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タイの自動車産業と自由貿易協定 (トレンド・リポート)

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Academic year: 2021

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(1)

タイの自動車産業と自由貿易協定 (トレンド・リポ

ート)

著者

東 茂樹

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

128

ページ

22-25

発行年

2006-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00005481

(2)

タ イ の 自 動 車 生 産 台 数 が 、 二 ○ ○ 五 年 は 一 一 月 二 三 日 に 一 ○ ○ 万 台 を 突 破 し た 。 タ イ 工 業 連 盟 主 催 の 記 念 式 典 が 開 催 さ れ 、 自 動 車 メ ー カ ー の 完 成 車 工 場 と の オ ン ラ イ ン に よ り カ ウ ン ト ダ ウ ン を 行 い 、 夕 方 五 時 過 ぎ に 一 ○ ○ 万 台 を 達 成 し た 。 二 ○ ○ 五 年 は 年 間 で 一 一 二 万 五 三 一 六 台 を 生 産 し 、 世 界 第 一 四 位 の 自 動 車 生 産 国 と な っ た 。 タ イ 政 府 が 二 ○ ○ 三 年 に 策 定 し た ﹁ ア ジ ア の デ ト ロ イ ト ﹂ 計 画 で は 、 二 ○ ○ 六 年 に 一 ○ ○ 万 台 を 生 産 し 、 う ち 四 ○ 万 台 を 輸 出 す る 目 標 で あ っ た 。 と こ ろ が 当 初 の 見 込 み を 上 回 る 生 産 拡 大 が 続 き 、 生 産 、 輸 出 と も に 一 年 前 倒 し で 達 成 さ れ た ︵ 図 1 ︶。 当 初 の 目 標 で は 二 ○ 一 ○ 年 に 一 八 ○ 万 台 を 生 産 し 、 ト ッ プ 一 ○ の 仲 間 入 り を め ざ す 計 画 で あ っ た が 、 急 速 な 増 加 傾 向 を 受 け て 、 ス リ ヤ 工 業 大 臣 は 、 二 ○ 一 ○ 年 の 生 産 目 標 を 二 ○ ○ 万 台 へ 上 方 修 正 し て い る 。 表 1 は 、 世 界 の 自 動 車 生 産 国 ト ッ プ 一 五 ︵ 二 ○ ○ 四 年 ︶ で あ る が 、 生 産 台 数 の 前 年 比 伸 び 率 を み る と 、 タ イ は イ ン ド に つ い で 高 く な っ て い る 。 先 進 国 の 自 動 車 市 場 は 飽 和 状 態 に 近 づ い て お り 、 今 後 大 き な 伸 び は 期 待 で き な い 。 注 目 さ れ て い る B R I C s ︵ ブ ラ ジ ル 、 ロ シ ア 、 イ ン ド 、 中 国 ︶ は 、 巨 大 な 市 場 を も ち 、 自 動 車 生 産 が 急 速 に 増 加 し て い る 。 タ イ は 、 こ れ ら の 大 国 と 肩 を 並 べ る 増 加 を 示 し て い る 。

二 ○ ○ 五 年 の 自 動 車 国 内 販 売 台 数 は 、 七 ○ 万 三 ○ 四 五 台 に 達 し た 。 内 訳 は 1 ト ン ・ ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク が 約 四 七 万 台 で 国 内 販 売 の 三 分 の 二 を 占 め る 一 方 、 乗 用 車 は 一 九 万 台 弱 で 前 年 よ り 販 売 台 数 が 一 割 落 ち 込 ん だ 。 1 ト ン ・ ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク は 物 品 税 が 優 遇 さ れ て い る う え に 、 各 メ ー カ ー が 燃 費 の 良 い 新 モ デ ル を 投 入 し た た め 、 前 年 比 二 七 % 増 加 し た 。 乗 用 車 は 、 石 油 価 格 の 高 騰 、 金 利 上 昇 な ど が 影 響 し 、 メ ー カ ー の 新 モ デ ル 投 入 も 少 な か っ た 。 メ ー カ ー 別 の 自 動 車 販 売 シ ェ ア で は 、 ト ヨ タ 、 い す ゞ 、 ホ ン ダ 、 三 菱 、 日 産 の 日 系 五 社 で 八 五 % を 占 め て い る ︵ 図 2 ︶。 自 動 車 メ ー カ ー は 二 ○ ○ 二 年 以 降 、 タ イ に 世 界 市 場 向 け の 戦 略 車 を 投 入 し て お り 、 自 動 車 の 生 産 ・ 輸 出 拠 点 と 位 置 付 け て い る 。 各 社 の 戦 略 を み て お こ う 。 ト ヨ タ は ア ジ ア 専 用 小 型 乗 用 車 ソ ル ー ナ の 後 継 モ デ ル で あ る ソ ル ー ナ ・ ヴ ィ オ ス の 生 産 を 二 ○ ○ 二 年 か ら 開 始 し 、 東 南 ア ジ ア 域 内 貿 易 の 自 由 化 ︵ A F T A ︶ に と も な い 、 タ イ で 集 中 生 産 し て 域 内 各 国 へ 輸 出 し て い る 。 二 ○ ○ 五 年 末 に は 新 型 の ヤ リ ス ︵ 日 本 名 ヴ ィ ッ ツ ︶ を 投 入 し 、 乗 用 車 の 生 産 能 力 を 年 産 一 一 万 台 か ら 二 ○ ○ 六 年 に 二 ○ 万 台 へ 拡 大 す る 。 商 用 車 で は 、 投 資 委 員 会 の ク ラ ス タ ー 誘 致 政 策 の 適 用 を 受 け て 設 備 拡 張 を 行 い 、 日 本 か ら ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の 生 産 を 全 面 的 に 移 管 し た 。 こ の ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク と 多 目 的 車 ︵ I M V ︶ プ ロ ジ ェ ク ト は 、 日 本 に ベ ー ス と な る 車 種 が 存 在 せ ず 、 部 品 の 調 達 、 生 産 、 供 給 を す べ て 海 外 で 行 う 点 に 特 徴 が あ る 。 タ イ で は 二 ○ ○ 四 年 か ら ハ イ ラ ッ ク ス V I G O と S U V の フ ォ ー チ ュ ナ ー を 生 産 し 、 完 成 車 な ら び に エ ン ジ ン と C K D 部 品 を 、 ア ジ ア 、 欧 州 、 オ セ ア ニ ア へ 輸 出 し て い る 。 商 用 車 の 生 産 能 力 は 年 産 二 五 万 台 で あ る が 、 新 工 場 の 建 設 に 着 手 し 、 二 ○ ○ 七 年 に は 三 五 万 台 に 増

タイの自動車産業と

自由貿易協定

東 

茂樹

Trend Report

トレンド・リポート

(3)

強 す る 。 ト ヨ タ は ま た 、 現 地 市 場 に 対 応 し た 商 品 開 発 力 を 強 化 す る た め に 、 タ イ に 研 究 開 発 拠 点 を 設 立 し 、 二 ○ ○ 五 年 か ら 事 業 を 開 始 し た 。 ホ ン ダ も ア ジ ア 専 用 小 型 乗 用 車 シ テ ィ を 二 ○ ○ 二 年 に フ ル モ デ ル チ ェ ン ジ し て 、 同 年 末 か ら 日 本 へ も 輸 出 し て い る ︵ 日 本 名 フ ィ ッ ト ア リ ア ︶。 二 ○ ○ 三 年 に は 生 産 能 力 を 年 産 七 万 台 か ら 一 二 万 台 に 拡 大 し て 、 ア コ ー ド を フ ル モ デ ル チ ェ ン ジ す る と と も に 、 新 し く ハ ッ チ バ ッ ク ・ タ イ プ の ジ ャ ズ ︵ 日 本 名 フ ィ ッ ト ︶ を 投 入 し た 。 二 ○ ○ 五 年 に は 、 新 型 シ ビ ッ ク を 発 売 し て い る 。 こ れ ら の 車 種 は 、 A F T A に よ り タ イ で 集 中 生 産 し て 域 内 各 国 に 輸 出 し て い る 。 ホ ン ダ は さ ら に ア ジ ア ・ 大 洋 州 本 部 の 地 域 本 社 機 能 を 二 ○ ○ 四 年 に 日 本 か ら タ イ へ 移 管 し 、 現 地 市 場 対 応 型 の 経 営 体 制 を 強 化 し て い る 。 ア ジ ア 大 洋 州 の 四 輪 研 究 所 も 二 ○ ○ 五 年 に タ イ に 設 立 し 、 開 発 機 能 の 現 地 化 を 加 速 し て い く 計 画 で あ る 。 い す ゞ は 一 九 九 九 年 に G M の 出 資 比 率 を 四 九 % へ 引 き 上 げ る と と も に 、 G M グ ル ー プ の 商 用 車 開 発 を い す ゞ が 主 体 と な っ て 進 め て い く こ と で 合 意 し た ︵ G M と い す ゞ は 二 ○ ○ 六 年 四 月 に 資 本 提 携 を 解 消 し た が 、 事 業 提 携 関 係 は 継 続 ︶。 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の 新 モ デ ル に つ い て は 、 G M と の 共 同 開 発 に よ り タ イ に 生 産 を 集 約 し て 、 世 界 各 国 へ 輸 出 す る 戦 略 を 採 る 。 タ イ 国 内 で は 新 型 車 い す ゞ D ︲ M A X が 二 ○ ○ 二 年 に 発 売 さ れ 、 輸 出 向 け 車 に つ い て は G M の タ イ 工 場 に 生 産 を 委 託 し て い る 。 い す ゞ は ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の 生 産 能 力 を 増 強 し て お り 、 国 内 向 け は 年 産 一 四 万 台 か ら 二 ○ ○ 七 年 に 二 ○ 万 台 へ 、 輸 出 は 同 年 に 完 成 車 五 万 台 お よ び C K D 部 品 五 万 台 へ 引 き 上 げ 、 あ わ せ て 三 ○ 万 台 の 生 産 体 制 を 計 画 し て い る 。 三 菱 自 動 車 は 一 九 九 ○ 年 代 か ら タ イ の 完 成 車 輸 出 を 主 導 し て き た が 、 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の ス ト ラ ー ダ を フ ル モ デ ル チ ェ ン ジ し て 、 二 ○ ○ 五 年 に ト ラ イ ト ン を 発 売 し た 。 タ イ 工 場 の 生 産 能 力 は 、 二 ○ ○ 四 年 に 年 産 一 二 万 台 か ら 一 八 万 台 へ 拡 大 し た が 、 二 ○ ○ 六 年 に は さ ら に 二 ○ 万 台 へ 増 強 す る 予 定 で あ る 。 同 社 の 再 生 計 画 で は 、 タ イ を 世 界 市 場 へ の 生 産 ・ 輸 出 基 地 と 位 置 づ け て お り 、 ト ラ イ ト ン は 世 界 戦 略 車 と し て 欧 州 を は じ め 世 界 各 国 へ 輸 出 さ れ る 。

﹁ ア ジ ア の デ ト ロ イ ト ﹂ 計 画 で は 、 ア ジ ア の 自 動 車 生 産 ・ 輸 出 拠 点 お よ び 自 動 車 部 品 の 集 積 地 と し て タ イ が 成 長 す る こ と を め ざ し て い る 。 二 ○ 一 ○ 年 の 目 標 は 、 生 産 台 数 一 八 ○ 万 台 ︵ の ち に 二 ○ ○ 万 台 へ 上 方 修 正 ︶、 自 動 車 部 品 輸 出 四 ○ ○ ○ 億 バ ー ツ ︵ 二 ○ ○ 五 年 は 二 二 七 一 億 バ ー ツ ︶、 自 動 車 生 産 の 付 加 価 値 七 ○ % を 掲 げ て い る 。 タ イ 自 動 車 産 業 振 興 機 構 ︵ T A I ︶ は 、 ﹁ ア ジ ア の デ ト ロ イ ト ﹂ 計 画 を 達 成 す る た め に 、 研 究 開 発 施 設 の 設 立 と 人 的 資 源 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト の 実 施 に 重 点 を 置 い て い る 。 研 究 開 発 施 設 は 、 自 動 車 研 究 所 お よ び テ ス ト コ ー ス 、 自 動 車 部 品 試 験 セ ン タ ー の 設 置 を 提 案 し て い る が 、 ま だ 政 府 の 予 算 計 上 に は 至 っ て い な い 。 人 材 育 成 は 、 エ ン ジ ニ ア の 技 能 向 上 研 修 、 資 格 認 定 制 度 の 整 備 な ど を 行 う 計 画 で 、 日 本 政 府 や 自 動 車 業 界 の 支 援 に よ り 、 F T A の 経 済 協 力 の 一 環 と し て 二 ○ ○ 六 年 か ら 開 始 す る ︵ 後 述 ︶。 自 動 車 物 品 税 は 、 税 率 の 簡 素 化 、 徴 税 の 公 平 化 、 省 エ ネ 車 の 奨 励 な ど を 目 的 と し て 二 ○ ○ 四 年 七 月 に 改 定 さ れ た 。 新 税 制 で は 、 乗 用 車 は 排 気 量 に 応 じ て 四 区 分 さ れ 、 排 気 量 の 大 小 に 対 応 し た 格 差 を 明 確 に し た ︵ 表 2 ︶。 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク は 従 来 通 り 優 遇 税 制 が 適 用 さ れ て い る が 、 ピ ッ ク ア ッ プ 乗 用 車 の 税 率 が 二 ○ % へ 上 が る 一 方 、 改 造 ピ ッ ク ア ッ プ は 改 造 部 分 の 二 ○ % 課 税 か ら 車 全 体 の 三 % 課 税 に 変 更 さ れ た 。 省 エ ネ 車 で は 、 二 つ の カ テ ゴ リ ー に 優 遇 税 制 の 導 入 が 図 ら れ た が 、 エ タ ノ ー ル を 二 ○ % 混 合 し た ガ ソ ホ ー ル 対 応 車 に つ い て は 、 対 応 車 の 供 給 お よ び ガ ソ ホ ー ル 販 売 ス タ ン ド の 準 備 が 整 っ て い な い と し て 、 二 ○ ○ 九 年 か ら に 適 用 が 延 期 さ れ た 。 工 業 省 で は ﹁ ア ジ ア の デ ト ロ イ ト ﹂ 計 画 を 実 現 す る た め に 、 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク と な ら ぶ タ イ 自 動 車 戦 略 の 重 点 車 種 育 成 表1 世界の自動車生産 順位 国名 2003 年(台) 2004 年(台) 前年比(%) シェア(%) 1 アメリカ 12,114,971 11,989,387 -1.0 18.7 2 日本 10,286,218 10,511,518 2.2 16.4 3 ドイツ 5,506,629 5,569,954 1.1 8.7 4 中国 4,443,686 5,070,527 14.1 7.9 5 フランス 3,620,066 3,665,990 1.3 5.7 6 韓国 3,177,870 3,469,464 9.2 5.4 7 スペイン 3,029,826 3,011,010 -0.6 4.7 8 カナダ 2,552,862 2,710,683 6.2 4.2 9 ブラジル 1,827,791 2,210,062 20.9 3.4 10 イギリス 1,846,429 1,856,049 0.5 2.9 11 メキシコ 1,575,447 1,564,816 -0.7 2.4 12 インド 1,161,523 1,511,157 30.1 2.4 13 ロシア 1,278,792 1,385,434 8.3 2.2 14 イタリア 1,321,631 1,141,944 -13.6 1.8 15 タイ 742,062 927,981 25.1 1.4 合計 60,663,225 64,165,255 5.8 100.0 (出所)国際自動車工業連合会 (OICA) 資料をもとに筆者作成。 図 1 タイ自動車の生産、輸出台数の推移 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 生産 輸出 年 台 (出所)タイ工業連盟自動車部会。

(4)

構 想 を 策 定 し て き た 。 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク と 同 様 に 、 タ イ 国 内 市 場 で 受 け 入 れ ら れ 、 世 界 の ニ ッ チ 市 場 向 け に 供 給 で き る モ デ ル と し て 、 省 エ ネ タ イ プ の 小 型 乗 用 車 ﹁ エ コ カ ー ﹂ が 検 討 さ れ た 。 同 車 種 は A C E s カ ー ︵ ag ile , c lea n, en erg y, e co no m y, s afe -ty と 名 付 け ら れ 、 車 体 規 格 は 一 ・ 六 三 × 三 ・ 六 メ ー ト ル 、 安 全 基 準 U N E C E な ら び に 排 ガ ス 規 制 E C 4 を 採 用 、 エ タ ノ ー ル 二 ○ % 混 合 の ガ ソ ホ ー ル 対 応 、 燃 費 五 リ ッ ト ル 一 ○ ○ キ ロ 、 販 売 価 格 三 五 万 バ ー ツ ︵ 約 一 ○ ○ 万 円 ︶ 以 下 と 定 義 し て い る 。 ワ ッ タ ナ ー 前 工 業 大 臣 お よ び ワ ッ チ ャ ラ 前 工 業 大 臣 補 佐 が 推 進 し 、 同 車 種 の 税 制 優 遇 策 が 閣 議 の 議 題 に 上 る 直 前 ま で 進 ん だ が 、 二 ○ ○ 五 年 八 月 の 内 閣 改 造 に よ り 就 任 し た ス リ ヤ 工 業 大 臣 は 、 構 想 の 見 直 し を 示 唆 し て い る 。 A C E s カ ー 構 想 が 頓 挫 し た 背 景 に は 、 車 体 規 格 を 定 義 す る か を め ぐ っ て 自 動 車 メ ー カ ー の 駆 け 引 き が あ っ た 。 タ イ 政 府 は 独 自 モ デ ル を 開 発 す る と い う 観 点 か ら 規 格 を 定 義 し た が 、 同 規 格 の 車 種 を も つ メ ー カ ー と も た な い メ ー カ ー の 間 で 激 し い 争 い と な っ た 。 ま た 低 価 格 に 設 定 し た こ と で 、 こ れ ま で 奨 励 し て き た ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の 購 買 層 と 重 な り 、 市 場 を 奪 い 合 う 危 惧 が 示 さ れ た 。 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク お よ び そ の 派 生 車 種 の 需 要 拡 大 を 見 込 ん で 投 資 を 行 っ て い る メ ー カ ー に 、 同 構 想 が 影 響 を 及 ぼ す と い う 主 張 で あ る 。 A C E s カ ー 構 想 が 検 討 さ れ た そ も そ も の 理 由 は 、 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の 生 産 ・ 輸 出 だ け で は 世 界 の 需 要 が 限 ら れ て お り 、 二 ○ 一 ○ 年 の 一 八 ○ 万 台 目 標 達 成 が 難 し い と い う 点 に あ っ た 。 そ こ で タ イ 独 自 の 省 エ ネ 車 を 開 発 し て 、 二 ○ 一 ○ 年 に 三 ○ 万 台 の 生 産 を め ざ し 、 目 標 の 不 足 部 分 を 補 う 計 画 で あ っ た 。 A C E s カ ー 構 想 で は 、 新 た な 完 成 車 や 部 品 の タ イ へ の 生 産 移 管 を 図 り 、 タ イ 自 動 車 産 業 の 発 展 に つ な げ る 目 的 も あ っ た が 、 計 画 は 最 初 か ら 練 り 直 し と な っ た 。

貿

A F T A の 共 通 効 果 特 恵 関 税 ︵ C E P T ︶ あ る い は A S E A N 産 業 協 力 ︵ A I C O ︶ ス キ ー ム に よ り 、 A S E A N 域 内 の 貿 易 関 税 が ○ ∼ 五 % で あ る た め 、 自 動 車 メ ー カ ー は 域 内 の 相 互 補 完 を 進 め て い る 。 ト ヨ タ の I M V プ ロ ジ ェ ク ト で は 、 タ イ で デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン 、 イ ン ド ネ シ ア で ガ ソ リ ン エ ン ジ ン 、 フ ィ リ ピ ン で ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン を 集 中 生 産 し て 域 内 に 相 互 供 給 し 、 完 成 車 で は ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク と S U V 車 を タ イ 、 ミ ニ バ ン を イ ン ド ネ シ ア で 生 産 し て 輸 出 し て い る 。 ホ ン ダ も 同 様 に 、 タ イ で 大 物 プ レ ス 部 品 、 マ レ ー シ ア で 等 速 ジ ョ イ ン ト 、 フ ィ リ ピ ン で マ ニ ュ ア ル ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン 、 イ ン ド ネ シ ア で オ ー ト マ チ ッ ク ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン な ど を 集 中 生 産 し て 相 互 補 完 し 、 部 品 の 域 内 調 達 率 を 高 め て い る 。 C E P T で は 二 ○ ○ 三 年 か ら A S E A N 先 発 六 カ 国 の 関 税 が 五 % 以 下 に 下 が っ た た め 、 自 動 車 関 連 の 域 内 貿 易 が 急 増 し て い る 。 タ イ か ら イ ン ド ネ シ ア へ の 乗 用 車 の 輸 出 額 の 前 年 比 伸 び 率 は 、 二 ○ ○ 三 年 八 三 七 % 、 二 ○ ○ 四 年 一 ○ 八 % 、 二 ○ ○ 五 年 一 二 % 増 加 し た 。 自 動 車 部 品 で も 同 時 期 に 、 二 ○ % 、 一 三 五 % 、 六 九 % 増 加 し て い る ︵ 表 3 ① ︶。 イ ン ド ネ シ ア か ら タ イ へ の 輸 出 も 、 金 額 で は 前 者 に 及 ば な い も の の 、 増 加 率 は ほ ぼ 同 じ 傾 向 を 示 し て い る ︵ 表 3 ② ︶。 タ イ の タ ク シ ン 政 権 は 自 由 貿 易 協 定 ︵ F T A ︶ の 締 結 を 推 進 し て お り 、 オ ー ス ト ラ リ ア と は 二 ○ ○ 五 年 一 月 、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド と は 同 年 七 月 か ら F T A が 発 効 し て い る 。 イ ン ド と は 二 ○ ○ 四 年 九 月 か ら ア ー リ ー ハ ー ベ ス ト を 開 始 し 、 中 国 と は 二 ○ ○ 五 年 七 月 二 ○ 日 か ら 物 品 の 関 税 引 き 下 げ が 始 ま っ た 。 日 本 と は 二 ○ ○ 六 年 四 月 に 署 名 し て 一 ○ 月 に 発 効 を 予 定 し て お り 、 ア メ リ カ と は 交 渉 中 で あ る 。 こ の F T A を 活 用 し た 自 動 車 ・ 同 部 品 の 貿 易 拡 大 効 果 は 早 く も 現 れ て お り 、 今 後 も 自 動 車 メ ー カ ー の 事 業 展 開 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す と 考 え ら れ る 。 オ ー ス ト ラ リ ア と の F T A に よ り 、 二 ○ ○ 五 年 か ら 小 型 乗 用 車 と ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク は オ ー ス ト ラ リ ア の 輸 入 関 税 が 撤 廃 さ れ た た め 、 オ ー ス ト ラ リ ア 向 け の 輸 出 が 、 乗 用 車 が 前 年 比 二 五 七 % 、 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク と バ ン が 同 七 二 % 増 加 し て い る ︵ 表 3 ③ ︶。 輸 入 は 大 型 車 と 商 用 車 の 輸 入 関 税 を 撤 廃 し た が 、 ほ と ん ど 影 響 が 現 れ て 表2 タイの自動車物品税(2004 年 7 月 27 日) (出所)政府閣議決定をもとに筆者作成。 (注)ガソホール車優遇は 2009 年からに変更。 改定前 改定後 改定前 改定後 乗用車  2000cc 以下  2001-2500cc  2501-3000cc  3000cc 超 35 35,41 41 48 30 35 40 50 ピックアップトラック  標準ピックアップ  3250cc 超  ダブルカブ  ピックアップ乗用車  改造ピックアップ 3 3 12 18 20 3 50 12 20 3 オフロード車  2000cc 以下  2001-2500cc  2501-3000cc  3000cc 超 29 29 29 29 30 35 40 50 省エネ車  ハイブリット、電気  ガソホール対応車 1020 (単位:%) トヨタ 39.5 いすゞ 25.1 ホンダ 8.3 三菱 6.7 日産 5.8 シボレー 4.8 フォード 3.3 その他 6.4 図2 メーカー別自動車販売シェア(2005 年、%) (出所)図 1 に同じ。

(5)

い な い 。 イ ン ド と の ア ー リ ー ハ ー ベ ス ト 八 二 品 目 の な か に は 、 自 動 車 関 連 製 品 が エ ン ジ ン 部 品 な ど 九 品 目 含 ま れ る 。 イ ン ド と の F T A は 、 タ イ 側 が 大 幅 な 出 超 を 記 録 し て い る ︵ 表 4 ︶。 こ れ は 日 系 企 業 が F T A を 活 用 し て 、 ポ リ カ ー ボ ネ ー ド 、 カ ラ ー テ レ ビ 、 ブ ラ ウ ン 管 、 エ ア コ ン な ど を イ ン ド へ 輸 出 し て い る た め で あ る 。 イ ン ド か ら の 輸 入 が 大 幅 に 増 加 し て い る 品 目 は ギ ア ボ ッ ク ス で あ り 、 ト ヨ タ が マ ニ ュ ア ル ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン を イ ン ド か ら 調 達 し て い る 。 中 国 と は 二 ○ 一 ○ 年 撤 廃 に 向 け て 物 品 関 税 の 引 き 下 げ が 段 階 的 に 進 め ら れ て い る が 、 乗 用 車 は 高 度 セ ン シ テ ィ ブ 品 目 に 指 定 さ れ て お り 、 現 行 の 関 税 が 維 持 さ れ て 、 二 ○ 一 五 年 に 五 ○ % へ 引 き 下 げ る た め 、 完 成 車 の 事 業 に は 当 面 影 響 は な い と 思 わ れ る 。 自 動 車 部 品 に つ い て は 規 模 を 確 保 す る た め に 、 日 系 企 業 が タ イ あ る い は 中 国 拠 点 の ど ち ら か で 量 産 し て 他 方 に 供 給 す る こ と も 考 え ら れ る が 、 各 自 動 車 メ ー カ ー と も 、 タ イ 、 中 国 そ れ ぞ れ で 部 品 の 現 地 調 達 を 進 め て お り 、 大 き な 流 れ に は な っ て い な い 。 タ イ の 地 場 部 品 企 業 に と っ て は 、 補 修 部 品 を 中 心 に 安 価 な 中 国 製 品 の 流 入 は 脅 威 と な っ て い る 。 タ イ 自 動 車 部 品 製 造 業 者 協 会 ︵ T A P M A ︶ で は 、 品 質 基 準 に 達 し な い 部 品 の 輸 入 を 防 ぐ た め に 、 工 業 省 と 共 同 で 自 動 車 部 品 の 規 格 標 準 化 を 進 め て い る 。 日 本 と タ イ の 経 済 連 携 協 定 ︵ E P A ︶ で は 、 タ イ 側 は 自 動 車 分 野 の 自 由 化 に 関 し て 、 つ ぎ の よ う に 合 意 し て い る 。 完 成 車 で は 、 三 ○ ○ ○ c c 超 の 乗 用 車 は 現 行 の 八 ○ % か ら 毎 年 五 % ず つ 引 き 下 げ て 二 ○ ○ 九 年 に 六 ○ % と し 、 そ れ 以 降 に つ い て は 再 協 議 す る 。 自 動 車 部 品 は 、 関 税 二 ○ % 超 の 品 目 は 協 定 発 効 時 に 二 ○ % に 引 き 下 げ る 。 A F T A 完 成 一 年 後 ︵ 二 ○ 一 一 年 ︶ に 関 税 を 撤 廃 し 、 エ ン ジ ン 部 品 五 品 目 は 例 外 と し て A F T A 完 成 三 年 後 ︵ 二 ○ 一 三 年 ︶ に 関 税 を 撤 廃 す る 。 鉄 鋼 製 品 で は 、 タ イ に 生 産 設 備 の な い 品 目 は 関 税 を 即 時 撤 廃 す る 。 タ イ で 供 給 が 不 足 す る 分 ︵ 自 動 車 用 途 の 熱 延 鋼 板 な ど ︶ は 無 税 枠 を 設 置 し 、 そ の 他 の 鉄 鋼 製 品 は 一 ○ 年 後 に 関 税 撤 廃 す る 。 日 本 と の E P A で は 、 他 国 の F T A に は な い 特 徴 と し て 経 済 協 力 が 盛 り 込 ま れ て お り 、 自 動 車 分 野 で は 、﹁ ア ジ ア の デ ト ロ イ ト ﹂ 計 画 の 実 現 に 向 け た 協 力 と し て 、 日 本 政 府 お よ び 日 系 企 業 の 支 援 に よ り 人 材 育 成 プ ロ グ ラ ム を 実 施 す る 。 従 来 の 日 本 人 専 門 家 に よ る 巡 回 指 導 型 の ロ ー カ ル サ プ ラ イ ヤ ー 支 援 で は 技 術 移 転 に 限 界 が あ る た め 、 今 回 は ま ず 日 本 人 専 門 家 が タ イ 人 講 師 を 養 成 し 、 そ の タ イ 人 講 師 が タ イ 人 研 修 生 を 指 導 す る と い う 形 を と っ て 、 産 業 全 体 へ の 波 及 を め ざ し て い る 。 研 修 プ ロ グ ラ ム は 三 つ あ り 、 ト ヨ タ に よ る T P S ︵ 生 産 管 理 ︶ 活 動 の 指 導 、 デ ン ソ ー に よ る 技 能 者 訓 練 、 ホ ン ダ に よ る 金 型 製 作 技 能 者 の 育 成 が 行 わ れ る 。 ま た 技 能 検 定 制 度 の 整 備 に つ い て は 、 日 産 が 支 援 す る 。

タ イ が 自 動 車 生 産 ト ッ プ 一 ○ の 仲 間 入 り を め ざ す 二 ○ 一 ○ 年 は 、 A S E A N 域 内 の 自 由 貿 易 が 完 成 し 、 タ イ 政 府 が 進 め て い る 各 国 と の F T A に よ り 関 税 は 下 が っ て い る 。 日 系 自 動 車 メ ー カ ー は タ イ を 東 南 ア ジ ア の 生 産 ・ 輸 出 拠 点 と 位 置 付 け て お り 、 自 由 化 を 活 用 し た 部 品 の 相 互 補 完 や 完 成 車 輸 出 は ま す ま す 拡 大 す る で あ ろ う 。 し か し そ の 一 方 で 目 標 達 成 に は 、 い く つ か の 課 題 も 明 ら か に な っ た 。 最 大 の 問 題 は 、 生 産 規 模 の 拡 大 に 追 い つ い て い な い エ ン ジ ニ ア な ど 人 材 の 絶 対 的 な 不 足 で あ ろ う 。 日 本 の 支 援 に よ る 大 規 模 な 人 材 育 成 事 業 は 、 こ の 不 足 を 補 う 試 み で あ る が 、 生 産 現 場 に ノ ウ ハ ウ が 蓄 積 す る ま で に は 、 相 当 な 時 間 を 要 す る 。 ま た 高 度 な 技 術 力 を も つ 先 進 国 の 自 動 車 産 業 と 低 コ ス ト を 発 揮 で き る 中 国 製 品 の 狭 間 に あ っ て 、 タ イ の 自 動 車 産 業 が ど の よ う な 面 で 差 別 化 を 図 る の か が 問 わ れ て こ よ う 。 完 成 車 で は 、 ピ ッ ク ア ッ プ ・ ト ラ ッ ク の 生 産 ・ 輸 出 拠 点 化 で タ イ は 成 功 し た が 、 新 た な ニ ッ チ 市 場 を め ざ し た A C E s カ ー 構 想 は 頓 挫 し て し ま っ た 。 自 動 車 部 品 で は 、 中 国 製 の 補 修 部 品 の 流 入 に よ る 脅 威 ば か り で な く 、 輸 出 市 場 に お け る 競 争 力 の 向 上 も 迫 ら れ て い る 。 二 ○ 一 ○ 年 の 目 標 達 成 は 、 決 し て 簡 単 な 道 の り で は な い 。 ︵ ひ が し  し げ き / ア ジ ア 経 済 研 究 所 地 域 研 究 セ ン タ ー ︶ 表3 タイの FTA 関連自動車貿易額 (出所)タイ商務省貿易統計をもとに筆者作成。 2002 2003 2004 2005 ①タイ→インドネシア  乗用車  バン・ピックアップ  自動車部品 19.1 29.8 52.4 179.0 40.8 63.3 373.6 66.0 149.1 419.5 97.8 252.1 ②インドネシア→タイ  乗用車  自動車部品 10.451.9 32.570.4 81.882.9 110.691.9 ③タイ→オーストラリア  乗用車  バン・ピックアップ  バス・トラック 60.9 127.9 141.3 90.7 210.4 256.8 87.2 265.5 344.0 312.1 458.8 411.5 (単位:100 万ドル) 表4 タイ・インド FTA アーリーハーベスト 82 品目の貿易額 (出所)タイ商務省資料をもとに筆者作成。 2004(1-10 月) 2005(1-10 月) タイ→インド 82 品目合計  ポリカーボネード  カラーテレビ  ブラウン管  エアコン 116.3 11.3 32.7 3.7 5.7 273.5 86.2 76.2 18.4 14.3 インド→タイ 82 品目合計  ギアボックス 59.6 1.4 67.2 25.0 (単位:100 万ドル)

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1 Library, Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization (3-2-2 Wakaba Mihama-ku Chiba-shi, Chiba 261-8545). 情報管理 56(1), 043-048,