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日本文化・社会に関する内容の扱い方 ノンネイティブ日本語教師としての不安及びその克服

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Academic year: 2021

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56 本スライドは,2019年秋から2020年春にかけ,国際教養大学専門職大学院グロ ーバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域で行われた秋,冬, 春,計3期の実習(以下,秋実習,春実習,冬実習)において,筆者の授業中に 抱えた文化・社会に関する内容に対する不安及びその克服の過程を記録するア クションリサーチ発表のスライドである。

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57 3期にわたる実習の第一段階に位置づけられている秋実習は,冬・春実習と異 なり,学習者に事前に導入した文法項目を使用させ,与えられたタスクを遂行し てもらうのがその趣旨である。それに加え,授業に参加してくれた学習者の大部 は初級レベルであり,使える文型や語彙は非常に限られている。したがって,非 日本語母語話者である筆者は,「ある文法項目に対する自分の理解が正しいかど うか」「日本語で話すうちに適切な言葉が浮かんでこない」などのような懸念を 持っていたが,学習者の質問を予想したり,自分が学習者であった時の経験を活 かして「理解しづらいかもしれない」というところを見つけたりし,授業の前に 予め準備をしておいた。にもかかわらず,予想外の質問も聞かれて,うまく答え られなかった。その時から,文化・社会に関する内容に対する不安が生じた。 文化が冬実習の授業の重要な一部になり,どうしても避けられないと思い,先 生方とほかの実習生から意見やアドバイスをもらった上で,自分の授業を改善 し,積極的な姿勢で文化・社会に関する内容を授業に取り入れようと考えた。 春実習では,先行研究の成果を踏襲し,さらに文化・社会に関する授業の改善 を試みた。

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60 • 7 アメリカの全米外国語教育協議会(ACTFL)が策定した外国語学習基準「21 世 紀 の 外 国 語 学 習 ス タ ン ダ ー ズ 」 の 中 で , コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン (Communications),文化(Cultures),コネクション(Connections),比較 (Comparisons),コミュニティ(Communities),五つの領域を外国語教育の 目標にする必要がある,と述べられている。文化に関する理解は目標の五つ の領域のうちの一つになっている。大川(2006)ではこれら5つのCにより, 文化的知識に裏づけされた言語知識の運用能力を言語教育目標にしているこ とがわかった。 語彙や文法の知識の学習だけでは日本語の解読的意味,つまり外国語に翻 訳可能な表面的な意味は理解できたとしても,文化的な知識がなければ,言 葉の奥にある意味が読み取れない。 日本文化の環境は人間関係が密接で,1つの情報が人々の間に広く伝わり, 言語で明確に表現していなくても,お互いに理解できるという特徴がある(今 井 2001)。そのため,日本語非母語話者にとっては理解しにくい部分が多く ある。この日本文化の特徴から見ても,文化的な要素の知識が必要とされる ことが分かる。 さらに,2010年から日本語能力試験が新しくなり,言語知識(語彙や文法) をどの程度把握しているのかではなく,日本語をどの程度理解できるかとい う能力を重視するようになっている。日本語を理解する能力は国際交流基金 の『JF 日本語教育スタンダード 2010』 によると,語彙の知識,文法規則, 発音,文字,表記などに関する「言語構造的能力」,相手との関係や場面に応 じて適切に言語を使う「社会言語能力」,言葉を組み立てたり,役割や目的を 理解する「語用能力」の3つで構成されるとしている。この中で,「社会言語

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文化を理解する授業の中でも,まず目に見える「生活習慣・慣習」(Practices) と「所産・産物」(Products)をしっかり観察したり,できれば実際にやってみ たりすることが大切である。そして,そのことについて,分析したり討論したり

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69 • • 15 「生活習慣・慣習」は他の国での慣習及び人々の生活習慣であり,「生活習慣・ 慣習」を理解させる際,「日常生活」や「日常的な言語行動」を重視したかどう かが検証の基準となる。 「所産・産物」を理解させる際,授業では,視聴覚資料やレアリアを使ったか どうかが検証の基準となる。 「分析」させる際,「比較」という方法を活用したかどうかが検証の基準とな る。

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70 • 16 確かに,「歌舞伎」や「茶道」のような伝統的な文化の中でも,日本の歴史や 日本人の考え方など,文化の背景にあるものを学ぶことができるが,日本の伝統 文化は,「自分の国とは違うもの」「めずらしいもの」としてとらえられること が多いので,注意が必要である。

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72 • 18 「21世紀の外国語学習スタンダーズ」により,外国語学習の全てのレベルにお いて,学習者自身の文化と学習言語の文化の類似点と相違点の両者が提示され るべきである。他の文化の人や様々な文化を背景に表現されたものを学習者が 経験することは彼ら自身の認識を形作るのに役立つ。また,文化と密接に関わる 言語を個人的に探求することは,学習者が異文化理解と尊重を養うことを可能 とするということがわかった。「ものの見方」(Practices)段階に進む際,「比 較」という方法を用いることにより,分析の効果がより良くなる。

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74 4つのパターンの中で,4番以外はいずれも不完全である。 パターン1は,学習者に「生活習慣・慣習」もしくは「所産・産物」を見せ, 観察させるが,その背後にある「ものの見方」について分析させず,学習者に考 える機会を与えなければ,ある文化への理解を深めることもできなくなるので はないだろうか。さらに,見せて観察させるだけでは,ステレオタイプを助長さ せる可能性も存在する。 パターン2と3は,どれも観察段階より次の段階に進むが,「比較」のスライド で説明したように,比較活動をした上での分析は学習者に文化の多様性を理解 させ,それを尊重させることに効果が良い方法であるので,2と3はいずれもそれ ぞれの欠如がある。

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75 結果分析①: 文法項目の意味を理解してもらうために「日本のルール」という活動を行う。 様々な日本ではそうしなければいけない場面(イラスト)を提示し,学習者に発 話してもらう。 社会の慣習・生活習慣だけを授業に導入し,学習者に観察してもらうにもかか わらず,その背後にある価値観や考えについて,比較も分析や討論も行われず, Practicesしかできない。 文法中心の授業であるため,「〜なければいけません」という文型が使えるよ うになるのはこの授業の目的である。この文型は,条件形と否定形の組み合わせ で,教案を書く前にまず初級レベルの学習者にとっても理解しやすい説明方を 考えた。「〜なければいけません」という文型は少し厳しい感じがし,「ルール」 を説明するときによく使うのではないかと思い,学習者に代表的な日本のルー ルを説明して文型の意味や使う場面を理解させると決めた。文化に関する内容 を文型意味の説明の部分に導入した。例えば,「部屋に入る前に靴を脱がなけれ ばいけません」は,学習者にとって既に知っているルールで,「〜なければいけ ません」という文型の意味を理解するのがより簡単になる。文化的な要素を言語 教育に導入することで,文型の説明及び理解はしやすくなる。

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76 結果分析②: 授業の目標は,2つに分かれている。日本のレストランで「注文」と「支払い」 をするときに店員との会話ができることを目指す。写真とイラストで「日本のレ ストランではこうですよ」と紹介し,学習者に「台湾ではどうですか」と尋ね, 両方の違いについて考えさせて答えてもらう。 PracticesとProductsが達成できるが,「なぜ日本ではこのようになっています か」の分析段階に及ばない。 会話授業にもかかわらず,文化及び異文化間の比較を教案に入れました。「台 湾ではどうですか」と聞いてから,「日本ではこうですよ」と説明する。日本と 台湾は,様々なところが違っていますが,共通している部分もある。教師の一方 的な説明を避けるため,まず学習者に台湾のレストランのことを思い出しても らい,話させる。数多くの写真とイラストを使って日本のレストランを説明する。 最後は両方の違いと共通点に気づかせ,比較させることにより,日本のレストラ ンで注文及び支払いをするときに使う文型を把握させる。

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77 結果分析③: この授業の内容は「日本の年中行事(お正月とお盆)について理解を深めて, 台湾の年中行事と比べてもらう」である。まず,写真を使ってお正月の時期と過 ごし方を学習者に紹介し,学習者に台湾のお正月と比べてもらう。その後,写真 とイラストでお盆の時期と過ごし方,特にお供物を学習者に紹介し,「どうして それを御供物として使うか」について考えさせ,学習者に台湾のお盆と似ている 年中行事と比べてもらう。 年中行事は「伝統文化」とはいえ,日常生活にも繋がっている。写真とイラス トで日本の年中行事を紹介するのみならず,学習者に主導権を与えて比較活動 を行い,さらにお供物の文化に背後にある考えや意味についても学習者に自分 で考えさせるので,3つのPが達成できる。パターンは「観察→比較+分析」であ る。 この授業は,まず観察活動を行い,次に学習者に比較・分析をしてもらい,「文 化を知る」→「文化を比較する」→「文化を理解する」のような流れになってい る。文化の授業であるため,日本文化への理解を深めるのはもちろん1つの大き な目標だが,春実習の授業は口頭運用能力の向上も目的としていますので,この 授業で学習者に何かを見せて教師が説明するだけではなく,教師の説明を減ら して文化に関する質問を学習者に投げて,学習者に自分の話で自分の考えを話 してもらう。文化と言語教育のつながりがそこにある。

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78 知らないことを次から次へと調べていく姿勢が重要である。全てを知る人に なるのが確かに無理かもしれないが,博学な人になるのが可能である。現状に安 んじて進歩しようとしないことをしてはいけない。日本文化や日本のサブカル チャーに興味があるから日本語を学び始める人が多いので,彼らが興味を持っ ていることや流行っているものを積極的な態度で受け入れ,どうして好かれて いるのか,どこが面白いのか,それに関して調べていくのが大切である。 文化授業はもちろん,たとえ文法や会話授業であっても,授業の内容と関係あ る文化的な要素を積極的に授業に取り入れる。例えば,「みんなの日本語」とい う教材は,文法と会話が中心になっているが,様々な日本の生活場面がテキスト として利用されている。「どこにごみを出したらいいですか」という会話授業で, 文法の意味を理解させ,会話練習を行うだけではなく,日本のゴミ分別も紹介し, 学習者に自国のゴミの分け方や出し方についてシェアしてもらう。

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79 • 25 検証項目②は,実際に授業中にとった行動を当時の学習者の反応とともに検 証する。 「教師が説明して教えることより,学習者が自分で気づいたり考えたりする機 会を十分に確保する」の利点: 1)自分とは異なる多様な文化や考え方の存在に気づき,視野を広げることがで きる。 2)自分や自分の文化を振り返ることができる。 3)新しいものや自分と違うものと接したときの姿勢を養うことができる。 4)日本語の学習と日本事情や日本文化の学習を一緒に考えることによって,言 語と文化がつながっていることに気づくことができる。

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80 Step1: 教師がすぐに説明をし始めるのではなく,学習者に観察する時間を与える。 Step2: 他の文化に属する者は自分とは異なった世界観を持っていることを学習者に気 づかせる。他の文化での類似する概念を模索することで,学習者は様々な概念に 対して新しい見方をするようになる。 Step3: 2つの文化をいわゆる「ステレオタイプ」で比べるのではなく,個人と個人を比 べたり,違うところだけでなく,共通点も見つけたりするように指導することが 大切。

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82 結果分析①: 授業の目的は,「日本のレストランでスムーズに注文や支払いすることができ る」である。 授業で,イメージができるように様々な写真とイラストを使って日本での食 事に関することや注文と支払いのマナーについて様々な説明を行った。「比較」 を心掛け,日本のことを説明した後,すぐに台湾について学習者に尋ねたが,教 師の説明が多く,学習者に十分な考える時間を与えなかった。「どうして日本で は口頭での注文が普通ですか」「支払うときにどうして普通現金とカードを使い ますか」などの質問も学習者に聞かなかった。それに,「日本/台湾のレストラ ンで注文するとき/支払うときに何を言いますか」のようなあまり意味がない比 較も学習者にしてもらった。

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83 結果分析②: 授業の内容は,「学習者に日本ではよく使われているSNSについての理解を深 めてもらい,最近の若者言葉を紹介する」である。 授業中,まずはデータ資料を使って日本ではよく使われているSNS及び利用人 数について学習者に紹介し,学習者にその中のSNSを利用した経験をシェアして もらった。その後,例文で若者言葉を学習者に見せ,意味と使う場面を推測して もらった。最後は,知っている日本の若者言葉を皆に紹介しようと指示した。 授業でスクリーンショットやデータ資料など,様々な視聴覚資料を使い,日本 のSNSと若者言葉を学習者に説明し,学習者に自分の経験をシェアしてもらい, 自分で様々な若者言葉の意味を考えさせたが,台湾のSNSや若者言葉との比較は 行わず,違いと共通点,さらに文化の「多様性」についても学習者に気づかせる ことはできなかった。 学習者に日本の若者言葉を見せて意味を推測させたときは,与えた考える時 間が短く,若者言葉に詳しい1人の学習者がいて,他の学習者がまだ考えている 途中に答えてしまった。教師は,「みんな一緒に考えてください」などの指示を 出さず,ほかの学習者を指名し,答えさせなかった。

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84 結果分析③: 授業の内容は,「日本の年中行事(お正月とお盆)について理解を深めて,台 湾の年中行事と比べてもらう」である。 授業の後半にお盆のお供物について説明したとき,背後の意味や考えについ て考えさせてから,台湾との違いや共通点を比較してもらった。ただ,授業の前 半で,お正月について説明したときに教師からの一方的な説明が多く,写真とイ ラストを見せ,「何ですか。知っていますか」と聞き,すぐに答えを出すパター ンが多かった。学習者に自分の知っていることや経験をシェアしてもらわなか った。

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85 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 秋実習 冬実習 春実習 38% 50% 75% 31 計算式: 2つの検証基準を満たしている授業の割合=実際2つの検証基準を満たしている 授業の数÷担当した授業の数

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• 日本語力を高める。

• 学習者に十分な考える時間を与える。

• 本番の授業の前に,何度もリハーサルをする。学習者にとって理解し難いか

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87 33 検証項目③は,実習が進むと伴い,自分の心理状態に着目し,心境(不安や聞 かれた時の緊張感)がどう変わったか,自分の内省をもとに掘り下げて分析する。 実習振り返り: 実習後,指導教員とほかの院生からフィードバックをもらい,自ら振り返りをし た。その記録に基づき,分析を行う。

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88 34 西谷(2013)は,外国人日本語教師は,日本人教師とは異なる困難や不安を抱 えていると述べている。この表は,20項目の「外国人日本語教師の不安構造」を, 「授業実践力」「日本語・日本語文化理解」「学生関係」の3つの要素に分類し ているものの一部である。日本文化・社会に関する内容を扱ったときに感じた不 安はこの2点だった。実習の進行により,この2種の不安が減ったかどうかを分析 する。

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90 秋実習結果分析: 3期にわたる実習の第一段階に位置づけられている秋実習は,冬・春実習と異 なり,学習者に事前に導入した文法項目を使用させ,与えられたタスクを遂行し てもらうのがその趣旨である。それに加え,授業に参加してくれた学習者の大部 は初級レベルであり,使える文型や語彙は非常に限られている。 したがって,非日本語母語話者としては,「ある文法項目に対する自分の理解 が正しいかどうか」「日本語で話すうちに適切な言葉が浮かんでこない」などの ような懸念を持っていたが,学習者の質問を予想したり,自分が学習者であった 時の経験を活かして「理解しづらいかもしれない」というところを見つけたりし, 授業の前に予め準備をしておいた。ノンネイティブ日本語教師でも日本語母語 話者の実習生と同じような授業ができるのではないかと考えていた。 にもかかわらず,文化に関する予想外の質問が聞かれ,うまく答えられなかっ た。誘いの「ませんか」を学習者に説明した時,「先生,どうして「ますか」で はなく,「ませんか」を使いますか。どうして日本人はよくNegative Formを使い ますか」と聞かれた。 その時から,文化・社会に関する内容に対する不安が生じた。文法項目や語彙 に関し,事前に準備しておけば問題にならないが,もし文化や社会に関する質問 ならどう予め準備すればいいか分からなく,準備すれば準備するほど,切りがな いと感じ,どれほど準備しても必ず自分の知らないことがまだ残っているとい う無力感があった。

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91 冬実習結果分析: 冬実習は日本語・日本文化の集中プログラムであり,日本語の口頭運用能力の 向上はもちろん,日本(秋田)文化体験及びその理解を深めることも目的とし, 文化授業を初めてシラバスに導入した。秋実習と違い,1人で教案を考えるので はなく,4人の実習生は1つのグループとしてコースをデザインし,その教案と教 材を作成し,共同作業をした。 教案を作成する前に既に文化的な要素を授業に入れると決めたので,どうや って不安を克服するかについて考え始めた。 まずは,どうすれば学習者に正しい日本文化を教えられるかについて,例えば, 私が担当した会話授業「日本のレストランでの注文と支払い」で日本のレストラ ンの雰囲気や従業員の挨拶,注文する・支払う時に使う文型などを学習者に教え るので,教案を書く前にほかの実習生に知っていることをシェアしてもらった り,ネットで調べたりした。そして,そういう文化に関する内容の説明を間違え ないように,授業の前に日本人の実習生に説明してみて,間違いがあるかどうか を確認してもらった。 そのため,自分が日本文化を正しく理解し,学習者に教えられるかどうかとい う不安が減ったのではないかと思った。 しかし,料理の作り方や使った食材を説明した時に学習者にとって難しい言 葉やまだ未習の単語を使用してしまったので,実際の授業中にまだ不安を感じ た。事前に準備しておいたが,説明した時に学習者の表情や反応から自分の説明 に対してわかっていないかもしれないと覚えた。やさしい日本語で言い替えよ うと思っていたが,簡単かつ適切な言葉が思いつかなかった。その時,「もし母 語話者だったら,きっとうまく対応できるのだ」と思っていた。

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92 春実習分析結果: 春実習の2020年度輔仁大学日本語プログラムは日本語の口頭運用能力の向上 を目的として,授業で会話練習をたくさんさせた。 春実習の前に,自分の不安を克服するために文献を読み始めた。文化を扱う時 にノンネイティブ日本語教師としての「いいところ」や日本語の授業で文化の扱 い方を理解し,自分の不安を減らした。 具体的に,まずは,全ての文化・社会に関する内容を把握することは無理だと 納得した。たとえネイティブ日本語教師であっても,必ず詳しくないことが存在 しているはずだと思うようになった。学習者が教師の知らないことを知ってい ると認め,わからない時に素直に「わからない」と言えばいいという考え方に変 わった。授業で,「説明係」ではなく,学習者同士の会話や討論を始める役割を 果たすべきだと思い,学習者に自分の経験や知っていることをシェアしてもら ったり,皆で話し合ってもらったりすることが多くなった。教師とはいえ,春実 習の授業でいろいろと勉強になった。 「日本のSNSと若者言葉」という文化授業で学習者に自分の知っている若者言 葉をシェアしてもらった。1人の学習者が「まじ卍字」をシェアし,意味を理解 できなかったが,不安を感じなかった。学習者がシェアした後,「まじ卍字はど ういう意味ですか。説明できますか」 「私が知らなかったです。皆さんすごい ですね!いろいろ知っていますね」と言っていた。学習者にその意味を説明させ, 日本人の実習生によりわかりやすい日本語でその意味を他の学習者に教えても らった。

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93 「わからない」は恥ずかしいことではないという考え方を持ち,日本語のレベ ルから見ると学習者の先生だが,ほかの分野であれば学習者のほうが詳しいか もしれない。それについて,学習者に質問を投げて,たくさん発話(説明)して もらう。それに教師にとって,知らないことがあれば調べてより詳しくなる必要 もあるので,授業後,必ずネットで検索するか,日本人に聞いて,できる限り客 観的に把握する。

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参照

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