海洋性地殻は四国の下に沈み込んでいるか?
四国の地殻構造と震源分布- 岡野健之助1・木村 昌三2
(1高知大学名誉教授.2理学部附属高知地震観測所)
Is
the Oceanic Crust Subducting beneath Shikoku,
Southwest
Japan ?
Crustal Structure and Distributionof Earthquakes in Shikoku
- Kennosuke Okano' and Shozo KlMURA^
^ProfessorEmeritus, KochiUniuersity;
'KochiEarthquakeObseruatory, Faculty o∫Science
Abstract: This study shows that the subduction of the oceanic crust is not recognized beneath
Shikoku. First, we show that observed travel times are nearly in agreement with travel times
calculated using the structure model obtained by us, but those deviate from travel times
calcu-lated from a structure model which accepts the subduction of the oceanic crust. Second, we show
that the gap between the focal depth distributions of crustal and mantle earthquakes is 2 km at
the most. Third, according to our examinations the Moho discontinuity corresponds with the
upper surface of the focal depth distribution of earthquakes in the uppermost mantle and the P
wave velocity of the layer in which those earthquakes occur is not 6.6∼6.7 km/s suggesting the
oceanic crust, but 7.8km/s for the uppermost mantle. 0n the basis of these data it is concluded
that the subduction of the oceanic crust is not approved beneath Shikoku.
Key word : Oceanic crust, Moho
discontinuity, Travel time, Shikoku.
は●じめに ∇一一
海洋プレートが大陸の下に沈み込む際に,プレートの上に乗って運ばれて来た海洋性地殻も共に
沈み込むと一般に考えられている[西南日本ではHORI
et al.
(1985), KODAIRA
etal.(2000)].そ
して沈み込む海洋性地殻の中に地震が発生しているとする研究者も多い.四国においても海洋性地
殻がフィリピン海プレート本体と共に四国の下に沈み込んでいて,その中に地震が発生していると
いう考えをもつ研究者が多くなってきた[例えばO・A
etal. (1990)].木村・岡野(1992a)は四国
におけるマントル最上部に発生する地震の震源分布の厚さが5km程度であるという結果を得ている
が,この厚さが沈み込むフィリピン海プレートの海洋性地殻の厚さに調和するといわれていて,海
洋性地殻の沈み込みを支持するものと考えられている.しかし木村・岡野(1980)の行った地殻構造
の調査結果からは,このマントル地震の震源域におけるP波速度は7.8kni/sであって,海洋性地殻
に対して考えられているVp
= 6.6∼6.7km/sという観測結果はこれまで得られていない.そこで今
回さらに詳細に海洋性地殻の沈み込みについて地殻構造と震源分布の両面から検討したが,やはり,
マントル地震が発生する層はVp
= 7.8km/sを持つサンドレ最上面にあレつて,海洋性地殻が沈み込
んでいてその中に地震が発生するという観測結果は得られないことを確認した.さらに海洋性地殻
がその中に地震を発生しないままプレ,トの上に東って沈み込むという推定もまた,震源分布から
考えられないことを示す. , /
さらに,四国地方で観測される北傾斜に分布するマントル地震の震源は中央構造線(MTL)が北
限となっているが,構造線の北側の中国地方にも部分的に観測jされる.これらの地震は四国の傾斜
する震源分布の延長上にあるのではなく,その大部分は九州の下に西へ沈み込む梢深発地震帯の最
上部に含まれる地震であり,その他の地震はモホ面直下に水平状に発生していると解釈されるので,
震源分布からは中国地方にはプレートおよび海洋性地殻の沈み込みは考えられないことを示す.
四国中央部の地殻構造と地震活動………に 地殻構造 ……… Fig.lに筆者等の得た四国および周辺域の地殻構造を示す二万地表近くは採石発破の震動を用い [木村(1979)],深くなるに従ってそれぞれの深さに発生する=地震を使って求めた[木村・岡野 (1991)]もので,上部地殻では速度一定ではなく深さと共に漸増する速度構造を得ている.下部地 殻のP波速度はその中に地震が発生しないので詳細な値は分からないが,深さが20km程度の地震 による走時から得られる見かけ速度は6.4kin/s程度であって, 6.5㎞/s‥を越えないことから,少な くとも下部地殻の最上部におけるP波速度の値は6J4㎞/s程度ノと見積もらている[OE人NO d 「. (1986)].それより下部の速度は不明でぐあるがレ下部地殻に地震が起き=ないというしことから延性を もつものと考えて低速度であろうと推定した.とこ\ろで下部地=殻は15kmの厚さ犬をもっているので√ 深くなるにしたがって上部からの岩圧が加わって速度が大きベノ\なるノと考えしるのが自然であるけれど も,その値をだすまでには至っていない.それ故こレれま‥ではVp =ニ6,4㎞/s犬という均一な速度を使っ てきたいしかしこの速度を二定とする下部地殻の構造はやはり不適当らしく,トPn波が初動として 観測され始める走時曲線の折れ曲がる部分付近で観測値と計算値との不一致が目につくことがある ので,現在は6.4km/sから6.5km/sに増加する構造を使っている.さらノにモホ面より深い部分につ 2 0 35 5 0 ︵ i i i ) i ︶ q : i c l a a 1 0 0 4.8KINKI and CHUGOKU
Vp(km/s) 5.5 6.4 8. 6.0 7.8
MTL
SHIKOKU
Fig. 1 Crustal structure around Shikoku. レレ ノ ………ニ
Left; in the area north of the Median Tecto 「cLine (MTL).
Right; in the area south of MTL‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥ト \
S20°E
海洋性地殻は四国の下に沈み込んでいるか?(岡野・木村) 9 いてはP波速度を5km深くなるにしたがって0.02kin/s増加させ, 100kmの深さでは8.06 km/sとなる 速度勾配を仮定している.中央構造線以北では水平成層構造を仮定し,岡野・黒磯(1986)の求めた 近畿北部の構造を用いた.したがってその南北両地域における地殻構造には違いがある.すなわち, 構造線の北側ではほぼ水平成層構造をしているのに対してレ中央構造線(MTL)以南では,木村・ 岡野(1991)によって,モホ面は北へ傾斜し,また地殻内の不連続面は南に傾斜していることが知ら れているので,中央構造線を境にして北側の水平成層構造と南側く71)斜層構造を別々にFig.lに示す. 四国では観測点の増設によって西部の観測が充実した結果,足摺半島を中心とした四国西南部の 地殻構造の詳細が明らかになってきたが,西南部もまた中東部と同様な傾斜構造を持つことがはっ きりした.ただ傾斜面の角度や走向は地域によって異なっている.たとえば四国西南部における傾 斜面の走向は四国中央部よりやや大きいという結果が木村・岡野(1994)によって得られている.こ れは今回得られるようになった気象庁の土佐清水(コード名TOSA, Fig. 2)の走時から明らかとなっ た.したがって足摺半島は室戸半島よりかなり南に位置しているにもかかわらず,両地点直下のモ ホ面の深さはほぼ同じで,重力のブーゲー異常[大野他(1996)]との調和はよい.
地震活動
1985年4月以降隣接観測所との波形データ交換により,高知地震観測所ではデータを取り込む観
測点が増加したのでより広域における震源の決定精度が向上した.
1995年11月からはインターネッ
トを利用したWINシステム[卜部・東田(1992)]の導入により,四国西部から九州東部における
観測点データの交換により交換網付近の地震活動が詳しく分かるようになった.さらに1997年7月
からは衛星通信テレメタリング地震観測システム[ト部他(1996)]の導入により,四国および周辺
域に展開されている観測点データが取り込めるようになり,他機関の観測点を含めて観測点は約60
点を数える(Fig.
2).その結果従来の震源決定法では地震数や観測点数が増加して処理しきれない
ので,読み取りと震源パラ メーターの決定はWINシ ステムを利用して行ってい る.この旧・新両方式によっ て得られた四国中央部を中 心とする震源分布をFig. 3 (A),(B)に示す.分布の特徴 を明瞭にするために右下に 示した範囲だけについて示 した.期間は前者が1986年 から1995年まで,後者はそ れに続く1996年から1999年 までの期間である. 両分布を比べると大きな 違いは見られず全体として 一致している.図中に速度 不連続面を書き入れてある が,こられの不連続面と震 源分布との対応はたいへん よい.すなわち,地殻の地 ・35N………… 刈 34N啄 訟 ニス/
ぽ͡7・
異才
ド
才
‰
ふ
%
ド
鎖
聯
ド
六固
32N 132E 133E 13
よく
S
二戸
5E 136E
Fig. 2 Map showing the seismic observation stations
and the epicenters of earthquakes that travel times
(A) 1986-1995 [KOCHI] 0 50 ︵ii3{︸q:tdaa 1 0 0 (B) 0 5 0 ︵ i i i 5 ( ︶ q ; ≫ d a n 1 0 0
1996-1999[WIN]
HTL
D01
MTL I D01 S20・EFig. 3 Focal depth distributions of earthquakes in the central partダ6fShikoku・and Chugoku
(A); calculated by Kochi Earthquake Observatoryに>……= 十 \ ‥ ‥ 〉 ・
(B);calculated by the WIN system. 上 \
震のほとんどはいわゆる6
km/s 層内に発生し,マントル最上部の地震は北側に傾斜するモホ面直
下に層状に発生していることが分かる/またDOI観測点めすぐ南をぽぼ東西方向に走る中央構造
線が四国に発生する地殻地震とマントル地震の震源分布の北限に影響を与えていることは一見して
疑いがない.このことは木村・岡野(1992b)によって以前からこ提唱レされていることではあるけれど
海洋性地殻は四国の下に沈み込んでいるか?(岡野・木村) 11
も,今回のWIN方式によって求められた震源分布にもその特徴が見られるということは,我々の
主張がより信頼のおけるものとなったと考えてよかろう.中央構造線を境にして地震活動と地殻構
造に不連続の特徴が見られることは,中央構造線の地学的意味を考える上で重要である.
さて,マントル地震の分布の上面は木村・岡野(1980,1991)がモホ面としている速度不連続面で,
その面の直下のPnの速度として7.8km/sを観測している.フィリピン海プレートはこの不連続面
を上面として四国の下に沈み込んでいて,その不連続面下に発生している地震がプレート内地震で
あるとするのがプレート論に基づく解釈である.そして最近ではこの5km程度の厚さの震源分布層
はプレートと共に沈み込む海洋性地殻に相当するといわれている.
議 論
前節で示した地殻構造と震源分布に基づいて議論する.
地殻地震の走時から推定される海洋性地殻の存否
Fig.4にPnが初動として観測される地殻地震の走時の例をいくつか示す.震源の計算にはなる
べく震央に近い観測点データのみを使っている.図中の曲線は水平な不連続面を仮定した場合
(Fig. 1の左側の構造)の計算走時曲線である.短い縦棒と横棒は,各観測点の走時をFig.
1のモ
デルを使って計算した,それぞれ直達波とPn波を示す.この場合,中央構造線より北側の観測点
は水平構造,南側の観測点には斜層構造モデルを使って計算した.図の右上に挿入した図は,観測
点と震源を含む断面における構造に,地震波線を入れたものの一例である.震央距離の小さい点に
おける観測走時と計算走時の一致は,震源をそれらの観測点の観測値を使って求めたのであるから
当然であるが,震央から離れると平行層による走時曲線とは一致しなくなる.例えば1995年の兵庫
県南部地震について,中央構造線から南の観測点では傾斜構造の影響が大きく反映されるので,観
測される直達波は,南に向かって厚さを増す地殻上部の速度の遅い層の影響を受けて水平成層の走
時より遅れるのに対し,Pn波ではモホ面が南にいくに従って浅くなっていくので観測走時が早く
なってくる.一方中央構造線以北の観測点では,地下構造に傾斜する不連続面がほとんどないので
水平構造による走時曲線とほぼ合っている.従って個々の観測点付近の局所的な構造の不均質や,
観測精度に起因する誤差によって生じる,計算値との不一致を考慮すると,
Fig. 1に示される構造
は四国および周辺地域の地下構造として信頼のおけるものであろう.
次にモホ不連続面を検討してみよう.
Fig. 3で最も下に示されている北傾斜の不連続面はその上
に乗る大陸下部地殻と接している.そして下層のvpの値が7.8km/sであることから,この不連続
面をモホ面と考えてよかろう.またFig.
3によって,マントル地震の震源分布の上面がこの不連
続面と一致し,さらに地震め分布層は約5kmの層厚を持っていることが推定されているので,この
地震発生層のvp=7.8km/sという値から考えて,マントル地震の震源がVp=6.6∼6.7km/secの海
洋性地殻内にあるとすることは考えにくい.仮にマントル地震の分布層が海洋性地殻であるとする
と,この層の下面がモホ面であると考えねばならないことになるLするとその場合,モホ面を5
km
深くにとらなければならない.そこでそのようなモデルによって走時を計算してみる.地殻地震に
ついての走時をNa4
(Fig. 4)の地震の走時図に示す.地震は傾斜構造が走時に影響を大きく及ぼす
四国中央部のものを取り上げた.図中×印がぞの計算結果であるが,観測値とは合わないことは明
瞭である.また,マントル地震についての走時をFig.
5に示す.◆印が海洋性地殻を取り入れた構
造についての走時であり,十印が取り入れない場合の走時である.後者の方が観測値によく合う.
したがって両者共やはり筆者等が提唱してきた,海洋性地殻が存在しないFig.lの構造によって
C ⊃ つ C 9 q j l l な y ・ u o n B ^ s o t m s i e s b 〇 % j a ^ u e o o d i C u u o B a u i o j i q ^ B d o a b m o t t u s t e s s q ; d u b e a n p n j ^ s T ■ B : ^ s n J O a q ^ S M O u s g a n S i i q o B e i o ; j B d a e d d n e q i u i p a ' j j s s u i e a n S i i w ' s e M B r i b u j a B a t b ^ s i i j o i o s 9 u i h t s a b j ^ i 〇 s s T d u i B x g ; 01 、。゜ り I 。り゜ ︸・ 一 ・’
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No.5 SEP.08,1985 133.886E 33.170N 22.3k皿
や’ t し 四 妻 EPICENTRFIしDISTflNCE (in KM) e OBS 十DIR(7.8Kt1/S) ・DIR(6.7) X REFR(7,8) STN ?.8 1 0 0 7.8 13
Fig.5 Upper; traveltimes ofa mantle earthquake for the crustal model that the depth
ofthe Moho is lowered 5km by adopting the subduction of the oceanic crust.
Lower; the crustal structureand seismic wave paths.
計算した走時の方が観測値に合っている.
以上のように中央構造線以北ではモホ面の深さがほぼ35km,以南の四国では構造線直下で35kmで,
この面が約9度の角度でもって南上がりの傾斜をし,
Pn=7.8kni/sとしたFig.lの構造は全体とし
て正しいと考えられる.したがって南海トラフから北傾斜するモホ面は中央構造線で水平となり北
へのびていると考えてよい.
震源分布からの考察
前節で述べたように,マントル最上部には約5kmの厚さをもった層内に地震が発生している.そ
してこの地震発生域は北北西の方向に傾斜してのびているが,中央構造線のあたりで途切れる.こ
の地震発生層がフィリピン海プレートの最上部とすると,プレート本体の上に乗って共に沈み込む
海洋性地殻に相当すると考えられるわけである.しかしこの層を伝わるP波速度は6.6∼6.7km/sで
はなく, 7.8kni/sとしなくては観測データに合わない.したがって,地震発生層としての海洋性地
殻の沈み込みは考えられない.
しかし海洋性地殻はその中に地震の発生はないものの,マントル地震層の上面(モホ面)に乗っ
て沈み込むことが考えられる.そこで震源分布をFig.
3で見ると,地殻地震の震源分布は南にの
びてモホ面にぶつかるが,このマントル地震の分布層との間にはほとんど隙間が見られない.これ
については岡野他(1985)が,震源決定精度から考えて1∼2kmの空隙を推定しているので,
5kmの
厚さを持つ海洋性地殻の存在は期待できない.なぜならば,無地震の海洋性地殻が存在するとする
と,この空隙の厚さはは少なくとも5kmはなければならないからである.
ここで問題となるのは震源分布の位置の精度である.筆者等による震源の計算では海洋性地殻を
入れない構造モデルを使ったのであるが,たとえVp=6.6∼6.7kin/sの海洋性地殻をモホ面の上に
層の厚さを5kmにとったモデルによって計算しても:震源層の厚さはそれ程変わらないので,海洋性 地殻内に地震が発生していて,それがモホ面に乗づているレといごうよ‥うな震源分布は得られない. これで四国の下に海洋性地殻が沈み込むということが否定的万になったので,‥考え直さねばならな い点がいくつか浮かび上がってくる.その一つはフィ丿ピjン海プレー,トが四国の下に沈み込むとし た場合,海洋性地殻は沈み込んでいないとすると,いずみ込んだプレートに乗9Tぐ移動してきた海洋 性地殻の行き先はどこか,ということである.次に,フィリピ:ン海プレートの厚さは30∼50kinと考 える場合が多いけれども,このプレート最上部の5km程度の厚さ領域だけにマントル地震が発生し ていることになるので,なぜその領域だけに地震が発生するりか↓そしてその領域におけるvpが 8.0kin/sを超える一般的のプレートの速度ではなく√7.8㎞/sという小さな値こであるのかという疑 問が出てくる.さらに,フィリピン海プレートの厚さを求めた根拠は確実なものなめか.そしてプ レートの最下部の不連続面は確認されているのかという疑問も重要であるにもかかわ:らず,それら についての明確な研究は見られない. ト ○ ∧ 犬 万 筆者等はこれらの疑問に対してまだ不充分ではあるが,次のように考えていlる.四国の下にはフィ リピン海プレートというものは沈み込んでいない.……四国の下に発生するマントル地震.は,日本列島 の南下によって生じる南北方向の圧縮作用によって起きる……Iと考える.この場合,南海地震が発生す る度に日本列島は海洋プレートの上に乗り上げるという仮説[1岡野・木村(1996)]をとっている. 陸海両プレートの圧縮作用は海洋プレートの境界面に数kmの厚さを持つ脆性領域を生じ,その薄い 領域にマントル地震が発生すると考える.どのようなメカニズムによ壮てこのような脆性領域が生 じるのかは現在明らかにすることはできないけれども,異なづた物質間の接触面近傍で圧縮作用を 受けて生じる脱水作用等によって変質すると考えられないであjろうかLこめ考え方をとればマント ル地震のP軸の方向がほぼ南北であるとの説明が容易どな‥る/÷般的仁考えられているフィリピン 海プレートの沈み込みによる圧縮であれば,当然その方向は北西年南東でなければならないので, 現在発生しているマントル地震のP軸がほぼ南北方向であレるとレいうことの説明が困難となる. KOI〕人l■RKet al.(2000)は,四国の南海岸から南海トラフこを越えた地点までに設置した海底地震 計によって得られた走時曲線を解析して厚さ5kmの海洋性地殻の存在を指摘している.不連続面の 傾斜構造や地震波速度の値はFig. 1に示した筆者等のもりとよく合ってりるが,I海洋性地殻の存 在については一致しない.筆者等は,筆者等が指摘するマントル地震め発生層は脆性破壊をする物 理的性質を持っているので,その上面で接する軟らかい大陸下部地殻と下面で接する軟らかいマン トルアセノスフェアーとの,それぞれの接触面で反射波を発生するものと考えている.したがって 南海トラフより島弧側に海洋性地殻が存在するという点を除いノてとの観測結果を支持できる. さて中国地方北部には第4紀の火山が見られるめで√そめ直下に深発地震帯の存在が期待されて きた.そこで中央構造線以北の地域におけるマントル地震について検討する. Nakanishi(1980)に よれば,四国下に発生する北傾斜のマントル地震の分布は四国万の北で途切=れて,それより北すなわ ち中国地方ではその分布の延長上に深い地震は観測されていな=いけれjども,プレートの不連続面で 変換したScSp相を見いだしてプレートはそのまま:北傾斜で中国地方北部,まで延びていることを推 定した.また木下他(1996)は中国地方下の最上部マントルで地震が起きていることを示して,フィ リピン海プレートが中国地方北部まで沈み込んでいると主張し,第4紀火山(例えば三瓶山)の存 在することと調和させている. \ しかしながら石川・石原(1997)によれば,45∼55kmの深さを持づ地震は1961∼1997. 5月の期間 中には気象庁によって全く観測されていない. 45kin以浅のj地震についでは,四国愛媛県高縄半島の 北部から半島北東部にあたる中国地方南部に深さ40-45kniめ地震が観測されているが,これらは九 州に向かって沈み込む梢深発地震の最上部のものと考えられぶので/四国の傾斜分布するマントル
海洋性地殻は四国の下に沈み込んでいるか?(岡野・木村) 15
地震の系列に含めるのは適当ではない.その他には四国東部の中央構造線の北側から燧灘にかけて
の地域に僅かな数の発生が認められるに過ぎない.さらに中国地方内陸部について上記機関のデー
タを調べたところそれと思われる深さの地震が得られた.
Fig.3(B)には中央構造線より北側に発生
するこれらの地震の震源を含めて示してある.図に見られるようにその数は僅かしかないのでやや
疑問があるけれども,中国地方の地震はJMAとEPDC
(Earthquake
Prediction Data Center)が
共に震源を決めており,木下他(1996)が広島地震観測所のデータを使うて確認しているものなので
信頼のおけるものであろう.深さについても40km前後と考えてよい.この図を見る限り,マントル
地震は中国地方でも他の地域[木村・岡野(1999)]と同様にモホ面直下で発生していて,四国に見
られる北下がりの震源分布の延長上には観測されない.したがって中国地方ヘフィリンピン海プレー
トが沈み込むと考えるのは,少なくともマントル地震の震源分布から推定するのは無理がある.
結論として,四国の下に海洋性地殻が存在するという考えには筆者等は同意できないことを,観
測結果から示したのであるが,厚さが2km程度であれば海洋性地殻がプレートの上に乗っていると
いう可能性を否定することはできない.ただしこの場合はその海洋性地殻内には地震の発生はない
としなくてはならない.
おわりに
筆者等はこれまで,一般的になっているフィリピン海プレートの北西方向への沈み込みについで
は,それによって南海地震ばかりでなく,現在の微小地震や地殻変動等[例えば岡野・木村(1996)]
を説明することは困難であることを主張してきた.そして南海地震の震源域,余震域,発生のメカ
ニズム,地殻変動そして地表で観測される地盤変動に対する解釈等について,これまでとは異なっ
た考えを提唱し,これによって観測結果がよりよく説明できることを指摘してきた.今回は,少な
くとも四国では海洋性地殻の沈み込みは考えられないことを,地殻および最上部マントルの速度構
造と震源分布め点から明らかにし,さらにプレート自体の沈み込みについても疑問のあることを述
べた.そして不充分ではあるが筆者等の考えとそれに至る根拠を示した.
謝辞
この研究は多くの観測点のデータを使って行われました.京都大学防災研究所地震予知研究セン
ターの徳島,鳥取,阿武山の各観測所,東京大学地震研究所和歌山,広島の両地震観測所,気象庁
大阪管区気象台のデータを使わせて頂きました.従ってそれらの観測点の観測を維持してこられた
多数の方々の労力に負うところが大です.なお高知地震観測所の川谷和夫技術専門職員は,年を追
うにつれて増加してきた観測量をこなし,我々の研究に充分なデータを提供してくれました.心か
ら感謝します.
文
献
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