関東都市学会年報第18号 2017年3月
日本における放射線治療体制の現状分析*
AnaIysis of the Current Situation on Radiotherapy Sys上em in Japan
船
岡伸
光** FUNAOKA Nobumitsu1はじめに
悪性新生物(以下、 「がん」と記す。)は、 1981年より日本人の死因の第1位で、現在では年間30万人以上の国民が、 がんで亡くなっている。また、生涯のうちにがんに耀患する可能性は、男性の2人に1人、女性の3人に1人と推測される。男 女ともがん擢患数は、 1975年以降増加し続けており、 2010年のがん擢忠敬は1975年の約4倍である。がん躍忠敬の 増加の主な原因は人口の高齢化である。 日本の65歳以上の高齢者人口割合は、 1950年には総人口の5%に満たなかったが、 1970年に7%を超え(国連の 報告書において「高齢化社会」と定義された水準)、さらに、 1994年にはその倍の水準である14%を超えた(「高齢社会」と 称された)。そして、 2010年に22%を超え、 5人に1人が高齢者、 10人に1人が75歳以上という「本格的な高齢社会」 となっている。今後も高齢者人口の増加は継続すると考えられており、がん患者の増加が予想される。 [厚生労働省2016] がんの治療には、外科療法、化学療法、及び放射線治療がある。進行したがんに対する単独治療には限界があるため、 各種の治療法を組み合わせた集学的治療が治療成績の向上に有効である。放射線治療は対象部位の機能・形態の温存、 いかなる部位でも照射可能、外科療法に比べて負担が少ない等多くの利点がある。しかし、放射線治療の専門的な知識が なければ、照射事故にもつながり、かえって様態が悪化することもある。 日本は超高齢社会をむかえ、放射線治療の重要性がますます高まっており、今後も放射線治療を必要とする愚者が増加 すると考えられる。しかし、いまだ日本における放射線治療では、すべてのがん患者に対する適用率が極めて低い。欧米の適 用率が60%であるのに対して、日本の適用率は29%である(2009年)。この原因は、日本の放射線治療体制の整備が十 分でないこと、特に人的資源の不足が挙げられる[松本 2009 : 13-18]。また、放射線治療体制における治療資源には、 地域や施設によって差があると考えられる。 放射線治療体制に関する研究としては、日本放射線腫瘍学会(JapaneseSocietyforTherapeuticRadioIogy and Oncology、略称JASTRO)が実施した構造調査を利用した研究や、宇田らが、がん拠点病院にお
いで」ニアックを設置している病院への通院時間に基づいて到達圏域などを分析した事例があるが[宇田 2009]、いずれ
も都道府県ごとに限定したものであり、全国的な比較は行っていない。
* 本稿の主題は関東都市学会例会(2016年3月12日)で報告した
* * 立命館大学大学院理工学研究科博士後期課程環境都市専攻/町田市都市づくり部地区街づくり課
-44-2006年にがん対策基本法が施行され、基本施策として「がん医嬢の均てん化の促進」が挙げられている。がん医療の均 てん化とは、全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ることをいう。 このような状況を念頭において、本研究は、地域別の放射線治療体制の現況について分析することによって、放射線治療 に関する特性(地域差と治療資源の類型化)を明らかにすることを目的としており、今後の均てん化のための基礎的研究とす るものである。 2
がん治療における放射線治療の適用率の算定
すべてのがん患者に対する日本の放射線治療の適用率は29%と報告されているが(2009年)、地域別の適用率は明ら かでない。放射線治療体制は、地域によって差があると想定されている。そこで、放射線治療患者数(日本放射線腫瘍学会 が実施した全国放射線治療施設構造調査による)と全がん患者数(地域がん登録資料による)を用い、地域別適用率を算 出した。適用率の算出目的は、放射線治療患者の増減の要因が、全がん患者の増減か、放射線治療体制の変化に関する ものなのかを明確にすることであり、 「3 放射線治療体制の現況」と結果を比較し、 「5 結論」でまとめる。(1)地域別適用率の算出方法
1990年に恒元らによって第1回日本放射線腫瘍学会(JASTRO)全国放射線治療施設構造調査が実施され、 1993年以降は定期的(2年毎)に構造調査が学会事業として行われている。調査は、全国の放射線治療装置があると想 定される施設に対して、放射線治療体制・診療実態に関する調査票を郵送で配布する方式で実施された。なお、 2009年 からは前回調査対象施設をJASTROのHP上で登録の上、 Webでの回答を基本としている一)。調査内容は医療スタッフ の種類、人数、および専任度(週40時間放射線治療専任業務に換算)、ならびに治療機器の種類と台数、臓器別の年間 治療件数などの約250項目である。 地域がん登録は、対象地域の居住者に発生したすべてのがんを把握することにより、がんの擢思率と地域レベルの生存 率を計測する仕組みである。ただし、地域がん登録資料を使用して地域間の比較を行う場合、それぞれの地域がん登録の 精度の違いを考慮しなくてはならない。精度を高めるために、 Ⅱ 「躍患者中死亡情報のみで登録された患者」 (DeathCertificateOnly: DCO)の割合が25%未満、あるいは「死亡情報で初めて把握された患者」 (Death
Certification Notification : DCN)割合が30%未満、かつ日「擢忠敬と人口動態統計によるがん死亡数との比」 (Incidence/Mortality rate: IM比)が1.5以上を満たす基準が設定され、その基準値を満たさない地域は、地域
がん登録資料から除かれている。 本研究では、放射線治療患者数(JASTRO構造調査によって得られている新規患者数)と全がん患者数(地域がん登 録資料における都道府県別の擢忠敬)の比を適用率として算出した(図1)。なお、 JASTRO構造調査と地域がん登録資 料は、ホームぺ-ジ上で公開されているデータを使用した。JASTRO構造調査は47都道府県で実施されているが、地域 がん登録資料は、上記の基準を満たす都道府県を対象としているため、本研究で算出した適用率は地域がん登録資料に 記載されている都道府県に関するものである。
適躍=披講諾甑‥ロロ
冊
図1本研究における放射線治療の適用率の算出方法(2)算出結果
地域がん登録資料とJASTRO構造調査から算出した適用率を表1に示す。 全国平均値は、 2003年度22.5%、 2005年度23.0%、 2007年度23.3%、 2010年度22.9%で増減の傾向は なかったが、新たに地域がん登録データの推計精度基準を満たす地域は増加した。また、この間に適用率が一貫して増加傾-45-向であったのは、神奈川県、宮城県、新潟県、広島県、長崎県、愛知県、岐阜県、茨城県であった。逆に一貫して減少傾向 にあったのは、千葉県、鳥取県、栃木 表1地域がん登録資料とJAS丁RO構造調査から算出した適用率(%) 県、青森県、富山県、秋田県であった。 大陸府 葺2.3 諦奈即県 2箪.ヰ 押素描県 3工芸 欝蔑県 (31・3%)、2010年度の群馬県
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三蒜藁 (30・1%)であり、最も適用率が低い欝嵩∴需∴菖諾
のは2003年度の佐賀県(15.4%)、鞋欝県 1摘 2005年度の長崎県(16.8%)、 2007年度の佐賀県(14.7%)、 2010年度の山形県(14.6%)であっ た。どの年度でも適用率が最も高い地 域と低い地域の差は約2倍あった。 各々の年度で最も適用率が高いの 千葉県 誰・経 千葉県 馨8・5 ∴∴韓罵県 3般 沖縄県 鳥取県 2軋5 熊本県 妻崎霊芝 滋賀県 芝替.蚕 彊蓋県 は、 2003年度の大阪府と千葉県 謡奈描県 2鵬 宮城県 鴇重富 京都帝 2乱磨 岐阜県 宮城県 純,3 島徽菓 器,6 千葉県 豊6,了 熊本県 (32.3%)、 2005年度の神奈川県 諦薄黒 21,1 薪渥寮 生1.9 富塊蕪 犯$ 愛知県 (29.4%)、2007年度の神奈川県議震
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/∩「 (∩了、 ∩(「(,十島(二批正,口 広島県 1執事 福井菜 箸1.う 同山県 2事尋 石耕県 弼t鯛 栃木謀こ∴∴馨3,6∴∴覇鶉県 1翠.了 新潟県 鵜.1 北海道 1飢蔓∴∴広島県 甥で1 高知県 鳥取黒 蜜2詣∴∴滋賀県 岐阜県 芝㌢3 撞木県 青森県 2呈.豊 兵瞳県 琵職県 2う。4 長崎県 岩手墓 室う,芝 福井県 富山県 狙芝 襲械県 税田黒 羽.喜 青森県 長疇察 琵嶋 岡山県 福井県 講-事 輌認山県 山形県 丁6重釜 辣田県 握賀県 」据 富山県 山口県 1思-按4馨 患=里 喜患癖 2 聯堅 94 里 1緯 4工程 3患 靖登場遊歴乱 写罫 有蓋3 電場3芝 蓋 2 萱.乞 う うう轡。軋二見 尊陣 へ∠ i寧一心∠∴葺 2 芝 2 2 豊 里 機工 2 2 2 や﹂ 香し 芝 2 2 豊 1葛 l! 書教 (3)考察
本研究において適用率算出に用いた地域がん登録資料の擢思数の中には、放射線治療の対象とならない部位の件数も 含まれている恐れがある。このため、上記の適用率は過小評価されていると考えられる。したがって、放射線治療の対象となら ない部位の件数を除いて適用率を求めれば、各々の年度の適用率は、多少増加すると考えられる。 しかしながら、多少過小評価されているとは言え、日本のすべてのがん患者に対する放射線治療の適用率は22.5%から 23,3%であって、欧米の60%と比べると著しく低かった。また、都道府県別の適用率に最大約2倍の差があり、放射線治 癒に地域間の差が存在することが明らかとなった。 今後、日本の放射線治療の適用率を増加させるためには、設備資源とともに人的資源の整備が重要であるという認識の 下で、地域間格差を是正する必要がある。 3放射線治療体制の現況
(1)全国ベースでみた特徴
分析に当たっては、インターネット上に公開されているがん診療連携拠点病院のデータ(2014年10月厚生労働省に提出 された「新規指定・指定更新推薦書」または「現況報告書」をもとに作成されているデータ)の中から、主に放射線治療に関わ る人的資源及び設備資源に関する変量を選択した。表2に本研究で用いた変量を示す。 放射線治癒装置台数とは、リニアック又はマイクロトロン2)の台数であり、放射線治療専門医師数、看護師数、及び技師数 は、常勤で放射線治療についての専門的な資格(公益財団法人日本医学放射線学会放射線治療専門医、公益財団法人 日本看護協会がん放射線療法看護 認定看護師、日本放射線治療専門放射線技師認定機構放射線治療
専門放射線技師)を有する人数であ る。欧米では、放射線治療に携わる 技師には医学物理士・品質管理士 表2 全国の基本統計量 平均値 中央陸 棲拳種差 最大瞳 最小値 合計 病床数 嫡G丁台数 朗割台数 放射線治療装置台数 放射籠治療専門医師数 放射譲治療専門看護密教 殻射鞍治療専門技師醸 患者数 -46-銃弾.4 61 7葛0∴∴∴豊1十6 212$ 12韓 之77924 3.1 筆-8 1耳 管 1 1231 2.3 2.寄 主芝 了 0 那了 上害 し慨 軌思 了 櫨 59 4 十5 自陣∴∴∴∴工了 さ2 0∴∴∴∴ 609 轡,3∴∴∴∴韓.Q∴∴∴∴躍-5 雷 0 ‡ 1 1 自き∴∴∴∴芝.0 上4 了 ‡う 了0壷 46之.了 31 8.5 1 366.嶋 2観尋尋3 0 下860載蚕などの分類があるが、日本ではほとんどの施設で分類されていない。患者数は2013年1月l日一12月31日の問に放射 線治療を開始した患者数である。 402施設の患者数の合計は186,005人であった。この患者数と表2に示す放射線治癒に関する諸指標との比率を算出 すると以下のようになる。 放射線治療装置(合計594台) 1台当たりの患者数:313.1人 放射線治療専門医師(合計609人) 1人当たりの患者数:305.4人 放射線治療専門技師(合計705人) 1人当たりの患者数:263.8人 2006年に日本PCS(医療実態調査研究)作業部会による日本版ブルーブックにおいて、表3に示す放射線治療に必要 な人的資源と装置の基準が提案されている[日本PCS作業部会2006]。PCSは、国全体の医療の実態を構造(装置、 人員)、過程(診断、治癒法)、結果(治療成績)の3要素について短期間に遡及的に調べる研究を実施している。 上記の患者数を表3の基準と比較すると、人的資源は改善警告値の値を超え、設備資源は基準値をやや超えた値と なっている。
(2)地域別にみた特徴
図2へ図6に設備資源及び人的資源と思 表3 放射線治療(こ必要な人的資源と装置の基準 基準(人) 改善警告撞く人) 放射線治療装置1富あたりの患者数 250葛3鍋 4的 放射線治療専門医師1人あたりの患者数 200 3鍋 放射線治療専門毅郎1人あた坤の患者数 詑8 之的 者数に関する特徴を地域別に示す。 25寄0-0膝上満床敷 (人) :患者数 1)病床数、患者数について 図2は、病床数と患者数の地域別平均値 を示す。病床数はほとんどの地域で500床へ 1000床である。患者数は千葉県が他地域に 比べて突出している。これは県内1施設の患者 数が26,553人であって、表2で示した全国 平均値の約60倍であることが原因である。 口H]田圃 田病床数 田若者報 賀H輸M賀輸賀椅⋮聞 のり。細田聞削 R賀HH賀聞 鬼H輸晴別間聞出 甘い調H附則関 口輸輸輸HHH軸開田聞出 奄蓑壷惹晶 一卜白み︺喋・打阜 命=董董卓碧 (翰=董離攣時 (宵薫前記塾 へ当尭室町南画 へ議事炭)唖ぶ憧 (奇岩)韻塙軸 一骨霊前三種 (︺近事直感扁 (宵為︼唖ロコ 舌十=嵩し出城さ (ト。遺憩う駈 (小丁意華皆雌 (句作激高夢古曲 一骨拳唖∃請品 (稽■董萬椎 へ篭=董吐出晴 ら青煮)撞羊 へ骨董慢帯偏 る忠孝封潤荒 へ地口宣託前門川口 論︻=詑)唖品即 も︻州名)唖国縫 一首蜜豆再出 一骨寿都揺載 (音詩)唖謙主 董忠孝喋♯捉 (職能尤)蛾ニー早 へL博煮出ヨ匝 (管嘉一藷へ港 手下る些-了椎果 (卜菅窒帯晴情 宣青島)競什 粛軍要霊浩車 台︻高岩)由暗覚 (帯る壊せ常 春薫請蕾諒 電装読帯革 へ⋮打差し喋誤主 (船津箸一球白老 (ト=蓉)聾知 る青=宣離山唖 日回田田晴間(蔓-毒 掃り鳳削刷る盲を唖亜聖嘩 図2 病床数と患者数の地域別平均値 注)横軸のカツコ内は施設数 2)人的資源について 図3は、放射線治療専門医師数、専門看護師数及び専門技師数の地域別平均値を示す。放射線治療専門医師数の平 均が最も小さい地域は富山県(0.4人)、最も大きい地域は東京都(2.6人)である。 1.0人以下の地域について示すと、富山 県(0.4人)、岩手県(0.5人)、茨城県(0.6人)、大分県(0.6人)、秋田県(0.6人)、山口県(0.7人)、宮崎県(0.7人)、 佐賀県(0,8)、石川県(0.8人)、鹿児島県(0.8人)、滋賀県(0.8人)、福島県(0.9人)である。放射線治療専門看護師数 の平均が最も小さい地域は秋田県、群馬県、 和歌山県、島根県、徳島県、高知県、佐賀県、 宮崎県、沖縄県(0人)、最も大きい地域は京 都府(0.7人)であって、すべての地域で1.0 人以下である。放射線治療専門技師数の平 均が最も小さい地域は岩手県(0.6人)、最も 大きい地域は東京都(2.7人)であり、 1.0人 以下の地域は岩手県(0.6人)、宮崎県(0.7 人)、沖縄県(0.7人)、徳島県(0.8人)、鹿 児島県(0.8人)、和歌山県(0.8人)である。 (人) 口車門主師数 口車門看護師散 田専門闘高教 怠碍え一味楕岬 言辞茎固唾十善 容‖‖‖‖晴雪上凸書冊如 高札宰墜堰堤 (指毒蛾法主 奇=老挫由達 魯=宏一蓮如 ‖‖晴‖耶富ま苫轄 へ等を豆玉ヤ あと登城や叢 へ雷ぎ畔蜜咽 へ首巻憩卸せ (誓清貧)亜種緯 (掃き蛾品種 へトI蔦手堅嬰珊 (崎=宕一吐こl粗 寺裳一悪戯控 案自署﹂吐ロコ (ま・買遠戚雌畦 へ盲を吐ヨ壇 へ常箸﹂唖単雌 冷笑説昼前 帝莞諌言詫忠 (骨を報椎 董-吏軍産甫早苗 一筆婁這露干 (宵蓑農慢転癌 へ骨毒蛾聞返 ︹什甘煮︼吐間中 具合はる唖烏融 -貧=省)吐置経 手口童画叫型 (のけ宕一理隙取 (盲註一議白 寿薬毒諌蛙 (吟“為︼吐≡惇 一計莞)唾ヨ匝 窃!1葦︺盤汁庚 芦†蜜)唖三樵些 千種汁気)薄柾僻 事甘煮話中胱廿 前景﹂召出嶋把 へ票は表)亜嘩駐 窃薯掌華草堂 図3 注) -47-人的資源の地域別平均値 横軸のカツコ内は施設数 (︹コ出し垂-﹂書 田川烏=薯壷知本論では、常勤の人的資源を対象としている。放射線治療体制では、非常勤の人的資源が多く、専門医師数がl.0人以 下の地域は、非常勤の専門医師が従事していると考えられる。常勤の専門医師が少ない地域は、常勤の専門技師でカバー している。また、専門看護師がすべての地域で1.0人以下と他の人的資源と比べて少ないのは、治療に直接関わることがなく 補助的な役割で、病院内他科の看護師が交替で従事しているためである。 人的資源の地域差は、地理的要件、医療体制、医療政策、医育史など様々な原因が交差して生じているものと思われる が、以下では医青史の視点から考えてみたい。 放射線治療は高度な治療を行うため、専門的な知識を必要とするから、大学在籍時に、放射線治療に関する専門的な知 識を取得することが重要である。医学部医学科が設置されている国公私立大学は79大学あるが、そのうちで放射線治療に 特化した講座が設置されている大学は32大学である。阿部は、大学で放射線治療に特化した講座が設置されている場合 は、設置されていない場合に比べて、放射線治療に関する授業のコマ数が多いことを報告している[阿部2009]。このため、 放射線治療に特化した講座が設置されている大学出身の医師は、当該分野の専門知識を有していることが多いと考えられ る。専門医師数の平均値が1人以下と少ない県は上述の12県であるが、その中で茨城県(筑波大学)および山口県(山口 大学)以外では放射線治療に特化した講座が設置されていない。このため、当該講座の有無が専門医師数と関係していると 考えられる。 3)設備資源(こついて 図4は、 X線CT台数、 MRI台数、放射 線治療装置台数の地域別平均値を示してい る。Ⅹ線CT台数の平均値で、最も小さな地 域は秋田県(1.8台)、最も大きい地域は東 京都(4.4台)である。MRI台数の平均値で、 最も小さい地域は鹿児島県(1.1台)、最も大 きい地域は東京都(3.7台)である。放射線治 療装置台数の平均値で、最も小さい地域は鹿
○○聞
田二十二線CT台数 □MRI台数∴田放射繊台廣台数 (洋“遺唖鵬蛇 (畠‖窒軽重桂 へ∞叫岩)映せ盗 電、窯)聾馳 奇岩霊前塵 へ胃を無にヨ 一管㌶)唖日義 (肯葦帝蜜細 る一点雲唾什抽 (⋮汀宕)隷佃 (一関高遠運半 (ト的男を藁惰性 古市-㌫)唖三証票 へ討究詩誌二転 へい部署)喋古曲 一一甘煮唾三に (調=こ高訣蛙 (骨董譲与 前世墓蟻獣博 へ昔を唾可塑 (eすら姦埋西経 (誓同賞)吐息郎 一晋箸}壁間用 へ常磐)畦如箪 転調笠)捏荘帳 ﹁婆は裟)﹂篤豊苫 へ筆=迄出世宙 (葦拳啓噂鮭 (-甘註)吐ヨ詣京 へ鳴白岩)望Ⅲ (重=㌫)聾唖 (い=穿高言肩 ﹁コ自室蝶理埴 へ幽門誓)吐ロコ 一方み)吐雌博 へ告ぎ堅二畑 (い細㌶)吐漢軸 一競り㌫)蛸島惟 る一冊表)蛾恒哩 へや字i葦)理知埋 壱若者帯電 (管婆蛾世業 や蓑)吐百十 品白岩一転壁画 至近霊嵩葦商 奇岩露語萱﹂ 図4 設備資源の地域別平均値 注)横軸のカツコ内は施設数 児島県(1.0台)、最も大きい地域は東京都(2.1台)である。Ⅹ線CT台数、 MRI台数、放射線治療装置台数の地域別平 均値において、 1台以下である地域はなかった。 地理的に言うと、 Ⅹ線CT台数、 MRI台数、放射線治療台数は、大都市圏が比較的に充実している。また、薬事工業生 産動態統計平成26年年報によると、医療機器生産金額は全国で1,989,497百万円であり、この金額が多い静岡県 (386,540百万円)、栃木県(191,871百万円)、及び福島県(130,344百万円)では、図4に示すように設備資源が相 対的に充実していることが確認できる。 4)治療資源と患者の関係性 次に、設備資源と人的資源を治療資源と し、治療資源と患者数との関係を見てみる。 図5には、地域別にみた専門医師及び専門 技師1人あたりの患者数が示されている。表 3の改善警告値を超えている地域は、患者/専門医師数で23地域、患者/専門技
師数で27地域である。患者/専門医師数 で、最も小さい地域は高知県(101.3人)、最 0 (U 寄 O O O ︹U O n) 0 0 れ︺ ︹‖ 0 凸 0 ︹U n)認諾露盤認諾器器皿。
田患者数痔門技師数 怠見辛喋器具 (害=る政雄単性 命豊富瞳壁画 一㌦の叶う蛾富来 禽甘煮)唖や詣 (管毒蛾蜜増 へ音義)態辿 (空陸煮︺唖壇控 へ宵蓬巷聴伸 一い∬壬蛾盟頓 へ愉甘密)唾二桝 谷去年境地控 へ⋮甘薯﹂喋ロコ 合一開巻畦端境 へ昔を畦ヨ恒 への白岩)聾唖 へ常を聾唯 一曾白岩)蛾ヨ蒲束 へ陥単為)豊鮭 謁一朗笑壷固原 論こ=ち憧霊草 喬I-を畦掃晴 電)唖蘭越 十面甘煮)鞘用 へ津即ち頓馬駄 合音を畦暖駈 (ト堆裁)喋小型 (樹を高窓詔 へ寸は掌)唖諌言 あは笑)唖計理 震動灘)喋三博 へいり炭)城主匝 (関塗し唖築港 (ト一同ま蛾三振票 (ト締る話晴陛 守青銅拳諒廿 (雨音箸)唖岬蜂 (象豊富静電 命数証再選 への=践)璧鴇 怠け者喋情理 へ仙丹莞)理営王 命=裁)唖題詩 へ卜且㍍)聾軸 (害覚る唾≠沖 命=署)諜佃 青前表)狽哩寺 図5 人的資源の地域別水準比較 注)横軸のカツコ内は施設数ー48-も大きい地域は千葉県(1264.0人)である。 16肌0
患者/専門技師数で、最小は鳥取県14岨凸
(85.4人)、最大は千葉県(1580.1人)で1200.0 ある。図6には、地域別に放射線治癒装置1 10肌0 台あたりの患者数が示されている。表3の改 8叩0 善警告値を超えている地域は、千葉県のみ 6肌。 である。最小は高知県(122.0人)、最大は 細。.。 千葉県(1374.0人)である。図5、 6の結果 郷.。 において千葉県は、県内の1施設の患者数 が突出していることが原因であり、その施設 の人的資源と設備資源の充実が望まれる。 (人) 図6 放射線治療装置の地域別水準比較 注)横軸のカツコ内は施設数 4放射線治療体制の類型化
(1)主成分分析
本項では放射線治療体制を類型化するために、主成分分析を行った。主成分分析を用いたのは、多くの変量から成る データから合成変量を作り、情報を集約し、放射線治療体制を見やすくするためである。 主成分分析は、多変量データの持っ情報を集約し、新たな合成変量(主成分)を作るための多変量解析の手法であり、 寄与率は、もとの変量群のもつ分散の総和に対して各主成分が占める比を表す。各主成分への各変量の影響力はその主成 分得点で知ることができる。 本論では累積寄与率が80%を上回るまで主成分として選択し、さらに、抽出された成分を解釈しやすくするため、バリ マックス回転を行った。主成分分析に用いる変量は相関分析によって選択した。選択した変量で、各々の相関をPearsonの 積率相関係数でみたところ、病床数とⅩ線CT台数では0,64、病床数とMRI台数では0.75であって、強い相関関係 を示した。そこで、主成分分析を行う際はどちらかの変量を選択することが望ましいため、病床数は変量から除いた。 (2)結果
結果を表4と表5に示す。寄与率は第1主成分から順に46.1%、 14.0%、 12.0%、 9.7%で、第4主成分までの累積 寄与率は81.8%であった。さらに、バ)マックス回転後の主成分得点を算出した結果、第1主成分では高い順にMRI台数 0.88、 X線CT台数0.83、放射線治療専門医師数0.70、放射線治療装置台数0.45であった。第2主成分は、高い 順に放射線治療専門技師数0.94、放射線治療装置台数0.45で、第3主成分は放射線治療専門看護師数0.95、第4 主成分は治療件数0.97であった。 表4 主成分の選択 鶉繚藩母轟締 約詰物 轟乱「睦 施、継子 郎,密鍍 鎚孟猿 轡乳3了 胴乱偶戴‡鮪籠輔車舘
会、終 電篤く弼 経 鎖謹$ 持場‡ 3 穏態亀 留鳥§ 噂 駐.鋪 乱す3 § 故殺 乳都 窪 誠心菩 敬1胞 子 我意芝 孔努ま 表5各変量の主成分への寄与率 驚†喜怒労築き喜成分譲烏鼻成分鶉を怠敲分 乱鳥篭 織龍恵 軌鵡 謡烹馬 飢鴫∴∴∴ く持$ 鰹憾恵 一搬瑳 光線$丁台艶 舶穏善報 殻薪籠諸藩護彊含醸 憩窮諒治惑尊弼擾綬数 救轟鶉簿態尊轄電謹擁護 放射鶉治法華弼緩醗数 痘苗数 乱鵡 鏡4蜜 軟弱 0∴約 〇忠義 鍛意7 軌持 闘強 み9写 $遥駐 屯細 線撹 乱推 戴戚了 柳持 句 鋳 金手 書響 子教 艦艇轍鮒輔 (3)考察
.第1主成分はⅩ線CT台数、 MRI台数、放射線治療装置台数、及び放射線治療専門医師数との関係が強く、放射線 治療専門医師が診断及び治療を行う軸、つまり「診断及び治癒力」軸と考えられる。次に影響の大きい第2主成分は、放射-49-滋賀県 青森県 京都府 愛媛県 鳥取県 (補助人的資源による治療力軸) 〇・2 〇 〇〇2 琵細細漢音董 長崎県 富山県 香川県語尾県 島根県 鹿児島県 大分県 奈夷媒府 山印報賞県 山梨県 和歌山県 茨城県沖縄県 宮崎県 岩手県 静岡県 (診断及び治療力軸) 長野県 礪期東 新′霜害岩景観県 熊本県 県 島 国細 島 県福 玉 埼 箕ささ合書き芸薫る0 ○○5 図7 主成分分析の結果 線治療専門技師数、放射線治療装置台数との関係が強く、放射線治療専門技師が治療を行う軸、つまり「補助人的資源に よる治癒力」軸と考えられる。各地域について第1主成分及び第2主成分の主成分得点を計算し、第1主成分を横軸に、第 2主成分を縦軸とし、座標平面上に各地域の主成分得点をプロットした(図7参照)。この図において、第1象限や第4象 限は医師を中心とした診断や治療など人的資源及び設備資源が比較的充実していると言える。第2象限は補助人的資源に よる治癒が主流となる。第3象限は、どちらの軸にも負の主成分得点を示している。また、第1象限や第4象限には千葉県、 埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県など主要都市が位置している。第2象限には北海道・東北 などが属し、第3象限には、九州・沖縄などが位置している。施設分類別に、比較的治療資源が充実していると考えられる大 学病院について見てみると、全施設に対する大学病院の割合が高い東京都(51.9% : 1番目)や奈良県(40.0% : 2番目) は第1象限に位置し、全施設に対する公立病院の割合が高い岩手県(90,0%: 1番目)や奈良県(75.0%:2番目)は、第 3象限に位置している。以上のことから治療体制に地域による偏りがあることが改めて確認できる。 次に、放射線治療の適用率と治療体制の充実について見てみる。2010年の結果で適用率が高い群馬県(第2象限)や 沖縄県(第3象限)は必ずしも充実したグループに位置していない。また、比較的適用率が低い岡山県は第1象限に位置し ている。このことから、放射線治療の適用率と治療体制の充実に必ずしも強い関係がないことがわかった。つまり、人的資源 や設備資源が充実したからといって、放射線治療の適用率が高くなるわけではない。 5
結
論
がんは、日本人の死因の第1位である。加えて、高齢者人口が増加し放射線治療の重要性がますます高まっているため、放射線治療体制の整備は重要である。本研究では、がん治癒における放射線治療の適用率を地域がん登録資料と
JASTRO構造調査から算出した。2003年→ 2010年で22.5%から23.3%で、どの年度でも最大の地域と最小の地 域の差が約2倍あり、地域間の差があることが明らかになった。 放射線治療体制の現況に関しては、まず人的資源について示すと、放射線治療専門医師及び技師が不足している地域 が、それぞれ23地域、 27地域であり、人的資源が不足していること、加えて地域差があることを明らかにすることができた。-50-次に、設備資源である放射線治療装置に関しては、千葉県は患者数が非常に多く特異な傾向を示しているものの、各都道 府県の水準は概ね妥当となっている。なお、都道府県別の放射線治療体制に関しては、主成分分析を用いて地域類型化を 行い、地域特性を明確に表現した。 次に、放射線治療の適用率と治療体制の充実に必ずしも強い関係があるわけではないことがわかった。つまり、人的資源 や設備資源が充実したからといって、直ちに放射線治療の適用率が高くなるわけではない。 今後の検討課題として、都道府県域を越えて通院する患者も多いと考えられるため、現在の医療圏域にとらわれることの ない患者受療行動の分析や放射線治療の人的資源や設備資源などの体制を考慮した病院の最適配置を検討し、がん治 療における放射線治療の均てん化を行う必要があると考えられる。 し受付 2016年6月30目] [受理 2016年12月5日] [謝辞] 本稿を作成するにあたり、立命館大学大学院理工学研究科特任教授塚口博司先生に御指導とご鞭瞳を賜り深く感謝申し上げます。