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開放空間に営巣したニホンミツバチの越冬期における巣内温度

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Academic year: 2021

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ミツバチ科学20(1):31-34 HoneybeeScience(2000)

開放空間 に営巣 したニホ ン ミツバチの

越冬期 における巣 内温度

1998年 10月に, 民家外壁の開放空間に営巣 したニホ ンミツバチ

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a の 大型 自然巣を見つ けた. ニホ ンミツバチは,東 南 アジアに広 く分布す る トウヨウ ミツパテの-亜種で, 日本固有の野生種 として青森県以南 に 生息する.木の洞などのほか,家屋の屋根裏や 石垣 の隙間 な ど閉鎖空 間 に営巣す る習性 が あ る.本事例のようにニホ ン ミツバチが開放空間 に営巣す ることは稀 であ り,裸 の コロニーが越 冬で きるか興味を持 った. この コロニーについ て,1998年11月23日か ら翌年3月21日の 118日間にわたり巣内外温度 を観測 したので報 告す る.

コロニーについて

1)営巣開始時期 1998年4月 (営巣 した民家住人 による). 2)営巣場所 営巣場所 は ,千葉市美浜区幸町1丁 目 (東経 140度06分13秒, 北緯35度36分43秒, 1960年代 に海岸 を埋 め立 てて造成 された標高 2mほ どの住 宅地)の モ ル タル2階建 て民家 で,東 側外壁 の地上約2.5mの庇下部 で あ っ た.庇 は東側 に40cmほど張 り出てお り,巣 は 蜂 ろうで庇 と外壁 に しっか り固定 されていた. コロニーの東側 は,柿 の木 と駐車 スペースを隔 てて

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階建ての隣家があ り,北側約 1.5mでア スフ 7ル ト道路 に接 す る (図 1).冬場 は午前 7:30頃か ら10:30頃にかけて陽があたる. 11月末 までキイ ロスズ メバ チが しば しば訪 れてニホ ンミツパテを捕獲 していたが,オオス ズメバチは目撃 されず, ア リ類の侵入 も見 られ なか った.近 くには,ギ ンヨウアカ シア,- リ

秋元 徹

図1営巣場所の外観 (白矢印が巣)1998.10.31 エ ンジュをは じめ庭木などの蜜源がある. 3)巣の規模 巣の大 きさは ,南北50cm, 東西40cm, 垂 直40cmほどで,南端 は軒が高 くなってお り, 高 い軒か ら垂直 にのびるプ ラスチ ックの雨樋 を 取 り込むよ うに,垂直方向に60cmはど造巣 し ていた. 東西方 向 (モル タル外壁 に垂 直方 向) に12 枚 の巣板が形成 され, これを囲むよ うに,湾曲 した6枚 の巣板が外側 に形成 されていた. 4)蜂数 10月31日 :蜂数 は多 く,巣全面 を蜂が覆 い 尽 くし巣板 はまった く見 えない (図2A). 11月23日 :蜂数 が減 り,巣 の上 部 が露 出 (温度 セ ンサー取 り付 け,図2B). 12月4日 :巣 の周 囲 は下部 まで露 出 (図2 C). 12月26日 :下部中央 も露出 し,巣板 (黒化 した空の育児房)の一部が脱落 (図 2D). 1月 17日:さらに巣板 の一部が脱落,蜂数 は 10月時の約3分の 1に減少 (図2E).

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32 図2 巣と覆 う蜂の変化.A :巣前面を蜂が覆い尽 く B:温度センサーを取 り付け記録を開始,蜂数が減り巣の上部が露出 (1998.ll.23),C 巣の周囲は下部まで 詣出(1998.12.4),D:巣の下部中央 も露出し,また巣の一部 (黒化 した空の育児巣房)が脱落 (1998.12,26), E:さらに巣板の一部が脱落.蜂の数は10月時の約3分の 1に減少 (1999.1.17) 蜂数 は減少 を続 けたが, 3月に入 って増加 に 転 じた. その後 の蜂数 の急速 な増加 によ り, 3 月の末 には越冬前 に近 い勢力 とな った.4月 に 入 ると蜂数 はさ らに増 えて分蜂が危倶 された. 温 度 測 定 に つ い て 1)温度記録計

温度記録計 は, TabaiEspec社製Ther mo-RecorderRT-11を用 いた. 温度 セ ンサーは2 チ ャンネルで,Ch-1,Ch-2にそれぞれ3mの 延長 コー ドを使用 した. 11月23日にCh-1の セ ンサーを巣 内の蜜 ・花粉 圏の下部,育児圏中 央 と思 われ る位 置 に北 側 か ら挿入,Ch-2の セ ンサ ーは巣 のす ぐ北方 向15cmの庇下 に固定 した (図2Cなどを参照).温度記録 データはパ ーソナル コ ンピュー タに取 り込 み,表計算 ソフ トエクセル (マイクロソフ ト製) を用 いて処理 した. 2)測定期間 4月 1998年11月23日か ら1999年3月21日まで, 10分毎 の巣内外温度 を測定記録 した. 冬 の間, 家人が何度か刺傷 し, コロニ-の除去 を求 め ら れた.分蜂 も予想 されたため,1999年4月14日 に コロニーを千葉県立 中央博物館 に移動 した. 結果および考察 開放空間 に営巣 した この コロニーは,無事 に 越冬 を終 え,強群 と して4月を迎 えた.全測定 期間の温度変化 は図3に示 す通 りで あ った.栄 内の 日内最高最低温度差 によ り,測定期間の分 割 を試 み, 期間境界値 を, 仮 に1.5℃ と4.0℃ に設定 した ところ,表 1に示す通 り5期 に分 け 表1期間ごとの巣内温度の基本統計量 越冬安定期 越冬前移行期 越冬期 越冬後移行期 越冬後安定期 目内温度差 ≦1.5℃ >1.5℃,≦4℃ 期間 11/23-12/2 12/3-12/ll (日数) 10 9 平均値(oC) 34.8 32.8 最高値(℃) 35.5 34.7 最偲値(℃) 34.0 30.8 分散 0.06 0.78 >4.OoC >1.5℃ ,≦4.0℃ ≦1.5℃ 12/12-12/24 2/25-3/3 3/4-3/21 75 7 18 30.7 346 35.1 35.8 35.9 35.8 16.6 31.6 336 15.04 0.51 0,10

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a 図3 測定期間毎日の平均および最高最低温度の変化 (1998ll.2311999.3.21) ることがで きた. また,巣内温度の日内変化量を知 るため,罪 陛別に, 10分毎の巣温変化を日毎に平均 した. 巣温が下降す る12月初旬か らの-か月間は, 日内変化量が大 きく, 10分間あたり0.15℃ か ら0.3℃ 程度の巣温変化があった.巣温が上昇 する2月中旬か ら3月初旬にかけては,日内変 化量が小 さく(10分間あたり0.15℃ 以下),巣 内温度 のわずかな変化 に も敏感 に反応 してい た.多 くの蜂数 を擁 し,温度管理能力や断熱性 が高 いと思われる越冬前半の方が,巣温の変化 量が大 きいことは興味深 い. 巣温変化 の特徴的な7週間 につ いて代表的 な一 日を図4に示 した.表 1に示 したとおり越 冬前安定期 と越冬後安定期の平均巣内温度 は, それぞれ34.8℃, 35.1℃ であった. 全 期 間 中 の最 低 巣 内温度 は, 2月13日の 16.6℃であった.2月13日は,平均巣内温度 も 全期間中最低の24.3℃であった.そ して,外気 温 も低 く蜂数 も激減 しているにもかかわ らず, この 日以降2月末 にか け,急速 に巣内温度 を 35℃ 近 くにまで上 げて安定に向か った (図3, 図 4).このことは,越冬中いっで も巣内温度を 35℃ 近 くに保つ ことが可能であることを示 し 0 12 0 12 0 12 0 12 0 12 0 12 98 ll.26 98.12.06 98.12.26 99 0107 9902.18 99.0228 99.03.06 図4 越冬前後各期の代表的な一日の温度変化

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34 ている,実際の観測では,越冬中に巣内温度の 低下が見 られた. これについては,外気温の低 下や,花蜜 ・花粉が搬入 されないなどの負の条 件が働いている問,35℃ 前後の育児圏を縮小, 消失 させるか,あるいは,育児圏の設定温度を 下 げて,発熱負荷量を抑えているのではないか と考え られるが,育児圏の直接観察を してお ら ず推論の域を出ない. 分蜂群 は,営巣可能な閉鎖空間を見つけるま での一時,母群か ら遠 くない開放 された場所 に 集結 して待機する.今回の場合,天候その他の 理由で,閉鎖 された営巣場所が兄いだせないま ま待機場所での営巣が行われた可能性が高 い. 巣内換気が容易で放熱性のよい開放空間は, 気化熱を利用 して巣温の上昇を防 ぐ夏場の温度 管理には有利であろう. しか し,開放空間での 越冬は,断熱 性,気密性が高 く,巣内気流の少 ない閉鎖空間に営巣 した場合に比べ,蜂数の維 持 およびェネルギーの効率上相 当に不利 であ る.巣最外部の巣板 は,湾曲 して シェルターの 役 目を している.蜂数が減少すると,中心下部 の巣の一部を落 とし蜂球密度を高めている. し か し, 巣内外の温度差は20℃ 以上 と熱勾配が 急なうえ寒風 にさらされてお り,少 しで も温度 管理が乱れると, 巣温が瞬時に1-2℃ 下が っ て しまうことは図 4か らも見てとれる.越冬期 の巣温の維持 は発熱源である働 き蜂の寿命を著 しく縮めるため,育児圏の調整や温度設定が コ ロニー越冬の成否を決定す るものと思われる. 開放空間でのコロニーには巣門 といえるもの がな く,蜂球が丸裸で無防備 とも思えるが,天 敵が少な く冬期の気候が温暖な環境であれば, 年間を通 して コロニーの維持に決定的な支障は ないだろう.今回 コロニーを移動 しなければ, 複数年 にわたってこのコロニーが存続 したもの と思われる. 終わ りにあたり,ア ドバイスを頂 いた吉 田忠 晴氏 ・佐々木正 己氏をは じめ玉川大学の諸兄, 社会性昆虫愛好家の阿部浩氏,千葉県立中央博 物館の宮野伸也氏に厚 くお礼 申 し上げる. (〒26ト0001千葉市美浜区幸 町1-3-9 千葉市環境保健研究所) 主な参考文献 佐 々木 正 己,1999.ニ ホ ン ミツバ チ 北 限 の Apis cerana.海瀞会.192pp. 佐 々木正 己 岡田一次.1988.ミツバ チ科学 9(2):77 -78.

Sasaki,M.,∫.Nakamura,M.TaniandT.Sakai. 1990.Bull.Fac.Agr.,TamagawaUni v.30:9-19.

吉 田忠晴 1998.ニ ホ ン ミツバ チ ー生態 とその飼育 法 -,ミツバ チ科学研究施設.56pp.

AKIMOTO,ToRU.Wintertemperature in the exposednestofJapanesehoneybee,Apiscerana japonica.HoneybeeScience(2000)21(1):31-34.

Chiba City Institute of Health and Envir on-ment,i-3-9.Saiwai-cho,Mihama-ku,Chiba,2611 0001Japan.

A naturalnestofaferalcolonyofJapanese honeybee,APisceranajaponicawasfound in suburbareainChlbaPrefecture.Itwasbuilton ahousewallexposingitselftoopenair.Itsnest temperaturewasrecordedduringwinterseason for5monthsandtheresultshowshow hone y-bee colony managed to survive from cold wintereventheywerenestedinanopenspace.

Nest temperature was not very fractured whilethecolony waspreparingforwinter.In mid-winterthestability ofinsidetemperature became loose.Then itrecovered aftersevere coldness.Thewlntering ofthecolony wasdi -videdinto5phasesfrom pre-toposLwintering by the rangeoftemperatureinside the nest.

Duringtherealwinteringphasehoneybeespr o-bably ceased brood rearing andaccuratether -moregulationtoreducetheconsumptionofthe exhaustionofworkers.Asitreportedforhived coloniestheceaseisapossibleadaptation of honeybeestosurvivefrom coldwinter.

参照

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