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〈言葉足らずな発話〉が備える共創的インタラクションを生み出す余地について

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Academic year: 2021

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〈言葉足らずな発話〉が備える共創的インタラクションを

生み出す余地について

Potential of Incomplete Utterance: Attracting Hearer in

Human-Robot Interaction

西脇裕作

1

岡田美智男

1

Yusaku Nishiwaki

1

, Michio Okada

1

1

豊橋技術科学大学

1

Toyohashi University of Technology

Abstract: In this paper, we discuss the incompleteness in Human-Robot conversation. Based on the concept of weak robot and the dialogue theory of Mikhail Bakhtin, we investigated how the robot’s incomplete utterances affect the interaction between people and robots. We confirmed that participants increased interacting with the robot when it used unexpressed utterance elements. In this study, we also showed the results by considering the relationship between human and robot.

1

はじめに

「ハロー,〇〇!今日の予定は?」「本日は,午後 3 時 から 409 会議室にて,ウィークリーミーティングがあ ります」などの過不足ない情報交換もいいけれど,幼 児などとの少し言葉足らずな発話を介してのやり取り も面白い.「きょうね,いっぱいあそんだ!」(えっ,だ れと?),「きみちゃん」(へー,なにしてあそんだの?), 「おえかきしたよ」(たのしかった?),「うん」……など, 聞き手の手助けや解釈を上手に引き出しつつ,なんと かおしゃべりを続けてしまう.過不足ない情報交換と 比べても,むしろ豊かなコミュニケーションを実現して いるようにも思われる.これはどうしてなのだろうか. 人とスマートスピーカの会話を見てみると,多くの システムは大人のようにしっかりと話し,過不足のな い情報交換の様相が見られる.しかし例に挙げたよう にコミュニケーションとして会話を考えたとき,幼児 の言葉足らずな発話が備える〈不完結さ〉には,他者 を上手に巻き込み,一緒に発話を作り上げているよう な重要な機能を備えていると考えられる.筆者らはこ れまで〈弱いロボット〉などの不完全さを備えたロボッ トとのインタラクションについて着目してきた.また HRI 研究では失敗するロボットにも注目が集まってい る.ここでは〈不完結さ〉が聞き手の積極的な手助け や解釈を引き出すための〈余地〉として機能すること に着目し,人とロボットとの共創的なコミュニケーショ ンの可能性について探っている.本研究ではロボット 連絡先:豊橋技術科学大学 情報・知能工学専攻       〒 441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘 1-1        E-mail: [email protected] の発話が言葉足らずで〈不完結さ〉を備えるとき,聞 き手からどのような関与を引き出すのかを調べるとと もに,〈弱いロボット〉の概念やミハイル・バフチンの対 話論などに依拠しつつ,この〈言葉足らずな発話〉の 備える他者との関係を引き出す力について考察する.

2

研究背景

2.1

権威的な言葉,内的説得力を持つ言葉

ロシアの文芸評論家 Mikhail Bakhtin は対話の参加 者が交わす「声1」に着目し社会的な相互作用を二つに 分類した [1].「声」が相手と交わることがなく常に承認 と受容のみを要求する〈権威的な言葉〉と「声」が他 者と交わり相手が新たに解釈する余地を持つ〈内的説 得力を持つ言葉〉である.前者の権威的な言葉は聞き 手が話し手の言葉に対して新たな解釈を行えない状態 を指し,言葉の意味は話し手だけが生み出すものとさ れる.聞き手は話し手の言葉をそのままの意味でしか 受け取ることができないことから,権威的な言葉の様 相を備えるインタラクションは,相手が誰であろうと 同一の意味を伝え,相手にその承認を求めるものにな ると考えられる.そして後者の内的説得力を持つ言葉 は「意味構造は完結したものでなく,開かれたもので ある.」[1, p. 165] とされ,話し手の言葉に対して聞き 手が新たに解釈できるような余地が残される.意味・解 1ここでいう「声」とは聴覚的信号以上の意味があるものであり, 「人格としての声,意識としての声」という極めて広範囲な現象を含 んでいる. 人工知能学会研究会資料 SIG-SLUD-B509-06

(2)

釈は聞き手によって変化できるものとして考えられる ため,話し手の言葉でありながらも新たな解釈や応答 によって聞き手の言葉にもなりうる.内的説得力を持 つ言葉の様相を備えるインタラクションは,相手と共 に意味を生み出すことで,お互いのより積極的な関わ りが見られるものと期待される. この Mikhail Bakhtin の権威的な言葉,内的説得力 を持つ言葉を参考にすると,これまでのインタラクショ ンデザインでは発話や行為の意味の不完結さついて議 論が足りていないように思う.相手との会話を行うた めに過不足のない情報を,誤解や齟齬の無いように伝 えるにはどうすれば良いか考えられてきた.人と会話 できる能力を提供することに注力してきたために,相 手の解釈によっては伝わる意味や反応が変わってしまう ような表現は避けられてきた可能性がある.相手に的 確な情報を伝えることの必要な状況もあるが,日常の 人同士の関わりを見るとそれに限られてはいない.小 さい子どもと養育者の会話などのように,不完結さを 備え相手へと解釈を委ねながら,共にインタラクショ ンを創り上げている様子も見られている.

2.2

弱いロボット

筆者らは,〈弱いロボット〉という関係論的なロボッ トの研究を進めてきた [2].「∼できる」を個体の能力と して扱うだけではなく,他者との関わりの中で生まれ てくる関係論的な能力に着目し,他者からの支えを引 き出してしまう設計やデザインを備えるロボットのこ とを指す.〈弱いロボット〉はそれ自体ではできること が限られ,自身だけでは多くの目的を達成することが できないものの,周囲からの支えを予定したその設計 やデザインは他者の支えを引き出し様々なことを達成 してしまう.ここでは〈弱いロボット〉の代表例とし てお掃除ロボット,Sociable Trash Box の 2 つのタイ プのロボットを示し,その考えについて詳述する. 2.2.1 お掃除ロボット 掃除機に代わって床のゴミや埃を吸い取ってくれる お掃除ロボットは,開発段階では考えられてはいなかっ たであろう関係を人と形成し,個体としての能力以上の 事を関わりの中で達成している代表例である.iRobot 社の Roomba を代表とする平たく薄い形状をしたお掃 除ロボット達は自身のタイヤを用いて直進し,その進 路に存在するゴミを吸い取っていく.そして壁や障害 物にぶつかると進路を変え,また直進を繰り返す.方 向転換と直進を繰り返し,部屋全体を掃除するのがこ のロボットの能力である.お掃除ロボットを使い始め て何日かすると,掃除できているポイントとできてい ないポイントが見え始める.お掃除ロボットは家具を 動かすような能力は備えておらず,障がい物が存在す ると掃除ができないためである.また発売当初のお掃 除ロボットはコードに引っかかりやすく,すぐに動けな いようになってしまうことも多かった.しかし同じ部 屋に暮らし,障がい物の存在に気づいた人はロボット が掃除し易いように家具を動かし,引っかかってしま うコードを整理する様子が見られるようになった.す るとどうだろうか.床のゴミを吸い取る能力しか持っ ていなかったお掃除ロボットは,人との関係の中で部 屋の家具やその他余分なものまで片付ける能力を生み 出していた.

2.2.2 Sociable Trash Box

図 1: Sociable Trash Box ゴ ミ 箱 ロ ボット と も呼ばれる〈Sociable Trash Box〉(STB)は, 人との関係性を意識し 開発されたロボットで ある [3].ゴミを拾い 集めることを目的とし て開発されたロボット であるが,目的を達成 するために必要と考えられる腕を備えていない(図 1). ロボット自身ではゴミを拾い挙げる事ができず,また 落ちているものがゴミかどうかの判断もできない.で きることは床に落ちている物体に向かって進み,その 物体の方に身体と視線を向け,その周りを動くことで ある.しかし STB の近くを通り過ぎる人が現れたとき 状況は変わってくる.人が床に落ちているものに視線 を向け,その物体に対して行動する STB の姿を見たと き,ゴミを拾い上げ STB に入れてくれるときがある. 人に対して「ゴミを拾ってください.」と音声で伝えた わけでもなく,周りにそれを伝える看板があるわけで もない.しかし STB を見た人々はゴミ拾いを手伝って くれることが観測されている.それ個体の能力として ゴミを拾えない,ゴミの認識をできない STB は,人か らの手助けを得ることで,ともにゴミを拾い集めるこ とができてしまっていた.

2.3

本研究の位置付け

Mikhail Bakhtin の論考を参考にすると,人とシステ ムとの会話には Bakhtin が指摘する不完結さについて 議論が残されており,参与者同士がインタラクション を構成する現象を解明するには,大きな手がかりにな ると考えている.

(3)

ここでは一つの試みとして,不完全さを備えること で人と新たな価値を生み出そうとする〈弱いロボット〉 の研究を挙げ,人と関わりを生み出す余地がインタラ クションを生み出している例を示した.これまで,人 とロボットとの会話において,人の不完全さを取り入 れようとする研究では,フィラーや間投詞の使用 [4] な どが行われているが,他者との会話内容,そのインタ ラクションの連鎖にまで踏み込んで議論した研究には まだ議論の余地が残されている. そこで本研究では言葉足らずで不完結な発話を行う ロボットが人からどのような発話や応答を引き出すの かを調べることとした.

3

実験の準備

3.1

言葉足らずな発話,前から区切る発話

本研究では発話に不完結さを備えるさせるため,幼 児の発話の特徴を参考に〈言葉足らずな発話〉の方略 を構築した.これは大きな意味から伝えようとする方 略であり,何を伝えようとしているかはわかるものの, 具体的な情報までは欠けてしまっているような状態を 生み出すことを目指した.実験での発話リソースには, ロボットの発話リソースとして利用されやすいニュー ス記事を利用した.ニュースは,相手に対して誤解を 生まず正しく伝わるように書かれたものが多く,その ために必要な情報が整理されている.このニュース記 事に基づき,ロボットの発話方略を変えることで,言 葉足らずさを生み出すことを試みた. 本研究で用いた〈言葉足らずな発話〉の構築方法と しては,まず係り受け解析機 Cabocha を用いて一文の 係り受け構造を調べる.図 2 に示すような文節 1 と述 部が係り,そして文節 1 と動詞の間にある要素 X が述 部に係る構造を持つ文に対して,原文から「文節 1 + 述部」「要素 X +述部」に分けることで,文としての 大きな意味を取り出しつつ,具体的な情報は要素 X に 含むような〈言葉足らずな発話〉方略を作成した. ࠉࠉࠉࠉᩥ⠇㸯ؑؑأ ᩥ⠇㸰ؑؑؑؑؑؑػ ᩥ⠇㸱ؑؑؑؑؑؑػ ࠉࠉࠉࠉࠉࠉࠉࠉࠉ㏙㒊 図 2: 発話方略説明補助図 また提案手法の統 制条件として〈前か ら区切る発話〉条件 を設定した.〈前か ら区切る発話〉では 「文節 1 +要素 X1」 「要素 X2 +述部」と 区切り,発話文を作 成した. 〈言葉足らずな発話〉を生み出す際にある特定の文 の構造を用いたため,ニュース記事内で適用できない 文も現れる.適用できる部分については〈言葉足らず な発話〉と〈前から区切る発話〉の発話方略を,適用 できない文については,分かち書き可能な部分で他の 分節長を合わせながら,分割を行うこととした.また ニュース記事から発話文への分割しただけではニュー スの文体のままであり,話し言葉としては適さないた め,ロボットの一つの発話の語尾には「∼ね」「∼よ」 「∼だって」等のモダリティの付与を行い,また「あの ね」「えっとね」等のフィラーの付与を行った.

3.2

プラットフォーム〈Muu〉

図 3: 〈Muu〉 本 研 究 で は 実 験 にプラットフォーム 〈Muu〉を用いた.そ の外観を図 3 に示 す.Muu は筆者ら の研究室で研究開発 を進めているロボッ トであり,そのデザ インはミニマルデザ インに基づいている [5].クリーチャーのような見た目 をしたそのロボットは,何をするロボットなのか予め 予測を難しく適応ギャップを防ぐことができると考え ている.目の部分には Web カメラが取り付けられてお り,また本体内部の 2 個のサーボモータにより,頷きや 左右に視線を向けることが可能である.また内部に PC を搭載しており,顔認識,音声認識,合成音声の生成と いった処理が可能である.音声合成エンジンには ATR 社製 Wizard Voice SDK を使用しており,Muu の特徴 の一つとして子どものような声の発話を生成する.

3.3

実験手順

本実験では,参加者にはロボットとのインタラクショ ンを合計 6 回行ってもらい,すべてのインタラクション の開始時に「ロボットが話しかけてくるので,会話して みてください」と参加者には教示を行った.ロボットは 予め決められた発話を行うよう設定し,話しかける内 容と順序を統一した.発話のリソースとして表 1 に示 す 6 つの Web ニュースの内容を用いた.ロボットは人 が終始無言であれば約 3 秒ごと発話を行うが,人が発 話を行っているときには発話終了を待つ.合計 6 回の インタラクションのうち,3 回は〈言葉足らずな発話〉 条件,もう 3 回は〈前から区切る発話〉条件でロボッ トは参加者に話しかけた.話題とインタラクション順 序は固定し,インタラクションの 1,3,5 試行目に〈言葉 足らずな発話〉条件のロボットとインタラクションを 取るアルファ群と,2, 4, 6 試行目に〈言葉足らずな発 話〉条件のロボットとインタラクションを取るベータ

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表 1: ニュース内容 1 トヨタ自動車とマツダが共同開発 2 世界で一番のお金持ち 3 フランスのワインの生産量 4 上の動物園のパンダの赤ちゃん 5 ホンダのジェット飛行機 6 アメリカであった皆既日食 群に参加者を分け,話題とロボットの発話条件のカウ ンターバランスを取った.インタラクション実験では, 人からの関わりを見るために主観評価を調査するアン ケートなどは行わなかったが,参加者とロボットとの インタラクションを録画し,その後,インタラクショ ン実験を行っていない第三者に,〈言葉足らずな発話〉 をするロボットと人とのインタラクションと,〈前から 区切る発話〉を行うロボットと人とのインタラクショ ンを視聴し,その会話に対する評価を行ってもらった.

3.4

会話の評価アンケート

会話への印象を評価するために,11 の質問項目を用 意し「5:そう思う,4:少しそう思う,3:どちらとも言え ない,2:あまりそう思わない,1:そう思わない」の 5 件 法を用いて評価を求めた.先の実験で得られた人の応 答のカテゴリを特徴ベクトルとして,平均的な会話を 行っていた参加者のインタラクションを動画を 2 つ視 聴し,評価を行ってもらった.その質問項目を表 2 に示 す.質問項目は会話が成立していたか,会話の共同性, 会話への参加態度について評価を目的とした.実験で はこれらの質問項目の順番はランダムに提示し,評価 を行った理由についても記述を求めた.

4

結果と考察

4.1

実験 1:インタラクション実験

実験参加者は男性 9 名,女性 7 名の合計 16 名であっ たが,そのうち男性 1 名,女性 1 名についてはロボッ トの発話に対して無言の応答が半分以上となったため に分析から除外し,また女性 1 名については他の参加 者より発話量が著しく多く,等質性を確保するために 除外した.そのため,男性 8 名,女性 5 名の計 13 名 (平均年齢 27.7 歳,標準偏差 11.2 歳)を対象として分 析を行った.まず参加者がどのようにロボットとイン タラクションを行っていたかを分析するため,ロボッ トの発話に対する参加者の応答を ELAN を用いて記録 した.アノテーションの作業は,責任著者と同研究室 に所属する学生 1 名の合計 2 名で行った.人からの応 表 2: 質問項目 人とロボットとの会話の雰囲気に関する質問 Q1 会話は成り立っていた 会話の成立 Q2 会話は自然に行われていた Q3 会話は協調的だった 共同性 Q4 会話は一方的だった Q5 人とロボットで一緒に話をしよ うとしていた 人,ロボットの会話への参加態度 Q6 人はロボットに話しかけていた 参加態度 Q7 人はロボットの話を聞いていた Q8 人は積極的に会話に参加しよ うとしていた Q9 人はロボットから話を引き出そ うとしていた アシスト Q10 人は会話を維持しようとして いた Q11 ロボットは人に話を聞いてほし そうだった 答を 10 のカテゴリに分類し,岩田の研究で用いられた 6 カテゴリに,これまでの展示会のデモ等でよく見ら れる 4 カテゴリを加えた.人の応答カテゴリの詳細は 表 3 に示す. そしてロボットの発話条件が異なることで人からの 応答に変化が見られたかを検証する.まず応答カテゴ リごとのインタラクション中の出現割合を図 4 に示す. 応答カテゴリ 7 と 8 については一度も出現しなかった ため図から省略した. 次に,人の応答カテゴリ 2, 4, 5, 6 について条件間で 変化が見られるかを分析した.各カテゴリに対して,信 頼区間調整には Bonferroni 法を用いて分散分析を行っ た.その結果を図 5 に示す. ロボットが〈言葉足らずな発話〉を行った場合,人 の最小応答が減少し,発話内容についての質問が増え る,またロボットの発話内容を踏まえた人の応答が増 えることを確認した.

4.2

実験 2:第三者からの主観評価実験

実験参加者は男性 5 名,女性 6 名の計 11 名(平均年 齢は 28 歳,標準偏差は 6.5 歳)である.表 2 に示した 質問項目 11 個に対する回答について,分散分析を行っ た.その結果を図 6 に示す.結果として「会話は協調 的だった」「人はロボットから話を引き出そうとしてい た」で,〈言葉足らずな発話〉と〈前から区切る発話〉に 有意差が見られた.また評価理由についての自由記述 より 3 名以上から同様に得られた意見を,表 4 に示す.

(5)

表 3: 人の応答カテゴリ ID カテゴリ 発話例 1 ターンパス 無言のターン 2 最小応答 「うん」「ほー」 3 発話内容の一部を繰 り返す 「ワイン…」 4 発話をさらに促す応 答 「それで」 5 発話内容を踏まえた コメント 「知らなかった」「す ごかったね」 6 発話内容についての 質問 「何が?」「どこであっ たの?」 7 それまでの内容に関 係しない内容の導入 「今日天気良いね」 8 それまでの内容に関 係しない質問 「スポーツ好き?」 9 聞き取れなかったこ との表示 「なんて言った?」 10 笑い 笑いのみのターン 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 1 2 3 4 5 6 9 10 ᖹᆒⓎヰ๭ྜ> 㸣@ Ⓨヰ࢝ࢸࢦࣜ ゝⴥ㊊ࡽࡎ࡞Ⓨヰ ๓࠿ࡽ༊ษࡿⓎヰ 図 4: 条件間,発話カテゴリ間の出現割合

4.3

考察

ロボットが〈言葉足らずな発話〉を用いることで会 話への参加する振る舞いが増えていた.図 5 のグラフ より,会話への積極的な関わりと考えられる会話内容 に関する質問と発話内容を踏まえた新しい情報が増え ることが確認され,また会話への消極的参加である単 純な相槌が減った.〈言葉足らずな発話〉のように一部 が欠けた発話によって,欠けた部分への人からの質問 を引き出していた.そして,それに続くロボットの発 話で人の質問に適切に答えられていたためにターンの 連鎖が成り立ち,さらに人からの情報を引き出せてい たのだと考えられる.また図 6 のグラフより,有意に 〈言葉足らずな発話〉が「会話が協調的だと感じられる」 と評価がされることを確認した.会話が協調的と評価 㸨㸸S㸨㸨㸸S ᖹᆒⓎヰ㢖ᗘ㹙ᅇ㹛 ࢝ࢸࢦࣜ㸦Ⓨヰ᮲௳㛫㸧 ゝⴥ㊊ࡽࡎ࡞Ⓨヰ ๓࠿ࡽ༊ษࡿⓎヰ 0 1 2 3 4 5 6 7 2 4 5 6 ːː ː ːː         図 5: 条件間,発話カテゴリ間の頻度の分析 㸨㸸S 1 2 3 4 5 Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 Q11 ゝⴥ㊊ࡽࡎ࡞Ⓨヰ ๓࠿ࡽ༊ษࡿⓎヰ 図 6: 質問項目 を得た理由には,人の様子が要因となっている可能性 がある.自由記述の回答で「人が調整することで会話 が成り立っていた」と記述があったように,人がロボッ トに合わせて会話を成り立たせている様子が第三者か ら述べられていた.しかし,会話の成立についてや一 方的だったかについてはロボットの発話条件間で有意 な差が見られなかった.その理由として自由記述で見 られた「ロボットが人の発話に反応していなかった」と いう理由が影響したと考えられる.ロボットが人から の参与を引き出しても,本実験の状況ではその参与に 対して新たなロボットの行動が明確に示されないため に会話間に違いが現れなかったと考えられる.

5

むすび

本研究では個として完結した能力を目指すのではな く,相手からの積極的な手助けや解釈を引き出すため

(6)

表 4: 回答理由(括弧内の数字は意見の数を示す) 言葉足らずな発話 前から区切る発話 人の相槌に対する反応が なかった.人の問いかけ に答えているようには思 わなかった.(3) ロボットは人に反応して いなかった(3) ロボットの発話に人が応 答しており,人が調整を することで会話が成り立 っていた.(3) 一方的に感じた(4) 会話になっていた.ロボ ットは人の質問に適切に 答えていた.(3) の余地として機能する不完結さに着目した.人とロボッ トとの会話においてロボットが言葉足らずに話すこと で,人からの関わりを引き出し,人とロボットとで共 にインタラクションを成り立たせられると考え,検証 を行った. 実験ではロボットが予め決められた順序で話しかけ てくる環境を構築し,参加者は「ロボットが話しかけ てくるので会話してみてください」と教示の下,不完 結さを備える〈言葉足らずな発話〉と統制条件の〈前か ら説明する発話〉を行うロボットとインタラクション を行った.その結果,参加者は〈言葉足らずな発話〉を 用いるロボットへの質問が増え,単純な相づちが減り, さらに会話に積極的に関わる様子が観察された.また 第三者が人とロボットとのインタラクションを視聴し 評価を行うと,本研究の実験環境ではロボットが人の 返事に応答していなかったことが指摘されていたもの の,人と〈言葉足らずな発話〉を行うロボットとの会 話は協調的であると評価された.これは人がロボット に合わせて会話を行おうとする姿が評価されていたと 考えられる.ロボットが不完結さを備えることで,ロ ボットが人に伝える一方的な場ではなく,人もインタ ラクションの場を支える参与者となる可能性を示した. しかし本研究で示した〈言葉足らずな発話〉は不完 結さを備える一つの例に留まっており,また会話に対 する主観評価が第三者のみである.そして研究プラッ トフォーム〈Muu〉による影響についても考察が残さ れている. ここでは,〈弱いロボット〉の概念や Mikhail Bakhtin の論考を基に不完結さを備えたロボットを構築し,人 とロボットとのインタラクションから現象の調査を目 指した.不完結さを備えたロボットに対して人は関わ りを増やすことを確認し,ロボットが主体となって話し かけてくる状況において,人もインタラクションの場 を支える参与者として評価される可能性を示した.今 後は,参与者同士がインタラクションを構成する現象 の解明を目指すためにも,人の状態やロボットの振る 舞い,インタラクション環境を変え,人から行われた 支えを頼りに次のロボットの行為を生み出すことで人 とロボットの行為の連鎖に焦点を当てていく.

謝辞

本研究の一部は,科研費補助金(基盤研究 (B)262801 02),豊橋技術科学大学博士課程教育リーディングプ ログラム教育研究費によって行われた.ここに記して 感謝の意を表す.また本研究のデータ整理では板敷尚 君に協力していただいた.彼にもこの場を借りて感謝 をしたい.

参考文献

[1] M. M. バフチン, 伊藤一郎 訳: 『小説の言葉』, 平 凡社 (1996) [2] 岡田美智男: 『弱いロボット』(シリーズ ケアを ひらく), 医学書院, (2012)

[3] Yamaji, Y., Miyake, T., Yoshiike, Y. et al.: STB: Child-Dependent Sociable Trash Box,

Interna-tional Journal of Social Robotics, Vol.3, Issue 4,

pp. 359–370 (2011) [4] 志和 敏之, 神田 崇行, 今井 倫太, 石黒 浩, 萩田 紀 博, 安西 祐一郎: 対話ロボットの反応時間と反応 遅延時における間投詞の効果, 日本ロボット学会 誌, Vol.27, No.1, pp. 87–95 (2009) [5] 岡田美智男, 松本信義, 塩瀬隆之, 藤井洋之, 李銘 義, 三嶋博之: ロボットとのコミュニケーションに おけるミニマルデザイン, ヒューマンインタフェー ス学会論文誌, Vol.7, No.3, pp. 189–197 (2005)

表 1: ニュース内容 1 トヨタ自動車とマツダが共同開発 2 世界で一番のお金持ち 3 フランスのワインの生産量 4 上の動物園のパンダの赤ちゃん 5 ホンダのジェット飛行機 6 アメリカであった皆既日食 群に参加者を分け,話題とロボットの発話条件のカウ ンターバランスを取った.インタラクション実験では, 人からの関わりを見るために主観評価を調査するアン ケートなどは行わなかったが,参加者とロボットとの インタラクションを録画し,その後,インタラクショ ン実験を行っていない第三者に, 〈言葉足らずな発話〉
表 3: 人の応答カテゴリ ID カテゴリ 発話例 1 ターンパス 無言のターン 2 最小応答 「うん」「ほー」 3 発話内容の一部を繰 り返す 「ワイン…」 4 発話をさらに促す応 答 「それで」 5 発話内容を踏まえた コメント 「知らなかった」 「すごかったね」 6 発話内容についての 質問 「何が?」 「どこであったの?」 7 それまでの内容に関 係しない内容の導入 「今日天気良いね」 8 それまでの内容に関 係しない質問 「スポーツ好き?」 9 聞き取れなかったこ との表示 「なんて言った?」 1
表 4: 回答理由(括弧内の数字は意見の数を示す) 言葉足らずな発話 前から区切る発話 人の相槌に対する反応が なかった.人の問いかけ に答えているようには思 わなかった. (3) ロボットは人に反応していなかった(3) ロボットの発話に人が応 答しており,人が調整を することで会話が成り立 っていた. (3) 一方的に感じた( 4 ) 会話になっていた.ロボ ットは人の質問に適切に 答えていた. (3) の余地として機能する不完結さに着目した.人とロボッ トとの会話においてロボットが言葉足らずに話すこと

参照

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