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デジタルゲーム開発を専門とする学生の「創造性」と「ゲームの利用と満足」の関連性についての検討

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Academic year: 2021

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Digital Games Research Association JAPAN Journal of Digital Games Research

デジタルゲーム開発を専門とする学生の「創造性」と「ゲームの利用と満足」の

関連性についての検討

福井 昌則

,

佐々木 雄司

森山 潤

平嶋 宗

,広島大学 工学研究科 ,兵庫教育大学 学校教育研究科 慶應義塾大学 環境情報学部 ⅰ,ⅴ{fukui, tsukasa}@lel.hiroshima-u.ac.jp, ⅱ,ⅳ{mafukui, junmori}@ hyogo-u.ac.jp, [email protected]

概要:本研究の目的は,デジタルゲーム開発やデザインを専攻する学生の「ゲームの利用と満足」と創造性の関連性 について検討することである.ゲームの利用と満足を把握するために,井口のゲームの利用と満足尺度を用い,「ゲ ームの利用と満足」と「創造性」に関連性があると仮説を設定した上で,調査を行った.その結果,「空想」,「承認」, 「達成」,「学習」が高い学生は創造性が有意に高い傾向が見られたが,「趣向」,「気晴らし」は他のゲームの利用と 満足の因子および創造性との関連性は認められなかった.このことから,仮説が支持される結果が得られた.そして, (1) 「空想」,「承認」,「達成」,「学習」は創造性を喚起しうる可能性があること,(2) 「趣向」,「気晴らし」は独立した要 因として考えられることが示唆された. キーワード:創造性,ゲームの利用と満足,ゲーム開発,ゲーム開発者教育

An Examination of the Relationship between “Creativity” and “Video

Game Uses and Gratifications” among University Students Majoring in

Digital Game Development or Design

Masanori FUKUI

,

Yuji SASAKI

Jun MORIYAMA

Tsukasa HIRASHIMA

,Hiroshima University, ,Hyogo University of Teacher Education, Keio University ⅰ,ⅴ{fukui, tsukasa}@lel.hiroshima-u.ac.jp, ⅱ,ⅳ{mafukui, junmori}@ hyogo-u.ac.jp, [email protected] Abstract The purpose of this study was to examine the relationship between “creativity” and “video game uses and

gratifications” among students majoring in digital game development and design. To understand game use and satisfaction, we used Iguchi's Video Game Uses and Gratifications Scale and hypothesized that there is a relationship between “creativity” and “video game uses and gratifications,” and accordingly, conducted a survey. The results revealed that students who scored high on “fantasy,” “recognition,” “achievement,” and “study” tended to be significantly more creative, while “preference” and “diversion” were not associated with other game use and gratification factors or creativity. Thus, the results support the hypothesis. The findings suggested that (1) “fantasy,” “recognition,” “achievement,” and “study” could stimulate creativity, and (2) “preference” and “diversion” could be considered as independent factors.

Keyword Creativity, Video Game Uses and Gratifications, Video Game Development, Game Developer Education

1. はじめに

1.1 本研究の目的 本研究の目的は,ゲーム開発者教育の充実化のために, デジタルゲーム開発やデザインを専攻する学生の「ゲームの 利用と満足」と創造性の関連性について検討することである. 1.2 研究の背景 VR,AR,人工知能などの技術を駆使したデジタルゲーム (以下,ゲームと略記)が次々に登場し,テクノロジーの進展と ともに,ゲーム開発は複雑化している.そして,VR や AR が 期待される分野としてゲームがあげられており[1],今後さらに VR や AR を駆使したゲーム開発が行われると予想される.ま た,開発の工数や予算は増加しており[2],ゲーム開発では上 流工程,下流工程だけでなく,イラスト,音楽,ユーザインタ フェースなど,開発は多岐にわたり[3],ゲーム開発者が対応 すべき内容も,多様化・複雑化している. 一方,セガゲームスタイル研究所の調査によれば,2017 年12 月における 15~69 歳男女のスマートフォン所有率は 75.6%で,所有者の推計人口は 6,486 万人であった.そして, スマホゲーム利用者の推計人口は3,480 万人であると報告さ れている[4].また,2007 年に iPhone が販売開始されて以来, スマートフォンの市場規模は毎年二桁成長を継続している. そして2018 年は前年比で 25.5%の成長を遂げ,モバイルゲ ーム市場は全体の 51%となる 703 億円規模になる見通しで あると報告されている[5].さらに2018 年の世界のモバイルゲ ーム市場は,前年比103.4%の 6 兆 9568 億円と推計されて おり,世界最大のマーケットはアジア(4 兆 2660 億円)であり, 全体の6割を占めている[6].そして,クラウドゲーム市場が急 成長を遂げており,2018 年の国内市場規模は 11.0 億円, 2022 年には 100 億円突破が予想されている[7] 日本オンラインゲーム協会 (2018) は,全体的な傾向とし てゲーム専用機のユーザは男性の比率が高く,スマートフォ ンは男女比がほぼ半々であること,ゲームユーザ数は,ゲー ム専用機が約1628 万人,スマートデバイスが約 2865 万人, PC が約 584 万人,これら全機器を所持している人は 305 万 人であること,そして,ゲーム専用機8 つ,汎用機 5 つにつ いて性別,年代別にユーザ数がどう異なるかについて,例え ばNintendo Switch と 3DS では 10 代ユーザが多いといった 実態を報告している[8].また,高校生の 1 日のゲームのプレ イ時間には,男女差があることが報告されており[9],ゲーム開 発において考慮すべき内容は,年齢,性別,プラットフォー ム,国など様々である.よって,ゲーム開発者やプログラマの ために,ゲーム開発者教育を充実化することが求められるが, それに際し,様々な開発に対応できる力を身につけるととも

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に,ゲームの良さを生かした開発を行うことは重要な課題で ある. ゲームには,良い影響(利点),悪い影響(欠点)いずれに ついても多くの研究がなされている.Jackson ら (2012) は, 12 歳の子供を対象に生活習慣と創造性に関する調査を実 施したところ,より多くビデオゲームで遊んでいる子供は,絵 を書いたり,お話を作ったりといったタスクでよりクリエイティブ であると報告している.そして,携帯電話,インターネットやコ ンピュータ(ゲーム以外)といったことをより多くやっている子供 は,創造性が特に高くないことを報告している[10].一方で,ス マートフォンの依存やゲーム障害の問題など,利用によって 悪影響が出ることが指摘されている.最近のトピックスとして World Health Organization (2018) は,オンラインゲームなど のやりすぎで日常生活が難しくなる「ゲーム障害」を依存症と して認定し[11],ゲーム障害に陥った人々への対応策を検討 することを求めている.これらのゲームにおける利点と欠点を 踏まえ,今後のゲーム開発者やプログラマ,ゲームクリエイタ 育成を行うこと,さらにその知見を活かして一般教育やプログ ラミング教育におけるゲーム活用に応用していくことが重要 である. ゲームの利点として,創造性の育成が可能という点があげ られる[10].シカート (2014) は,ゲームと創造性が関連性を 有すると述べている[12].Ott らは,ゲームベース学習の長期 的な研究プロジェクトにおいて,デジタルツールの活用が創 造性の促進に貢献していることを明らかにしている[13].この 中で観察者は,創造性を測定するために,Ott ら[14]の開発し た指標に基づき,学習者を直接観察している.この指標は, 世 の 中 に と っ て 新 し い 革 新 的 な 創 造 性 で あ る 「Big-C Creativity」ではなく,本人にとって新しく,日常の中で見られ る「little-c creativity」に焦点が当てられている[15].これらの報 告にもあるように,ゲームと創造性の関係は,多くの場合ポジ ティブに説明されることが多く,ゲーム開発者養成の授業を 実施するにあたり,創造性を高めるような授業を行うことは, ゲームの利点を活かした教育の実現にも接続することが期 待できる. 以上に述べたように,創造性は「世の中にとって新しいも の」と「本人にとって新しいもの」という文脈があるが,教育的 には「本人にとって新しいものを生み出し,それを世の中にと って新しいものを生み出そうすること」へ接続することが重要 である.創造性については多くの研究が行われている.例え ば Guilford (1968) は,創造的な思考を支える特性には「感 受性」,「流暢性」,「柔軟性」,「独創性」,「精緻性」,「再定 義する力」の 6 つがあると指摘している.そして,「収束的思 考(既知の情報から論理的に思考や推論を進め,唯一の正 解に正しく・早く到達する思考)」と,「発散的思考(既知の情 報から様々な考えをめぐらせることによって,新たな物を生み 出していく思考)」の 2 つがあり,創造性育成には発散的思考 の育成が重要であると述べている[16].Wallas (1926) は,創 造的思考の過程として,「準備期」,「あたため期」,「啓示期」, 「検証期」の4 段階があると述べ,その過程が重要であると指 摘している[17].ムンツァートは,創造の過程に着目した上で, 32 項目からなる創造性を測定する尺度を構成している[18] ゲームというプロダクトを完成させるためには,様々なアイデ ィアを出すだけではなく,それに対する見通しや検証などの 段階を踏まえることが必要であると考えられることから,本研 究では創造性を Wallas の創造的思考とし,その測定にムン ツァートの尺度を用いる. 創造性と関連性を有する要因についての先行研究として, Amabile (1983) は,外的承認の渇望や内的モチベーション が創造性と関係していることを報告している[19].横山 (2010) は,人間が創造性を発揮するとき,最初に創造性に対するモ チベーションが必要であると述べている. そして,そのモチベ ーションの要因として「行動開始の要因」は自己実現欲求な どの内発的欲求や,興味や価値などの認知的要素が主であ ること,そして「行動の持続の要因」は,自律性や有能性,達 成感などの内発的欲求の充足および楽しさや価値などの認 知 的 要 素 が 主 で あ っ た こ と を 報 告 し て い る[20] Csikszentmihalyi (1990) は,好きなことに取り組むことでフロ ー状態に入り,そして創造者が長期間にわたってフラストレ ーションに陥ることなく,創造的な仕事・研究を持続するため に,フローから得られる内発的動機づけがあると指摘されて いる[21].つまり,好きなことを集中的に行うことで,創造性が 発揮される可能性がある.そのことは,ゲームの利用方法や どのように満足度を充足しているかといった意識,利用動機 が,創造性に影響を与えている可能性がある.つまり,誰か に認められたいからゲームをするといった承認欲求,ゲーム をクリアすると嬉しいといった達成欲求が高い学生と低い学 生では創造性に違いが生じる可能性が想定される.このよう なゲームの利用方法や利用動機に関連するものとして,「ゲ ームの利用と満足」に関する先行研究がある. ゲームの利用と満足についての先行研究はいくつか存在 している.Sherry ら (2006) は,ゲームの利用と満足を把握 するために,アメリカの小学生から大学生 1,265 名に対して 調査を行い,学生がゲームを行う動機は「挑戦」,「競争」, 「気晴らし」,「興奮」,「空想」,「社会的交流」であったと報告 している[22].Greenberg ら (2010) は,年齢と性別間のゲーム に関する利用と満足を把握するために,アメリカの小学生か ら大学生までの1,242 名を対象とした調査を実施したところ, ゲームの利用動機は「興奮」,「気晴らし」,「社会的交流」, 「空想」,「挑戦」,「ハイテク」,「自我」,「競争」,「現実」の 9 つであったことを報告している[23].Malone (1981)は,ビデオ ゲームの内発的動機づけとして「挑戦」,「空想」,「好奇心」 の3 つをあげている[24].高山 (2000) は,ゲーム利用の内発 的動機付けを調査するために,小学校高学年を対象に調査 を実施し,ゲームの内発的動機付けとして「挑戦」,「コントロ ール」,「空想」,「暇つぶし」,「逃避」,「好奇心」の6 つの因 子があることを明らかにしている[25].「挑戦」は,むずかしい 場面や謎をクリアすることなど,ある目標を達成していくこと, 「コントロール」は,自由に動かして操作することやキャラクタ ーが思い通りに動かせること,「空想」は,学校や勉強など現 実の世界から離れて,ゲームの中でモンスターなどの敵と戦 うといった空想の世界の面白さのこと,「暇つぶし」は,外で

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遊べないときや暇なとき,友達がいないときなどに便利という 内容,「逃避」は,寂しいときに気がまぎれる,いやなことを忘 れることができるなどの項目,「好奇心」は音や音楽がおもし ろい,ストーリーがおもしろいなど,感覚的または認知的な興 味を示す因子である[25].また井口は,ゲームユーザ研究の 構築のために,日本の大学生におけるゲームの利用と満足 について調査を行い,「空想」,「承認」,「趣向」,「達成」, 「友達」,「学習」,「気晴らし」の7 因子があることを明らかにし ている[26].「空想」は,「ゲームは現実とは違う世界で楽しむ ことができるから」や「現実にはできないようなことができるか ら」など現実ではできない空想的なことを連想させる因子, 「承認」は,「巧く操作すると他の人から尊敬されて嬉しいから」 や「他の人より早くクリアして自慢したいから」など,他者から の承認や誇示を連想させる因子,「趣向」は,「好きなイラスト レーターが描いているから」や「好きな声優が出てくるから」な ど外部の情報,メタ的なことを連想させる因子,「達成」は, 「ゲームの課題を達成することが嬉しいから」や「難しい場面 を乗り越えたら嬉しいから」など達成的なことを連想させる因 子,「友達」は,「友達を誘ったり誘われたりしてゲームで遊ぶ ことがあるから」や「友達とゲームのことで話題になることがあ るから」など友達との交流を連想させる因子,「学習」は,「ゲ ームを通じて難しいことでも理解できることがあるから」や「勉 強になるから」など学ぶことを連想させる因子,「気晴らし」は, 「時間つぶしになるから」や「他にやることがないから」など暇 つぶしを連想させる因子である[26].このようにゲームの利用 と満足についてのいくつか先行研究が存在するが,本研究 では日本の大学におけるゲーム開発者/プログラマ教育を充 実化していくという観点から,日本の大学生を対象とした研 究によって得られた尺度を用いることが妥当であると考えら れる. 一方,本研究の調査対象者の大半はゲームが好きで学ん でいることが想定される.このことについて定量的なデータを 取得したわけではないが,実際に調査対象校で 10 年以上 勤めている教員3 名にインタビューをしたところ,全ての教員 から他学部・学科と比べてもゲームが好きでかつ長時間プレ イする学生が多いというコメントを得ている.また,好きなもの に取り組むことで創造性が高まる可能性が指摘[21]されてい ながらも,その取り組み方や利用動機,ゲームでどのように 満足しているかによって創造性が異なる可能性がある.換言 すると,「ゲームが好き」にはその動機などが関与している可 能性があり,その「ゲームが好き」という前提の上でゲームを どのような動機で利用しているかの意味を「ゲームの利用と 満足」(「空想」,「承認」,「趣向」,「達成」,「友達」,「学習」, 「気晴らし」)と紐づけて分解し,その分解されたそれぞれの 要素と,創造性の関係が調べることが重要である.しかし,ゲ ームが好きで,かつゲームを専門としている学生の「ゲーム の利用と満足」と創造性の関連性についての先行研究を見 かけることはない. 1.3 仮説の設定 第 1.2 節で述べたように,「ゲームが好き」という前提の上 で,仮説を設定する.

Stubbs and Amabile (1979) は,空想と創造性には関連性 が見られることを報告しており[27],「空想」は,創造性と関連 性があると想定される. Amabile (1983) は,社会環境要因が創造性に影響を与 えるとした上で,創造的成果に対する他者からの評価を期待 する気持ち,創造的成果に対する他者による実際の評価へ の関心,外的承認の渇望,競争と外的報酬,時間圧力への 反応,社会的要請を巧妙に拒否できる態度が創造性に直接 的な影響を与えること,そして外的コントロールおよび外的モ チベーションよりも内的コントロールおよび内的モチベーショ ンを好む傾向と創造性にも関連があることを明らかにしてい る[19].よって「承認」は,創造性と関連性があると想定される. 井口(2013)の達成因子は,「ゲームの課題を達成すること が嬉しいから」や「難しい場面を乗り越えたら嬉しいから」など 達成的なことを連想させる因子であることから,達成欲求を示 しており,ゲームに対する内発的動機付けと考えることができ る.Amabile (1985) は,女子大学生たちを 2 つのグループ に分け,コラージュ作品を作らせた.そこで半数の学生には 自分たちの作品が審査されること,残りの半数には自分たち の作品は審査されないと伝えた.その2 つのグループの作品 を比較したところ,審査されないと伝えられた学生のほうが, クオリティの高い作品を作った.これは,外的な報酬よりも, 内的なものに動機づけされたほうが創造的になるという事例 である[28].他にも多くの研究の中で内発的動機付け/モチベ ーションと創造性の関連性について報告されている[29,30].よ って「達成」も,創造性と関連性があると想定される. 井口(2013)の学習因子は,「ゲームを通じて難しいことでも 理解できることがあるから」や「勉強になるから」など学ぶこと を連想させる因子であり,新しい知識が得られることに対して 興味を有していることや,理解を促されるといった観点から構 成されている.繁桝らは,新しいことを自ら考え,取り入れよう とする態度因子として「進取性」があると述べており[31],井口 の「学習」因子も,創造性と関連性があると想定される. 井口の尺度は,ゲームを主題として作成されており,上述 した下位尺度と必ずしも同等ではないが,傾向を把握する上 では,その関連性は用いることができると想定される.よって, 以上の内容を踏まえ,以下の仮説を設定する. [仮説] ゲームが好きな学生の「ゲームの利用と満足」尺度の うち,「空想」,「承認」,「達成」,「学習」は創造性と関連性を 有する. よって本研究では,デジタルゲーム開発を専門とする学生 を対象に,井口(2013)の研究で用いられた質問項目を元に 「ゲームの利用と満足」およびムンツァートの創造性尺度を測 定し,上述した仮説について検討する.そして,今後のゲー ムを用いた教育を実施するためのアプローチについて検討 を行うこととした.

2. 研究方法

2.1 調査対象および調査の手続き 本研究では,関西圏にある私立大学でゲーム開発を専門

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とする大学2 年生を調査対象とし,2019 年 10 月に調査対象 となる学科の授業内で調査を実施した.調査では77 名 (男 性72 名,女性 5 名.平均年齢 19.7 歳,S.D. 0.75) から回答 が得られ,有効回答率は 100.0%であった.調査の実施時間 は15 分程度であった.本調査にあたっては,調査対象者に 調査実施についての了解を得た上で,アンケートは研究用 途以外に用いないことについて説明を行った. 2.2 調査項目 測定尺度には,創造性を測定する項目として,ゲームが好 きかどうかを把握する項目,ムンツァートの創造性尺度32 項 目[18],ゲームの利用と満足を測定するために,井口のゲー ムの利用と満足尺度の7 因子 27 項目を準備した. 2.2.1 ゲームが好きかどうかを測定する項目 本研究では,ほぼ全員ゲーム好きであると想定されること を前提としている.よってゲームが好きかどうかを把握するた め,「ゲームは好きですか」の項目を準備した.そしてこの項 目に対し,「5:とても,4:まあまあ,3:どちらでもない,2:あまり, 1:まったく」の 5 件法で回答を求めた. 2.2.2 ゲームの利用と満足を測定する項目 本調査では,ゲームの利用と満足の状況を把握するため に,井口のゲームの利用と満足尺度を用いる[26].ゲームの 利用と満足尺度は,「空想」,「承認」,「趣向」,「達成」,「友 達」,「学習」,「気晴らし」の7 因子から構成されている.ゲー ムの利用と満足尺度の下位尺度を表1 に示す.そして,それ ぞれの項目について,いずれも「5:とても,4:まあまあ,3:どち らでもない,2:あまり,1:まったく」の 5 件法で回答を求めた. 2.2.3 創造性を測定する項目 第1 章で述べたように,本調査では,創造性を測定するた めに,ムンツァートの作成した創造性尺度を用いる[18].ムンツ ァートの創造性尺度の項目を表2 に示す.この尺度は 32 項 目から構成されており,その合計値で創造性を評価すること ができる.これらの創造性の項目について,いずれも「5:とて も,4:まあまあ,3:どちらでもない,2:あまり,1:まったく」の 5 件 法で回答を求めた. 2.3 分析の手続き ゲームが好きかどうか,ゲームの利用と満足,創造性に関 して集計を行った.そしてゲームの利用と満足,創造性のそ れぞれに関して相関を求めた.次に,ゲームの利用と満足の それぞれの項目に対し,平均値を基準に上位群・下位群を 設定し,上位群・下位群で創造性に差異があるかについて, 対応のないt検定を用いて分析を行った.なお今回の調査 では,性別要因を入れずに分析を実施した. 表 1 ゲームの利用と満足尺度の項目 表 2 創造性尺度の項目

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3. 結果

3.1 調査対象者の状況および単純集計の結果 3.1.1 ゲームが好きかどうかについての集計結果 ゲームが好きかどうかについての質問に関する集計結果 を表3 に示す.表 3 より,平均値と標準偏差の和が取りうる値 の最大値である5.00 より高く,天井効果が見られた.よって, 本研究の調査対象者は,ほぼ全員がゲーム好きという前提 条件を満たしていることが把握された. 表 3 ゲームが好きかどうかについての集計結果 3.1.2 ゲームの利用と満足に関する集計結果 ゲームの利用と満足の7 因子の集計結果を表 4 に示す. 表4 より,ゲームの利用と満足全ての因子において中位点の 3.00 より値は高く,さらに「友達」は平均値と標準偏差の和が 取りうる値の最大値である5.00 より高く,天井効果が見られた. 以下,「友達」に関する結果は参考値として記す.また,各因 子のCronbach のα係数は,全ての因子において 0.70 以上 であり,いずれの因子も内部一貫性が高いことが把握された [32].よって,この尺度の利用は妥当であると考えられる. 表 4 ゲームの利用と満足の集計結果 3.1.3 創造性に関する集計結果 創造性についての集計結果を表5 に示す.表 5 より,創造 性は平均値104.62 (S.D.19.64),最大値 153,最小値 55,中 央値103 であり,平均値は中位点の 96 より高かった.また, Cronbach のα係数は 0.92 であり,内部一貫性が高いことが 把握された[32].よって,創造性尺度を用いることは妥当であ ると考えられる. 表 5 創造性の集計結果 3.2 各項目および因子間の相関 ゲームの利用と満足の7 因子,創造性それぞれの間の相 関係数 (ピアソンの積率相関係数) およびその検定結果に ついて,表 6 に示す.表 6 より,「空想」と「達成」および「学 習」,「承認」と「達成」および創造性,「達成」と「学習」,「友 達」と「学習」,「学習」と創造性の項目間において,相関係数 が中程度の相関を示す0.40 以上であり,大半の項目の相関 係数は有意であった.一方で,「気晴らし」,「趣向」では,中 程度の相関を有する項目がなく,「気晴らし」と「趣向」は, 「空想」,「承認」,「達成」,「友達」,「学習」から独立した要素で あることが示唆された. 3.3 ゲームの利用と満足,創造性の関連性 ゲームの利用と満足,創造性の関連性をより詳細に把握す るために,ゲームの利用と満足の7 因子それぞれについて, 平均値を基準に上位群・下位群を設定し,上位群・下位群の 間で創造性の平均値に差異があるかについて対応のない t 検定を行い評価した.その結果を表7 に示す.表 7 より,ゲー ムの利用と満足の各因子の上位群と下位群の創造性を比較 すると,「空想」,「承認」,「学習」の上位群の創造性は 1%水 準 (空想: t(75)=3.06,承認: t(75)=5.59,学習: t(75)=4.06,い ずれも p <.01),「達成」の上位群の創造性は 5%水準で平均 値が下位群よりも有意に高かった (達成: t(75)=2.53, p <.05). 一方で「趣向」,「気晴らし」では有意な差が見られなかった (趣向: t(75)=-0.24,気晴らし: twelch(52.69)=0.56, いずれも n.s.). なお「友達」には 5%水準で有意差が見られたが (t(75)=2.63, p <.05),天井効果が見られたため参考値として記す.

4. 考察

表3 より,ゲームが好きかどうかについての質問項目では, 平均値と標準偏差の和が取りうる値の最大値である5.00 より 高く,本研究の調査対象者はほぼ全員ゲーム好きである実 態が把握された.また,表7 より,ゲームの利用と満足の 7 因 子のうち,天井効果の見られた「友達」を除くと,「空想」,「承 認」,「学習」の上位群の創造性は 1%水準,「達成」の上位 群の創造性は5%水準で平均値が有意に高い傾向がみられ, 「趣向」,「気晴らし」では創造性と有意な差が見られなかった. この結果から,本研究の仮説は支持された. そして,「空想」,「承認」,「達成」,「学習」を高めるゲーム 題材の活用や実践を取り入れることにより,創造性を喚起しう る可能性がある.例えば,ゲームのストーリーを学生に考えさ せることや,その中で知識が得られるような内容を盛りこむこ とによって,「空想」,「学習」が高められ,それを通して創造 性が喚起される可能性がある.また,対戦ゲームを考えさせ ることや,解いたときの達成感が得られるパズルゲームを考 えさせることによって「達成」,「承認」が高められ,それを通し て創造性を喚起しうる可能性がある. 次に,「趣向」,「気晴らし」は他の項目と弱い相関もしくは 無相関であったことから,「趣向」,「気晴らし」は,「空想」, 「承認」,「達成」,「学習」から独立した要素として考えられる. よって,「趣向」,「気晴らし」以外の利用動機において創造 性を高めることを考えること,また「趣向」は創造性を高めるゲ ーム教育においては「空想」,「承認」,「達成」,「学習」と別 カリキュラムで取り入れることが有効である可能性がある.

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表 6 各因子および項目の相関係数 表 7 ゲームの利用と満足尺度と創造性尺度との関連性 例えば,創造性を喚起するために,上述した「空想」,「承 認」,「達成」,「学習」を高める活動とは別に,イラストを描か せる活動や,デザインをさせるような活動を行うことが重要で ある可能性がある. よって,「ゲームが好きだ」と考えている学生においては, 取り組み方や利用と満足の状況によって創造性が異なる可 能性が示唆された.

5. まとめと今後の展望

本研究では,ゲームを専攻する学生のゲームの利用と満 足と創造性の関連性について検討した.その結果,天井効 果の見られた「友達」を除くと,「空想」,「承認」,「達成」,「学 習」が高い学生は,創造性が高い傾向が見られ,本研究に おける仮説は支持される結果が得られた.そして「趣向」は創 造性とさほど関連性を持たない項目である可能性が示唆さ れた.よって,「ゲームが好き」な学生の創造性には,「ゲーム の利用と満足」の「空想」,「承認」,「達成」,「学習」が寄与し ている可能性があることが示された. 調査対象者の人数が77 名とさほど多くない条件ながらも, 「ゲームの利用と満足」と創造性の関連性を指摘したことは, ゲーム開発者教育において創造性を育成するにあたり,有 用であると考えられる.よって,今後のゲーム開発者教育に 対して一つ重要な知見を提供できたと考えられる. しかし,本研究には多くの課題が残されている.1 点目とし て,調査対象者はほぼ全員が「ゲームが好きである」と答える といった特異性を有していることから,ゲームを専攻していな い学生との比較などを含めた調査を実施する必要がある.2 点目として,創造性とゲームの関連性には様々な要因が考 えられることである.例えば特定のゲームジャンルが創造性と 関係している可能性があり,それを明らかにすることが重要 ではないかと考えられる.3 点目として,ゲーム開発者とゲー ムプレイヤでは,どのように創造性が異なるのか検討する必 要があることである.ものづくりと創造性の関連性はよく指摘 されることであるが,ゲームにおいても同様に成り立つかどう か検討する必要性があると考えられる.4 点目として,実践や 題材をどう設計するかについて検討し,その効果を測定する 必要があることである.今回の知見を踏まえ,実践や題材を 開発し,実際に現場でどのような効果が得られるかについて 検討するとともに,その精緻化が求められると考えられる. これらの課題を踏まえた上で,大学生以外に対する調査 や追試,調査対象者の人数を十分に確保した上での調査も 合わせて進め,今後のゲーム開発者教育に対する知見だけ ではなく,ゲームと創造性という文脈で広く研究を進めること が重要であると考えられる.これらについては今後の課題と する.

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本稿は,ゲーム学会第18 回全国大会[33],DiGRA2020[34] で発表した内容を大幅に加筆修正したものである.

謝辞

本研究の一部は,日本学術振興会特別研究員奨励費 18J20759 によって実施されたものである.本研究の遂行にあ たり,三重県立子ども心身発達医療センター児童精神科医 の大立博昭先生,関西学院高等部数学科教諭宮寺良平先 生,同教諭森巧尚先生,同教諭青木徹先生,関西学院大学 理工学研究科の萩倉丈さん,同大学理工学部戸國友貴さん, 同大学文学部柏木麻理子さんに様々なご助言をいただきま した.ここに感謝申し上げます.

参 考 文 献

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表 6 各因子および項目の相関係数  表 7 ゲームの利用と満足尺度と創造性尺度との関連性  例えば,創造性を喚起するために,上述した「空想」,「承 認」,「達成」,「学習」を高める活動とは別に,イラストを描か せる活動や,デザインをさせるような活動を行うことが重要で ある可能性がある.  よって,「ゲームが好きだ」と考えている学生においては, 取り組み方や利用と満足の状況によって創造性が異なる可 能性が示唆された.  5

参照

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