ドイツ憲法判例研究
─労働協約単一法の施行停止の仮処分申請─
村 昌 昭
※──労働協約単一法(Tarifeinheitsgesetz)の施行を停止するために行われた,連邦憲法裁判所法 で制度化されている憲法異議の仮処分(eine einstweilige Anordnung)申請が認められなかった例──
(連邦憲法裁判所第一小法廷判決<BVerfG.1.Senat 06.10.2015>)1) キーワード:労働協約単一法
(一)はじめに
⑴ ドイツでは,伝統的に,産業別に組織された労働組合(Industriegewerkschaft)と使用者団 体または個々の使用者が労働協約を締結していた。ナショナルセンターであるドイツ労働総同盟 (DGB)には,建設・農業・環境産業(IG BAU),鉱山・化学・エネルギ産業(IG BEC),鉄道・交通(EVG),教育・科学(GEW),金属産業(IG Metall),食品・嗜好品・飲食産業(NGG), 警察(GdP),統一サービス(ver.di)の八産業別労働組合が加入している。また,「一つの事業 場に一つの労働組合(ein Betrieb-eine Gewerkschaft)」という原則が,若干の例外を除き適用され て来た。したがって,各々管轄する部門内の全ての職種を包括して(産業別原則)組織されてい る。ただ,歴史的経緯はともかく,上記八産別労組中,EVGとGdP以外は,複数の産業部門を 管轄しているので,他労組は,「複合産別労働組合」といえる。また,別な産業別労働組合とし て,キリスト教労働組合があり,これがまた法的紛議を生ぜしめる場合もある2)。 他 方, 鉄 道 機 関 士, 航 空 パ イ ロ ッ ト, 医 師 等 の 専 門 職 の た め の 職 業 別 労 働 組 合 (Berufsgruppengewerkschaft)が存在する。したがって,ドイツ鉄道の労働者の中には,産業別の 鉄道・交通労働組合に加入する者もいるが,職業別のドイツ機関士労働組合に加入する者がい る。これら職業別労組は,英国のように事業場内で並存することはあまり無く,規模が小さいが ※ 元淑徳大学コミュニティ政策学部教授 淑徳大学名誉教授
ため,DGB加盟組合との関係が問題となる。旧来は,協約交渉に関しては,公式あるいは非公 式なDGBとの協力関係(Kooperation)にあったが,近年独自の利益を主張し始め発言力を増し て来ているといわれている3)。本稿で紹介する憲法判例は,この職業別労働組合が,連邦憲法裁
判所法(BVerfGG)で制度化されている憲法異議申立人(Die Beschwerdeführer)となって,労働 協約単一法(Tarifeinheitsgesetz)といわれる改正労働協約法のとりわけ4a条(Tarifkollision・協約 衝突条項)を,仮処分命令により(durch einstweilige Anordnung)施行停止を求めた事案である。
(二)労働協約単一法の概要
⑴ 本件事案の概要を説明する前に,2015年7月3日に成立し,同年7月10日から施行された 労働協約単一法第4a条の概要を紹介する。というのも,これは,労働協約法(TVG)旧第4条 と比較すると大幅な追加改正内容となっているからである。 ⑵ それでは,いかなる追加改正がなされたか,その概要を紹介しよう。 4条は,協約の法規範条項と称されその内容は,きわめて簡略である。第1項は,規範的効 力,つまり直律的強行的効力を謳い,しかも第2項と合わせ,労働契約の締結規範,労働契約の 内容規範,経営規範,事業場組織法規範及び協約当事者が設置した規範にまで及ぶ旨を定め,さ らには,拘束対象者の規定をも定めている。第3項では,協約の効力の片面的性格,さらには第 5項では,余後効(Nachwirkung)に関する規定を置いている。これに対し,追加された第4a条 項は,一言でいえば,事業場の代表制機能にかかわる改正である。この改正の経緯の詳細は,別 稿に譲るとしてその背景に一応触れる必要があろう。本稿の冒頭ですでに述べたように,ドイツ では,「一事業場一労働組合」を労使関係モデルとし,さらに協約についても「事業場内単一労 働協約原則(der Grundsatz der Tarifeinheit im Betrieb)」が,判例法理上でも原則とされていた。ドイツでは,労使で協約が締結される場合,その協約が対象とする範囲(場所的,人的,分野 的,時間的範囲)を,両協約当事者の協約管轄(Tarifzuständigkeit)を超えない範囲で自由に定 めることができる。 しかし,実務上,協約競合(Tarifkonkurrenz)及び複数協約(Tarifpluralität)という法的問題 が生起し,法的にも大きな問題を引き起こしていた4)。前者の協約競合とは,「複数の労働協約 が存在し,労働条件基準の規範的部分が矛盾・抵触しながらも,労働契約の場所的,人的,業種 的及び時間的範囲が共通である場合」である。例えば,イ・団体協約の競合(一人の労働者が, 二つの労働組合に重複加入し(例・ある錠前工が錠前工の労働組合に加盟し,同時に金属工の労 働組合に加盟),この二つの労働組合が,同一の使用者団体と労働協約を締結した場合,ロ・企 業別協約(個別使用者が締結主体)と団体協約の競合及びハ・組織化されていない労使への協約 の拘束力をもたらす法規(一般的拘束力)による場合などがある。後者の複数協約とは,複数あ
る労働協約の内,場所的,人的,分野的,時間的等の適用範囲の内,いずれかが異なる場合で ある。例えば,イ・二つの労働組合が,同じ使用者団体と別個の労働協約を締結した場合(例・ DGB労組とキリスト教系労組が,同じ使用者団体又は使用者と労働協約を締結した場合),ロ・ 使用者が異なる使用者団体に二重に加盟し,これらの団体が異なる労働組合(一労組であれば, 協約競合)と協約上の合意に達した場合,及びハ・同じ労働組合が異なる二使用者団体と労働協 約を締結し,これらの内の一つに一般的拘束力宣言がなされ,今での協約に拘束されていなかっ た労働者に,この拡張効が適用される場合などがある5)。 これら,協約競合及び複数協約にともなう紛議の解決は,上述したように「事業場内労単一 労働協約の原則」でもって,解決されて来た。その理由は,①法的確実性・法的明白性という 上位原則,②特別法は一般法に優先するという法原則から,特別労働協約は,その対象近接 性故に,事業場内の実行可能な解決可能とする,③事業場での協約並存は,単一労働協約で 解決できるかも知れない法的・事実的不利益を惹起,④協約の内容規範(Inhaltsnormen=賃 金・労働時間・年休・解雇要件等)と事業場規範・事業場組織法規範に関する定め( Betriebs-betriebsverfassungsnormen=全労働者を対象とする規定)の区別立ての定義設定(Abgrenzung)の 困難は,単一労働協約に回避可能等が論じられてきた6)。 ⑶ しかし,この判例法理と明確に一線を画す連邦労働裁判所(BAG)の判例が下された。 この判例の紹介とその法的論点の解説を,「事業場内単一労働協約原則の破棄と協約法理の新展 開―BAG 第4小法廷判決(2010年7月7日)・AZR 549/08を素材として―」(「淑徳大学研 究紀要」第51号19頁以下)で筆者は行ったが,この判決の論旨は,旧来の「事業内単一労働協 約原則」の判例変更し,「複数協約は,協約法システムの中に基礎がある(Tarifplurälität ist im System des Tarifvertragsgesetzes angelegt.)」との方向転換を行った。さらに,事業場内単一労働協 約の原則は,基本法(GG)9条3項の団結権に反する旨を三つの論点により展開をした。第 一に,団結権という基本権の保護領域を“協約自治システムの核心的領域(der Kernbereich des Tarifvertragssystems)”つまり,「協約締結のための団体交渉」に限定する見解を否定し,第二に, 単一労働協約原則により他協約を排除することは,他労組の集団的な団結の自由(die kollektive Koalitiosnsfreiheit)への侵害であり,しかもこの協約に拘束されている組合メンバーの個人的な 団結自由(die individuelle Koalitiosfreiheit)への侵害をも意味する断じ,第三に,単一労働協約の 原則による複数協約の解決は,少数労組の特別協約の直律的・強行的効力を無効にするなど,結 局,この単一労働協約の原則が「個別的・集団的団結の自由」を侵害し,団結権と結びついた協 約それ自体の「労働生活上の意義ある秩序(sinnvollen Ordnung des Arbeitslebens)」と相容れない とまで結論づけた。
この判決を受け,ドイツの伝統的な「社会的自己決定」(社会的私的自治)を基調とする労働 協約システムをいかにすべきかという議論が学説的にもなされた。さらに,協約秩序の混迷を回
避すべくDGB及びドイツ使用者連盟は,連邦政府に対して,労働協約単一化原則の法制化を求 めた。これらの論議や労使団体の主たる主張の詳細は,別稿に譲り,本稿では,改正労働協約法 の核心をなす,第4a条の概要をまず紹介する。 ⑷ 新労働協約法第4a条は,その条文見出しが「Tarifkollision協約の衝突」であることから も分かるように,事業場内の労働協約の衝突をいかに回避すべきかということが,改正の中心を なす。条文の各項は以下のとおりである。 「1・労働協約の法規範の保護機能,分配機能,平和機能並びに秩序機能を保障するために, 事業場内での協約の衝突は,回避される。 2・使用者は,第3条により(注・使用者及び使用者団体並びに労働組合などの締結主体), 種々様々な労働組合の労働協約に拘束されることがある。種々様々な労働組合の内容的に同一で ない協約と重なる限りで(kollidierende Tarifverträge衝突する協約),事業場内では,結局のとこ ろ事業場内で締結された競合する協約の締結時点までに,一労働関係においてもっとも多くのメ ンバーを擁している労働組合の協約の法規範のみが適用される。協約がより後の時点で初めて競 合する場合には,多数と確認された(Mehrheitsfeststellung)協約が基準である。事業場が,事業 場組織法1条1項2段の事業場に該当し7),そして,事業場組織法3条1項1号から3号に基づ き協約で設立された事業場8)も,これらの事業場が,労働協約法(TVG)3条1項の目的(労 働者の利益に与する)に反することになる場合は別として,事業場とみなされる(多数派協約の 法定基礎単位)。 3・事業場組織法3条1項及び同法117条2項9)に対する事業場組織法上の問題に関す る労働協約の法規範について,この事業場組織法の問題が,すでに他の労働組合の労働協 約により,規制されている(geregelt ist.)時に限り,協約法第4a条2項2段(多数確認= Mehrheitsfeststellung)が適用される。」(事業場及び事業場組織法条項に関する多数派確認の適用 条項)。
4・(der Anspruch auf Nachzeichnung写し請求権)労働組合は,使用者あるいは使用者団体に 自らの協約と衝突する協約の法規範の写し(die Nachzeichnung der Rechtsnormen)を請求するこ とができる。写しの請求は,適用領域と労働協約の法規範が重なり合っている限りにおいて,衝 突している労働協約の法規範を含んでいる。第一段により模写された労働協約の法規範は,第二 段により模写されることになる労働組合の労働協約(多数派確認協約)が,適用されていない範 囲で,直律的・強行的に適用される(少数派労組の権利保護)。
働協約の締結を取り掛からんとするならば,使用者または使用者団体は,適宜にそして相応しい 方法で(dies rechtzeitig und in geeigneter Weise),これを公表する義務がある。第一段により労働 協約の締結を規約上の任務とする労働組合の一部に属する別な労働組合は,使用者あるいは使用 者団体に,自らの考え(Vorstellungen)や要求(Forderungen)を口頭で具申する正当な権限を有 する。」(少数派労働組合の権利主張保護)。 以上,新労働協約法4a条は,事業場内の協約単一性という旧来の制度維持を,「事業場内多 数派労組」を法定の基礎単位としながらも,少数派労組に対して,「多数派労組の協約への写し 請求権」と使用者または使用者団体が多数派労組が協約を交渉中に,その交渉プロセスを透明化 するために,その内容を公表する義務を負わせ,さらには,少数派労組には,交渉中に自らの意 見を具申する権利を留保させている点に,注目すべきといえよう。法それ自体が,事業内単一労 働協約原則を維持しながらも,協約内容の形成において,できるだけ職場内の労働者の最大公約 数的意見をさせんとする制度を作り出した点に留意すべき点がある。事業場内労働者の公正な意 見集約を協約締結の基礎単位たる多数派労組に担保させようとしたものといえよう。以上,本憲 法判例の背景事情を踏まえ,事件の経緯と判決要旨を紹介する。
(三)BVerfG 1. Senat Entsheidung vom 06.10.2015 1BvR 1571/15, 1BvR 1582/15,
1BvR 1588/15(憲法異議申立に基づく法施行停止仮処分申請申立事件)の
「(A)事実の概要」と「(B)決定要旨」
(A)事実の概要 ⑴ 憲法異議申立人 憲 法 異 議 申 立 人(Die Beschwerdeführer) は, 三 職 業 別 労 働 組 合 で あ る。 第 一 事 案(BvR 1571/15)は,勤務医の職業別労働組合,第二事案(BvR 1582/15)は,ジャーナリズム職業労働 組合及び第三事案(BvR 1588/15)は,飛行機のパイロット労働組合である。 ⑵ 申立事由 各申立人の労働協約単一法の施行停止仮処分の申立理由は,「基本法(GG)9条3項にTVG 4a条が違反する。」(団結権侵害)というものであるが,各申立人の主張は,全く同じではない。 1・(1571/15事案):勤務医の労働組合は,以下の理由から,労働協約単一法の施行停止を申 立てた(原文判示7)。 イ・「多くの事業場では,構造的に(医師という)少数の従属的な従業員だけが組織化される。」 「労働協約単一法を考慮すると,使用者は,異議申立人との協約交渉を開始することを一般的に 拒否したり,あるいはこれを打切る。」「ある事件では,従業員は,労働協約単一法により不利益をより詳細に書換えられることを回避するために,メンバーを産業別労働組合に公表することを 義務付けられることが勧められている。」 ロ・「本案決定(die Entsheidung in der Hauptsache)ま でに,この法律が継続して適用されるならば,事業場から異議申立人が排除されることになろ う」。さもなくば,「(組合)メンバーは,その都度交渉する産業別労組の労働条件に拘束される か」あるいは,「労働契約上,異議申立人により結ばれた古い協約に拘束されるか,そして産業 別労働組合により獲得された協約締結の額で,せいぜいのところ賃上げを希望するか」というこ とになる。」 ハ・「このことは,もはや訂正不能な組織的・団体政策的決定を(少数派労組)が 迫られることになり,ためにメンバーの喪失及びきわめて定型外の(zu atypischen)協約締結と いう結果になろう。」ために,「多くの協約が直接的に解約告知をためらうこととなろう。」「多数 派労働組合との協力は,2005年までに成立した協約共同体(Tarifgemeinschaft)が,意図的に放 棄せられることになるので,(わが労組の)団体政策上要求できない。」 2・(1582/15事案):ジャナーリズム職業労働組合は,以下の理由から,労働協約単一法の施 行停止を申立てた(原文判示8) イ・「労働協約単一法は,少数派労組が団結適合的に活動する可能性があまりにも制限される ことなる」ので,「ジャーナリズムの内の職業別労組の基本権を侵害(する)」。 ロ・「今まで, 良好な関係にあった多数派労組が本労組の協力継続に魅力を持たなくなり,結果として,職業別 労組の交渉における地位・労働争議における地位が明白に弱まり,そして(協約)衝突事例で, (少数派労組の)活動範囲が制限され,法的地位が失われ,生存の危殆に貶められたメンバーの 減少により,(団結権毀損)の惧れあり」「これを,(わが)労組は,事業場の構造により,計算 上多数を獲得できないことを阻止できない」。 3・(1588/15事案):飛行機のパイロット労働組合は,以下の理由から,労働協約単一法の施 行停止を求めた(原文判示9)。当該労組は,GG9条3項違反の他に,EMRK(=ヨーロッパ 人権条約Europäsch Menschenrechtskonvention)11条違反ならびにILO87号及び98条違反も異議 申立の論拠とされた。 イ・「 こ の 法 律 は, 使 用 者 を し て 少 数 派 労 組 を だ し に し て, 広 範 に 及 ぶ 操 縦 の 可 能 性 (Steuerungsmöglichkeiten)を開いている」,「仮処分は,下されるべきである。何故なら,現行労 働協約(bestehende Tarifverträge)は,何時でも解約告知される可能性があり,そして交渉につき 交錯する協約が多数生じ,このことは,異議申立人(パイロット労組)を常に少数派への地位へ もたらすことを証明」「使用者は,労働協約単一法にもとづいて,多数派労組と代わって協約を 結ぼうと潜在的に考慮している」。 ロ・「緊急決定無かりせば,少数派労組は,ストの危険をと もない,そして,最終的には,メンバーの生存危険の吸引効果(Sogwirkung)が多数派労組へと 生ずるからである。「(少数派労組の)メンバーは,自らの協約が,協約衝突事件で,排除される かも知れない時には,実質的に逆戻りでき得ない不利益を甘受せざるを得ない」。
(B)(決定要旨) 「仮処分命令申請の申立は,許される,しかし(許可)理由は無い。」(原判示11) ● (総論):連邦憲法裁判所法(BVerfGG32条1項の異議申立要件) 「1・⒜連邦憲法裁判所は,より困難な不利益を防衛するために,威迫的な暴力を阻止するた めに,あるいはその他の重要な理由から,共同の福利のために,緊急の必要性がある場合には, 紛争事案において状態を仮処分によって規制することができる。」「仮処分命令の決定を行う場合 には,本案(Hauptsache)で確認されるべきものや初めから許容されない場合は別として,高権 行動(Hoheitsakt)が,基本権に対して攻撃的であることが理由ではない。」「連邦憲法裁判所は, 本案手続の結論(Ausgang)が未解決な場合に,仮処分命令を万が一下さない場合,本案での申 立が成功した場合との不利益と,求められた仮処分命令が認められた,しかし,本案でその申立 の成果が禁じられた場合との不利益を比較衡量をしなければならない。」(原判示12) ⒝「憲法上の手続において,仮処分命令が引起す結果が広範囲に及ぶが故に,32条1項の要 件判断については,厳しい基準(ein strenger Maßtab)が適用される。法律の執行が,停止され る場合には,このハードルはもっと高い。」「何故なら,(立法の停止)は,立法の根源的な管轄 (die originäre Zuständigkeit)への重大な侵害を意味するからである。」「通例暫定的な規制に関し て論ぜられるべき理由は,仮処分命令を許容することが絶対に必要とされるほどにきわめて重要 でなければならないとするならば,切望されている法律の施行を除外するという事例において, この理由はそれ以上に重要な重きを持つ。その限りで,法律の施行除外の利益を実現させるため には,不利益が逆戻りできないか,あるいは修正することがきわめて困難であるどうかが,決定 的な意味を持つ。」(原判示13) 2・「憲法上の異議申立は,最初から許容されないし,明白に理由がない。とりわけ専門的議 論によれば,GG9条3項により保護されるべき団結の自由侵害が,(法の施行停止仮処分によっ て),排除されるかどうかの前提において明白ではない。」(原判示14) ⑶(各論) 「1・異議が申立てられた規定が継続するならば,本案決定までにきわめて重大な,そしてき わめて回復困難な不利益が生じ,連邦憲法裁判所法32条を根拠に異議申立てられた規定の執行を 結果として免れらさせることが絶対に必要であるとは,目下のところ確認できない。」「(32条の) 仮処分命令が,許容されるのは,例えば,異議申立てがなされた規定が継続するならば,本案決 定までに,団結の本質的な目的であるイ・協約交渉が,異議申立人に長期に亘り不可能になるか も知れないことが考慮され,ロ・そして,その上(dann)異議が申し立てられた規定の継続が, 労働組合の協約締結能力が問題となるほどに組合のメンバー状況に影響をもたらすことが,求め られよう。」(イ及びロは,筆者・重大な不利益性要件・原判示15) 2・a)現在のところ,異議申立人あるいは「第三者」が,本小法廷が(下さんとしていた)
本案の決定までの間に,重大な,ほとんど改められ得ないあるいは逆戻りのない不利益を受ける ことは認識できない。何故なら,法律上定められている労働協約単一性が,衝突事案が生ずる前 に,効果が生じているからである。異議申立人が,労働協約単一法により自らの協約政策上の交 渉権限が弱められたと考える限りで不利益はある。しかし,この法は協約政策上の活動を禁止は していない。事業場内で潜在的に少数の従業員を組織化している労働組合は,労働協約単一法適 用下で協約交渉を行うことは妨げられていない。」(原判示16) 「(異議申立事件1・勤務医職業別労組)につき異議申立人は,個々の事件では,使用者は,労 働協約単一法を言及しながら,協約交渉をすることを拒否したり,あるいは協約交渉を中断し た。この場合には,加重された不利益が問題となる。このことは,これから労働契約を変更しよ うとしたり,異議申立人とのもはや新規に交渉できない労働協約をもっとバランスよく適用させ ようとする使用者の申し入れにも妥当する(職業別労組との交渉不能<筆者注>。しかし,この 種の協約政策上の不利益(交渉不能)は,本件限られた期間で,甘受せざるを得ない。その上, 協約交渉の拒否あるいは中断の場合には,引続き,労働争議という労働組合上の利益を求めると いう可能性が生ずる。労働協約単一法は,基本的には,GG9条3項の保護に含まれている労働 争議手段の許容性を規制はしていない。」 「個々の事件の労働争議手段は,衝突規制のために適用されるべきではない協約の締結に 向けられた場合(少数派職業別労組が締結した協約改訂のため<筆者注>)には,不相当 (unverhältnismäßigkeit)になり得る10)という立法理由内での一般的指摘( vgl.BTDrucks 18/4062, S.12)は,本案手続の結論が,未だに下されておらず,そしてそれ故に,異議が申立てられてい る法律(労働協約単一法<筆者注>)が,当初から憲法違反と宣されることが排除され得ないの で,当たらない。」(原判示17) 「その上,使用者は,協約交渉を異議申立人に長期に亘り不可能にさせようとすることに応じ て(in einem Maße),自らの事業場を衝突規制自体の基準点(Bezugspunkt)として,あるいは, 事業場組織法3条1項1号から3号(注・いわゆる複数事業場等の事業場委員会,生産・プロ ジェクト関連部門の事業場委員会及びコンツェルン等の労働者代表組織を協約で定めることがで きる異なる取扱い条項<abweichend Regelungen>)による一労働協約内で,TVG4a条2項4 段,5段の枠内(いわゆる多数派協約の例外的な法定事業場基礎単位)であるにもかかわらず, この際,変化した多数派(aufgrund dann verändeter Mehrheit)にもとづいて,より優位な労働組 合(präferierte Gwerkschaft)との間で締結された労働協約を形成するために,事業場組織的手段 を採用することは,今のところハッキリとはしない。たとえ,これがそうであったとしても,こ のことから,異議申立人のこの(申立要件である)不利益の不可逆的性(Unumkehrbarkeit)は 導き出されない。万が一,本案訴訟において,TVG4aの衝突規制(die Kollisionsregel)の無効 が宣せらたならば,協約の事業的構造換えで(mit betrieblichen Umstrukturierungen)追求された
効果は失われよう」(原判示18)。 「労働協約単一法により,産業別労働組合にとって,今まで職業別労働組合との協力をさらに よく考え直す刺激が結局のところ生じるかも知れない。このことは,この産業別労働組合と競合 し,そして事業場内で構造的に多数派に達し得ない職業グループに,事実上協約政策上の不利益 を引起す。しかし,この不利益は,それが本案決定までに甘受せられないほどに重大かつ不可 逆的なものではない。また,2事件(ジャーナリズム内の職業別労組)に関しては,産別労組 との間に生じている協力を解消し,そしてこれが,労組の行為能力に重大な影響をもたらすか は,具体的には認識できない。(労組の)競合は,GG9条3項により保障されている団結競合 (Koalitionswettbewerb)を甘受せざる得ない。」(原判示19) 「b)目下のところ,本案決定までの期間にTVG4a条2項2段の衝突規定の適用に関し,仮 処分命令が絶対に必要と思わせるような程度までに,事実上至るかは,見通しはハッキリとはし ていない。確かに,(本案期間)に,衝突事案は,生じるかも知れない。しかし,これを回避す るための種々様々な協約政策上の可能性を労働協約当事者は持つ。本案手続において,異議が 申立てられている衝突規定の無効が,確定されることに万が一なるのであれば(vgl.§95 Abs.3 Satz 1 BVerfGG 法律に対する憲法異議申立が認められた場合),このことは,他に,基本的に 最初から(ex tunc)効果が生じ,これでもって,TVG4a2項2段により排除された協約は,過 去に関しても適用することが排除されない。」(原判示20)。 「c)その限りで,異議申立人は,労働協約単一法が,(組合)メンバーの動揺がかなり差し 迫っており,不可逆的あるいは存立危殆を変化せせることが,いずれにせよ,本案決定までの間 に十分具体的に期待できないし,無理強いもでき得ないから,彼ら労働組合をその存立において 危殆ならしめていると申立ている。」しかし,「本案決定までの間に,異議申立人のメンバーがそ してどの位の数が,失われるかの実際の予測が,立てられない。」「労働協約単一法が,この存 立危機的なことをもたらすような組合の組織的あるいは団体政策的な新調整(Neuausrichtungen) を,短期の内に無理強いできるかは,十分に具体的には認識できない。」「いずれにせよ,異議申 立人が,その協約締結能力においてそして同時に労働政策上貫徹する能力ある労働組合としての 存立が,本当に危殆に貶めるかは明確ではない。」(原判示21)
(四)解 説
(一)上述したようにドイツでは,労働協約法(TVG)3条により使用者が使用者団体の メンバーである結果あるいは協約当事者としてより多くの協約に拘束され,そしてその適 用領域が重なる場合には,TVG4a条により,事業場内で最多数のメンバーを有している 労働組合により締結された労働協約のみが適用されることとなった(「事業場内多数派原則(betriebliches Mehrheitsprinzip)」)。どの労働協約が,この多数派協約に当たるかは,労働裁判所 法(Arbeitsgerichtsgesetz)99条の手続を経て明らかにされることとなった11)。そして,この裁判
の決定は,全ての従業員に対して結果的に既判力が生ずるために,少数派が締結した労働協約は 適用されず,少数派労組メンバーは,労働協約の保護を受けないことに結果的になる。このため に,この法的保護の喪失を新労働協約法4aは,上述したようにその第4項で「写し請求権(der Anspruch auf Nachzeichnung)」を制度化した。
しかし,これだけでは,自ら締結したあるいは今後の協約政策への保護は十分に保障されない という危機感から職業別労働組合で,その職種上も構造的に多数派労組とはなり得ない,勤務医, ジャーナリズム編集者及び飛行機のパイロットの三労組が,連邦憲法裁判所に新労働協約法4a 条の執行停止を申請したのが,本判決の背景である。 (二)本稿で述べるまでもないが,日本では違憲審査に関しては,通常の裁判所が,具体的な 訴訟を裁判する際に,その事件の解決に必要な限度で,適用法条の違憲審査を行ういわゆる付随 的違憲審査制が採用されているが,ドイツでは,特別に設けられた憲法裁判所が,具体的な争訴 とは無関係に,抽象的違憲審査を行う抽象的違憲審査制が採られている。そして,基本法(GG) 93条1項(憲法異議訴訟Verfassungsbeschwerede)は,連邦憲法裁判所の管轄権対象として,いわ ゆる機関訴訟,規範統制などとならんで,その4aでは,「各人が,公権力によって自己の基本 権の一つ(その他)」を侵害された場合にも,憲法異議訴訟を制度化している12)。しかも,連邦 憲法裁判所法(BVerfGG)32条1項は,「連邦憲法裁判所は,紛議において,自らのより重大な 不利益を防衛するために,威迫的な力を防ぐために(zur Verhinderung drohender Gewalt),ある いはその他の重大な理由から公共の利害のために(zum gemeinen Wohl)緊急に行わねばならな い場合には,仮処分命令により(durch einstweilige Anordnung),ある状態をあらかじめ規制する ことができる。」と違憲的な公権活動に対して,仮処分命令による権利保全を認めているが,本 件事案はその仮処分命令申請の適否が争われたものである13)。もとより,上述した申立人の主張 で紹介したように仮処分命令で保護されるべき基本権は,新労働協約法4a条施行停止による基 本法(GG)9条3項の団結権である。したがって,本判例の決定の適否は,この32条の異議申 立要件を公権行動が充たしているかの是非判断が中心となる。以下,(B)(決定内容)に即して を検討して見よう。 (三)決定は,まず原判示12∼14にわたって,憲法異議申立要件の総論ともいえる論理を展 開した。「仮処分命令の決定を行う場合には,本案訴訟(Hauptsache)で確認されるべきものや 初めから許容されない場合は別として,高権行動(Hoheitsakt)が,基本権に対して攻撃的であ ることではない」とまず仮処分命令実行の前提要件に「攻撃的」までも求めていない。むしろ, 「連邦憲法裁判所は,本案手続の結論(Ausgang)が未解決な場合に,<仮処分命令を万が一下 さない場合,本案での申立が成功した場合との不利益>と<求められた仮処分命令が認められ
た,しかし,本案でその申立の成果が禁じられた場合との不利益>を比較衡量をしなければなら ない。」と,仮処分申請と本案訴訟の結果との間での法的利益の衡量論を展開する。
そして,連邦憲法裁判所法32条1項の仮処分申請が,認められるには,その法的効果の大きさ 故に,「法律執行停止には,厳しい基準(ein strenger Maßtab)が適用される」とする。理由は, 「立法の根源的な管轄(die originäre Zuständigkeit)への重大な侵害を意味する」からであるする。 そして,法による基本権(GG9条3項の団結権)侵害の「不利益が逆戻りできないか,あるい は修正することがきわめて困難であるかどうかが,決定的な意味を持つ。」(原判示13)と厳格な 要件判断を前面に出す。そして,異議申立人の主張に添いながら,新労働協約法4aの適用と団 結権の危殆の有無を,仮処分の許容性の是非論議と絡ませながら,判示は,その申請の是非につ き「各論」的判断を展開する(原判示15∼21)。 (四)決定は,まず連邦憲法裁判所法32条の「仮処分」の必要性を認めない「結論」を展開し, これが許容されるには,「異議申立てがなされた規定が継続するならば,本案決定までに,団結 の本質的な目的であるイ・協約交渉が,異議申立人に長期に亘り不可能になるかも知れないこと が考慮され,そして,その上,ロ・異議が申し立てられた規定の継続が,労働組合の協約締結能 力が問題になるほどに組合のメンバー状況に影響をもたらすこと」と,団結にとって「二大(協 約交渉権限と協約締結能力)不利益の有無」を要件判断として展開する(原判示15)。そして, この要件の有無判断を各異議申立人の主張に添いながら決定は展開される。 ⑴ 決定は,まず,労働協約単一法が,異議申立人の協約上の交渉権限を弱めたという不利益 はあるとしながらも,「事業場内で潜在的に少数の従業員を組織化している労働組合は,(この 法)適用下でも,協約交渉は妨げられていない。」(原判示16)と全般的に論ずる。 ⑵ そして,(勤務医職業別労組の場合)使用者がたしかに交渉を拒否したが,この職業別労 組と使用者も交渉が不能となるので,「交渉不利益」は,「甘受せざるを得ない」し,この場合, 「(労組)は,労働争議という労働組合上の利益」を追求できる。何故なら,「労働協約単一法は, 基本的にはGG9条3項の保護に含まれている労働争議手段の許容性を規制(せず)」。たしか に,「(少数派職業別労組が締結した協約改訂のための労働争議は)不相当(unverhältnismäßigkeit) になり得る」という点は,本案手続の結論が未だ下されず,しかも法自体違憲との判断が下され る余地もあるので,仮処分申請是認の論理とまでに至らず(原判示17)と,協約交渉権限上の不 利益は,労働争議権侵害に至らない点から,GG9条3項の団結権侵害にまで至らない旨を強調 した。 ⑶ 新労働協約法第4a条3項のいわゆる多数派協約の例外的な法定事業場基礎単位条項との 関連で,使用者が意図的に多数派協約を形成するため,つまり職業別労働組合の主張を封ずるた めに,この例外的な法定事業場基礎単位条項を操作するのではという主張に対しては,「今のと ころハッキリしない」し,「異議申立人(の)不利益の不可逆性(Unumkehrbarkeit)が導き出さ
れない」とした(原判示18)。これも,新法が,職業別労組の協約交渉権限を弱化させる理由と はならない旨の判断といい得る。 ⑷ さらに,新労働協約法4条aが,今までの産業別労働組合と職業別労働組合との協力 (Kooperationen)再考させることになるとの主張には,「事実上の不利益を引起す」が,「本 案決定までに甘受せられないほどに重大かつ不可逆的なものではない」し,ジャーナリズ ム労働組合が主張するように,「産別労組との協力が解消となりこれが職業労組の行為能力 (Handlungsfähigkeit)に重大な影響をもたらすかは,具体的には認識できない。」と産別労組と職 業別労組の協力(競合)は,GG9条3項(の団結権)により保障」(原判示19)と,4a条が, 旧来の産別労組と職業別労組との協力関係が解消され,団体協約締結能力が弱められるとの緊急 性を否定した。 ⑸ ⑴ないし⑷から,団体の協約交渉権限毀損及び行為能力毀損そして団結権毀損理由とする 憲法異議申立に基づく仮処分による法の執行停止の申請は,「本案決定までの期間にTVG4a条 2項2段の衝突規定の適用に関し,仮処分命令が絶対に必要と思わせるような程度までに,事実 上至るかは,見通しはハッキリとはしていない」(原判示20)と結論づけた。 (五)以上,本判例の事件の経緯,決定の紹介及び決定の論旨の特色を紹介した。 上述したように,どちらかいうと,英米法系に属する日本の違憲審査制度とは異なる,いわゆ る「大陸法系型憲法裁判所」のドイツでは,立法権への司法権の関与の度合いが,日本の場合と 比べるとかなり積極的である。その最たるものが市民が公権力による基本権侵害の惧れを理由と して憲法異議訴訟,しかも連邦憲法裁判所法(BVerfGG)32条1項による仮処分命令による立法 施行規制を認めている点にある。本件事案がまさにそうである。この公法上の論点はさておき, 労働法上の視点から見るならば,興味ある論点がある。それは,事業場内の「多数派協約と確認 された協約」と逆に否定された協約との関係である。異議申立人職業別労組が繰り返し主張して いるのは,労働協約単一法により,自らの労働組合の協約交渉権限が毀損され,メンバー減少な どによる協約締結能力の毀損と結果としての団結権(GG9条3項)毀損をもたらす可能性を繰 り返し主張した点にある。新協約法4a条4項の「写し請求権(der Anspruch auf Nachzeihnung)」 及び同条5項の「意見具申権」では,団結権毀損を救済し得ないという認識があったものといえ る。日本の判例法理においては,いわゆる「事業場内の一般的拘束力制度」との関連で,かつて 論議された経緯がある。事業場内では,拡張効適用充足要件である4分の3以上の多数派組合の 組合員のみならず,少数派組合の組合員が存する場合が,本事件との類比性を導き出しえよう (未組織労働者の問題もあるが,本稿では検討割愛)。判例は,この多数派労組の労働条件基準設 定権能の少数派組合員への拡張適用については見解が分かれる。例えば,⑴少数派組合の団交 権,団結権尊重の必要から拡張効がないとするもの。桂川精螺製作所事件・東京地判(昭和44・ 7・19 労経速682号6頁,佐野安船渠事件・大阪地判(昭和54・5・17 労民集30巻3号661
頁),北港タクシー事件・大阪地判(昭和55・12・19 労判356号9頁)等。この主張は,本事件 の異議申立人労組と同じ主張である。⑵少数派組合があっても,拡張効ありとするもの。香港上 海銀行事件(控訴)・大阪高判(昭和60・2・6 労判462号142頁)等。⑶多数派組合の協約が, 少数派組合のそれより有利な場合にのみ拡張効は認められるとするもの。福井放送事件・福井地 判(昭和46・3・26 労民集22巻2号355頁)等14)。本件の場合,あくまでも法の施行差止仮処 分申請事案であるが,この労働協約単一法が施行されている現在,多数派協約と労働裁判所で認 定された後,通常の民事裁判で,とりわけ職業別労組の協約基準より不利益な多数派労働組合の 協約基準がある場合などにおいて,職業別労組員からの種々の訴訟も予想される。今後の判例法 理を注視して行きたい。 注 1)本件判決文は,http://www.jurius.de/jportal/portal/t/ery/page/juriswより取得。 2)例えば,かつて,拙稿「ドイツにおける企業別協約の新動向」(水野勝先生古稀論集「労働 保護法の再生」2005年 信山社刊 150頁以下)で取り上げたSächsiches LAGv.13.11.2001事 案は,この場合である。 AuR 2002年8月号310頁以下参照。 3)岩佐卓也「現代ドイツの労働協約」(法律文化社 2015年刊)6頁。
4)Maren Band, Tarifkonkurrenz, Tarifpluralität und der Grudsatz der Tarifeinheit, PETER LANG
2003年等参照。 5)Maren Band, a.a.O S44ff.
6)BAG 4Senat Urteil, 20.03.19914AZR 455/90参照。なお,この判例の紹介に関しては,拙稿 「外国(ドイツ)労働判例研究―BAG第4小法廷判決(1991年3月20日・AZR 455/90)を 素材として─」(淑徳大学大学院総合福祉研究科研究紀要第22号89頁以下所収)を参照のこ と。ただし,複数協約事案。
7)事業場組織法(Betriebsverfassungsgesetz)1条1項2段は,「複数企業の共同事業場看做し規 定」である。
8)事業場組織法(Betriebsverfassunggesetz)3条(abweichend Regelungen=異なる取扱い条項) 1項1号∼3号は,とくに企業が「複数事業場で構成される場合の事業場委員会」,「企業及 びコンツェルンが,生産またはプロジェクト関連部門ごとに編成され,部門の幹部が参加義 務のある事項を決定している場合の事業場委員会」及び「事業場,企業またはコンツエルン の機構的理由もしくは企業の協力の別な形態による別な労働代表組織」を,労働協約で定め ることができるとする。 9) 事 業 場 組 織 法117条2項 は,「「 航 空 企 業 機 上 勤 務 員(Für im Flugbetriebescäftigte Arbeitnehmer)は,労働協約により代表機関(eine Vertretung)を設けることができる。この
代表機関と本法(事業場組織法)に基づいて設定される航空企業の地上事務所の労働者代表 (Vertretungen der Arbeitnehmer der Landbetiriebe des Luftfahrtunternehmens)との協力に関し,
労働協約は本法の規定と異なる取決めをすることができる。」と定める。
10) 周 知 の よ う に, ド イ ツ で は, 争 議 行 為 の 正 当 性 に つ い て, 判 例 法 理 は,「 相 当 性 」 (Verhältnismäßigkeit) 原 理 の 有 無 で 判 断 さ れ て い る。BAG(GS)Urt.v.1971, AP Nr.43 zu
Art.9 GG Arbeitskampf。
11)労働裁判所法99条は,労働協約法4a条2項2段により事業場内で適用される労働協約に 関する決定条項(Entscheidung über den nach §4a Absatz 2 Satz 2 des Tarifvertragasgesetzes im Betrieb anwendbaren Tarifvertrag)であるが,留意すべきは,同条3項は,この決定の既判力 が賛成反対の誰彼なく効果をもたらすことを明示した。 12)高田 敏・初宿正典編訳「ドイツ憲法集(第5版)」(信山社 2007年第5版)266頁以下参 照。 13)制度的に異なるが,日本では,行政訴訟の抗告訴訟で,「差し止めの訴え」(行政事件訴訟法 第37条の四)が法定化されたのは,平成16(2004)年である。 14) 村昌昭「労働協約における労働条件の不利益変更と公正代表義務」(「日本労働法学会誌第 69号1987年」)54頁以下。
Case Study German Constitutional Law:
Filing of the Provisional Application for Suspension of Execution
the Unificationlaw of Collective Agreement
Masaaki TSUJIMURA
The Federal Constitutional Court in Germany did not recognize the trade unions’ claim to file a provisional application for suspension of execution of the unification law of collective agreement. Because the court came to the conclusion that there are, in this case, no possibility of infringements of the rights of union activities and therefore also the necessity of emergency maintenance of the rights.