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大館市長走風穴冷蔵倉庫跡の現地調査記録 ―近年確認された 2 カ所を追加

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Academic year: 2021

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大館市長走風穴冷蔵倉庫跡の現地調査記録

―近年確認された 2 カ所を追加

A record of Nagabashiri Wind Cave Cold Storage Sites in Odate

City:Additional two cold storage sites confirmed in recent years

鳥潟幸男

1*

・菊地卓弥

2

TORIGATA Yukio

1*

KIKUCHI Takuya

2

1大館郷土博物館 2大館市文化財保護審議会

1 Odate City Museum 2Odate City Council for the Protection of Cultural Properties 1017-0012 秋田県大館市釈迦内字獅子ヶ森 1 *問合せ先:[email protected] 要旨 秋田県北部の国見山山麓の長走風穴館周辺において,風穴冷蔵倉庫跡 2 カ所が新たに確認された ので現地調査の結果を報告する.これで国見山山麓において著者らが確認した風穴冷蔵倉庫跡は合 計 19 カ所となり,山麓の広範囲に分布していることが明らかになった. キーワード:風穴,冷蔵倉庫,風穴倉庫,長走風穴 1.はじめに 国指定天然記念物「長走風穴高山植物群落」 のある国見山山麓では,明治末から昭和初期に かけて 20 棟あまりの風穴冷蔵倉庫が建築され, 自然の冷気を利用して食品,種子,蚕種等が貯 蔵されてきた(荒谷, 1920; 工藤,1939). ところが,昭和中期以降は電気冷蔵庫の普及 とともに風穴冷蔵倉庫(以後,単に倉庫と表記 する)は使用されなくなり,その位置が不明瞭 になっていた.よって,現況を明らかにするた め,2010 年代に国見山山麓で現地踏査が行われ, 既知の 8 カ所に加えて,2012 年までに 5 カ所 (鳥潟, 2013),以後 2014 年までに 4 カ所(鳥 潟,2015)の倉庫跡が確認されてきた.本稿では, その後に発見された 2 カ所の位置と現況を報告 するものである. 2.手法 経緯度は GPS 精度が向上する落葉後の 2020 年 12 月 7 日に,ハンディ GPS(Garmin GPS62S) を用いて 5 回計測し,その平均値を観測点の経 緯度とした.標高はその経緯度を国土地理院の 地理院地図に入力して求めた.斜面方位,斜度 はミラーコンパス SUUNTO MC-2 を用いて記録し た.倉庫跡の地下空隙温度と外気の温度は,SATO SK1260 で測定した.倉庫跡の底面に崩落した石 積壁の石材のサイズは,各倉庫ともランダムに 10 個計測した. 倉庫跡分布図の作成に当たっては地理情報 システム QGIS Desktop Ver.3.10 を用いた.デ ータは,国土地理院基盤地図情報の基本項目を 国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービ ス(https://fgd.gsi.go.jp/download/)から 2021 年 1 月 2 日にダウンロードした.その後, 国土地理院基盤地図情報ビューア Ver.4.00 で シェープファイルに変換した後,QGIS で地図の 作成を行った. なお,当分布図では,鳥潟(2013)で報告さ れた倉庫跡を A, B, C,D,G,鳥潟(2015)で 報告された倉庫跡を E,F,H,I ,本稿で報告す る倉庫跡を J,K で表すこととした.

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3.風穴冷蔵倉庫跡の位置・現況 2018 年 12 月 2 日,鳥潟により長走風穴館の 北北東 210~230m の位置で倉庫跡が 2 カ所発見 された.これらの倉庫跡のうち,南寄りのもの を J,北寄りのものを K と表記することとし, 概観を図 1, 2 に示す.また,これらの経緯度を 図 1 風穴冷蔵倉庫跡 J. 2020.6.20 撮影. 表 1 新たに確認された風穴倉庫跡 J, K 発見日 2018.12.2 鳥潟 調査日 (1) 2020.6.20 鳥潟,菊地 (2) 2020.12.7 鳥潟 倉庫棟数 2 棟 風穴所在の山 国見山(454.0 m) 位置 倉庫跡 J 北緯 40.38361°東経 140.60434°標高 約 188m 長走風穴館の北北東約 210m 倉庫跡 K 北緯 40.38387°東経 140.60450°標高 約 190m 長走風穴館の北北東約 230m 倉庫跡 J,K 間の距離は約 20m 斜面方位,斜度 倉庫跡 J 斜面方位 WNW,斜度 30° 倉庫跡 K 斜面方位 NW,斜度 20° 地質 形成時代:新第三期中新世後期ランギアン期~トートニアン期 岩相:デイサイト・流紋岩 ※産業技術総合研究所地質調査総合センター編(2015)の 20 万分の 1 日本シームレス地 質図 V2 による 風穴の微気象 倉庫跡 J 地下空隙温度 9.5℃(2020.6.20 11:30),外気温 17.7℃(同日 11:55) 地下空隙温度 0.2℃(2020.12.7 11:20),外気温 6.5℃(同日 11:50) 地下空隙と地表を出入りする風:両日とも不明瞭 倉庫跡 K 地下空隙温度 7.5℃(2020.6.20 11:50),外気温 17.7℃(同日 11:55) 地下空隙温度 0.1℃(2020.12.7 11:40),外気温 6.5℃(同日 11:50) 地下空隙と地表を出入りする風:両日とも不明瞭 寒地性植物の有無 無し.菊地・鳥潟(2021)による. 倉庫跡の形状 倉庫跡 J 幅 5m 奥行 6m 石積跡あり.倉庫跡 K 幅 4m 奥行 5m 石積跡あり. 特記事項 倉庫跡 J の底面に崩落していた石材の大きさ(cm) 35×22×15, 30×15×12, 45×25×18, 38×17×17, 42×28×23, 70×19×12, 40×25×12, 23×16×12, 23×12×11, 33×13×10 倉庫跡 K の底面に崩落していた石材の大きさ(cm) 28×23×13, 18×14×12, 43×22×20, 35×17×11, 27×10×9, 52×27×15, 図 2 風穴冷蔵倉庫跡 K. 2020.6.20 撮影.

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表 1 に示し,その位置を図 3 にプロットした. 倉庫跡 J,K とも四方に石積壁の痕跡があり (図 4),入口付近には狭い通路跡が確認された. 倉庫跡の規模は J が幅 5m × 奥行 6m,K が幅 4m × 奥行 5m であった.いずれも斜面を掘削して 窪みをつくり,四方に石を積み上げて造られた 構造になっていた.ただし,石積壁は大部分で 倉庫跡の底面に向かって崩落していた(図 5). 崩落した石は角張った柱状で,長径は 20~50cm のものが多かった(表 1,図 6).なお,両倉庫 跡ともに屋根や扉等に使用された建材等は確認 されなかった. 倉庫跡には倒木が覆い被さり,オシダ等のシ ダ類が倉庫内に自生していた(植生の詳細は菊 地・鳥潟(2021)参照).倉庫跡周辺の斜面には, 倒木が多くみられ,倒木の根茎部には石が絡ま り,地上部に露出していた. 倉庫跡の地下空隙温度(2020 年 6 月 20 日観 測)は,倉庫跡 J で 9.5℃,倉庫跡 K で 7.5℃で あり,外気温より 8.2~10.2℃低かった(図 7). また,倉庫跡 J では局所的に霧の発生が認めら れた(図 5).これは,倉庫跡の窪みに滞留した 図 3 長走風穴冷蔵倉庫跡分布図.この地図は,国土地理院の基盤地図情報 (基本項目)を使用して QGIS で作成した.

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冷気が相対的に高温多湿の外気に触れて凝結し たものである.また,倉庫跡内に崩落した石材 には青々とコケがむしており,夏季の間,長期 間湿潤状態であることが示唆された(図 5). 2020 年 12 月 7 日は,気象庁アメダスによる と大館は 11 日ぶりの高温で,国見山山麓の斜 面では融雪が進み大部分で積雪は無かったが倉 庫跡の窪みの中にだけは残雪が認められた(図 8,9).積雪深は倉庫跡 J で 4cm(全層ざらめ雪), 倉庫跡 K で 5cm(全層ざらめ雪)であった.倉 庫跡にだけ残雪があるのは,その場所が周囲よ り相対的に低温状態であることを示唆するもの である.冬季の冷風穴は,地下空隙と外気の温 度差による対流で冷たい外気を地中に吸い込み 続け,地下浅部が冷却される(荒谷,1920).よ って,12 月 7 日のように一時的に外気温が上昇 図 4 一部に残されていた石積壁の跡(倉庫跡 J). 2020.6.20 撮影. 図 5 倉庫跡 J の底面に崩落した石積壁の石材と倉 庫跡に発生した霧.2020.6.20 撮影. 図 9 倉庫跡 K の窪みに残る雪.2020.12.7 撮影. 図 6 石積壁に使用されていた石材(倉庫跡 J). 2020.6.20 撮影. 図 7 倉庫跡 K の地下空隙温度.2020.6.20 撮影. 図 8 倉庫跡 J の窪みに残る雪.2020.12.7 撮影.

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態が維持されていたため融雪が遅れ,雪が残っ いたものと考えられる. 4.おわりに 本稿では近年確認された長走風穴冷蔵倉庫跡 2 カ所の位置と現況を記録した.これで長走風 穴の倉庫跡は 19 カ所で確認され,広範囲に分 布していることがわかった.本稿で報告した 2 カ所とも積石の大部分は崩落して石積壁は原形 をとどめておらず,また倒木した樹木が倉庫跡 に覆い被さったり,倉庫跡に植物が侵入したり して,年々森林に埋もれつつある様子がうかが えた.倉庫跡の分布を確認することは,国見山 の風穴分布(温度異常の分布)を明らかにする ことにもつながるため,今後も調査を継続して いきたい. 引用文献 荒谷武三郎(1920):風穴の研究,理学界,18, 208-213. 菊地卓弥(2013):2012 年 6 月の長走・片山・岩 神風穴植生調査について(報告).火内,11, 42-53. 菊地卓弥・鳥潟幸男(2021):大館市長走風穴冷蔵 庫跡の植生(第2報).火内,15,1- 5. 工藤正(1939):北秋自然誌(復刻版 1984).森吉 町史資料編第 12 集,森吉,森吉町史編纂会, 149pp. 産業技術総合研究所地質調査総合センター編(2 015):20 万分の 1 日本シームレス地質図 V2 2015 年 5 月 29 日版.https://gbank.gsj.jp /seamless/v2/viewer(2021.1.7 閲覧). 鳥潟幸男(2013) :消失しつつある長走風穴の冷 蔵庫跡現地確認調査(報告) .火内,11,54-63. 鳥潟幸男(2015):長走風穴・片山風穴・岩神風 穴・新沢風穴の風穴冷蔵倉庫跡の現地調査記 録.火内,12,77-89 . したとしても,倉庫跡の地表付近だけは低温状

表 1 に示し,その位置を図 3 にプロットした.  倉庫跡 J,K とも四方に石積壁の痕跡があり (図 4) ,入口付近には狭い通路跡が確認された. 倉庫跡の規模は J が幅 5m × 奥行 6m,K が幅 4m  ×  奥行 5m であった.いずれも斜面を掘削して 窪みをつくり,四方に石を積み上げて造られた 構造になっていた.ただし,石積壁は大部分で 倉庫跡の底面に向かって崩落していた(図 5) . 崩落した石は角張った柱状で,長径は 20~50cm のものが多かった(表 1,図 6) .なお,両倉庫

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