平行平板流路内の流れを伴う凍結について
(昭和57年8月30日受理)
一宮浩市
下村龍助上木久紀
Liquid Solidification in a Parallel Plates Duct
KoichiICHIMIYA RyusukeSHIMOMURA HisanoriUEKI
Abstract The effect of liquid solidification at the inner side of a parallel plates duct upon laminar .or uniform flow heat transfer and pressure drop is investigated. Steady・state conditions and constant wall temperature, which is lower than the liquid freezing temperature, are assumed. Theoretical solutions for heat transfer, the liquid・solid interface, and pressure drop are determined. 1. 緒 言 凍結現象は食物の凍結保存,製氷などを主に熱伝導 問題として扱われるもののほかに寒冷地における水道 管の破裂,そのほかの配管の凍結破壊などの流れを伴 う凍結聞題がある。 この種の凍結問題にはHirschbergi)の研究がある。 円管内の流れは定常,層流で管の入口,出口の圧力降下 を一定として解析している。ZerkleとSunderland2) の解析は,円管,層流,管壁温度一定で行われ,プラ ントル数および冷却面温度を変化させた結果を求め, 実験との比較を行っている。実験と解析の差の原因と して流体内の自然対流を述べているが明確でない。 本解析は,従来ほとんど行われていない平行平板流 路について,定常,層流,管壁温度一定の条件で,し かも流体の速度分布が冷却開始点で,A)流体力学的 に発達している場合,B)一様流の場合 の2種類に ついて行った。
2.理論解析
2.1 問題の設定 解析モデルおよび座標系が図一1に示されている。 図の速度分布には発達した場合が示されている。流路 は平行平板流路で途中まで温度To(>Tf)であった 流体が冷却面温度Tw(<Tf)で上板と下板から冷却 される。凍結層の厚さは流れ方向に増大し,したがっ て流れは加速される。 主な仮定は次のとおりである。1)流れおよび熱的 にも定常状態である。2)冷却開始点では温度は一様 で,流れは層流で発達流あるいは一様流である。3) ニュートソ流体で非圧縮性とする。4)物性値は一定 とする。5)流れ方向の熱伝導,粘性逸散,ふく射お よび自然対流の影響はないものとする。6)管壁の熱 抵抗は無視し,冷却面の温度Twは凝固温度Tゾより *福井工大 図一1物理モデルと座標系 Fig.1Physical model and coordinate system低い(Tω〈Tf)。7)凍結層は平滑で流れ方向に増大 する。 2.2基礎式 前述の仮定のもとで連続,運動量,エネルギー式お よび境界条件は次のようになる。 連続の式 ∂u ∂v
蕊+万=o
運動方程式 〃器+〃{㌃一一÷暑+y(∂2u ∂2u∂x・+∂y・’) ・{裟+場一一÷書+v(∂2v ∂2v万ガ+∂y・) 流れに対する境界条件 u(x, δ)=v(x, δ)=O u(・, y)一書Um{・一(9)2} あるいは u(0,y)=Uo カ(0,y)=:Pe エネルギー式 ∂2T ∂T ∂T u∂。+v一万=α∂y・ 温度に対する境界条件 T(0,y)=To T(x,δ)=Tf 固相(凍結層)内の熱伝導式d2T
=Ody2
固相内の境界条件 T(x,b)==Tω T(x,δ)=Tf 固液界面のエネルギー平衡 ゐ・晋(x・ 6)一〃・鵠8(x, 6) 2.3 基礎式の解法 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (i9 ⑪ o⇒ a3) この解析では凍結が進行した場合の速度分布,温度 分布,凍結層の厚さ,圧力変化を求めることである。 冷却開始点の A)速度分布が発達した場合と,B) 一様流の場合を併記する。以後それぞれの状態をA), B)で表わす。 2.3.1 速度分布 A)ZerkleとSunderland2)の考え方によると, 流れ方向に流路断面積の変化しない流路で壁が冷却さ れた場合,粘性の影響で壁面付近の流速は減少し,一 方流路中心の速度は増大する傾向になる。また流路の 断面積が流れ方向に減少すると,速度分布は平担化さ れる傾向になる。この二つの影響で全体に速度分布は ∂y ∂2T*=一字 傾
境界条件 T*(0・の=1 ag)T*(x*・δ*)−o ⑳
y方向の無次元量を,bでなくδを基準に考え, y/δ をηとして,y*をηに,さらに流れ方向もx*から x*/δ*(≡ξ)に変換する。さらに流れ方向の凍結層の 厚さの変化は局所的には小さいと考えるとエネルギー は次式となる。書(1一の誓一誓 ⑳
境界条件はτ*(o,η)−1 ⑳
T*(ξ・ 1)=0 (2⑳ これはSellersら3)が求めた平行平板流路内層流熱伝 達のGraetz問題に対応する。したがって温度分布 T*は oo 放物線状に維持されると仮定する。したがって速度分 布は連続の式,運動方程式,境界条件よりu−』・・馴1−(÷)2) a4
v一書Um(劉(多i){1−(9)2j (ls
B)前述のA)で論じられた仮定が適用でき冷却開 始点で一様流速Uoで入ってくるとして速度分布は bu=7u・ a6)
・一劉芸)u・ ao
2.3.2 温度分布 A)無次元温度を使用して,エネルギー式(7),境界 条件式(8),(9)を無次元化する。 晶{1−(rl)2}(99tir*+多;多1;芸)告恩砿(・)・xp(一詞
ただし Kn−(−1)鱒冝^3)2t’iilLll−3’6a.一& …伺;(・−C2)i・・dC} Yn= 1一η2 入は固有値で次式で表わされる。 λ・−4・+号 界面における熱流束の無次元量qL。。。1*は, 4−1*一(∂T*∂η),=、 ⑭ 2s) 26) ⑳一慧{一認(・)}・xp(−9A・・ξ)2S 冷却開始点から任意の位置までの移動熱量qT。、。1*は ・一已一2∫:・−1w −1曇{一醐(・)}λ㌃
・{1−・xp(一詞} 2・)
B)A)と同様の考えのもとに無次元温度T*,x方 向,y方向の無次元量をそれぞれξ,ηとし無次元エ ネルギー式を求めると次式となる。 ∂T* ∂2T* (30)=4
∂η2 ∂ξ 境界条件は T*(0, η) :1 T*(ξ, 1)=0 器(e,・)一・ 式Bo)を変数分離法を用いて解くと, T・一 ネ、(一・)・+1(f,、)。・xp(−4P・2ξ) ×COS(P。η) ただしPnは固有値で次式で表わされる。 (2n−1) 1)n= 2 π 界面における局所熱流束は ・−1*一(∂T*∂η),=、 一一 Y(£.一、)。・xp(−4P・2ξ)・(−Pn) 冷却開始点から任意の位置までの移動熱量 ・−1*一(一・)慧(2。三、)it−・☆ ×{exp(−4Pn2・ξ)−1} 2.3.3凍結層の厚さ 倒 B2) 倒 ⑭ Bs) ㈹ βカ A)凍結層内の定常温度分布は式09および境界条件 式al), a2)より T・−r(Tw−Tア(b一δ))・+玉丁・1;≡吾’δ) (・9 式陶および界面のエネルギー平衡式a3)より,無次元凍 結層厚さは 1 δ*ニ・ ( Tw*1+(一@・.T.*)} B)一様流の場合も式Bg)が適用できる。 2.3.4 圧力変化 ㈲ A)圧力が流れ方向にのみ依存すると仮定し,式(2) をy=0からy=δまで積分する。芸∫:卿鵠一・∫:團吻+・[晋L、
㈹ 速度分布を代入し,無次元化すると誓一一♀δL誓+詩{・+(dδdx)2)
㈹ dδ/dx<1として式㈲を積分すると P*(ξ)−9“.,(・−6*2)+24P・∫:晶講囮 B)A)と同様の方法で運動量式(2)を積分し,速度 分布を代入し,流れ方向の凍結層の厚さの変化が局所 的に小さいとすると,近似的にP・(ξ)「嘉一(1一δ・・) ⑬
3. 結果およびその検討 界面における局所の熱流束,冷却開始点から任意の 位置までの移動熱量,凍結層の厚さおよび圧力の変化 について検討を行う。 図一2に無次元距離ξに対する無次元熱流束qL。c。1* の値を示した。qL。cal*は界面における温度勾配であ り,冷却開始点付近ではかなり大きく,(To−Tf)の 温度差での流体の熱伝導による熱流束の,発達流の場 合ほぼ7倍,一様流で9倍,ξが0.1をこえるところ から1以下になる。冷却開始点で流れが発達流と一様 流での値の差は速度分布がy方向にゲで変化するの と一定であることの相違により対流伝熱に差が生ずる ためである。 図一3に無次元距離ξに対する冷却開始点から任意の9
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§5 恕. 3 2 0 10−3 10 2 10−1 ξ 図一2 局所熱伝達 Fig.2 Local heat transfer位置までの無次元移動熱量qT。t。1*を示した。 qT。t。1* はqL。e。1*をξに対して冷却開始点から積分したもの である。ξが1付近で両条件ともほぼ飽和状態に近く 0.5 0.4 0.3 言 eO.2 0.1 0 10−3 0.9 0.8 O.7 0.6 0.5 ち 0.4 O.3 0.2 0.1 10−2 10−i ξ
図一3移動熱量
Fig.3 Heat transfer rate 0 10−3 10−2 10−1 ξ 図一4(a)界面半径の変化(発達流) Fig.4(a) Radius of liquid−solid interface (fully developed flow) 0.9 0.8 0.7 0.6 ち0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 1.5 .0 1『2 10−1 ξ 図一4(b)界面半径の変化(一様流) Fig.4(b)Radius of liquid・solid interface(uniform flow) 100 凍結も局所的にそれほど進行しないことがわかる。 図一4(a),(b)にξ方向の凍結しない部分δ*の変化を 片対数グラフで示す。当然ながらTω*の大きいほど δ*は小さく,変化傾向はTw*が0.5では凸状変化に対 し,Tw*が大きくなるにつれ直線的に近くなり,全体 的に冷却開始点付近で凍結成長がはやいことを示して いる。 図一5(a),(b)にξ方向の圧力変化P*を両対数グラフ で示す。図一5(a)の流れが発達流の場合Tω*が0.5と2 の場合に,P,がそれぞれ5,15について示す。変化 の傾向は,7「ゾが大きいと凍結の進行するのがはやい ので同じξに対してはP*の変化が大きく,P。が大き いほど粘性の影響のため大きくなる。図一5(b)の一様流 乱 105 π」2.O Pア 15 Tオ=0.5 Pr 15 100 10 3 10−2 10−1 10° ξ 図一5(a)圧力変化(発達流) Fig.5(a) Pressure droP(fully developed flow) 靴 103 102 10i 100 10−1 10−3 10 2 ξ 10−1 100 図一5(b)圧力変化(一様流) Fig.5(b)Pressure drop(uniform flow)の場合,(dδ/dx)2,(d2δ/dx2)が小さいと仮定する過 程で粘性の影響がなくなり,Tw*のみがパラメータに なっている。Tw*が変化しても傾向はほぼ同じだがξ が0.1付近で.P*の増加傾向は著しく大きくなる。し かし,かなり下流では凍結成長による流動状況が実際 と異なるところが生じ解析の限界がある。