政府の活動 公的年金制度については、塚本(2007)と全く同様に定式化される。単純化のために、政府は公的 年金制度を運営することのみを行い、政府は各 期に、年金保険料 を徴収し、公的年金の給付

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金 を給付するものとする。他の活動はせず財・サービスの購入はしないが、必要に応じて政府も 資産を貯蓄することは認める。 期の貯蓄額を と表すとき、その貯蓄からは、( ) 期に収益 と元本の合計 (1+ ) を受け取ることになる。このような政府の行動は、各 期において以下の ような予算制約式としてまとめることができる。 (5) ここで、保険料と給付金については、一人あたりと経済全体の総額に関してそれぞれ、以下の関係 が成立している。 (6) (7) ○生産について 生産に関しては、知識の生産を明示することにより技術進歩をとらえた内生的な成長が可能となる モデルである。Barro and Sala-I-Martin(2004)などによって特化の経済性という概念でとらえられ ており、最終財の生産企業に加えて知識の生産を行う研究企業を考える。詳しくは、塚本(2008) 3-2-2.および 4-2.において述べているが、概略は以下のとおりである。 ○最終財の生産企業 個別的企業の生産関数は、 (8) と与えられているものとする。 期において同一の技術を持つI個の個別的 企業最終財産出量 が、労働の投入量 と、第 タイプの特化された中間財の投入量 から生産される。あらたな知 識が生産されることによってバラエティが増加し、この中間財の個数の増加という形で技術進歩が明 示される。 期の中間財のバラエティを で表すとき、 は知識生産の累積によりストックとして 増加する。 各期の若年期にある個人が労働を1単位非弾力的に供給すると仮定していたから各期の労働供給 は となり、また、労働市場の需給と人口変化の(1)を考慮し、そして以下に示すように、労働は最 終財の生産企業だけが需要するから、 (9) となっている。 第 中間生産物の価格を 、賃金率を とするとき、各企業は、それらをそれぞれの限界生産 物と等しくしなければならないから、 (10) (11) が成立しており、(10)から、以下の中間財の需要関数を求めることができる。

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(12) ○研究企業

タイプのデザインの発明者は 中間財の生産者であり、知識がひとたび発明されると、そのデザ インの発明者が中間財を生産することができるものとする。新たな知識の発見のために、最終生産物 が必要とされると考える。具体的には、Barro and Sala-I-Martin(2004)6.1.7.において示されてい

た想定の変形として、最終財の投入 により知識が / だけ生み出され、 (13) となることを仮定する。労働投入 が与えられているならば に関して収穫一定となるが、他方、 労働投入 に応じて生産性が変化し、知識生産の1単位あたりの費用もそれに応じて となる場 合である。 企業の 期の利潤 は、中間財の需要関数(12)と(9)の = を用いて、 (14) となる。この利潤の最大化を考慮すると、 (15) となり、(15)の右辺は とは無関係だから、 はすべての研究企業ごとに同一である。そして、(12) と(14) は、以下のように中間財 ごとには同一の値となる。 (16) (17) ○生産部門総体としての集計的生産関数 以上で、生産に関する条件をすべて与えた。ここから、塚本(2008)と同様にして、生産部門総体 としてのマクロ的な関係についてまとめ、集計的生産関数を求めることができる。 最終財企業が需要する中間財の総量は、(16)を代入して求めるとき となり、それゆえに、 企業の生産関数 (8)は (18) となる。(18)を合計して最終財の生産量 を求めるとき (19) である。 ここで、 / はすべての 企業について同一だから、(11)は以下のように示すこともできる。 (20) ○一般均衡(発明された知識の資産市場) 家計と生産の条件に加えて、資産保有についての式を考慮するとモデルが完結する。

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発明された知識は、それ以後の各期に最終財の生産企業に販売されることにより、毎期(17)だけの 利潤をもたらす。そのような資産が、市場で流通しているものとする。家計は、 期に資産を購入 し、( ) 期首に保有しようとするが、その存在量は である。 期の収益率を とすると き、 期に存在する 中間財の将来収益 は であるから、 期における資産の市場価格も になる。 は には依存しないから、 もすべて の について同一の値となり、 = と表すことができる。 資産としての発明された知識の価格 については、後に示されるように収益率 は一定となるの で、それを前提として求めると、 (21) となる。(21)で与えられる は、生産技術を表す係数、資産の収益率とともに労働供給の水準 や その増加率 により決定するのであり、それらに応じて変化する。 と それぞれについて、その両 者が増えるときに資産価格は上昇する。 そして、あらたな知識を生み出す費用を が超える限り、知識産業にあらたな新規参入企業が存 在するはずであるから、新規参入が自由であることを仮定するならば、研究企業について想定した仮 定の下では が成立する。それゆえに、 (22) となる。(22)を解いて、収益率 は (23) と求めることができる。(23)において、収益率は技術的な条件によって与えられ、各期ごとに一定と なっている。ただし、その値は労働供給の増加率 に依存し、その数値が上昇すれば上昇する。 家計と政府が ( ) 期首に保有しようとする資産の存在量は であり、また、その資産価格 は となる。その資産の保有は個人および政府が選択する貯蓄によるものであるから、 (24) が成立する。

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このように、個人の最適化問題、生産関数(18)、資産の収益率(あるいはそこから求められる資産 価格)と賃金率の式(23)と(19)、および資本蓄積の条件(24)によって経済の均衡が与えられる。

3.定常状態の経済成長率

次節では、年金制度ごとに成立する成長率を求めるが、比較の基準となる状況として、また単純な 場合での求め方を示すものとして、本節では年金制度が存在しない場合について考え方を述べる。塚 本(2008)4−2.で示したとおりであるが、その概略は以下のようである。 賃金率と資産の収益率を前提に家計の選択について考察するとき、予算制約式(2)と(3)より を消 去し整理すると、 (25) となる。(25)において、(1+ ) は割引要素(利子要素)であり、 で表す。また、右辺の は 世代の個人の生涯所得を若年期の消費財で測った現在価値であ り、 で表す。そして、(4)で与えられる効用関数 ( , ) はホモセティックであると仮定され ていたから、 の選択については と に分解することができるのであり、 (26) と表す。ここで、 は生涯所得 のうち若年期の消費に当てられる比率を示すことになる。効 用関数の条件から、 は連続微分可能であり、また0< <1となっている。 ところで、年金制度がなく =0、 =0となるから、 = であり、(2)より = − で ある。これに、労働期の消費関数(26)と を考慮するとき、貯蓄は以下のようになっている。 (27) 資産保有の式(20)は、自由参入条件(22)と貯蓄を示す(27)を代入して となり、 を示す(18)と を示す(19)を代入して計算すると、 となる。それを解いて、以下の に関する関係式を求めることができる。 (28) (28)を満足するように決定される成長率 にしたがって、 は一定の率で成長する。それゆえ の成長率は、 (29) と表すことができる。生産関数(18)を考慮するとき、 の成長要素 (1+ ) は

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となる。(19)より の成長率は と同率の となるから、( , ) も の率で成長することになる。 であり、収益率は技術的な条件および人口成長 率のみによって与えられていたから、この成長率は、消費関数の形状 と個別的企業の技術条件 の とA、 の値、そして人口成長率 によって決定される。 以上のように、特定の係数が与えられるならば、特化の経済性モデルにおいて内生的に成長する経 路を示すことが可能である。そのときに成立する持続的成長率は、上記のように具体的に求めること ができた。それらは貯蓄関数および最終生産部門と研究部門について与えられる技術的な条件を示す 係数によって決定されている。特徴的なことは、設定として与えられた条件により資産の収益率 が 一定となっており、それらは技術的条件と人口変化率によって決まるということである。そのような 条件を満たす技術的条件が満たされる場合に限定されて、内生的成長が可能になる。そのことを踏ま えつつ、このようなケースに限定されるものではあるが、年金制度が存在する場合に成長率にどのよ うな影響を与えるのかについて次節で考察する。

4.年金制度の存在と成長率

各種年金制度が存在する場合の成長率を求めることにより、年金制度それぞれがもたらす影響につ いて考察する。生産に関する条件、自由参入条件、収益率などを示す式は、年金制度が存在しない場 合について述べた3.節と同一であり、成長率の求め方は同様であるので、それぞれの年金制度につ いての説明と、生涯所得や資本蓄積の式などその存在により異なる点についてのみ触れ、それらの制 度が存在するときに成立する成長率を示す。 年金制度は、塚本(2007)で取り上げた給付金建てと積立金建てそれぞれを積立方式と賦課方式に ついて考え、4とおりの場合について考察する。6)ただし、分析の対象は定常成長する経済に関する ものであり、Saint-Paul(1992)などが指摘しているように、政府が政策によりその定常成長を乱し てはならない。7)各期において政府が、公的年金の給付金 あるいは掛金 を、その期の総産出に 対して一定の率に保つような定常均衡に限定して考察することとする。それゆえ、 を決定する政 策である給付建て(defined benefit plan)の場合には、 を用いて、

(30) のように、他方、 を決定する掛金建て(defined contribution plan)の場合には、 を用いて

(31) のように表記される。

また、公的年金の給付金 について個人がどのように予想するかについて、ふたとおりの考え方 が可能である。その違いに応じて経済成長率が異なる点については、塚本(2007)において既に述べ ているが、本稿では、給付が自らの選択からは独立に定まっていると個人が予想して行動する場合に

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限定する。8)

4−1.積立方式の年金制度とそのときの定常的成長率

積立方式(funded financing)は、若年期の掛金 を政府が貯蓄する年金制度であり、 (32) となる。それを運用し、その元利合計 (1+ ) を老年期に給付する。このような積立方式の年金 制度の下では、政府の予算制約式(5)も、 (33) となる。保険料と給付のどちらを政策的に決定するのかに応じて、(1)給付建てと(2)掛金建て がある。 (1)給付建ての場合の成長率 給付建てであるから、政府は を決定する。ただし、(30)のように = という条件を満足 している必要があるから、実際には を老年期の個人へ給付する政策を採用する。掛金と給付金の間には、(33)の関係が成立するから、 であり、(6)と(7)で示される関係から (34) となる。 以上のことから、積立方式の年金制度の場合には、 (35) であって、 世代の個人の生涯所得は賃金率 そのものになっている。貯蓄に関しては、 (27)' である。(32)を考慮するとき、資産保有の式(20)は (20)' と変わるが、上記年金制度の定式化による変更(35)と(27)'を代入して、 となる。(7)と(34)を考慮し、3.節と同様の計算をすると、ここでも が成立する。 以上のことから、この給付金建ての積立方式の成長率について、上付の で積立方式を、下付の で給付建てを表すとすると、 が一定の率 (36)

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で成長すること、 の成長要素 (1+ ) が と与えられること、一人あたりの成長率として や ( , ) も、 の率で成長することが求まる。 これらの値は、すべて3.節の年金制度がない場合と同様であり、消費関数の形状 と企業の技 術条件の とA、 の値、そして人口成長率によって決定される。 (2)掛金建ての場合の成長率 掛金建てであるから、政府は を決定する。ただし、(31)のように という条件を満足して いる必要があるから、実際に政府は の保険料を徴収する政策を採用する。この場合には、個人への給付金は によって 確定するから、 となる。 と が、それぞれ(35)と(27)'で与えられること、資産保有の式が(20)'で与えられることも同様で ある。その結果、掛金建て( )で積立方式( )の場合の一人あたりの成長率は、 (37) となっている。 において、下付の は掛金建てを意味する。 の成長要素(1+ )は と与えられる。 (3)成長率の比較と人口変化の影響 以上の結果は、給付金建ておよび掛金建ての場合について、それぞれ と の値にかかわらず常に 成立することであり、年金制度が導入されることにより直接的には成長率に影響が出ることはない。 年金制度の導入は、資産収益率の変化をとおして成長率に影響する可能性があるが、(23)にあるよう にその収益率は技術的な条件および人口成長率のみによって与えられていたから、積立方式の年金制 度は存在したとしても経済の実態には影響しないことが分かる。人口の変化を考えたとしても塚本 (2006,2007)で示したような中立性が成立するのである。 ただし、人口成長率が異なることは、収益率の違いをとおして一人あたりの成長率 や に影響 する。これを調べるために、 を計算すると、 (38) である。ここで、若年期消費の利子要素弾力性 (ε) が重要である。 であるから、ε>0ならば であり、ε<0ならば とな

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る。 若年期消費の利子要素弾力性が負ならば、人口成長率 が低くなることにより一人あたりの成長 率 が低くなり、逆に人口成長率 が高くなるとき一人あたりの成長率 が高くなる。利子要素弾 力性が正ならば逆の結果で、人口成長率 が低くなることにより一人あたりの成長率 が高くなる。 少子化で人口が減少する場合に成長率が低くなりそれゆえに個人に不利になる場合が、利子要素弾力 性が負という条件の下で成立するのである。ただし、年金制度が存在することによるものではない点 には注意する必要がある。(38)は、βに依存することなく成立する式であり、以上のことは掛金建て の場合においても全く同様に成立すると同時に、年金制度が存在しなくても成立するのである。

4−2.賦課方式の年金制度とそのときの定常的成長率

賦課方式(pay-as-you-go financing)は、年金の掛金 をその期の給付金 に充てる制度である。 それゆえ、政府は貯蓄せず、各 期において、 =0である。そのような完全な賦課方式の下では、 政府の予算制約式(5)は、 (39) となる。積立方式の場合と同様に、年金制度が経済成長率にもたらす影響について、(1)給付金建 ての場合と(2)掛金建ての場合の両方について考察する。 (1)給付建ての場合の成長率 給付建てであるから、政府は を決定し、実際には を老年期の個人へ給付する政策を採用する。そして賦課方式であるから、年金給付額 に相当する 掛金 を徴収するので、(39)が成立している。個人の保険料は となる。それゆえに個人にとっての運用利回りは、 の成長要素 を用いて、 (40) となっている。 賦課方式の場合には、生涯所得を示す式は複雑となり、 (41) のように与えられる。貯蓄に関しては、 (27)" となっている。 =0より、資産保有の式(20)は以下のようになる。 (20)" このような年金制度の定式化による変更を加えると、

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であり、計算すると (42) となる。これまでと同様に考えて、 は給付金建て( )で賦課方式( )の場合の一人あたり成 長率を表すことになる。ここで、上付の は賦課方式を意味する。 なお、 の成長要素 は、以下のように与えられる。 (2)掛金建て(みなし掛金建て)の場合の成長率 掛金建てであるから、政府は を というように決定する。 世代の個人は、若年期においてこれだけの保険料を負担する。この場合に は、徴収した掛金を政府が実際に運用するわけではないから、みなし運用利回りを計算する基準が問 題となる。本稿では、経済成長率を基準として年金の運用利回りを設定することとする。すなわ ち、 で掛金建て( )で賦課方式( )の場合の一人あたり成長率を表すとき、(1+ ) (1+ ) で利回りが計算される。9)それゆえに、各個人は だけ受け取ることになる。給付の総額は となり、 が成立している。 =0であるときに政府の予算制約式(5)が成立している。 以上のような年金制度が存在するときの、 世代の個人の生涯所得は、 (41)' となり、貯蓄は(27)"で与えられ、資産保有の式は(20)"である。 以上の前提があるとき、(1)の給付金建ての場合と全く同様に計算することができて、一人あた り成長率は (43) で、 の成長率( )は で与えられる。

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(3)成長率の比較と人口変化の影響 以上の給付金建ておよび掛金建ての場合について導かれた結果は、β = γのときには、全く同様 の結論となる。(42)と(43)からただちに分かるように、年金制度が導入されることにより直接的に成 長率に影響が出てくる。年金制度が存在しない場合との比較では、一人あたりの成長率については (29)との比較になるが、給付金建てと掛金建てそれぞれの場合に、βとγの大きさとは無関係に となっている。賦課方式の年金制度が存在することは経済の実態に影響するのであり、存在しない場 合に比較して一人あたりの成長率そして経済成長率を低下させることが分かる。人口の変化を考えた としても塚本(2006, 2007)で示したのと同様な結果を得ることができる。 さらに、人口成長率が異なることは、収益率の違いをとおして一人あたりの成長率 や に影響 する。これを調べるために を計算すると、 (44) である。ただし、 としている。 と を考慮するとき、ここでも、 若年期消費の利子要素弾力性 (ε) に依存している。ε>0ならば <0であり、 ε<0ならば >0である。 若年期消費の利子要素弾力性が負ならば、人口成長率 が低くなることにより一人あたりの成長 率 が低くなり、逆に人口成長率 が高くなるとき一人あたりの成長率 が高くなることを示して いる。このように、賦課方式の年金制度の場合についても、人口成長率が経済成長へ与える効果につ いては、積立方式と全く同様な結果を示すことができる。 (44)の結果は、βをγに変えることだけで、掛金建ての場合においても全く同様に成立する。

5.積立方式と賦課方式の比較について

前節で見たように、積立方式の場合の一人あたり成長率が給付金建てでは(36)、掛金建てでは(37) で与えられ、どちらにおいても年金制度が存在しない場合の成長率と同一であるのに対して、他方、 賦課方式の場合には、成長率が年金制度がない場合の成長率よりも低くなる。このことから、 が成立している。積立方式と賦課方式とを比較するときには、一人あたりの成長率を考える限り積立 方式の方が高く、塚本(2006)命題3および 塚本(2007)命題6が、人口の変化を考慮したときに も成立しているのである。したがって、この点では積立方式の方が望ましい制度であるということに

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なる。 最後に、この関係が人口成長率の相違によってどのような影響を受けるのかについて考察する。給 付金建ての場合に を求めるとき、 となる。そして、 (45) となっている。 以上の結果は、若年期消費の利子要素弾力性 (ε) に依存している。ε>0ならば(45)の値は正にな り、ε<0ならば負の値になる。すなわち、若年期消費の利子要素弾力性が負ならば、人口成長率 が低くなるとき、積立方式でも賦課方式でも成長率を低くする要因になるが、この場合には賦課方式 の方がより多く低下することになる。逆に、若年期消費の利子要素弾力性が正ならば、人口成長率 が低くなるときにその差が縮小することになる。 (45)の結果は、βをγに変えることだけで、掛金建ての場合においても全く同様に成立する。

6.まとめ

人口変化を想定できる内生的成長経済のモデルについて年金制度が存在する場合に成立する一人あ たりの経済成長率について考察した。具体的に定常的経済成長率を求め、人口が変化したときの一人 あたり成長率への影響を求めた。各種年金制度において成立する定常成長率の大きさに関しては、人 口成長がない場合にこれまで得られていた結論と同様なものとなる。問題は人口変化の大きさが成長 率に与える影響である。それは、積立方式の場合でも賦課方式の場合でも同様な結論を導くことがで きるのであり、若年期消費の利子要素弾力性を基準として整理することができた。すなわち、若年期 消費の利子要素弾力性が負ならば、人口成長率が低くなることにより一人あたりの成長率が低くなり、 逆に人口成長率が高くなるとき一人あたりの成長率が高くなるということであった。利子要素弾力性 が正ならば逆の結果となる。 少子化で人口が減少する場合に一人あたりの成長率が低くなり、それゆえに個人に不利になる場合 が利子要素弾力性が負という条件の下で成立するのである。そして、若年期消費の利子要素弾力性が 負ならば、人口成長率 が低くなるとき、積立方式でも賦課方式でも成長率を低くする要因になる が、この場合には賦課方式の方がより多く低下することになる。年金制度が存在しない場合でも不利 に働く影響が、賦課方式ではより加速され、この点で深刻な影響を受けることになる。 求められた結果を現実に適応して判断するときに問題となることは、若年期消費の利子要素弾力性

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が果たして負であるかどうかという点にある。もし仮に、弾力性が正であるならば、人口成長率が低 くなることによりむしろ一人あたりの成長率が高くなり、個人にとっては有利に働くのである。そし てこの場合には、積立方式と賦課方式とで成立する成長率の差が縮小することになる。人口減少を理 由に賦課方式を否定する主張は成り立たなくなる。具体例として効用関数をコブダグラス型で考える ときには、中間のケースであって弾力性は0となる。実証的に検証される必要がある若年期消費の利 子弾力性の数値については、今後の課題とする。 さらに、以上は代表的だと考えられる単純な年金制度について示したものに過ぎない。とくに、掛 金建ての賦課方式の場合には、年金の運用利回りをどのように設定するかという問題がある。経済成 長率以外を基準として想定することも可能である。また、自らの行動が将来の年金給付に与える影響 についても、異なった想定が可能である。それらの場合には別な要素が入ることとなり、塚本(2007) で述べたのと同様な変更が結果にもたらされることになる。 また、内生的な成長を可能とするような特定の技術的条件が与えられていることが、本稿の前提で あった。Jones(1995, 1998)などが問題としているように、あらたな知識を生産するための生産性 が の蓄積により逓減していくときには、そのような条件の変更のみによって全く異なった状況に なる。塚本(2008)4−3.で示されたように、そのような場合には、定常状態の成長率は人口成長率 などの限られた条件によって決定される。それゆえ、政策変更があったとしても、そこで起きる貯蓄 の変化がもたらす資産選択への影響が収益率を変化させ、さらなる貯蓄の調整をもたらすことになり、 調整の総合的結果として成長率は変わらないことになってくる。このような場合には、政策変更がも たらす成長率への影響は問題とはならない。他方で、定常状態の収益率は変化しており、所得や消費 の水準は政策変更以前のものとは異なり、各世代の個人の効用へ影響する。 以上2点については本稿で取り上げた範囲をこえる問題であり、今後の課題とする。

1)高山(2002)2. 3 ② 参照。 2)Samuelson(1958)や Aaron(1966)が社会保障のパラドックスと指摘していた、賦課方式の有利可能性の問 題である。 3)高山(2002)2. 3 ② 参照。 4)塚本(2008)4−2.参照。

5)Barro and Sala-I-Martin(2004)6. 1. 7.と 塚本(2007)4−2.参照。 6)それぞれの年金制度の考え方については、塚本(2007)3−1.参照。 7)Saint-Paul(1992)p. 1249 参照。

(16)

った成長率を得ている賦課方式の場合の 4−2.を参照。 9)賃金上昇率を基準としてみなし運用利回りを計算することが、ひとつの方策である。年金改革先進国のひと つであるスウェーデンの事例でも、賃金率にスライドさせた制度をとりつつあり、そのような想定をする方 が現実問題としては合理的である。ただし、本モデルにおいてそのような想定をするときには、年金保険料 と給付の間で過不足が生じ、その対処をどのように定式化するかという問題が生ずる。過不足への対応に関 しては、異なった状況についてではあるが、塚本(2007)4−2.においてひとつの考え方を述べている。

文  献

Aaron, Henry(1966)“The Social Insurance Paradox,”Canadian Journal of Economics and Political Science, Vol. 32, pp. 371-374.

Barro, Robert J. and Xavier Sala-I-Martin(2004)Economic Growth, Second ed., MIT Press.

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高山 憲之(2002)「最近の年金論争と世界の年金動向」 『経済研究』Vol. 53, No. 3, pp. 268-284. 塚本 純(2006)「公的年金制度のマクロ経済へ与える長期的効果」 『宇都宮大学教育学部紀要』第56号第1部、 pp. 65-78。 塚本 純(2007)「掛金建て公的年金制度と長期均衡」 『宇都宮大学教育学部紀要』第57号第1部、pp. 83-102。 塚本 純(2008)「内生的経済成長の類型と政策の効果−家計の選択へ影響を及ぼす政策を分析するにあたって−」 『宇都宮大学教育学部紀要』第58号第1部、pp. 99-116。

参照

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