平 成
27年
度 学 位 論 文 演 奏 不 安 とパ フ ォ ー マ ンス に 対 す る介 入 の 効 果 ―い か に普 段 通 りの 力 を発 揮 す るか ― 兵庫 教 育 大 学 大 学 院 学 校 教 育 研 究 科 人 間 発 達 教 育 専 攻 臨 床 心 理 学 コー スM14090E
内 山 一 雄目 次 第
1章
序 論 1。 本 番 で の パ フ ォ ー マ ン ス2.競
技 不 安3.演
奏 不 安4.介
入 5。 問 題 と 目的 第2章
方 法1.研
究 参 加 者2.使
用 尺 度3.測
度4.調
査5.介
入6.ト
レー ニ ン グ 実 施 の 手 続 き7.倫
理 的 配 慮8.分
析 方 法 第3章
結 果1.群
間2.群
間 及 び ト レー ニ ン グ 前 後 の 状 態 不 安 得 点3.状
態 不 安 得 点 とパ フ ォ ー マ ン ス 自 己 評 価 得 点 第4章
考 察1.MPAと
介 入2.MPAと
パ フ ォ ー マ ン ス3.本
研 究 の 課 題 と今 後 の 展 望 引 用 文 献appendix
謝 辞 1 2 3 3 4 5 5 6 6 6 7 0 0 1 1 11 11 1114
15
16
18
第
1章
序 論1
本 番 で の パ フ ォ ー マ ン ス 私 た ち は 重 要 な 場 面 や 試 験 で 「頭 が ま っ 白 に な り、 何 を して い る か わ か ら な か つ た 」「指 先 が ふ る え た 」 とか 、 ス ポ ー ツ 場 面 で 「自分 の 身 体 が 自分 の 身 体 で は な い 」「何 を して い る の か わ か ら な い ま ま 終 わ つ て しま っ た 」 な ど の 現 象 を 経 験 し た り耳 に した りす る 。 つ ま り選 手 が 普 段 通 りの パ フ ォ ー マ ン ス を 発 揮 で き な い こ と が よ く観 察 され る 。 こ れ は 選 手 や 演 奏 者 が 競 技 会 や 演 奏 会 で 本 来 の 普 段 通 りの パ フ ォ ー マ ン ス を 発 揮 す る こ と は 容 易 な こ と で は な い こ と を 示 して い る。 す な わ ち 、 彼 ら に と つ て 普 段 通 りの 力 を 発 揮 す る こ と は 、 永 遠 の 課 題 な の で あ る 。 多 々 納(1995)に
よ れ ば 、 そ の よ うな 現 象 は 、 従 来 い わ ゆ る 「 あ が り」 や 「ス テ ー ジ フ ラ イ ト (stage fright)」 と して 捉 え られ て き た が 、近 年 で は 「不 安 」 と の 関 連 で 語 られ る よ うに な つ て い る。Spielberger(1966)は
、不 安 を 、 一 時 的 情 動 反 応 と し て の 「状 態 不 安 」 と 、 比 較 的 安 定 した パ ー ソ ナ リテ ィ特 性 と して の 「特 性 不 安 」 と に 明 確 に 区 別 す る 概 念 と した 。 こ れ を 「不 安 の 状 態 ―特 性 理 論 (staite‐trait theory of anxiety)」
と呼 ぶ 。Spielberger et al.
(1970)に
よれ ば 状 態 不 安 と は 時 間 的 に 変 化 す る 一 時 的 な 不 安 の 状 態 を 指 し、 主 観 的 、 意 識 的 に 知 覚 され た 気 が か り と か 、 緊 張 の 意 識 に よ つ て 特 徴 づ け ら れ 、 そ れ は 自律 神 経 の 活 性 化 、 興 奮 を 伴 うか 、 あ る い は そ れ と結 合 し た も の と定 義 され る。 一 方 、 特 性 不 安 と は 安 定 した パ ー ソナ リテ ィ の 一 定 の 特 性 を 指 し、 客 観 的 に は 危 険 の 少 な い 種 々 の 環 境 状 態 を 脅 威 的 で あ る と知 覚 した り、 客 観 的 な 危 険 性 の 度 合 い と は 不 相 応 な 強 さ の 状 態 不 安 で 反 応 した り させ る 、 動 機 あ る い は 獲 得 され た 行 動 傾 向 で あ る 。 つ ま り特 性 不 安 の 高 い 者 ほ ど状 況 を 脅 威 とみ な し、 そ の 状 況 に 対 して よ り強 い 状 態 不 安 を 示 す と考 え られ る。2
競 技 不 安 「ス ポ ー ツ に お け るパ フ ォ ー マ ン ス 、 つ ま りそ の 勝 敗 や 競 技 成 績 は 、 生 理 的 。身 体 的 要 因 に よ つ て の み 決 定 され る も の で は な く 、 知 覚 ・ 判 断 ・ 記 憶 ・ 感 情 ・ 情 緒 な ど を 含 む 多 く の 心 理 的 ・ 精 神 的 要 因 が 密 接 に 関 与 し て い る 。 今 日、 こ の こ と は あ ま りに 明 白 で あ る と 同 時 に 、 十 分 に 認 識 され て い る こ とで も あ る (多 々 納,1995,pp.1…
23)。」 ま た 、競 技 場 面 で 発 揮 され る パ フ ォ ー マ ン ス は 、 技 術 な ど の 身 体 的 要 因 と合 わ せ 、 心 理 的 要 因 に 影 響 を 受 け る こ と が 明 らか に され て い る (山 田 ら,2011)。 さ ら に 、 橋 本 ・ 徳 永(2000)は
ス ポ ー ツ 競 技 場 面 で 十 分 な 力 が 発 揮 で き る か ど うか は 、 心 の 状 態 に 左 右 され る こ とが 多 い と述 べ て い る。エ モ ン ズ・ トマ ス(2007)は
ス ポ ー ツ で は トップ レベ ル に な る と成 功 す る か 否 か は50%か
ら95%が
メ ン タ ル 面 に か か つ て い る と多 くの 選 手 や コ ー チ が 認 め て い る と も 述 べ て い る。 市 村(1993)に
よ れ ば 、 ス ポ ー ツ や 競 技 を め ぐ り生 起 され る 不 安 を ス ポ ー ツ 不 安 あ る い は 競 技 不 安 と呼 ぶ 。 不 安 は 、「欧 米 で は ス ポ ー ツ の 競 技 場 面 に 関 わ る 心 理 的 ス ト レ ス を 考 慮 す る 際 の 重 要 な 変 数 と し て 取 り扱 わ れ て い る (佐々 木,2006,p678)。
」 前 述 のSpielbergerの
理 論 は ス ポ ー ツ に お け る 競 技 不 安 に も適 用 され 、「競 技 状 態 不 安 」「競 技 特 性 不 安 」とい う概 念 が 生 ま れ 、「競 技 特 性 不 安 」 に 比 べ て 「競 技 状 態 不 安 」 の 方 が 、 ス ポ ー ツ の パ フ ォ ー マ ン ス と の 関 連 が 強 い と報 告 され て い る(Martens,vealey9&Burton,1990)。
わ が 国 で も競 技 不 安 に 関 す る 研 究 が 散 見 さ れ 、 運 動 部 に 所 属 す る 大 学 生 を 対 象 に 研 究 を 行 つ た 金 本 ら(2003)は
、 競 技 不 安 を 低 減 させ る こ と が 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス の 向 上 に 必 要 で あ る こ と を 明 らか に して い る 。ま た 、井 上(2007)
に よ れ ば 、 苦 手 意 識 を 克 服 す る こ と で 競 技 不 安 が 低 減 され 、 パ フ ォ ー マ ン ス の 向 上 が 促 され る。 橋 口・ 橋 口(2010)の
ア ー チ ェ リー 選 手 を 対 象 に した 研 究 や 、 筒 井 ・ 佐 久 間(2011)の
競 技 不 安 に 関 す る研 究 も あ る 。 さ ら に 、 ス ポ― ツ 選 手 に お け る 競 技 不 安 に 対 して は 早 く か らパ フ ォ ー マ ン ス と の 関 係 に つ い て の 研 究 と メ ン タ ル ト レー ニ ン グ を ど の よ うに 取 り入 れ る か に つ い て の 研 究 が 行 わ れ て い る (西 野
,2011.藤
原 ・ 千 駄,2000。 )。 こ の よ うに ス ポ ー ツ場 面 に お い て は 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス と の 関 連 、 さ ら に 不 安 の 低 減 化 に 関 す る 研 究 が す す ん で い る 。3
演 奏 不 安 演 奏 に つ い て は 競 技 不 安 に 対 応 す る 概 念 と し て 演 奏 不 安(Music
Performance Anxiety,以
下MPAと
略)が
あ る 。MPAと
は 、音 楽 の 演 奏 場 面 に お い て 演 奏 家 が 経 験 す る 状 況 特 異 的 不 安 の こ とで あ る (吉 江,2006)。
公 式 ・ 非 公 式 を 問 わ ず 人 前 で 演 奏 す る 際 、た い て い の 演 奏 者 はMPAに
直 面 す る。「演 奏 に 集 中 で き な い 」「失 敗 し た ら ど う し よ う」「逃 げ 出 した い 」 な ど の 症 状 は 決 して 珍 しい こ と で は な い (小 川,2013)。
つ ま りMPAに
お い て 最 も深 刻 な 問 題 は 、 不 安 に よ つ て 演 奏 者 の パ フ ォ ー マ ン ス が 大 き く損 な わ れ る こ と で あ る (吉 江,2006)。
これ ら の 研 究 は 音 楽 を 専 門 と して 学 ぶ 演 奏 者 を 対 象 と して 行 わ れ て い る。 吉 江・ 繁 枡(2007)は
MPAを
「演 奏 状 況 に 直 面 した 際 の 感 情 状 態 」 と定 義 され る 演 奏 状 態 不 安 と 、「演 奏 場 面 を 脅 威 と知 覚 し、 さ ま ざ ま な レベ ル の 演 奏 状 態 不 安 を 示 す 傾 向 」 と定 義 さ れ る 演 奏 特 性 不 安 と に 分 け て 考 え た 。 ス ポ ー ツ の 場 合 と 同 様 に 、 演 奏 特 性 不 安 の 高 い 者 ほ ど ス ト レ ス フ ル な 演 奏 状 況 に 置 い て 演 奏 状 態 不 安 が 高 ま りや す い と考 え られ る 。 従 つ て 、 満 足 度 の 高 い パ フ ォ ー マ ン ス を ス テ ー ジ 上 で 再 現 す る た め に は 、 演 奏 状 態 不 安 を 適 切 に コ ン トロ ー ル す る こ とが 重 要 に な ろ う。4
介 入 不 安 に は 認 知 が 影 響 して い る (岡 安,2009.)。 ま た 、不 安 が 筋 緊 張 を 通 して 、 パ フ ォ ー マ ン ス に 影 響 を 与 え る (塚 本 ら,1996.吉
江 ,2006。 )。 妹 尾 ・ 橋 本(1997)は
ス ポ ー ツ 選 手 に 数 種 の ト レー ニ ン グ を 行 い 、 そ の うち リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン トレー ニ ン グ を 行 つ た
80%以
上 の 被 験 者 が 有 効 と感 じ、 認 知 置 き 換 え ト レー ニ ン グ を行 つ た 被 験 者 の60%以
上 が 有 効 と感 じた こ と を 報 告 して い る。 そ れ 故 介 入 は 、2つ
の 側 面 の 効 果 を 見 る こ と に す る。1つ
は 認 知 の 修 正 で あ る 。 吉 江 ・ 繁 枡(2007)は
ミス ヘ の と ら わ れ が 演 奏 状 態 不 安 と大 き く 関 連 す る と して い る 。 さ ら に ミス ヘ の と ら わ れ は 一 時 的 な 認 知 で あ る た め 、 修 正 が 可 能 だ と も し て い る 。 こ れ は ミ ス ヘ の と らわ れ は ネ ガ テ ィ ブ な 感 情 で あ る 演 奏 状 態 不 安 に 正 の 影 響 を 与 え る と い う小 堀 ・ 丹 野(2005)を
支 持 す る も の で あ る。 も う1つ
は 筋 緊 張 の 解 消 つ ま リ リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン で あ る。 塚 本 ら(1996)
は 、 不 安 や ス ト レ ス の 体 験 時 に 、 動 機 や 発 汗 、 筋 緊 張 な ど の 身 体 症 状 が 知 覚 され 、 例 え ば ピ ア ノ 演 奏 場 面 で 「指 先 の ふ る え 」 や 「手 足 が 冷 た く な る 」 と い う症 状 が 「 ピ ア ノ 演 奏 を 阻 害 す る 」 と い う事 態 を 招 き 、 さ ら に 不 安 反 応 を 高 め て し ま う と述 べ て い る 。 ス ポ ー ツ 場 面 で も 「大 事 な 試 合 が 近 づ く と何 か が 起 こ りそ うだ と い う準 備 が 身 体 の 中 に 起 こ る。 つ ま り筋 肉 が 緊 張 し、 心 臓 の 鼓 動 が 速 く な り、 息 づ か い が 激 し く な る 。 筋 肉 の 過 度 の 緊 張 は 、 な め らか な 身 体 の 動 き を 損 な わ せ る し、 長 く続 け ば 、 疲 労 は 高 ま る。 不 安 に 伴 い 、 ス ム ー ズ な 動 き が で き な く な る だ け で は な く 、注 意 力 も散 漫 に な る (武 田,1985,
pp.121‐ 122)。 」 と あ る。5
問 題 と 目 的 競 技 不 安 に お い て もMPAに
お い て も 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス に 関 す る研 究 は 行 わ れ て い る。 しか し、競 技 不 安 に 比 較 してMPAに
関 す る研 究 は ま だ ま だ 少 な い 。 よ つ て 今 回 の 研 究 はMPAに
焦 点 化 して 行 う こ と とす る。 こ れ ま で の こ と か ら、 介 入 に よ つ てMPAは
低 下 す る 、 高 いMPAは
パ フ ォ ー マ ン ス を 低 下 させ る 。妨 害 す る の で は な い か と考 え られ る 。 そ の た めMPA
を 低 減 化 す る た め の 介 入 方 法 を 探 り、 比 較 検 討 し 、 パ フ ォ ー マ ン ス と の 関 係を 検 討 す る研 究 は 必 要 で あ る。
MPAの
測 定 に はSpielbergeretal.(1970)イ
乍成 のSTAI(Staite―
Trait Anxiety
lnventory)を
使 用 す る。 そ の 信 頼 性 と妥 当 性 は 多 く の 実 験 を 通 じて 確 か め ら れ 、 多 様 な 領 域 で 適 用 され て い る。 ま た ス ポ ー ツ 心 理 学 領 域 で も 広 く援 用 さ れ て い る。MPAへ
の 適 用 に つ い て も 、 吉 江 ・ 繁 枡(2007)に
よ り信 頼 性 と妥 当 性 が 示 唆 され て い る。 しか しな が ら、MPAに
対 して は 、 状 況 の 違 い に よ つ てSTAIの
状 態 不 安 得 点 が 変 化 す る こ と は 示 され て い る が 、パ フ オ ー マ ン ス が 変 化 す る か ど うか は 十 分 に 検 証 され て い な い (吉 江,2006)。
ま た 、 介 入 を行 い 、 そ の 低 減 化 を 図 る研 究 も少 な い 。 本 研 究 で はMPAと
パ フ ォ ー マ ン ス と の 関 連 を 検 討 し、特 に ネ ガ テ ィ ブ な認 知 と緊 張 に 焦 点 を あ て た 。 これ に 適 切 な 介 入 を 行 う こ とでMPAの
低 減 化 を 図 り、 パ フ ォ ー マ ン ス の 低 下 を 防 ぐ こ と を 目的 と した 。 介 入 方 法 は リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン ト レー ニ ン グ と認 知 置 き 換 え ト レー ニ ン グ を 各 々 単 独 で 採 用 す る こ と に した 。 1 2 る 本 研 究 の 仮 説 は 次 の2つ
と した 。)MPAに
対 して 適 切 な 介 入 を 行 う)MPAの
低 減 化 が は か られ る と、 と、MPAの
低 減 化 を は か る こ と が で き る。 パ フ ォ ー マ ン ス の 低 下 を 防 ぐ こ と が で き 第2章
方 法1.研
究 参 加 者 本 研 究 の 参 加 者 はA市
内 の 公 立 高 等 学 校 の 吹 奏 楽 部 部 員65名
(男 子4名
、 女 子61名
、 平 均 年 齢16.75歳
、9幹
.68歳
)で
あ っ た 。2.使
用 尺 度STAI(Spielberger et al,1970)日
本 語 版 (水 口・ 下 仲0中
里,1970):状
態 不 安 (A‐State)と
特 性 不 安 (A‐Trait)を
測 定 す る各20項
目で 構 成 され る質 問 紙 で あ る 。 状 態 不 安 は 現 在 感 じて い る 不 安 に つ い て の
20項
目 (e.g.固 く な つ て い る)に
対 し、「全 くそ うで な い (1)」 か ら 「全 く そ うで あ る (4)」 の4件
法 で 回 答 す る。 特 性 不 安 は 普 段 ど う感 じて い る か に つ い て (e.g.疲 れ や す い)、 同 様 に4件
法 で 回 答 す る。 そ れ ぞ れ 状 態 不 安 と特 性 不 安 の 程 度 を 示 す 得 点 可 能 範 囲 は20∼
80点
で あ る。3.測
度 パ フ ォ ー マ ン ス:練
習 の 中 で の 普 段 通 りの パ フ ォ ー マ ン ス を0と
して 、 本 番 で の 演 奏 を-5(非
常 に 劣 っ て い た)か
ら+5(非
常 に 優 れ て い た)の
11段
階 で 評 価 し、 自 己 評 価 シ ー ト (資 料1)に
記 入 す る 。 こ の 測 度 の 設 定 は 吉 江(2006)に
準 じた 。4.調
査 調 査 時 期 以 下 の 時 期 に 不 安 と パ フ ォ ー マ ン ス を 調 査①
2015年
6月
上旬定期演奏会
(年に一度
) した 。 前 日に 特 性 不 安 と状 態 不 安 を と も に調 査 した 。 ② 定 期 演 奏 会 終 了 直 後 に パ フ ォ ー マ ン ス に つ い て 自 己評 価 を 行 つ た 。 ③ 数 日後 ビデ オ 等 視 聴 後 パ フ ォ ー マ ン ス に つ い て 自己評 価 を 行 つ た 。 ④2015年
7月
下 旬 吹 奏 楽 コ ン クー ルA地
区 予 選 (年に 一 度)前
日に状 態 不 安 を測 定 した 。 ⑤ 地 区 予 選 終 了 直 後 に パ フ ォ ー マ ン ス に つ い て 自 己評 価 を行 つ た 。 ⑥ 数 日後 ビデ オ 等 視 聴 後 にパ フ ォ ー マ ン ス に つ い て 自 己評 価 を行 つ た 。 ビデ オ 等 とは 、 調 査 協 力 者 の保 護 者 ・ 友 人 が 録 画 した ビデ オ あ る い は 録 音 し た 音 源 の こ とで あ る。5.介
入 定 期 演 奏 会 直 前 に 測 定 した 状 態 不 安 得 点 の 高 い (平 均=49.49以
上)部
員 を 認 知 置 換 え トレー ニ ン グ群 、 リ ラ ク ゼ ー シ ヨ ン ト レー ニ ン グ 群 と統 制 群 の 3 群 に 振 り分 け た 。6.ト
レー ニ ン グ 実 施 の 手 続 き1)セ
ッテ ィ ン グ トレー ニ ン グ 期 間 は 、 調 査 ③ と④ の 間 に あ た る6月
中 旬 か ら7月
中 旬 ま で の 約1か
月 余 で あ る。 トレー ニ ン グ は 、 放 課 後 、 練 習 の 妨 げ と な ら な い 時 間 帯 を 選 ん で 行 つ た 。各 群 に お け る ト レー ニ ン グ概 要 を 表1に
示 す 。週1回
計 5 回 の セ ッ シ ョ ン を 行 う予 定 で あ つ た が 、 台 風 に よ る 警 報 発 令 の た め 第4回
は 中 止 と な り、4回
ず つ の セ ッ シ ョ ン と な つ た 。 トレー ニ ン グ は 、研 究 参 加 者 の 所 属 校 に お け る 小 会 議 室 に て 行 つ た 。 参 加 者 の プ ラ イ バ シ ー を 守 り、 実 験 条 件 が 交 絡 し な い よ うに ト レー ニ ン グ 内 容 に つ い て は 日 外 し な い よ う依 頼 を し、 トレー ニ ン グ の 開 始 時 刻 もず ら して 実 施 した 。2)ト
レー ニ ン グ 内 容 の 概 要 ① 認 知 の 置 き 換 え ト レー ニ ン グ 第1回
に 、 ト レー ニ ン グ の 内 容 と 目的 、 自 由 参 加 で あ る こ と 、 途 中 で 抜 け る こ と も 可 能 で あ る こ と を 伝 え 、全 員 よ り 口頭 で 参 力日の 承 諾 を 得 た 。そ の 後 、 思 考 ワ ー ク (資 料2)を
使 用 し 、 例 題 に 対 し て 浮 か ぶ 思 考 を 記 入 して も ら つ た 。 そ れ を 利 用 して 、 ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 や 自動 思 考 に つ い て 丁 寧 に 説 明 を加 え た 。 そ の 上 で 、 ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 に 気 づ い て も ら う こ と と 、 気 づ き を 習 得 して も ら う こ と が 重 要 で あ る こ と を 説 明 し、 自分 の 考 え 記 録 表 (資 料3)を
配 布 し、 記 入 方 法 に つ い て 教 示 し た 。 内 容 は 気 分 が 落 ち 込 ん だ 出 来 事 が あ れ ば 記 入 す る 、 さ ら に そ の 時 心 を 占 め た お そ ら く否 定 的 な 考 え や そ れ 以 外 の 可 能 性 の あ る 考 え 方 を 記 入 す る こ とで あ つ た 。 自分 の 考 え 記 録 表 は ホ ー ム ワ ー表
1各
群のトレーニングの実施内容認知置換えト
レーニング群の課題
リ
ラクゼーショ
ント
レーニング群の課題
6月26日 7月 3日 7月10日 7月17日 7月22日 第1回 思考ワーク。ネガティブな認知の気づき 呼吸法・肩上げ自分の考え記録表
(HWl第
2回ネガティブからポジティブな認知ヘ
自分の考え記録表
(H叫第
3回ポジティブな認知
自分の考え記録表
(HWl第
4回
第
3回と同じ
台風による警報発令のため中止
第
5回認知の置き換えト
レーニング
アンケート
セルフチェックシート
(HW)漸進性筋弛緩法
セルフチェックシート
(HW)第
1・2回の復習
セルフチェックシート
(HW)第
3回と同じ
+踏
みしめ
同左
踏みしめと復習
アンケート
HW=Home Work ク と して 記 入 を し、 次 回 に 持 参 す る よ う依 頼 した 。 ホ ー ム ワ ー ク に つ い て は 毎 回 依 頼 を した 。2回
日、3回
目 は 、自分 の 考 え 記 録 表 の 記 述 内 容 に つ い て 取 り上 げ な が ら、 気 分 が 落 ち 込 ん だ 出 来 事 に 対 す る ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 に 気 づ き 、 気 づ く こ とが ポ ジ テ ィ ブ な 考 え を 持 つ こ と に つ な が る よ うに な る と説 明 し た 。2回
目 の 終 わ りに は 、 地 区 予 選 の 演 奏 前 に 自分 自身 に か け る 言 葉 を 最 終 回 ま で に 考 え て お く こ と も 依 頼 した 。 最 終 回 は 、 自分 の 考 え 記 録 表 の 内 容 に つ い て の 教 示 の 後 、 仕 上 げ と し て 、 認 知 の 置 き 換 え ト レー ニ ン グ (資 料4)を
実 施 した 。 こ れ は 妹 尾 ・ 橋 本(1997)が
ス ポ ー ツ 用 に 作 成 した も の をMPA用
に 修 正 した も の で あ る 。 最 後 に 自分 に か け る 言 葉 と感 想 を 記 入 して も らい 終 了 した 。 ② リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン トレー ニ ン グ 第1回
に 、 認 知 置 換 え ト レー ニ ン グ 群 と 同 様 の 要 領 で 説 明 を 行 い 全 員 よ り 口 頭 で 参 加 の 承 諾 を 得 た 。 ま ず 、 リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン を 具 体 的 に 理 解 して も ら う た め に 、 身 体 が 固 い と 自覚 し て い る 協 力 者 に1人
前 に 出 て も らい 、 以 下 の 身 体 を 緩 め る 動 作 を 見 て も ら っ た 。 協 力 者 は 足 を 肩 幅 に 広 げ 楽 に 立 つ 。 両 手 を 前 に 上 げ 、 右 方 向 に ゆ つ く り回 し 自然 に 動 き が 止 ま る と こ ろ ま で 動 か し た 。そ の 位 置 を 確 認 し、 左 も 同 様 に 行 っ た 。 そ の 後 訓 練 者 が 、 息 を 吐 き な が ら腕 を 前 に た ら し、 前 屈 み に な り、 肩 、 膝 を ゆ る め て 上 半 身 を ゆ ら ゆ ら と動 か す 手 本 を 示 し、 同 じ よ うに 協 力 者 に や つ て も ら つ た 。 そ し て 先 ほ ど と 同 様 に 前 に 上 げ た 両 手 を ゆ っ く り と動 か して も らい 、 位 置 を 比 較 し た 。 次 に 姿 勢 の 整 え 方 と腹 式 呼 吸 の 教 示 を 行 つ た 。 ま ず お 腹 に 手 を 当 て て 呼 吸 を し て も ら い 、 腹 式 と胸 式 呼 吸 の 違 い を確 認 した 。次 に 訓 練 者 が 約
10秒
の 腹 式 呼 吸 の 要 領 を 参 加 者 に 示 した 。 一 、 二 、 三 で ゆ っ く り吸 い 、 四 で い つ た ん 止 め て 、 五 ∼ 十 で ゆ つ く り吐 く。 時 間 や 腹 式 に と ら わ れ す ぎ な い こ と 、 吸 う よ り も 吐 く 息 に 重 点 を 置 き 、 吐 く時 に 不 安 や い や な 感 情 が 吐 き 出 さ れ る イ メ ー ジ を 持 つ と よ い と い う説 明 も加 え な が ら、 数 回 の 練 習 を 繰 り返 し た 。 次 に 訓 練 者 が 肩 上 げ に つ い て の 要 領 を 参 加 者 に 示 した 。 背 も た れ に も た れ な い で 、 自然 に ま っ す ぐ座 り、 両 足 に 裏 が 床 に 着 く よ うに 、 両 腕 は 自然 に 横 に た らす よ うに 指 示 し た 。 肩 を 上 に 上 げ 、 し ば ら く止 め て ゆ つ く り下 げ た 。 次 は す とん と下 げ た 。 ど ち ら が 気 持 ち い い か は 選 ん で も ら つ た 。 背 中 が 丸 く な ら な い よ うに 、 下 げ た 時 に 力 が 抜 け て い る感 触 を 味 わ つ て も ら う こ と を 重 視 し た 。 数 回 練 習 を繰 り返 し た 。 そ の 後 、 セ ル フ チ ェ ッ ク シ ー ト (資 料4)を
配 布 し、 毎 日記 入 し て 次 回 に 持 参 す る よ う依 頼 し た 。 こ の ホ ー ム ワ ー ク の 目的 は 、 呼 吸 法 と肩 上 げ を 習 得 し て も らい 、 セ ル フ ケ ア を 可 能 に す る た め で あ る 。 ホ ー ム ワ ー ク に つ い て は 毎 回 依 頼 を した 。2回
目 に は 漸 進 性 筋 弛 緩 法 を 教 示 した 。 ど の よ う な 時 に 使 うか を 説 明 し、ま ず 消 去 動 作 を 練 習 した 。椅 子 に 座 つ た 状 態 な の で 、 お 尻 を 前 に ず ら し て 眠 りの イ メ ー ジ に 近 づ け 手 か ら実 技 に 入 つ た 。 両 手 首 、 両 足 首 、 腰 、 肩 、 顔 を そ れ ぞ れ に 力 を 入 れ 抜 く練 習 を し 、 順 番 に 力 を 入 れ 、 一 挙 に 抜 く こ と を2∼
3回
実 施 した 。3回
日 は 復 習 を 行 つ た 。 最 終 回 に は 、踏 み し め を 教 示 した 。 足 を 肩 幅 に 広 げ 、 足 裏 全 体 に 、 体 重 を 載 せ て 、 ど っ し り と 立 っ て い る よ うに し、 足 首 、 膝 、 股 を 少 し折 つ て い つ た 。 肩 の 力 は 抜 き 、ぐ っ と 大 地 を 踏 み し め て い る 感 じ を 出 す よ う指 示 した 。 本 番 前 等 の 落 ち 着 か な い 時 に 、 呼 吸 法 ・ 肩 上 げ と と も に 使 う と効 果 的 で は な い か と付 け 加 え た 。 最 後 に 感 想 を 書 い て も らい 終 了 した 。 呼 吸 法・肩 上 げ・漸 進 性 筋 弛 緩 法・踏 み じめ の 教 示 法 に つ い て は 、冨 永
(2014)
に 準 じて 行 つ た 。 ③ 統 制 群 全 く介 入 は 行 わ な か つ た 。7.倫
理 的 配 慮 学 校 長 に 調 査 内 容 の 説 明 と依 頼 を 行 い 、 調 査 実 施 の 了 承 を 得 た 。 同 様 に 顧 間 の 了 承 も 得 た 。 参 加 者 に は 、 調 査 の 目的 、 こ の 調 査 へ の 参 加 ・ 不 参 加 は 自 由 で あ る こ と 、 回 答 者 の プ ラ イ バ シ ー は 守 られ る こ と 、 回 答 した く な い 項 目 が あ れ ば 無 理 に 回 答 す る 必 要 は な い こ と を 目頭 で 伝 え た 。8.分
析 方 法 各 群 及 び 時 期 を 独 立 変 数 、 状 態 不 安 得 点 を 従 属 変 数 と して 、2要
因 の 分 散 分 析 を 行 つ た 。 状 態 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス の 自 己 評 価 との 関 連 を み る た め に 、 相 関 を 求 め た 。 分 析 に はSPSSを
使 用 した 。 第3章
結 果表
2各
変数の平均値
(標準偏差
)状態不安1 特性不安
自己評価
1
自己評価
2
状態不安2 自己評価3 自己評価
4 参加者 詢門5 49湘
(80 5132(1∝n l‖
(露1) 2脚
(‖n 49m(1076)1.11(202) m31.10
認知置き換え群
│卜 11リ
ラク
ゼーシヨ
ン群卜
11統制群卜
11 0,27(2.731 1.73(1,191 1.55(2.70) 1.82(1.541 1.55(2.70 1.320.541 56.40に941 57.5514.16) 55.82(4.81) 56。36(5201 60.91(6.77) 5419(1030) 58.36(7湘) 50.55(8Ю21 55.36(7.62) 0181.2つ 0.64120 0.640。 2の -0.63(1.80 0.09(2.63) 0.09(2.63)10
1
群 間 の 差 認 知 置 き 換 え トレー ニ ン グ 群 、 リ ラ ク ゼ ー シ ヨ ン ト レー ニ ン グ 群 、 統 制 群 を 比 較 す る た め に1要
因 の 分 散 分 析 を 行 つ た 。3群
に 有 意 な 差 は み られ な か っ た 。(F(2,30)=。46,nos。)2
群 間 及 び トレー ニ ン グ 前 後 の 状 態 不 安 得 点 各 調 査 に お け る調 査 協 力 者 全 員 の 平 均 値 (標 準 偏 差)を
表2に
、 トレー ニ ン グ 前 後 の 状 態 不 安 得 点 を 表3に
示 した 。 群 及 び ト レー ニ ン グ 前 後 の 状 態 不 安 得 点 に 関 して 、2要
因 の 分 散 分 析 を 行 つ た 結 果 (表 4)、 リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン トレー ニ ン グ群 の み 交 互 作 用 に 有 意 な 傾 向 が 認 め られ た 。(F(2,30)=2.77,
′<。10)。 そ こ で 単 純 主 効 果 の 検 定 を 行 つ た と こ ろ 、 リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン トレー ニ ン グ群 の トレー ニ ン グ 前 後 の 状 態 不 安 の 得 点 に 有 意 な 差 が 認 め られ た 。(F(1,30)=8.34,′
<.01)。 結 果 は 図1に
示 した 。3
状 態 不 安 得 点 と パ フ ォ ー マ ン ス 自 己 評 価 得 点 各 変 数 の 相 関 分 析 を 行 つ た 。結 果 は 表5に
示 した 。特 性 不 安 は 自 己 評 価 2・3と
弱 い 負 の 相 関 が 認 め られ た 。 状 態 不 安 と 自 己 評 価 得 点 に は 相 関 は 認 め ら れ な か つ た 。表
3状
態不安得点の各群の変化
pOst認知群
(n=11)
リラ群
(n=11)
統制群
(r卜=11)
平均値
(標準偏差
)平均値
標 準偏差
)平均値
平均値
56.40
(4.94)
57.55
(4.16)
55.82
(4381)
58.36
(7.43)
50.55
(8.02)
55.36
(7.62)
11表
4各
群における介入前後における分散分析の結果
平方和
自由度
平均平方
F値
有意確率
状態不安
92.182 1 92.182 2.85 0.102
状態不安×処理
179.180 2 89.591 2.77 0.079†
誤差
969.640 30 32.321
ナρ
<110
表5各
変数の相関係数 状態不安1
特性不安自己評価
1
自己評価2
状態不安2
自己評価3 状態不安1 特性不安・468‐ 自己評価
1 -130 -.178
自己評価2 ・
144 -.204・.620"
状態不安2
・445“.442‐
―
.091 -.044
自己評価3 ・
153 -.232・.223・ _299“
-145
自己評価4 ・
178 -、
195・.2“
拿.227= -164 .534"
'ρイ.05,オ・ p<.0112
トレー ニ ング前後 の状態 不安得 点 の変化 状態不安
_前
:状態不安_後
介入群‐リラクゼー シ ョン ト レーニ ング 状態不安_前
1状態不安_後
状態不安_前
1状態不安_後
介入群 ‐認知 の置 き換 え ト レーニ ング 第4章
考 察 本 研 究 の 目的 は 、MPAと
パ フ ォ ー マ ン ス と の 関 連 を 検 討 し、 特 に ネ ガ テ ィ ブ な 認 知 と緊 張 に 焦 点 を あ て 、これ に 介 入 を 行 う こ とでMPAの
低 減 化 を は か り、 パ フ ォ ー マ ン ス の 向 上 を は か る こ と で あ つ た 。 本 研 究 の 結 果 は 以 下 の 通 りで あ つ た 。1.リ
ラ ク ゼ ー シ ョ ン トレー ニ ン グ 群 に お い てMPAが
低 減 化 され た 。 よ つ て 仮 説1は
支 持 され た 。 しか し、認 知 置 き 換 え トレー ニ ン グ 群 に お い てMPAは
低 減 化 され な か つ た 。2.特
性 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス に は 弱 い 負 の 相 関 が 認 め られ た 。 しか し、 状 態 13表
6ト
レーニング後のアンケート集計(回答数)トレーニングを受けた感想
本番を控えた自分へのアドバ イス 冷静になることが多くなつた(3) ネガティブな考え方をしていることが多いことに気づいた(3) ポジティブな考えが浮かぶようになつた(2) 嫌なことがあつた時に切 り替えができるようになつた(2) 記録表を書くだけでも効果があつた(2) 困難や失敗に対 してどう向き合えばよいかわかった(2) 落ち着いてやろう(3) プラス思考でがんばろう(2) 考え方を変えれ ば大文夫(1) 何とかなるから大文夫(1) 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス と の 間 に は 相 関 は 認 め られ な か っ た 。 よ つ て 仮 説2は
支 持 され な か つ た 。1.MPAと
介 入 リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン トレー ニ ン グ群 に お い てMPAは
低 減 化 に 成 功 した 。 この こ と は 適 切 な 介 入 を 行 え ば 、MPA低
減 化 が 可 能 で あ る こ と を 示 して い る。 し か し、 認 知 置 き 換 え トレー ニ ン グ 群 は 低 減 化 を は か る こ と が で き な か つ た 。 こ の 点 に は 疑 間 が 残 る。 最 終 回 の トレー ニ ン グ 終 了 後 に ア ン ケ ー トも 実 施 し、 全 員 か ら回 収 が で き て い る 。 そ の 一 部 を 表6に
示 し た 。 こ れ を 見 る と 、 トレ ー ニ ン グ の 効 果 は あ る 程 度 あ っ た と判 断 して も よ い の で は な い か と考 え られ る。 で は 何 故 そ の 効 果 はMPAの
低 減 化 に つ な が ら な か つ た の か 。 これ に 関 し て は2つ
の 問 題 が 考 え られ る。 ま ず1つ
は トレー ニ ン グ の セ ッ シ ョ ン 数 が 少 な か っ た の で は な い か と い う こ と で あ る。 台 風 の た め1回
中 止 に な つ た こ と も影 響 を 与 え て い る と考 え ら れ る が 、そ れ よ り も 、約1か
月 間 に 7∼8回
を 計 画 す る 必 要 が あ つ た の で は な い か とい う こ と で あ る 。妹 尾・ 橋 本(1997)は
他 の トレー ニ ン グ も含 め て で あ る が 、1か
月 に9回
の ト レー ニ ン グ を 実 施 して い る 。ネ ガ テ ィ ブ な 認 知 に 気 づ 14き 、 さ ら に ポ ジ テ ィ ブ な 認 知 に 置 き 換 え て い く と い うの は 時 間 を 要 す る 作 業 で は な い か と推 察 され る。 も う
1つ
は 、 筋 緊 張 と の 関 係 で あ る。 塚 本 ら(1996)は
前 述 した よ うに 、 ピ ア ノ 演 奏 場 面 で の 「指 先 の ふ る え 」 や 「手 が 冷 た く な る 」 と い う よ うな 身 体 症 状 が 不 安 反 応 に 促 進 的 な 影 響 を 与 え る た め 、 身 体 症 状 の 制 御 が 不 安 の 低 減 に つ な が る と述 べ て い る。 さ ら に 、 演 奏 不 安 状 況 で は 演 奏 阻 害 に 直 接 的 に 結 び つ く よ うな 身 体 症 状 が 、 そ の 他 の 身 体 症 状 に 比 べ て 優 勢 に 知 覚 され や す く 、 そ の 後 の 不 安 反 応 に 促 進 的 な 影 響 を 及 ぼ しや す い と も 述 べ て い る。 こ の こ と は 身 体 症 状 を あ る程 度 コ ン トロ ー ル で き る 、 つ ま り筋 緊 張 を コ ン トロー ル す る こ と が で き れ ば 、 認 知 置 き 換 え ト レー ニ ン グ も 効 果 を 上 げ る こ と が で き る と示 唆 して い る の で は と考 え られ る。 今 後 、MPAの
低 減 化 を は か る に は ど の よ う な 介 入 が あ る か とい う こ と だ け で は な く 、 ど の 介 入 を ど の よ うな 組 み 合 わ せ で 用 い る か 、 ど の よ うな 順 番 で 用 い る か と い う こ と を 検 討 し な が ら、 研 究 を 続 け て い く必 要 が あ る。2.MPAと
パ フ ォ ー マ ン ス 状 態 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス との 間 に 相 関 が な か つ た こ と に つ い て は2つ
の こ とが 考 え られ る。 ま ず1つ
はSTAIに
よ つ てMPAが
正 確 に 測 定 され て い る か と い う こ とで あ る。 そ の 点 に 問 題 が あ る 可 能 性 が 考 え られ る。例 え ば 、橋 本 ・ 徳 永(2000)は
野 球 選 手 の 競 技 不 安 測 定 にTAIS(Trait Anxiety lnventory for Sport)と
SAIS
(State Anxiety lnventory for Sport)を
用 い て い る。 藤 原 ・ 千 駄(2000)も
同 じ く野 球 選 手 にSTAIに
加 え 、DIPCA(心
理 的 競 技 能 力 診 断 検 査)、PCI(心
理 的 コ ン デ ィ シ ョ ン イ ン ベ ン ト リー
)等
を 用 い て い る。新 山・ 藤 原(2000)は
MPAの
測 定 にSTAIに
加 え 、POMS(日
本 版)を
併 用 して い る 。山 田 ら(2012)
は 、最 近 で は
STAIを
競 技 不 安 の 評 価 尺 度 に 採 用 して い る研 究 は 少 な い と も述べ て い る。 吉 江・ 繁 枡
(2007)は
MPAの
内 的 要 因 で 注 目 され て き た の は 対 人 不 安 と完 全 主 義 で あ る が 、これ だ け で はMPAを
完 全 に は 説 明 で き な い と述 ベ て い る 。MPAと
競 技 不 安 の 外 的 ・ 内 的 要 因 は 多 く、 こ の こ と は 、 さ ら にMPA
や 競 技 不 安 を 正 確 に 測 定 す る こ と を 難 し く して い る 。 演 奏 場 面 で も 楽 器 の 種 類 に よ つ て 、 あ る い は ス ポ ー ツ で は 各 競 技 種 目 そ れ ぞ れ の 状 況 特 異 的 な 状 態 不 安 を 測 定 す る に は ど の 尺 度 を 用 い る の が 適 切 か と い う こ と に つ い て 再 検 討 の 必 要 が あ る。 も う1つ
は 、MPAと
パ フ ォ ー マ ン ス と の 関 係 で あ る 。 ス ポ ー ツ に お け る競 技 不 安 が 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス に 対 し て 影 響 力 を 持 つ こ と はMartens(1977)
を は じ め とす る 多 く の 研 究 者 に よ つ て 明 ら か に され て い る。 本 研 究 も こ の 理 論 を も と にMPAの
低 減 化 が パ フ ォ ー マ ン ス の 向 上 に つ な が る と考 え た 。一 方 で 、Mellalieu et al.(2003)は
不 安 を促 進 的 に 解 釈 す る ア ス リー トは 、競 技 に 向 け られ た 自 己 の 感 情 状 態 を ポ ジ テ ィ ブ に 解 釈 す る こ と を 示 し、 競 技 不 安 が 必 ず し も負 の 影 響 を 及 ぼ す 訳 で は な い こ と を 指 摘 して い る 。つ ま りMPAや
競 技 不 安 と パ フ ォ ー マ ン ス と の 関 係 に つ い て は 諸 説 あ る と い う こ と で あ る 。 こ の こ と はMPAと
パ フ ォ ー マ ン ス の 関 係 に つ い て 、直 接 結 び つ け る の で は な く 、 さ ま ざ ま な 角 度 か ら影 響 を 検 討 して い く こ と が 必 要 で あ る。 これ は 今 後 の 研 究 に 大 き な 示 唆 を 与 え て い る。 しか し な が ら本 研 究 に お い て 、適 切 な 介 入 に よ つ てMPAの
低 減 化 を は か る こ と が で き た こ と は 、MPAに
関 す る研 究 が 少 な い 中 で 大 き な 意 義 が あ つ た と い え る 。 な ぜ な ら ば 、 調 査 協 力 者 は 今 後 ま す ま す 多 く の ス ト レ ッサ ー に 晒 さ れ な が ら生 活 を して い く こ と に な る 。 そ の 際 セ ル フ ケ ア の 能 力 を 身 に つ け て い る こ と は 生 活 の 質 を 高 め て い く こ と が で き る 大 き な 要 素 と な る か ら で あ る。3
本 研 究 の 課 題 と 今 後 の 展 望 本 研 究 の 限 界 は 、 調 査 時 期 とパ フ ォ ー マ ン ス の 自 己 評 価 で あ る。 ま ず 、 調16
査 時 期 で あ る が 、 吹 奏 楽 部 に と つ て 定 期 演 奏 会 も 地 区 予 選 も 年 に 一 度 で あ る。 同 じ条 件 の 演 奏 会 を 調 査 対 象 と し よ う とす る と
1年
間 空 く こ と に な り、 調 査 協 力 者 は 練 習 を 積 み 重 ね る な ど、 介 入 の 効 果 を 測 定 す る こ と は 困 難 と な る。1 ∼2か
月 で 介 入 を 行 い 、効 果 を 比 較 し よ う とす る と演 奏 会 の 選 択 が 困 難 と な る。 そ の た め 調 査 時 期 の 設 定 に は 再 検 討 が 必 要 で あ ろ う。 パ フ ォ ー マ ン ス の 達 成 度 、 普 段 通 りの 力 が 出 せ て い る か ど うか に つ い て の 指 標 は 、 ス ポ ー ツ の 個 人 競 技 で あ れ ば 、 タ イ ム を 含 む 記 録 が 大 き な 目安 と な る。 し か し、 演 奏 や 団 体 競 技 で は コ ン ク ー ル や 試 合 結 果 だ け で は 測 れ な い 。 本 研 究 で は 自 己 評 価 を 採 用 し た が 、 これ に は 調 査 協 力 者 の 認 知 が 大 き く影 響 す る (吉 江 ・ 繁 枡,2007)。
山 田 ら(2012)は
パ フ ォ ー マ ン ス の 発 揮 度 を 指 導 者 の 評 価 に よ つ て 測 定 し、 コ ー チ ン グ に 有 益 な 示 唆 を 得 よ う と し て い る 。 し か し、 吹 奏 楽 部 の 演 奏 の 場 合 、 数 人 の 指 導 者 を 用 意 し た と し て も 一 人 一 人 の 評 価 を す る こ と は 困 難 で あ る 。 自 己 評 価 と指 導 者 の 評 価 を あ わ せ る な ど 、 よ り客 観 的 な 指 標 を 得 る た め の 検 討 が 必 要 と な ろ う。 今 後 はMPAに
関 す る デ ー タ の 蓄 積 を 行 い 、競 技 不 安 に 対 す る研 究 に も 留 意 しな が ら 、MPAが
生 起 され る メ カ ニ ズ ム や そ の 心 理 的 プ ロ セ ス に つ い て よ り 詳 細 な 検 討 が 期 待 され る。そ の 中 で 、ま ずMPAの
測 定 尺 度 の 開 発 が 望 ま れ る。 さ ら に 、MPAが
高 く な れ ば 実 際 に パ フ ォ ー マ ン ス が 損 な わ れ て い る か ど うか を 詳 細 に 検 討 す る こ と が 期 待 さ れ る 。 そ うす る こ と で 種 々 の ト レー ニ ン グ とMPAを
関 連 づ け た 演 奏 で 普 段 通 りの パ フ ォ ー マ ン ス が 発 揮 され る こ と に つ な が る。17
引 用 文 献
エ モ ン ズ
,S&ト
マ ス,A.曾
ち は る (監 訳)2007
声 楽 家 の た め の 本 番 力 …最 高 の パ フ ォ ー マ ン ス を 引 き 出 す メ ン タ ル ・ トレー ニ ン グ,音
楽之 友 社
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Power Performance for
Singers:Transcending the Barriers.New York:Oxford
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大 学 生 バ レー ボ ー ル 選 手 に お け る 不 安 に 関 す る研 究 ―指 導 者 の 評 価 に 着 目 し て ― バ レー ボ ー ル 研 究,14(1),22‐
27. 山 田快 ・ 中 島 宣 行2011
バ レー ボ ー ル 選 手 に お け る 競 技 開 始 前 の 状 態 不 安 とパ フ ォ ー マ ン ス の 関 連 に つ い て 順 天 堂 ス ポ ー ツ 健 康 科 学 研 夕E,3(1),32… 36. 山 田 快 ・ 吉 田康 伸・ 濱 回純 一 ・ 増 山 光 洋2012
大 学 生 バ レー ボ ー ル 選 手 に お け る 不 安 に 関 す る研 究 法 政 大 学 ス ポ ー ツ研 究 セ ン タ ー 紀 要 30, 19‐27. 吉 江 路 子2006
演 奏 不 安 は パ フ ォ ー マ ン ス を 低 下 させ る か ―状 況 別 演 奏 不 安 傾 向 とパ フ ォ ー マ ン ス の 関 連 一 日本 パ ー ソナ リテ ィ 心 理 学 会 発 表 論 文 集,15,58‐
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対 人 不 安 傾 向 と完 全 主 義 認 知 が 演 奏 状 態 不 安 に 及 ぼ す 影 響 パ ー ソナ リテ ィ研 究,15(3),335‐ 346.
20資料1
自己評価 シー ト
今 回の定期演奏会 のパ フォーマ ンス (演奏)に
つ いて 自己評価 を して くだ さい。 練習 時 のそ こそ このパ フォーマ ンス を0と
して、次 の数 字 で あて はま る と思 うもの を○で 囲んで くだ さい。+5(非
常 に優 れ て い た)+4
+3
+2
+1
0
-1-2
-3
-4
-5(非
常 に劣 つ て い た)名
前
(自己評価 シー ト
今 回 の定期演奏会 のパ フォーマ ンス (演奏)に
つ い て、DVD等
を視聴 した後 で 自己評価 を して くだ さい。練 習 時 のそ こそ このパ フォーマ ンス を0と
して、次 の数字 で あてはま る と思 うもの を○で囲んで くだ さい。+5(非
常 に優 れ て い た)+4
+3
+2
+1
0
-1-2
-3
-4
-5(非
常 に劣 つ て い た) 名 前 (資料 2
思
考
ワ
ー
ク
1
朝起 きた ら8時
10分
!2
隣の教室の前で仲良 しの Yさ んが他のお友達 とお しゃべ り。こつちを向い
たので「おはよう」と声をかけた ら無視 された。
3
トイ レに行 こ うと教 室 を出た ら、隣 の組 の 男子 が こ つち を指 さ して何 や ら ヒソ ヒソ。4
平均 点62点
の テス トで、 とん で もな い点 を取 つて しま つた 。なまえ
(資料
3
自分 の考 え記録表 日付 気分が落 ち込んだ出来事 その時 に起 こった感 情 (強さ 0∼ 10) その時心 を 占めた考 え (おそ らく否定的 な) そ れ 以 外 の 考 え 方 (よ り適応 的な) 感 情 の変化 (強さ 0∼ 10) 感情―不安 。怒 り 。悲 しみ 。困惑 。おび え 。心配・不満 。うん ざ り。傷ついた 。失望・恐怖・屈辱感なまえ
(資料
4
認知 の置 き換 え トレー ニ ング 次 の よ うな場面 で 、 あなたが 自分 に発 して きた消極 的 な語 りか けの言葉や無意識 の うち に浮 かんで しま つた否 定的 な感情 につ いて、左 の[ ]に
短 い言葉 で書 いてみ て くだ さい。 そ して、右 の[ ]に
は、原則 に従 つて積極 的 な語 りに書 き換 えてみ て くだ さい。 書 き換 えの原則 「内容 がシンプル で あること」 「単純 な肯定文 であること」 「現在形 を使用す るこ と」1
本番当 日、体調 を崩 して しまつた。
[ ]→
[2
朝の音出しの時点でコンデ ィシ ョンが悪い。
[ ]→
[3
ホール到着後、他の学校の生徒が うるさく、集中できない。
[ ]→
[4
リハーサルでチューニングが合わない。
[ ]→
[5
曲の冒頭でアインザ ッツがずれて しまつた。
[ ]→
[6
曲の大事な場面で、 ミスをして しまった。
[ ]→
[7
曲の大事な場面で隣の演奏者が ミスを したのがわかつた。
[ ]→
[8
演奏中、指揮 と自分の演奏がずれて しまった。
[ ]→
[9
本番の 日、よりによつて集合時間に遅刻 して しまった。
[ ]→
[10
自分で場面を設定 してください。
[ ]→
[資料
5
リラクゼーシヨン
・セルフチエツクシート
なまえ
( )
リラクゼーシヨン
・セルフチエツクシート
ノ ( ) ノ ( ) / ( ) ノ ( ) ノ ( ) ノ ( ) ノ ( )呼吸トレ
肩上げ
眠リトレ
踏みしめイメージ
ノ ( ) ノ ( ) / ( ) ノ ( ) ノ ( ) ′ ( ) ノ ( )呼吸トレ
眠リトレ
踏みしめ
イメージ
なまえ
( )
謝 辞 本 研 究 の 実 施 に あ た り 、 調 査 に ご 協 力 い た だ い た 高 等 学 校 の 生 徒 の 皆 様 に 厚 く お 礼 申 し 上 げ ま す 。 ま た 、 上 西 裕 之 さ ん を は じ め 臨 床 心 理 学 コ ー ス の 皆 様 に も 助 言・ 協 力 を し て い た だ き ま し た 。こ の 場 を 借 り て お 礼 申 し 上 げ ま す 。 最 後 に な り ま し た が 、 指 導 教 官 の 大 野 先 生 に は 大 変 お 世 話 に な り ま し た 。 心 よ り感 謝 申 し 上 げ ま す 。