障害児 の就学 をめ ぐる諸 問題
斎
藤
恵
子
Some
Problems
Concerning
School
Attendance
of Handicapped
Children
Keiko Saitoh
This report indicates the latter life of handicapped children who came to the consultating room of Bunkyo University.
Especially problems of school attendance are followed up. Some problems as follows are discussed.
1. In the situation which schools for the handicapped children are being legalized and those children are attending to such schools, some children who belong to a weak children's class
or the school for the handicapped children seem to be getting serious and complicated.
Furthermore it must be done to make arrangement of educational system, make training of school teachers, proceed their facility, and reconsider the method of education and its
contents.
2. For the serious group the connection with the medical treatment is indispensable. And for the slight group the connection with the integrated education is advisable.
3. We must promote the repletion of the quality and the function of the committee of school attendant aptitudes.
4. The realization of their hope to attend school of all handicapped children is the result of their parents' efforts for many years.
In future we must make further efforts to improve the quality of education for each children with due regard to their each condition.
5. For education of handicapped children we must give consistent consideration to an early diagnosis, therapeutical education before their school age, vocational life after graduation
and recreational activities through their life.
は じ め に 昭 和54年 度 か ら養 護 学 校 の 義 務 化 の 実 施 を み るに 致 っ た。 こ れ で よ うや く障 害 児 全 員 に 就 学 の機 会 が 保 障 され る こ とに な っ たの で は あ るが,一 方 で は 「障 害 児 は養 護 学 校 へ 」 の 安 易 な振 り分 けが 行 な わ れ る の で は な い か と の 危 惧 の 声 も聞 か れ る よ う に,適 正就 学 指 導 委 員 会 の あ り方 を は じめ,そ の制 度 運 用 上 に は 幾 多 の 問 題 点 が 残 され て い る。 今 後 は障 害 児 全 員 就 学 の 量 的 解 決 か ら,更 に そ れ ぞ れ の 障 害 児 の特 性 と発 達 に み あ っ た適 正 な就 学 の 保 障 の た め の 教 育 条 件 整 備,教 育 内 容 や 方 法 の 充 実 等 の 質 的 問題 が 問 わ れ ね ば な らな い と い え よ う。 そ こ で 本稿 で は本 大 学相 談 部 に来 所 した 障 害 児 の そ の 後 を 「就 学 問 題 」 に焦 点 を あ て て (※1) 追 跡 調 査 した資 料 を も と に,障 害 児 の 就 学 を め ぐ る現 状 で の 問題 点 を検 討 し,今 後 の 課 題 へ の 若 干 の 考 察 を 試 み て み た い。 1.研 究 方 法 昭 和46年 度 ∼昭 和53年6月 の 問 に本 大 学 相 談 部 に来 所 した障 害 児 の 内,昭 和53年4月 の 時 点 で就 学 年 令 に達 して い る者 に,質 問 紙 を 家 庭 に郵 送 し回答 を求 め た 。 更 に い くつ か を選 択 し,面 接 調 査 を行 い, そ れ ぞ れ に就 学 時 及 び そ の 後 の処 遇 の 経 過 の 中 で 直 面 して きた 問題 点 と現 状 を聞 き と り, 事 例 研 究 と して と りあ げ た 。 ア ンケ ー ト調 査 は 昭和53年6月 ∼7月,面 接 調 査 は 昭 和53年9月 ∼ 昭 和54年3月 に行 っ た 。 2.ア ン ケ ー ト調 査 の 結 果 (1)調 査 用紙 の 回 収 発 送 数96部,回 答 数49・ 回収 率51% 未 回収 の うち9人 は転 居 あ るい は宛 書 不 完 全 な どの た め に調 査 用 紙 が 未 着 で あ っ た。 回収 した うち2人 は死 亡 して お り,集 計 の 対 象 か ら は除 外 した 。 調 査 用 紙 に診 断 名,診 断 を 受 け た 場 所 の 記 入 を求 め た 。 病 院,児 童相 談 所,小 児 保 健 セ ン タ ー,精 神 衛 生 セ ン タ ー等 で の それ ぞれ の 診 断 を も とに,回 収 した 調 査 用紙47部 につ い て分 類 した もの が表1で あ る。 表1 精神発達遅滞 自閉傾 向 情緒障害 弱視 計 人 17 入 16 人 13 1人 人 47 (2)就 学 前 の 処 遇 状 況 就 学 前 の 処 遇 状 況 を診 断 別 に ま とめ た もの が 表2で あ る。 表2就 学 前 の診断 別処 遇状 況 区 分 精神発達遅 滞 自閉傾向 情緒障害 弱視 計 保 育 所 6 人 1 人 1 人 0人 人8 幼 稚 園 8 12 10 1 31 通園施設 1 1 1 0 3 (X2) 家 庭 の み z 2 1 0 5 計 17 16 13 1 47 幼 稚 園,保 育所 に就 園 した 者 は47名 申39名 で,就 園 率83%と 高 い値 を示 して い る。 診 断 別 の 就 園 率 に大 差 は な い。 (3)就 学 猶 予 に つ い て 就 学 猶 予 の経 験 の 有 無 に つ い て み た もの が 表3で あ る。
表3就 学猶 予 の経験 の 有無 区 分 精神 発達 遅 滞 自閉傾向 情緒 障害 弱視 計 猶予 の経 験 有 り 2人 6人 人 3 人 0 人 11 猶予の経 験 無 し 15 10 10 1 36 計 17 16 13 1 47 就 学 猶 予の経 験 が あ る者 は47名 中11名(23.4 %)で あ る。 猶 予 した 問,11名 の い ず れ も通 園 施 設 や 幼 稚 園 に所 属 して い る。 猶 予 の 理 由 は11名 中 の3名(内 訳 一 自閉 傾 向2名,情 緒 障 害1名)は 就 学 を希 望 した に もか か わ らず, 教 育 委 員会 か ら勧 め られ て 猶 予 せ ざ る を え な か っ た もの で あ る。 あ との8名(内 訳 一精 神 発 達 遅 滞2名,自 閉 傾 向4名,情 緒 障 害2名) は親 が 希 望 して就 学 猶 予 した もの で,そ の大 きな理 由 は,子 ど もの 発 達 段 階 か らみ て も, 幼 稚 園 で の 遊 び を 中 心 と した,健 常 児 の 中で の 生 活 の機 会 を与 え た い こ と,ま た 猶 予 した 問 の 成 長 に よ っ て は,で き た ら普 通 学 級 へ の 入 級 も し くは情 緒 障 害 児 学 級 と普 通 学 級 の 併 表4診 断別就 学 状況 区 分 精神 発達遅 滞 自閉傾 向 情緒障害 弱視 計 普通学級 人 2 人 1 人 4 人 0 人 z (14.9) 普通 学 級 と(※3) 特殊 学級 1 4 4 1 10 (21.3) 特殊学級 9 8 4 0 (44.7)21 養護学校 4 1 1 0 (lz.s>6 就 学 猶 予 通園 施設 1 1 0 0 2 (4.2) 幼稚 園 0 1 0 0 、1z.i、 計 1? 16 13 1 (100)4? 級 を望 ん で い る もの で あ る 。 (4)就 学 状 況 診 断 別 に就 学 状 況 を示 した もの が 表4で あ る。 47名 中,21名(44.7%)が 特 殊 学 級 に,10 名(21.3%)が 普 通 学 級 と特 殊 学 級 の 併 級 に, 7名(14.9%)がa通 学 級 に,6名(12.8%) が養 護 学 校 に所 属 し,3名(6.4%)が 就 学 猶 予 して 通 園 施 設,幼 稚 園 に所 属 して い る。 (5)処 遇 上 の 問 題 "現 在 所 属 して い る施 設 ,学 級,学 校 に満 足 して い ま す か"の 質 問へ の 回 答 を,そ の 所 属 別 に 示 した もの が 表5で あ る。 表5 区分 普通 学級 普 通学 級 と特 殊 学級 特殊 学級 養護 学校 通園 施設 幼稚園 計 満足 7人 5人 14人 3人 0人 人1 30人 (63.8%) 不満 0 5 7 3 2 0 17 (36.2%) 計 7 10 21 6 2 1 47 (ioo/) 普 通 学 級 に所 属 して い る7名 は 全 員 そ の所 属 に満 足 して い る とで て い る。 そ の 内2名 は, 過 去 の 記 録 を み るの に,落 ち着 きが な く,集 団 生 活 へ の 不 適 応,会 話 が で きな い こ と を主 訴 と して 来 所 して い るが,現 在 で は生 活 面, 学 習 面 と学 校 生 活 に適 応 して お り,殆 ん ど問 題 の な い状 態 に あ る。 他 の5名 は,学 習面 で はみ ん な につ い て い け な い,情 緒 的 に も問 題 は残 され て い るが,社 会 性 の 発 達 に 焦 点 を あ て て,健 常児 の 中 で の 生 活 に 意 義 を求 め,学 習 面 は2の 次 と考 え て い る点 か ら 「満 足 」 と 回答 し て い る もの で あ る。 表5を 更 に,診 断 別 に み た もの が 表6一 ①, ②,③ で あ る。 不 満 と答 え た 者 につ い て は そ の 内 容 につ い て の 記 述 を加 えた 。
表6一 ① 精神 発達 遅 滞児(17名)に つい て (所属 別) 区 分 満 足 不満 不 満 の 内 容 普通学級 2人 0人 普 通学級 と 特殊 学級 1 0 特殊学級 6 3 多種 多様 な障害 児 の雑 居して い る状 態 の 中で,指 導 体制 が整 って い ない 。 養護学校 3 1 他 児 の刺 激 が 少 な くもの足 りな い。 特殊 学 級 を希 望 す る。 通園施 設 0 1 健 常児 との 交流 が欲 しい。 計 12 5 表6一 ② 自 閉傾 向 の 子 ど も(16名)に つ い て (所属 別) 区 分 満足 不満 不 満 の 内 容 普通学級 1人 0人 普通学級 と 特殊学級 2 2 ・学校 外 に情緒 障 害 児 学 級 があ り,通 級 に不便 で あ る。 ・情 緒障 害 児 学級 の 指導 内容 へ の不満 。 特殊学級 6 2 ・親 が付 き添 っ て お り, 大 変疲 れ る。 ・個 別指 導 して欲 しい 。 ・健 常児 と の 交流 が欲 しい。 養護学校 0 1 ・不満 の内 容 につ い て記 述 な し。 通園施 設 0 1 ・猶 予 して 通 園 して い る が,他 児 が低 年 令 の者 が 多い 。就 学 を希 望 。 幼 稚 園 1 0 計 10 6 表6一 ③ 情 緒 障害児(13名)に つ いて (戸斤属 別D 区 分 満足 不満 不 満 の 内 容 普通学級 4人 0人 普通学級 と 特殊学級 3 1 ・本 人 が普 通 学級 へ の 通 級 の 方 を喜 び,か な り適 応 で きて い る。情 緒 障害 児 学級 へ の 通級 の必 要性 を感 じな い。 特殊学級 2 2 ・指 導 内容 へ の不 満 。 も っ と専 門的 指 導 を して欲 しい。 養護学校 0 1 ・他 児 の刺 激 が少 ない。 特 殊 学級 を希望 。 計 9 4 弱 視 児1名 は校 区外 の 学 校 へ 通 っ て お り, 普 通 学 級 と弱視 学 級 に所 属 して い る が,現 在 普 通 学 級 に 適応 で きて お り,弱 視 学 級 へ の 通 級 の 必 要 性 を感 じて い な い こ と,ま た近 隣 に 友 人 が で きな い点 で不 満 を感 じて い る。 養 護 学 校 に所 属 して い る者6名 の 内3名 が 現 状 に 満 足 して い る と答 え て い る。1名 は 中 程 度 の 遅 れ で,自 閉傾 向 を伴 う者 で あ り,2 名 は ダ ウ ン症 児 で軽 度 の 遅 れ の 者 で あ る。 こ の2名 につ い て は 入 学 に あ た り転 居 して某 大 学 付属 の 養 護 学 校 に所 属 。 大 体,同 程 度 の 障 害 児 を集 め,小 学 校 か ら高 校 へ の 一 貫 教 育 が 行 な わ れ て お り,教 師 に 恵 まれ,着 実 な成 長 を み せ て い る こ との 感 想 が調 査 用 紙 に記 入 さ れ て い た。 養 護 学 校 へ の所 属 に不 満 を感 じて い る者3名 の 内2名 が,重 度 児 の 中 で 他 児 の 刺 激 が 少 な い こ とか ら,特 殊 学 級 へ の 転 校 を 考 えて い る。 あ との1名 は 不 満 の 内 容 につ い て の 記 入 が な か っ た。 3.事 例 研 究 〔事 例1〕 A子 。11才 女 児 。 ダ ウ ン症 。 現 在 特 殊 学 級 6年 生 。 一 年 間 幼 稚 園 に 通 園 。 その後 幼稚 園での経 験 か ら もひ き続 き健 常 児 の 中 で の 生 活体 験 を と,小 学 校 普 通 学 級 に入 学 。 入 学 時 に校 長 に 事 情 を 話 し,担 任 はベ テ ラ ンの 先 生 に な り, 恵 まれ て い た。 普 通 学 級 で の 生 活 は,授 業 中 も何 か と担 任 の 先 生 の 配 慮 も い き届 き,時 に 放 課 後 の指 導 も加 えて,文 字 を覚 え る等 学 習 面 で の 発 達 に は め ざ ま しい もの が み られ た。 ク ラ ス の 子 ど も達 との 関係 は良 か った の だ が, 他 の ク ラ ス の 子 ど もや 上 級 生 に虐 め られ る こ とが 多 くな り,A子 が 周 囲 の 目 を意 識 しは じ め,登 校 を嫌 が りだ した た め,丁 度 近 くの 小 学 校 に特 殊 学 級 が 新 設 さ れ た こ と もあ り,3 年 時 に転 校 。 現 在 の特 殊 学 級 は,年 令 も障 害 の程 度 も異
な る,知 恵 遅 れ か ら多 動 な 自 閉傾 向 の 子 ど も まで様 々 な 障 害 児 が 雑 居 して い る状 態 に あ る。 運 動 や 生 活 指 導 に 重 点 を置 い た 方 針 で,教 材 は 毎年 同 じ教 科 書,プ リ ン トを使 っ た繰 り返 しで あ る。A子 は 国 語 が 好 きで一 冊 の教 科 書 を擦 切 れ る程 繰 り返 し読 み,新 しい 教 科 書 を 欲 しが っ た。 毎 年 の 同 じプ リン トに 「ま た 向 じ問題 だ よofと 言 って い る次 第 で あ る。 子 ど もの発 達 段 階 に 合 わせ た 学 習 指 導 を して欲 し い。 以 前 の 方 が 文 字 も絵 も しっか り した もの を書 い て い る。 特 殊 学 級 に移 っ て か ら,こ れ ま で の普 通 学 級 で つ い た 学 習 の姿 勢 が 崩 れ て い くよ うで 母 親 は不 安 で あ っ た。 現 在A子 は 家庭 で,日 記 や 詩 を書 き,漢 字 に も興 味 を示 して きて い る。 これ もす べ て普 通 学 級 で の 学 習 が基 礎 に な っ て い る。 特 殊 学級 に,こ う し た 本 人 の 興 味,学 習 意 欲 を伸 ば す指 導 とグ ル ー プ 指 導 の で き る体 制 を望 ん で い る。 3才 の時,精 神 科 医 よ り,将 来 ひ らが な程 度 は書 け る か も しれ な い が,意 味 の あ る 文 章 は綴 れ な い で あ ろ う と言 わ れ たが,こ こ まで 成 長 す る とは 思 っ て もみ な か っ た。 日常 生 活 面 で は 自分 の こ とは 自分 で や らせ る よ う心 が け て きて,殆 ん ど困 る こ とは な い。 た だ 時 に親 の 会 の企 画 の 行 事 に 出 か け た り は あ る が,ど う して も大 人 の 中 で の 生 活 が 多 くな っ て しま っ て い る。 これ まで の 成 長 を振 り返 っ て み るの に,幼 稚 園,普 通 学 級 で の2年 間 と,健 常 児 の 中 で の 生 活 は本 人 に と っ て良 い刺 激 で あ った 。 来 年 か ら は 中学 校 で あ るが,近 くの 中学 校 の特 殊 学 級 に進 む 希 望 で あ る。 一 人 で 通 学 させ た い。 自分 の 家 の あ る地 域 社 会 の 中 で の 生 活 体 験 を与 え た い。 そ れ だ け に親 子 と も ど も強 く な らね ば と思 っ て い る。 中学 卒業 後 の 問題 も 目前 に迫 って お り,母 親 は地 域 の 親 の 会 の 運 動 に積 極 的 に加 わ り, 現 在 市 に授 産 所 を創 る準 備 を して い る 。 ま た ボ ラ ンテ ィア活 動 で,家 庭 にい る障 害 者 を訪 問 し話 し相 手 に な っ た り,中 学 を卒 業 した者 へ 手 芸 等 の 授 産 の 指 導 の 手 伝 い を して い る。 自分 が こ れ まで迷 い な が ら悩 み なが ら歩 ん で きた 体 験 か ら も,後 か ら くる障 害 児 と そ の親 の ため に役 立 て ば と,親 の 会 独 自の就 学 相 談 の 企 画 に参 加 し助 言 して い る。 そ こに は 自分 の 子 ど もの 問題 も含 め て そ の 解 決 の た め に着 実 に 道 を切 り開 い て い こ う と す る母 親 の 強 い姿 が み られ た 。 〔事 例2〕 B子 。11才 女 児 。精 神 発 達 遅 滞 。脳 損 傷(失 立 神 経 発 作)あ り。 現 在 特 殊 学 級5年 生 。 投 薬 の 効 果 も あ り発 作 も治 ま り,健 常 児 の 中 で の 生 活体 験 を と,母 親 は地 域 の幼 稚 園, 保 育 所 を捜 し歩 き,或 る私 立 の保 育所 に2年 間 通 園。 音 楽 リズ ム が 好 き で,歌 を覚 え,遊 戯 に も喜 ん で 参 加,遊 び の 模 倣 な ど集 団 生 活 の 中 で成 長 をみ る。 学 校 は,同 じ市 内 で は あ るが 学 区 外 の小 学 校 で,当 時 新 設 され た 特 殊 学 級(中 度 の遅 れ の 子 ど もを対 象 と した)に 入 学 。4年 生 まで 在 学 。個 人 的 指 導 もい き届 き,な ぐ りが きか ら丸 を描 き,現 在 い くつ か の ひ ら仮 名 を書 け る まで に成 長 。 今 年 の 春5年 生 に な るに あ た っ て,次 に掲 げ る理 由 か ら地 域 の 特 殊 学 級(軽 度)に 転 校 。 ① か ね が ね 本 児 が,妹 や近 所 の 皆 が集 団 登 校 す る姿 に,自 分 も同 じ学 校 に 並 ん で行 きた い と希 望 して い た 。② こ れ まで の 学 校 は遠 く, 母 親 が 車 で送 迎 して い た が,歩 い て通 わせ る こ と,歩 くこ とで 交 通 ル ー ル や 家 の近 所 の 様 103
子 が わ か る し,こ れ か ら先 も地 域 の 中 で 暮 ら して い くか ら に は地 域 の 人達 に 子 ど も を知 っ て も らい た い 。③ 義 務 教 育 を卒 業 後 苦 労 す る よ り,小 さい う ちか ら揉 まれ,悩 み,そ れ に 打 ち 克 っ て ゆ く力 をつ け てや れ た ら と考 え た こ と。 転 校 に あ た っ て は,教 育 委 員 会 か ら,こ れ まで 所 属 して い た学 級 に い る方 が 良 いの で は な い か,今 度 の 学 級 で や って い け るで あ ろ う か,前 例 が な いか ら等 々 を言 わ れ た が,母 親 は幼 児 期 か ら現 在 に至 る まで のB子 の 作 品, ノー ト,親 の 記 録,ア ル バ ム 等 の 資料 を全 部 並 べ て,こ れ まで の 成 長 を説 明 し,前 例 が な け れ ば こ の 子 を初 め て の例 と して試 み て 下 さ い と説 得 した 。 現 在 は妹 や 近 所 の子 ど も達 と 並 ん で 登 校 して い る。 学 校 まで の 通 学 班 の 子 ど も達 か ら,教 室 の 子 ど も達 の 会 話 の 中 か ら, 代 名 詞 や 接 続 詞 を使 っ て話 す こ とが だ ん だ ん 増 え て き て い る。 そ れ は大 人 が 教 え た りす る こ と よ りも,子 ど も達 か らの 刺 激 が ど れ だ け 障 害 を も っ た 子 ど も達 に必 要 か,一 学 期 を 過 ぎた ば か りだ が,は っ き り示 して い る。 もっ と早 く に転 校 させ れ ば 良 か った と母 親 は思 っ て い る。 ア ン ケ ー トに も 「11年間 障 害 児 を 育 て て き た が,夫 婦 で 話 し合 うこ と,子 ど もに 良 い と 思 う こ とは何 で もや っ て み る姿 勢 で の ぞ ん で きた 。 健 常児 と同 じ環 境 で 育 て,ど こへ 行 く に も連 れ て行 き,豊 か な経 験 を と心 掛 け て い る。 家 庭 を 明 る くす る に は親 が 障 害 児 の サ ー ク ル に 入 り勉 強 した り,本 を読 み,育 て あ げ て きた 人 々 の 話 を 聞 く こ と も大 事 だ と思 う。 この 子 を 育 て る こ とで私 自身 も成 長 したdと の 感 想 が 記 され て い た。 母 親 は学 校 で の 役 員,親 の 会 の会 長 と積 極 的 に活 動 を続 け て い る。 学 校 で は,ど ん な 小 さ な こ とで も,個 々 の 問 題 を と りあ げ 皆 で話 し合 う よ う努 め て きた 。 参 観 日,父 母 会 と全 員 の 出 席 を呼 び か け た。 学 校 や 教 師 に対 して も,父 母 会 と して 問 題 提 起 した方 が,個 人 的 感 情 問題 に な らず,ス ム ー ズ な解 決 を み る こ とが あ る 。 特 殊 学 級 の 学 校 行 事 へ の 参 加 の 方 法,学 校 全 体 の 父 母 や 子 ど も達 に理 解 を 求 め る た め入 学 時 に説 明 す る こ とな ど,校 長 や 先 生 達 と話 し合 っ て 問題 解 決 を は か って きた 。 また で き る こ と は親 達 も 協 力 に努 め て きた。 親 の会 と して は,養 護 学 校 を創 る運 動 を推 進 して きた 。 分 か らな い 事 は 自分 で 足 を運 び 見 学 し実 状 を知 る.本 を読 み,他 の親 と話 し 合 う,県 の教 育 庁 に 問 い 合 わ せ る,会 員 へ の ニ ュー ス発 行 等 々の 着 実 な 活 動 を続 け て い る 。 月 に何 度 か家 庭 を解 放 し親 の会 の メ ンバ ー が 集 ま り,お 互 い の ざ っ くば らん な 話 の 中 か ら 問題 を汲 み あ げ る よ う に して い る。 昭 和54年 度 か らの 養 護 学 校 の義 務 化 に伴 い, 就 学 相 談 で の 混 乱 をみ,ま た現 在 特 殊 学 級 に 所 属 して い る者 に つ い て も発 達 診 断 が な され, 養 護 学 校 へ と転 校 を勧 め られ た ケ ー ス もで て き た 。 会 員 の 要 求 の 中 か ら,最 も困難 な 状 況 に置 か れ た 子 ど もの ニ ー ドを最 優 先 に と,家 で 寝 た き り とか ど こ に も通 園 通 学 で きな い 重 度 児 が 学 校 に行 け る よ うに と養 護 学 校 を創 る 運 動 に取 り組 ん で き た。 とこ ろ が 良 か れ と思 っ て した こ とが 逆 に新 た な 問題 を ひ き起 した 。 現 在,会 員 か らの情 報,声 を 聞 き,県 の 教 育 庁 へ の 問 い合 わ せ,親 の会 で の 説 明会 を設 け るな ど,こ の 問 題 へ の対 処 に あ た っ て い る。 1才7ケ 月 の 時 に診 断 を受 け て シ ョッ ク に 打 ちの め され,更 に薬 が あ う まで あ ち こ ち の
医 者 を訪 ね 歩 き,経 済 的 に も苦 し く,心 身 と も に疲 れ 果 て て い た時 代 の 自分 か らは,こ こ まで 変 わ り,リ ー ダ ー と して 活 動 に携 れ る こ と にな ろ う と は思 い も しな か っ た と母 親 は 語 る。 そ して 現 在,子 育 て と忙 しい 活 動 とに 追 わ れ な が ら も,子 ど も と共 に 歩 む こ と,活 動 の 中 に 自 己 実現 の 道 を見 い 出 し,生 き生 き と した母 親 の姿 が み られ るの で あ っ た。 〔事 例3〕 C子 。12才 女 児 。3才6ケ 月 の 時,愛 育 研 究 所 に て 自閉 傾 向 あ り との 診 断 を受 け る。 現 在 普 通 学 級6年 生 。 本 人 の 状 態 か ち判 断 して,親 の 希 望 で 一 年 就 学 猶 予 し,都 内 の 幼 稚 園へ 一 時 間 余 か け て 通 園。 一 人 遊 び や,園 の 中 で 自分 の 好 き勝 手 な こ と を して い る最 初 の 状 態 か ら,園 全 体 の 理 解 と担 任 に も恵 まれ,次 第 に他 児 との 関 わ り も生 まれ,卒 園 時 に は み ん な と一 緒 に座 っ て卒 園 式 に参 加 で きる まで に 成 長 した。 小 学 校 は校 長 に事 情 を話 し,普 通 学 級 を希 望 した 。 校 長 か らの 話 に,C子 の 兄 の 担 任 だ っ た こ との あ る先 生 が 引 き受 け よ う と申 し出 た。 普 通 学 級 に 入 っ た もの の,最 初 の 内 は 授 業 時 間 中退 屈 す る と座 っ て い られ な くな る, 教 室 か ら とび 出 す こ ど もあ り,暫 く母 親 が 廊 下 で待 機 して い た 。 自分 の 気 に い らな い こ と が あ る とパ ニ ッ ク を起 し,泣 き叫 ぶ とい っ た 行 動 が 見 られ た 。 担 任 か ら は そ う したこ と に 対 して 一 切 親 へ の 苦 情 もな く,時 に 「お 母 さ ん,お ぶ い紐 を持 っ て来 て 下 さい 。塾手 に 負 え な い 時 は お ん ぶ して授 業 しますdと 言 わ れ た。 また授 業 中,C子 の 泣 き声 の 中 で,他 め 子 ど も達 に 対 して 「C子 ち ゃ ん の 泣 き声 に負 け な い よ う に,も っ と大 きな声 を出 して 勉 強 しま し ょ うofと い った 情 景 が繰 り広 げ られ る の で あ っ た。 時 に甘 え て 先 生 にぶ ら さが っ て い く C子 を抱 い た り,お ぶ っ た り と受 け入 れ な が らの 指 導 に,2学 期 か らはC子 も ど うや ら席 に座 っ て い られ る まで に落 ち着 く。 喜 ん で 通 学 す るの で あ っ た 。 そ の 間,ク ラ ス の 他 の親 か らの 苦 情 につ い て は,担 任 の指 導 が し っか り して い た こ と も あ り,担 任 と校 長 で 処 理 し,親 に は伝 え られ て い な か っ た こ とが 後 で わ か っ た。 2年 次 は 先 生 の 転 勤 に よ り担 任 が 変 わ る。 担 任 は,何 もわ か らな い状 態 の 中 で,時 に体 罰 を 与 え るな ど,と もか く厳 し く躾 よ う とC 子 の 指 導 に あた る。 こ の ため 一 学 期 間 はC子 の状 態 は 悪 化 。 表 情 も暗 く,癖 が増 え る,家 庭 に帰 っ て か ら も苛 立 ち,パ ニ ック状 態 に度 々 陥 い る。 担 任 も指 導 に あ ぐね,夏 休 み 中 に は 自発 的 に 自閉 症 児 の 療 育 キ ャ ンプ に参 加 し て 学 ぶ 。2学 期 か らは 指 導 法 を が ら り と変 え, 家 庭 訪 問 をす る な ど,家 庭 との連 絡 を と りな が ら指 導 に生 か す 。C子 の 状 態 も好 転 し担 任 に よ くな つ い て い く。 担 任 自身,C子 との 出 逢 い で 大 き な変 化 を遂 げ,C子 に 学 ぶ こ とが 多 か っ た と言 わせ て い る。 こ う した 場 合,応 々 に して 特 殊 学 級 や養 護 学 校 へ 変 わ っ た 方 が 本 人 の た め に も良 い の で は な い か とい っ た 話 が 持 ち 出 さ れ る例 が 多 い の で あ るが,こ の ケ ー ス に つ い て は,担 任 は校 長 に困 った,ど う 指 導 した もの か と相 談 は した もの の,引 き受 け られ な い とい う話 に は な らな か った 。 そ れ は担 任 の 姿 勢 が 前 向 き で あ っ た こ と,更 に 一 年 次 の 前任 者の も とで,普 通 学 級 へ の 適 応 が み られ て い た こ と も大 きな一 因 にな っ て い た 。 C子 の 場 合,教 師 の 転 勤 等 に よ り1年 か ら 6年 まで 毎 年 担 任 が 変 わ る とい った 状 況 に 置 か れ た 。 その 後3年 ∼6年 まで,そ の 時 の担
任 に よ って は,授 業 中 は お 客様 的 存 在 に置 か れ て い た こ と もあ る。 どん な に稚 拙 で あ っ て もC子 が 喜 ぶ か ら と必 ず そ の 作 品 をみ ん な と 一 緒 に貼 り出 す 先 生,授 業 中 も きめ細 くC子 の 存 在 を認 め た 指 導 を す る先 生,全 く無 視 し て こ れ とい った 配 慮 の な い 先 生 な ど,そ の 時 に よっ て 指 導 も違 っ た 。 こ う した状 況 に もか か わ らず,C子 の場 合,1年,2年 と集 団 生 活 へ の 適 応 が で き る まで に発 達 して い た た め, そ の後 は普 通 学 級 で の 生 活 面 で は これ とい っ た支 障 は な か っ た 。 た だ これ まで に は,学 校 の 帰 え り道,他 の 子 ど も達 に虐 め られ た りは幾 度 か あ っ た 。 ラ ン ドセ ル を 草 原 の 繁 み に捨 て られ,そ れ を い つ ま で も捜 して なか な か帰 って こ な か った こ と,道 端 の溝 に落 さ れ泥 だ ら け に な っ て 帰 っ て きた こ と もあ る。 親 の 方 が 涙 に くれ た 。 が, こ う した 事 件,あ るい はC子 の状 態 が 悪 化 し た時,毎 日両 親 は家 庭 に あ っ て気 の 安 ま る こ と もな く,悩 み,不 安 な状 態 に あ って も,決 して 学 校 に は何 も言 っ て い か な か った とい う。 自閉症 児 の 親 の グ ル ー プ の 中 で,と か く 自閉 症 児 の 親 は教 師 に多 くの 注 文 をつ け,口 う る さ くや りに くい と言 わ れ て い る との 話 を 聞 い て い た こ と もあ り,黙 って 耐 え て きた 。 た ま た まC子 の場 合 に は事 態 が好 転 した り,C子 自身 に 多少 の環 境 の 変 化 に も適応 で き る力 が っ い て い た か ら幸 い した とは い え,母 親 の こ の 話 に は,「C子 の 場 合,年 毎 に成 長 が み られ, 学 校 生 活 も とて も う ま くい って お り ます 。6 年 間,学 校,先 生 方 に もそ の 都 度 恵 まれ て き ま したdと の ア ンケ ー トの 記 述 とは別 に,考 え させ られ る もの が あ る。 普 通 学 級 の 生 活 の 中 で,現 在 仲 良 しの ク ラ ス メ ー トもあ り,誘 い あわ せ て遊 び に 出 か け た り もす る。 日常生 活 場 面,行 動 面 で は 殆 ん ど 問題 は な くな っ て きて い る。 幼 い 時 は落 ち 着 きが な く目が 放 せ な か っ た。 小 学 校3年 生 の 頃 まで まだ 時 々,迷 い子 に な っ て捜 しま わ る こ とが あ っ た 。 当時 は先 行 き ど うな る こ と か と思 って い た が,こ こ まで の 成 長 をみ た。 現 在,学 習 面,言 葉 の 問 題 が まだ 残 され て い る。 学 習 面 は3年 次 に な っ て 本 人 に勉 強 し よ う とす る姿 勢 が 見 られ 始 め た 。 現 在 も近 所 の 塾 に通 っ て い るが,か な り進 歩 した とは い え, 学 年 レベ ル か らみ れ ばハ ンデ ィ も大 き く授 業 に つ い て い け な い。 言 葉 は 話 す 抑 揚 に癖 が あ る こ と,自 分 の 思 っ て い る こ とを相 手 に上 手 に伝 え られ な い,相 手 か まわ ず 今 自分 の 関 心 の あ る こ と を聞 きた が るな ど,人 に お か しな 子 だ と思 わ れ る点 が あ る。 そ の他C子 の 場 合,家 庭 に お い て も,父 親 が 地 域 の 子 ど も達 の ポー トボ ー ル の チ ー ム の 指 導 に あ た り,C子 を参 加 させ る な どの 努 力 が 積 み 重 ね られ て い る。 ま た6年 生 の この 夏 休 み は,都 内 の あ る大 学 の サ ー クル 主 催 の 子 ど もの キ ャ ンプ(遊 び を忘 れ た 子 ど も達 を, 自然 の 中 で 鍛 え よ う との 試 み で 主 に健 常 児 を 対 象 と した もの)に 一 週 間参 加 させ た 。C子 は 楽 しか っ た と意 気 揚 々 と帰 って きた 。 話 に リー ダー や 友 達 の 名 前 が 沢 山 で る の で あ っ た 。 山村 の廃 校 に な っ た小 学 校 の 講 堂 に み ん な蒲 団 を敷 い て寝 る,洗 濯 を は じめ 自分 の こ とは 自分 で や るル ー ル の も とで,み ん な と一 緒 の 生 活 に も無 事 適 応 で きて い た との リー ダ ー か らの 報 告 を受 け た。 以 来 そ の 子 ど も会 の 日曜 毎 の 活 動 を楽 しみ に参 加 して い る。 こ う した学 校 外 で の サ ー クル 活 動 の 利 用 な ど もC子 の 新 た な社 会 性 の広 が りを もた ら し て い る。
現 在,中 学 進 学 を控 え,C子 は み ん な と同 じ中学 の 普 通 学 級 を希 望 して い るが,中 学 の 受 け入 れ が 悪 い との 情 報 に,こ こ まで 成 長 し た 子 ど もで も,中 学 で は切 り棄 て られ て し ま うの だ ろ うか と両 親 は不 安 な 思 いで い る。 〔事 例4〕 D君 。6才 男 子 。 児 童 相 談 所 に て 自閉 傾 向 が あ る との 診 断 を受 け る。現 在2年 生 。 特 殊 学 級 と普 通 学 級 に所 属 して い る。 一 年 問,団 地 の 幼 児 教 室(親 の有 志 達 の 運 動 に よ って 創 られ 運 営 され て い る幼 稚 園)に 通 園。 Dは 警 戒 心 が 強 く,砂 や 物 の感 触 を好 む な ど特 定 の 物 へ の 固執 傾 向 が 強 く,興 味 の 範 囲 もご く狭 く限 られ て い る。お となしい動 きの 少 な い タ イプ の 子 ど もで あ る。 入 学 に あ た って親 はDの 性 格 か らみ て,新 しい 環 境 で,い き な り普 通 学 級 の 大 きな集 団 に所 属 す る こ と は,か え ってDを 怯 え させ る こ と に な るの で は な い か,み ん な と同 じ学 習 は まだ 無 理 だ と判 断 して,障 害 児 学 級 を希 望 す る。が,教 育 委 員 会 の 面 接 でDは お とな しい こ とか ら,こ れ な ら普 通 学 級 の 中 で な ん とか や っ て い け るの で は な い か と勧 め られ る。 普 通 学 級 に入 っ た もの の,担 任 に と って は,お と な し い分 に は ク ラ ス に 置 い とい て か まわ な い, お客 様 的 存 在 と して しか 受 け とめ られ て い な か っ た 。 ク ラ ス の 子 ど も達 が 珍 しが り煩 くD に おせ っか い をや く,か らか っ た りす る こ と かDに は耐 え られ な か っ た。 奇 声 を発 した り, 泣 き出 す 。 また そ れ を周 囲 の 子 ど も達 が騒 ぎ, 悪循 環 を繰 り返 す の で あ っ た 。 自分 の 席 に つ い て は い る もの の,た だ 無 意 味 に長 時 間座 っ て い る こ とに 我慢 が で きな くな る と,ピ ョン ピ ョ ン跳 ね た り,手 を ヒ ラ ヒ ラ させ た りの 癖 が 激 し くな っ て い っ た。 そ の た め母 親 が 教 室 で 付 添 う こ とに な っ た。 母 親 は以 前 も暫 く幼 児 教 室 でDに 付 添 っ て い た こ とが あ り,そ の 時 の 教 師 の,集 団 の 中 で のDへ の 細 や か な配 慮,他 の 子 ど もへ の 関 わ りに多 くを 学 ぶ もの が あ っ た 。 とこ ろ が学 校 の 担 任 は全 くDを 無 視 して い た 。Dの こ と を他 児 に説 明 した り, 時 間 の変 わ り 目で 注 意 を促 した り,時 に声 を か け た り等 の ほ ん の ち ょっ と した 配 慮 が あ れ ばDの 状 態 もま た違 うの に と母 親 は 感 じる の で あ った 。 母 親 は この ま ま の状 況 で 普 通 学 級 に所 属 して い る こ とは無 意 味 と しか 思 え な か っ た 。 ま たDの 緊 張 も増 し,教 室 の み な らず 家 庭 で もパ ニ ッ ク状 態 に 陥 い る こ と が 多 くな り,マ イ ナ ス の 方 が大 き くな って い っ た 。 普 通 学 級 で の2ケ 月 を経 過 した 時 点 で,母 親 は 特 殊 学 級 へ の変 更 の 希 望 を 出す 。 が,既 に そ の学 校 の 特 殊 学 級 は 手 一 杯 で 受 け 入 れ る 余 地 が な い とい う。校 長,特 殊 学 級 の 担 任, 教 育 委 員 会 と何 度 も交 渉 を重 ね,と りあ えず 2日 は特 殊 学 級 に 参 加(た だ し他 の 子 ど もが 普 通 学 級 の 授 業 に 参 加 して 空 い た 時 間 帯 と給 食 の 時 間 帯 に 限 定 され た 。),2日 は 他 校 の 情 緒 障 害児 学 級 の午 後 の 時 間帯 に参 加,2日 は 家 庭 で す ご す こ と に な っ た。 曜 日 に よっ て登 校 す る時 間 も,学 校 も違 う とい った 変 則 的 な 形 で,親 で さえ 今 日は何 時 に ど っ ちの 学 校 へ 出 か け る 日だ った か と混 乱 す る しまつ で あ っ た。 そ の 間,母 親 は何 度 も教 育 委 員 会 に足 を運 び,ま た 県 の 教 育 セ ンタ ー へ 助 言 を求 め る な どの 交 渉 を繰 り返 し,10月 にな っ てや っ と毎 日 を特 殊 学 級 へ 通 え る よ う にな っ た。Dに と っ て は特 殊 学 級 の 小 集 団 の 中 で の 方 が,ゆ っ く り と した 自分 の ペ ー ス で の び の び と生 活 が
で き るの で あ っ た。2年 生 に な っ て か らは特 殊 学 級 で の 生 活 を 中心 と しなが ら も,音 楽 や 給 食 の 時 間 は親 学 級 で 過 ごす な ど,普 通 学 級 との 交 流 が取 り入 れ られ て い る。 朝 は兄 や 近 所 の み ん な と集 団 登 校 し,帰 りは親 学 級 の 面 倒 見 の よい 女 の 子 と一 緒 で あ る。 現 在,母 親 は 幼 児 教 室 や 障 害 児 学 級 で 知 り 合 っ た親 を誘 い,6∼7人 で 月1回 自宅 で 気 軽 に お 茶 を飲 み な が ら話 し合 う機 会 を設 け て い る。 子 ど も を育 て る上 で お互 いの 経 験 を生 か せ た ら と考 え た こ と もあ る。 ま 左学 校 の 問 題 で散 々苦 労 した し,そ の 間 あ ち こ ち で み ん なが そ れ ぞ れ に 学校 の 問題 で悩 み,不 満 を感 じて い るの を耳 に した 。 そ れ を個 々人 の 愚痴 に終 らせ て は い け な い,自 分 の 子 ど もの た め に も,ま た後 か ら くる人 達 に 同 じ悩 み を繰 り 返 させ な い た め に も,み ん な で 話 し合 い,問 題 を解 決 して い か な けれ ば と痛 切 に感 じた 。 Dの こ とで 度 々役 所 へ も足 を運 ん だ が,障 害 児 へ の 認 識 不 足 や 町 の 行 政 面 が か な り立 ち遅 れ て い る こ とが よ くわ か っ た。 障 害 児 の 存 在 を知 らせ,そ して ど う い っ た 問題 で 困 っ て い るの か,障 害 児 の親 が 伝 え て い か な くて は理 解 して も ら え な い。 た と え ば特 殊 学 級 が 度 々 短 縮 授 業 に な る の で担 任 に聞 く と,特 殊 学 級 の 先 生 は 少 数 の 子 ど も しか 相 手 に して い な い か ら と,何 か につ け学 校 の 雑 務 を押 しつ け ら れ た り,出 張 に駆 り出 され る とい う。 学 校 の 中で も特 殊 学 級 へ の理 解 が 足 りな い 。 こ う し た 一 つ 一 つ の 具 体 的 問題 を と りあ げ,校 長 や 教 育 委 員 会 に,そ して 市 長 との 対 話 の 日 を利 用 す るな ど,現 状 を訴 え る よ うに して い る。 今 度 新 た に特 殊 学 級 が 新 設 され る こ と に な っ た し,ま た あ る学 校 で は特 殊 学 級 の担 任 達 が 普 通 学 級 の1年 生 の担 任 と な り,低 学 年 の 間 は で き るだ け普 通 学 級 で 障 害 児 を受 け とめ よ う との 試 み が な され る こ と に な っ た 。 こ う してDの 母 親 も ま た現 実 問 題 へ の対 処 の 必 要 性 に 迫 られ,地 域 の 障 害 児 の 親 の小 グ ル ープ を創 り,そ の リー ダ ー と して の 行 動 を と る に致 っ て い る。 〔事 例5〕 E君 。10才 男 児 。 中程 度 の 精 神 発 達 遅 滞 の 診 断 を受 け て い るが,自 閉傾 向 も伴 って い る 。 現 在 養 護 学 校4年 生 。 学 校 へ は ス ク ー ル バ ス で1時 問 余 か け て 通 っ て い る。 と もか く学 校 へ 入学 で きた こ とで 安 心 し,母 親 は時 間 的 に も精 神 的 に もゆ と り を もて る よ う に な っ た 。 先 生 達 も熱 心 で,高 校 まで の 教 育 が 保 障 され て い る。 学 校 生 活 で は,集 団へ の 適 応 は まだ,と もす れ ば一 人離 れ て別 行動 を と っ て い る こ とが 多 く,担 任 か らEに 対 し て は で きる だ け 一 対 一 の 関 係 の機 会 を多 く心 掛 け て い る と言 わ れ た 。 これ ま で 落 ち着 い て き た こ と,人 の 指 示 が わ か り従 え る よ うに な った こ と,単 語 が 幾 つ か 増 え た こ と,弟 に い っ も負 け て い た の が む か っ て い き 兄 弟 喧 嘩 が で き る よ うに な っ た こ と な ど,E な りの 成 長 に満 足 して い る 。 〔事 例6〕 F君 。6才 男 児 。2才6ヶ 月 の 時,児 童相 談 所 で,知 的 遅 れ は 見 られ な い,自 閉傾 向 が あ る との 診 断 を受 け る。 就 学 猶 予1年 。現 在 精 神 薄 弱 児 通 園施 設 に通 所 。 近 所 の 幼 稚 園 に3年 間 通 園 。最 初 は教 室 に じっ と して い られ な い 。 園 外 へ とび 出す とい っ た状 態 で あ っ た。 園長 を初 め,園 全 体 の 先 生 達 で注 意 を配 る。3年 目の 春 に は 通 園 バ ス か ちお りる とす ぐ自分 の 教 室 へ 行 く よ う に な り,1時 間 中20∼30分 は座 っ て い られ る よ う
に な る 。 何 で も他 児 の や る こ と を ジ ッ ー と見 て い て模 倣 が 増 え る。 絵 もな ぐ りが きか ら, レ ール や 汽 車 を 「シ ュ ッ シ ュ ッポ ッ ポ ッ」 と 口ず さみ なが ら描 き,や が て 人物 も描 くよ う に な る 。 み ん な と一緒 に並 ぶ こ とが で きる よ う に な る。 生 活 習慣 もみ につ い た 。 卒 園後 の 進 路 は,単 語 の 数 も少 な く,し か も ご くま れ に咄 嗟 の 時 に しか で な い こ と もあ り,母 親 は 養 護 学 校 を希 望 した 。 と こ ろが 面 接 の 際,初 め ての 場 所 で もあ り,Eが 落 ち着 か ず,逃 げ だ した た め,こ ん な 多動 な状 態 で は 無 理 だ と 断 わ られ る。 や む をえ ず1年 猶 予 。 通 園施 設 に 申 し込 む と定 員一 杯 だ か ら と一 学 期 間待 機 の 状 態 に 置 か れ る 。 一 方,教 育 委 員会 か ら週 に一 度,訪 問教 師 が派 遣 され る こ と に な る 。 Fの 場 合,禁 止 の 多 い 過 干 渉 な母 親 の 養 育 態 度 に も問 題 が み られ た 。 そ れ が3年 間 の 幼 稚 園 生 活 の 中 で,教 師 に も恵 まれ,規 則 正 し い 生 活 習慣 も身 につ き,落 ち 着 きが み られ る よ う に な っ た。 それ ま で の昼 夜 が 逆 に な っ た 生 活,食 事 の 好 き嫌 い が激 し く情 緒 的 に不 安 定 に な る と何 も食 べ よ う と しな い 問題 な ど も 解 消 され て い っ た 。 と こ ろ が,卒 園 後 の学 校 へ も施 設 へ も行 け な い で,家 庭 で 朝 か ら晩 まで 母 親 と一 緒 の 生 活 の 中 で,Fは 以 前 の状 態 に 逆 もど り して い っ た 。 母 親 が 目 を放 す とす ぐい な くな る,生 活 習 慣 は乱 れ る,拒 食,絵 は な ぐ りが き に な る等 々の 問題 が ま た生 じた 。2学 期 に な っ て 通 園 施 設 に 入所 した もの の状 態 に さ した る変 化 は み られ な か っ た。Fに とっ て は幼 稚 園 で の 生 活,健 常 児 の 刺 激 が あ る方 が そ の 成 長 に み るべ き もの が あ っ た とい え よ う。 ま た就 学 を前 に して,母 親 は2学 期 に な る と何 度 も教 育 委 員 会 に足 を運 ん だ 。 今 度 はF に とっ て 養 護 学 校 よ り も少 しで も健 常 児 の 刺 激 の あ る特 殊 学 級 の 方 が 良 い の で は な い か と 希 望 をだ した 。 が,就 学 指 導 の担 当者 か ら は 養 護 学 校 で な くて は 無 理 だ と言 わ れ る 。 そ こ で 母 親 は 養 護 学 校 を初 め 地 域 の 特 殊 学 級 をあ ち こ ち 見学 して 歩 く。 あ る促 進 学 級 の 先生 に 子 ど も を見 せ,状 態 を説 明 した と こ ろ,「この 子 な ら引 き受 け られ る と思 うが,今 年 は養 護 学 校 の 義 務 化 を控 え,担 任 の一 存 で は 入 級 を 決 め られ な い 。教 育 委 員 会 の許 可 が あ れ ば 引 き受 け ます よdと 言 わ れ た 。 と ころ が 就 学 指 導 の 担 当者 は あ くまで 養 護 学 校 を勧 め ます と と話 し合 い はつ か な い 。 訪 問教 師 の 意 見 も こ れ ま で の学 習 指 導 の 状 態 か らみ て も特 殊 学 級 で 十 分 や っ て い け る と い うこ とだ っ た 。更 に 教 育 委 員会 の教 育相 談 室 の 教 師 にFの 経 過 観 察 を頼 む 。 そ こ で も これ な ら特 殊 学 級 でや っ て い け る との 判 断 を受 け た。が,「就 学 指 導 に つ い て は そ れ ぞれ 担 当 者 が 決 め られ て お り, Fは 自分 の 担 当 で は な い か ら 、一 応 助 言 は し て み るが 担 当者 を説 得 す るの は難 しい」と言 わ れ た 。母 親 は何 度 も就 学 指 導 の 担 当者 の 所 に 足 を運 び,特 殊 学 級 の 希望 を曲 げ な か っ た 。 結 局,3月 末 の ぎ り ぎ りに な っ て特 殊 学 級 へ の 決 定 の通 知 を受 け た の で あ る 。が,こ の 一 年 間 母 親 が ど ん な に不 安 な 状 態 に置 か れ て い た こ とで あ ろ う。 この 事 例 の 中 に は就 学 猶 予,就 学 指 導 の 現 状 と問 題 が 顕 著 に提 示 され て い る と言 え よ う 。 〔事 例7〕 G君 。 て ん か ん 発 作 を伴 う精 神 発 達 遅 滞 。 昭 和52年,9才 の誕 生 を前 に収 容 施 設 に て発 作 の ため 死 亡 。 入 学 時,市 の 教 育 委 員会,県 の教 育 セ ン タ ー に あ た っ た と こ ろ,市 内 の特 殊 学 級 が 良 い 一109 .
の で は な い か と言 わ れ る 。4月 に入 学 した も の の,そ の 学 級 は 高 学 年 の 軽 度 児 を対 象 と し た ク ラ ス で あ っ た 。 当時Gは,自 分 の 興 味 を 抱 い た事 へ の 集 中 は み られ る が,危 険 の 判 断 が で きず 直 進 す る,多 動 で あ り,目 を放 せ な い状 態 に あ っ た 。 そ の ため 母 親 が 付 添 い週2 日の 登 校 と い う条 件 で しか 受 け 入 れ て も らえ なか っ た 。 学 級 で は お 客 様 的存 在 で 母 親 と教 室 の す み で パ ズ ル 等 をや っ て遊 ん で い た 。更 に校 長 か らは 責 任 を も て な い か ら養 護 学 校 へ と何 度 も勧 め られ た 。 養 護 学 校 で 面 接 を受 け た が,反 響 言 語 で は あ れ 二 語 文 が か な りで て い た こ と,多 動 性 を情 緒 障 害 に よ る もの と判 断 され,養 護 学 校 の対 象 児 で は な い,特 殊 学 級 の 方 が 適 して い る と断 わ られ た 。 特 殊 学 級 か らは養 護 学 校 へ,養 護 学 校 か ら は特 殊 学 級 へ と,互 いの 押 しつ け 合 い の 中 で,母 親 は途 方 に くれ た 。 次 に校 長 か ら は,そ れ で は施 設 へ と重 ね て 勧 め られ た 。 そ の 間,一 学 期 間 は な ん とか お 願 い して母 子 で通 級 した もの の, 母 親 は心 身 の 過 労 か ら病 気 に な り入 院 の 事 態 に陥 い る。 や む な くGは 収 容 施 設へ 入 所 す る こ と に な った 。 入 所 後,薬 の調 整 も加 え て, だ いぶ 落 ち 着 き,言 葉 の 数 も増 え,そ の 成 長 を喜 ん で い た が,発 作 に て短 い命 を閉 じ る。 な ん とか 家 か ら通 え る学 級,学 校,施 設 を と あ た り,万 策 つ きて,更 に母 親 の過 労 も重 な り,収 容 施 設 へ 入 所 させ る こ とに した 時 の 親 の 嘆 き,そ して結 果 論 か ら と は い う もの の ア ン ケ ー トの 最 後 に記 され た 「今 で も毎 日, あ の 時 入 所 させ な い で 手 元 に置 い て お い た ら こん な こ とに な ら なか っ た の で は な い か と悔 ま れ,こ うい う子 ど も達 を見 る と胸 が 痛 み ま す 。 障 害 児 を も っ た親 は どこ で も よ い,親 子 で す が れ る場 所 が欲 しい の で すofの 感 想 に, そ の 経 て きた過 程 で の 問 題 点 を と りあ げ て 検 討 して お か ね ば な らな い と思 う。 4.考 察 以 上 数 少 な い調 査 結 果 と事 例 か らで は あ る が,7つ の 事 例 を中 心 に,質 問 紙 に記 述 され た 内 容 を加 味 しな が ら,問 題 点 と今 後 の課 題 につ い て ま とめ て み よ う。 (1)事例1の 中 に 見 られ る よ う に,現 在 特 殊 学 級,養 護 学 校 に所 嘱 す る障 害 児 は従 来 の 軽 度 の 遅 れ の 子 ど もの み な らず,重 度 の障 害 児, 動 く重 症 児 と言 わ れ る 自閉 児,情 緒 障 害 児 等 々が 増 え,そ の障 害 の種 類,程 度 も複 雑 多 岐 にわ た っ て い る 。今 後,養 護 学 校 の 義 務 化, 全 員就 学 の 保 障 の過 程 で,更 に一 層 こ の傾 向 は進 む で あ ろ う 。 重 度 児 の 教 育 に あ た っ て は,ま ず は障 害 児 教 育 に携 わ る教 師 をは じめ と して,学 校 教 育 関 係 者 の学 校 教 育 の観 念 や 意 識 の 変 容 が 求 め られ る。 ま た 一 方 で は,事 例1の 他 に も軽 度 の 遅 れ の 子 ど もの 親 か ら は 「1年 か ら6年 ま で同 じ 教 室 で様 々 な障 害 児 の雑 居 して い る状 態 」 の 中 で の 困 惑,「特 殊 学 級 に この ま ま た だ 漫 然 と 所 属 して い るだ け で い い の だ ろ うか 」 との 不 安,「もっ と勉 強 を教 え て も ら え な い だ ろ うか 。 もっ とゆ き届 い た教 育 を して 欲 しい 。」と い っ た焦 せ り と不 満 の 声 が ア ンケ ー トの 記 述 の 中 に見 られ た 。 そ して 自閉 児 や 情 緒 障 害 児 の 親 か らは,「新 しい こ とへ の取 り組 み,試 行 を も う少 し積 極 的 に行 う姿勢 が欲 しいofと い っ た 特 殊 学 級,情 緒 障 害 児 学 級 の 教 育 内 容 につ い て の 不 満 の声 が あ が っ て い る。 こ う した教 育現 場 で の 混 乱 に対 応 す べ く教 育 体 制,条 件 の整 備 が は か ちれ ね ば な らな い 。
そ れ ぞ れ の 障 害 児 の 発 達 に応 じた個 別 指 導 と 集 団 に よ る教 育 効 果 をあ わせ て は か る に は, 教 職 員 の 定 数 の 検 討 をは じめ,生 活 指 導 や 学 習 指 導 とそ の 内 容 に応 じて の グル ー プ 編 成 な ど新 た な 教 育 方 法 や 内 容 が 検 討 され ね ば な ら な い 。 そ して 重 度 児 を,多 種 多 様 な障 害 児 を受 け 入 れ る に は教 職 員 に,よ り専 門性 が 必 要 と さ れ て きて い る 。事 例3に もみ る よ う に障 害 児 の発 達 は 教 師 との 出 逢 い に よ つて 大 き く左 右 さ れ る。 そ れ だ け に教 職 員,専 門 家 の養 成, 研 修,資 質 の 向 上 が 重 要 で,急 務 で あ る こ と は 言 う ま で もな い。 (2)事例3で は た ま た ま入 学 当初 の教 師 との 出 逢 い に 恵 まれ,そ の 後 の紆 余 曲折 は あ る も の の,普 通学 級 で の6年 間 の 生 活 の 中 で 比 較 的 順 調 な発 達 が 見 られ て い る。 事 例4で は恐 怖 心 の 強 い 子 ど もに とっ て,い きな り普 通 学 級 の 大 きな 集 団 の 中 に 置 か れ,た だ無 意 味 に 長 時 間 座 っ て い る こ とは 苦痛 で しか な か っ た 。 更 に加 え て,教 師 か ら何 ら配 慮 の な い 悪 条 件 下 に あ っ て 状 態 の悪 化 をみ て い る。 統 合 教 育 の 必 要 性 を強 調 す る 余 り,一 部 に は全 て の 障 害 児 を普 通学 級 で教 育 す べ きだ と の 極 端 な 主 張 もあ るが,形 式 上 の 平 等 よ り も そ の 内 容 や 質 が 問 わ れ ね ば な らな い と言 え よ う 。 現 実 問 題 と して,そ の 子 ど も に と っ て ど こ で ど う い う教 育 を受 け る のが 最 も適 切 な の か の判 断 は,そ れ ぞ れ の 障 害 児 に と っ て今 何 が 必 要 な の か そ の 発 達 上 の課 題,教 師 の受 け と め よ う とす る姿 勢 と 力量,そ れ を支 え る学 校 全 体 の 理 解 と協 力 の 有 無 等 々の 要 件 をか らみ あ わ せ て検 討 され ね ば な らな い。 また 単 に障 害 の 程 度 の み に よ っ て 画 一 的 に 振 り分 け る こ と は危 険性 を含 ん で い る と い え よ う。 も し他 の 地 域 で あ っ た な ら就 学 猶 予 も し くは 養 護 学 校 の 対 象 とされ た で あ ろ う域 る 重 度 の 多 動 性 の 自閉 症 児 が 地 域 の 障 害 児 学 級 に 入 級 し,現 在 順 調 な発 達 を見 せ て い る例 も あ る 。 こ の子 ど もの 入 級 に あ た っ て は,面 接 で そ の 子 ど もの 状 態 を見 て,'担 任 と校 長 が 教 員 の 増 員 をは か っ た の で あ る。(事例7と は対 象 的 な処 遇 で あ る 。)この 事例 や 事 例3に 見 ら れ る よ う に,従 来 の普 通 学 級 や 障 害 児 学 級 で は 受 け入 れ る こ とが 不 可 能 とみ な され て い た 障 害 児 が 何 と か受 け 入 れ よ う とす る教 師 や 学 校 の 力 に よ っ て,そ の 発 達 に成 果 をあ げ て い る教 育 実 践 が あ る。 こ う した堅 実 な 教 育 実 践 の 中 には,学 級 や 学 校 にあ わ せ て 子 ど も を切 り棄 て るの で は な い,子 ど もに あ わ せ た学 級 や 学 校 をつ くる新 た な可 能 性 が 示 唆 され て い る と い えよ う。 今 後 更 に こ う し た事 例 の集 積 と研 究 の 中 か ら, 障 害 の 性 質,そ の 発 達 上 の課 題,そ れ に対 応 すべ き新 た な 教 育 内容 や 方法,条 件 整 備 が 明 確 に され て い く必 要 が あ る。 (3)調査 結果 に も見 られ る よ う に,こ こ数 年 来 統 合 教 育 の 必 要 性 が 強調 され て きた 中 で, 幼 児 教 育 の現 場 で は,か な り障 害 児 が 受 け入 れ られ,成 果 をあ げ て き て い る と言 え よ う。 と こ ろが 幼稚 園や 保 育 所 での 取 り組 み が,そ の 後 の学 校 教 育 の取 り組 み に な か な か 引 き継 が れ て い か な い現 状 が あ る 。事 例6に そ の 問 題 点 が 顕 著 に見 られ て い る 。 ま た 就 学 状 況 の 調 査 結果 の 中 に も,幼 稚 園 で健 常 児 と と も に 殆 ん ど生 活 面 で は 問 題 な くや っ て い け た子 ど もが,小 学 校 で は特 殊 学 級 の 生 活 の み に限 ら れ て しま っ て い る例 もい くつ か あ る 。確 か に 幼 児教 育 と学 校 教 育 との違 い は あ る 。 そ して
必 ず し も幼 稚 園や 保 育 所 で の 生 活 経験 か ら そ の ま ま 引 き続 き学 校 で も普 通 学 級 に入 級 す る こ とが,ど の障 害 児 に と っ て も良 い と は い え な い 。 が しか し,幼 児 教 育 で の統 合 教 育 に み る成 果 を,そ の後 の学 校 や 地 域 社 会 の 生 活 の 中 で生 か す 余 地 は十 分 に あ る とい え よ う。事 例2で は登 校 な どの 生 活 場 面 で の健 常 児 との 関 わ り,事 例4で の 生 活 や 学 習 の 内 容 に よ っ て親 学 級 と の交 流 が も たれ て い る よ うに,学 校 や 教 師 の 障 害 児教 育 へ の取 り組 み の 姿 勢 に よ っ て 学 校 生 活 で の 内 容 も違 った もの に な る。 今 後 は 指 導 内容 に よ っ て は,学 級 間 の み な ら ず,地 域 の 特 殊 学 級 間,特 殊 学 級 と養 護 学 校 間,障 害 種 別 の 異 な る学 校 聞 の 交 流 も必 要 と さ れ て くる で あ ろ う。 ま た事 例3に 見 られ る 地 域 の ス ポ ー ツ ク ラブ や 子 ど も会 へ の参 加 な ど学 校 教 育 以外 の 分 野 を新 た に活 用 し,開 拓 す る こ とも 今後 の 課 題 の 一 つ で あ る 。 (4)事例6,事 例7に 就 学 指 導 の 問題 点 をみ て み よ う。 事例6で は就 学 指 導 が ご く短 時 間 の観 察 に よ って 判 別 さ れ,就 学 前 の幼 稚 園 で み た 発 達 が 全 く考 慮 さ れ て い な い 。 しか も親 の 就 学 希望 に も関 わ らず 教 育 委 員 会 か ら猶 予 を勧 め られ,そ の 猶 予 の 問 に却 っ て これ ま で の 幼 稚 園 で の 取 り組 み の 成 果 が 無 に帰 す る に 致 っ て い る。 再 度 の就 学 指 導 の 中 で も母 親 の 希望 は も と よ り,訪 問教 師,特 殊 学 級 の教 師, 教 育 委 員会 の 教 育 相 談 所 で の 判 断 や 意 見 さ え もな か なか 取 り入 れ られ て いか なか っ た 。 あ る母 親 は 就 学 を控 え,養 護 学 校 の 見学 に出 か け た と こ ろ,「こ の子 は 養 護 学 校 向 きの子 ど も で す 。 こ う い う子 ど もに こそ 養 護 学 校 の教 育 が 一 番 あ っ て い ますdと 入 学 を熱 心 に勧 め ら れ た 。 事 例7で は 養 護 学 校 と特 殊 学 級 の 押 し つ け合 いの 中 で,結 局 行 き場 を失 っ て しま っ た 。 この よ う に地 域 の 教 育機 関 が そ れ ぞ れ の 立 場 で バ ラバ ラ の判 断 を下 し,勝 手 に子 ど も を選 び,か え っ て 親 に不 安 と混 乱 を もた ら し て い る実 情 が み られ る。 就 学 を控 え た1年 間 は,障 害 児 の 親 に と っ て は 非 常 に不 安 の 強 くな る 時 期 で あ る。 そ の 間 の 親 の 不 安 が 子 ど も に与 え る影 響 も大 で あ る 。 就 学 前 の 治療 教 育 と,経 過 観 察,相 談 指 導 と,安 心 して就 学 の 時 期 を迎 え る こ とが で き る よ うな体 制 が望 まれ る 。 養 護 学 校 の 義務 化 に伴 い,各 地 で就 学 指 導 委 員会 の 設 置 は 見 られ る もの の,そ の構 成 メ ンバ ー や 就 学 指 導 の 内 容 に は,ま だ まだ 地 域 に よ っ て格 差 が あ る。 就 学 指 導 委 員会 は,幼 稚 園 や 保 育 所,施 設,そ の 他 の 相 談,治 療 機 関 な どで 就 学 前 の指 導 に あ た っ て きた者,特 殊 学 級,養 護 学 校 の 教 師,医 学 や 心 理 学 の 専 門 家 な ど,直 接 障 害 児 の 治療 教 育 に関 わ っ て きた メ ンバ ー で構 成 され て い る必 要 が あ る。 そ れ らの 専 門 家 の チ ー ム の もと,子 ど もの 発 達 段 階 と発 達 上 の 課 題 をふ ま え,親 の 希望, 家 庭 の 状 況,地 域 の 教 育 機 関 の 条 件 等 を含 め て 総 合 的 に判 断 し就 学 指 導 が 行 な わ れ ね ば な ら な い 。 事 例2で は 親 が 自分 の子 ど もの 発 達 段 階 を 見 極 め て,新 た な環 境 を選 択 し,転 校 して い る。 事 例3で は普 通 学 級 で の6年 間 で比 較 的 順 調 な発 達 を見せ て い る が,毎 年 担 任 が 変 わ る 中で,継 続 して 一 貫 した 教 育 的 配 慮 と い う 点 で は 問題 が あ る。 事 例4,事 例7に も入 学 後 の 問 題 へ の 対応 の 必 要 性 が み られ た 。 今 後 の就 学 指 導,相 談 の 有 り方 と して,就 学 後 も経 過 観 察 を行 い,親 の相 談 を受 け る な ど,そ の 子 ど もの 発 達 段 階 に あ わせ て,ど ん な教 育 内 容 や 指 導 が 必 要 か を,学 校 関係 者 や
親 に助 言 指 導 す る こ とが で き,更 に 必 要 に応 じて 学 級 や 学 校 の 変 更 と選 択 を柔 軟 に配 慮 で き る体 制 と機 能 が 求 め られ る。 そ うす れ ば,ア ンケ ー トに見 ら れ た,情 緒 障 害 児.弱 視 児 の 親 か らの 「現 在,普 通 学 級 と障 害 児 学 級 の 両 方 に所 属 して い るが,子 ど もが 普 通 学 級 へ の通 級 の 方 を喜 び,ま た 適 応 で き て い るの に,何 故 障 害 児 学 級 に通 級 す る 必 要 性 が あ る の だ ろ うかdと い っ た 不 満 な ど, 障 害 の特 殊 性 の み に不 必 要 に注 目 し,障 害 児 学 級 が あ る故 に そ こ に籍 を置 か ざ る を え な い とい った 不 合 理 な 問 題 も解 決 さ れ るで あ ろ う。 障 害 児 の就 学 時 の 判 定 及 び そ の 後 の適 切 な 就 学 指 導 を はか る に は,個hの 特 殊 学 級,養 護 学 校 等 の そ れ ぞ れ の 内 容 の充 実 と と も に, あ わ せ て地 域 の 教 育 機 関 の 密接 な連 携 が 不 可 欠 で あ る と い え よ う。 ま た就 学 指 導 委 員会 の機 能 は単 に地 域 の 教 育機 関 の 条 件 の枠 の 中 で,普 通 学 級,特 殊 学 級,養 護 学 校 へ の振 りわ け を行 う こ と に の み 終 始 す る もの で あ って はな らな い 。 行 政 に対 して働 きか け,そ れ ぞ れ の 障 害 児 の 発 達 保 障 を み た す べ く,新 た な 教 育 条 件 の 整 備 を促 進 させ る もの で は な くて は な らな い 。 (5)今回,訪 問 調 査 し取 りあ げ た 事 例 の 中 に, そ れ ぞ れ に地 域 の 親 の 会 を組 織 し,あ るい は 所 属 して活 動 して い る もの が,た ま た ま3例 も含 まれ て い た 。 障 害 児 を も っ た衝 撃 に 打 ち の め され,苦 悩 の 中 か ら も,一 人 一 人 で は弱 い母 親 達 が,現 実 の 問題 に直面 し,必 要 性 に 迫 られ て 身 近 か な 問題 か らそ の 解 決 に 取 り組 み 活 動 を は じめ るに致 って い る。 養 護 学 校 の義 務 化,全 員 就 学 も,こ う した 障 害 児 の 親 達 の 長 年 の 運 動 の 中 で 実 現 をみ る こ とが で きた とい え よう。 今 後 更 に,そ の 内 容 の 充 実 に,そ れ ぞ れ の 障 害 児 の成 長 発 達 の ニ ー ドに あ わせ て 教 育 条 件,生 活 環 境 を整 備 す べ く,個 々 の 具 体 的 問題 提 起 か ら,着 実 な 運 動 が 積 み 重 ね られ て い く必 要 が あ る。 (6)本稿 で 取 り上 げ た調 査 結 果 と事 例 は,大 学 の相 談 室 に通 所 して い た もの に そ の 対 象 が 限 られ て い る た め,重 症 心 身 障 害 児 の 問題 が 含 ま れ て い な い。 重 症 心 身 障 害 児 や 事 例7に み るて ん か ん発 作 を伴 う障 害 児 な ど,障 害 が 重 度 に な る程,医 療 機 関 との 結 び つ きが な く て は す ま さ れ な い 。 医 療 と福 祉 と教 育 の 密 接 な 有機 的 な連 携 を いか に は か るか が 今 後 の 大 きな 課 題 の一 つ と して あ げ られ る。 お わ り に 障 害 児 をめ ぐる 問題 は 単 に就 学 問題 に と ど ま らず,そ の早 期 発 見 に は じま り,就 学 前 の 治 療 教 育,卒 業 後 の職 業 生 活,レ ク リエ ー シ ョ ン活 動 等 も含 め た,ラ イ フサ イ ク ル に わ た っ て の取 り組 み の 中 で,七一 貫 した 発 達 保 障 と 生 活 保 障 が は か られ て ゆか ね ば な らな い。 最 後 に,今 回 の調 査 と事 例 の 中 で,養 護 学 校 の 実 情 と問題 点 につ い て十 分 と らえ られ な か った 点,筆 者 の 今 後 の研 究 の 課 題 と した い 。 注1.昭 和53年 度 児 童 学 科 卒 業 生 高 山 智 恵 子 さん の 卒 論 の調 査 資 料 を も と に し て い る。 注2.家 庭 の み の意 は,こ こ で は 本 大 学 相 談 室 に週1回 ∼2回 通 所 す る以 外 は 家 庭 の み とい う こ とで あ る。 注3.情 緒 障 害 児 学 級,養 護 学 級 も含 め て 特 殊 学 級 の 表 現 を使 っ た 。