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市立小・中学校における病弱児への支援に関する一考察 ―養護教諭に対する調査を中心に―

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宇都宮大学教育学部研究紀要

第66号 第1部 別刷

平成28年(2016)3月

市立小・中学校における病弱児への支援に関する一考察

―養護教諭に対する調査を中心に―

池 本 喜代正

森 田 友 恵

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市立小・中学校における病弱児への支援に関する一考察

―養護教諭に対する調査を中心に―

in Elementary and Junior High Schools:

A Survey of School Nurses

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概要(Summary)

通常の学級に在籍する病弱児の実態を把握するために、U市を対象として小学校68校、中学校25 校に対して郵送による質問紙法調査を実施した。調査期間は2015年2月であり、回答は養護教諭 に依頼した。回収数(回収率)は、小学校53校(77.9%)、中学校17校(68%)であった。小学校 では慢性的な疾病で、通院・投薬などの診療を継続的に受けている児童は、1,301名(6.2%)、慢 性的な疾病で、通院・投薬などの診療を継続的に受けている生徒は、434名(5.4%)であった。こ れは、他の実態調査結果と比べ、ほぼ同様な数値である。また、病弱児が在籍していた学校での養 護教諭の経験があるという回答は、全体では75%であり、児童生徒本人から、悩みや相談を受け たことがある養護教諭は小学校39%、中学校では54%であった。学校として病弱児に対して特別 な配慮と支援を行っていることは今回の調査結果からも窺えるが、多様な学びの場の保障という観 点では通常の学校で学ぶ病弱児に対して多面的な支援が必要であることが指摘できる。 キーワード:病弱児、慢性疾患、養護教諭、教育支援、通常の学校

1. はじめに

特別支援教育は、障害による生活や学習上の困難を改善又は克服するために適切な指導や必要な 支援を行う教育であり、通常の学級に在籍する障害(病弱・身体虚弱を含む)を有する児童生徒を も対象にしている。そして実際、小中学校等の通常の学級には、慢性疾患や精神疾患等のため教育 上の支援や配慮を必要とする多くの児童生徒が在籍している。 小・中学校に在籍する病弱の児童生徒については、医学の進歩に伴って入院期間の短期化や、病 気の児童生徒の実態の多様化、そしてプライバシーの問題から保護者が学校に告げていない場合も 多く、その実態の把握が困難な現状がある。従って、全国的な実態把握はなされていないが、状況 を推察するデータとして、厚生労働省や文部科学省によるデータがある。厚生労働者は、3年ごと に「患者調査」を実施しており、2011年のデータでは入院している患者数は、5~9歳が5,600人、 10~14歳が5,700人、15~19歳が7,500人、これら(ほぼ学齢期に該当)を合わせると18,800人とな †宇都宮大学 教育学部(連絡先:[email protected] 池本喜代正) ‡宇都宮大学 大学院 教育学研究科

市立小・中学校における病弱児への支援に関する一考察

─養護教諭に対する調査を中心に─

A Study on Support to Children with Health Impairments

in Elementary and Junior High Schools:

A Survey of School Nurses

池本 喜代正

, 森田 友恵

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る。また外来患者の数は、5~9歳が253,000人、10~14歳169,100人、15~19歳120,200人であり、 合計は542,300人となる。入院患者の病院での平均在院日数を見るならば、5~9歳は8.1日、10~ 14歳11.7日、15~19歳12.7日であり、以前と比べると年々入院日数が減少している。院内学級ある いは特別支援学校分教室がある病院に入院しても、院内学級への転校手続きをする間なく退院する 児童生徒が多いことが推測されるところである。そして、2011年度に病弱特別支援学校や病弱・ 身体虚弱特別支援学級に在籍していた児童生徒数は、4,980名であり、入院した児童生徒数と比し て非常に少ない割合であることが指摘できる。 また、病気の子どもに関するデータとして重要なものが、厚生労働省の小児慢性特定疾患治療研 究事業の調査結果である。小児慢性特定疾患治療研究事業は18歳未満(引き続き治療が必要であ ると認められる場合は、20歳未満)、11疾患514疾病を対象としており、2010年度では109,724名が 給付人員となっている。この対象には、心身症や精神疾患などは含まれておらず、すべての病気の 子どもの実態ではないが、この数値からも通常の学級に在籍する病気の児童生徒の割合が高いこと が推測できる。 文部科学省では、毎年「学校保健統計調査」を実施しており、小・中学校等の児童生徒の健康状 態について実態を把握している。むし歯、アトピー性皮膚園、喘息、視力、心電図異常、蛋白検出 のもの、耳疾患などが調査対象であり、2014年度の結果によれば、小学校児童ではアトピー性皮 膚炎は3.22%、喘息は3.88%、心電図異常は2.34%、中学校生徒ではアトピー性皮膚炎は2.52%、 喘息は3.03%、心電図異常は3.33%である。これらの者すべてが、継続的に医療が必要な病弱者で あるとは言えないもののかなりの数値である。 上記の調査は子どもの病気に関して各省による調査であるが、特別支援学校(病弱)及び病弱・ 身体虚弱特別支援学級における病弱教育を受けている児童生徒の病類調査が、全国特別支援学校病 弱教育校長会及び全国病弱虚弱教育研究連盟によって隔年で実施されている。2013年度の病類調 査の結果から、日下(2015)は病類別に特別支援学校(病弱)の在籍者数を補正すると、7,318名 であるという結果を示している。一方、文部科学省の学校基本調査のデータによるならば、2007 年度以降複数の障害種を対象とする特別支援学校ではそれぞれの障害種ごとに人数を重複してカウ ントするようになったため、2006年度特別支援学校(病弱)の在籍者数は4,190人であったのが、 2007年度には18,919人と数値的に急増し、それ以降はほぼ横ばいとなっている。2015年度学校基 本調査では、特別支援学校の障害種別の学校数・在籍者数として報告され、61校・2,462人となっ ている。 以上、見てきたように、特別支援学校(病弱)や病弱・身体虚弱特別支援学級において教育を受 けている児童生徒は、病気を有する児童生徒のほんの一部にすぎない。通常の学級で学んでいる児 童生徒数が多いという実態やその子どもたちに対する支援の問題については、先行研究でも多く指 摘されていることである。武田(2012)は、小児慢性特定疾患対策調査結果をもとに小児慢性特 定疾患の約85%の児童生徒が通常の学校で学んでいることを指摘している。また、筆者(2009)も 通常の学級における病弱教育の課題について言及したことがある。そして、日下(2015)は、全 国病類調査をもとに病弱教育の現状について分析しているが、それを通して病弱教育の現状を把握 するには小・中学校の通常の学級までを包括する実態把握が必要であると指摘している。 通常の学級に在籍する病弱の児童生徒の中には、病気による入院や通院のために学習に空白が生 じたり、学習活動に参加が制限されたり、また人間関係にも影響するなど、学校で特別な支援・配

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慮を必要とする者は少なくない。しかし、通常の学校に在籍する病弱の子どもの実態は、プライバ シーの問題があり、保護者が学校に伝えていなかったり、病気により不登校になったりする場合も 少なくなく、正確に把握することは困難である。 通常の学校に在籍する病弱児の実態調査としては、猪狩・高橋(2001)、猪狩・高橋(2002)、 猪狩(2008)、秋田県(2009,2014)などがあるが、必ずしも多くない。 通常の学校に在籍する病弱児への支援体制に関する先行研究としては、角掛(2009)が慢性疾 患児の保護者を対象に子どもと担任・養護教諭との関わりについて面接調査を実施しているが、心 疾患や腎疾患などの子どもが対象であり、喘息やアレルギー疾患などの慢性疾患の子どもが対象に なっていないという点で検討の余地がある。また、吉川(2007)や葛西(2008)、工藤・横田(2008) など養護教諭の慢性疾患の子どもに対する支援に関する研究もあるが、研究数としては少ない。 そこで本研究では、通常の学級に在籍する病弱児の実態を明らかにするために、中核市であるU 市の小・中学校を対象とし、そこに在籍する病弱児の病類や、学校での対応や支援のあり方につい て検討することを目的とする。

2. 方法

U市の小学校68校・中学校25校に対して、郵送による質問紙法調査を実施した。調査期間は、 2015年2月である。回答は、養護教諭に依頼した。なお、本調査で対象とする病弱児(身体虚弱 児を含む)とは、「慢性の心臓・肺・腎臓などの疾患で、継続して治療もしくは生活規制の必要な 子どもとし、肢体不自由児や発達障害児は除く(ただし、医療的ケアを必要とする肢体不自由児は 含む)」と規定した。

3. U市立小・中学校における病弱児の実態について

(1)結果 調査用紙の回収数(回収率)は、小学校53校(77.9%)、中学校17校(68%)であった。このう ち小学校2校は、数の未記入があったため本結果には含まないこととした。 これらの結果を、Table1 ・2に示す。なお、各学校の児童生徒数は、学校が特定されることが ないように100人台、200人台と記載している。 小学校の学校規模は、67名から935名であり、51校の全児童数は、20,999名である。このうち、 心臓病や腎臓病、アレルギー疾患、心身症等、何らかの慢性的な疾病で、通院・投薬などの診療を 継続的に受けている児童は、1,301名(6.2%)との回答があった。その内訳は、アレルギー等(喘 息・アトピー・食物アレルギー等)800名、起立性調節機能障害11名、心身症(うつ病・摂食障害・ 統合失調症等)8名、慢性呼吸器疾患(喘息を除く)0名、慢性心疾患325名、糖尿病9名、悪性 新生物2名、てんかん87名、その他58名であった。 中学校の学校規模は、194名から711名であり、17校の全生徒数は8,012名である。このうち慢性 的な疾病で、通院・投薬などの診療を継続的に受けている生徒は、434名(5.4%)であった。内訳 は、アレルギー等(喘息・アトピー・食物アレルギー等)139名、起立性調節機能障害16名、心身 症13名、慢性呼吸器疾患0名、慢性心疾患106名、糖尿病3名、悪性新生物2名、てんかん34名、 その他18名であった。

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 5 2 0 2 0 1 3 0 4 0 2 0 1 0 4 0 0 0 0 0 1 0 15 0 0 0 0 0 0 5 0 1 0 2 0 1 5 0 0 1 0 0 1 0 0 2 0 0 0 0 0 58 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 6 5 0 2 3 7 2 0 1 2 4 7 0 2 0 1 3 3 5 2 2 1 3 0 0 2 3 2 0 3 1 0 0 2 0 1 3 0 0 2 0 1 2 1 0 0 3 0 0 0 0 87 0 1 2 0 0 0 2 1 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ‒ 0 0 0 0 9 28 2 22 0 12 12 23 0 7 0 21 0 0 15 9 0 15 0 19 14 11 0 15 16 6 10 11 0 0 9 2 5 0 5 0 0 6 4 0 1 0 0 8 2 0 3 0 10 2 0 0 325 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 1 2 0 1 1 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11 48 5 ‒ 2 5 55 35 0 11 25 42 85 0 2 18 0 30 0 12 30 28 10 19 17 52 18 9 0 0 26 58 5 0 39 0 1 29 6 0 5 20 0 6 26 1 2 14 3 1 9 0 800 88 17 24 7 21 75 67 1 30 28 70 94 1 19 31 1 51 4 36 46 52 11 56 34 58 30 23 2 0 43 61 12 0 48 0 3 46 10 0 9 20 1 17 29 1 6 17 13 3 9 0 1301 900 900 700 700 700 700 700 600 600 600 600 500 500 500 500 400 400 400 400 400 400 400 400 400 400 300 300 300 300 300 300 300 300 200 200 200 200 200 200 200 200 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 20999 Table1 U市の各小学校における病弱児の実態

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表に見るように、学校によって、慢性的な疾病で、通院・投薬などの診療を継続的に受けている 児童生徒の数・割合は大きく違いがある。「いない」と回答した学校も少なくない。慢性的な疾病 で、通院・投薬などの診療を継続的に受けている児童生徒の割合が、10%を超える学校は、小学 校では14校(27%)、中学校では2校(12%)である。当然ながら、学校規模と病弱児童生徒の割 合の相関性は考えられないが、大規模な学校では病弱児の数も多くなっており、養護教諭をはじめ とする教員の支援も多大であると言える。 疾患・疾病別で見るならば、アレルギー疾患(小3.8%、中1.7%)が最も多く、心疾患(小1.5%、 中1.3%)、てんかん(小0.4%、中0.4%)、その他の順となる。その他の疾患・疾病は、原発性硬化 性胆管症・全身性エリテマトーデス・筋無力症・ウィルソン病・ギランバレー症候群・ネフローゼ 症候群・急性リンパ性白血病・若年性リュウマチ・潰瘍性大腸炎・若年性突発性関節炎・ターナー 症候群など多岐にわたる。疾患・疾病別に見た小学校と中学校との相違点としては、起立性調整機 能障害は、中学校が小学校の約4倍の数値となっている。心身症も数は少ないが、中学の数値が高 い。一方、アレルギー等は小学校が中学校の約2倍である。 医療的ケアの必要な児童生徒は、小学校では4名、中学校は0名であった。その介助としては保 護者1名、養護教諭1名、自分でできるものが2名である。 (2)考察 学校によって病弱児の割合が大きく異なることについて考察しておこう。慢性的な疾病で、通 院・投薬などの診療を継続的に受けている児童が3名以下と答えた学校は13校(25%)であり、 少ない数ではない。これは回答者によって、「疾病」「疾患」の概念の範囲が異なっていたと思われ 1 700 2 600 3 600 4 600 5 600 6 600 7 600 8 500 9 400 10 400 11 300 12 300 13 300 14 200 15 200 16 200 17 100 8012 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 2 1 1 0 2 2 0 0 1 0 0 1 0 0 18 0 5 1 2 2 0 4 3 3 5 0 0 4 0 3 2 0 34 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 3 0 23 0 21 1 0 0 14 3 16 3 0 7 5 0 8 5 106 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 1 2 0 13 1 3 1 0 1 0 0 1 3 1 1 0 0 0 1 2 1 16 0 15 2 10 3 0 32 3 7 41 0 0 13 0 5 7 1 139 1 160 6 36 8 2 36 24 19 64 5 2 24 6 13 21 7 434 Table2 U市の各中学校における病弱児の実態

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る。質問紙では、「継続的な治療または生活規制が必要」と規定していたが、保健調査票に基づい て厳密に捉えた場合や学校医の内科検診で指摘されたケースのみを挙げた場合など、回答にずれが あるとしか思えない。特に心疾患では、数値に幅があり、多い学校では「要経過観察」「定期的な 受診」も含まれた数値と思える。またアレルギーも、食物アレルギー・アレルギー性鼻炎などを含 むか否かによって差異が生じていると考えられる。喘息については、本来「呼吸器疾患」に該当す るが、小・中学校ともゼロとなっている。これも質問の問題があったかもしれない。保健調査票そ して学校医の診断に基づいた回答をお願いすべきであったと言える。だが、他の疾患・疾病の項目 は学校での健康診断においても明確になるもので、学校から報告された数値の信頼性はかなり高い と考える。継続的な治療を受けている児童生徒の割合は、小中全体では6.0%であり、アレルギー 等を除いた割合は2.7%である。秋田県の調査は、小児特定疾患に限って調査したものであるが、 継続的な診療を受けている児童生徒の割合が、小学校では3.0%、中学校では2.1%という結果で あった。今回の結果もほぼ同等な数値である。病弱児の割合は、通常の学級にいる行動・学習上に 困難がある児童生徒の割合6.5%に匹敵する数値であり、学校のみならず他機関との連携を含め組 織的な支援方法を講ずる必要がある。

4. 病弱児に対する支援状況について

(1)結果 これまで「病弱児が在籍していた学校での養護教諭の経験がある」という回答は、小学校37名 (54.4%)、中学校15名(88.2%)であり、全体の75%であった。定期的に通院している児童生徒本 人から、悩みや相談を受けたことがあるかに関して、「よくあった」「時々あった」と回答した割合 は小学校39%に対して中学校では54%と、中学校の方が高い結果となった。保護者から悩みや相 談を受けたことがあるかに関しては、「よくあった」「時々あった」と回答した割合が小学校46% に対して中学校56%と、こちらも中学校の方が高い割合であった。具体的な相談内容としては、 小学校では児童本人・保護者共に「病気に関すること」が最も高かったのに対し、中学校では生徒 本人からは「生活規制に関すること」「学習に関すること」が、保護者からは「病気に関すること」 が最も高かった。 2014年度に入院により7日以上欠席した者がいる学校は、小学校24校、中学校11校であった。 その入院期間中の児童生徒の担任との関わりは、小学校では「病院への訪問」が最も多く、中学校 では「プリント教材等の配布」が最も多い結果となった。「その他」においては、保護者との話し Fig.1 入院中の児童生徒の担任との関わり(複数回答可)(小24校、中11校) 学級の児童生徒 との人間関係に 関する配慮 その他 小学校 中学校 プリント教材等 の配布 学級通信等 おたよりの配布 病院への訪問 (3回以上) 病院への訪問 (1〜2回程度)

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合いや、県外の病院へ入院する児童に対して事前に訪問した、等の記述がみられた(Fig.1)。 退院時の担任および養護教諭の対応としては、小学校・中学校ともに「保護者との話し合い」が 最も高い結果となった(Table3)。 Table3 担任時の担任及び養護教諭の対応(小24校、中11校)  退院時の対応 小学校 中学校  保護者との話し合い 20 9  連絡帳など書面を通して保護者とやり取り 8 2  医療機関との話し合い(カンファレンス) 6 0  特になかった 0 0  その他 4 2 (2)考察 学校における病弱児への支援として、自由記述において多かった指摘は、子どもの心のケアに関 する内容、校内での組織的な対応に関することと医療的ケアに関することである。医療的ケアに関 する課題は「①実施者の問題、②実施場所の問題、③学校でできることとできないことの区別」の 3点に集約される。通常の学校における医療的ケアに関して、大阪府では小中学校において看護師 の配置を進め、医療的ケアを必要とする児童生徒が地域の小中学校において学ぶことができる体制 を整備する「市町村医療的ケア体制整備推進事業」を2006年から開始している。しかし他自治体 において同様の事業は見受けられず、U市においても医療的ケアの実施に関して導尿などを保護者 に依頼している現状がある。なお来年度以降、合理的配慮の義務化により変化の可能性があろう。 学校現場においては、養護教諭を始め教員が病弱児に対しても特別な配慮と支援を行っているこ とが今回の調査結果からも窺えたが、通常の学校で学ぶ病弱児に対して多面的な支援が必要である ことが指摘できる。そのためには教員に留まらず、SCやSWなどの外部機関も交え、各専門性を活 かしながら病弱児への支援をコーディネートする体制を構築する必要がある。

5. 外部機関からの支援について

小中学校に病弱児がいる場合、「どのような外部機関からの支援が必要だと思うか」と問いに対 する回答は、以下のようになった(Fig.2)。 小・中学校共に「保護者の協力」「医療機関からの情報提供・連携」が、強く求められている。 次いで「学校医との連携」「病弱特別支援学校からの巡回指導・情報提供」「スクールカウンセラー の支援」などである。児童生徒にとって最も身近であり、状態をよく把握している保護者や、主治 医との連携を重視する傾向が見られる。「その他」の項目には、「病弱児といってもその子によって 異なるため、その都度変わってくると思うので、臨機応変になるかと思う」との回答や、「ソーシャ ルワーカー」などの回答があった。 「病弱特別支援学校からは、どのような支援があればいいと思うか」(複数回答可)については、 小・中学校ともに「学校生活上の留意点」の項目が最も高く、次いで「児童生徒の指導に関する 情報提供」「病気に関する情報提供」と続いた。「その他」は、「個々のケースによって違うと思う ので、支援してほしいときに、気軽に相談できる体制」「職員研修時等に外部講師として来校して

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いただく→全職員で理解を深めるために、支援例や情報を伝授してもらう」等が記されていた。病 弱特別支援学校のセンター的機能としては、大阪府で「支援教育地域支援整備事業」が平成18年 度より実施されている。これは、府立特別支援学校及び小中学校教員の中から、府が養成したリー ディングスタッフ等を活用し、地域の小中学校等への巡回相談を充実させるために、教員が相談事 業に従事している時間の一部に非常勤講師を配置するものである。府内の特別支援学校では、呼吸 器・アレルギー医療センターと連携を図り外来教育相談を行っている。対象は幼児・小学生・中学 生・高校生など年齢範囲が広く、本人や保護者の相談に応じている。相談者の居住地は府内だけで なく、ときとして近隣府県に及ぶこともある。 本人や保護者の困り感を受け止め、必要に応じて 医療機関等の関係機関に繋げるというという点で成果が見られている。また、西牧(2010)は小 児慢性特定疾患データベースを活用し、特別支援教育関連の統計精度が高まるとともに、その波及 効果として特別支援学校(病弱)のセンター的機能を生かし、通常の学校に在籍する病弱の児童生 徒への支援が進んだことを報告しているが、実際のところ病弱特別支援学校が通常の学校に在籍す る病弱の児童生徒に対してのセンター的役割はいまだ十分ではなく、今後の進展が期待されるとこ ろである。 養護教諭の先生方に、今後病弱児に対する対応上の課題や学校体制の課題について自由記述で回 答をしていただいた。その結果をカテゴライズし、Table4に示す。 Table4 今後必要と思われる対応 カテゴリー 回答数 具体的な回答(一部) 子どもの心のケアに関すること 5 児童の不安やストレスを受容し、共感する。 校内での組織的な対応に関する こと 4 担任や養護教諭だけでなく、教職員全員が児童に対する理解を深め、必要な声かけ等を行う。 医療的ケアに関すること 4 児童・保護者が必要として、学校に依頼してくる内容が、通常の支援以上の内容で、物質的・人員的に無理 だったり医療行為を依頼されたりということがあった。 学校での指導に関すること 3 クラスの受け入れ態勢 情報共有に関すること 3 情報が担任と保護者でとまっているものもあった。 対応マニュアルに関すること 3 緊急時の対応について、個別のマニュアルの作成と活用のしかた。 Fig.2 小中学校に病弱児がいる場合、どのような外部機関からの支援が必要かと思うか (複数回答可) わからない なくてもよい その他 家族へのアドバイス 学校生活上の留意点 児童生徒の指導に関する情報提供 病気に関する情報提供 メールでの相談 電話での相談

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個別の事例について 3 欠席の多い生徒、不登校の生徒で起立性調節障害と診断され、通院していたが、薬の効きが悪い(効果がな い)と言って、通院をやめてしまう生徒が多い。 養護教諭同士の引継ぎに関する こと 2 養護教諭が変わる時の引き継ぎも大切だと思う。 保護者対応に関すること 2 保護者との連絡を密にし、生徒が困らないよう配慮している。 関係機関との連携に関すること 2 病を理解し、個に応じた対応策については、専門的な立場からのアドバイスを受け、困った時には直ぐに相談 できるネットワークがあると、学校側も心強いと思う。 学習空白に関すること 1 長期入院による学習の遅れ 病弱児のきょうだい支援について 1 保護者との連携や本人への支援も重要だが、その兄弟に対する支援や配慮も重要だと感じた。 保健室の体制について 1 支援する側(特に養護教諭)の時間的余裕のなさが一番の問題。大規模校になればなるほど、保健室来室者 が多くなるが、ほとんどの学校で養護教諭は一人。 養護教諭の専門性の向上 1 生徒が安心して元気に学校生活を送れるように養護教諭の専門性を高めていけるような研修や講話などがあ るといいと思う。 自由記述の回答数は、必ずしも多くはないが、校内での対応や指導に一貫性・継続性のある組織 的な対応の必要性が指摘されている。養護教諭のみならず、他の教師が病気の児童生徒について十 分に理解し、メンタルな面での支援も求められるところである。学校におけるきょうだい支援につ いても(1名からであるが)、非常に重要な指摘である。障害児のきょうだいと同様に、病気の児 童生徒のきょうだいに対する支援・配慮が今後求められる。

おわりに

本研究では、ある中核市を対象として、小・中学校の通常の学級に在籍する病弱の児童生徒の実 態とその支援について検討した。その結果、本調査においても先行研究と同様に、約6%の児童生 徒が病気のため「通院・投薬などの診療を継続的に受けている」状況が明らかになった。この数値 は通常の学級における行動上・学習上の困難を生じている発達障害児の割合である6.5%に匹敵す る数値であり、通常の学級に在籍する病弱の児童生徒への支援について学校として組織的な対応を 講じる必要がある課題だと言える。病気の児童生徒への特別な配慮や支援は、学級の担任や養護教 諭に限られている感があり、支援の仕方については教員同士の共通理解が必要である。また合理的 配慮の観点に立つならば、病気がゆえに生じている個別的な課題に対しても適切な対応が求められ よう。例えば、病気の状態に応じた給食の提供、医療的ケアを必要とする子どものための看護師の 配置、入院や定期受診等により授業に参加できなかった期間の学習内容の補完、テスト期間に欠席 した場合の追試、色素性乾皮症の児童生徒に対する遮光対策などである。通常の学校において、病 弱の児童生徒に対する合理的配慮は、十分に俎上に載せられていない問題である。 今回の調査では養護教諭を対象として調査をおこなったが、今後の課題として、学級担任 (教 諭)の病弱児に対する意識や対応・支援の状況を明らかにする必要があろう。 最後に本調査に協力していただいた養護教諭の先生方に深く謝意を表します。

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引用・参考文献 秋田県教育庁特別支援教育課・秋田県立秋田養護学校道川分教室(2009)、秋田県の病弱・身体虚 弱児童生徒についての実態調査、Pp.38. 秋田県教育庁特別支援教育課(2014)、「小・中学校に在籍する慢性疾患及び精神疾患の児童生徒 の実態調査」集計結果、Pp.20. 猪狩恵美子・高橋智(2001)通常学級在籍の病気療養児の問題に関する研究動向 ―特別ニーズ 教育の視点から―、東京学芸大学紀要1部門、52、191-203. 猪狩恵美子・高橋智(2002)通常学級における病気療養児の実態と特別なニーズ ―病気療養児 の保護者と養護教諭への質問し調査から―、SNEジャーナル8(1)、146-159. 猪狩恵美子(2008)通常学級に在籍する病気の子どもへの支援 ―福岡県内4市の公立小・中学 校への実態調査より―、福岡教育大学障害児治療研究センター年報、21、1-8. 池本喜代正(2009)特別支援教育体制における病弱教育の現状と課題、宇都宮大学教育学部実践 総合センター紀要、32、183-190. 角掛奈緒美(2009)養護教諭の慢性疾患の子どもへの支援の在り方について保護者への面接調査 からの考察、弘前大学大学院教育研究科、修士論文、Pp.74 . 加藤忠明(2004)、小児の慢性疾患について、小児保健研究、第63巻第5号、489-494. 加藤忠明(2012)平成23年度の小児慢性特定疾患治療研究事業の全国登録状況、平成24年度 厚生 労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)、「小児慢性特定疾患の登録・ 管理・解析・情報提供に関する研究」分担研究報告書、13-39.  http://www.aiiku.or.jp/~doc/houkoku/h24/19001A020.pdf1) 葛西敦子(2008)、養護教諭の「慢性疾患の子どもへの支援」に関する因果的構造モデル、学校保 健研究、50、371-384. 日下奈緒美(2015)平成25年度全国病類調査にみる病弱教育の現状と課題、国立特別支援教育総 合研究所研究紀要、第42巻、13-25. 厚生労働省(2011)平成23年 患者調査(傷病分類編)、  http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/ 武田鉄郎(2012)病弱教育の現状と今日的役割、障害者問題研究、40-2、107-115. 文部科学省(2015)、平成26年度文部科学省「学校保健統計調査」  http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/03/27/1356103_1.pdf 西牧謙吾(2010)、特別支援学校(病弱)のセンター的機能を活用した病気の子どもへの教育的支 援に関する研究、平成21年度厚生科学研究「法制化後の小児慢性特定疾患治療研究事業の登録・ 管理・情報提供に関する研究」、167-174. 文部科学省(2015)平成27年度学校基本調査、  https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001011528&r equestSender=dsearch 吉川一枝(2007)、通常の学級に在籍する慢性疾患児への学級担任 ―学校生活を支援する担任の 役割と課題―、岐阜医療科学大学紀要、第1号、61-66. 平成27年10月1日受理

参照

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